『うわあああああ!!!』
『があああああああ!!』
『みんなあああああ!!』
……なぜ、みんながやられているんだ…?
いや、そもそもオレはどこにいるんだ…?
目の前に広がっている光景も、いったいなんなんだ…?
みんなが戦っているのは、いったい何者なんだ…?
『ゴッドハンド…!!』
誰かも分からない相手がシュートを打ち、ゴッドハンドで止めようとする円堂。
だが、ゴッドハンドは簡単に砕け散ってしまう。
「…………は?」
崩壊は、それだけに留まらなかった。
ゴッドハンドを砕かれた円堂自身にも、段々とヒビが広がって行き、最終的には砕け散ってしまった。
そして、そのシュートは残ったオレにも………。
「うわあああああああ!!!!??」
………結論を言えば、今のはただの夢だった。
どこかも分からない場所にもいないし、周りには誰もいない。
自分の部屋のベッドの上で、汗だくになりながら飛び起きただけだった。
「…………やっぱ、不安にもなるよな」
「………半田くん、大丈夫?」
「寝覚めが悪かっただけだから、大丈夫だって」
「顔色も悪いし、クマもすごいけど……」
「……まあ、今日の練習は休ませてもらうけどさ。1日休んで、明日から頑張る」
「うん。その方がいいよ」
木戸川戦から1日が経ち登校中、門の前で大谷と会い、そんな話をしながら歩いていた。
流石にこんな状態で練習しても、すぐにぶっ倒れそうで、迷惑かけそうだしな。
昨日もぶっ倒れた後、染岡や風丸に迷惑かけたみたいだし、あと目覚めたら目の前にいた大谷にも。
流石に2日連続でぶっ倒れたくはない。
「………あれ、大谷。あのトボトボ歩いてるヤツ、オレの見間違えじゃなかったら、円堂だよな」
「あっ…。そ、そうだね。あのバンダナ、円堂くんだよ」
「んー…。なんか、後ろの方に風丸に豪炎寺、鬼道とかもいるな。なんで追いかけないんだ?」
「秋ちゃんや一ノ瀬くんもいるし…。何かあったのかも」
「……とりあえず、そこに合流するかな」
オレは大谷と一緒に、円堂を見送ってるグループに合流した。
「おはよう、みんな。なんかあったのか?」
「半田か、おはよう。いや、円堂が……。お前もどうした。酷い顔だぞ」
「寝覚め悪かっただけだよ。それより、円堂はどうしたんだ?」
「昨日の木戸川戦で、不安になったようなんだ」
「昨日の……。ああ、ゴッドハンドが通用しなかったからか」
「少なくとも、オレ達は初めて見ることでさ。1年の頃、そんなことなかったんだよな?」
「まあ、な。今までのやってみなくちゃ分からないって気持ちだけじゃ、不安になったんだと思う。どうすりゃいいか分かんなくて、頭ぐちゃぐちゃになってるとか言ってなかったか?」
「すごいね。当たってる」
「こればっかりは、アイツがその殻を破ってもらわないとどうにも出来ないな。アイツ、昨日の最後のシュートを止める時、ゴールを背負うことの責任を言ってたけど、それが連鎖してるんだと思う。オレ達は突破されても、円堂がいる。でも逆に言えば、円堂……と言うより、キーパーはそうもいかない。チームの最後の砦だからな。そう言う意味じゃ、二回戦目の千羽山とかが分かりやすかった」
「……たしかに。無限の壁が破られた後、茫然自失と言わんばかりの状態だったな。今までの鉄壁がウソかのように、簡単に決勝点を奪っての勝利だった」
「いつかはぶつかる壁だった、と思うしかないんだよな。他人事のように聞こえるだろうけどさ」
「………………」
そうして、クラスが違う鬼道たちとは別れ、オレと大谷たちは円堂のいる教室に着く。
不安そうなその背中は、さっき見たものと変わらなかった。
授業になってもその状態は続き、先生に指名されたことに気付かなかったり、この前解けてた問題を間違えたりと、不調なままだった。
「………休んではいられない、かな。無理はしないけど」
「……本当に大丈夫?」
「倒れるまではしないさ。でも、オレより無理しそうなヤツがいるからな。アイツが倒れるようなことだけは、させられない」
放課後、オレは日直だったこともあり、部室に行くのが遅くなった。
それは土門と一ノ瀬も同じだったようで、3人揃って部室へ着くと…。
「ごめん!遅くなっ…た……」
「………珍しい空気だな」
土門の言う通り、円堂と豪炎寺、鬼道が机を囲んでいる辺りから、暗い空気が流れていた。
まあ、3人って言うより、主に円堂から出てるんだけど。
「練習は染岡達に任せてるのか」
