世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
ハジメのもとに新たな罪徒が誕生しておよそ十日が立った
ある場所では、一人の少女が何やら
悪だくみをしているような笑みを浮かべて
ある場所に静かに忍び込んでいた、その少女は
「‥ウフフ、ハジメさんの寝込みを襲って
既成事実を作ってしまえば、もう誰にも私とハジメさんの仲を‥‥
ひいては、私のハジメさんへの思いを邪魔するものは誰もいません‥‥
それでは、失礼いたしましてぇ‥‥」
そう言ってある場所に入り込もうとした、そこに突然
「ふぎゃああ!!!!」
巨大な手が迫っていき、シアの顔面を勢いよく掴み込んでいった
「…まったく、君が何を考えているのかなんて
僕からすればとっくに丸わかりだからね、っていうか…
それに寝込みを襲うって言ったけれども、そもそも
僕も今の君も、食事も睡眠も必要ないのは知ってるでしょ?」
「そ、そうでしたああ!!!!
ごめんなさいごめんなさい
別に取って食おうとしていたんじゃないんです
ハジメさんに報告があってきたんですうう!!!!」
呆れたように話していくハジメに、シアは慌てて本来の用事を申し付ける
ハジメ自身、シアが別に自分のことを裏切ろうとしていたわけではないことは
原罪者の力によって理解していたので、アイアンクローからすぐに解放してやる
「報告?
そう言えば、リュナちゃんと一緒に
マヌエラから修業を付けてもらっていたんでしょ?」
「ふっふーん…
そのことなのですが、私先ほど
マヌエラさんの方針でリュナさんとお手合わせをしたのですが
それで見事に、リュナさんに一撃を与えられたんですよ」
シアはドヤ顔で自慢する様に言う
「…知っているよ、全部見ていたからね…
まあ、かすり傷程度だけれども、最初のころの
ボロボロに打ちのめされていた時に比べればすごい成長だね」
「‥うう、ハジメさんには全部お見通しなんですね‥‥
でもそれでしたら、話が早いです
ハジメさん、頑張ったご褒美をください、私と一緒に夜を明かし‥‥」
シアはそこまで言うと、またもアイアンクローがシアの顔面に炸裂する
「ふぎゃああ!!!!」
「…まったく、兎は年中発情期っていうけれども
逆に、ここまでオープンなのも考えものだよ、ほんとに…
でも、その様子だとどうやら君は君の中にある能力を
ある程度は使える様になってきたようだね、良く頑張っているようだ…」
アイアンクローをしながらもシアを称賛していくハジメ
「も、もちろんです!
私はハジメさんのお役に立てるのなら
どんな困難も目ではありません、リュナさんには負けませんよ!」
シアは話してくださいと巨大な腕を叩きながらも呟く
その後すぐに解放してもらい、自分の顔に異常はないか触れて確認していく
「嬉しいよ、僕にはシアも必要な存在だからね…
シアが僕のために頑張ってくれるのは素直に嬉しいよ」
「フフ、ハジメさんにそう言っていただいて私も嬉しいです‥‥
でもいつかはハジメさんに、私が必要だって言わせてあげますよ」
そう言ってシアは笑みを浮かべて言う
それに対してハジメは笑みを浮かべて返していく
「さてと、それじゃあそろそろ行こう…
シアはある程度、能力の使用ができる様に
なったみたいだしね、今後の方針について…
他の皆と話をしていきたいと思っているから…
シアちゃんもついてきてもらえるかな?」
「もちろん、何処までもついていきますよハジメさん」
そう言ってハジメの後をついていくシア
それからしばらくして、ナギサをはじめとする王たち九人に
リュナ、シアを加えた十一人がハジメの前に控えていく、その前には
ハジメ、右隣には先生もいる
「さて、こうして僕たちのもとにシアという
新たな同士が加わった、今後の方針を決めていく前に
マヌエラ、シアの能力についてはどうだい?」
「うん、すごいと思うよー
ただ、シアちゃんはリュナちゃんと違て
ラルヴァの力を攻撃力に転換するのが苦手みたいでねー
あ、でも、逆にその力を自分の肉体の方に転換させる方は
逆にシアちゃんの方に軍配が上がるよ、リュナちゃん同様に
元々そちの方に適性があたて感じかな、そちの方では頼りになるかもー」
色欲の皇帝
マヌエラ
シアの修行に付き合ってあげていた彼女は
彼女のスペックを自分が感じた範囲に話していく
シアはそれを聞いて、リュナにドヤ顔を向けていくが
リュナは調子に乗らないとシアにジト目を向けていく
「そっか、要するに身体能力強化に優れているという訳か…
彼女の能力と合わせると、実に興味深そうだね…
今後も期待しているよ、シア…」
「もちろんですとも、あの時ハジメさんに出会えなければ
私はこのような機会には恵まれませんでした、これから先も
ハジメさんの期待にこたえられるように、日々精進していきます」
シアはそう言ってハジメに自身の言葉を伝えていく
「期待しているよ…
幸雲と天運、狂気と波長、次元と銃弾、団子と大食の罪徒
シア・ハウリア」
ハジメがそう言うと、シアは嬉しそうに笑顔を浮べていく
「それにしても、吃驚だよね…
まさか、四対八つの能力に目覚めるなんて
リュナちゃんだって、二対四つの能力なのに…」
強欲の皇帝
サディ
彼女はそう言ってシアとリュナの方を見て言う
「問題ない、能力の質と魔法に関しては負けていない‥‥」
運命と破壊の罪徒
リュナ・プレーヌ
彼女はそれがどうしたといわんばかりに反論する
「フフ、リュナさん
そうやって油断をしていると
私がいつかハジメさんをものに
出来るくらいに強くなって、リュナさんを
引き離していってしまいますからね、ふっふーん」
「ふん、寝言は寝てから言うもの‥‥
あなたこそ、調子に乗って足元を掬われないようにするといい‥‥」
シアとリュナはそう言ってお互いに火花を散らしていく
「フフフ、仲がいいようで何よりだね…
それじゃあ、そろそろ今後の方針に
ついて説明の方をお願いね、ハジメ君」
そう言って、話を進めていくのは
先生
ハジメを原罪者として覚醒させた張本人の彼女である
「…ようし、それじゃあこれから僕たちは
このトータスへの攻撃の足掛かりとして、まずは…
拠点となる場所と、さらなる同士を増やしていく…
そのためにこれから、君たちの中から何人かを選抜して
とある二つの場所に向かって行く事とする、その場所とは
ヘルシャー帝国とフェアベルゲンの二つだ」
「‥帝国とフェアベルゲン?
