イナズマイレブン〜中途半端な逆行〜   作:トライデント

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初期案では打ち砕けじゃなくて打ち砕ーくっ!でした。


無限の壁を打ち砕け

あれから前半終了まで攻め続けたが、得点には繋がらなかった。

ドラゴンクラッシュとドラゴントルネード、イナズマ落としまでやったものの、まき割りチョップや、本命の無限の壁で防がれた。

 

 

「豚の鼻くそずら」

「牛のフンずら」

「腐った卵ずら」

 

 

毎度止める度にそんなこと言うもんだから、気になって仕方ない。

イナズマ落としは腐った卵とか言ってたけど、どういうことだよそれ。

 

 

「次々にシュートが止められてるわね…」

 

「イナズマ落としが止められてるとなると、炎の風見鶏か、イナズマ1号でしょうか?」

 

「それとも、イナズマ1号落としかな…」

 

「帝国でやった連続シュートは多分通用しなさそうだし、その辺りになるか…」

 

「イナズマ1号落としするなら、シュートに3人必要だよなあ…。アイツらマークも徹底してるし、隙をつければいいんだけど」

 

「そもそも円堂を上がらせるチャンスを作れるかだな…」

 

「………ふむ」

 

 

そんな話をしている横で、鬼道が円堂の方をジッと見る。

たしかに、イナズマ1号落としやるなら円堂が必要だけど、円堂を上がらせるのはリスクもある。

タイミングが重要だろうけど、そこは鬼道に任せるか。

今回のオレの役目は、千羽山の守備を突破してパスを出すことになりそうだしな。

そう考えてるうちに、鬼道が全員の前で口を開いた。

 

 

「染岡。後半のしばらくはお前のワントップで頼みたい」

 

「染岡のワントップ?」

 

「あ?なんだそれ。考えでもあるのか?」

 

「無限の壁の弱点を突く。たしかにあれは鉄壁に相応しいが、3人による連携技という弱点がある」

 

「ああ、なるほど!さっき円堂を上がらせるのに悩んでたように、ディフェンス2人とキーパーがいなきゃ、そもそも無限の壁を使えないからな!」

 

「じゃあ要するに、オレが片方を引き付ければいいのか」

 

「ああ。出来るだけ5番のディフェンスを4番から引き離してくれ」

 

 

なるほど。それは良い手だな。

そうなると、さっき考えた通りオレはパス回しやディフェンスを崩すことを優先した方がいいだろうな。

 

 

「鬼道。後半もパス回しや守備を崩すことに集中すればいいか?」

 

「……そうしてもらえると助かる。それと、お前もサイクロンを使えるなら、カウンターもしやすくなる」

 

「たしかに、奴らの守備は一級品だけど、それ以外は付け入る隙もあるからな。任せとけ」

 

「…………」

 

「………?どうしたよ、鬼道。そんな間抜けな顔して」

 

「そんな顔はしてないだろう」

 

 

たしかにまあ、ちょっと意外そうな顔をしてただけだけどさ。

なんか鬼道のそんな顔を見るの珍しいからな。何があったよ。

 

 

「………お前たちがオレの指示に素直に従うのが珍しいと思ってな。来たばかりの余所者のオレに、雷門の指示を握らせることに不満を抱くかと」

 

「………なるほど」

 

 

オレが本当に中学2年生の頃の若いオレだったら、宍戸を差し置いてやってきた鬼道が指示を出していることに反感を抱いていたとしても、不思議ではないと自分でも思う。

染岡もまあ、似たような感じなのは分かる。

ただ、鬼道は悪意があってそういう指示を出すようなヤツじゃないってのは分かってるし、考えがあるのかって聞いてたしな。

 

 

「鬼道。お前一つ勘違いしてるぞ」

 

「……どういうことだ?」

 

「たとえ指示を握る人が変わったり、フォーメーションやポジションが変わったりしても、雷門のサッカーは変わったりしないんだよ。そのことは、ある意味お前が一番分かってると思うんだけどな」

 

「……………」

 

 

心当たりがあるような無さそうな微妙な顔をしている鬼道を横目に、ポジションに付く。

その内分かるだろうから、オレからは何も言わない。

今は無限の壁を破ることに意識を向けないとな。

 

