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ようやく無印編の終わりが見えて来ましたが、これからもよろしくお願いします。
アフロディが茶々入れに来た翌日。
あれから色々あったが、いま何をしてるかというと…。
「よーし!坊主。野菜切ったか!?」
「はい!おかげで涙止まらないです!」
「玉ねぎはいっぱい入れた方がいいからな。あくまでオレのレシピだが」
「備流田さん。肉の炒めどうですか?」
「おう。そんぐらいで大丈夫だ。あとは煮込む内に火が通るからな」
「では、玉ねぎを炒めてくれ。キミ達は辛い方が好きかな?それとも甘い方かな?」
「辛い方!!」
「甘い方っす!!」
「普通の!!」
「……三種類にしておこう。炒める時間によって味が変わるからね。甘い方はこちらがやるから、半田くんと…」
「あっ、じゃあ私がやります」
「ん。じゃあ大谷くん…だったかな?頼むよ」
「はい。会田さん」
カレー作ってる。
まあ、なんでこうなったかと言うと…。
「はっきり言おう。今のお前たちじゃ世宇子に勝つことは出来ない」
「えっ……?」
「…………そう、ですか」
「ああ。絶対に不可能だ」
アフロディが去った後、響木さんがそう言った。
あのシュートが、神のアクア込みの力までは分からないとはいえ、圧倒的だったことに変わりはないしな…。
「絶対なんて、そんなこと…!」
「言ってるだろう。"今の"お前たちでは、と」
「……………」
「あんなものを目の前で見たのだから仕方ないが、今のままでは力が入り過ぎるに決まっている。そんなことでは、試合までに燃え尽きたり、空回りすることになるぞ」
「…………たしかに。否定はできません」
「だから、合宿だ」
「が、合宿………?」
「学校に皆んなで泊まり、料理でも作る。それ以外は練習になるが、気分転換にはなる。いいか?雷門夏未」
「………ええ。理事長には、私から話を通しておきます。あの人なら許可してくれると思いますから」
「そういうことだ。作戦会議ならば止めはしないが、今日はもう練習はするな。明日からの土日で、合宿をする。親御さんたちに報告して、着替えなどを持ってくるようにな」
そう響木さんに言われ、その日は解散となった。
戻って来てからだと、初めての合宿になるな。楽しみ。
「合宿している暇なんて……」
「響木監督も言ってたじゃねぇか。気分転換って」
「それに練習だってするともな。しかし、半田はどうした?」
「たしかに、半田さんだけいないっすね」
「体調崩したなんて連絡も来てないし、遅刻だと思うけど…」
「悪いみんな。ちょっと遅れた」
「来たか半田。怪我とかも無さそうでなにより……?」
校門前。遅れてやって来たオレに反応した鬼道が、少し固まった。
それに釣られて、他のみんなもちょっと固まってる。
「どうしたんだよみんな。オレの顔になんか付いてるか?」
「いや、顔じゃなくて……。なんだよ、その大荷物」
「ああ。これ?買い物行ってたんだよ」
「大袋4つてお前。母ちゃんの買い物でも中々見ねえぞ」
「んや、これだけじゃなくてもっと増えるぞ」
「えっ」
そうオレが言うと、後ろから軽自動車がやって来る。
運転席や助手席からは……。
「おう、お疲れさんだ。半田の坊主」
「商店街からそこそこ距離があるはずなんだが、やはり若いな」
「備流田さんに、会田さん…?」
「ギリギリ車に乗り切らなかったもんでな。そうしたら坊主が持って行くって言うもんだからよ」
「母さんとの買い物に付き合うこともあるから、大丈夫って言ったじゃないですか」
「その言葉が通るなら、キミは一体普段からどれだけの荷物を持たされてるんだい?」
「秘密です」
「その様子だと、あまり遅れてはいないようだな。よかった」
「う、浮島さんまで……?あの、そのリアカーは一体?」
「これか?見た通り、デカい鍋とその他だ」
「響木からお前達が合宿をすると聞いてな。助っ人に来たということだよ」
そこへリアカーを引き摺った浮島さんも合流した。
