ジェミニストームに大敗を喫したオレたちは、稲妻総合病院へと走った。
オレがマックスを、壁山が少林と宍戸を、染岡が影野を抱えて、なんとか到着した。
………あまり気にしてなかったけど。よく壁山は2人抱えることが出来たな。一番デカい体格してるってのを加味してもすごいぞ。
「………………」
いまオレたちは、エントランスで報告を待っている。
少なくとも、マックスの入院は決まってしまったはずだ。
………オレの、せいで。
「………みんな。先生の検査が終わったって」
「みんなは!?みんなは、どうなった!?」
「お、落ち着け半田!ここ病院だぞ!」
「…………悪い」
「……みんな、病室に入ったって。影野くんと宍戸くん、少林寺くんは軽い怪我で済んでるけど、検査入院だって」
「検査入院ってことは、短めってことか……?」
「………だって」
先生から話を聞いた木野から、影野たちの状況を聞かされた。
そうしている間に、オレたちは影野たちのいる病室へと向かっていた。
「……マックスは?」
「……………」
「…………病室だけ、教えてくれ」
「………224だって」
それを聞いたオレは、1人その場から離れた
走り出さずにいれただけ、ギリギリ、本当にギリギリ落ち着いていることが、自分でも分かった。
「……………」
病室に入ると、そこにはマックスがいた。
ただ、まだ目を覚ましていなくて、眠ったままだった。
「………なんで、オレを庇ったんだよ。そんなことしなきゃ、こんな目に遭わなくて良かっただろ」
オレが怪我を負ったところで、前回とやる事は変わらない。
みんながイナズマキャラバンに乗って、全国を巡って、エイリア学園と戦うということまでは、変わらないはずだ。
………オレの記憶と違って、世宇子との戦いからすぐに来たけど、それ以降は………。
「……………どっちにしろ、お前がこんな目に遭う理由なんて、無かっただろ」
木野から話を聞く限り、影野たちの怪我は軽いもので、すぐに復帰出来るはずだ。
前回に比べたら、それだけでも全く違う流れになっていた。
マックスだって、怪我を負うことも無かったかもしれない。
………オレがあの時、ボーッとしてたのが、いけなかったんだ。
「半田くん……。マックスくんは…?」
「………まだ、寝てる」
マックスの病室に、大谷が入って来た。
……たしかあの時、オレに声をかけてくれたのは、円堂と大谷だったっけ。
「………あの、半田くん」
「……悪い。1人にさせてくれ」
「あっ……」
大谷と入れ違いになるように、オレは部屋から出た。
いまはとにかく、1人になりたかった。
「………また、あの目をしてる……」
そんな大谷の言葉は、オレには届かなかった。
「……………」
オレはいま、1人で病院のラウンジにいる。
オレはこれから、どうすればいいんだ。
もちろん、エイリア学園と戦うことになるのは、分かってる。
でも、本当にオレは、アイツらと満足に戦えるのか?
前回と比べれば、強くなってると自覚はある。
それでも、さっきの試合では、何も通用しなかった。
「……………この先、オレは……」
「おや。久しぶりですね、半田くん」
「………えっ?」
オレだけがいたラウンジに、オレ以外の声が響いた。
入り口の方に目を向けると、そこにいたのは……。
「……ふ、冬海……」
「影野くんたちが運ばれたと聞いたのでね。病室に行く前に、キミを見つけるとは思いませんでしたけど」
この前みた患者服と違い、寝巻き姿をした冬海が、そこにいた。
「………目、覚ましたんだな」
「どうせ目を覚ますなら、決勝戦前が良かったんですがね。ちょうど始まるタイミングだったらしく、火来校長に声をかけるのが遅くなってしまいました」
「……校長に?」
「全校生徒で、キミたちの試合を見届けるように後押ししたんですよ。元々その気はあったみたいですから、話しは早かったですね」
「………だから、みんなが校舎に居なかったって言ってたのか」
「エイリア学園が来るのは分かってましたからね。前も生徒に被害はありませんでしたが、念には念をということで」
………エイリア学園が来るのは分かってた、か。
「……………なあ、冬海」
「なんです?」
「……オレの記憶だと、エイリア学園って、世宇子の試合から少し経ってから来てたんだよ」
「………はい?」
「……やっぱ、そんな反応するか」
「いや、それは流石に。いくらなんでも、この事を忘れるとは思いませんでしたから」
「………オレも、そう思ってた。でも、違ったんだよ。これまでも、オレの記憶と違ってたことが、何度もあってさ」
そう。いま思い返すと、エイリア学園襲来のタイミング以外にも、オレの記憶とは違うことがいくつもあった。
その時は毎回、オレの記憶違いだったり、丸っきり同じじゃないんだと、軽く流してた。
