まあ細かいことは気にするな。
ウマ娘 二話
あくまでサポート
イノセントピースがチームに加わった翌日、ハヤカゼセイランとトレーナーはいつものように練習を始めていた。
「よし、残りはペース上げていこう!」
「わかったわ!」
トレーナーがそう指示するとハヤカゼセイランは更に足に力を込める。
逃げを得意としているハヤカゼセイランは一気にスピードを上げ、練習場を駆けぬけた。
「良いタイムだったよ」
「ふぅ、ピースに情けないところ見せられないもの」
ハヤカゼセイランはイノセントピースがチームに入ったことで気合いが入っているようだ。もっともそのイノセントピースはまだ練習に来ていないのだが。
「それじゃ、少し休憩を・・・」
「待たせたしパイセン、トレーナー!」
そこでようやく体操服姿のイノセントピースが練習場にやってきた。
「マジごめんだし。 ちょっと生徒会室に呼び出されたし」
事前に遅れると連絡は来ていたが呼び出されていたとは。なにか呼び出されるようなことをしてしまったのだろうか。
「あっ、言っとくけど別に悪いことして呼び出されたわけじゃないし。 ちょっと聞きたいことがあるって言われて話しただけだし」
どうやら特に問題はなさそうだ。
何を話したか気になるところではあるが準備運動を始めたイノセントピースをわざわざ止めるほどではないのでトレーナーも次の練習の準備を始めた。
「さ、トレーナーさん遅れちゃった分は密度で取り返すし。 パイセンとの併せはバッチリやるかんね!」
イノセントピースのやる気は十分のようだ。ハヤカゼセイランの息も整ったようなので早速トレーニングを再開した。
「あなたとこうして走るのも久しぶりね。 ちゃんとついてくるのよ」
「いえーい、さっすがパイセン! よっしゃアタシも!」
走り出した二人、特にイノセントピースの走りを見てトレーナーは驚いた。
ハヤカゼセイランはすでにメイクデビューを済ませ、それだけではなくすでに二度レースで一着を取っている紛れもない実力者だ。これはトレーナーの贔屓目だけではない。
現にハヤカゼセイランは先程走った時よりもかなり早いペースで走っている。その走りは確実にこれからのクラシック級でも通用すると確信できるものだ。
だがイノセントピースはそのハヤカゼセイランの走りに難なく付いていっている。
ハヤカゼセイランが本気で競り合っているわけではないとはいえそのまま走り終わるまで楽しげな表情のまますぐ後ろをキープし続けた。
「いえーい! この感じ久しぶりだし! めっちゃたのしー!」
「そうね。 昔に戻ったみたい」
走るペースはとても速いが走っている二人はお喋りする余裕もあるようでとても楽しそうだ。
そのまま五回併走したあたりで二人はようやく走るのを止めた。予定していたよりもかなりペースが早いのでしっかりクールダウンするように念押しすると再び休憩に入った。
「涼んでくるし!」とどこかに行ったイノセントピースを見送ったトレーナーは座ってスポーツドリンクを飲むハヤカゼセイランに話を聞こうと近付いた。
「ふぅ、ごめんねトレーナー。 ピースと走るのひさしぶりだからつい、ね」
「ハヤカゼはピースと走るのが好きなんだな」
「ええ、学園に入るまでは毎日のように一緒に走ってたの。 懐かしいわ」
ハヤカゼセイランはイノセントピースがあそこまで走れることに疑問を覚えていない。
それはつまり昔からイノセントピースはかなり走れるウマ娘だったということなのだろう。
だからこそトレーナーには疑問が出てくる。
イノセントピース。彼女がチームに入ってまだ1日だが彼女の実力が相当高いことが窺えた。
しかし彼女はあくまでサポート希望。レースに出たいという言葉を一度も聞いていない。
その疑問をトレーナーがハヤカゼセイランにぶつけると彼女は表情を硬くして黙ってしまった。その表情は言いづらいというよりはどう説明したものかと悩んでるようでもあった。
(これは一度イノセントピースに直接聞いてみたほうがいいかもしれない)
トレーナーがそう思った時ちょうどイノセントピースが戻ってきた。
「走ったあとに水かぶるのマジサイコー! やばいくらいさっぱりするんだけど!」
どこにいったのかと思ったら水道で水をかぶってきたらしい。
濡れてしっとりしているイノセントピースにトレーナーは問いかけた。
