世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:OOSPH
トータスに召喚されて一か月がたたんとしていた時
クラスメートの元を離れ
晴れて冒険者としての活動に精を出している
五人の少女達
彼女達は突如として峡谷に反響して
魔物の鳴き声のようなものが聞こえた
しかし、探知能力も峡谷の力で阻害され
声の方も反響のせいでおおよその場所が特定できない
最悪、間に合わないかもしれないと
ある程度の可能性を秘めておく一同
「‥‥く、本当に厄介なところですね…
魔力が分解されてしまう上に、この谷のせいで
声が反響されて、思うような位置特定ができないなんて…
もしも誰かが襲われているというのなら
出来れば助けてあげたいですけれど、この調子だと…」
そう言って不安そうにつぶやいていくのは、棒術師の少女
北浦 纏
彼女はそう言って、魔物に襲われているであろう
その人物のことを心配していたが、間に合わないのではという不安も抱えている
「それでも行くしかないよ…
やれるだけのことはやらないと…」
そう言って手に持っている杖をぎゅっと
握りしめているのは、優秀な治癒能力を秘めている聖女
白崎 香織
彼女もそうは言うが、それでも不安の方は隠し切れない様子
「香織‥‥纏…」
そんな二人を心配そうに見つめているのは、剣聖の天職を持つ少女
八重樫 雫
彼女自身も、香織と纏の不安の方は理解ができるからこそ
出来れば、襲われている人には助かってほしいと願っている
だが、間に合う可能性が低いこともまた、自覚している
「姫奈~、そっちの方には何か見える?」
そう言って先行している少女に声をかけていく、聖騎士の少女
西宮 風香
彼女がそう言うと
目のまえに先行している少女は
ピクリと身体を震わせて立ち止まる
「‥‥みんな、武器を取りなさい!
見つけたわ、でも私たちの知らない魔物…
どうやら、誰かを追いかけているみたい!!
私、風香、雫がマモノを引き付けていくから
纏と香織は終われている人の方を助けるわよ!!!」
そう言って指示を出していくのは
南野 姫奈
彼女達のリーダーで、勇気の聖徒という天職となり
エーテルと呼ばれるこの世界でも未知なる力に目覚めた少女である
彼女の眼前には、何やら兎を思わせる巨大な魔物に
何やら人影が追われている光景が見えていた、それを聞いた一同は
「「「「うん(ええ)(はい)!!!!」」」」
それぞれが返事をして、そのまま向かって行くのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「はあ‥はあ‥‥はあ‥‥‥」
必死な思いで、必死に走って
息を切らして足がパンパンになっても
それでも必死に逃げ続けていく女性
だが、走りすぎたことによる疲労がたたりすぎたのか
「きゃ!」
とうとう転んで、うつぶせに倒れこんでしまった
女性は後ろの方に目を向けると、そこには
兎を彷彿とさせる怪物が自分のことを獲物と
見なしているように見つめて、集まってきていた
「みんな‥どうして‥‥
私の事‥忘れてしまったの‥‥?」
女性は魔物たちに語り掛けるようにして話しかけていくが
魔物たちからは何の興味も抱かれることもなく、涎を垂らしているだけである
やがて、魔物のうちの一匹が女性に食らいつかんと勢い良く飛び出していく
「っ!」
女性は涙を流しながら、死を悟って目を力強く閉じた
すると、そこに
ぎゃああああ!!!!
「‥え?」
魔物の悲鳴が聞こえて、何事かと思って
恐る恐る目を開けていくと、そこに移ったのは何と
真っ二つにされて行く魔物と、その向こう側から
一人の少女が剣を振り下ろした状態で立っていた
「‥‥ふう…何とか間に合ったみたいね‥‥…」
そう言ってゆっくりと姿勢を上げていき
剣についた血を払う様に、ふるって行く
「あ‥‥」
女性はその女性の姿を見て、不思議と神々しさを覚えていた
「みんな、一気に仕掛けるわよ!」
そう言って、少女が指示を出していくと
そんな彼女のもとに四人の少女達があらわれていく
少女達はそれぞれ、剣や杖を手に魔物たちに戦いを挑んでいく
その際に一人の少女が、女性の方に付き添って行き、彼女を支えていく
「今のうちにここを離れましょう!」
「あ‥‥」
少女にそう言われて、その場から連れ出されて行く女性
「はああああ!!!」
雫は持ち前の剣術で魔物たちに斬りかかっていくが
魔物たちの方もタダで倒されることはなく、爪を振るって反撃する
「くう…
こいつら、今まで戦ってきた魔物よりも強い…
ひょっとして、峡谷に元々いた魔物を
追いやってしまった新種の魔物ってもしかしてこいつ!?」
「そうだと思います!