 

『おーっと雷門中、大きくフォーメーションを変えてきたぞ!豪炎寺を中盤に下げ、染岡のワントップ!どのようなプレイを見せるのか!!』

 

「1点を取りに行く…まずはそこからだ」

 

「ああ。絶対に、だな」

 

「どんな形で来ようと、おら達のディフェンス、無限の壁を破ることは出来ないっぺ!」

 

「言ってろ。その自信、へし折ってやる。鬼道たちがな」

 

「おめえじゃねえのか!?」

 

 

そんなことを言い合ってるうちに、試合開始の笛が鳴り、千羽山ボールで後半が始まる。

よし。まずは作戦通り、豪炎寺にボールを渡すぞ。

 

 

「追加点を奪って、試合を決めるっぺ!」

 

「やらせない!クイックドロウ!」

 

「うわっ!?」

 

「いいぞ!マックス」

 

 

久しぶりにマックスのクイックドロウ見た気がするな。

そのまま持ち込んで、上手く豪炎寺に渡せば…。

 

 

「うしろのしょうめん!!」

 

「うわああああっ!?」

 

「えっ、なっ、はあ!?」

 

 

そんな声が聞こえたと思い、奥の方に向けていた視線をマックスの方に戻すと、マックスが吹っ飛んでいた。

何が起こったと思いボールの行方を探すと、千羽山のディフェンスの芹沢がボールを持っていた。

………おい。これってまさか。

 

 

「審判!今のディフェンス技はファールだろ!!帝国のジャッジスルーはボール越しだったからまだしも、今の確実に膝カックンしてただろ!!」

 

「…………?」

 

「審判仕事しろよ!?」

 

 

なんで見てないんだよ!たしかにあの必殺技使われるとき、何故か審判がよく見てないことが多く、ファールが取られないことも少なくはなかったけど、やっぱ納得いかないって!

 

 

「だったら奪い返させてもらうからな!サイクロン!!」

 

「くうっ!」

 

「半田!そのまま持ち込め!!」

 

「ああ!!」

 

 

オレがボールを奪い返し、鬼道の指示が聞こえ、そのままボールを持ち込む。

 

 

「よし…!」

 

「そうは行かないっぺ!」

 

 

オレが攻めあがると同時に、染岡もラインを上げる。

そうすることで、塩谷も染岡を追いかける。

上手く染岡が引き付けてくれている所に、豪炎寺と壁山が上がっているのを確認する。

よし、ここだ!

 

 

「いけ!!」

 

『イナズマ落とし!!』

 

 

塩谷をかなり引き付けることが出来た。これなら…!

 

 

『無限の壁!!』

 

 

はっや。えっ、なに今の。染岡の所から凄い速さでゴール前まで行ってたけど。

オレは今の流れ見てたから分かるけど、じゃなかったらホント一瞬で移動したように見えるぞアレ。

 

 

「ふー…危なかったっぺぇ…」

 

「アイツ、いつの間にゴール前まで…」

 

「なんてスピードだ…」

 

 

この作戦は、2度目は通じないだろう。

オレ達に残されたのは、正面から無限の壁を崩すことになるんだが…。

 

 

「壁山!もう一度イナズマ落としだ!!」

 

「はいっす!行くっす…」

 

「やらせないっぺ!牧谷!」

 

「おお!」

 

『ハーベスト!!』

 

「う、うわあああああ!!?」

 

 

強烈な二人掛かりのスライディング、ハーベストによりボールを奪われる壁山。

 

 

「う、ううう…」

 

 

しかも今ので足をやられたようだな…。

見たところ、地区予選決勝の鬼道ぐらいの負傷具合だけど、無理をさせるワケにはいかない。

 

 

「栗松、壁山と交代だ」

 

「は、はいでやんす!」

 

「すまないっす、みんな…」

 

「気にするな。無理をされて身体を壊す方がまずいからな」

 

 

ただこれにより、イナズマ1号落としは出来ないな。

かと言って壁山に無理をさせるつもりはない。ゆっくり休め。

雷門ボールで試合が再開され、鬼道は風丸たちにボールを渡す。

 

