そんでこのお話でちょうど無印編、FF編が終わります。
もちろん狙ってやりました(大嘘)
オレたちがゴッドノウズを止めた後、世宇子の選手たちの動きが止まった。
「アフロディのゴッドノウズが…、止められた……!?」
「そんな……。あれが止められたら、オレたちは……」
「………なにが、神だ……。僕たちは、いったい……」
その顔に浮かべるのは、驚愕、諦め、そして絶望。
今まで、神のアクアで得た力を振るい、勝ち進んで来た。
だが、ここで躓くことになった。
神のアクアに溺れる前にも、こういうことは何度もあったはずだ。
練習を重ね、力を付けても、通用しなかった。
だから神のアクアの誘惑に負けて、力を得た。
自分たちじゃ、上は目指せないから、それに頼った。
……………オレも似たようなことがあったから、お前たちを責めたりなんかは、出来ない。
でも、お前は……。
「………まだ、だ……!!」
お前はそこから這い上がって、たしかに上へと行けたんだ。
いまも、お前だけは諦めないで、オレたちを、奪うべきゴールを見据えている。
アフロディ。やっぱお前は……。
「……そうでなくちゃ、な」
「へっ。アイツ、いい目するようになったじゃねぇか」
「ああ。今のアフロディなら、良い気持ちでぶつかれそうだ!!」
拳を合わせる円堂。笑みを浮かべる染岡。
………今更だけど、お前たちも、やっぱり変わらないんだな。
「行け!みんな!!」
「オレたちも行くぞ!」
「ああ!!」
ずっと、ここにいても何にもならない。
円堂が投げたボールは少林に渡り、オレたちもそれに続く。
「顔を上げろ!僕たちは、まだ負けていない!終わってない戦いから逃げては、神どころか、人間ですらなくなる!!」
「アフロディ……?」
「………たしかに、今の力は偽物の力だ…。分かっていたんだ…!だけど、心まで失うわけにはいかない!せめて、最後まで走り続ける!終わりの笛が鳴る、その時まで…!!」
「………ああ。それが、オレたちが憧れた……」
『サッカーだった……!!』
アフロディ以外も、絶望の顔から勝利を諦めない、人間の顔に戻った。
今までは、その圧倒的な勝利から、走り続けて試合を終えたことはなかったんだろう。
でも、今の言葉を聞いて、過去に戻って来て、オレは初めて知った。
お前たちも、大きな舞台で戦うことに憧れていた、1人のサッカー好きだったということを……。
「竜巻旋風!」
「ぐぅっ…!!」
「マックスさん!!」
「やらせるか……!!」
「………そこまで、プレイスタイル変わるもの…?」
マックスの言葉には、オレも同感だ。
ヘルメスを突破した少林のパスは、通らなかった。
今までさばきのてっついで吹き飛ばしていたアポロンが、その身軽な身体を活かして距離を詰めて、ヘディングでボールを弾いたからだ。
「こっちだ、アポロン!」
「デメテル!!」
「突破はさせないよ……!コイルター…」
「邪魔をするな!!」
「うわっ……!!」
コイルターンで囲っていた影野を、デメテルが強引に突破する。
コイルターンに足を取られず、ドリブルを維持するのは、言うほど簡単じゃない。
……たしか、デメテルって大地の女神の名前だったよな。
その粘り強さは、名前譲りってところ…かな。
「頼む!アフロディ!!」
「……円堂くん。次こそ点を決めさせてもらう。これが、正しい道で得た力じゃなくても、この必殺技は、昔から思い描いていたものだ……!!」
「やっぱり…。オレの言ったこと、的外れではなかったんだな」
「キミたちのイナズマで、目を覚ませたことには礼を言わせてもらう。でも、雷門イレブン………。いいや、イナズマイレブン!勝負だ!!」
「………半田」
「………ああ」
それを聞いたオレと染岡は、世宇子ゴールへと走る。
アフロディの方、円堂の方へは向かずに、ただ走る。
「なっ…、何故です2人とも!?また、ゴッドハンドトリプルじゃないと……」
「……いや、違うな目金。時間を見てみろ」
「………あっ」
「も、もうロスタイムに入ってるでやんす…!」
「だから、2人は……」
「………円堂を、信じている。そういうことだ」
「それって、あの時の豪炎寺くんのように…」
「カウンターで、決勝点を取る。それしか、2人には見えてない」
たしかに、ゴッドハンドトリプルなら、ゴッドノウズを止められる。
だけど、それだと間に合わない。
この少ない時間で、オレたちが取るべき行動は、戻ることじゃなくて、進むことだ。
それをアフロディも分かっていたからこそ、円堂の名前しか言わなかったんだ。
「ゴッドノウズ!!」
「………………」
後ろから、ゴッドノウズが放たれる音が聞こえる。
その間、円堂が何をしているかは、分からない。
だけど、オレには…。いや、オレたちには分かる。
「アイツ……!」
「ああ……!」
「胸に付いてた丸印……。左手がボロボロなグローブ……。爺ちゃんは左手でやってたけど、オレの場合は……こうすればよかったんだ…!!」
この土壇場で、ようやく見つけたんだな……!!
