ウマ娘は勝利を望む   作:なち11

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レース描写難しい。うまく書けるようになったらこっそり修正したい。


メイクデビュー

ウマ娘 七話

 

メイクデビュー

 

 

 

 

メイクデビューの日の朝。

 

日が昇り始める前、イノセントピースは寮を抜け出して空を見上げていた。

しばらくして朝日が昇り始めピースの身体を照らす。

イノセントピースはそっと空に向かって手を伸ばし、グッと拳を握った。

 

「絶対取るし・・・三冠!」

 

その目には炎が燃えていた。

 

 

メイクデビュー前の最後の調整、およびウォーミングアップをするというのでトレーナーはイノセントピースが待つ練習場へとやってきた。

 

「あっ、トレーナーさん。 お先に始めてるし」

 

「ピース? ずいぶん早いな。 気がはやって」

 

「大丈夫だし。 ストレッチ中心で身体を暖めてるだけだし」

 

その後も柔軟を中心に行い、最後に軽く走って終わりにしようというところでイノセントピースがふと足を止めた。

 

「どうした?」

 

「・・・ごめんトレーナーさん、少し待っててほしいし!」

 

トレーナーが止める間もなくイノセントピースは走っていってしまった。

 

 

 

早足で駆けるイノセントピースはおしゃべりしながら歩く二人組のウマ娘に声をかけた。

 

「あ、あの! ハヤカゼセイランさんのお友達のメジロパーマーさんだし?」

 

イノセントピースは片方のウマ娘のことを知っていた。ハヤカゼセイランと同期で要注意ウマ娘として名前が挙がっていたメジロパーマーだ。

 

「そうだけど、あれ? もしかして君・・・」

 

「どしたんパーマー? お、なになに? そのコ、パーマーの知り合い?」

 

メジロパーマーの隣にいたギャルなウマ娘──ダイタクヘリオスがひょいとピースの顔を覗きこむ。

 

「あ! このコ足が良いって噂のマジヤバな娘じゃん。 ウェーイ!」

 

「マジヤバ娘!? い、いやそれはいいし。 いや良くないけど。 突然だけど実はお二人に頼みたいことがあるし!」

 

イノセントピースの様子にメジロパーマーとダイタクヘリオスは顔を見合わせて頷きあった。

 

「んー、ワケアリかな? いいよ、話聞かせて」

 

「それな!」

 

 

 

 

イノセントピースは大して待たせることなくトレーナーの元へと戻ってきた。

 

「トレーナーさんお待たせだし!」

 

「いや大丈夫だけど、なにかあったのか?」

 

「あー、それはレース後に話すし」

 

トレーナーは少し気になったがイノセントピースの意を汲んで意識をメイクデビューに移すことにした。

 

「そうか。 足の調子はどうだ?」

 

「バッチリだし。 トレーナーさん、アタシの走り・・・目を離さず見ててよね」

 

イノセントピースはそう言ってにっこり笑うのだった。

 

 

 

東京レース場 芝 2000m

 

 

本来であればメイクデビュー戦とはいえかなり盛り上がるものなのだがも八月というデビューとしては遅い時期であり、また同日に別のレースも開催されていることもあって観客はさほど多くはない。

だがそれでも出走するウマ娘たちのやる気に翳りはない。全員が闘志を滾らせ静かにストレッチをしている。

 

その中でイノセントピースは──いつも通りだ。

パドックでジャージを脱ぐとポーズをとったりピースしたりと緊張は見られなかった。

今はすでにデビューを済ませ応援にきたシャニレーベン、クレナイヤシャ、エリージェレートにぶんぶんと手を振っている。

 

「ピースさん、頑張ってくださいね」

 

「あっはっは。 なに、気負わずともおぬしなら問題ないであろう!」

 

「あーうん、私なんかが応援したってまあ、なにも変わんないと思うけど・・・ま、頑張ってよ」

 

「いえーい! みんなありがとだし!」

 

一瞬、イノセントピースがどこかあらぬところに視線を向ける。が、すぐにいつもの調子に戻り、今度は観客席に向かって手を振り始めた。

 

『五番人気イノセントピース。 サポート科から編入したというウマ娘です』

『どのような走りをするのか楽しみですね』

 

