僕だったら世宇子中まで行って影山に文句言って鉄骨とトラック刺さりながら辞表出しに行きますね。
今朝は風丸と一緒に登校して、その放課後。
部室で風丸がサッカー部を辞めるんじゃないかって話を壁山や栗松がしてたけど、オレ達が何かする問題じゃないからな。
それは円堂や染岡も言ってたから、後輩たちは落ち着きを取り戻した。
今はグラウンドで練習をしている。風丸も一緒だ。
『炎の風見鶏!!』
「いいぞ、2人とも!」
「昨日とは大違いだな。枠に入り続けている」
炎の風見鶏。昨日のあれから勢いが戻って来ている。
風丸の中で、答えが出たってことなんだろう。
オレ達は、それを待つだけだ。
「じゃあ、オレも練習に…」
「………………えっ?」
「夏未さん?どうしたの?」
「ん、どうしたんだよ。携帯落として…」
「…………お、お父様が……」
「………は?」
「お嬢様…」
「バトラー!何があったの!?」
雷門と、オレと円堂に木野と大谷の5人が病院に着く。
ちょうど雷門が電話に出た時にその場にいたメンバーで、音無もいたんだけど、6人は流石に多いとなり、染岡達への説明も兼ねて、残ることになった。
窓越しに治療室を見ると、そこには昨日オレ達に激励をくれた理事長が、眠っていた。
ここでようやくオレは、前回も理事長が大怪我を負ったことを思い出すが、この時期でもなければ、原因も違うはずだった。
バトラーさんが言うには、フットボールフロンティアスタジアムの下見の帰りに事故にあったという。
たしか前回は、雷門中のグラウンドで怪我を負ったんじゃなかったか……?
やっぱり、全部が全部同じ、ということはないんだな。
今思えば、OBと試合した場所も、商店街の倉庫じゃなくて河川敷グラウンドだったし。
「お父様………」
「夏未さん……」
……そんなこと考えてる場合じゃないな。
雷門にとって、唯一の肉親なんだし。理事長のことに専念してもらった方がいいだろうな。
「お父さんに着いててやれよ。その方がいい気がするんだ」
「うん。お父さんが目覚めた時、夏未さんの顔を見ると、安心すると思うから」
「夏未ちゃんがいなくても、マネージャーは3人いるから。任せて」
「そういうことだ。音無が説明してくれてるから、他のみんなも同じ意見なはずだぜ」
「みんな……」
そう言ってると、鬼瓦さんがやって来た。
理事長が事故に遭ったと聞いて、駆けつけて来たようだ。
鬼瓦さんが言うには、今の影山は手が出せるような状況ではないという。
……影山、か。
「アイツ……いったい、なんなんだろうな」
『全国サッカーファンの皆様!ついにこの日を迎えました!!今ここ、激闘の殿堂フットボールフロンティアスタジアムは、かつて無いバトルの予感に、早くも興奮の坩堝と化しております!!フットボールフロンティア!開幕!!』
角馬のお父さんの声が、外から聞こえて来る。
オレ達は今、フットボールフロンティアの開会式に出場している。
この年のフットボールフロンティアは、オレにとって2度目のことになるんだが、それでも興奮具合は変わらない。
また、目の前にいる皆んなと一緒に、全国大会に出場出来たんだ。
円堂も、みんなの準備が万端か聞いている。
「壁山!トイレは大丈夫か!?」
「さっき行ってきたッス!!」
「半田!遅れるなよ!!」
「えっ、なんの話?」
マジでなんの話だ。遅れるのは豪炎寺の十八番だろ。
………あっ、もしかしてアレか。最近は起きてないサッカー部の十八番のアレか?だとしたらお前らがやってるんだから、それがなきゃオレは遅れねぇよ!!