どうして、その二つに向かうので?」
そう言って聞いてくるのは
虚栄の大王
リュカ
仮面をかぶっている彼は、ハジメに問いかけていく
「…まず第一に、この二つはエヒトに対しての庇護下にない事…
帝国は完全実力主義の思想を持っていて、エヒトへの信仰心は無いに等しい…
ハイリヒ王国と不可侵条約をかわしているらしいが、あのエヒト狂いの
国がそんな国のことを良く思っているはずもないだろう、そんな国をエヒトが
何の手も加えていないってことは、そもそもあの帝国自体に興味を向けていない…
そう考えるのが妥当だろう、だからあそこを拠点とするために帝国を訪問する…
次に向かうフェアベルゲン、あそこは言わずもがな
亜人の国で、実質神に見捨てられているといってもいい…
それに、どうやらあそこにもオルクス大迷宮同様に迷宮とされているらしいからね…」
「大迷宮…
反逆者もとい解放者が遺したという
神代魔法を手に入れるための試練…
でしたよね、マスター」
暴食の皇帝
マリア
彼女が不意に、それを聞いていくとハジメはそうだと返す
「…まあ、そもそも魔法が使えない僕達には
神代魔法を手に入れることは出来ない、でも…
神代魔法を残しておいたところで、それを手に入れたやつが
もしかしたら、僕たちの前に愚かにも立ち塞がろうとするかもしれない…
だったら、迷宮を残しておく理由もないだろう…」
「‥マスター‥
神代魔法の件もそうですが
もっとなんとかしくてはならぬものがいるのでは?」
すると、何処か本能的な印象のリュカが意見を述べていく
「…南野 姫奈か…
確かに彼女の能力は厄介だが
今は慌てるものでもないだろう…
実質、その力を使えるのは彼女一人だけなんだからね…
それに、挑むにしても時期も早すぎるしね
準備が整い次第にすぐに向かう事にしよう、今はまず…
帝国とフェアベルゲンの攻略だ」
「‥…そう言えばこのライセン大峡谷にも
大迷宮があるのではないでしょうか、確か‥…
オルクス大迷宮の中にあったオスカー・オルクスの
資料の中にあった解放者の死霊の中にあった名前に‥…
確か、ミレディ・ライセンと‥…」
憂気の大王
ノルベルト
彼が、そんなことを尋ねると
「…まあ、ライセン大迷宮には
マリアの奴が仕込んだ奴らが解き放たれている…
大迷宮の攻略どころじゃないだろうさ…」
「…仕込みと言えば、マリアさん…
兎人族を一羽、取り逃がしたらしいですね…
本当に貴方は、詰めが甘い、施しを与えるなどという
回りくどいことをしないで、一気に力を与えればよかったものを…」
嫉望の大王
チヒロ
彼女はそう言って、兎人族をマモノに変えたマリアを指摘する
「…問題はありませんよ…
生き残ったその一羽の兎は私がしっかりと
処分しておきました、ですので何の問題もありません…
仮に生き残ったとしても、今やマモノ達が救うあの谷で
非力な兎人族が生き残れる可能性はゼロに等しいでしょう…」
「‥‥…」
マリアの言葉に少し難しい表情を浮べているのは
傲慢の皇帝‥‥
彼女はじっとマリアの方を見詰めていた
「…何にせよ、これから行う
帝国とフェアベルゲンの攻略の方も進めていく…
フェアベルゲンの方は、チヒロ…
ヘルシャー帝国の方は、マヌエラ…
それぞれが行って来てほしい…」
「承りました…」
「任せてー!」
選抜された二人は、それぞれの反応を示していく
「それから、シア!」
「っ!
はいですぅ!!」
ハジメに呼ばれて、嬉しそうに
跳び上がって彼の方に行き、前に立つ
「何でしょう、ハジメさん!」
「シア、それではさっそくだが君には
マヌエラのお傍付きを任せたい、今後は
彼女の指揮の下で活動をしてもらいたい…
任せられるね?」
ハジメがそう言うと、シアはふうと息を漏らすと
「それがハジメさんの意志ならば‥‥」
と、静かに了承するのであった
「…それで、どうやって帝国に行くのかだけれども…
何か考えはあるの、マヌエラ?」
ハジメはマヌエラに段取りを聞いていく
「‥‥うん、まずはこの帝国兵が使てた馬車を
利用して、帝国兵として中に入っていくかなー
身分証明書のステタスプレトもあるしー
ただ、問題は帝国兵の顔が分からないー‥‥」
「うぐ…」
マヌエラにそう言われて、ばつが悪そうにするのは
憤情の皇帝
ナギサ
それはそうである、帝国兵はみんな
ナギサが倒して燃やし尽くしてしまったのだから
しかし
「あの‥帝国兵の顔でしたら私、覚えてますよ‥‥
皆さんに会うまで本当に、嫌でもあってましたから‥‥」
シアが恐る恐る聞いていくと
マヌエラはシアの手を嬉しそうに握っていく
「ホント!?
ありがと、シアちゃん!
さそく教えてもらてもよいー?」
「え、ええ‥‥
教えてあげるくらいなら‥‥」
「わあ、ほんとにありがとー!
シアちゃんはほんとにすごいねー」
そう言ってシアの腕をぶんぶんと
振り回す勢いで引っ張っていくマヌエラ
シアはあまりのテンションの高さにやや引き気味である
「…それで、作戦の方は?」
「はい、まずは私の能力で、帝国兵になて
シアちゃんを奴隷として、国の方に入っていきます」
「ちょっと!?