「……今思い返すと、世宇子との試合前に、稲妻町のみんながおかしくなってたんだ。それもたしか、影山の仕業で」
「い、いや……。いくら影山でも、そんな大規模なことは…」
………影山のことは、他にも気になる事はあるけど、それは一旦置いておく。
だけど冬海の反応的に、冬海からしたら、前回はそんなことはしてなかったようだった。
と、なると……。
「……オレと冬海がいたところって、別なんだろうな」
「別、とは……?」
「そもそも、オレたちが戻って来た原理とか、何にも分かってはいないけどさ。これだけは分かったよ。エイリア学園の襲来時期の認識の違いの原因は、そういうことなんだって」
「……………ふむ」
それを考えると、この先もどうなるか、全く分からない。
みんなも、どうなるか……。
「……私の記憶ですと、あなたたちが戦い続けて、最終的にどうにかしてと思いますがね。過剰に身構えすぎるのも、どうかと」
「だけど、これからもそうかは…」
「………はあ」
「えっ……?」
えっ、なんで冬海にため息を吐かれなきゃいけないんだ?
「あなた。ここまで来たのは、これから起こることを知ってて、優位に進められるからだったんですか?」
「そ、そんなことはない!オレだって、頑張って……」
「でしょうね。さっきまで眠ってましたけど、それまでも見てましたし、世宇子の試合も見ましたからね。分かってますよ」
「な、なら…なんで……」
「やることは変わらない。じゃなかったんですか?」
「…………」
「それに、あなたには夢があるはずでしょう。ならば、こんなところで立ち止まるワケには、いかないんじゃないんですか?」
「…………それ、でも……」
「…………はあああ」
………なんか、さっきよりも大きなため息を吐かれたけど。
「やっぱり、あなた分かってませんね。マックスくんのところに行きなさい」
「えっ……?」
「そろそろ、目を覚ますはずでしょう。ほら、さっさと行ってくる」
冬海に背中を押され、オレはラウンジから出された。
マックスのところに行ったって、何をするワケじゃ……。
「あっ、半田くん……」
「ホントに来た。大谷の言う通りだね」
「マックス……」
冬海の言う通り、病室に行くと、マックスは目を覚ましていた。
包帯を付け、ベッドの上に寝ながら、入り口にいるオレに顔を向けて、そう言った。
「半田に怪我は無さそうだね。良かった良かった」
「良かった…って……」
「まっ、僕が勝手にやったことだからさ。でも、次は無いからね?」
「…………なんで、だよ」
「ん?」
「なんで、オレなんか庇ったんだよ。あんなことしなきゃ、お前がこんな目に遭うことなんて、無かっただろ」
「なんでって、そりゃ……」
マックスは、オレの顔をじっと見つめる。
……なんだよ。オレの顔に、なんか付いてるのかよ?
「………さっきよりはマシだけど、戻りそうだね。こりゃ」
「………何がだよ」
「気付いてないようだから言うけどさ。半田って、わりと考えてること、分かりやすいからね?」
「………?」
「ああ、ほら。今も急になんだよ?みたいな顔して」
「いや、今の流れだったら、誰だってそうするだろ」
「さっきもさ、すごい顔してたからね?全てを砕かれた、絶望したかのような顔してたから」
「……………………」
………否定は、出来ない。
記憶通りとは言え、今までよりも大きな差を見せつけられて、新しく身に付けた力ですら届かなかったと、嫌でも分からされた。
オレが戻って来たところで、何も変わったりはしなくて……。
「……だから。その目、やめろって」
「えっ……?」
「やっぱり、庇って良かったよ。じゃあ、大谷。頼んだよ」
「………うん。行こう、半田くん」
「お、大谷?いや、行こうって……」
「ああ、半田?先に言っておくけど」
「な、なんだよ…。オレの質問に、全然答えないで……」
「半田が怪我して病院来たら、僕がバックトルネードでトドメ刺すからね」
「………………は?」
「まあ、半分冗談だけどさ。ほら、さっさと行った行った。敵討ち、任せたからねー」
そう言って、マックスはカーテンを閉めた。
オレは、大谷に引っ張られて、影野たちの病室へ向かった。
「…………大谷」
「……なに?」
「……マックス、なんて言ってたんだ?」
「………私も、同じこと考えてるんだからね」
「えっ…?」
「……今の半田くん。1人にさせちゃ、絶対にダメだって。たしかに、今は少しだけマシになってる。でも、さっきの半田くんって、目に光が無かったもん。もし、怪我をして入院なんてことになってたら、もう二度と、戻って来なかったかもしれないって、マックスくん言ってた」
「……………………」
………そう、か?
