イナズマイレブン〜中途半端な逆行〜   作:トライデント

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調べたところ、このお話でちょうど50話目だそうです。
そんでこのお話でちょうど無印編、FF編が終わります。
もちろん狙ってやりました(大嘘)


神々の聖戦⑤

オレたちがゴッドノウズを止めた後、世宇子の選手たちの動きが止まった。

 

 

「アフロディのゴッドノウズが…、止められた……!?」

 

「そんな……。あれが止められたら、オレたちは……」

 

「………なにが、神だ……。僕たちは、いったい……」

 

 

その顔に浮かべるのは、驚愕、諦め、そして絶望。

今まで、神のアクアで得た力を振るい、勝ち進んで来た。

だが、ここで躓くことになった。

神のアクアに溺れる前にも、こういうことは何度もあったはずだ。

練習を重ね、力を付けても、通用しなかった。

だから神のアクアの誘惑に負けて、力を得た。

自分たちじゃ、上は目指せないから、それに頼った。

……………オレも似たようなことがあったから、お前たちを責めたりなんかは、出来ない。

でも、お前は……。

 

 

「………まだ、だ……!!」

 

 

お前はそこから這い上がって、たしかに上へと行けたんだ。

いまも、お前だけは諦めないで、オレたちを、奪うべきゴールを見据えている。

アフロディ。やっぱお前は……。

 

 

「……そうでなくちゃ、な」

 

「へっ。アイツ、いい目するようになったじゃねぇか」

 

「ああ。今のアフロディなら、良い気持ちでぶつかれそうだ!!」

 

 

拳を合わせる円堂。笑みを浮かべる染岡。

………今更だけど、お前たちも、やっぱり変わらないんだな。

 

 

「行け!みんな!!」

 

「オレたちも行くぞ!」

 

「ああ!!」

 

 

ずっと、ここにいても何にもならない。

円堂が投げたボールは少林に渡り、オレたちもそれに続く。

 

 

「顔を上げろ!僕たちは、まだ負けていない!終わってない戦いから逃げては、神どころか、人間ですらなくなる!!」

 

「アフロディ……?」

 

「………たしかに、今の力は偽物の力だ…。分かっていたんだ…!だけど、心まで失うわけにはいかない!せめて、最後まで走り続ける!終わりの笛が鳴る、その時まで…!!」

 

「………ああ。それが、オレたちが憧れた……」

 

『サッカーだった……!!』

 

 

アフロディ以外も、絶望の顔から勝利を諦めない、人間の顔に戻った。

今までは、その圧倒的な勝利から、走り続けて試合を終えたことはなかったんだろう。

でも、今の言葉を聞いて、過去に戻って来て、オレは初めて知った。

お前たちも、大きな舞台で戦うことに憧れていた、1人のサッカー好きだったということを……。

 

 

「竜巻旋風!」

 

「ぐぅっ…!!」

 

「マックスさん!!」

 

「やらせるか……!!」

 

「………そこまで、プレイスタイル変わるもの…?」

 

 

マックスの言葉には、オレも同感だ。

ヘルメスを突破した少林のパスは、通らなかった。

今までさばきのてっついで吹き飛ばしていたアポロンが、その身軽な身体を活かして距離を詰めて、ヘディングでボールを弾いたからだ。

 

 

「こっちだ、アポロン!」

 

「デメテル!!」

 

「突破はさせないよ……!コイルター…」

 

「邪魔をするな!!」

 

「うわっ……!!」

 

 

コイルターンで囲っていた影野を、デメテルが強引に突破する。

コイルターンに足を取られず、ドリブルを維持するのは、言うほど簡単じゃない。

……たしか、デメテルって大地の女神の名前だったよな。

その粘り強さは、名前譲りってところ…かな。

 

 

「頼む!アフロディ!!」

 

「……円堂くん。次こそ点を決めさせてもらう。これが、正しい道で得た力じゃなくても、この必殺技は、昔から思い描いていたものだ……!!」

 

「やっぱり…。オレの言ったこと、的外れではなかったんだな」

 

「キミたちのイナズマで、目を覚ませたことには礼を言わせてもらう。でも、雷門イレブン………。いいや、イナズマイレブン!勝負だ!!」

 

「………半田」

 

「………ああ」

 

 

それを聞いたオレと染岡は、世宇子ゴールへと走る。

アフロディの方、円堂の方へは向かずに、ただ走る。

 