それってつまり私のことを売るってことですか!?」
「そだけど何か?」
「正直に答えましたね!?
っていうか、それってつまるところ
私を取引材料にするおつもりですか!?」
いくらなんでもそれは‥‥」
シアはやや慌てた様子で、マヌエラに抗議するが
それをマヌエラはピンと自身の人差し指を立てて、それを
シアの唇に当てていく、それを受けて思わず言葉を止めてしまうシア
「大丈夫だよー、売りに行くて言ても本当に売るわけじゃないしー‥‥
それに、シアちゃんみたいな子を売りに出すなんて
そんな愛のないことなんてしないよー、だから落ち着いてー‥‥」
「あ‥‥」
マヌエラの無邪気な笑顔を見て、シアは不覚にもときめいてしまう
同姓であるのに、自分には
ハジメという心に決めた相手がいるのに何たる不覚
「まあ、ようするにシアちゃんを国に献上するて口実で
国のふところに入ていて、一気に王様の寝首を刈ちゃうてことー
分かたー?」
「‥わ、分かりました‥‥
しかし、思っていたよりも過激ですね‥‥
はっきり言って、穏便に済ませられるとかんがえましたけど‥‥」
シアは恐る恐る聞いていく
「もちろん、それで済ませられるならそうするよー
それに、実力主義なんて愛のないのは嫌いだしねー‥‥」
マヌエラはそう言って、馬車の方に向かって行くと
シアにおいでと手招きして、さっそく準備を進めていく
「…それじゃあ、チヒロの方もお願いできる?」
「…お任せください、主様
主様にお仕えする身として恥ずかしくない働きをして見せます…」
チヒロはそう言って、ハジメに片膝を立てて頭を深々とさげていく
「…さてと、それじゃあ僕の方もそろそろ、行きますか…」
そう言って、ハジメの方も何やら動き始めていく
「マスター、どうなさいましたか?」
「うん、ちょっとね…
もしかしたら、また一人
同士を増やせるかもしれないと思ってね…」
「同士、ですか‥…
果たしてそれは、我々のひいては
主様の役に立てるほどのものなのでしょうか‥…」
ノルベルトはそんなことを言って行く
すると、そんな一同をよそに
その場から動き出していく影が
「うん‥‥?
どこに行くのナギサ?」
リュナは不意に、その場から離れていく影
ナギサに声をかけ、何処に行くのかと訪ねていく
「‥‥ちょっと気がかりをつぶしにね…
それに、動く予定がないなら暢気に待っている必要もない…」
そう言って、ナギサの両腕が巨大な翼状に変化していき
彼女はそのままいずこかへと飛び立っていくのであった
「‥‥」
それを見た傲慢の皇帝は
弟であるリュカに目配せをしていく
「‥リュナ、行くぞ‥
ナギサさんが何処に向かったのかは
大体予想がつく、俺たちもついて行くぞ‥」
「何で私が貴方の言う通りにしないといけないの‥‥
私に命令してもいいのは、ハジメだk‥‥」
リュナがリュカに物申そうとしたとき
「行ってあげてリュナ…
君は傲慢の皇帝のお傍付きでしょ?
だったら、弟君のリュカにもついていってあげて…」
「ハジメ‥‥!?」
「…それに、あんまり弟君を邪険にすると
それこそ、お姉さんが後になって怖いからね…」
ハジメがそう言うと、リュナの後ろの方から
罪徒になってそれなりの力をつけたリュナでさえも
圧倒されてしまうほどの威圧感を大きく感じていく
リュナは恐る恐る、威圧感のする方を見てみると
「‥‥」
傲慢の皇帝が、リュナに黙って行けと
いわんばかりにリュナを睨みつけていた
「‥わかった‥‥ついていく‥‥‥
行きますからもうやめてください‥‥
もう、文句なんて言いませんから‥‥!」
リュナがそう言うと、その場に蹲る様に跪き
やや息を切らしたものの、すぐに呼吸を整えていく
「‥行こう‥‥」
「フフ、さすがのリュナも
姉さんには敵わないようだね‥
まあ、かくいう私もそうなんだけれどね‥」
そう言ってリュナとリュカは
それぞれ九人で向かって行った
「…まったく、ナギサさんは…
そんなにまでして、神代魔法を
脅威に感じているのかね、まあいいけれど…」
そう言ってハジメはさっそく、自分の
目的の者のいる所に向かって行くのだった
その者とは
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
ハウリア族が忌み子をかくまっていたという理由で追放されて数日後の事
亜人族の中でも特に位の高い種族
森人族、ハジメたちの世界で言うエルフ族
そのエルフ族を束ねているのは亜人の国
フェアベルゲンを束ねている、長老衆の一人
アルフレリック・ハイピスト
彼は、ハウリア族の件においての執務作業に励んでいた
そんな彼のもとに、一人の人物が入り込んでいき
ずかずかとアルフレリックのもとに歩みよっていくと
「お爺様!
一体どういうことですか!!」
そう言ってアルフレリックに怒鳴り込んできたのは
アルテナ・ハイピスト
アルフレリックの孫娘で、同じ森人族の少女だ
「アルテナか、すまないが後にしてもらえるか‥…
これでも事後処理で手が回っていないのだ‥…」
「お爺様、シアさんを
ハウリア族を追放したというのは本当ですか!?」
アルテナはそう言って、アルフレリックに詰め寄っていく
「‥‥…本当だ」
「‥‥どうしてですか‥…
確かにシアさんは魔力を持ってそれを
操る力をもっていたかもしれません、でも‥…
でもだからって、何もこんな事を‥…
シアさん自身は何にも悪いことはしていないのに‥…」
納得出来ないといった感じで詰め寄っていくアルテナ
しかし、アルフレリックの方は呆れたように一息をつく
「‥‥…アルテナよ、もうこれ以上私を困らせないでおくれ‥…
ハウリアの処刑の時も、今のように異を唱えて他の長老方を
戸惑わせては、それこそ我々の顔が立たなくなる、なによりも
今回の判決とて、出来るかぎりお前の意見を聞いた上でようやく
下した決断なのだ、なのにお前はまたもこうして我儘を言うなど‥…
すまんがもうこの話は終わったことだ、悪いがまだ仕事が残っている
速く自分の部屋に戻れ‥…」
「ですが、お爺様‥…」
「出て行けと言っておる!
