「キャプテン…その話、受けたんすか……?」
「当たり前だ!廃部になんて、させるか!」
1年たちが入ってきてから少し経って、なんか怒り気味の円堂が部室に入ってきた。そうだった、これぐらいの時期だったよな。
「相手って、あの帝国だろ?じゃあ、練習もそうだけど、メンツ揃えないとじゃん」
「は、半田先輩、乗り気なんですか…?」
「そりゃ、オレも廃部なんて嫌だしさ。お前もだろ?染岡」
「………まあな。たしかに、全然試合してなかったが、相手が帝国か。いいじゃねぇか!相手にとって不足ねぇ!」
「染岡先輩まで!?相手はあの帝国ですよ!?無理!絶対無理!」
「サッカーを愛する気持ちがあれば、不可能だって可能になる!何も始まってないのに、諦めちゃダメだ!」
「………そうだぜ、みんな。別に何もしてなかったワケじゃないだろ?絶対いける、とまでは言えないけど、始まる前から負ける気でやるサッカーなんて、つまらないだろ」
「…そう、ですけど…」
円堂が鼓舞して、染岡も乗り気だけど、やっぱり1年たちはビビってる。
オレも気持ちは分かる。前回のオレも、そっちの立場だったからな。
ほとんどなにもしてなかったオレたちが、あの帝国学園を相手に戦えるのかって不安は、オレにも分かる。
だけど、オレは…
「……さっきも言ったけど、サッカー部が廃部なんて、オレも嫌だからさ。最初で最後の試合なんて、させたくないだろ」
「…………オレも、イヤです…。わ、分かりました!一蓮托生ってやつですもんね!やりますよ!」
一番ビビってた宍戸が奮起したことによって、他の1年もやる気を出した。オレも、必殺技を磨かないとだな。
「染岡、練習に付き合ってくれよ。ローリングキック磨きたいからさ」
「いいぜ。オレも必殺技身に付けたいからよ」
「円堂くん。私たちは新しくサッカー部に入ってくれる人探そうよ」
「ああ!風丸にも声をかけてみるかな…」
「宍戸たちはこっち来るか?また河川敷行こうと思ってるんだけど」
「はい!オレ達も負けてられません!」
「帝国が相手でも、ぶつかってやるでやんす!」
「まだ少し怖いけど…オレもやるっす!」
少林や栗松に壁山も、この調子じゃ大丈夫だな。
染岡も1年の頃から本格的な練習をしてたからか、モチベーションは高い。前回も決して無かったワケじゃなかったけどさ。色んな意味で、オレが言えたことじゃないけど。
「……って、気づいたらオレしか残ってないじゃん。オレも行くか」
「…円堂くんたちが急いで出て行ったと思ったら、またキミだけですか。半田くん」
「って、冬海じゃん。何しに来たんだ?」
「……もういいです。夏未お嬢様から話を聞いたので、顧問として顔を出しに来ただけですよ。負けたら廃部なんて無茶苦茶な話とは思いますが、あの人の言うことなら、仕方ありませんからねぇ…」
って言いながらため息ついて汗拭いてる。まだ慣れないな、このフツーの先生してる冬海。
「……そっか。冬海は何も言わないのか?帝国と戦うなんて無茶だって」
「そりゃあ、無茶だと思いますよ。私よりキミ達の方がよっぽど分かってるとは思いますが、相手はあの帝国ですから」
「…………じゃあ、負けると思ってるのか」
「いえ、そうとは思ってませんけどね」
「………はぁ?」
なんだそれ。無茶だと思ってるのに、負けると思ってないって。
「円堂くんじゃありませんけど、やってみなきゃ分からないでしょう。それに、私も一応顧問ですからね。帝国学園ほどではありませんが、キミたちが河川敷で練習を積んでいるのは知っています。ありきたりな言葉ですし、必ずしもというワケではありませんが、努力は裏切りませんよ」
「……………」