 

「なっ…、何故です2人とも!?また、ゴッドハンドトリプルじゃないと……」

 

「……いや、違うな目金。時間を見てみろ」

 

「………あっ」

 

「も、もうロスタイムに入ってるでやんす…!」

 

「だから、2人は……」

 

「………円堂を、信じている。そういうことだ」

 

「それって、あの時の豪炎寺くんのように…」

 

「カウンターで、決勝点を取る。それしか、2人には見えてない」

 

 

たしかに、ゴッドハンドトリプルなら、ゴッドノウズを止められる。

だけど、それだと間に合わない。

この少ない時間で、オレたちが取るべき行動は、戻ることじゃなくて、進むことだ。

それをアフロディも分かっていたからこそ、円堂の名前しか言わなかったんだ。

 

 

「ゴッドノウズ!!」

 

「………………」

 

 

後ろから、ゴッドノウズが放たれる音が聞こえる。

その間、円堂が何をしているかは、分からない。

だけど、オレには…。いや、オレたちには分かる。

 

 

「アイツ……!」

 

「ああ……!」

 

「胸に付いてた丸印……。左手がボロボロなグローブ……。爺ちゃんは左手でやってたけど、オレの場合は……こうすればよかったんだ…!!」

 

 

この土壇場で、ようやく見つけたんだな……!!

 

 

「これがオレの…!マジン・ザ・ハンドだああああああ!!!」

 

「………神を越えた、魔神……か」

 

 

点を奪った笛は、鳴っていない。

円堂は、マジン・ザ・ハンドをモノにして、ゴッドノウズを止め切った。

あとは、オレたちだ……!!

 

 

「頼んだぞ!!2人共おおおおお!!」

 

『おおおおおおお!!!』

 

 

円堂が守ったボールは、オレたちに届いた。

オレと染岡が並び、世宇子のゴールへと進んでいく。

 

 

「突破はさせん…!!」

 

「ポセイドンの元へは、行かせない……!!」

 

 

そこへ、ディオやヘパイスが立ち塞がる。

再びゴッドノウズを止められても、今度は絶望しなかった選手たち。

でも…こっちだって、負けられないんだ……!!

 

 

「半田!来い!!」

 

「ああ!!」

 

 

ボールを持った染岡が滑り込んでるところに、オレが飛び乗る。

それぞれ足を掴み、ボールを囲んで車のように回りながら突き進む。

 

 

『じごくぐるま!!』

 

『うおおお!!?』

 

 

2人を突破し、残るはポセイドンだけだ…!

 

 

「来い…!守護神として、今度こそ止めるぞ!」

 

「チッ…。ここまで来たが、2人でどうするか……」

 

「……いや。あれも、2人で打つシュートじゃなかったとしたら…!」

 

「……っ!ああ、そういうことかよ…!!」

 

 

あの、2人の後ろにあったゴッドハンドも、今なら分かる。

あれは、2人のシュートじゃなくて、3人でやるシュート技だってことが……!!

 

 

『円堂ォォオ!!』

 

「ああ…!!行け!染岡!半田ぁ!!」

 

 

円堂が拳に緑のエネルギーを纏わせ、地面を叩く。

オレたちの下から、薄緑色になったゴッドハンドが出てきて、オレたちを乗せて空へ。

守護者がドゴン。2人がバビューン…か。

 

 

「……へっ。マジで宇宙じゃねえか…!」

 

「神を越えるなら、宇宙……。足元へは来たんだ。宇宙も、越えてやる…!!」

 

 

薄緑色の拳が開かれると、そこは宇宙だった。

パッとなったら、同時にズバーン……。

 

 

「合わせろよ、半田!!」

 

「お前もだろ、染岡!!」

 

 

これで、決めるぞ…!!