もうこれ以上、私を困らせるな!!
もうハウリア族の刑は執行されたのだ
過ぎたことでいちいち私に我儘を言うな!!!」
アルフレリックはたまらず、孫娘でアルテナを怒鳴り付ける
それを受けたアルテナは涙を浮かべて
プルプルと体を震わせながら強く握り拳を作る
「‥‥お爺様はいっつもそうですよね‥…
私の意見も話にも、耳を傾けずにいっつも
自分の都合ばっかりで私の意志を理解しようともしていない‥…
揚句には、私にとって初めての友達だって、お爺様は平気で捨てた‥…
お爺様も結局は、私の事なんて興味がないのですね‥…」
「アルテナ‥…?」
様子のおかしい、アルテナを見て不意に彼女の方を見る
「‥‥長老の馬娘、美しき森人族の姫君‥…
最初のころはそう呼ばれることに何の疑問もなかった‥…
でも、大人になっていくうちに、理解した、してしまった‥…
周りの者は、一族の者達は私に対してその程度の価値しか
見出していないと、そんな中で出会ったのがシアさんでした‥…
魔力を持ってる‥‥魔力を操れる‥…固有魔法を持ってる‥‥‥…?
それが何だっていうんですか!
彼女は‥‥シアさんは‥…私にとって初めてできた友達です!!
それを、亜人族の風習なんかのために
そんなくだらないもののために奪われてしまって‥…
わたしには自分の友人すらも自由に作ることも許されないんですね‥…」
アルテナの目からは、涙がうかんでいた
顔をあげると同時にその目から涙があふれていく
「こんなに苦しい思いを抱えて生きていくくらいなら‥…
私は‥‥貴方の孫娘になんて生まれたくなかったですよ‥…
お爺様‥…」
そう言って、何もかもから逃げ出す様にアルテナは部屋を出ていった
「待てアルテナ、待ちなさい!」
アルフレリックは思わず仕事を中断して
アルテナを追って行くが、もうすでに彼女の姿はなく
アルフレリックは部屋の前で呆然と突っ立っていたのだった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
アルテナ・ハイピスト
彼女は亜人族の中でも特に位の高い
森人族として生を受け、更にはその長老である
アルフレリック・ハイピスト
彼の孫娘であると言う事に重ねて、心優しく美麗な容姿の持ち主故に
同族の者達からは慕われていた、幼少のころはそれに満足していたが
大人になっていくにつれて、やがて
その待遇に対してある感情を抱き始める
自分は、美しくて優しい族長の孫娘という色眼鏡でしか見られていない
彼女は気が付いた、自分は自分が思っていた以上に孤独なのだと思い知らされた
大人になっていけばいくほどに心に穴が空いていくように広がる虚しさ
気がついたら、森人族の里から離れて
森の中で一人で過ごすことが多くなっていた
風の音、風によって木々がなびく音、川のせせらぎ、鳥の鳴き声
森の中で聞こえてくるその音は不思議と彼女の心に安らぎを与えてくれる
だが、その日は少し訳が違っていた
アルテナが暫く、森の中で静かに過ごしていると
なにやら森の奥の方から何か野太い鳴き声と大きな足音が響く
いったい何なのかと、様子を見に行こうとすると
それを一人の兎人族の少女に止められて、ここは危険だと
そう言われて、その場から連れられていった、それがアルテナと
シア・ハウリア
彼女との初めての出会いであった
そのころからシアとともに過ごす時間が多くなり
彼女はアルテナにいろんなことを離してくれた、まず
自分には亜人族には本来はない、魔力を持ち
更には魔物の様に魔力を自由に操ることができるらしく
さらには、魔物しか持たない固有魔法を持っていると
アルテナの危機を知れたのは、この固有魔法、未来予知によって
自分が強力な魔物に襲われて行く未来が見えたので、助けてあげた言う事
アルテナは忌み子の事は聞かされていたため、最初の方こそ驚いたが
その能力のおかげで自分の命が救われたのだから、もちろんお礼は言った
その際に、シアは幼いころに母が自分の力のことで励まされたことも話した
アルテナも、両親を亡くしているので家族がいなくなる気持ちはわかる
なにより、その言葉と固有魔法のおかげで、自分の命は救われたのだ
忌み子と呼ばれても、兎人族であろうとも関係ない
彼女は自分にとっては命の恩人である、それにもしかしたら思い
アルテナは思い切ってシアに言う
「私と友達になってくれませんか?」
その言葉を聞いて、シアは笑みを浮かべて嬉しそうに了承してくれた
こうして、アルテナにとって初めて心の底から友達と呼べる相手が出来た
シアにとっても、自分の力のことを知っても普通に知ってくれるかけがえのない
そんな相手が、一族以外の亜人族の者の中から現れてきたのだ、二人は大いに喜んだ
二人は森の中でおしゃべりなどをして過ごしていた
だが、そんな日々など送らせるものかと
言わんばかりに、そんな楽しい時間は運命によって終わらせられてしまった
何と、シアのことが長老衆にばれて
一族もろとも裁判にかけられることとなってしまった
アルテナはそれを聞いて、慌てて祖父に掛け合い
シアも他のハウリア族の者たちの事も許してもらいたいと掛け合った
しかし、本来ならば処刑に処されるはずだった決定を抑えられたものの
下された判決はある意味、処刑されるよりも残酷な判決であった、それは
ハウリア族全員の追放
フェアベルゲンの外には強力な魔物が住まっている
亜人族の中でも非力と呼ばれている兎人族では絶対に生き残れない
生き残れたにしても、最悪人間族に奴隷として捕らえられて
おおよそ、まっとうな生活など送れるとは思えない人生を送らされることになる
アルテナはこの残酷な判決を下した祖父を始めとする長老衆を怨んだ