オレ達が材料の買い出しに行き、浮島さんは道具などを用意してくれていたワケだ。
「今日の夕飯は、コイツらで作る特製カレーだ。レシピはオレ達が保証する。女子もいるが、どうしても男が多いとこれになるんだわな!」
「すごく簡単に言えば、切って炒めて煮込めば出来ますからね。量の調節もしやすいですから。ちなみにこれ、オレのリクエストなんだ」
「えっ、そうなんですか?」
「オレもカレーは大好物っすけど、半田さんもそうなんすね!」
「まあ、嫌いな人はあんまいないだろうけど。ほら、みんなで作るとなると、そこまで複雑な料理は出来ないだろ?その点、さっき言ったけどカレーは切って炒めて煮込むだけ。本格的なのはもっと作業が必要だろうけど、そういうのはこんな機会でやるものじゃない。しっかりレシピ通りにやれば、美味しくも作れるしさ」
「たしかに。初めて料理を作るならカレーがいいって、家庭科の先生も言ってたね」
「そうそう。オレも昔からよく母さんに言われてさ」
「昔からって…。アナタ、よっぽど昔からお手伝いしてたのね」
「えっ?あ、ああ………。まあ、そうだな」
「なによ。その変な誤魔化し方」
いや、ウソは付いてない。
オレの母さんって、子供の頃からこういうことを言ってたから。
ただ、今オレ完全に大人目線で言ってたな。危ない危ない。
「まずは練習からだ。腹ペコで料理というのも酷だろうから、希望者は途中で切り上げて作ると良い」
「オレが希望したし、もちろんオレは参加しますよ」
「マネージャーも全員ですね。予め監督から聞いてたから準備も出来てます!」
「オレもやるかな。この前雷々軒で作ってから、妙にハマっちまってさ」
「今立候補しなくても、後から参加という形でも構わん。では、早速始めるぞ。着替えて来い」
『はい!!』
「よし。ではまず、2人でシュートを打ってみろ。ページのことが気になるだろうが、最初はそこからだ」
「はい!行くぜ、染岡」
「おう。合わせろよ」
オレと染岡の前に、ユニフォームに着替えた響木さんがゴールで構えている。
備流田さん達からもらったページの必殺技の練習をしているところなんだが、まずはオレ達の連携を鍛える必要があった。
たしかに、守護者のことも気になるけど、土台を整えなきゃな。
『せーの!!』
イナズマ1号のフォームとは違うが、オレと染岡のツープラトンシュート自体は打つことが出来た。
「…………ふむ」
だが、響木さんに簡単に止められてしまった。
必殺技でもない、ただの2人同時に打ったシュートなんだから、予想はしてたけど……。
「威力はまだまだだが、息は合っているな」
「………まあ、サッカー部が始まった頃からの付き合いですからね」
「ただ威力が足りねえな。もうちょっと工夫が必要そうだぜ」
「工夫……か。色々試してみるか」
他にも走りながらとか、オレが蹴ったボールを染岡が蹴ったりとか、色々試してみたが、どれも大した成果にはならなかった。
「………他の連携シュートとなると、炎の風見鶏やツインブースト、イナズマ落としになるけど、参考になるかな…」
「オレと豪炎寺のドラゴントルネードもあるけどよ。ただ、2人で同時に打つのなんて、炎の風見鶏ぐらいだろ?方向性違う気するんだよな」
「……いや。一応あるぞ。3人ではあるが、元々2人でやる連携シュートが」
「3人だけど、2人……?」
「………あっ、イナズマ1号落とし」
「………ああ。高さを加えたイナズマ1号だもんな。たしかに、上から落とせば威力も上がる……。なあ、半田」
「……それだ。染岡。試してみようぜ」
その後も、オレと染岡が飛び上がり、空中からボールを撃ち落とす形のツープラトンシュートの練習を続けた。
一応、威力は上がりつつあるけど、まだまだ足りない。
威力……と言うより、高さな気もするけど。
「………さて。そろそろ夕飯の時間だ。お前達は備流田達と合流するんだろう?着替えに行って来い」
「あっ、もうそんな時間か。行こうぜ、染岡」
「おう。んじゃあ、半田の手並み見せてもらうか」
