先に言っておきますけど、作者は別に武方三兄弟が嫌いなワケではありません。
ただそれはそれ、これはこれです。
一ノ瀬が雷門に来た翌日。
オレ達は今日も練習の為、部室で準備をしていた。
「まさかよりによって、準決勝の相手が木戸川清修なんてな…」
「もしオレが別んとこに転校したとして、対戦相手が雷門中だと思うと、気まずいったらありゃしねぇな……」
「……どこが相手だろうと関係無い。サッカーはサッカーだ」
「……まっ、豪炎寺がいいんならいいんだけどさ」
……でも豪炎寺って、そういうのそこそこ気にするようなタイプだと思ったんだけどな。
ただまあ、豪炎寺が気にして無いなら、オレ達も気にすることはないな。
あの三兄弟も、別にオレ達に対してどうこう……。
「…………あー」
「あ?どうしたよ、半田」
「いや、木戸川清修と言えば三兄弟のスリートップだったなって思って。前に大谷に見せてもらった映像にも、めちゃくちゃ映ってたし」
「あー、そうだったな。たしかにアイツらのシュート、映像越しとは言えスゴい威力ってのは感じたからな」
「どんなシュートだろうと、オレが止めてみせるさ!」
「ああ。頼りにしてるぜ、円堂」
………そういや、円堂っていつマジン・ザ・ハンド覚えるんだっけ。
あまり覚えてないんだけど、なんかとっくに覚えてて、トリプルディフェンスとか覚えるか覚えないか辺りの時期だと思ったんだけど。
まあ、気にしてても仕方ないな。とりあえず練習だ練習。
ちなみに毎度の如くグラウンドに来たのはオレが最後だった。
土門が一ノ瀬になんか話してるけど、それ違うよな?あの話じゃないよな?
「よし、ダイレクトで裏に通してそのままシュートだ!!」
「染岡!」
「おう!」
「なっ…!やられた!」
それから練習に入り、鬼道の指示通りにボールを運ぶことが出来た。
一ノ瀬のボールコントロール、流石だな。
あのコースならそのままシュートかと思うのも無理は無い。
持ち直したとは言え、円堂も引っ掛かったしな。
「今のボールすごかったな。ゴール裏から見てたけど、あれはロングシュートって誤認しても仕方ないぞ」
「染岡が良い位置にいてくれたのもあってね。みんな良い選手だよ」
「よし、ならば半田。次はお前の番だ」
「えっ、オレ?オレに一ノ瀬ぐらいのボールコントロール求めんの?」
「なんでそうなる。お前だけじゃないが、雷門のミッドフィルダーはシュート技も覚えている。中でもお前は、シュート、ドリブル、ディフェンスと覚えているが、そろそろローリングキックでは厳しいだろう」
「あー……。まあ、それはオレも感じてたんだ。一応シュートの練習もしてるけどな」
「ならば、その練習だ。宍戸の特訓の時、お前にも特訓させたからな。それを開花させてもらう」
「ああ。準決勝までには、仕上げるさ」
この前宍戸の鬼特訓の時、宍戸だけじゃなくてオレや染岡達も猛練習が出来たんだ。
おかげで新しくシュート技が使えそうなんだよな。
「よし!じゃあ半田、どんどんシュートを撃ってこいよ!」
「オレってばミッドフィルダーなんだけどなぁ…。まあ、いいか。やるぞ!」
その調子で、シュートを中心に練習を進めていった。
そのおかげで、段々と感覚が掴めてきた。手応えがある。
うん。この分なら準決勝には間に合いそうだな。
「よし!今日はここまでだ!」
「みんなー!お水とタオルとか用意してるわよー!」
「おおー。いつもありがとうね、マネージャー達」
「今日は大谷先輩がキュウリを持ってきてくれましたよ!」
「おっ、この前のか。もらってもいい?」
「う、うん…」
「………うん。やっぱ美味い」
「……ホント?」
「この前といい今回といい、ありがとな大谷。お婆ちゃんにもお礼言っといてくれよ」
「……うん!また持ってくるね!」
いや、ホントいい塩加減でオレ好みなんだよな。
戻ってくる前だったらこれで酒呑んでたかもしれない。
よく風丸とかに爺臭いとか言われてたけど、漬物っていけるんだからな。
「……………」
「ん、どうしたよ一ノ瀬」
「いや、土門さ。あの大谷さんだっけ、なんかオレには犬みたいな尻尾が付いてるような幻覚見えるんだけど」
「あー………。アレだろ?めちゃくちゃブンブンなってるような」
「そうそう。あの機嫌が良い時になってるやつ」
「………まっ、半分幻覚で半分現実だと思うけど」
なんか土門と一ノ瀬の声が聞こえるけど、気にしないでいく。
そんで他のメンバーからもなんか視線感じるけど、それも気にしないでいく。
「……コホン。いいかしら」
「ん、雷門。別の準決勝の結果出たのか?」
「ええ。狩火庵中を10対0で下して、世宇子中が進出したわ。しかもチームのほぼ全員が負傷して、開始10分で試合放棄という形でね」
「………そうか」
「世宇子にリベンジするんだろ?準決勝は負けられないな」
「ああ。もちろんだ!」
「よし!みんな!頑張るぞ!!」
『おお!!』
そこでグラウンドでは解散となり、オレと円堂に染岡、鬼道に豪炎寺は公園で作戦会議を進めていた。
「円堂は守備の確認を徹底してくれ。相手はオフェンス重視のチームだろうからな」
「ああ!ディフェンスは忙しくなりそうだな!」
「まあ、スリートップの時点でな。となると、カウンター主体か?」
「そうなるだろうな。豪炎寺と染岡の2人は、攻守の切り替えに注意してくれ」
「おう。いつでも戻れるようにするし、攻められるようにもな」
「……ああ」
「ん……?」
豪炎寺の反応が鈍い。
さっきはああ言ったけど、やっぱ気にしてるんじゃないか?