「これがオレの…!マジン・ザ・ハンドだああああああ!!!」
「………神を越えた、魔神……か」
点を奪った笛は、鳴っていない。
円堂は、マジン・ザ・ハンドをモノにして、ゴッドノウズを止め切った。
あとは、オレたちだ……!!
「頼んだぞ!!2人共おおおおお!!」
『おおおおおおお!!!』
円堂が守ったボールは、オレたちに届いた。
オレと染岡が並び、世宇子のゴールへと進んでいく。
「突破はさせん…!!」
「ポセイドンの元へは、行かせない……!!」
そこへ、ディオやヘパイスが立ち塞がる。
再びゴッドノウズを止められても、今度は絶望しなかった選手たち。
でも…こっちだって、負けられないんだ……!!
「半田!来い!!」
「ああ!!」
ボールを持った染岡が滑り込んでるところに、オレが飛び乗る。
それぞれ足を掴み、ボールを囲んで車のように回りながら突き進む。
『じごくぐるま!!』
『うおおお!!?』
2人を突破し、残るはポセイドンだけだ…!
「来い…!守護神として、今度こそ止めるぞ!」
「チッ…。ここまで来たが、2人でどうするか……」
「……いや。あれも、2人で打つシュートじゃなかったとしたら…!」
「……っ!ああ、そういうことかよ…!!」
あの、2人の後ろにあったゴッドハンドも、今なら分かる。
あれは、2人のシュートじゃなくて、3人でやるシュート技だってことが……!!
『円堂ォォオ!!』
「ああ…!!行け!染岡!半田ぁ!!」
円堂が拳に緑のエネルギーを纏わせ、地面を叩く。
オレたちの下から、薄緑色になったゴッドハンドが出てきて、オレたちを乗せて空へ。
守護者がドゴン。2人がバビューン…か。
「……へっ。マジで宇宙じゃねえか…!」
「神を越えるなら、宇宙……。足元へは来たんだ。宇宙も、越えてやる…!!」
薄緑色の拳が開かれると、そこは宇宙だった。
パッとなったら、同時にズバーン……。
「合わせろよ、半田!!」
「お前もだろ、染岡!!」
これで、決めるぞ…!!
