つまりそういうことです。はい。
「つくしちゃん!よかった、無事で…!」
「秋ちゃん…」
先に戻って来ていた3人から事情を聞いていたが、無事に大谷は戻って来た。
………無事でよかった。本当に。
「無茶するなよ、大谷。心配したんだからな」
「ご、ごめん…」
「でも、何ともなくてよかったよ。影山とかに見つかったら、大変だからな」
「えっ!?あっ、そ、そうだよ…ね……。うん……」
「ど、どうした…?そんなに慌てて…」
「いや、本当になんでもないから…。大丈夫だよ」
「……なら、いいんだけど」
……何か隠してる気がするんだけど、それより今は試合のこと、か。
世宇子のベンチの方を見ると、アフロディたちがグラスで用意されている水を飲んでいた。
「……むっ?」
何やら、違和感を覚えているような顔をしているアフロディたち。
ただ、それ以上は気にしないようにしたのか、フィールドへと歩いて行った。
「……………」
「……上手くいったようだね、秋ちゃん」
「うん。つくしちゃんが引き付けてくれたおかげだよ」
「………事情は聞いた上でだけど、無茶しやがって」
このことも、先に木野たちからみんなにも知らされている。
だから、この会話も小声で行われている。
小声の染岡とか、珍しいな。
「……爺ちゃん。オレに力を、貸してくれ……」
円堂は、大介さんの形見のグローブを付けることを決意。
オレもこうして見るのは、こっちだと初めてだからずいぶん久々だな。
「それ、大介さんが使ってたグローブなんだな」
「……ああ。ちょっとは、気持ちにも繋がると思ってさ」
「………でもなんか、大介さんが使ってたにしては、綺麗だな」
「えっ?」
「いや。大介さんが使ってたってことは、10年前どころじゃないだろ?にしては、綺麗って言うか……。あっ、違うか。左手のがボロボロで、それに比べたら右手のが綺麗に見えるだけか?」
こうして改めて見てみると、そうだな。
むしろ左手のが焦げるぐらいまでボロボロなのに、右手は普通のボロボロって感じだ。
まあ、大介さんが左利きだったから。ということなんだろうけど。
「左手……」
……円堂が、両手に付けた大介さんのグローブをじっと見つめている。
何かを掴みかけてるのか、そこまではオレには分からない。
オレも、アイツらに一矢報いたいんだけど…。
「オレ達のシュートが通用しないのは、ある程度は想像してたんだがな…」
「アイツら、口を開けば神々言いやがって。なにが神だよ」
「……まあ、実際必殺技は強いしな。つなみウォールに、他にも隠してそうだし」
「ポセイドン…な。そんなに神って言うなら、神を越える勢いで行くしか無ぇってことか?」
「そりゃあ、神を越えられたなら、アイツらにも勝てるだろうけど…。神越えるって、どうするんだよ」
「…………宇宙?」
「…………宇宙、か」
………そうだよな。世宇子に勝てないようじゃ、エイリア学園に勝てるはずがない。
アイツらに…。宇宙に届く勢いで行かなきゃな。
『さあ!遂に後半戦が始まります!世宇子中の大幅リード。雷門中、この点差を覆すことは出来るか!?』
「ふっ…。もし出来たとしたら、それは神を越えることに等しい。出来るものなら、ね」
「………神だろうと、足元の石に気付かなきゃ、そのまま転ぶぞ」
「……まだそんなことを言うつもりかい。決して埋められない実力の差というものを、前半で学ばなかったのかな?」
「前半だけで、オレたちの全てを知った気でいるのか」
「へぇ。言うじゃないか」
言い終わると同時に、後半開始の笛が鳴る。
世宇子ボールから始まり、デメテルが攻めてくる。
「ダッシュストーム!!」
『ぐっ…!』
開始と同時にデメテルはダッシュストームで豪炎寺と染岡を吹き飛ばす。
2人を簡単に突破したデメテルだったが…。
「なっ……!?」
「…?どうした、デメテル」
「力が、抜けていく…?いや、これは…!」
「なに…?」
「やっと気付いたの?クイックドロウ!」
「くっ…!」
自分の身に起こったことを理解しだしたデメテルは、完全に足を止めていた。
その隙を付いたマックスが、クイックドロウでボールを奪う。
「ウチのマネージャー特製のスポーツドリンク、味良かったでしょ?」
「やはり…!すり替えたというのか!?」
「インチキなことしてんじゃないよ。行くよ、鬼道たち!」
「ああ。頼む!」
「スパイラルショット!!」
マックスがスパイラルショットを打った先には、鬼道とオレ、一ノ瀬がいる。
「出来るな?半田」
「ああ。やってやるさ」
「よし。行こう!」