だがそれ以上に考えが浅かった自分自身の無知さを呪った、彼女の心には
憎しみと虚しさのみが残った
やがて、祖父の元を跳び出した彼女はそれこそ
どのくらいにまで走ったのかわからないほどに必死に走った
しかし、元々大切に育てられた彼女は体力などそれほどない
さらに亜人族であるため魔力にも恵まれていない、そんな彼女が
樹海の外で、生き残っていこうなど、到底簡単なことでないのだ
さらに、そんな彼女をさらに追い詰めていく出来事が起こる
何と、魔物の攻撃にやられて瀕死の状態になってしまう
急所すれすれの場所に対する場所の上に毒の付与、とてもではないが
彼女の命は助からない域に達している、アルテナは薄れゆく意識の中で
ある一つの心残りを口にしていく
「‥‥シアさん‥…死ぬ前にもう一度‥‥‥…
あなたにお会いして‥‥謝りたかった‥…
許してもらえなくていい‥‥嫌われてもいい‥…
それでも‥‥謝りたかった、あなたを助けられなかった事‥…
あなたという大切な友人を守りきれなかった事を‥…」
何度も何度も、ごめんなさい、ごめんなさいと
意識が薄れていく中で謝罪を続けていくアルテナ
命の炎が静かに燃え尽きようとしていた
その時
「そう言うのは、直接会ってからじゃないと伝わらないよ…」
「‥‥え‥…?」
意識が薄れていく中で、アルテナの耳に
なにやら優しい声が聞こえて意識が薄れて
良く見えなくなっている目を声の方に向けていく
「…そっか…君はシアさんの友達だったのか……
でもこのままだとしんでしまうね…ねえ。お嬢さん…
助けてほしい?
もっと生きたい?」
アルテナは弱弱しく声も出せないが、それでも精一杯唇を動かす
ー生きたい‥…ー
アルテナがそう唇を動かすと、彼女の顔に
なにやら鋭い爪の生えた指を大きく食い込んでいく
そんな感触を感じていき、アルテナはそっと意識を失って行った
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
シアが一族もろとも、フェアベルゲンを追放されて
十日以上が立ち、アルテナの件でややざわついていた空気が収まってきたある日
フェアベルゲンに一人の来訪者が訪れていく
その突然の来訪者のもとに現れるのは
フェアベルゲンの警備隊を務める、虎人族の者であった
「動くな!
なぜここに人間がいる!!」
そう言って、来訪者の女性に呼びかけるも
女性はそれを見ても特に意に返すことなく口を開く
「…亜人族の皆さん、お初にお目にかかります…
私はある御方の使いとして、こちらに来訪しました…
チヒロと、申す者…
フェアベルゲンの長老方と是非ともお会いしたく
思い、こちらにはせ参じました次第でございます…」
チヒロと名乗ったその人物は至極丁寧にそう返していく
「黙れ、人間風情が長老様方にお会いできるわけがないだろう!
さっさとここから出ていけ、さもなくば貴様をこの場で‥っ!?」
虎人族の男性がそこまで言いきると、チヒロはそんな彼の方に目を向ける
赤色で緑色の瞳孔が自分の方を向けた際に、たったそれだけのことでその男性は
本能的に悟ってしまった、この人間いいや
あれは恐ろしくヤバい、と
「…話を通して、いただけますね…」
『『『‥』』』
その場にいた虎人族もまた、その恐ろしさを肌で感じ
リーダーともいえる人物が、話をとしてくるから待って
ほしいとその場を離れて、フェアベルゲンの方へと走っていった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
そのころ
「はあ‥…」
なにやら、気の重そうな雰囲気を纏わせるアルフレリック
そんな彼のもとに一人の森人族の者が入っていく
「アルフレリック様…」
「どうした、アルテナは見つかったのか?」
「…いいえ、実は…」
もしかして孫娘であるアルテナのことに関してなのかと思ったが
別の用事である事にやや気落ちしてしまうものの、何かと布告を受ける
「‥‥…なに、客人が?
悪いが今はそれどころではない
申し訳ないが帰ってもらってくれ‥…」
「…それが、どうやら例の資格者らしいのです…迷宮の攻略者…」
「‥‥…なに‥…!?」
資格者、それを聞いて驚いた様子を見せていくアルフレリック
「…‥‥そうか、もしもそうだというのなら
口伝に従わなくてはなるまい、客人の方は私が出迎えよう‥…
お前は引き続き捜索の方を続けてくれ、必ず…‥‥見つけてくれ‥…」
「はい」
そう言って重い腰を上げて、自分のやるべきことを為そうと考え
アルテナの捜索を引き続き続けてほしいと、言伝を伝えた森人族に伝えるのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
数人の森人族の護衛を連れて
アルフレリックは、客人のいる場所にへと案内される
そこにいたのは、水色の長い髪をなびかせた
人間族の女性にしては背が高い方で、美麗な容姿の女性であった
どこか、生真面目で凛々しい見た目をしている
「お前さんが、我々と話をしたいと申し出てきた客人か?」
「…チヒロと申します…
本日は私のようなものの頼みを聞いて下さり
心より感謝申し上げます、お近づきの印というほどのものではありませんが
まずは、こちらの方を…」
そう言って、チヒロはあるものを見せていく
それは、一つのただの指輪である、それを見て
アルフレリックは驚いたように眼を見開いていく
「ほう…‥‥これは、オスカー・オルクスの紋章‥…
これを持っているという事は、どうやらオルクス大迷宮を
攻略したという報せは本当だったようだな、そういう事ならば
私たちはお前さんを歓迎しよう、満足のいくもてなしは出来んが‥…」
