練習時間の間、最終調整として軽めの練習をしている。
わざわざ相手にこちらの手札を晒す必要もないからな。普通のパス練習やシュート練習が中心で、今はミニゲーム形式の練習だ。
こうしてると最初の1年を思い出すから、こういう練習もオレは好きなんだけどな。
「豪炎寺!」
「ああ!」
オレが豪炎寺に向けてパスを出し、それを追って豪炎寺がトラップしようとするが…。
「なっ…!?」
「はあ!?」
ゴールの向こうから誰かが走ってきたと思ったら、豪炎寺が受け取ろうとしたボールを横取りされた。
……おい、アイツまさか……。
「誰だ!」
「お前に名乗る名は無い…」
「なに!?」
「オレが用があるのは…お前だ!」
そう言って、豪炎寺に向けてボールを蹴り、豪炎寺はそれを受け取る。
「豪炎寺修也!オレと勝負しろ!」
「なに?」
「お前の噂は聞いているぞ、天才ストライカーなんだってな。オレは戦国伊賀島の霧隠才次」
「円堂にって意味なんだろうけど、すぐ後に名前名乗ってんじゃねえよ…。で?今日の対戦相手が、一体何の用だよ。こっち練習中なんだけど」
「オレも足には自信がある。どっちが上か決めようじゃないか。ここからフィールドをドリブルで往復して、速さを競う。簡単だろ?」
「断る。迷惑だ」
そう言って、豪炎寺はボールを投げ返す。
まあ、当然だよな。オレ達練習中だっての。
「なにっ!?逃げるのか!?腰抜けめ!」
「腰抜けだと!?」
「お前には言っていない!」
「円堂。気持ちは分かるけど落ち着け」
「けどさ!」
「あのさ、霧隠。お前から勝手に吹っかけた勝負に受けなかったからって、腰抜けって言うのはおかしいだろ。たしかにストライカーでもドリブルも必要だけど、豪炎寺の場合はそこまで必要じゃない。お前だって豪炎寺が使う技の1つぐらい知ってるだろ?アレ使うのにドリブルが重視されるかよ。そもそもエースストライカーって知っててなんでドリブル勝負挑むんだよ。そこは普通シュート勝負じゃないのかよ。あと何度でも言うけど、オレ達練習中なの。そこに突然割って入って来て、なんで勝負引き受けられる前提なんだよ。当たり前だけどアポ無しで来てるんだから、断られる可能性のが大きく…」
「す、ストップストップ半田!!霧隠が半泣きになってるから!!」
「えっ?あっ…」
「お、覚えとけよ!お前!!!」
円堂を落ち着かせるためにオレが割って入ったら、何故かその円堂にオレが落ち着かされて、目の前の霧隠が半泣きになっていた。
それに気づいた途端に、そんな捨て台詞を残して忍び式の瞬間移動みたいなのでいなくなった。
「……………あーあ。半田、対戦相手いーじめた。いけなーいんだ」
「い、イジメ…!?イジメてないだろ!!」
「だってあんな幼気な戦国伊賀島キャプテンを正論で詰めてたらねえ…」
「ぶっちゃけ、オレもあそこまで詰められたらと思うと…ちょっと怖いッス……」
「…………気のせいじゃなきゃ、目もハイライト消えかけてた」
「……よーしお前ら、練習へ戻るぞ」
「強引にも程あるでしょ……」
いや、まあ…正直詰め過ぎた自覚はあったけど、なんか勢いが止まらなくなっちゃって。
だって言い続けてる内に、段々ここおかしいだろってなるとこがわんさか湧いて来てさ……これアレだ。戻ってくる前に職場の先輩に扱かれたのが原因だろ。絶対そのせいだ。そうに違いない。
「……半田くんのあの目、他人のせいにしようとしてる目だね」
「えっ。つくしちゃん分かるの?」
………何も聞こえなかった。オレは何も聞こえなかったです。はい。
『さあ!これよりフットボールフロンティア全国大会初戦!雷門中学対戦国伊賀島中学の試合が始まります!!』
「ポジションは前回の帝国戦通りだ。栗松や目金もスタンバイしておけ」
「は、はい!」
「わ、分かってますよ!」
「ガッチガチに緊張してんなぁ。シャキッとしろよシャキッと」
「だ、だって!こんなに観客いるのなんて初めてでぇ…!」
「無理ないけどさ。そこでガッチガチに緊張してる方が注目されるぜ?ほら、雷門も言ってただろ。シャキッとしろって」
「い、言ってたでやんすか…?」
「似たようなこと言ってただろ」
「まあ、必ず勝てよとは言われたかな。だったら、しっかり構えてた方がいいだろうし、シャキッとな!」
オレと風丸で、硬くなってた目金と栗松の肩を叩く。