王城や町の図書館に乗っていた
魔物の中にこのような魔物は乗っていませんでした…
これほどの強さの方もありますし、間違いはないでしょう…」
思わぬところに現れた強力な敵に、苦戦を強いられる一同
おまけに峡谷の魔力を分解する作用の方も手伝って
使えるのが身体能力だけに限定されているのも拍車にかけている
「はああああ!!!」
そこに、姫奈が先行していき
武器である剣に炎を纏わせて、勢いよく切り付けていく
兎型の魔物がそれを爪で受けとめ
激しい衝撃が、辺りを大きく揺らしていく
「はああああ!!!」
すると、姫奈の右腕に浮かんでいた紋章のようなものが光り
姫奈の服装を白を基調とした、何処か神の使いを思わせる姿となる
「え!?」
姫奈自身はそれを見て、大きく驚いていく
自身の姿が変わったこともそうだが、技の威力や
使っていた武器も、大いに変わっていくの事にも
更にはそれに加えて、今までびくともしなかった魔物の爪を
燃やしながらへし折って行き、やがてそれが魔物の頭部も真っ二つにしていった
真っ二つにされた魔物の前、姫奈から見れば背後の方から
同じ固体の魔物が爪を振るって、姫奈を切り裂かんと振るって行く
しかし、姫奈はそのまま剣に自身のもう一つの適正属性である
雷を纏わせていくと、それでリーチを広げていき、後の魔物は
身体ごと縦に真っ二つに切り裂いていって見せ、その巨体は音を立てて地面に倒れていった
「すごい…」
香織がそんな姫奈の戦いぶりに感服する
当然、他の四人の方もそれを見て素直に評価する
こうして、殆どが姫奈の土壇場で
魔物たちは見事に全滅させていった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
魔物たちをどうにか討伐し、襲われていた女性のもとに駈け寄る四人
女性に寄り添っている香織に付き添われているが
まだ恐怖が残っているのか、体を震わせている女性
その女性の頭部からは、何と兎の耳が生えている
「頭から動物の耳を生やしているという事は‥‥亜人族?」
「…‥みたいだね、でも確か亜人族って
東にある広大な樹海、ハルツィナ樹海に
隠れ住んでいるって聞いていたけれども…
そんな子がこの樹海にいるんだろう…
なんだか、訳がありそうだけれども…
この様子だと、話は聞けそうにないね…」
風香の言う通り、助けた兎人族の女性は
ややショックの状態のようであり、とても
詳しい話を聞ける状態ではなく、まずは休ませてあげることを提案し
どこかで、休息を取れる場所を探して
そこでゆっくりと寝かせてやることにするのであった
それからしばらくたって、女性の瞼が数回揺れてゆっくりと目が開く
「‥‥あ、気が付きましたか?
よかった‥‥心配だったんですよ…」
「‥貴方達は‥‥?」
それに気が付いた香織が安堵の表情で声をかけていく
意識を取り戻した、兎人族の女性は少し体を起こして
姫奈たちのことを訪ねていく
「‥‥私たちは、冒険者で
この近くの町で依頼を受けて調査をしてここにきているの…
あ、私は、南野 姫奈…
姫奈でいいわ」
「私は、西宮 風香
風香でいいよ」
そう言って続けて、他の三人も自己紹介をしていく
「え、えっと‥私は兎人族のハウリア族のラナ・ハウリアと申します‥‥
助けていただいてありがとうございました‥‥」
「いいえ、ご無事で何よりです…
ところで、ラナさんはどうしてこの峡谷を?
差し出がましいですが、特に支障がなければ話していただけませんか?」
纏がそう言って、ラナに何がったのかと聞いてみると
彼女はこれまでのことを話していった、順を追って説明すると
亜人族の中で本来ならば持っている事のない魔力を持って生まれた子が
自分の一族の中に生まれたせいで、フェアベルゲンに一族ごと追い出されたこと
その際に帝国兵に襲われて、仲間を何人かさらわれたこと
その際に自分達はこのライセン大迷宮に逃げ込み
そこで魔物の群れたちに尾0沿われてしまったこと
それを、ある御人に助け出されたこと
そのある人によって食料を分け与えられると
一族の者達は自分を除いて全員が化け物の姿になった事
唯一食事を口にせずに魔物にならなかった自分は
そのせいで殺されかかっていってしまったことなどを話していく
「‥‥食べると魔物化する肉に
暴食の皇帝と名乗るマリアという謎の人物…
どうにもきな臭いけれども、いったい何者なのかしら…」
「‥わかりません‥‥
私も気が付いたら、谷の底で目が覚めて
みんなのことを探してようやく見つけたと思ったら
いきなり襲われて、そこを皆さんに助けてもらって‥‥」
「‥‥ちょっと待って…
さっき魔物化した仲間をようやく見つけて
話をしようとしたら、逆に襲われてしまったって…
それってひょっとして…」
香織は少し表情を引きつらせていく
他の四人のうち三人もだんだんとその意味を理解したのか
表情からどこか戸惑いのようなものが見え隠れしている、唯一
「ふう…」
姫奈はやっぱりねと言わんばかりの反応であった
ラナはそれを見て、複雑そうな様子で五人に答えていった
「‥そうです‥‥
皆さんが倒したあの魔物は、元々
私とともにこの峡谷に逃げ延びたハウリア族です‥‥」
それを聞いて四人は、大きくひゅっと息を吸う音を立てていく
頭の中ではわかっていた、でも出来る事なら間違っていてほしかった
だが、先程の魔物たちの兎を彷彿とさせる姿、ラナの話しと照らし合わせても
その事実は揺るぎがなかった
「そんな‥‥それじゃあ、私たち…」
余りの事にショックを隠せない雫、魔物となって
理性を失っていたとは言え、自分達はラナの一族を倒してしまったのだ
四人がショックを受けていたのを察したのか、ラナは慌てた様子を見せていく
「待って下さい、皆さん!