「お気になさらず、むしろ私の方こそ突然押しかけていく形に
なってしまって申しわけありません、長老の皆様もいろいろと
お忙しい身であるというのに、お気遣いのほど痛み入ります…」
生真面目な雰囲気だが、落ち付いている雰囲気があり
アルフレリックは言動の中から見える自身たちへの気遣いを感じ
不思議と、孫娘の事ですり減らしていた精神が不思議と安らぎを覚えていた
やがて、アルフレリックの案内を受けて
フェアベルゲンの案内をしつつ、自分達の国の方を見せて回っていた
「いかがでしょうか、チヒロ殿…‥
我らの国、フェアベルゲンは…‥」
「…ええ、とても美しく心が洗われるようです…
やはり美しいものは見ていて、安らぎをおぼえます…
実に、素晴らしいものです…」
チヒロはそう言って、フェアベルゲンの景観の美しさを素直に称賛する
それを聞いてアルフレリックもその場に居合わせた亜人たちも悪い気はしていないようで
動物の特徴を持つ者は尾を動かしたり、ピンとたてたりと
それぞれ動作は違うものの、嬉しそうな表現を現していた
やがて、ある部屋に案内されたチヒロはアルフレリックに
案内され、応接間ともいえる場所で向かい合うように座っている
「それで、チヒロ殿…‥
あなたの目的はこの七大迷宮が一つ
ハルツィナ樹海の攻略という事でいいのですな?」
「…ええ、この樹海に来る前に私どもはオスカー大迷宮を攻略し
このトータスという世界の歴史の裏に隠された真実の形を知りました…
それに対抗するためにも、私たちは七大迷宮を攻略する事を目標としました…
私どもがこのフェアベルゲンにやってきた理由は、このハルツィナ樹海
その中心にそびえるとされている大樹ウーア・アルトにあると考えています…
そこに向かうためには、ぜひとも皆様のご協力を仰いでほしいと思いましてね…
もちろん、それまでの間は私どもがあなた方の安全の保障は致します
私どもとしても皆様と敵対したいわけではありませんからね、私たちは
この樹海にある迷宮の案内を要求し、その対価として皆様の安全を保障する…
私としても、皆様にもメリットのある話だと思いますが
アルフレリック殿の意見の方を、お聞かせ願いたいのですが…」
チヒロは自分の要求を口にする
チヒロの申し出は確かに彼女の方にも
亜人族たちの方にもメリットはある、ここ最近
人間族と魔人族の戦いが激化している中で、自分達のことを
守ってくれるものがいるのは心強い、アルフレリックの方も
わずかな期間ながらも、自分達のもとに余裕ができるのならば
もちろん、その申し出を受けるべきであると考えている、なにより
彼女の実に落ち着いた雰囲気に好感を持ち始めていた
「確かに私どもとしては、チヒロ殿のような方に
我々の守護の方を任せられるというのであるならば心強い
それに、チヒロ殿が迷宮の攻略者であるというのであれば
我々は口伝に従い、大樹に向かうというのならば、ご案内させていただこう…‥
ですが、大樹付近は特に霧が深く、索敵能力に優れる我等亜人族でさえも
方角を見失ってしまうほどです、そしてその霧は十日に一回のペースで晴れていきます…‥
故に、すぐに案内をすることは出来ませぬゆえに、どうかその点のみはご了承を…‥」
「そうですか…
それでしたら、ぜひとも我が主と会っていただきたい…
皆様が私とこうして友好関係を結べたと
知れば、快く来訪してくださるでしょう…」
ハルツィナ樹海は方向感覚を狂わせる作用のある、霧に覆われている
亜人族は優れた探知能力を持っているが
だからと言ってその影響を受けない訳ではない
ゆえに、その霧が特に濃くかかっている大樹付近では
亜人族ですらも方角を見失ってしまう、故に霧が薄まっていく
ある周期の時にしか、大樹の方に向かうことは出来ないのである
「フム、チヒロ殿の様な方が言うお方ならば
私としても是非ともお会いして話をしてみたいものです‥…
御来訪いただけるなら我ら一同是非とも歓迎させていただきます…‥
ただ、問題はこの場にいない長老たちが賛同してくれるのか…‥」
アルフレリックがそこまで言い切ると
いきなる扉がけ破られる音とともに、誰かが会談の場に入ってきた
アルフレリックは少し怪訝な表情を浮かべ
チヒロは視線のみをそちらに向けていった
「アルフレリック!
貴様、どういうつもりだ!
なぜ人間をこの地に招き入れた!」
そう言って会談の場に割り込んできたのは
熊の亜人、熊人族の男性で、彼は怒鳴る様にアルフレリックに言う
「なに、口伝に従ったまでだ
お前も各種族の長老の座についているのなら、事情は理解しているだろう?」
「ふん、何が口伝だ、あんなもの眉唾物ではないか!
この、フェアベルゲンが建国されて以来
ただの一度も実行されたことがないではないか!!」
「だから、今回が最初になる、それだけの事だ
お前も長老ならな掟に従え、掟を守らねばならぬ長老が
その掟を軽視しては、それこそ面目が立たんだろう」
「なら、こんな人間族の子娘が資格者だというのか!」
そう言ってなおも食って掛かるが
アルフレリックはその男性にあるものを見せる
「これが、その証拠だ…‥」
それは先ほど、チヒロが見せた指輪
オルクスの紋章の入った指輪であった
「ふうん、これはオルクスの紋章だね‥
証拠としては申し分ないけれども
ただ、攻略者としての実力のほどはあるのか、だけれど‥」
そう言って、ちらりとチヒロの方を
見る狐の耳を生やした、糸目の男性
チヒロは特に長老衆のやり取りに関して
何かを言おうとしている様子は見たところはない
「ふん、紋章があったところで何だというのだ!」
「そうだ、そもそもあのような華奢な娘が本当に
オルクス大迷宮を攻略したのかどうかすらも疑わしい!
