世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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Quinque puellae Neun Könige

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

とある町の門のところに

ひとつの馬車が通過しようとしていく

 

「とまってくれ、ステータスプレートを…

 

 それと、街に来た理由を?」

 

門番に呼び止められて、御者は説明をしていく

 

「ああ、王都までの配達の帰りさ

 それから、この子達の送迎もね」

 

そう言って荷台の方に目を向けていく

門番は不意に荷台の方に目を向けると

そこには五人の少女達がそこに乗っていた

 

「お前たちはどうしてここに?」

 

「‥‥食料の買い出しです、それから

 冒険者登録の方をしようと思いまして」

 

そう言って少女の一人が説明をしていく

 

「うん?

 

 冒険者登録なら、王都の方でもできるだろ?」

 

「いいえ、私たちは途中でこの馬車に拾われたので

 王都から来たわけではないんです、それで事情を話したら

 

 この街でも冒険者登録ができると言う事なので

 それだったらと思いまして、それでこちらの方に」

 

「ふむ、遠くの方から王都の方にまで来たと言う事か

 

 何か事情があありそうだが、まあいい

 冒険者ギルドならこの街の中心の通路をまっすぐ行けばある

 

 そこでなら登録も行ってくれるはずだ、後の詳しいところは

 そのギルドの方で聞いてくれ、しっかり説明してくれるはずだ」

 

門番も特に事情を聴くことなく、彼女達の通行も許可してくれた

 

「‥‥ふう、どうにか通れたね…

 

 それじゃあ、さっそく

 ギルドの方に行って来ようよ」

 

「そうね…

 

 ここに来るまで結構色いろんな魔物を倒してきたし…

 

 さっきの馬車の人から護衛の報酬として一部もらったし

 それでさっそく、冒険者登録を済ませてしまいましょう…」

 

香織がうーんと背伸びをして一息つくと

雫がそう言って、自分達が分けてもらった

魔物の素材をもって、ギルドの方に向かって行く事にする

 

「‥‥あの門番さんって意外にいい人なのかしらね

 

 私たちのこと深くは聞こうとしなかったけれども…」

 

「まあ、あの人のおかげでこうしてここまで来れたんだし

 

 ここは素直に甘えておきましょ

 それじゃあギルドの方に行きますか…」

 

そう言って五人は自分達をここまで運んできてくれた

馬車の人に軽く挨拶をしたのち、さっそく教えられたギルドの方に行く

 

「‥‥それにしても…

 

 思い切ったことをしましたね、香織さん…

 

 こうしてみて見ますと、本当に印象が変わりますね」

 

纏はそう言って香織の方を見て言う

彼女だけでなく、雫以外の他の二人も同じことを思っていた

 

なぜなら、今の香織は

 

「‥‥私、もう決めたの…

 

 過去のバカな自分と決別するんだって…

 

 あの時、私にもっと力があったら

 ハジメ君や渚沙ちゃんのことを助けられたかもしれない…

 

 だけれど、どんなに後悔したところでハジメ君と渚沙ちゃんが

 もどってきてくれるわけでも無いから、だから私はもう過去の自分と

 決別するんだって決めたの、だから私はその証として髪を斬ったんだから」

 

長い髪の印象が180度変わってしまう見た目になっていたのだから

 

「香織なりに覚悟を決めたってことなのね…

 

 まあ、あなたの意志でそうしたって言うなら

 私はそれでいいわ、其れにその方がもしかしたら

 教会の目を欺くことが出来るかもしれないしね…」

 

「でも今の香織ちゃんもすっごく可愛いよ

 

 見違えちゃったけれど、そんなの

 感じさせないくらいに本当に似合ってるよ」

 

「ありがと…

 

 それじゃあ、急いでギルドの方に行こっか」

 

そう言って一同は改めて、ギルドに向かって行くのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

冒険者ギルド

 

「ようこそ、冒険者ギルドへ

 

 わたくしは冒険者ギルドの受付を

 担当させていただいています、フレアと申します

 

 本日はどのようなご用件でしょう?」

 

「はい、素材の買取と、それから冒険者登録をお願いします」

 

姫奈が代表して要件を述べていく

 

「わかりました、それではステータスプレートをお預かりします

 それから、こちらに登録に必要な書類の方をお願いいたします…

 

 お連れ様の方も一緒に登録されるなら

 纏めてご提出されていただいてもかまいませんよ」

 

フレアと名乗る受付嬢が説明をしていき

登録の手続きをスムーズに進めていった

 

「…うん?

 

 聖徒に…エーテル…?

 

 何やら聞いたことのない表示がされていますね」

 

「‥‥ああ、えーっと…

 

 ごめんなさい、其れに関しては

 私自身にもわかっていないのよ…

 

 元々の天職は聖剣士だったんだけれど…」

 

そんな姫奈の反応を見て、フレアはしばらく見つめながら

 

「…わかりました、まあ技能は有るようなので

 問題は無いでしょう、それでは登録には一千ルタとなります

 

 五名様ですので、合計五千ルタになります」

 

「わかりました、それでお願いします

 

 それから素材の買取の方もお願いできますか」

 

「畏まりました、それと査定額から登録料金を

 差し替えることも可能ですが、いかがですか?」

 

「わかりました、それでお願いします」

 

こうして、もろもろの手続きを済ませていく一同

素材の方も鑑定所の方に提出していき、ひと段落が付いた

 

「ふう…

 

 私のステータスの事で

 何か聞かれると思ったけれど…

 

 思っていたよりはすんなりしてくれたわね…」

 

「ようし、これで晴れて私たちは冒険者だね

 

 なんだかちょっと楽しくなってきちゃった…」

 

「‥‥香織、あんまりはしゃがないでよ

 

 此処には一応ほかの冒険者さん達もいるんだから…」

 

ウキウキで上機嫌になっている香織を落ち着かせる香織

 

「査定結果が出ました、それにしてもすごいですね

 

 どれも並の冒険者では太刀打ちできない強力な魔物でしたよ

 

 査定金額は四万八千七百ルタですので、そこから

 登録料である五千ルタを引いた、こちらをお渡しいたします

 

 それでは、お気をつけて」

 

そう言って受付の方に戻っていくフレア

 

「なるほどね…

 

 やっぱり基本的なステータスは

 高い方だから、この国では強力な方の

 魔物とも取り合えず闘うことが出来るみたいね…」

 

「四万ルタか、それじゃあまずはこれで

 食料や最低限の装備の買い出しに行きましょうか…

 

 折角お金の方もあるわけだしね」

 

「そうだね…

 

 ここに来るまで思うような食事はとれなかったし

 しばらくぶりにまともな食事を食べたいしね」

 

それぞれの行動方針を決めていく五人

 

さっそくそれぞれ分かれて買い出しと

宿屋の方を取っていこうと計画を立てていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「冒険者っていうのは本当にお得なのね…

 

 基本的に宿なんかの施設が割引されるなんてね…」

 

こうして、姫奈たちは冒険者登録をして

あらかた買い出しを済ませていくと、ギルドにおいて

進められた宿屋においてわりあてられた客室に置いて

 

今後のことについて話しをしていく

 

「‥‥それじゃあ、私たちのある程度の活動方針を決めていくわよ

 

