ただ世宇子はマジの無名らしいんで、そりゃあ雷門以上の番狂わせですわよ。
戦国伊賀島との試合が終わり、オレ達は次の試合に向けてイナビカリ修練場で特訓をしている。
「わわわわ!?」
「壁山ー。それ足止めるとすぐ持ってかれるから気を付けてよー」
「は、はいいいいい!!」
「くそっ…!やってやらあ!!」
「染岡もー。それ永遠に続くから限界感じたら飛び降りなよー」
「分かってる!!」
「うーん……」
「どうしたの?半田くん」
「いや、イナビカリ修練場で特訓して、力を付けてきたとは思うんだよ。たださ、いきなりこんな力付けたりして、身体が追い付くのかなと思ってさ」
「ああ…なるほどね。でも、栗松くん達も新しい必殺技使えるようになってたし、そこまで心配しなくてもいいんじゃないかな」
「…………うーん………」
(あっ、これは他にも悩みを抱えてる顔かな…)
今も特訓を続けてる染岡や壁山を見ながら、思う。
ふと思い返しながら、KFCの練習を見てた時も感じてたことと重なっているんだ。
例えばいきなり強い必殺技を覚えると、身体がそれに追い付かことが出来なくて、すぐにバテてしまうというのは何度かあったことだ。
急激な成長に身体が追い付かなかったり、周りもそれに合わせられなかったりと、弊害もあった。
まあ、実際にそうなるかはまだ分かんないんだけどさ。
「そういえば、そろそろ帝国の試合結果が出るころじゃないかな。試合終わってる頃だと思うし」
「帝国の心配より、次の僕たちじゃない?対戦相手はまだ分からないとは言え、戦国伊賀島も強かったし、同等かそれ以上って思わないと」
「そうだな!鬼道と約束したし、オレ達も頑張らないと」
「………………」
……………帝国の試合結果、か。
たしかに、そろそろ結果が出るはずだ。
「て、帝国学園が……!」
「初戦突破か!」
そう思ってた時に、音無がイナビカリ修練場に飛び込んで来た。
勝利を信じていた円堂は、豪炎寺と拳を合わせている。
「10対0で……」
「結構な点差だね」
「世宇子中に、完敗しました……」
『えっ…?』
その場にいた円堂、豪炎寺、染岡、マックス、壁山、そして大谷の声が響く。
オレも初めて聞いた時は、とても信じられなかったことだが…。
「嘘だろ…?音無…」
「ガセじゃねぇのか!?あの帝国が初戦で負けるワケがねえだろ!?」
「し、しかも…10対0って……」
「………帝国が1点も取れなかった。そういうことになるけど」
「音無!どういうことだ!?」
「待てよ円堂。音無に詰め寄るのは違うだろ」
「………」
「………悪い。10対0って…どうなったんだ」
「……見たこともない技が次々に決まって、手も足も出せなかった……みたいです……」
「あの帝国が……」
「そんなワケない!帝国だぞ!?」
音無の話を聞いても、円堂はその事実を認めることは出来なかった。
正直、オレの記憶違いなり、微妙に異なる影響で、帝国が世宇子を破るかもしれないと思っていなかったワケじゃなかったが……。
流石に、そんな大きな差は無ければ、こんなこと、忘れるはずがなかった。
「アイツらの強さは、戦ったオレ達がよく知ってる…!アイツら本気で強いんだ…!!鬼道がいるんだぞ!?」
「お兄ちゃん…出なかったんです……」
「えっ…?鬼道くん、試合に出なかったの…?」
「はい…。お兄ちゃん、この前の試合で怪我したじゃないですか…。相手はノーマークの学校だったから、大事を取って控えに回っていたんです……。そうしたら相手が圧倒的で………」
「……無理して出場しようとした時には、帝国のみんなは既に……ってことかな」
「あの鬼道が……そんなこと絶対にあり得ねえ!!」
「キャプテン!落ち着いて欲しいッス…!!」
「落ち着いていられるか…!鬼道たちが完敗なんて…あり得ねえ!!」
「あっ、キャプテン!」
「円堂!!」
そう言った円堂は、イナビカリ修練場から飛び出して行った。
心のどこかでは事実だと分かっていても、素直に認めることは出来ないよな……。
「円堂……」
「……帝国に行ったんだろうね。少なくとも、鬼道がいるだろうし」