 

「風丸!豪炎寺!!」

 

『炎の風見鶏!!』

 

『無限の壁!!』

 

 

炎の風見鶏も防がれてしまう。

今の弾かれ方を見るに、オレのローリングキックを足しても防がれるな…。

 

 

「くっ…」

 

「鹿のフンずら」

 

「よく分かんないけど、余裕そうだなアイツ…」

 

「…となると、アレしかないか」

 

 

そうなると、オレ達にはイナズマ1号しかないな…。

もしイナズマブレイクが使えるなら、無限の壁を破れるはずなんだけど…。

 

 

「くっ…」

 

 

鬼道はさっき雷門に来たばかりだし、響木さんからイナズマブレイクを伝授されていない。

どうしたものか…。ひとまず、イナズマ1号を打てないと話は進まない。

 

 

「ボールを前線には上げさせないっぺ…!」

 

「しつこいなぁ…!」

 

 

ボールを奪おうとする山根から、キープを続けて持たせてるマックス。

あの状況をずっと続かせるワケにはいかないけど、前線には上げられないしな…。

……待てよ?前線には?

周りを見わたせば、染岡や豪炎寺、鬼道やオレ達にマークが多くついている。

そこで思い出す。千羽山のフォーメーションはワントップ。正確にはキャプテンの原野もフォワードだった気もするが、ミッドフィルダーの位置にいるため、実質ワントップと考えていい。

さらに、元々千羽山はディフェンス重視のフォーメーション。現にセンターサークルから雷門側のフィールドには、千羽山のプレイヤーは2人ぐらいしかいない。

となると、これは……!!

 

 

「円堂!!」

 

「えっ…あっ!!」

 

「松野!バックパスだ!!」

 

「えっ?」

 

 

鬼道も同じことを考えてたみたいだな。

オレが円堂に声をかけると、意図を察した円堂はゴールから攻めあがる。

鬼道の声が聞こえたマックスが雷門側ゴールに目を向けると、円堂の姿が見えたのだろう、すぐに対応してくれて、パスが通った。

 

 

「行くぞ、豪炎寺!」

 

「ああ!」

 

『イナズマ1号!!』

 

 

イナズマ1号落としには劣るも、現状オレ達のトップクラスの火力を誇るシュート、イナズマ1号が千羽山ゴールへと向かう。

 

 

『無限の壁!!』

 

「……なっ、ゴールライン…。チッ、ミスったぜ」

 

 

惜しくも無限の壁に止められてしまうも、今までと違いゴールライン外へとボールは弾かれ、オレ達はコーナーキックの権利を得た。

 

 

『イナズマ1号も止めたぞ千羽山中!これが鉄壁のディフェンス!無得点神話は伊達ではない!!』

 

「イナズマ1号まで止められたか…」

 

「……ん?おいみんな!どうしたんだよ?」

 

 

円堂がそう言い、オレも周りを見てみると、みんな顔が沈んでいた。

豪炎寺や染岡はそうでもないが、鬼道の顔色も若干優れない。

イナズマ1号を防がれたとなると、イナズマ1号落としが使えないこの状況、手詰まりだと思うよな…。

 

 

「何ヘコんでんだ!試合はまだ終わってないんだぞ!!まさか、諦めるって言うんじゃないだろうな!?風丸!少林!土門!」

 

「でも、無限の壁が破れないんじゃ…」

 

「やっぱり必要なんだよ。必殺技が…」

 

「必殺技ならある!!」

 

「えっ…?」

 

 

無限の壁を破るために必殺技が必要と言う土門に対して、必殺技ならあると言い切る円堂。

ああ。たしかにオレ達には、必殺技…と言えるかは分からないけど、千羽山に負けてないものなら、ある。

 

 

「オレ達の必殺技は、ドラゴントルネードでも、炎の風見鶏でも、イナズマ1号落としでもない!オレ達の本当の必殺技は、最後まで諦めない気持ちなんだ!!」

 

「諦めない…気持ち…」

 

「そうだな。尾刈斗の時だって、最後まで諦めなかったから、ゆがむ空間を破れたんだ」

 