いや、ダークエンペラーズには、絶対にならない。
またみんなに、迷惑をかけたりは、しな…………。
「………………そう、かもな」
いや、そうとは言い切れない…か。
あの時のオレは、どん底に叩き落とされていた。
もう少し力があったらと、ベッドの上で自分を呪ってたあの時よりも、どん底だった。
そんな時に、また病院のベッドで、自分を呪うようなことになってたとしたら……。
「……どうなってたか、自分でも分からない……か」
「……絶対に、どこかに行ったりなんかしちゃ、イヤだからね」
「…………………」
大谷の言葉に、今は返事は出来なかった。
そうしている間に、影野たちの病室へと着いた。
3人がベッドの上にいて、他のみんながそれを囲んでいた。
「あっ、半田さん!オレたち、ちょっとだけお休みもらいますけど、すぐに戻りますからね!あのことわざ宇宙人に、クンフーのなんたるかを叩き込みたいですから!」
「この前の鬼特訓がなかったら、オレも大怪我してたかもしれないですし……。半田さん、戻ったらまた特訓、お願いします!」
「あっ、オレもお願いします!びしばし鍛えてください!」
「………………2人、とも…」
「…………壁山、栗松。オレが戻ってくるまで、雷門の守備、頼んだよ」
「もちろんでやんす!影野さんがいない間、その分オレたちが何倍も頑張るでやんす!」
「はいっす!影野さんも、すぐ戻って来てくれると嬉しいっす!」
「……もちろんだよ。負けっぱなしなんて、嫌だからね」
「おい、影野。オレは?」
「………………風丸はその内、疾風ディフェンダーから、疾風プレイヤーに変わるでしょ」
「何の話だよ」
「………だから、半田。円堂たちにも言ったけど、オレたちが戻るまで、ここに来たら許さないからね。とくに半田が来たら、オレたち3人でハリケーンアローするから」
「……………殺意、高過ぎるだろ」
………この3人も、前回とは違う。
自分に力が無かったからと言う事はなく、リベンジに燃えていた。
………そう、だな。
「………大谷。さっき、返事を言えなかったけど」
「……うん」
「流石に、ハリケーンアローも、バックトルネードも喰らいたくないからさ。オレ、頑張るよ」
「…………うん!」
「えっ、半田。ハリケーンアローはともかく、バックトルネードってなに?」
「そういや、マックスは目を覚ましたんだよな?オレたちも行くぞ」
そうして、オレは円堂と染岡にガッチリ掴まれて、またマックスの病室に向かった。
………いや、逃げないって。そんなにガッチリ掴まなくてもいいってば。
「マックス!大丈夫か!?」
「いや、円堂。僕しかいないけど、病室だから」
「あっ、ごめん……」
「…………」
またマックスは、オレの顔をじっと見つめる。
…………いや、そんなに見る?10秒以上見てるけど。
「…………うん。なら、良し」
「…………そうかよ」
「僕が戻るには、ちょっとばかし時間かかるだろうから、敵討ちは任せたよ。そうしたら、またサッカーやろうよ」
「……ああ。任せてくれ。それと、待ってるからな」
……マックスも、大丈夫だな。
オレのせいで、入院することにはなったけど、ダークエンペラーズには、ならなそうだ。
あとは、染岡と栗松、風丸……か。
「ん?なんだよ、半田」
「………いや。今度こそ、勝ちたいよなって」
「まあな。次はぜってぇにあのキーパーから点を奪ってやる」
………染岡は、真帝国との戦いで怪我を負った。
今回もそうかは分からないけど、少なくとも、そこが重要って考えてもいいはずだ。
これからもそうだけど、その時はとくに、気をつけないと……。
マンモス校であの体育館に全員入らないと思いますけど、入ったってことで。