『ザ・ギャラクシィィイイイ!!!』
2人が出した技の名前は、同じだった。
円堂に連れて来られた宇宙から叩き落とすシュート、ザ・ギャラクシー。
大気圏を突入し、放たれたシュートはポセイドンが護るゴールへと進んだ。
「ぬおおおおおおおお!!つなみウォール!!」
上空から見えたのは、巨大化しながらつなみウォールを発動させるポセイドンだった。
アイツも、全力ってことか…。
「まだだ…!ギガントウォール!!」
つなみウォールは、すぐに突破された。
だけどポセイドンは、諦めなかった。
そのまま巨大化した身体で拳を振り下ろし、ギガントウォールで防ごうとする。
「ぬ、ぬうううううう…!うおおおおおおお!!!!」
その均衡は、破られることになった。
巨大化したポセイドンは吹き飛ばされ、ボールは……。
「まだ…だ……!!」
ゴールラインを割る直前、息を切らしながら戻って来ていたアフロディが、かろうじて防いでいた。
試合が始まってすぐの、自分が得た力に酔いしれ、驕っていたアフロディは、もういない。
最後の最後まで、なんとか自分たちの勝利を引き寄せようとする、1人のサッカー選手が、ゴールを守っていた。
『いっけえええええええ!!!!』
「させる……かああああああ!!!!」
オレたちの心からの叫びと、アフロディの執念の唸り。
それを乗せたボールの攻防は……。
「ふっ……。これが、本当のサッカー……か」
吹き飛ばされる直前、穏やかな笑みを浮かべたアフロディ。
勝ったのは、オレたちだ。
『…………ハッ!雷門!!ついに逆転!!円堂と染岡、半田のミラクルシュートが、執念の守りを打ち破ったあああああああ!!そしてここで、試合が終了!!フットボールフロンティア全国大会!優勝は、雷門中学だあああああああ!!!』
角馬のお父さんの実況が響いている間に、試合終了の笛が鳴った。
…………また日本一に、なれたんだな……。
「やった……んだよな……?」
「5対4……。オレたちのが先で、後が世宇子だから……」
「勝ち越しで、笛が鳴った……」
「………くううう…!やったあああああああ!!!」
『やったああああああああああ!!!』
円堂の歓声を引き金に、オレたちも声を上げる。
もう、すぐに円堂のところへ集まって、胴上げの時間だ。
ザ・ギャラクシーのメンツで、お前だけ行ってないもんな。
行かせてやるよ、宇宙。
「よし!次は半田だ!!また宇宙行かせてやれ!!」
『おお!!』
「えっ、なんでオレなんだよ!?オレはいいから…」
「逃しませんよ。半田さん」
「えっ。何やってんの宍戸。離してくれると、先輩嬉しいんだけど」
「いやいや。離しませんよ半田さん。だって離すと逃げるでしょ半田さん。絶対に逃しませんからね半田さん」
「………もしかしてお前、この前の追いかけっこ根に持って」
「頼んだ壁山!!」
「任せるっす!!」
「るだろおおおおお!!!」
壁山に投げられ、下にはみんなが待機してて、お手玉状態なオレ。
ねえ、今のオレどうなってんの?大丈夫?ちゃんと地上帰って来れる?
「………よかったね、半田くん。みんな。あの部室前、テニスコートの端から始まったのが、日本一になったんだよ」
「つくしちゃん。その時から見てたって言ってたもんね。私もそこから始まったから、すっごく嬉しいや」
「いやぁ、あの胴上げは全員分撮りたいですね!キャプテンや半田さんの分は撮れましたし、他のみんなもどんどん飛んでって欲しいです!!」
「飛んでって…。まあ、写真ならいっぱい撮っておきなさい。永久保存となるでしょうからね」
「………大介さん、やりましたよ。あなたの孫と、その仲間たちがこうして、イナズマイレブンの伝説を継いでくれました」
…………あの、余韻に浸るのは、オレもよく分かる。
分かるんだけど、そろそろオレのこれ、誰か止めてくれると嬉しいなって思います。
でないとそろそろ、ホントにオレ重力というモノを認識できなくなりそうなんだけど………。
「…………その辺りにしとかないと、本当に半田くんが神になっちゃうと思うんだけど」
『ア、アフロディ……!?』
「ぶべっ」
『あっ』
………うん。それを望んだのはオレだから、何も言わない。
だから、せめて誰かは、ちゃんとオレを受け止めて欲しかったなんて贅沢なことは、オレは言わない。
……………地面って、痛いんだなぁ……。
「声を掛けた僕が言うのもなんだけど……。大丈夫かい……?」
「ま、まあ……。痛いけど、重力感じれなくなるよりは、絶対マシだから……。逆に大丈夫…」
「キミたちがやってたのって、本当にただの胴上げなのかい?重力を感じれなくなるなんて言葉、なかなか聞かないんだけど」
「………何をしにきた、とまでは言わない。お前も、影山の被害者とも言えるだろうからな」
「………影山、か」
「………?」
鬼道が影山の名前を出した途端、アフロディは複雑そうな表情を浮かべた。
手を伸ばしたのはお前たちなんだとしても、用意したのは影山だろ。
全く悪くないって思ってるわけじゃなさそうだし、別にそこまで複雑な顔しなくても良くないか?