 まず、私たちは冒険者として様々な依頼をこなしていきつつ

 もとの世界に帰るための手がかりを見つけていく、そのうえで

 気がかりなのは聖教教会とハイリヒ王国、きっとあそこは私たちのことを

 血眼になって探していると思う、特に私の力はさっきのあの戦いのときに

 国一つを滅ぼしかねない力を持つ敵を倒したこともあって特に重宝しているでしょう…」

 

「でも、ハイリヒ王国だけじゃなく

 ほとんどの国が教会の息が掛かってるってメルドさんも言ってたし…」

 

姫奈の言葉をやや不安そうにつぶやいていく雫

 

「‥‥でもすべての国が教会の意に完全に従っているわけじゃない…

 

 だから私たちは冒険者活動を足掛かりにして、国やお偉方の

 後ろ盾を付けていこうと思っているの、時間はかかるかもしれないけれど

 

 でも、いざってときに私たちの事を守ってくれるところは多い方がいい…

 

 現に高位の冒険者のほとんどは後ろ盾が得られるほどの信頼を得られているらしいし…」

 

「‥‥なるほど…

 

 つまり今後の行動方針は冒険者としての活動をやりつつ

 私たちの後ろ盾を増やし、同時に元の世界に帰るための手がかりを探す…

 

 そういう事でいいのかな?」

 

香織がそう言って、姫奈が頷いていく

 

「‥‥とは言っても私たちの今のランクは青…

 

 冒険者のランクでは最低の方で、受けられる依頼も

 素材回収だったり魔物の討伐等が主な任務になるわ…

 

 だからまずは地道にランク上げね

 最低でも白か黒を目指しましょう、そのためにはまずは

 依頼の方を幾つか受けていきましょう、今受けられる中で

 なるべく高難易度のランクを受けていけばそれなりに昇格が望めるはずよ」

 

「ようし、ここからいよいよ

 私たちの冒険者としての人生を歩むんだね

 

 腕が鳴るね!」

 

「‥‥戦闘に関しては香織さんが後方支援で

 私、風香さん、雫さんが前衛として活動して

 

 姫奈さんには陣頭指揮を執っていって貰いましょう」

 

纏の言葉に姫奈はえっ?、とやや素っ頓狂な声をあげていく

 

「えーっと‥‥それってつまり…

 

 私がチームリーダーをやるってこと?」

 

「「「「え?」」」」

 

姫奈の問いかけにほかの四人は何言ってるの?、的な様子で首を傾げていく

 

その様子を見た姫奈はしょうがないなと頭を抱える

 

「‥‥わかったわよ…

 

 私も出来る限りのことはするわ

 それに、また例の亜人が現れた時も

 このエーテルって力に目覚めた私の力でしか

 戦えないってこともあるしね、その代わりに

 こき使ってやあげるんだから覚悟しなさいよ?」

 

「あ、あはははは‥‥ほどほどにお願いします…」

 

こき使ってやる宣言にやや、抵抗感を見せていく香織であった

 

「さてと‥‥それでさっそく何をやるのか…

 

 それについては何かある?」

 

「‥‥そうね…

 

 現在、出されている依頼の中で

 私達が受けられる依頼はほとんどが素材集めと

 魔物対峙が主ね、魔物討伐に関してはギルドから

 丁度いい話をここに来る前に聞いてきたのよ…」

 

「ちょうどいい話…?」

 

そう言って姫奈がギルドより用意して貰った

地図をほかの面々にも見える様に、見せていく

 

「この街はね、亜人の集落であるフェアベルゲンがある

 ハルツィナ樹海やライセン大峡谷と言った場所があって

 

 そこに生息している魔物たちがここ最近外に出て

 周辺の町や集落を襲っているらしいの、被害が大きくなる前に

 数を減らしてきてほしいと周辺の冒険者ギルドから、お達しが出てるみたい

 

 聴いたところ、ランクに関係なく使命が出てきているみたいだし

 これだったら活躍次第でランクを上げられる可能性も出てくるわ」

 

「物語によくあるデスマーチって奴だね…

 

 でも、考えたらどうして魔物って

 発生場所から出てこないんだろ?

 

 オルクス大迷宮だってあんなに魔物が

 自然発生しているっていうのに、入り口のある

 ホルアドに、全然出てこないみたいな感じだったし…」

 

風香が不意にそんな疑問を投げかけていく

 

「‥‥まあ、其れに関してだけど

 オルクス大迷宮の入り口には常に

 戦闘経験がある見張りが常駐しているみたいで

 

 入り口にある程度近づいてきた魔物を定期的に

 討伐しているからみたいよ、まあもっともそもそも

 近づいてくる魔物たちもそんなにはいないみたいらしいけどね…」

 

風深の疑問にそれなりに答えていく姫奈は一息つくと

 

「‥‥それじゃあ、明日はこの依頼を受けることにしましょう

 

 それから、この依頼においては

 他の冒険者さん達との合同依頼になるから

 

 それなりに問題は起こさないようにしましょう…」

 

「「「「了解」」」」

 

こうして、流されて行く形でチームのリーダーとなって

しまった姫奈がそう言ったので、他のメンバーも異議なしと

言った感じでそれぞれが疲れた体を休ませていくのであった

 

「‥‥本当に大丈夫かしら…こんな調子で‥‥…」

 

姫奈は一人、そんな不安を口にしていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

翌日、姫奈たちは依頼を受けるために

冒険者ギルドに向かっていた、彼女達をそれぞれ

男性は嫌らしい目つきで、それを冷たい視線で女性たちが見ていた

 

「‥‥魔物の調査と討伐の依頼ですね…

 

 承りました、それにしても登録してから

 行きなり魔物の討伐何て、気合が入っているのね…

 

 でも、この付近にいる魔物は並の冒険者では

 命がいくつあっても足りないくらいに強いですから

 

 あまり無茶だけはなさらないようにしてくださいね」

 

「了解です」

 

「それにしてもこの街も大変なんですね

 

 時折やって来る魔物の対応をしないと

 行けないことになるなんて、そもそも

 魔物が人間族の元に現れる事ってあるんですか?」

 

香織が不意に受付嬢のフレアに聞いていく

 

「はい、確かにここは魔物が発生する

 ライセン大峡谷やハルツィナ樹海の大体

 

 真ん中あたりに位置するのですが、基本魔物は

 樹海や峡谷から出てくることはめったにありません…

 

 ですが、ここのところそこに生息していた魔物たちが

 そこを離れて、街や集落に現れることが多くなってきました…」

 

「どうして、滅多に人間族の住まうところに現れなかった魔物たちが?