「よし!作戦会議は休憩だ!来いよ!!」
「お、おい!どこに行く気だ!」
「あー…。あそこか、染岡」
「まあ、あそこだろうぜ。着いてこいよ」
ピンと来てない豪炎寺と鬼道を、オレと染岡が引っ張る。
まあ、ここの所行ってなかったしな。鬼道はともかく、豪炎寺も知らないよな。
「ここだよ!」
『駄菓子屋……?』
「なんだよ、来たことないのか?」
『ああ…』
「2人揃って同じ反応してるぜ」
「まっ、この2人が駄菓子屋ってのも、なかなか想像付かないしな」
「お前たちも、よく来るのか…?」
「頻繁に、ではないけどな。さっきの公園で話して、帰りにここへってのは、1年の頃からやってたんだよ」
でも、この駄菓子屋。たしか雷門中の裏門の方にあったはずなんだけどな。ここ商店街なんだけど。
雷門中卒業して10年以上経っても、まだこのおばちゃんがやってたし。
まあ、これも細かい違いってやつなのかな。
「おばちゃん!こんちわ!」
「おやおや、サッカー少年たち。いらっしゃい」
「おっ、まこ達も来てたのか」
「うん!半田ちゃんと円堂ちゃん達、次で準決勝でしょ?がんばってね!」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるじゃんか。お礼にそれ、オレが奢ってやろう」
「えっ、いいの!?」
「半田お兄ちゃん!ぼく達もいい!?」
「いいぞいいぞ。ただし、1人60円までな」
「その微妙な制限なに〜?」
KFCの子供たちの憩いの場なんだよな、ここ。
まこは10年後にKFCでコーチやってるから、割と付き合いはあったけど、他のKFCの元メンバーもちょくちょく遊びに来るから、こういうような事は戻る前からやってたんだよな。
今のまこは可愛げあるけど、これが10年も経つとなあ……。
「ん〜?どうしたの?半田ちゃん」
「いや、なんでもないよ。美味いか?」
「うん!あたりめ美味しい!」
「渋いの食うよな。まったく」
「おばちゃん。オレはこのラムネ貰うぞ」
「はいよ。それ80円ね」
「中学生ってリッチだよな〜。オレも早く大きくなりたい」
「おっ、なんだよガキンチョ共。小学生から中学生なんて割りとあっという間だぞ?」
「でも染岡お兄ちゃんも2年前までは小学生だったんだよね?」
「まあ、1年とちょっと前って感じだな」
「…………想像出来な〜い!!」
「ブハッ!」
「おい半田。なんでお前今吹き出した。言ってみろ」
「いやいやいやいや気のせい気のせい」
「おばちゃん!オレはこのソースせんべいちょうだい!」
「はいはい」
「………なるほど。たしかに、この街にはピッタリだな。こういう所は」
「………ああ。そうだな」
オレが染岡に問い詰められてる間、豪炎寺と鬼道も駄菓子をいくつか見繕い、おばちゃんの所へ持って行った。
気が済んだのか、染岡は会計を済ませた鬼道と豪炎寺に続いて外に出て行き、中にはオレと円堂とKFCの子供達だけになった。
「うーん……。うめぇ棒かあめ玉足すか……。うーん……」
「……そんな悩むぐらいなら、どっちも持って来いよ。他の2人も、それ足して良いから」
「いいの!?やったあ!」
「………ん?」
まこ達が駄菓子を持ってくる時、別の3人組が店の中に入って来た。
この辺じゃ見ない制服だな。緑色……。あれ、これってたしか…。
「どけよ」
「あっ、割り込みはいけないんだよ!?」
「お前ら!順番守れよな!」
思考を続けていたら、その3人組がまこ達を抜かして来た。
………って、コイツらよく見れば武方三兄弟じゃないか。
『い〜けないんだ!いけないんだ!!』
「うっせぇ!」
「アンタ達!ちゃんと並びなさい!」
「3対1でオレ達の勝ちぃ!みたいな?」
「人数の問題じゃないだろ!!」
「いいえ〜?人数の問題ですよ」
「オレ達は常に、三位一体なんだよ!」
「なに言ってんだお前ら?」
いや、マジで何言ってんだコイツら。意味が分からん。
こんなクソガキみたいなヤツだっけ。霧隠よりクソガキだぞ。
「……!豪炎寺!」
「久しぶりだな!決勝戦から逃げたツンツンくん!」
「…………」
入り口に目をやれば、外に居た豪炎寺達が様子を見に来ていた。
あー……。なるほど。コイツら豪炎寺が試合に来れなかった理由知らないってことか。
だからってこう言って良い正当な理由にはならないけど、仕方ないかもしれないな。
誤解を解くのは、今でもいいよな…。
「あー…。あのな、お前ら。豪炎寺は……」.