「そうだ。それと半田、お前は今日参加するのは止めておけ。昨日倒れたばかりじゃ、こちらも不安だ」
「ああ、悪いけど元々そのつもりだったんだ。顔は出すけど」
「ならいい」
「けど、ゴッドハンドのことよっぽど深そうだな。大丈夫かよ?」
「………………」
「……そんなにか」
「鬼道。世宇子にゴッドハンドは通用すると思うか?その力を目の当たりにしたのはお前だけだ」
「…………分からないと言いたいが、恐らく厳しいだろう。武方三兄弟のトライアングルZも凄まじいシュートだった。しかし、奴らのシュート……とくにキャプテンのシュートは、それを上回る」
「染岡と半田と一緒に止めてたアレなら…。いやでも、そう毎回2人をゴール前まで下げるのは厳しいか……」
「………トリプルディフェンス。一応名前を付けとくけど。あれ自体は、別にオレと染岡じゃなくても出来るはずだ。ディフェンスの壁山でも、多分風丸や影野、土門でも。円堂を支えることが出来ればな」
「だが、壁山と風丸はシュートブロックが出来なくなる。そうなると、影野と土門になるだろうが……」
「ディフェンスが薄くなるよな…」
「…………それ、大介さんのノートだよな。見てたのか?」
「……ああ。爺ちゃんの最強のキーパー技って、書いてあったんだ。マジン・ザ・ハンド……だって」
マジン・ザ・ハンドか……。
でもあれよりたしか、トリプルディフェンスの方が強かった覚えがあるんだけど、あまり信用ならないな。オレの記憶。
となると、これを頼りにするしかない…か。
「ここ、赤く書かれてるんだよ。これが重要って意味だと思うんだ」
「左胸……ってより、心臓?」
「これだけじゃ分からないな…」
「………でも、オレはこれを身につけるしか、無いと思うんだ」
「……だろうけど。こうなったらさ、聞いてみようぜ」
「聞いてみるって、誰に?」
「決まってるだろ。先輩だよ」
そう言ったオレは、円堂たちが練習を終えるのを待った。
その間に、響木さんから連絡先を聞き、準備を進めた。
練習が終わり、オレと円堂。そして豪炎寺に鬼道、染岡は河川敷へ向かった。
「おう、来たか坊主達」
「備流田さん……?それに、浮島さんに、会田さん……」
「まあ、コイツらはいつも河川敷にいるけどな。んで、半田。目的のものはこれでいいか?」
「すみません。ありがとうございます」
「なに。頑張ってる可愛い後輩の頼みだ。これぐらいはするぜ」
「おい半田。それってなんだ?なんか、大介さんのノートと同じぐらい古びてるぜ」
オレは備流田さんから2枚のボロボロな紙が入ったクリアファイルを受け取った。
この人たちからもらって、ボロボロのものと言えば……。
「これは、大介さんがOBのみんなに渡してた必殺ノートの別ページみたいなんだ。円堂が見たことない必殺技が乗ってるらしい」
「そんなのがあったのかよ!?」
「ほ、本当なのか!?爺ちゃんのノートの、別ページ!?」
「ああ。見てみろ円堂。そいつは間違いなく、大介さんの遺したものだぜ」
それを聞いた円堂に、オレはファイルを渡す。
それを見た円堂は、震え出した。
「ま、間違いない…!これ、爺ちゃんのノートだ!!」
「ったく、ウソつくワケないだろうが」
「あっ…。いや、その……。す、すみません……」
「別に、備流田もオレ達も怒ってるワケじゃない。しかし、驚いたな。まさか読めるとは」
「………?みなさんはこれ、読めていないんですか?」
「あー……。あのな、坊主達。お前らも使ってたイナズマ落としあるだろ?それ、あのノートを見て覚えたんだよな?」
「はい。オレと壁山が、そうやって」
「もちろん、それは私たちも使えるものだ。ただ、問題はノートが先じゃあ無かったんだよ」
「…………まさか」
「そう。そのノートは、先に大介さんが言葉や特訓である程度形にした後、書き記したものなんだ。当時、イナズマ落としや炎の風見鶏は、オレ達も練習していた。だがその2つは、形にしてないものだ。大介さんから受け取り、その後練習しようとしていた時に、あの事件が起こってな……」
「…………そう、なんですか」
「だが……、そうか。流石は孫だな。読めるんだろう?そのノート」
「………はい。必殺技の名前は書かれてませんけど、どんな必殺技なのかは、書かれてます」
「それ、読んでもらっても構わんか?オレ達も、大介さんが遺したものを、知りたいんだ」
「………分かりました!!」
円堂がページをしっかりと持ち、息を吸う。
いったい、どんな必殺技が書かれているんだ……?