鬼道が口笛を鳴らすと同時に、オレと一ノ瀬が走り出す。
オレも、練習はしていたからな。
「皇帝ペンギン!」
『2号!!』
まさか、オレがこれに混ざる日が来るとは思ってなかったけどさ。
オレと一ノ瀬が打った皇帝ペンギン2号は突き進み、先で控えていた染岡たちへ届く。
「最後のおまけだ!ドラゴン!」
「トルネード!!」
スパイラルショット、皇帝ペンギン2号、ドラゴントルネードを加えたシュートが、ポセイドンが護るゴールへと一直線。
「さばきのてっつい!!」
だが、そこへアレスが割り込み、さばきのてっついで威力を削られる。
アレスの他にも、アポロンも使えたはずなのに、割り込まなかったな…。
「うおおおおお!ギガントウォール!!」
その間に、ポセイドンは巨大化。
巨体から放たれる拳でボールを抑え込み、オレたちのシュートは止められた。
「これでも、ダメか…」
「だが、手札は切らせることは出来た」
「えっ。どういうことだ?」
「今のシュートブロック。今までだったら、アポロンたちも加わって、ディフェンスだけでほぼ完全に威力を封殺していたはずだ」
「ああ。アフロディも、慢心はしてても、油断はしてないもんね」
「だがそれをせずに、ポセイドンに必殺技まで使わせることになった」
「…ああ。神のアクアの供給がなくなって、スタミナも無尽蔵じゃなくなったからってことか」
「おそらくそういうことだ。世宇子の必殺技はどれも強力だが、その分必要な力も大きいはずだ。そこを突くことが出来れば…」
「……ってことは、時間とオレたちの体力次第…か」
「じゃあ、今みたいに連続シュートより、1発1発の威力を優先した方がいいね」
………一ノ瀬の言う通り、だな。
ギガントウォールと、つなみウォール。
どれも強力なキーパー技ではあるけれど、神のアクアを絶った今では、無限の壁よりちょっと強い技ぐらいのものになったはずだ。
そこに、さばきのてっついのブロックを加味したとしても……。
「…円堂にも、出てもらわなきゃならないかもしれないね」
「………ああ。だが、今は自分のことに集中してもらいたい。何かを掴みかけているはずだ」
「みたい……だな」
ザ・フェニックスや、イナズマブレイクの出番もあるはずだけど、それよりもキーパーのことへ意識を向けてもらうってことだな。
さっき、後半が始まる前に何か引っ掛かってたようだし、そこから繋がれば……。
「作戦会議は終わりかい?それを通せるとは限らないけどね。アテナ」
「行かせてもらう。ダッシュ…」
「行くぞ、一ノ瀬!」
「ああ!」
『スピニングカット!!』
「なに!?」
ダッシュストームを使われる前に、鬼道と一ノ瀬、2人がかりのスピニングカットでアテナからボールを奪う。
「鬼道!」
「突破はさせん!メガクエイク!!」
「ぐっ……!」
一ノ瀬からボールを受け取った鬼道に、ディオが立ち塞がる。
染岡の時のように、メガクエイクで鬼道を吹き飛ばすが…。
「まだ…だ……!豪炎寺!!」
「なにっ!?」
アースクエイクは、その場の衝撃で相手を転ばせる技だったため、発動して、相手をダウンさせてしまえば、すぐにボールを奪うことが出来た。
一方メガクエイクは、地割れを引き起こし、相手を吹き飛ばす技。
一見こちらのが強力に見える。実際、ほとんどの場合はこちらのが強力という認識でいいはずだ。
だがメガクエイクの場合、ボールごと相手を吹き飛ばすため、すぐにボールを奪うことは出来ない。
それに、メガクエイクを喰らっただけでは、ボールを奪われた内には入らない。
それが鬼道の狙いだった。鬼道は浮かされたボールを、ヘディングで弾く。
そのコースの先にいたのは……。
「ファイアトルネード!!」
既に炎を左足に纏った豪炎寺だった。
ファイアトルネードが突き進むも、方向はゴールではなく、ほとんど真下だった。
「ツイン…ブースト!!」
そこへ、体制を立て直した鬼道が追い付く。
ツインブーストの中継役を、ファイアトルネードに変えた技。
ツインブーストF……だっけな。
「くっ…!つなみウォール!!」
この展開は、予想していなかったのだろう。
ディフェンスは誰も反応出来ず、ポセイドンが単体でシュートを防ごうとする。
だが、その炎の勢いが止まることはなかった。
「な、なんだ……!?この力は…!う、うおおおおお!!」
「………なんだと?」
『ゴ、ゴォォォオオル!!雷門、ついに1点を獲得!!』
波の壁を突破し、それでも尚抑えつけようとしたポセイドンを吹き飛ばしたボールは、そのままゴールへ。