 

 

『ザ・ギャラクシィィイイイ!!!』

 

 

2人が出した技の名前は、同じだった。

円堂に連れて来られた宇宙から叩き落とすシュート、ザ・ギャラクシー。

大気圏を突入し、放たれたシュートはポセイドンが護るゴールへと進んだ。

 

 

「ぬおおおおおおおお!!つなみウォール!!」

 

 

上空から見えたのは、巨大化しながらつなみウォールを発動させるポセイドンだった。

アイツも、全力ってことか…。

 

 

「まだだ…!ギガントウォール!!」

 

 

つなみウォールは、すぐに突破された。

だけどポセイドンは、諦めなかった。

そのまま巨大化した身体で拳を振り下ろし、ギガントウォールで防ごうとする。

 

 

「ぬ、ぬうううううう…!うおおおおおおお!!!!」

 

 

その均衡は、破られることになった。

巨大化したポセイドンは吹き飛ばされ、ボールは……。

 

 

「まだ…だ……!!」

 

 

ゴールラインを割る直前、息を切らしながら戻って来ていたアフロディが、かろうじて防いでいた。

試合が始まってすぐの、自分が得た力に酔いしれ、驕っていたアフロディは、もういない。

最後の最後まで、なんとか自分たちの勝利を引き寄せようとする、1人のサッカー選手が、ゴールを守っていた。

 

 

『いっけえええええええ!!!!』

 

「させる……かああああああ!!!!」

 

 

オレたちの心からの叫びと、アフロディの執念の唸り。

それを乗せたボールの攻防は……。

 

 

「ふっ……。これが、本当のサッカー……か」

 

 

吹き飛ばされる直前、穏やかな笑みを浮かべたアフロディ。

勝ったのは、オレたちだ。

 

 

『…………ハッ!雷門!!ついに逆転!!円堂と染岡、半田のミラクルシュートが、執念の守りを打ち破ったあああああああ!!そしてここで、試合が終了!!フットボールフロンティア全国大会!優勝は、雷門中学だあああああああ!!!』

 

 

角馬のお父さんの実況が響いている間に、試合終了の笛が鳴った。

…………また日本一に、なれたんだな……。

 

 

「やった……んだよな……?」

 

「5対4……。オレたちのが先で、後が世宇子だから……」

 

「勝ち越しで、笛が鳴った……」

 

「………くううう…!やったあああああああ!!!」

 

『やったああああああああああ!!!』

 

 

円堂の歓声を引き金に、オレたちも声を上げる。

もう、すぐに円堂のところへ集まって、胴上げの時間だ。

ザ・ギャラクシーのメンツで、お前だけ行ってないもんな。

行かせてやるよ、宇宙。

 

 

「よし!次は半田だ!!また宇宙行かせてやれ!!」

 

『おお!!』

 

「えっ、なんでオレなんだよ!?オレはいいから…」

 

「逃しませんよ。半田さん」

 

「えっ。何やってんの宍戸。離してくれると、先輩嬉しいんだけど」

 

「いやいや。離しませんよ半田さん。だって離すと逃げるでしょ半田さん。絶対に逃しませんからね半田さん」

 

「………もしかしてお前、この前の追いかけっこ根に持って」

 

「頼んだ壁山!!」

 

「任せるっす!!」

 

「るだろおおおおお!!!」

 

 

壁山に投げられ、下にはみんなが待機してて、お手玉状態なオレ。

ねえ、今のオレどうなってんの?大丈夫?ちゃんと地上帰って来れる?

 

 

「………よかったね、半田くん。みんな。あの部室前、テニスコートの端から始まったのが、日本一になったんだよ」

 

「つくしちゃん。その時から見てたって言ってたもんね。私もそこから始まったから、すっごく嬉しいや」

 

「いやぁ、あの胴上げは全員分撮りたいですね!キャプテンや半田さんの分は撮れましたし、他のみんなもどんどん飛んでって欲しいです!!」

 

「飛んでって…。まあ、写真ならいっぱい撮っておきなさい。永久保存となるでしょうからね」

 

「………大介さん、やりましたよ。あなたの孫と、その仲間たちがこうして、イナズマイレブンの伝説を継いでくれました」

 

 

…………あの、余韻に浸るのは、オレもよく分かる。

分かるんだけど、そろそろオレのこれ、誰か止めてくれると嬉しいなって思います。

でないとそろそろ、ホントにオレ重力というモノを認識できなくなりそうなんだけど………。

 

 

「…………その辺りにしとかないと、本当に半田くんが神になっちゃうと思うんだけど」

 

『ア、アフロディ……!?』

 

「ぶべっ」

 

『あっ』

 

 

………うん。それを望んだのはオレだから、何も言わない。

だから、せめて誰かは、ちゃんとオレを受け止めて欲しかったなんて贅沢なことは、オレは言わない。

……………地面って、痛いんだなぁ……。

 

 