 

 基本的には自分達の生息地から離れることのないのに?」

 

風香がどうしてなんだろうと、頸を傾げると

 

「…皆さんは、ハイリヒ王国の王都に

 おいて発生した大災害のことは御存じでしょぅか?」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

それを聞いて、少し驚いた表情を見せていく五人

 

王都で起こった大災害とは、謎の強大な力を持った

亜人族の少女が王都を危うく氷漬けにするところであった

 

あの時のことは公には魔人族によって引き起こされ

神に使わされた勇者達の手によって見事に収められたということになる

 

もっとも実際は、あの事態を収めたのはエーテルの力で

聖徒に目覚めた姫奈で、引き起こしたのは強力な力に目覚めた亜人族であるのだが、

 

まさか、いきなり自分達がかかわったあの時の事件が

話しに出てくるとは思わず、思わず驚きの声をあげそうに

なってしまったが、まあ難なく抑えることができ、続けていく

 

「‥‥噂ぐらいなら…

 

 それがどうかしたんですか?」

 

「…いえ、直接関係あるという訳ではないのですが…

 

 実はあの出来事が起こってから、樹海や各地において

 今まで見たことが無い、新種の魔物が発生する様になったんです

 

 その魔物たちが元からそこにいた魔物たちを襲っていって

 それで追われてきた魔物たちがここまでやってきてなし崩し的に

 近くの町や周辺の村々を襲うようになったて、それで現在全国の

 冒険者ギルド総出で対応に当たっているところなのです、皆さんが

 今回うけることに鳴った調査依頼も所謂その過程によるものなんです」

 

「‥‥なるほど…

 

 全てのギルドがその魔物の生態による異変を調査したいけれど

 

 新種の魔物たちは並の冒険者でさえ苦戦させるほどの力を持った

 非常にやっかいな相手で、調査が円滑に進めていくことが出来ず

 

 それで、冒険者たちに調査依頼を発行していると言う事ね…」

 

姫奈の言葉にフレアははいと力なく返事をしていく

 

「‥‥新種の魔物って、ひょっとして

 この間、王都に現れたすっごく強いあの亜人の子かな?」

 

「‥‥可能性はあるわね…

 

 でも、奴らが使役している魔物自体も

 非常にやっかいなやつらだったし、何にせよ…

 

 あの時の王都の異変は、まだ終わったわけじゃない…

 

 簡潔に言えばそういう事ね…」

 

香織と雫はフレアの話しを聞いて

あの時の異変は終わっていないのではと予測していく

 

「ですので基本、依頼の報酬は依頼書に書かれている通りですが

 その際に何か新しい情報や進展につながる何かが見つかったら

 その重要度によって報酬の額が上乗せされることもありますから」

 

「‥‥わかった、それじゃあさっそく行ってみるわ」

 

こうして、彼女達五人で冒険者として

初めての依頼に向かうことになるのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

雫と香織達五人が離れた場所で

冒険者としての活動を始めようとしていたころ

 

こちらの方でも動きがあった

 

それは、王国に残ったクラスメートの中で

訓練に参加すると決めた一同は再び訓練を再開し

 

再び、オルクス大迷宮の攻略にいそしむことになっていく

 

五人が冒険者として出発してからおよそ数日で

先の冷気を操る亜人の攻撃から光輝が回復したのち

 

訓練がすぐに開始された、香織たちが国から離れて

街につき、冒険者登録を済ませ、その翌日に依頼を受けたその時には

光輝たちが迷宮攻略を再開しておよそ六日の時が立ち、光輝たちはついに

 

六十階層にまで到達することになった

 

天之河 光輝率いる勇者パーティー四人に

永山 重吾が率いるパーティー四人、そこに

さらに、訓練に参加者に加えられた者達がいた

 

それは、檜山 大介率いる小悪党グループだ

彼らはリーダーである檜山の軽率な行動が、あの時

クラスメートを危険な目に合わせてしまった事を咎められ

 

そのことを放免にしたかったら、訓練に参加する様に言われたのだ

 

無理もない、クラスメートの内五人が国を出て

更に七人は世界中に開拓に出ている畑山 愛子の

護衛の任務についている、参加希望は光輝たち8人

 

ハッキリ言って戦闘に持ち込むには心もとないのだ

 

こうして8人に檜山達四人を加えて現在12人になって‥‥‥‥‥

 

「‥‥はあ‥‥

 

 また影で、俺の存在が忘れられている気がする‥‥」

 

そう言って肩をがっくり落としているのは

 

遠藤 浩介

 

 

永山グループに一応所属している男子生徒である

 

「一応て‥‥」

 

「どうした浩介?

 

 また誰にも相手にされないことに落ち込んでいるのか?」

 

そんな彼に話しかけていくのは

グループのリーダーで浩介の親友である大男

 

永山 重吾

 

 

重格闘家の天職を持つ、クラスの中でも一番に大柄な男子生徒である

 

「‥‥なんでもねえよ、それにしても‥‥

 

 ようやくここまで、辿りつけたんだな」

 

「ああ、あの時は行き成りの事だったから

 はっきり言ってパニクったけど、今だったら

 何が起こっても、不思議とどうにかなるって感じがするぜ…‥」

 

浩介の言葉にそう返していくのは同じく浩介の友人

 

野村 健太郎

 

 

土術師の天職を持ち、土属性に対して適性を持っている男子生徒だ

 

「ああ、ここから先がいよいよあの六十五階層だ‥‥

 

 俺たちはあの時、死にそうになって

 それを南雲が助けてくれたんだよな‥‥」

 

「‥‥南雲、か…」

 

「……‥」

 

浩介の言った一人の男子生徒の名前

 

南雲 ハジメ

 

 

ステータスプレートにステータスが表示されず

更には謎の力に目覚めていき、それによって自分達の

危機を救ってくれたものの、のちに裏で魔人族とつながっていたと

教会に決めつけられて、自分達の目の前で殺された男子生徒である

 

「ここにくると、思い出すよね…

 

 南雲君のこと‥東雲さんの事も…」

 

「そうだね‥」

 

そう言って悲し気に呟くのは永山グループに所属する女子生徒の二人

 

辻 綾子

 

 

吉野 真央

 

 

それぞれ、治癒師と付与術師の天職を持つ

 

永山グループはどこか悲し気な表情を浮かべていた

 

「もうすぐ、65階層だね‥」

 

「うん‥」

 

そしていよいよ差し迫ってきたのは嘗て

自分達が最大の危機に訪れた、65階層にまで差し迫っていく

 

嘗て自分達が死の局面にまで追いつめられた場所

 

ついにいろいろと因縁深いこの場所にまで迫っていた

 

その様子に緊張の声をあげていくのは

勇者パーティーに所属する二人の女子生徒

 

中村 恵里

 

 

谷口 鈴

 

 

二人は不安を見せていく

すると、そんな二人に声をかける者がいた

 

「大丈夫だ、恵里、鈴

 

 俺たちはあのころよりも確実に強くなっている

 もう二度と、あんな目に合わせることなんてない…

 

 強くなって、魔人族との戦争に勝利して

 香織と雫を迎えに行こう、みんなで一緒に元の世界に帰るんだ」

 

そう言って二人に力強い声をかけていく男性生徒

 

天之河 光輝

 

 

彼の中では香織と雫が自分達の元を離れたのは

二人は優しいから、ハジメと渚沙の裏切りが信じられず

 

それでいたたまれなくなって

暴走したものであると勝手に解釈している

 

そんな見当違いも甚だしいその解釈だが

それを指摘したところで光輝は聞く耳を持たないだろう

 

恵里も鈴もそれが分かっているのであえて何も言わずにいた

 

「(そうだ、どんなに言ったところで‥

 

  ぼくたちはただ進むしか道はないんだ‥

 

  香織も雫も、姫奈も風香も、そして纏も‥

 

  あくまで、僕達と違う道を選んだだけにすぎない‥

 