「地区予選の時も、戦国伊賀島の時もだ。諦めなかったからこそ、オレ達はここにいる」

 

「何より!最初に帝国と戦った時からそうだった!!最後まで諦めずに戦い切ったからこそ、雷門中サッカー部は始まったんだ!!諦めない気持ちこそ!オレ達の原典なんだ!!」

 

 

その円堂の声と、それに続いた染岡と豪炎寺の声によって、みんなの表情が明るくなる。

オレは驚いて固まっている鬼道の方に近づく。

 

 

「言っただろ、鬼道。雷門の、オレ達のサッカーは変わったりしないって。今ならそれを、お前も分かるだろ?」

 

「……これが、円堂と共に戦うということ…。雷門の本当の強さなのか…」

 

「覚悟しろよ、鬼道。お前も雷門の一員になったんだ。やってもらうぜ、オレ達のサッカー!!」

 

「半田の言う通りだ!!残り5分!最後まで突っ走るんだ!オレ達のサッカーをやろうぜ!!」

 

「……ああ!!絶対に勝つぞ!!」

 

 

みんなの気合いも最高潮だ。

円堂も上がり、最後の全員攻撃と行こう。

 

 

「行くぞ!みんな!!」

 

 

オレのコーナーキックから始まり、ボールは染岡に渡るものの、綾野に弾かれる。

だがすぐに円堂がヘディングで弾き、マックスにボールが渡る。

 

 

「スパイラルショット!!」

 

「薪割りチョップ!!」

 

 

ゴールに近いところから打ったため、木枯らしが間に合わずに薪割りチョップで弾く綾野。

ボールは原野へと渡ってしまう。

 

 

「ボールを引き離すべ!ラン・ボール…」

 

「やらせるか!クイックドロウ!!」

 

「んだあ!?」

 

 

ここで風丸がクイックドロウを披露し、なんとかボールを奪う。

 

 

「半田!!」

 

「うしろのしょうめ…」

 

「やらせないっての!ジグザグスパーク!!」

 

「んぐぐぐ!!?」

 

「染岡と豪炎寺にはマークが…。だったら!鬼道!!」

 

 

比較的フリーだった鬼道にボールを渡す。

しかしそこに、3人のディフェンスが立ちふさがる。

 

 

『かごめ、かごめ、かーごめかごめ』

 

「くっ…」

 

 

千羽山のディフェンス技、かごめかごめが使われようとする。

ここでボールを奪われると、後がないが…。

周りを見れば、3人が鬼道に行った分、円堂がフリーになっている。

それを確認した円堂は、鬼道の方へと走る。

 

 

「……そうか!豪炎寺!!」

 

「…っ!ああ!!」

 

「鬼道!お前も加れば、イナズマ1号を超えられる!!」

 

「イナズマ1号を…!?し、しかし…この状況で…!!」

 

「場所ならあるだろ!!」

 

「…っ!?そうか!」

 

 

オレが上を指すと、その意図が通じた鬼道がボールを打ち上げる。

打ち上げたボールは、イナズマを纏って落下する。

 

 

「行くぞ!!」

 

『ああ!!』

 

 

それを追って飛び上がった円堂、豪炎寺、鬼道の3人。

空中にあるボールに向かった3人が同時に放ったシュートは、激しいイナズマが込められ突き進む。

 

 

『無限の壁!!』

 

 

無限の壁に当たったボールは、その勢いを弱めることはなく、徐々に壁を崩していく。

 

 

『うわあああああ!!!?』

 

 

そしてとうとう、無限の壁を打ち砕いた。

 

 

『……………はっ!無限の壁が破られたあああ!!千羽山、遂に失点!無失点記録が途絶えたぞおおお!!!』

 

 

少しの静寂の間、歓声と共に角馬の親父さんの実況も響く。

オレがやったワケじゃないけど、スッとするな。

 

 

「すまない半田。助かった」

 

「オレは場所を教えただけだろ。しかし、こんな土壇場でよくあんなシュート打てたな」

 

「帝国の時から、オレもシュートを打っていただろう」

 

「まっ、そうだけどな」

 

 

