シチュエーションは定番のあそこ!
聖杯戦争、それは万能の願望器『聖杯』を懸け七人の英雄、七人のマスター達が繰り広げる戦い。
ある者は魔術師として正々堂々と勝負をし、あるものはガチガチにメタ張って魔術を真正面から否定する戦い方をした。正真正銘の戦争では無いもののそこには容赦は一ミリも介在しないのだ。
そして今夜、数奇な運命を辿った英雄達が某県冬木市で合間見えた。それは港のコンテナが積み重なった人気が少ない場所、それはそれは『何か』起きても不思議ではない夜の事だった。
「アイリスフィール、止まってください」
「セイバー……ここね」
コンテナの間をゆっくりと歩く二人組がいた、片方は絶世の美女で片方は中性的な顔立ちで金髪が目立つ。
「ほう、我が誘いを受けるか」
「あれだけ挑発されてはな、ランサー」
二人の目の前で揺らめく光がくっきりと人型になった、二本の槍を持ったほくろが特徴的な男。
「では、早速だが……む、その剣は」
「私が誰か分かったか、ランサー」
「かの騎士王と合間見えたこと、我が人生に深く刻み付けよう」
二人は構えた、そこから何分打ち合ったか……勝敗は決まらず痺れを切らしたランサーのマスターが三度まで使える絶対命令権『令呪』によって英雄の持つ必殺の切り札『宝具』を使わせセイバーに呪いを与えた。
「ウラララララッ!」
「ぎょわぁぁぁっ! やめろライダぁぁぁっ?!」
あと一息でランサーが勝つと言ったところでライダーが割り込みをかけてきた。もれなくライダーのマスターが悲鳴を上げていたが気にする者は居なかった。
「チッ! 邪魔が入ったか」
「セイバー! ランサー! 余の家臣にならんか!」
「しつこい、私は今の主以外に仕える気はない」
「右に同じく」
「たはは……やはりダメか~「何がダメか~だ! このアホライダー!」あー分かった分かったあまりうるさく騒ぐな、耳が痛くなる」
このライダー、体が大きく心も大きい……のかは分からないがマスターの反応からして普段からこうなのだろう。この能天気振りにはセイバーとランサーは少し呆れていた。
「おいおい、我を忘れては困るな……王が集うならこの我を招待せぬ通りはないだろう」
「アーチャー、いえ英雄王っ……!?」
「アイリスフィール! 私の後ろへ!」
微かに光る街灯の上に立つ金色の鎧を纏う男がいた。すこぶる高圧的で尊大、不遜な態度で人と接するがそれは彼が最古の英雄であり英雄達の王であるからだ。
「AAAAAAA!!!!」
「ふっ、この場の魔力に引き寄せられて狂犬も来たか」
「バーサーカーまで!? ますます混沌としてきたぞっ……!? ライダー! 逃げるぞ! 早く!」
「何を言うか、こんな面白い事から逃げるだなどと!」
「もうダメだ完全にスイッチ入った……って元からか、はぁ……」
この場のボルテージが加速度的に高まっていく……誰かが動けばその隙を狙おうとするだろう、牽制が牽制を呼ぶまさしく膠着状態だ。
この状態にセイバーが動いた、そう『宝具』を解放することにしたのだ。
「アイリスフィール、宝具を使います」
「だけどっ!? ……それはキリツグが」
「許さない? 大丈夫です、ここで一網打尽にしてしまえばお釣りが来ますよ。
─見よ我を! この輝きを! これぞ勝利をもたらし希望を未来に紡ぐ剣『約束された勝利の剣』! ─」
「まさか!」
「あれは!」
「あれがかの騎士王の宝具なのか」
「星の聖剣エクスカリバー……お前がアーサー王か、なかなかどうして我好みの女だ」
セイバーもといエクスカリバーを携える騎士、アーサーペンドラゴン。ヨーロッパに語り継がれる伝説の王。
世界に轟く大英雄、その威風堂々たる力の前に尊敬を覚える者や畏怖する者、自らの欲求に素直な者。反応はそれぞれである。
力を解放したエクスカリバーはその逸話通りなら凄まじい強さを持つだろう、ボルテージはついに最高潮に達しアーサー王対この場全員と言う構図に自然となっていた。