  だったら僕も僕がすすむべきだって

  決めた道を進んでいくだけだ、ただひたすらにね‥)」

 

恵里はそう言って持っている杖を持っている手を強く握りしめる

 

「エリリン、大丈夫‥?」

 

そんな彼女に心配そうに声をかけていくのは

彼女の親友である鈴、それに気づいた恵里は鈴の方を見て

 

「‥‥うん、大丈夫だよ‥

 

 ぼくはもう、覚悟を決めてるから」

 

「‥‥そっか、だったら鈴も

 エリリンの事守ってあげるからね

 

 鈴の天職は結界師だから、いざってときは

 私がエリリンやみんなのことを守ってあげるから」

 

鈴はそう言ってガッツポーズを決めて言う

恵里はそんな様子に少し安心したのか、笑顔が浮かんでいく

 

「うん、わかったよ

 

 いざってときは遠慮なく頼らせて貰うからね、鈴」

 

「まっかせなさーい」

 

恵里がそう言うと鈴はふっふーんと控えめな胸を張って自信ありげに言う

 

「(まったく、鈴はこんな時でも相変わらずなんだから‥

 

  でも、鈴をみていると不思議と前向きになっていける‥

 

  ぼくもしっかりしないとね)」

 

そう言って改めて気を引き締めなおしていく恵里

 

永山グループと勇者グループがそれぞれ覚悟を決めていく中

そんな様子を疎ましく思い、睨みつけるようにしているものがいた

 

それは

 

「(…畜生、畜生‥‥

 

  畜生、畜生、畜生、畜生ぉ…

 

  何でこうなちまうんだよ、南雲やあの女が死んで

  漸く俺にもツキが回ってきたって思ったら、何で‥‥)」

 

檜山 大介

 

 

軽戦士の天職を持った男子生徒である

 

やがて、彼は先のオルクス大迷宮から戻ってきた際に

彼の軽率な行動がクラスメートを危険にさらしてしまったことで

 

本来だったら彼はそれに見合う処罰を受けることになるはずだった

 

だが、彼は必死に土下座して必死に謝罪の言葉を口にすることで

それを見た光輝が必死に謝る様子を見せる檜山のことを許すように

呼びかけたことで、檜山はどうにかその場をやり過ごしていく事に成功する

 

取りあえずはやり過ごせた檜山にさらに彼にとっては転機が訪れた

 

何と教会は檜山ではなく、ハジメのことを断罪することを決定

彼と彼を助けようとした渚沙は自分達が見ている目の前で殺された

 

それを見た檜山は心の底から言い放った

 

ざまーみろ、と

 

これでもう自分の邪魔をする奴はいない

むしろここから一気に香織との中を進展させていこうと考えた

 

香織の優しい心に付け入って

そこから一気にと考えていた矢先に、何と

香織が雫や三人の女子生徒とともに、国を出ることを決めたというのだ

 

だが、それ自体は特にきにはしていなかった

教会が神の使徒である彼女たちのことを見つけ出して

連れてくるという話を聞いているから、彼が一番気にしているのは

 

その際に王都で引き起こされた大寒波とそれをひきおこした謎の敵

 

それらが起こったことで教会も王族も大いに警戒態勢を敷き

自分達に更なる強化をほ施さんと訓練に参加する様にお達しをした

 

それによってせっかく畑山 愛子の尽力によって

闘いたくないと、前線に出ることを拒否したものも

無理矢理に戦闘訓練に参加させられることになってしまった

 

特に檜山は先の事もあって断ることも出来ずにとうとう

自分達はこうして、戦闘訓練に実質無理矢理参加させられることになり

 

今に至るわけである

 

「(…まあいい、いざってときは

  俺一人だけでも生き延びてやる‥‥

 

  どんな手を使ってもな‥‥)」

 

そう言って右手で自分の髪をかき上げ

ふうと勢いよく息を漏らし、自分を抑えていく

 

「おい、大介?」

 

そんな彼にどうした?、と声をかけていくのは

 

近藤 礼一

 

 

更にもう二人の男子生徒

 

中野 信治

 

 

斎藤 良樹

 

 

かれも気になった様子で檜山の方を見詰めていく

 

これでも一時期は檜山の軽率な行動の件もあって

ややギクシャクしていたが、彼の表向きの殊勝な態度を見て

三人とも檜山とまたつるむようになっていき、以前の関係に戻っていた

 

もっともそれを友情であるのかと判断するのかは微妙であるが

 

「あ、いや、何でもねえよ‥‥

 

 もうここまで来たんだなって思ってただけだよ」

 

「あ~、確かにな

 

 しっかし無理矢理訓練に参加させられたときは

 一時はどうなる事なのかって思ったけど、案外順調だよな」

 

「そうだな、まあ俺らが特別ってだけなのかもな」

 

「だな、この分だったらあんときの南野と

 肩を並べられるのもそう遠くねえかもな?」

 

そんな会話をしていく小悪党グループ、するとそこに

 

「こら、お前たち!

 

 いつまでもふざけている場合じゃないぞ!!

 

 休憩は終わりだ、ここからいよいよ65階層

 一度来ていたとはいえ、我々から見ても全く未知の領域だ!!!

 

 いつでも戦える準備をしておけ!!!!」

 

すると一人の男性の怒号が大きく響いていく

 

メルド・ロギンス

 

 

ハイリヒ王国の騎士団長である彼は彼らの付き添いとして

騎士団の人間の内、何人かを引き連れてともに階層に入っていた

 

メルドはハジメが処刑されてから光輝たちに以前よりも厳しく接するようになった

 

とはいえ相当無茶をしているようで、どこか疲れ果てているようにも見える

 

彼はあの時、ハジメの勇士を見ていたし

彼の人となりもそれなりに見て来た彼には今回の処刑の件は

ハッキリ言って納得のいかないところである、しかしそれを抗議しても

教会は実質王族よりも立場は上、王族の決定に従わざるを得ない立場である

彼に出来ることなど、何もないに等しく、自分の見解の甘さを大いに悔やんだ

 

だからこそ、これ以上彼のようなものがあらわれぬように

今のこっている彼らだけでも守るために出来ることをやっていこうと決意する

 

こうして、一同は65階層へと続く入口へと進んでいくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

オルクス大迷宮 65階層

 

嘗て、最強の冒険者がたどり着いた

歴代最高到達階層にいよいよ足を踏み入れていく一同

 

まず、騎士団の者達が先行して

何か異常はないのかと見ていくことに

 

そして、しばらく進んだその時

 

「っ!?

 

 みんな、気を付けて!」

 

恵里が一同に呼びかけていくと

前方に巨大な魔法陣、後方に小さくも複数の魔法陣が展開されて行く

 

そこから現れたのは嘗て、自分達が対峙したかの存在

 

ベヒモスとトラウムソルジャーであった

 

「ま、まさか…‥あいつなのか!?」

 

「嘘だろ‥‥あいつは死んだんじゃないのか!?」

 

驚愕の表情を浮べる光輝とともに驚愕するのは

 

坂上 龍太郎

 

 

彼もまた目の前に現れたベヒモスに驚きの様子を見せていく

 

「迷宮の魔物たちの発生原因は解明されていない

 

 一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある

 

 みんな構えろ、それから退路の準備も忘れるな!」

 

メルドが的確に指示を出していくと

それに意見する様に言い放つ者がいる

 

「メルドさん!