「ど、どうすればいいんすかね……」
「……………ひとまず、円堂の自由にさせよう。アイツのことだから、悪い方向にはならないはずだ」
「それは…そうだろうけど………」
「………あんな中途半端なことじゃなくて、もっと言えてれば……!」
「半田くん……」
今回も鬼道が雷門に来るかは分からない。
あの時、初戦から警戒しろよとか言えたらと、オレの中に後悔で埋め尽くされたが、それでも世宇子に勝てるとは思えなかった。
それからしばらくして、円堂が戻って来たことが確認出来た。
どうにも、帝国から鬼道の家に行き、しばらく話をしていたらしい。
少なくとも、円堂は大丈夫そうだけど………。
「全国大会二回戦の相手は、千羽山中に決まったわ」
「千羽山中か…それと、もう大丈夫なのか?」
「ええ。無理にお見舞いに来なくていいって、言われたから」
「そっか。でも理事長が目を覚ましてくれて、よかったな!!」
「だな。あとは冬海先生なんだが……」
「いつ目を覚ましてもおかしくないみたいなんだけどね…」
「早く目覚まして焼肉奢れよな」
「とうとう隠さなくなったな…」
なんか聞こえた気がするけど、スルーするぞスルー。
で、次の相手の千羽山か…。アイツらの守備は厄介だな。
「千羽山中ですが、山々に囲まれて大自然に鍛えられた選手達がいるそうです」
「きっと、自然に恵まれた環境なんすね〜」
「みんなのんびりしてそ〜」
「壁山と少林も釣られて長閑になってるぞ」
自然に恵まれたって言うか…。たしか千羽山中って、文字通り山の上になかったっけか?あそこで試合するの、けっこう怖かった記憶あるんだけど。
………そういや、初戦の戦国伊賀島と言い、試合の場所ってフットボールフロンティアスタジアムだな。
前回はたしか、相手の学校まで行ってたはずなんだけど……。
「千羽山中は、無限の壁と呼ばれる鉄壁のディフェンスを誇っています。未だかつて、得点を許していません」
「えっ…全国大会まで?」
「はい。1点すら、ですね」
「無失点神話……って言うのかな」
「その反面、シュート力に欠点があるそうなんですが…。鉄壁の守備で、ここまで勝ち進んで来たようですね」
「ってことは、その無限の壁を打ち破ればいいんだな!」
「破ればいいって…」
「簡単に言うよね…」
「………破れないから、鉄壁なんじゃないかな」
影野に呟きに、みんなが揃って頷く。
いや、たしかに破るしかないんだけど、簡単には行かないよな…。
「鉄壁って、鉄の壁だろ?」
「まあ、意味はそうだな」
「だったら!こっちはダイヤモンドの攻めをすればいいんだよ!」
『はあ!?』
「鉄壁のディフェンスを崩すまで攻めまくる!これがダイヤモンドの攻めだ!!その為には特訓だ!!」
『おー!!…………んんん?』
特訓だーの声に合わせて声を挙げたオレ達だけど、やっぱりダイヤモンドの攻めって言葉に意識を持ってかれたままだった。
実際どうなのかは知らないけど、ダイヤモンドぶつけまくっても鉄は壊せないんじゃないか?言わないけど。
その後の練習なんだけど、オレの心配が的中したのか、宍戸が送ったマックスのパスが明後日の方へと向かったり、ドラゴントルネードが豪炎寺が打ってすぐに離散したりと、いつも通りにいかないことが続いた。
そんなことがあって、今は休憩の時間だ。
「おっ、このレモンの蜂蜜漬けいいなあ」
「そう?作った甲斐があったわ」
「えっ、これ夏未の手作りなのか!?すごいな!」
「ひ、暇だったのよ…。喜んでくれたなら、嬉しいけど」
「雷門もマネージャーが板についてきたな。ん、このキュウリもいいなあ。浅漬けかな。これも雷門が?」
「いいえ。それは…」
「わ、私……」
「えっ、大谷だったの?すごいな。オレ好きだよ、これ。汗かくと塩味欲しくなるから、ちょうど良くて」
「そ、そう……?お婆ちゃんに教わったんだ…」
「へえー。うん。やっぱ好きだな、これ。次からも頼める?」
「う、うん!用意しておくね!!」
雷門はともかく、大谷もマネージャーが板に付いてきて、頼りになるな。いや、美味いなこれ。