その声がした方向を向いてみると、ほんの少し、目を見開いたアフロディが見えた。
「助かった、豪炎寺」
「ふっ…。鬼道も、よくあそこから持ち込んでくれたものだ」
「この1点はデカい。この勢い、乗ってこうぜ」
「……ああ」
世宇子ボールで、試合は再開される。
後半開始時の光景と変わらないが、世宇子イレブンの顔に、動揺の色が見え始めた。
「……デメテル。そこからでもいい。シュートを打つんだ」
「あ、ああ…!リフレクトバスター!!」
アフロディの指示に従ったデメテルが、オレたちの陣地とはいえ、ほぼ中央の位置からリフレクトバスターを打ってくる。
どういう意図かは知らないけど、これなら…。
「半田!染岡!2人が戻る必要はない!」
「ああ!この状況なら、流石に…!」
だろう、な。
ポジションからそこまで動いてない状況なら、シュートブロックもしやすいし、なにより…。
『スピニングカット!!』
「ザ・ウォール!!」
「円堂!今度はオレたちが…!」
「………オレも、円堂を支える……!」
「サンキュー!土門、影野!ゴッドハンド!!」
鬼道、一ノ瀬、風丸のスピニングカット。
壁山のザ・ウォール。
ここまで削れば、経験がなかった土門と影野でも、トリプルディフェンスが機能する。
今回のリフレクトバスターは、あっさりと止めることが出来た。
「今度はこっちの番だ!豪炎寺!!」
「………っ!」
円堂が蹴ったボールは、豪炎寺へと渡る。
だが、ボールを受け取ったが、すぐに足を止めることになった。
「シュートを止められても、キミを封じればいい。フォワードの動きを止めるのは、初歩的な戦術だろう?」
「くっ……」
豪炎寺の周りを、アルテミスにヘパイス、アポロンなど、複数の守備が囲っていた。
その少し後ろでは、アレスも備えている。
囲った守備と、さばきのてっついが控えている状況。
豪炎寺のドリブル技、ヒートタックルでは突破出来ない。
と、思っているんだろうな。だったら……!!
「豪炎寺!!」
「半田……!?」
オレが豪炎寺に声をかけた時、オレはサイクロンを右足に宿し、すぐにでも使える準備を整えていた。
流石の豪炎寺も、これには動揺していたが……。
「オレとお前で、まとめて吹き飛ばせば…!」
「……っ!そうか!頼む、半田!!」
「ああ!サイクロン!!」
オレの意図を、豪炎寺は察してくれたようだ。
返事を聞いたオレは、すぐにサイクロンを豪炎寺に向かって設置した。
「なんのつもりだい?ヤケにでも…」
「やれ!豪炎寺!!」
「ああ!はあああああ……!」
『うわあああああ!!』
「な、なんだって…!?」
突然のオレの行動に、嘲笑うかのような表情をしていたアフロディは、すぐにその表情を変えることになった。
オレが設置したサイクロンの中で、豪炎寺はいつものように、ファイアトルネードの準備をした。
この時、飛び上がる時前から少しだけ、既に左足に炎を宿す。
そしてサイクロンで吹き飛ばせると同時に、飛び上がる。
すると、普段のサイクロンとは色がガラッと変わると同時に、その勢いは強くなる。
サイクロンとファイアトルネードの合体、炎の竜巻で守備を吹き飛ばす技が生まれたというワケだ。
「くっ…!だが、ファイアトルネードだけでは、ポセイドンは…」
「なんで豪炎寺だけになるの?」
「なに……!?」
炎を左足に纏って飛び上がる豪炎寺の所へ、ファイアトルネードとは逆に回転しながら青い炎を宿したマックスが合流する。
アイツ、本当にあれをモノにしてたなんてな……。
「マックス…。お前……!」
「豪炎寺は普段通りやってくれればいいよ。僕が勝手に合わせるから」
「……分かった。行くぞ!マックス!!」
「オッケー…!!」
豪炎寺のファイアトルネードと、マックスのバックトルネード。
2つのトルネードが同時に叩き込まれたシュート。
ダブルトルネードが、ゴールへと突き進んだ。
「くっ……!つなみウォール……!!」
同じファイアトルネードの派生技に、2度も破られるワケにはいかないという意地があったのか、ポセイドンは再びつなみウォールを発動。
波の壁が、炎を消そうとする光景も、2度目だ。
「……そういうプライドって、神ってより人間のモノなんじゃない?」
「ぐ、ぐおおおおお!!!」
そして、それが破られるのも、2度目だ。
『ゴォォォオオオオル!!雷門、怒涛の攻撃で2点目だ!!点差を2までに縮めたぞおおお!!』
「……なんだ、これは。何が起こっている……!!」
……アフロディの余裕も、崩れ始めたな。
やりたかったことその①
ダブルトルネード