そんな雰囲気をぶち壊す人間が一人この場に現れてしまった。
「私が来たぁぁぁ!!! 」
「ほぁぁぁぁっ……」
大声を張り上げ上空から落ちてきたローブを纏った男、その背中には血管が浮き出ている白髪のおじさんがおんぶひもで括られていた。変な声が聞こえても尊厳の為に無視してあげよう。
「何者かっ!?」
「俺? それともかりやんおじさんのこと?」
「アーサー、アーサーァァァァ!」
「えっ!? ちょかりやん背負ってアバーッ! 「アバーッ!」かりやーん!?」
「「『『「はっ?」』』」」
その降ってきた男を見るなりセイバーが雰囲気かなぐり捨てて駆け寄る、その表情は何年も会えずに待ち焦がれた恋人と会えた乙女だった。
この場に居た、またはこの場を見ている全ての人物がすっとんきょうな声をあげてしまうがそれも仕方無い、今の今までキリッとしていたアーサー王がふにぁんと溶けた顔していたら、君どう? 耐えられる? 俺は無理。
「アーサー! お前もこれに参加していたのか! 英霊の座に居ないからもう会えないかと思っていたぞー!」
「ちょ! やめ、アルトリア! ステイ!」
「はっ!?」ビシ
アーサー王もといアルトリアは謎の男になだめられ落ち着かされた、雰囲気も徐々に元のシリアスを取り戻し始めた。
「貴様は何だ? そこの騎士王と同じ匂いがするな」
「お初にお目にかかる、どこぞの英霊よ。俺はキャスターのクラスで召喚された、名前はアーサーペンドラゴン。背中のが俺のマスター、かりやんだ」
「か、かりや、ぐふっ!」
「この通り体調が悪くてな」
「いやお前のせいだろぉぉぉっ!」
ライダーのマスター渾身のツッコミが炸裂した、当人は素知らぬ顔だが。
「改めて名乗ろう! 私はアーサーペンドラゴン! 円卓の纏め役だ」
「そして私はアルトリアペンドラゴン!」
「ちょっ!? セイバー! なんで真名バラしたの!?」
「アーサーに釣られてつい……大丈夫ですよアイリスフィール。アーサーが来たからには聖杯戦争は終わったようなものです」
「そうそう、こんな下らんことしてねぇで働け働け」
アルトリアが不意に爆弾を投げた、マスターたちは煽り散らすアーサーにキレたが奥歯を食い縛り事態を静観していた。
「またずいぶん大きく出たな、雑種」
「雑種とはなんだ! ミックスだよ! 血統書あるぞコラ」
「 まぁいい、貴様が聖杯戦争を終わらせられる理由はなんだ?」
「ほれ」
「聖杯ではないか……(困惑)」
「かつてギャラハットとジャンケンで勝負し譲り受けた逸品だぞ、アーサーは私の指示で管理していたのだ。よしアーサー! 今こそ使ってしまうか!」
「パーッといきましょ!」
「「「「「「マテマテマテマテ待てぇぇぇ!」」」」」」
喉から手が出る程欲しい品物がポンと目の前に出されては全英霊、全マスターが激しく動揺して声を上げても仕方無い。あのバーサーカーでさえ人語を話した。
しかしそんなこと知るかと言わんばかりにアルトリアとアーサーは止まらない。
「願いは何? アルトリアってそもそもそう言うこと考えるのか?」
「あぁある、アーサー聖杯を掲げよ! 「よしきた!」うむ、聖杯よ我が願い「ゲートオブバビロン!」ファッ!?」
「一度ならず二度までも……っ!? 我も堪忍袋の緒が切れたぞ! トキオミ! 令呪を使え! 二画だ! エヌマを使う!」
「マジギレなんてみっともないぞ!」
「うるさい!」
「ライダーマジでヤバイよこれ!」
「逃げるか」
「あ、アルトリア姫。私はこれで失礼します」
「おいランスロットさん!? 逃げるのか?」
「死にたくありません! さらば!」
その日港が地図から消えた、英雄王の宝具で地形が変わったのだ。幸い誰一人死人は出なかったが正直事後処理がとんでもない事になったので聖杯戦争を管理する魔術教会の職員はストレスで胃がマッハ。
そんなこんなで聖杯戦争は続くがそれはまたのお話。
恐らくアーサーが聖杯戦争に参加したらこうなる
番外編なのでどこにも繋がらないよ!