キュウリを摘みながら、さっきから声が聞こえる円堂たちの方に行く。なんかしゃがんで落書きしてるように見えるんだけど、なにやってんだ。
「なにしてんだ?」
「ああ、半田。いやさ、オレがアメリカにいた時の必殺技の説明をな」
「なあ土門。なんでそうなんだよ」
「だからさ、こうして力がぶつかるだろ?そうすっと、こうなんだよ」
「ああ、そうか!なるほど!おもしれー」
「えっ。円堂、今ので分かったの?なんで分かるの?」
この絵を見る限り、多分ザ・フェニックスのことなんだろうけど、なんか中心点のとこ微妙に違うような…って、豪炎寺が門の方向いてるけど、どうしたんだ。
「………半田、着いてきてくれるか」
「えっ」
みんなに一言伝えてから雷門中から離れて、もう夕方になる河川敷にまで移動した。
オレと豪炎寺は橋の上にいて、その視線の先にいるのは……。
「音無と…鬼道、か。何を話してるのかは聞こえないけど……」
「…………」
「……豪炎寺?」
「遠くからでも、ゴーグル越しでも分かる。アイツのあの目はな」
「いや、豪炎寺。それはいいとして、いつの間にボールなんて持ってたの?」
「フッ……!」
「豪炎寺??」
一瞬オレの目がおかしくなったかと思ったが、どうやら現実だった。
豪炎寺が炎を纏ったボールを、鬼道の方へと打った。
えっ、マジでお前なにしてんの??鬼道が跳ね返さなかったら、音無も危なかったと思うんだけど。
「豪炎寺か!それに、半田……?」
「いや、悪いけど鬼道。今のは豪炎寺の独断だからな」
「豪炎寺先輩!半田先輩!!お兄ちゃんは別に、スパイをしていたワケじゃないんです!本当です!!」
「分かってるよ、音無。酷い言い方だけど、今の鬼道がオレ達を偵察したところで、意味は無いしな」
「お兄ちゃん……か」
「えっ。豪炎寺お前、そこに引っかかるの?」
「豪炎寺先輩!!」
「……来いよ」
「……ああ」
豪炎寺が促し、鬼道と共に河川敷グラウンドに降りる。
グラウンドに降りるからには、やるのはサッカーだろうから、心配はいらないだろうけど……。
「………音無。何があったんだ?」
「……雷門中のグラウンドから、お兄ちゃんが見えて…。追い掛けて、話をしてたんです。お兄ちゃん、雷門のみんなが眩し過ぎるって……。悔しいなんてものじゃないって……」
「……………そっか」
グラウンドを見れば、豪炎寺と鬼道が互いにボールを蹴り合っていた。
サッカーと言えばサッカーなんだが、互いにボールをぶつけ合う、ドッジボールみたいなことになってるな。
「鬼道!そんなに悔しいか!!」
「悔しいさ!!世宇子中を!オレは倒したい!!」
「だったらやれよ!!」
「無理だ!!帝国は…フットボールフロンティアから敗退した……」
「自分から負けを認めるのか!鬼道!!」
「……ッ!!」
しばらくのぶつかり合いの末、豪炎寺が放ったファイアトルネードによってボールがパンクし、豪炎寺と鬼道は互いに向き合った。
「……1つだけ方法がある。お前は円堂を、正面からしか見たことがないだろう。アイツに、背中を任せる気は無いか?」
「なっ……!?」
……なるほどな。
「………オレも、正面に立つんじゃなくて、隣に立ちたいって言うなら、待ってるぜ。鬼道」
「豪炎寺先輩……半田先輩………?」
「………行こうぜ、豪炎寺。そろそろ完全下校時間だ。カバン取りに行かないと」
「……………」
そうして、オレと豪炎寺は河川敷から立ち去り、音無もちょっと遅れて、それに続いた。
残ったのは、パンクしたボールを見つめている鬼道だけだった。
そして迎えたフットボールフロンティア全国大会二回戦。
オレ達の前に、見慣れた帝国のユニフォームや赤いマントじゃなく、雷門のユニフォームと青いマントを身につけた鬼道が、そこにいた。
丸々アニメ1話分やりましたねコイツ。
まあ分散させることもないし、オリジナル要素入れることもなかったんで、こういう形になりました。
あんま原作と流れそのままってのはやりたくないんですけど、話進めたいってのが勝っちまいました。