「なあ、イノセントピースは・・・」
「トレーナーさん、アタシのことはピースでいいし。 これからずっとチームでやってくわけだし気楽な感じが良いんだけど」
「ならピース、君は自分がトゥインクルシリーズで走ろうとは思わないのか?」
「え? うーん・・・」
そう聞かれたイノセントピースは何とも言えない顔をして頬を掻く。
「ま、今は別にいいかなーって。 走るのならどこでもできるわけだし? パイセンのサポートの方が大事かなって」
その反応にトレーナーは正直面食らった。彼女の在り方は今まで会ったどんなウマ娘とも違っていた。
予想外のことにポカンとするトレーナーの肩をイノセントピースは叩いた。
「ま、そーゆーわけだし。 トレーナーさん、そろそろ練習再開してもいいと思うんだけど」
「私もクールダウンできてますよ。 トレーナー、次は熱が入りすぎないよう見ててね」
「あ、ああ。 そうだな、再開しようか」
二人と話しているうちに結構時間がたっていたようだ。トレーナーはひとまず頭を切り替えて練習を再開することにしたのだった。
練習後。
「ピース、私は少しトレーナーと話があるから先に帰っててね」
「わかったし。 パイセンもトレーナーさんもおつかれっしたー!」
イノセントピースは深々と頭を下げると元気よく走っていった。
あれだけ走ったあとなのにその走りには翳りがない。
「なんていうか・・・すごいな」
「すごいでしょ? だからこそ気になったでしょ、ピースがレースに消極的なの」
トレーナーは頷いた。
ウマ娘たちにとって走ること、そしてレースで勝利しようとすることは本能である。
そのため一般的にはウマ娘は闘争本能が強いと言われている。トレセン学園に入学するウマ娘は特にその傾向が大きい。
だというのにイノセントピースは走ることこそ好きそうだがレースに対しては一切興味がないようだった。
もちろんそういうウマ娘がまったくいないわけではない。世の中には走ることではなく人間と同じような生き方を選ぶウマ娘もいる。
だがそれでもあそこまで走れるウマ娘がレースに興味がないのは珍しいといえた。
「といっても私もなんであそこまでピースがレースに興味ないのかは知らないの。 初めてあった時からピースはああだったから。 それなのに走るとすごく速くてずっと走っていられるスタミナだってある。 私のこと負け知らずっていう人がいるけどそんなことない。 だってピースは大会に出たことがないだけで私はピースに追い付けたことないんだもの」
昔を思い出したのかハヤカゼセイランは目を伏せた。
「ねえトレーナー、スカウトしてくれた時私は三冠を取るのが目標って言ったの覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ」
「実をいうとね本当の目標は少し違うの。 もちろん三冠を取りたいっていうのも本気なんだけど・・・」
ふう、とハヤカゼセイランが息を吐いて顔をあげた。
「私は・・・ピースと競いたいの。 今までみたいに私がお願いして走るんじゃなくて、ピースに私と勝負したいって思ってほしい。 本気のピースと走りたい」
そう語るハヤカゼセイランの目には炎が宿っている。
「そのためにもクラシック三冠を取って私が強いウマ娘だって示すの。 あなたと競うに値するウマ娘だって。 それで足りなければ春シニアだって秋シニアだって、そうすればいつかきっと・・・!」
そこでトレーナーは理解した。
彼女にとって、ハヤカゼセイランにとってイノセントピースという存在はそこまで重いのだ。誰もが欲する三冠という称号が目標ではなく手段になるほどに。
それがわかったからこそトレーナーは彼女の本音をそっと受け止めた。
「なら、絶対に勝たないとな」
「ええ、必ず」
ハヤカゼの偽らざる本音。それを見せてくれたのがたまらなく嬉しい。
トレーナーはハヤカゼセイランとの間にこれまで以上の絆を感じた。
序盤はオリウマ娘たちしかでないけどそのうち日常で絡むようになってそのうちレースで戦え・・・たらいいなあ!
それと自分で忘れないために簡易キャラ設定置いときやす。
・イノセントピース
青鹿毛のウマ娘。前髪の一部に緑のメッシュが入っている(染めてる)。
耳飾りは左耳で青いダイヤ型のアクセサリーを付けている。
それっぽい名前をしてるが上限解放には使えない