にしても、さっきから流れてる曲。どうも聞き覚えあるな。どこで聞いたのかは覚えてないけど、なんだっけ。ティーピスト…
『続いて関東ブロック代表!雷門中学!!』
「よし。行ってこい」
「みんな、頑張ってね!理事長さんのためにも!」
「アキ。気持ちは分かるけど、これ開会式だぞ」
「いってらっしゃい、半田くん」
「ああ。行ってくる」
オレ達が開会式に出てる間、響木さん達は観客席にいるらしい。
それもあって、同時に控室を出るが、方向は逆だ。
大谷達に見送られ、ゲートの方へと向かった。
「いよいよだな。半田」
「さっき土門も言ってたけど、これ開会式だぞ」
「だとしても、あそこから始まったオレ達が、あのフットボールフロンティアの全国大会に出れてるんだぜ。ちょっとは気合入るだろ」
「……まあな」
先頭にいる円堂が、後ろにいるオレに話しかけ、染岡もそれに混じる。
たしかに、開会式とはいえ、このスタジアムに来ることはオレ達の夢だったんだ。
あの部室を掃除してる時、円堂がフットボールフロンティアのポスターを見つけた事から、それは始まった。
戻って来てから1年と少し。思えばかなり濃い時間を送って来たんだと、改めて思い知る。
この先のこと…エイリア学園についての不安はあるけど、それはひとまず置いておく。
今の時点でオレがどうにか出来る問題じゃないし、フットボールフロンティアが終わってから、ちょっと時間があるからな。
「絶対に、優勝しような。円堂、染岡」
「ああ!」
「当たり前だ」
「オレ達のことも、忘れるなよ」
「そうっすよ!オレ達も雷門中サッカー部の一員なんすから!」
「や、忘れてたワケじゃないんだけどな…」
「分かってるさ、半田。お前達から始まったことは、みんな知ってる。それでも、今はオレ達もいる。そういうことだ」
「そうそう。これぐらい、言わせてよね」
風丸や壁山、豪炎寺とマックスもそれに入る。他のみんなの顔を見ると、同じ気持ちなようだ。
この先に加わる2人も含めて、大事な仲間だ。
そうだな。オレにとっては2度目だけど、新しい気持ちで迎えるこのフットボールフロンティア。全員で、テッペンを掴み取るぞ。
「みなさん。そろそろ行きましょう」
「あっ、はい!お願いします!」
「ふふっ、あなた達の試合、楽しみにしてますからね」
プラカードを持ったお姉さんに続いて、スタジアムに入る。
……いや、お姉さんって言い方どうなんだろ。たしかに今のオレは中学生だけど、中身は同じぐらいか上ぐらいで……深く考えない方がいいな。うん。
『雷門中学は、地区予選大会においてあの帝国学園を降した恐るべしチーム!伝説のイナズマイレブン再びと、注目が集まっております!!』
そんな煽り文句と共に、歓声を浴びながら入場する。
ふと観客席の方を見ると、音無の隣に座ってる角馬が盛大に涙を流している。
………えっ。これもしかして、お前が考えたの?だとしたらありがとうな。角馬。
『さらに昨年の優勝校、帝国学園が特別出場枠にて参戦!!関東ブロックで地区予選決勝において、雷門中と死闘を繰り広げながらも惜敗した超名門帝国が、特別枠にて王者復活を狙います!!』
続いて、帝国学園が入場し、オレ達の隣に並ぶ。
「足の怪我はもういいのか?」
「人のことより自分たちの心配をしろ。全国は今までとは違うんだぞ」
「だから燃えるんだろ」
「オレ達に勝っておきながら、このスタジアムで無様に負けたら許さんからな」
「おう。帝国こそ、負けるなよ」
円堂と鬼道のやり取りを、オレは後ろから聞いている。
円堂は地区予選決勝が終わった後、帝国スタジアムで鬼道と話をしていたらしい。
そこで、円堂は帝国が全国大会に特別枠で出場することを知り、2人は全国大会での再戦を誓ったようだ。
「………………」
「お?なんだよ、半田。ずいぶん難しい顔してよ」
「…………やっぱり。開会式とは言っても、いざこの場所に立つと、時間差で緊張してきてさ」
「なんだ、お前でも緊張するのかよ。オレ達の中でもわりと冷静っぽいことしといてよ」
「………えっ、オレってそんなだった?」
「いや、オレ達の中でって、平均よりも上みたいな話だよ。一番冷静なのって豪炎寺とかだろうけどよ」
「……そういうことか」
隣から話しかけて来た染岡に、そう返す。
オレは、知っている。この大会において、雷門と帝国の再戦の約束が果たされないということを。
『そして残る最後の1校。推薦招待校として、世宇子中学の参戦が承認されております!!』
「世宇子……?なあ鬼道、知ってるか?」
「………いや。オレも聞いたことはないな」
「変だな。推薦招待校なら、ある程度は名が通ってそうなのに」
「……………」
「……半田?」
「……いや。聞いたことがなくても、ここに推薦されて来たのなら、実力は確かなんじゃないかって思ってさ」
「まあ、それはそうなんだろうけどさ。鬼道ですら聞いたことないって、相当だと思うけど」
「それ、僕たちが言えることかなあ?」
風丸とマックスのやり取りを横目に、入場門を見据える。
そこからは、世宇子と書かれたプラカードを持ったお姉さん以外、誰もやって来なかった。
『えー、世宇子中学は、本日は調整中につき、開会式は欠場とのことです』
開会式にも姿を現さなかった世宇子中。
前回は開会式やトーナメント表でも、世宇子の名は出してなかったと思ったんだけど、オレの思い違いだったか…。
まあ、そこは置いておいて。これで全ての出場校が集まった。
あとは、ここから勝ち進むだけだ。
でも、その前に……。
「……鬼道」
「……?どうした、半田」
「……オレも、待ってるからな」
「……お前に言われるまでもないが、お前達も勝ち進むんだな」
世宇子に気を付けろ、と言いたかったが、そもそもまだトーナメント表が決まってなかった為、帝国の初戦が世宇子ということを、鬼道はまだ知らない。
それについて、オレは何も出来ずに、中途半端なことしか、言えなかった。
まあ描写されなかっただけで、前回も開会式出てると思います。