「声を掛けた僕が言うのもなんだけど……。大丈夫かい……?」

 

「ま、まあ……。痛いけど、重力感じれなくなるよりは、絶対マシだから……。逆に大丈夫…」

 

「キミたちがやってたのって、本当にただの胴上げなのかい?重力を感じれなくなるなんて言葉、なかなか聞かないんだけど」

 

「………何をしにきた、とまでは言わない。お前も、影山の被害者とも言えるだろうからな」

 

「………影山、か」

 

「………?」

 

 

鬼道が影山の名前を出した途端、アフロディは複雑そうな表情を浮かべた。

手を伸ばしたのはお前たちなんだとしても、用意したのは影山だろ。

全く悪くないって思ってるわけじゃなさそうだし、別にそこまで複雑な顔しなくても良くないか?

 

 

「…………いや、何でもない。僕の思い違いかもしれないからね」

 

「思い違いって、なんだよ」

 

「そこまでの間を、関わって来たわけじゃないということだ。踏み込んだことは、そうそう言えないよ」

 

「………にしても、気になるんだけど」

 

「まあ、機会があれば話すよ。時間はかかるけど、僕たちは必ずリベンジする。それまで、待っててくれるかな?」

 

「………ああ!次は、最初からあのスタイルでやろうぜ!!」

 

「あ、あれ……か。あの泥臭い感じ、まだ少し抵抗があるのだけど……」

 

 

そんなことを言ってる間に、オレたちに優勝トロフィーが渡され、スタジアムを紙吹雪が舞っていた。

………やっぱり、嬉しいな。この瞬間。

 

 

「オレたち、なれたのかな。イナズマイレブンに」

 

「……さあな。伝説って、自分たちで決めることじゃないし。呼ばれるならまだしも、自分からそう呼ぶことって、あまりないしな」

 

「でも、OBは言ってたぞ?」

 

「あれは周りから呼ばれてたんだから、いいだろ」

 

「………まっ、そうだな。日本一だけじゃ、終われないもんな」

 

「初めて夕香のことを教えた時に聞いただけだが…。世界一を目指すという言葉、オレは忘れていないぞ」

 

「なんだ、半田。そんなことを言ったのか。志は大きい方がいいが、それにしては大き過ぎるぞ」

 

「ご、豪炎寺…。鬼道まで………」

 

「………だが、悪くない。日本一で満足しないで、世界一を目指すか。お前の場合は、最初から目指してたみたいだがな」

 

「いいじゃねえか。オレも初めて聞いたときは、気が早過ぎるって思ったけどよ。オレたちなら、夢じゃないかもしれねえだろ」

 

「………否定もしないぞ」

 

「…………オレも、撤回するつもりはない。オレは、世界一の舞台でサッカーをしたい。そのためにも、これから練習しないとな」

 

「……ああ。とりあえず、雷門中へ帰ろう。そうしたら今日は休んで、明日から特訓だ!」

 

 

………ああ、そうだ。

流石に今日は、この状態じゃ練習すらままならないけど、明日からも頑張らないとな。

エイリア学園の襲来まで、1週間ぐらいはあったはずだ。

せめてコンディションは整えられるし、もしかしたら、必殺技も磨けるかもしれない。

まずは初めて戦う、ジェミニストーム。

せめて、脱落者は出さないよう、頑張らなくちゃな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなオレの決意は、すぐに打ち砕かれることになった。

 

 

「あれ……?」

 

「どうした?大谷」

 

 

バスに乗って、スタジアムから雷門中へ戻る途中。

車内から、それは見えた。

 

 

「なにか黒いのが…雷門中の方に…………」

 

「………………………………えっ?」

 

 

なんで……だよ……。

いくらなんでも、これを忘れることなんて、あり得ない……!

なんで、もうエイリア学園が、来るんだよ……!?




やりたかったこと④と⑤
最後まで抗い続けたアフロディとポセイドン。
円堂、染岡、半田のザ・ギャラクシーでポセイドンとアフロディを吹っ飛ばす。

はい。これにて無印編は終了です。
ずいぶんと時間がかかりましたが、一区切り着くとこまでいけたのは、一種の達成感がありますね。
エイリア学園編も執筆していきますので、気長にお待ちいただければと思います。




ところで、なんで半田さん。決勝戦終わったら即エイリア学園戦になるなんて一番大事なこと、覚えてなかったんでしょうね?(作者感

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