 

 此処は俺たちに任せて貰えませんか!!

 

 俺たちだってあの頃から強くなったんだ

 それを証明するためにも、俺たちは必ず奴を倒します!!!」

 

「俺も光輝に賛成だ、ここで逃げちまったらそれこそ

 あの時の奴と戦おうなんてのは無理だ、だから今度こそ

 

 あいつを倒して、俺達はその先を行くぜ」

 

そう言って目の前に立つ光輝と龍太郎

 

そんな彼らの前に立ちふさがるように咆哮をあげるベヒモス

 

一同もベヒモスに立ち向かうために身構えていったその時

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

ベヒモスの背中から突然、蛇の口だけが付いたような何かが

ベヒモスの体を食い破っては、耳鳴りになりそうな甲高い声をあげていく

 

それは、洞窟内にうるさく響いていき、一同は思わず耳をふさぐ

 

「な、何だあれは‥‥

 

 あんな魔物は見たことがないぞ!」

 

メルドはベヒモスの体を勢いよく

突き破ったそれを見て驚愕の様子を見せていく

 

すると、魔物はベヒモスの腹からはい出てくると

ベヒモスはそのままその場に倒れこみ、動かなくなる

 

そして、魔物は光輝たちに襲いかからんと

光輝たちを睨みつけていき、低いうなり声をあげていく

 

「たとえだれが相手であろうと関係ない!

 

 俺達は必ず勝って、佐紀を進むんだ!!」

 

「そうだぜ、俺達にはこれからまだまだ

 やらねえとならねえことが山ほどあるんだ

 

 こんなところでつまずいてなんて居られねえよ!」

 

そう言って光輝と龍太郎は現れた謎の魔物に臆することなく向かって行く

 

謎の魔物の方も光輝たちを自分に向かってくる

敵であると判断したのか、そのままゆっくりと

動かなくなったベヒモスから離れていくと、そのまま一同の前に現れる

 

「まずは俺が行くぞ!」

 

光輝がそう言って、聖剣を構えて攻撃をしかけていく

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ

 

 天翔閃!」

 

光輝の放った斬撃が轟音とともに

ベヒモスを食い破った謎の魔物に放たれて行く

 

しかし、その魔物の前に突然何かが遮るように現れ

それがなんと光輝の攻撃を防いでしまう、その正体は

 

何と奴の頭部であった

 

「何、もう一体!?」

 

「いいや、違う!

 

 あれは‥‥」

 

良く見てみると、その頭部はよく見ると

腕のように生えており、それが光輝の斬撃を防いだのだ

 

よくよく見るとその反対側に生えており

まるで、頭部のついた両腕のようであった

 

そして、その頭部もまた一同に威嚇する様に咆哮をあげていく

 

「おいおいおい‥‥

 

 首が三つもついてんのかよ‥‥」

 

「こ、これって逃げた方がいいんじゃ‥‥」

 

檜山達が逃げ腰になりかけているが、不意に声が響く

 

「いいや、見ろ!」

 

光輝がそう言って先ほど

自分の攻撃を防いだほうの頭部を指さす

 

そこからはよく見ると、何やら

煙のようなものが噴き出している

 

それが奴の体が傷ついたことによって

起こったことなのだと全員が理解する

 

「あいつは俺の攻撃を受けて、確実にダメージを与えられている

 

 つまり、勝てない相手ってわけじゃない

 此処にいる全員で力を合わせれば、勝てない相手じゃない!

 

 永山たちは左側を、檜山達は背後のトラウムソルジャーたちを

 メルドさん達は右側をお願いします、後衛は魔法による後方支援を頼む!!」

 

光輝が的確に指示を出していく

 

「ほう、悪くない指示だ

 

 ようし、全員、光輝の指示通りにするぞ!!

 

そう言ってメルドたちは魔物の右側に向かって行く

すると、魔物の右腕のように生えている頭部が騎士団の方を向くと

 

その口から冷気のようなものを吐き出して攻撃をしかけていく

 

騎士団が行ったのを見て、他の者達もそれぞれ動き出していく

 

すると、中央の頭部が口元を赤い光を帯びさせていく

なんらかの攻撃を後衛の方に向けて放とうとしているのか

 

「そうはさせねえぞ!」

 

「俺達で行くぞ!」

 

そう言ってクラスメートの二大巨漢

坂上 龍太郎と永山 重吾が飛び出していくと

 

二人は魔法で身体を強化して、それで大きく飛び上がり

頭部の上あごの部分にほぼ同時に拳を打ち付けていく、すると

 

魔物の方もそうはさせるかと二人に向かって頭部を突き出していく

 

「らぁああああ!!!!!」

 

「おぉおおおお!!!」

 

二人はその一撃を見事に止めていくが

いかんせん空中という不安定なところなので

思う様に攻撃を抑え込んでいく事ができずに放り出されそうになる

 

だがそこに

 

「はああああ!!!!」

 

遠藤が隠密スキルを使って敵の横に飛びだしていき

それで、魔物の首元に武器の刃を突き立てていくが

 

「ぐう‥‥硬い‥‥」

 

「浩介、下がれ!

 

 粉砕せよ、破砕せよ、爆砕せよ!!

 

 豪撃!!!!」

 

そこにメルドが自身の剣速と威力、さらには

彼自身の腕力も強化された重く鋭い一撃がさらに追撃する

 

すると、魔物の首から勢いよく煙のようなものが噴き出していく

 

それによって真ん中の首が断末魔のような雄叫びをあげ

そのままゆっくりと一同の方に向けて倒れていくと、物凄い

地響きとそれによる轟音をひきおこし、永山、龍太郎、浩介、メルド

 

四人はすばやくその場から離脱したので

敵の巨体に圧し潰されずに済んだ、それでやったのかと

誰もが思ったが、その際にほかの二つの首がゆっくりと頭部をあげていく

 

「残るは二本か‥‥」

 

「あれさえ落とせれば‥‥っ!?」

 

すると、動かなくなった真ん中の首に入っている

浩介とメルドから受けた傷がみるみると塞がっていき

 

やがて真ん中の首も体を起こす様にして首をあげていく

 

「まじかよ‥‥」

 

「そんな、あんなに苦労して通した傷が治っちまうなんて‥‥」

 

「…超速再生か!?

 

 全員いったん離脱しろ!」

 

すると、両側の頭部がぶんぶんと

降りまわしていく様に突っ込んでいき

 

それによって四人は一気に吹き飛ばされて行く

 

すると

 

「優しき光は全てを抱く!