「………やれやれ。自分でも言ってて恥ずかしくなりますけど、教師なんてそんなものです。ほらほら、染岡くん達が待ってるんでしょう?早く行きなさい」
「………ありがとな。冬海先生」
「……早く行きなさい」
……前回も影山と繋がってなければ、こんな…はねぇわ。流石に。
でも、今回の冬海は、ちゃんと顧問してるし、オレ達のことを考えてくれてる。
なんだ、けっこう心強いじゃん。冬海でも。
「やっぱり、あんま威力変わんないな…」
河川敷グラウンドでローリングキックの練習をしてるんだけど、ほんの少し上がってるぐらいなんだよな。
どうすればいいんだろ。すぐ思い付くのは、染岡のドラゴンクラッシュにオレのローリングキックを足すぐらいなんだけど、ドラゴントルネードと被ってるし、根本的な解決になってないと思うし。
あと、そのドラゴンクラッシュも今は…
「うおおおおおお!!!」
ドラゴンが出てないドラゴンクラッシュになってるんだよなぁ。
イメージ的には、宍戸のグレネードショットに近い。というかほぼそれ。
………でもたしか、ドラゴンクラッシュって帝国との試合の後から使えるようになってたよな。ドラゴン出てないとは言え、半分ぐらい出来てるって、すごいな。さすが染岡。
「くそっ!まだまだ足りねぇな…」
「でもすごいな、染岡。ミッドフィルダーなんだから当たり前だけど、オレのローリングキックよりすごいシュートだぞ」
「……そりゃあ、負けてられなかったからよ。雷門の点取り屋が覚えてなくて、ミッドフィルダーが覚えてるなんて、かっこつかねぇだろ」
「………そっか」
「…なぁ、半田。お前がローリングキックを覚えたときって、どんな感じだった?参考にしたい、聞かせてくれ」
「えっ?えーっと、それは…」
ヤバい。そりゃいつか聞かれるだろうとは思ってたけど、まさか最初から覚えてたなんて言えるワケないし、かと言って言い訳が考え付いてるワケでもないぞ
「……………オレがよくビデオで試合を観てたってのは、知ってるよな?その選手達が使ってる必殺技に憧れて、追いつこうとして、頑張って…って感じで練習をして、覚えたよ」
……嘘は言ってない。あの時も、最初から一緒だった2人、染岡はドラゴンクラッシュ、円堂はゴッドハンドとねっけつパンチを覚えてた。
対するオレは、何も無かった。そのローリングキックも、試合では使う機会はほとんど無かった。
必殺技だけが全てじゃないってのは分かってる。地区大会決勝の帝国戦は、オレが最後の得点へ繋いだ……って、前回大人になってからの円堂にやたら言われた。よく覚えてたな、アイツ。オレも覚えてたけど。
「……追いつこうとして、か」
「…まぁ、染岡の場合、足りないのはイメージだと思うんだけどな。なんだろ、こう…染岡竜吾のシュート、かな?なんて言えばいいんだ…?」
「………それ、似たようなこと円堂にも言われたぞ。半田になろうとするなって」
「あー、そうなのか。………って、オレ!?」
「いや、別にお前になろうとは思って無かったけどよ。さっき言った通り、お前に対抗心燃やしてたのは事実だったからな。それを円堂に突かれたんだよ」
「あ、ああ…なんだ、そういうことか……」
「………だよな!オレもオレだけのシュートを作り出す!負けねぇぞ!半田!」
「いや、対抗心燃やすのはいいけど、せめて同じフォワードに燃やせって…ごう…いや、何でもない」
あっぶねぇ!!豪炎寺って言おうとしてたよな!?今言っても意味ないだろ!!
「半田さん!染岡さん!そろそろ帰りますよ!」
「……って、もうこんな時間かよ!?部室にカバン置きっ放しだったよな!?戻るぞ染岡!!」
「あぁ!?って、マジじゃねぇか!急ぐか!!」
そして、試合当日を迎えた。
次こそいよいよ試合です。
いや、本当です。本当に試合が始まりますから。