おれは絶対に認めんぞ!」
そう言って長老衆は、承認派と否認派
あくまでその様子を見る中立派に分かれて口論していく
チヒロ、もとい彼女の言う主を承認するアルフレリックと
チヒロのことをかたくなに認めぬ、熊人族、虎人族とさらに
土人族、所謂ドワーフのそれぞれ三種族の長老による否認派
あくまで、双方の意見に耳を傾けている狐人族と翼人族の長老の中立派
三方、というよりアルフレリックと
否認派の三人の意見のぶつかり合いになっている
双方の意見は完全に平行線だったが
やがて、反対派の者が放った一言
たったの一言がすべてを変えることになった
「‥そもそも、あのような
信用するに値などせぬ、すぐにでも化けの皮をはがして
その
そう言って、熊人族の者がチヒロの方に向かって行こうと
彼女の方を振り向いたその瞬間、彼に向かって途轍もないオーラが放たれる
そのオーラを受けて、反対派の長老たちはもちろん
中立派の長老たち、承認派のアルフレリックでさえも震えあがっていく
その途轍もないオーラを放っているのは先ほどまで
自分達のやり取りを落ち着いた様子で見ていたチヒロであったのだ
チヒロの体からあふれ出てくるオーラはその威圧感だけで
周囲の壁や地面に音を立てて罅を走らせていき、天井の装飾が地面に落ちていく
「…汚い…だと?
醜い…だと?
それは…私のことを言っているのか…?」
彼女はそう言ってひりだすような声を放つと
彼女の頭からそれぞれ二本の角がメキメキと音を立てて生えていく
チヒロが俯かせていた顔を前の方に向けた、その時
「 私の事を言っているのかあああ!!! 」
その声があたりに響き渡る怒号
それと同時にチヒロの姿が段々と変貌していく
やがて、それは長老たちを見降ろすほどの巨体となり
その見た目に見合う力、いいやそれ以上の力を発していった
「 うがあああ!!! 」
叫び声のような雄叫びを上げる今のチヒロは
先程まで長老たちや、他の者達の目に映っていた
美麗な女性などとは、とても呼べぬ姿になっていた
その口から放たれた雄叫びは
たったそれだけでフェアベルゲン、ハルツィナ樹海
いいやトータス全域の天候を大きくそれも激しく変えていった
空は黒い雲で覆われ、雷は鳴り響き
強風と雨が入り混じった激しい嵐が巻き起こっていく
余りの突拍子もない光景に
長老たちは先ほどまでの口論など
とっくに頭の中からに抜け落ちていた
だが、チヒロにとってはそんな程度のことなど
決して意に返す者ではない、変貌したチヒロの力は
フェアベルゲン、ハルツィナ樹海、その周辺、否
トータス全土に響き渡っていった
彼女の叫び声とともに、あたりの空気が勢いよくふるえ
気がざわついていき、地面が振るえ、海が波打っていき
トータス全土が彼女の力に共鳴し始めていく
それはそこに住まう人々の方にも影響が出始めていた
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
トータスに住まう者達全員が感じた
感じて無意識に行動した、多くの者が
これまでやり残していたことを遣ろうという如く
時には食事を、時には愛するものと添い遂げて
思い残すことが無いように、悔いが残らないように
トータスに住まう者達はすぐさま、行動を起こしていた
さらにそれは、トータスに召喚された勇者一行の方にも影響が出始めた
「ねえ、エリリン‥」
そう言う彼女は
谷口 鈴
「ど、どうしたの鈴?」
中村 恵里
親友である彼女にいきなり抱き着いてきた
セクハラやいたずらならばいつもの事だが
恵里は、鈴の様子がおかしいことに気が付いていた
鈴の表情は怯えてていた、不安も悲しみも
それこそ、何も感じないほどの恐怖が彼女の表情から感じ取れていた
さらにそれは、他のメンバーにも起こっていた
「つ、辻!
頼む、俺の傍に居てくれ!!」
勇者パーティーとともに戦闘訓練に参加していた土術師の男子生徒
野村 健太郎
彼はそう言って、同じパーティーの治癒師
辻 綾子
彼女を後ろから行き成り抱きしめていった
「ち、ちょっと野村!?
いきなり何やt‥!?」
そんな健太郎を注意しようとする、同じパーティーの付与術士
吉野 真央
彼女はそこまで言って、言葉が出なかった
何故なら彼の顔も、今の鈴と同様におびえていた表情だったから
しかし、永山パーティーの他の面々も他の者たちも
「こ、これは一体何が起こって…」
クラスのリーダーであり、勇者である
天之河 光輝
彼もまた、鈴や健太郎のようなあからさまな態度は
見せていないが、それでも動揺の方は隠せていない
だが、それ以上にひどかったのは
「ああ…あ…あぁあっあぁぁぁあ……ぁあ!ああああ…‥‥ああぁ…あ‥………………ああああ…‥‥‥…………………!ああああ…‥‥」
小悪党グループのリーダー格
檜山 大介
彼は頭を抱えてひどくその場に蹲って、頭を抱えていく
「だ、大介!?
どうした?」
「しっかりしろって!」
余りのその反応に、他の三人は心配になって駆け寄っていく
だがそんな彼らの心配など、檜山は気にかけることなくただだた怯えていた
更にこの影響は、彼等のみならず
「だ、団長‥‥!」
彼等に同伴していた騎士団の面々も感じ取っていた
「(何だこの気配は‥‥
これまで戦ってきた魔物たちでさえ
これほどのプレッシャーを感じたことなどない‥‥
いったい、何が起こっているんだ‥‥?)」
ハイリヒ王国騎士団長
メルド・ロギンス
彼は今まで感じたことのない
その威圧に、今までにない焦りを覚えていた
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「っ!?」
ある場所より放たれたそのオーラを感じ取ったのは、こちらも同じであった
「な、何なんですかこれ‥‥
なにか強大な力を持った何かが
すぐ近くにいるかのような威圧感は‥‥」
帝国に向かっている途中であったシアも
その強大なオーラに圧倒されて行き、思わず身じろいで行く
「あらら、どやらチヒロさん‥‥
我慢できなくて、爆発しちゃたー?」
そう言って何やら呆れた様子でつぶやくのは
色欲と肉欲の皇帝
マヌエラ
彼女は、シアほどの動揺は見せておらず
むしろ、どこかなれた様子でそのオーラを感じ取っていた
「チ‥ヒロ‥‥さん‥‥‥?