「えっ、誰?知り合いか?」
「いや、円堂。お前もあの映像見ただろ?コイツらは……」
『オレ達は!』
あー、これ面倒くさくなるやつだ。
「武方!勝!」
「友!」
「努!」
『3人合わせて!武方三兄弟!!』
おい。ここ店の中だぞ。トライアングルZのポーズ取るんじゃねえ。
「な、なんなんだよ!コイツらは…!」
「去年豪炎寺の代わりに決勝に出場した、木戸川清修のスリートップだよ」
「ってことは、豪炎寺の元チームメイトか……」
「流石は鬼道有人。有力選手のデータは全てインプットされてるみたいじゃん?」
「フッ……。三つ子のフォワードが珍しかったから覚えていただけだ」
「なにぃ!?今年のオレ達の……」
「いや、そんなことはどうでもいいから」
「ど、どうでもいい!?お前はなん…」
「どうでもいいから。お前らのせいでおばちゃんが腰抜かしたんだけど」
「えっ?あっ………」
オレが今まで口を挟まなかったのは、腰を抜かしたおばちゃんの介抱をしていたからだ。
幸い、頭をぶつけたりはしなかったけど。何考えてんだコイツら。
「順番抜かしたり、店の中で派手な動きやったり、あまつさえお年寄りに迷惑かけて何してんだお前ら。木戸川清修ってこの辺りの学校じゃないよな?わざわざやって来てやる事が、子供の順番を抜かして、おばちゃんにケガを負わせるかもしれないことなのか?マジで何考えてんだお前ら」
「………すみませ」
「オレに謝ってどうすんだ。おばちゃんに謝れ」
『…………すみませんでした!!』
「息ピッタリだねぇ。気にしてないって言ったらウソだけど、二度としてくれなきゃいいよ」
「ついでにまこたちにも謝ってよ!順番抜かしたんだから!」
「な、なんでお前達にも…」
「謝れ」
『すみませんでしたぁ!!』
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
円堂達が目を丸くしながらオレ達の方を見てるけど、これぐらいで済んだ事をマシに思ってくれ。
相手が相手なら、学校に通報して色々と問題をややこしくする事だって出来るんだからな。
オレにはそのつもりは無い。おばちゃんもそのつもり無さそうだし、まこ達を面倒ごとに巻き込むのも良くないからな。
「……で?ここまで来た経緯なに?話だけは聞いてやるよ」
「えっ、えっと……。オレ達はその……。豪炎寺にオレ達の力を見せつけてやろうと……」
「準決勝でも出来たよな?」
『はいいいい!!!』
「………豪炎寺。心当たりがあるなら、後で教えてくれよ。コイツらもう帰そうぜ」
「…………ああ」
その後、武方三兄弟は帰って行った。
一応、話を広げることはしないとは言っておいた。
自業自得とは言え、試合に影響を出させると、後味悪いからな。
後から聞いた話だけど、一ノ瀬達の幼馴染の西垣が木戸川の監督と一緒に三兄弟を探しに来てたらしく、一緒に帰ってた木野と土門に一ノ瀬と偶然会って、再会出来たらしい。
これも後から聞いたけど、アメリカにいた4人で話すことが出来てよかったって、一ノ瀬達が言ってたな。
「………あっ」
「どうしたよ、半田」
「………いや。アイツらのことだから、あのまま何事も無ければ、アイツらのシュートを知る事が出来たんじゃないかって思って」
「……………まぁ、お前は悪くねぇよ」
「………なんか、悪いな。染岡」
おばちゃんが腰抜かしてるの誰も触れてなかったんすけど、アレ下手したら大怪我につながるから許しません。
あの後街の中でボールを蹴ってたのはマジで言い逃れ出来ないので、それが無かっただけマシです。
えっ?ゲームだとフツーにミニゲームやっててなんなら必殺技撃ちまくってる?知るか。