イノセントピースの紹介はあっさりしたものだった。

デビューが遅いことに加えて、編入生ということであまり注目されていないようであった。

 

だがそんなことイノセントピースにとってどうでもよかった。

人気も声援もいらない。

今イノセントピースが欲しいのは勝利だけ。

 

そんなイノセントピースの内心に気づくものはいない。観客たちから見ればへらへらと笑いながらゲートに入るイノセントピースは緊張感がないウマ娘にしか見えなかっただろう。

だがトレーナーはゲートが開く直前、イノセントピースの顔から普段の笑みが消え、獲物を前にした狩人のような顔に変わったのを確かに見た。

 

そしてゲートが開いた瞬間、ウマ娘たちは一斉に飛び出した。

 

「え? 大丈夫なのあれ、速くない?」

 

「たしかにセオリー通りなればかかり気味、といったところかの。 なれど・・・」

 

「いいえ、きっとピースさんなら大丈夫です。 わたしたちはただ信じて応援しましょう」

 

エリージェレートが不安の声を漏らす横でクレナイヤシャが目を細める。

シャニレーベンは手を握りしめイノセントピースを見続けた。

 

ゲートから飛び出したイノセントピースのペースは速い。逃げは逃げでもこれは大逃げの部類である。

後続との差は早くも三バ身。だが後続のウマ娘も冷静にペースを上げたため差はそれ以上広がらなかった。

大きな変化は起こらずそのままの形でレースは進んでいく。

 

実を言えばイノセントピースのスピードは劇的に速いわけではない。速い部類ではあるがそれでも名だたるウマ娘に比べれば一歩劣ってしまうだろう。

だからこそ他のウマ娘たちは引き離されないようにペースを上げつつも最後に失速してきた所を差すために足を溜めている。

だがトレーナーはイノセントピースの勝利を信じていた。

 

(本来ならこれは不味い展開だ。 大逃げを狙っているのに後続は必要以上にかかることなく差しにいけるペースを保っている。 だけどピースのスタミナなら・・・)

 

これまで共にトレーニングしてきたトレーナーに言わせればイノセントピースの強みはスピードではない。

彼女の強みはスピードよりもそのスピードを維持できるスタミナだ。

 

 

1000m地点を通過。

まだイノセントピースの足は力強くターフを蹴っている。

 

 

1200mを過ぎた。

第4コーナーに入ったが彼女の足は衰えない。

 

 

1400m。

直線に差し掛かるが差が縮まらない。

 

 

1600m。

イノセントピースの後ろを走っていたウマ娘がバ群に沈んだ。

 

 

1800m。

イノセントピースは止まらない。

 

 

 

誰かが息をのみ、歓声が大きくなる。

エリージェレートが、クレナイヤシャが、シャニレーベンが喉が裂けんばかりにイノセントピースの名を叫んだ。

それに負けないようにトレーナーも声を張り上げた。

声なんて届かないかもしれない。

それでも叫ばずにはいられなかった。

 

 

逃げは沈み

 

先行は足を使い果たし

 

差しは前が詰まり

 

追い込みは届かない。

 

 

それでもウマ娘たちは必死で追いかける。

 

──だが、もう遅い。

 

「行けええええぇぇぇ!」

 

 

 

 

イノセントピースがゴールを駆け抜けた。

 

 

 

 

『イノセントピースだ! イノセントピースが今一着でゴールイン! 後続に影を踏ませることもせずに駆け抜けた! 二着はメープルドロップ、三着はアスカホライズン!』

 

実況が二着、三着とスタミナを切らしたウマ娘たちがゴールしていく。

彼女たちはゴールした途端に膝を付くか、その場に寝転がり荒い息を吐いている。

 

 

イノセントピースはそんな中ゆっくりと減速して、立ち止まり──トレーナーを見た。

その目がトレーナーを捉えると走っていた時の気迫は何処へやら、パッと笑顔になって拳を空に向かって突き上げる。

 

 

その瞬間、歓声が爆発した。

イノセントピースはその声量に一瞬びっくりしたように尻尾が跳ね上がったが手を振り歓声に応えるのだった。

 

 

 

 




レース中の実況も入れようとおもったけど今回はあえて省いた。
というかようやくメジロパーマーとダイタクヘリオス出せた。顔見せ程度だけど。
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