 

 光輪!!!」

 

綾子が素早く一同に衝撃を和らげる魔法を放つと、さらに

 

「天恵よ、遍く子らに癒しを…

 

 回天!!!」

 

そこにすかさず、回復魔法を掛けて四人の体が回復していく

 

魔物の両側の首が動きを止めると

再び一同の方に頭部を向けていく、すると

 

「うおおおおお!!!」

 

そこにすかさず光輝が聖剣を突き出しつつ突っ込んでいく

三つの頭部は一斉に光輝の方に襲いかからんと向かって行く

 

「天翔破!」

 

光輝がそう言って聖剣を手に

身体を勢いよく回転させていくと

 

三つの首ともその攻撃によって切り刻まれて行く

 

だが、三つの首の中で負傷が少ない真ん中の首が

光輝に勢いよくかぶりつかんと牙を突き立てんとしていく

 

「ぐううううう…」

 

光輝はそれをどうにか聖剣で受け止めるが、やがて

真ん中の首はそのまま光輝を勢いよく吹っ飛ばしていった

 

「光輝君!」

 

「光輝!」

 

光輝の方はかろうじて無事のようだが

さすがに、無傷という訳ではないようである

 

だがそれでも、聖剣を杖の様にして体を支えつつ

それでも目のまえにいる魔物の方をしっかりと見据えていく

 

魔物の方は健在だが、先程光輝のつけた傷は

殆ど再生されていない、だがそれでも弱っている様子が見られない

 

すると、真ん中の首の口元から炎が

右の口元から冷気が、左は口から息を漏らす様にしていく

 

「天恵よ、かの者に今一度力を

 

 焦天!!!」

 

綾子がそう言って一点型の回復魔法を光輝にかけていく

 

一方、魔物の様子を見て

 

「なんだかまずい気がする‥

 

 鈴、早く結界を張って!」

 

「わかった!」

 

恵里の指示を受けて、鈴は前に出て手を突き出していく

 

「ここは聖域なりて、神敵を通さず!

 

 聖絶!!」

 

鈴はそうして結界をはると同時に敵の放った攻撃を防いで見せる

 

しかし、魔物の放つ三つの属性を一点の集中させたその攻撃は

次第に攻撃を防いでいる鈴を押していき、鈴の方も普段の明るい雰囲気が

感じられないほどに必死な表情で魔法を発動させている鈴、その彼女に

 

「天恵よ、神秘をここに!

 

 譲天!!!」

 

綾子がそう唱えると同時に

聖絶を発動させている鈴の体が光に包まれて行く

 

しかし

 

「うおおおお!!」

 

それでも何とかたもったが、それでも敵の攻撃の方が圧倒的である

 

「みんなが後ろにいるんだ‥

 

 負けてたまるもんかああああ!!」

 

鈴はそう言ってさらに結界の強さを高めていくが

段々と限界が迫ってきているのが分かり、結界が軋みをあげていく

 

「鈴‥」

 

そんな自分達を守るために頑張っている親友を見て

そんな彼女に何もできない自分自身が悔しく感じていた

 

しかし、だからと言って自分には何もできない

 

自分は降霊術師、死者の残留思念に干渉し

極めれば、死者を蘇らせ使役することもできる職業

 

逆を言えば魂と肉体がそろっていなければその真価を発揮できない

 

現在だって後方に回っていて親友である鈴があんなにも

体を張っているのに、自分自身は何もできずにいるのが悔しい

 

彼女は手に持っている杖をぎゅっと握りしめていく

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

それはまだ、自分達がトータスに召喚される前の事

 

彼女はそこでは図書委員を務めていた

 

だが、漫画やアニメが主流の今時の高校生は

こんな難しい本ばかりを置いている図書館になど

 

誰も滅多に来ることは無い

故にどこか暇をしており、たまに

図書室にある本を適当に手に取って

読んでいたりして時間をつぶしていた

 

だが、特にと友達が欲しいとは思わなかった

いいや、自分に友達なんていらないと自分に言い聞かせる様にしていた

 

こんな自分と友達になってくれるなんて言う人はいないだろうと言い聞かせて

 

中村 恵里の人生はまさに悲惨そのものであった

 

実の父親が自分の不注意のせいで亡くなり

母からはそのことで虐待を受け、再婚相手には

強姦されそうになって、やがて母に捨てられて

実父の両親に引き取られ、そこで過ごしていった

 

だが、母に捨てられたというショックからやや欝のようになっていき

ついには川から飛び降りようとしていたところを、救ってくれたのが光輝だった

 

やがて彼と再会したのは高校に入ってからで、彼の姿を見たときは本当に嬉しかった

 

しかし、彼の回りには自分なんかよりも彼と釣り合う女性が二人もいた

 

それが白崎 香織と八重樫 雫であった

 

彼女がその二人に対しては嫉妬や憎悪以上に抱いたのは

 

敗北感であった

 

二人なんて自分では到底かなわないと悟り

彼女は不意に、脳裏にある言葉を浮かべた

 

初恋は実らない、と

 

もちろん、光輝が二人と仲がいいからと言って

二人のどっちかと付き合っているとは限らないが

 

その時、様々なことがあって

心身ともに打ちのめされていた彼女には

そんな可能性を思い浮かべる余裕もなかった

 

入学して早々、二大女神という美少女の存在に打ちのめされた彼女は

誰ともかかわろうともせず、目立たずに生きることの喜びもなくすごしていた

 

そんな時に、彼女に話しかけてくる一人の同級生がいた

 

それが、谷口 鈴であった

 

彼女は良くも悪くも有名であった

明るくて誰にでも積極的に過ごして

 

その中には光輝や香織たちの事も含まれていた

 

恵里はハッキリ言って、そんな彼女が苦手だった

だが、そんな彼女はそれでも積極的に自分に話しかけてきた

 

最初のうちは、うっとおしく感じていき

ときにはひどい言葉を投げかけてしまう事もあったが

 

それでも、彼女はめげずに自分に話しかけている

 

やがてそんなことがあって不思議と彼女が話しかけてくることに

何処か、安心感のようなものを抱くようになった自分自身に驚いていた

 

不意に恵里はそうして鈴に自分に話しかけてきたのかと聞いた

 

彼女は見慣れた明るい笑顔とは違う雰囲気の笑みを浮かべて応えた

 

ー鈴が中村さんと友達になりたいなって思ったから‥ー

 

恵里は何だよそれと思ったが不思議とそれを聞いても悪い気はしなかった

 

やがて、鈴を通して想い人である光輝とも親しくなり

やがてそれを通して香織の想い人である南雲 ハジメの存在も知った

 

不思議と闇しかなかった自身の心に

明るい光がともされている感覚を覚えていった

 

中村 恵里は間違いなく、谷口 鈴という少女に救われたのだった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「鈴‥」

 

恵里は自分達のために体を張っている鈴に駈け寄っていき

彼女の体を後ろから、勢いよく支えるようにして抑えていく

 

「エリリン!?」

 

「ごめんね‥‥鈴‥

 

 ぼくが鈴のために出来る事はこのくらいしかない‥

 

 でもそれでも、僕は僕たちのために

 頑張っている鈴の事を助けたいんだ!」

 

そう言って恵里は鈴の小さな体が圧されそうになっているのを必死に抑えていく

 

「エリリン‥

 

 ありがとね、エリリン!」

 

「ううん、お礼を言うのは僕の方だよ鈴‥

 

 きっと鈴がいなかったら僕は今頃

 人生に絶望してた、暗い気持ちで過ごしてた‥

 

 そんな僕に初めて光をくれたのは鈴だよ‥

 

 だから、たとえこの先、僕が死ぬことになっても

 それでも僕は鈴のことを守り切って見せるよ、それが僕の‥

 

 ぼくなりに決めた、覚悟だから!」

 

恵里はそう言って力強く決意を口にしていく

 

すると、恵里の体から真っ白なオーラが噴き出していき

それが彼女や彼女が支えている鈴の体を包み込んでいき

 

恵里の右手の甲に何やら紋章のようなものがうかびあがった

 

すると、その紋章からあふれ出ている力が

恵里の手を通じて、鈴に流れ込んでいく

 

「なにこれ、すごい‥‥すごいよエリリン!