「まず前の2人がボールを持ち、後ろで守護者がドゴン!そして2人がバビューン!!となり、パッとしてズバーン!!これが、最強のシュート技!!……………え?」
もう、豪炎寺と鬼道を除いた全員ズッコケた。
ただ2人とも、なんとか耐えたような感じだぞ。オレには分かる。
それとOBの御三方も一緒にズッコケてる。反応が若い。
多分これ、OBが現役の時も同じだったんだろうな。
「………はは、ガハハハハハ!!やっぱり大介さんだ!答えを見てからでないと、さっぱり分からん!!」
「ドゴンとかズバーンとか、音ばかりなのも大介さんらしい。いやはや、ありがとう円堂くん。おかげで懐かしい体験が出来た」
「い、いえ………。でもこれ、シュート技なのは間違い無いです」
「守護者ってことは、これキーパー含めた3人の合体技なのか?」
「いや、ディフェンスという可能性もある。安易に決め付けるのはよくないな」
「まあ、それ以前にバビューンの後の、パッとしてズバーンも分かんないんだけどな。豪炎寺、前みたいにピンと来たりしないか?」
「……………すまない」
「いや、謝る事はないだろ……」
やっぱり大介さんのノートってことは間違い無いな。
こんな擬音……擬音でいいのか?まあ、音ばっかなのは大介さんだ。
しかし、最強のシュート技、か。是非とも形にしたいところだけど……。
「………あれ?もう1つのこのページ、字が1つも書かれてない。でっかい絵だけだ」
「ああ。それはオレ達にも分かった。どういう必殺技なのかも、なんとなくだがな」
「円堂。見せてもらえるか?」
「あ、ああ……。これだよ」
円堂が見せてくれた、もう1つのページ。
そこに写っていたのは……あれ?
「なんだこれ。でっかいゴッドハンドか?」
「その後ろに3人いるようだが……」
「恐らくだが、それは3人でやるゴッドハンドだと思うぞ。名付けるなら……。シンプルだが、ゴッドハンドトリプル。だろうな」
「OBのみなさんは、形にできなかったんですか?」
「いや、ゴッドハンド自体は響木が形にしていた。だが、それを出す機会が、もう無かったんだ」
「……そう、なんですか」
「それより、響木はマジン・ザ・ハンドに拘ってたのと、他のメンツで、ゴッドハンドを覚えたヤツがいなくてな。ちゃんとした形にすることは、無かった」
「………今からオレ達がゴッドハンドを覚えるのは、難しく無いか?」
「そうだな。これを形にしたい気持ちはあるが、マジン・ザ・ハンドに集中した方が良さそうだ」
「…………………」
ゴッドハンドトリプル……か。
たしかに、今からオレ達の誰かがゴッドハンドを覚えるのは、間に合わないと思う。
でも、なんだろうな。心当たり………って程ではないんだけど、何か引っ掛かるな。
本当に、ゴッドハンドを覚える必要があるのか……。
「おう、なんだお前ら。マジン・ザ・ハンド覚えるつもりなのか?」
「………はい。その為に、オレは今日から練習を始めて、明日からも続けます」
「…………ほーん?」
もう夜になるということもあり、オレ達はそこで解散した。
最後の備流田さんの含みのある返事が気になるとこだけど、もう帰ったし、気にしないでいい……のか?
多分1枚目のやつ、何の秘伝書なのかモロバレでしょうけど、お口チャックお願いしますね。