このオーラは‥チヒロさんが‥‥?」
「そだよー、チヒロさんはね、普段こそ
シアちゃんが挨拶したときのように、おしとやかな
雰囲気を纏ている感じを見せてるんだけどもねー‥‥
実は私たちの中でも特に凶暴で暴力的な本性を持ているんだー
一度でも、暴走しちゃたら今みたいに
とんでもない力を発揮するんだー、まさに今この力に
当てられちゃてる人間、ううんすべての存在がこう感じているとおもうよー?
世界が終わるー、てー‥‥」
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「あ、あああああああ…‥‥あああああ…‥」
アルフレリックは、今起こっている現実を受けいれられなかった
彼の目の前には、どうやって言葉で表せばいいのかも
わからない、そんな恐ろしく強大で絶対的な存在がいた
その彼の回りはハッキリ言って地獄絵図としか言えなかった
ボロボロで、頭から血を流している彼の回りには
先程まで何事もなかった集会場が粉々に砕かれており
その周りには、長老衆や他の亜人族の者達
しいては自分の同族である、森人族でさえも皆殺しであった
どうして、こうなったのかと動揺してあまり回らない
自分はあくまで、口伝に従って客人を迎え入れただけなのに
最初はとても落ち着いた雰囲気で
気品を感じさせるおしとやかな女性で
自分達の故郷のことを気に入ってくれて、更には
こちらの事情の方も理解を示してくれた、彼自身もまんざらではない
そこに、他の長老たちが乗り込んできても
しっかりと出方をうかがってくれていた、しかし
長老衆の一人のどうと言う事のない言葉
薄汚い、醜い
ただ、それだけを言っただけで、街を、国を
更には彼女自身に好感を持ってくれた他の亜人族達でさえも皆殺しにされた
「なぜだ…‥‥私は一体、何を…‥何をしてしまったというのだ…‥‥…‥
私は、ただ…‥‥口伝を守っただけだというのに…‥」
アルフレリックは目の前の惨状を受け入れることができずに
ただどうして、なぜ、そんな誰も答えてくれない質問をただ告げていくだけであった
やがて、そんな彼の方を六つの緑色に恐ろし気に光る同行のない瞳が彼を見詰め
その口から放たれる炎はたったのひと息で、フェアベルゲンの美しい景観を焼け野原に変えた
その大きさは普通の者ならば思わず見上げてしまうほどであるが
見上げてしまえばその瞬間、その圧倒的な威圧感により身をすくませてしまう
アルフレリックの問いに対して誰も答える者はいないが、あえて答えるならこうだろう
お前たちは、目覚めさせてはならない者を目覚めさせてしまったのだと
「 グオオオ!!! 」
フェアベルゲンにおいて覚醒した絶対的強者は
燃え盛っていくその場所の中心で天に向かって勢い良く吠える
すると、天もその声に恐れおののいたのか、激しくその天候を変えていく
辺りに雨が降り注ぎ、雷が落ちていき、強風が吹き荒れていき、辺りが悪天候になっていく
それはフェアベルゲンのみならず、いくつもの国を経由して引き起こされて行った
こうして、フェアベルゲンは
ほんの些細なきっかけで、ほんの一瞬で壊滅状態となってしまったのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「…あーあ、チヒロの奴…
また癇癪を起こしたな…
本当に見かけによらず
こらえ性がないんだから…」
そんな様子を、やれやれといった感じで見ていたハジメ
そんな彼のもとに、一人の女性がそわそわとした様子で近づいてくる
「は、ハジメさま‥‥お待たせいたしました…‥」
それは、先程まで来ていた服とは全く別の
どこか、おとなしい雰囲気を見せている落ち着いたものであった
「…アルテナか、訓練の方はどうだい?」
「ええ、皆さん本当に良くしてくださって
本当に感謝しています、おかげで私の方でも
驚くくらいに強くなっているのが感じ取れます…‥
本当に、あの時にハジメさまに助けていただけなかったら
今頃、私はどうなっていたことなのか‥‥考えただけでも恐ろしいですわ…‥」
「そうか…」
そう言ってちらりとある方向に目を向けていくハジメ
その方向は、フェアベルゲンのあるハルツィナ樹海の方である
「どうかなさいましたか、ハジメさま?」
「…ねえ、アルテナ…
アルテナはさ、自分の故郷に戻りたいって思ってる?」
ハジメは、アルテナに顔をそむけたままそう聞いていく
すると
「‥‥いいえ、戻りたいとは思いません…‥
あそこでは私には私と言うものがもとよりいませんでした…‥
私のことをしっかりと見てくれる人はもう
あの場所にはありません、ですから私の戻るべき場所…‥
その居場所は、ハジメさまのお傍のみです…‥」
「…そっか…
そう言ってくれたなら
僕も君のことを助けたかいがあったよ…
それじゃあ、改めてよろしくね、アルテナ」
ハジメがそう言って彼女の方を向いて、笑みを浮かべて言う
それに対してアルテナもまた、笑顔を浮かべて返していく
「はい、これからもよろしくお願いいたしますハジメさま」
植物と浸食の罪徒
アルテナ。ハイピスト
彼女がさらに、ハジメのもとに加わったのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
ハジメが自身のもとに
アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール
シア・ハウリア
アルテナ・ハイピスト
以上の三体を引く抜いていき
着実に戦力を拡大していっているハジメ
だが
うごきを見せているのは
ハジメたちだけではなかった
勇者パーティーの方は確実に攻略の方を
進めて言っている、更には国から抜けた五人の少女達
彼女達の方にも、動きは見え始めてきたのであった
五人の少女は、そこで
一羽の兎人族に出会い、そこで
このトータスにおいて引き起こされんと
していることを、おおよそながら察知することになる
暗黒の時は迫ってきている
闘いの時は刻一刻と近付いてきていた
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
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原罪(スルー推奨)
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傲慢
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虚飾
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嫉妬
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憤怒
-
怠惰
-
憂鬱
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暴食
-
色欲