 

 あんなにきつかった体が嘘みたいに治ってく!!

 

 うおおおお!!」

 

鈴も先ほどまでの体の負担が嘘のように回復していき

さらに自身が展開している結界にもその力が宿っていき

 

それが魔物が放っている攻撃を段々と打ち消していき

 

それはついには魔物にまで及ぶと

魔物は悲鳴のような断末魔の咆哮をあげながら消滅していく

 

魔物はそれでも、恵里と鈴の方をにらみつけていく

 

すると

 

ー罪深き者どもよー

 

「「え!?」」

 

魔物が突然言葉を発した、これには鈴や恵里はもちろん

其の場にいたほかのクラスメートやメルド団長たち騎士団も驚きの様子を見せる

 

ー我らマモノ、我らが主により生み出され

 我らが神により創りだされし者、我らが神は目覚める

 

 我らが背負いし罪をもって目覚める、お前たち罪深きもの共によって蘇る

 

 我らが神が蘇り時、我らが主が生み出され、その王たちが目覚める

 暗黒の楽園は始まらん、始まりてお前たち己が罪を悔やむこととなる

 

 時は来た、神は蘇り、主が生み出され、王は目覚め、我等が楽園が始まる

 

 そのとき来るとき、罪深き者どもは滅び、世界は終わりの気迎えるだろう

 

 時は来た…時は来た…時は来た…ー

 

そう言い残して、魔物は完全に消滅を迎えていくのであった

 

「…‥何だったんだ今の言葉…

 

 というより魔物が言葉を話すなんて…

 

 メルドさんはさっきの魔物のことは?」

 

「…すまない、俺にもわからない‥‥

 

 さっきの魔物は俺自身も見覚えが無いからな‥‥

 

 それにさっきの言葉は、俺達に向けて警告を発しているようだった‥‥

 

 奴らの神が目覚める…それによって

 世界が終わる‥‥演出にしても手が込んでいるな…‥‥」

 

先ほどの魔物が言った言葉にやや意味深に感じてしまうメルド

 

すると

 

「いいじゃねえか、魔物が何を言おうとさ!

 

 俺達は勝ったんだ、それが事実だろ?」

 

「そうですよメルド団長!

 

 今は強敵に勝ったことを喜びましょうよ」

 

そう言って呼びかけて行くのは檜山達小悪党グループだ

彼等は魔物が何を言っていたのかと言う事よりもこの戦いに

勝ったことの方を喜んでいこうと、メルド団長に呼びかける

 

「…‥そうだな、相手は未知なる相手だったが

 それでも俺たち勝った、生き延びた、そのことを喜ぼう!

 

 俺達の勝利だ!!」

 

光輝はそう言って一同に呼びかけていくと

檜山グループを中心に一同が喜びの声をあげていく

 

「‥‥‥」

 

恵里は不意に自分の右手を見詰めている

そこにはもう、先程浮かんでいた勲章のようなものはなかった

 

「エーリリン!」

 

「うわっ!?」

 

すると、そんな彼女に勢いよく後ろから抱き着いていく鈴

 

「す、鈴、びっくりさせないでよ」

 

「えへへへへ、ごめんごめん

 でも、ありがとねエリリン‥

 

 エリリンのおかげであの魔物に勝ったんだよ?」

 

そう言って普段の鈴とは

全く印象が違う声で恵里に話しかけていく

 

「エリリンがね、後から鈴の事、支えるてくれたおかげで

 鈴は不思議と力が湧いてきたんだ、これはきっとエリリンの

 鈴への愛情パワーだって思うんだ、だからこうしてみんなが生き残れたのは

 

 エリリンのおかげなんだよ」

 

「鈴‥」

 

鈴がいつもとは違う笑顔で自分にお礼を言うのを見て

不思議と温かい気持ちになっていくのを感じ取っていく

 

すると、そんな二人のもとに声をかけていくものが現れる

 

「二人とも無事か

 

 ありがとう鈴、素晴らしい結界だったよ」

 

「えへへへへ、ありがとね」

 

それは光輝であった

 

光輝はそう言って、鈴の事も労って行った

 

恵里は損な様子を最初は微笑まし気に見詰めていたが

光輝のその後の言葉を聞いて、心境が大いに変わってしまう

 

「まったく南雲の奴は本当に出しゃばった真似をしたな…

 

 俺達がその気になればベヒモスぐらい倒せるんだ

 勘違いでヒーロー気分で調子に乗って好き勝手するから

 あんな自業自得の結末を迎えることになったんだからな…」

 

「‥‥‥」

 

それを聞いて恵里はどこか複雑そうな表情を浮べている

 

光輝の中で、南雲 ハジメという人物は

オタクという社会最底辺の人間でおまけに周りに合わせようともせず

おまけにやるべきことをやろうともしない怠け者、そのくせ自分の幼馴染である

香織に構われても態度を改めないどころか彼女の厚意をいつも無視しているだけでも

赦せないことだが、彼は一年のころにクラスメートの南野 姫奈を人気のない校舎裏に

連れ込んでは無理矢理関係を迫ろうとした人の道を外れたまさに断罪されるべき悪である

 

更にこの世界に来てからはそれに、自身の無能を棚に上げて悪の道に進んで

不当な力を手に入れた、許されざる裏切り者の悪であるという認識であった

 

恵里自身、その話を信じているわけではなかったが

そのせいで香織や雫をはじめとする、一部のクラスメートの反感を

買ってしまっているのも事実、その結果が香織たちのクラスメートからの離脱である

 

恵里自身は光輝のこの良くも悪くもまっすぐなところに惹かれて

それでも今もなおも思い続けているが、ここ最近は心境の変化も起こり始めている

 

その証拠に、光輝の先ほどの言葉にあまり良い感情は抱いていない

 

だが、それでも彼女にとって彼は生き続ける事、そのおかげで

鈴というかけがえのない親友に引き合わせてくれた人なのだ、故に

 

恵里はたとえこの先、彼が壊れることがあっても彼の味方であり続けよう

 

そう決意を秘めたのであった

 

そして、そこにはもちろん

 

「エ~リリン!」

 

「うわ、もう行き成り抱き着かないでよ」

 

「ぐへへへ~、良いではないか良いではないか~」

 

「親父発現やめぇ!」

 

大切な親友である鈴の事も含まれている、何があっても

彼女は彼女の大切を守り抜く、そう決意を露わにするのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ライセン大峡谷

 

この場所もまたオルクス大迷宮と同様に

魔物が発生する事でも有名であった、オマケに

ここに住まう魔物たちは何よりも迷宮にいた魔物たちとは

比べ物にならないくらいに強く、一瞬でも気が抜けない場所であった

 

もっともオルクス大迷宮の場合は、下にいけばいくほど

強くなっていく次第なので、一概に迷宮の魔物より強いのかと言われれば微妙である

 

なにより

 

「はああああ!!!」

 

「たあああああ!!!」

 

「やああああ!!!」

 