「そんな大したもんじゃないっての」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
…………なんか、マネージャー達からの視線が痛い。
穴が開くほど見られるって、こういうことなんだなって、身を持って体感してるんだけど。
「………えっと、どうした?そんなにジッと見られることしてるか?」
「………いえ、そういうことじゃないんですけど……」
「………半田くん。包丁さばき、上手なんだね」
「上手って言うか、普通ぐらいじゃないか?」
「………たしかに、私が言うのもなんだけど、普通ぐらいってのは分かるのだけど…」
「………女子として、敗北感が……」
「……………」
いや、本当に普通ぐらいだって。
普通に自炊をしてる社会人ぐらいの腕前でしかないぞ。
そんなに敗北感とか抱かれるもんじゃないだろ。
「いや、素人から見たら普通に上手いだろ。半田って普段から料理とかしてるのか?」
「普段からはしてないぞ。母さんにレシピ聞いたりとか、手伝うことはたまにあるけどさ」
「レシピ聞くって、珍しいな」
「そうか?仮にオレ達が大人になって自炊するとして、そういう時ってやっぱり馴染みのある味のがいいだろ?親の作る好きな料理とかって、なかなか食べれなくなるんだから」
「………お、おう。たしかに、言われてみりゃそうだな」
「なんだか、実感がこもった言葉だね……」
「……………」
「そういう意味じゃ、中学卒業したりしたら、大谷の作る漬け物も食べれなくなるな。ちょっと寂しいな、それ」
「えっ……」
「………いやいやいや!でも半田さん!レシピは教えられませんからね!!」
「えっ。なんで音無が言うんだよ?たしかになかなか教えられるものじゃないってのは分かるけど」
「ですよね大谷さん!?あれって作るの相当難しいですよね!!」
「いや……。あれって他の漬け物と変わらな……」
「む ず か し い で す よ ね !」
「…………う、うん」
「えっ、なにあれ染岡。なんか音無が怖いんだけど」
「あー…………。オレに言われても困るだけだから、聞いてねぇことにする」
「私に言われても困るからね。半田くん」
「一応、私もよ」
「オレも困ってるんだけど?」
そんなことは言ってる間に、各自練習を終えた皆んながやって来た。
とくに円堂がボロボロになってたけど、ほんの少し、マジン・ザ・ハンドを掴めた気がしたらしい。
円堂もがんばってるんだ。オレもがんばらないとな。
「私は勝利しか望まない。だが泥まみれの勝利など、敗北も同然。完全なる勝利。圧倒的な勝利を欲している。その勝利をもたらすものだけが、神のアクアを口にするがいい」
試合が近づくこの時間。
総帥はその言葉を述べ、我々に神のアクアをもたらせてくれるのだ。
この神のアクアがある限り、我々は総帥に報いることが出来る。
無名でしかなかった世宇子中に、圧倒的な神の力を授けてくれた、総帥に。
だが最近、ふと思う。
いつも総帥は、同じ言葉を発する。
勝利しか望まない。泥まみれの勝利など望まない。完全、圧倒的な勝利のみを欲する。
勝利を望むのは、感じる。
敗北を求めて戦う人など、いるはずはない。
しかし、勝利しか望まないと言う割に、敗北のことを忌み嫌うようなものは感じないのだ。
私の他に神のアクアを飲み干した者たちは、それを感じることはない。
ただ、自分が抱いた力に歓喜し、頂点に登り詰めることしか考えていない。
私もその1人ではあるのだが、どうにも気になってしまう。
………総帥。貴方は一体、何を隠している?
『さあ全国の中学サッカーファンの皆様!遂に、遂にこの日がやって参りました!!フットボールフロンティア全国大会決勝戦!!ここ世宇子スタジアムにて、戦いの火蓋が切られようとしております!!』
はい。次回からいよいよ世宇子戦のお話になります。
長かった。主に更新頻度のせいですけどここまで長かったです。
最初にちょっと小話を挟んでから、試合パートになります。
年内中には無印編を終わらせられるよう、がんばリーヨ。