「…………いや、何でもない。僕の思い違いかもしれないからね」
「思い違いって、なんだよ」
「そこまでの間を、関わって来たわけじゃないということだ。踏み込んだことは、そうそう言えないよ」
「………にしても、気になるんだけど」
「まあ、機会があれば話すよ。時間はかかるけど、僕たちは必ずリベンジする。それまで、待っててくれるかな?」
「………ああ!次は、最初からあのスタイルでやろうぜ!!」
「あ、あれ……か。あの泥臭い感じ、まだ少し抵抗があるのだけど……」
そんなことを言ってる間に、オレたちに優勝トロフィーが渡され、スタジアムを紙吹雪が舞っていた。
………やっぱり、嬉しいな。この瞬間。
「オレたち、なれたのかな。イナズマイレブンに」
「……さあな。伝説って、自分たちで決めることじゃないし。呼ばれるならまだしも、自分からそう呼ぶことって、あまりないしな」
「でも、OBは言ってたぞ?」
「あれは周りから呼ばれてたんだから、いいだろ」
「………まっ、そうだな。日本一だけじゃ、終われないもんな」
「初めて夕香のことを教えた時に聞いただけだが…。世界一を目指すという言葉、オレは忘れていないぞ」
「なんだ、半田。そんなことを言ったのか。志は大きい方がいいが、それにしては大き過ぎるぞ」
「ご、豪炎寺…。鬼道まで………」
「………だが、悪くない。日本一で満足しないで、世界一を目指すか。お前の場合は、最初から目指してたみたいだがな」
「いいじゃねえか。オレも初めて聞いたときは、気が早過ぎるって思ったけどよ。オレたちなら、夢じゃないかもしれねえだろ」
「………否定もしないぞ」
「…………オレも、撤回するつもりはない。オレは、世界一の舞台でサッカーをしたい。そのためにも、これから練習しないとな」
「……ああ。とりあえず、雷門中へ帰ろう。そうしたら今日は休んで、明日から特訓だ!」
………ああ、そうだ。
流石に今日は、この状態じゃ練習すらままならないけど、明日からも頑張らないとな。
エイリア学園の襲来まで、1週間ぐらいはあったはずだ。
せめてコンディションは整えられるし、もしかしたら、必殺技も磨けるかもしれない。
まずは初めて戦う、ジェミニストーム。
せめて、脱落者は出さないよう、頑張らなくちゃな………。
そんなオレの決意は、すぐに打ち砕かれることになった。
「あれ……?」
「どうした?大谷」
バスに乗って、スタジアムから雷門中へ戻る途中。
車内から、それは見えた。
「なにか黒いのが…雷門中の方に…………」
「………………………………えっ?」
なんで……だよ……。
いくらなんでも、これを忘れることなんて、あり得ない……!
なんで、もうエイリア学園が、来るんだよ……!?
やりたかったこと④と⑤
最後まで抗い続けたアフロディとポセイドン。
円堂、染岡、半田のザ・ギャラクシーでポセイドンとアフロディを吹っ飛ばす。
はい。これにて無印編は終了です。
ずいぶんと時間がかかりましたが、一区切り着くとこまでいけたのは、一種の達成感がありますね。
エイリア学園編も執筆していきますので、気長にお待ちいただければと思います。
ところで、なんで半田さん。決勝戦終わったら即エイリア学園戦になるなんて一番大事なこと、覚えてなかったんでしょうね?(作者感