今この峡谷にて魔物の討伐を行っている五人の少女は

迫って来る魔物の大群を次々と討伐していっているのだった

 

雫は王宮より抜け出した際に持ち出したアーティファクトの剣

幼少期のころからふるっていた剣道の技術によって次々と敵を倒していく

 

風香は刀身が大きく幅の広い剣を使っている

女性である風香にも扱えているのはアーティファクトの効果によるものか

 

纏は天職である棒術師にあった、杖型のアーティファクトを振るい

それで魔物たちに打撃を次々と入れていき、更には棒から出てくる雷で

攻撃を受けた魔物たちはそれによって倒れてそのままこと切れてしまう

 

やがて、気が付くとその周りには魔物たちの死体が転がっていた

 

死屍累々、まさにそれである

 

「随分と倒しては来たけれども…

 

 どれも記録にあった魔物ばっかりね…

 

 そう簡単に敵の方も姿は現さないってことかしら…」

 

そう言って姫奈も辺りをきょろきょろと見回していく

 

「その‥‥ごめんね…

 

 私、結局何の役にも立てなくて…」

 

そう言って申し訳なさそうに言うのは香織であった

 

彼女がこういうのにはもちろん訳がある、それは

 

「しょうがないわよ、何しろこのライセン大峡谷は

 魔力が分解されて魔法が思う様に使えないんだもの…

 

 上級治癒魔法でも一般レベルにまで落ちてしまうのは痛いわね…」

 

「そうね‥‥討伐ではなく調査に主流を置いている理由もなんとなくわかったわ…

 

 もう一つの魔物の発生場所であるハルツィナ樹海では

 探知阻害の効果がある霧で常に覆われているらしいし…」

 

そう言って一旦は野営の準備をしていく五人、その中でも

てきぱきと動いているのは香織であった、戦いの中では約に立てなかったし

 

せめてこのぐらいはと香織が申し出た、他の四人もそんな彼女の気持ちを

十二分に理解しているので彼女の申し出を受ける、もちろん彼女らも手伝ったが

 

ハッキリ言って今まで寝ていた王宮やホルアドの宿屋のそれと比べると

快適とは言えないが、それでもゆっくり休める空間がるのはいい、やがて

休める時には休んだ方がいいと、他の面々が眠りにつき始めていく中で一人

 

焚き火の前で、一人見張りのために起きている姫奈

 

すると、テントの中から一人の少女が姿を現し、彼女のもとに来る

 

「‥‥香織?

 

 どうしたの、まだ見張りの交代には早いと思うけれど…」

 

「‥‥うん、そうなんだけれど…

 

 なんだかちょっと寝付けなくって…

 

その少女、香織は姫奈の隣にしゃがみこむ

 

「まあしょうがないわよ、今までがむしろ恵まれすぎたのよ…

 

 今のうちに慣れておかないとそれこそ身がもたないわよ?」

 

「あ、ううん、違うの‥‥そういう事じゃなくって…」

 

姫奈はテントが寝心地が悪かったのかと思い話しかけたが

香織は違うとあわてて否定する、それと同時に暗い表情になる

 

それを見てなんとなく察していく姫奈は

しょうがないわねと言う様に息を漏らした

 

「ひょっとして、今日の事気にしてるの?」

 

「ふえ!?

 

 えーっと‥‥その…」

 

図星を付かれたように驚いた様子を見せた香織だったが

このままごまかしてもしょうがないと考えて、静かに首を縦に振った

 

「‥‥私、ずっとこの力でみんなのことを助けてあげたいって思ってた…

 

 私の聖女の天職の力で、普通の人だったら会得するのが難しい

 上級治癒魔法を使えるようになって、それで雫ちゃんやみんな…

 

 なによりハジメ君の事を助けられるようになりたいって…

 

 今まで、ハジメ君のことで傷つけてしまった分

 私がハジメ君の事を最後まで支えてあげるんだって、それなのに…

 

 肝心な時に何にもできない‥‥そのせいでハジメ君は…

 

 いまだってそう‥‥私は雫ちゃんたちのように

 直接戦える術は持ってないから、何の役にも立ててない…

 

 私、ずっと不安なの‥‥またあの時みたいに何にもできずに

 また、大切な人を失ってしまうんじゃないか、私も強くなりたい…

 

 雫ちゃんや姫奈ちゃん達のことを守れる、ううん一緒に戦えるくらいに…

 

 もっと…強く…なりたいよ‥‥…」

 

「香織…」

 

香織の胸の内を聞いて、姫奈は少し言葉に迷いが生まれる

 

香織はずっと自分のことを責めていたのだ

ハジメの処刑を止めることも、彼を助けることも

 

もしあの時、彼の傍に居たら

あの時もっと彼のもとに早く駆け付けることが出来たら

 

そう言って彼女はずっと自分のことを責めていた

彼女はもともと優しい性分で、誰かを責めるという選択肢ができない

 

勿論それはいいことではある、だがそのせいで香織はあのころから

今の今まで自分のことを責め続けていた、ここにきてからだいぶ落ち着いてきたが

 

このライセン大迷宮の魔力が分解される現象のせいで

魔法で支援することでしかできない香織は再び自分の無力さに打ちひしがれて行く

 

そんな、彼女の肩に優しく手を置いていく姫奈

 

「‥‥そんなことないわ、香織は強いじゃない…

 

 だって貴方は南雲君が処刑されそうになった時

 迷うことなく彼の方に橋って言ったじゃない、あの時

 足が竦んで動けなくなった私なんかよりもずっとすごかった…

 

 香織は強いわよ、ただあなたがそれを信じきれていないだけ…」

 

「姫奈ちゃん…」

 

姫奈が香織のことを元気づけるために彼女にしっかりといい放つ

 

「貴方は強い‥‥それは誰よりも私が分かってる…だからしっかりと回りを見なさい!」

 

「姫奈ちゃん…」

 

そう言ってそんな会話をつづけていると

不意に向こうの方でなにやら大きな音が聞こえてくる

 

更にはそこから、悲鳴のようなものも混じって聞こえてきた

 

「敵襲!?

 

 香織、皆を起こして!」

 

「うん!」

 

そう言って急いでテントに向かう香織に

姫奈は向かってくるであろう敵に供えて武器を取っていく

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「はあ‥はあ‥」

 

ライセン大峡谷において、一人の人影が

なにかに追われているようにその場から逃げている

 

「どうして‥どうしてこんなことに‥‥」

 

それは一人の女性であった

 

その女性は見た限りはどこか

大人な雰囲気のとてもきれいな女性であるが

 

その頭からは兎の耳が生えていた

そしてそんな彼女を追いかけ回しているのは

 

複数の巨大な、兎のような魔物であった

 

だが、それは兎にしては大きさは当然

草食である兎には不釣り合いの爪と牙が生えており

 

それらをカチカチと鳴らしながら、女性を追い回していた

 

「嫌だ‥こんなところで‥‥

 

 こんなところで絶対に死ねない‥‥

 

 もう一度生きて、あの子に会うためにも‥‥

 

 会ってあの子に、私は…私は‥‥」

 

追われながらも、自分の服の胸元を思いっきり掴み

なにかを耐えるようにして、表情を険しくしていく

 

「うああ!!!!」

 

なにかを吹っ切るような女性のさけびごえがあたりに響くのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

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