ベンチの方から「無限の壁をブレイク、突き崩す。これこそまさに、イナズマブレイク…」って声が聞こえてきたけど、大谷たち全く聞いてないな。抱き合ってるし。

しかし、こんな土壇場でイナズマブレイクを覚えるなんてな。嬉しい誤算ってやつだ。

 

 

「よーし!あと1点、入れてくぞ!!」

 

『おお!!』

 

 

オレ達の気合いはまだまだ十分なものの、それに反して千羽山の雰囲気は大違いで、茫然としたまま動きが優れなかった。

絶対の自信があった無限の壁が破られたのなら、仕方のないことだと思うんだけど…。

 

 

「ジグザグスパーク!染岡!!」

 

「おう!ドラゴンクラッシュ!!」

 

「えっ……」

 

 

必殺技が通用しなくても諦めなかったオレ達雷門と、必殺技を破られて自信を喪失した千羽山。

この差は大きかったようだな。簡単に突破され、簡単にゴールを奪われ、勝ち越しを許した。

 

 

『ここでホイッスル!!雷門、絶体絶命の状況から逆転勝利!!準決勝へ進出だあああ!!』

 

「やったあああ!!勝ったんすね!!オレ達勝ったんですよね!!勝ったんですよね!?」

 

「ああ!勝ったぞ!オレ達!!」

 

「う、ううううう!!!」

 

 

感極まって飛び込んできた宍戸に対して、そう言う円堂。

それがトドメとなり、泣き出す。

 

 

「言っただろ、宍戸。絶対勝つって」

 

「は、半田さああああん!!」

 

「おいおい、泣くなって。こんなことで泣いてたら、明日どうなるんだよ」

 

「そ、そうですよね…!明日…えっ、明日?」

 

「ああ。言っただろ?宍戸」

 

 

オレは最高の笑顔を宍戸に向けながら、試合が始まる前のことを思い出させる。

 

 

「お前の悪い癖を、バキバキに叩き折るって」

 

「……………………」

 

 

それを聞いた宍戸は、完全に顔を固まらせながら、ジワジワとオレから距離を取る。

もちろんそれに合わせて、オレもジワジワと距離を詰める。

 

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 

反転する宍戸。

走り出す準備をするオレ。

 

 

「逃げますううううううううう!!!!!」

 

「逃がすかあああああああああ!!!!!」

 

 

急に走り出した宍戸だが、それを見越して準備していたオレはすぐに追いかける。

なんならスタートダッシュを完全に成功させたため、すぐに距離を詰めることが出来る。

逃げられると思うなよな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をやってるんだ、アイツは…」

 

「あ、はははは…。まあ、半田のことだからよ。宍戸を鍛えるんだと思うぜ」

 

「叩き折ると言っていたが」

 

「本当に叩き折ったりはしないと思うよ。半田くんだもん」

 

「…お前たち、よっぽど半田のことを信用してるな」

 

「だって、悪いヤツじゃなくて、サッカーへの気持ちが熱いことは、よく知ってるしな」

 

「私も。マネージャーになる前から、ずっと練習してたのを見てたから」

 

「……たしかに。オレもそう思うがな」

 

「……どうした鬼道。気になることでもあるのか?」

 

「いや。不信感を抱いたりしていることはない。半田はいいプレイヤーだというのは、戦っていたオレでも感じていたことだ」

 

 

ただ、気になる点が無いということではない。

地区予選決勝の頃から、周りのことをよく見ながらプレイする選手だなというのは感じていた。

それだけならいい選手止まりなのだが、気になるのは試合が始まる前の宍戸へのフォロー。

スタメンを奪ったオレが言うのもなんだが、お前の分まで頑張るなり、すぐ出れるようにしておいてくれと言うならまだしも、半田は『次にスタメンに入れるように練習を積もう』と言っていた。

これは、選手と言うより…。

 

 

「…………指導者、コーチ…だな」

 

 

まあ、そういう視点を持つ選手がいるというのは、聞かない話でもない。

オレは宍戸のアフロを雁字搦めにしている半田を見ながら、考えを落ち着かせる。

…………本当にアイツは何をやっているんだ…。




次回の宍戸の運命や如何に。
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