風丸も面倒見良いんだよな。助かる。
「よし。じゃあ行こうぜ、風丸。いるんだろ?宮坂」
「……!ああ!!」
オレがそう言いながら観席を親指で指すと、ちょうどそこに宮坂がいたらしく、風丸が気合を入れ直している。
風丸たちが炎の風見鶏を決めやすくできるよう、立ち回るかな。
「……!お前、見てろよ!オレの力を見せつけてやる!」
「えっ…なんでオレに対抗心燃やすの…。馬鹿にしたつもりも無いのに…」
「まあまあ。スピードが自慢みたいだろうから、なるべくオレが引き受けるよ」
オレと風丸がポジションに着こうと移動してると、向こうからクソガk…いや霧隠がオレに威嚇して来た。
泣かれるよりは全然良いんだけど、キャプテンでフォワードな奴が、たかが普通のミッドフィルダーに威嚇するなよな…。
「よーしみんな!全国の舞台だろうと、オレ達のサッカーを忘れるなよ!」
『おお!』
そんなことがあった内に、円堂の号令が入り、試合開始の笛が鳴る。
こちらのフォーメーションはいつものツートップ。いつもの中盤に、守備陣は風丸と壁山に土門と影野。まあいつものだな。
雷門ボールで試合が始まり、これまたいつものごとく、オレにボールが回ってくる。
「お前!オレと勝負しろ!!」
「勝負挑めたら誰でもいいのかよ!?」
オレがドリブルで攻め込んで行ったら、目の前に霧隠が現れた。
簡単には抜かさないと、執拗にボールを奪おうとしてくるため、オレも細かい足技を絡めてボールをキープしている。
「どうしたどうした!オレ1人抜かせられないのか!」
「しつこ過ぎるぞお前!!」
「半田!こっちだ!!」
「……ッ!風丸!!」
後ろから風丸の声が聞こえた為、バックパスで風丸にボールを渡す。
必殺技だけじゃなく、基礎的な練習も忘れてなかったからここを切り抜けられたが、もうちょっと磨くべきかな…。
「ふん。味方がいなければ突破できなかったか」
「おい、サッカーは個人プレーだけじゃなくてチーム競技だろ。そこは分かってるはずだと思ったんだが」
「………なるほど。アイツのスピード、なかなかだな」
「話聞いて…いや、試合中だからそりゃそうなんだけど…」
オレの話を聞いてるのかすら怪しいが、あの目は次の獲物を見つけた狩人の目だった。
いやおかしいだろ。忍者ってそんな好戦的だったけ。絶対違うだろ。
「宍戸!」
「は、はい!!」
「伊賀島流忍法!影縫いの術!!」
「うわぁ!?」
風丸が宍戸にパスを出すも、ディフェンダーの必殺技によって防がれてしまう。
「こっちだ!」
「行け!霧隠!!」
「やらせない…!コイルターン…!!」
ボールを受け取った霧隠に影野が立ちはだかり、必殺技のコイルターンでボールを奪おうとするが…。
「………えっ?」
「何をしている?オレはここだ!!」
「い、いつの間に……!」
「ふん、伊賀島流忍法!残像の術!!」
「シュートを打たせるな!守りを固めろ!!」
円堂の指示により、影野を除いたディフェンス陣や、戻って来ていたオレや少林がシュートを打たせまいとシュートコースに立ちはだかる。
流石にこれだと、シュートを打ってこないだろう。
「伊賀島流蹴球戦術!集結!!」
『応ッ!!』
「えっ」
と思ったら、霧隠の横に7人ぐらい集まって、隊列を組んできた。
…………ヤバい!これって確か……!!
『偃月の陣!!』
「なにっ!?」
巻き上げた土煙を巻き上げながらフィールドを突き進み、オレ達守備陣は吹き飛ばされる。
そういえば…こんなことして来たよな……!!
「あとはお前だけだ!伊賀島流忍法!土達磨!!」
偃月の陣の中から霧隠が飛び出し、打って来たシュートは土を巻き込んで巨大化していき、霧隠が土達磨を解除すると、勢いはそのままにボールが突き進む。
「くっ…!熱血パンチ!!」
ゴッドハンドを溜める時間が無く、円堂は熱血パンチで防ごうとするが…。
「ぐうう…!うわあ!?」
防ぎ切ることは出来ず、点を奪われてしまった。
「見たか!オレの力、伊賀島流忍法を!!」
「くそっ…これが全国か……!!」
分かってはいたが、地区予選ですら実力者揃いだったのに、全国大会となると精鋭揃いにまで広がる。
食い付いて行きたいが、さっきの偃月の陣が厄介すぎるな…!!
偃月の陣とかいうゴリ押しの極みみたいな必殺タクティクス。けっこう好きっす。