皆さんは私のことを助けてくれたんですから
そんなに落ち込まないでください、それに魔物になったのだって
マリアさんの優しい言葉に翻弄された私たちの自業自得ですし
私が襲われたのだって、私の自己責任なんです、皆さんが気にすることではありません‥‥」
ラナが慌てて一同に呼びかけていく、すると
「そうよみんな、私たちはあくまでラナさんを助けるために
あの魔物と戦った、正体がどうあってもそれは事実なのよ…
それに、どのみち放って置いても私たちの方もあぶないし…」
「どういう事ですか?」
ラナは不意に姫奈の言葉の意味を問うと、姫奈は答えていく
「私たちが、調査のためにここに来たのは
この峡谷に現れた新種の魔物への調査のためなんだけれど…
その新種の魔物のせいで、もともとこの峡谷にいた魔物が
峡谷の外に出てきて、近隣の村や町を襲って行く被害が多発しているの…
その原因の調査及び討伐のために私たちはここにきてる…
どのみち、倒さないとそれこそ
被害は拡大していって人間族の方でも被害は出てしまう…
倒さないという選択肢何て、もとよりなかったのよ…」
姫奈の言葉に四人は納得は出来ないが理解はする
「‥‥それで、ラナさん…
これからきくことが本題なんだけれど、貴方はどうするの?
私たちなら出来る限りのことは何でもしてあげるけど
私たちは依頼でここにきている以上はもう少しこの峡谷に留まるわ…
だから、この谷を抜けるのにはもうしばらくかかってしまうけれども…
それでもいいというのなら、私達と一緒に来る?」
姫奈はラナに自分達と一緒に付いてくるかと提案をしていく
他の四人も彼女とのことは放っては置けなかったし、守って
あげてもよいとも考えている、ラナ自身の方は少し戸惑っている様子を見せていく
「‥そ、その‥どうして皆さんは私のことを
そんなに良くしてくださるのですか、皆さんは人間族ですよね‥‥?」
「そうね、確かにその通りだけれど…
別にだからって、貴方達のことをどうにかしようと
思ってはいないし、そもそも私たちはこの世界の人間じゃないからさ…」
ラナが恐る恐る問いかけていった問いかけに
風香が何気なく答えていく、そんな彼女の言葉に疑問符を浮かべていくラナ
「この世界の人間じゃない‥どういうことですか?」
「え、ああ‥‥話すと長くなるのですが…
実は、私たちは…」
纏がラナに詳しく話をしていく、自分達は
この世界とは別の世界から召喚された異世界人で
人間族の助っ人として、王国で訓練を受けていたが
訓練の際に起こったある事件のせいで、王国の事
教会の事、おなじクラスメートの者のことが信用できなくなり
一部のものの手引きによって、王国を抜け出し
現在は冒険者として活動している、と事細かく説明していた
「そっか‥皆さんにとってハジメさん‥‥
その、無実の罪で処刑されてしまった男の子は
本当に大切な御人だったんですね、でも守れなかった‥‥
私と同じ‥‥」
「‥‥でも、私たちが冒険者を始めたのには
実は明確な目的があるの、元の世界に戻るための方法を見つける事…
いまはまだ、その方法は見つかっていないけれども
いつかは本格的にその方法を見つけるためにも下準備をしているの…
それで今は地道にがんばってるところよ‥‥あの時
私たちを命がけで生かしてくれた、南雲君の勇気に報いるためにね…」
姫奈のその言葉を聞いて、ラナは決意を新たにしていく
「‥わかりました、皆さんについていきます
魔力がなく、能力の方も大したことのない私では
どのみち、この峡谷を生きて抜けていくことは不可能でしょうし‥‥
それに、皆さんはとてもお強い、そこは信頼するに値すると私は考えています‥‥」
ラナはそう言って、一向に加わりたいと申し出ていく
「‥‥了解、それじゃあ
改めて、明日に供えて今日は休みましょう…
見張りはあらかじめ決めた通りにね…
日が昇るくらいにまた、改めて活動しましょう…」
「「「「はい!」」」」
こうして、五人の少女に新たに
兎人族の女性のラナが加わることになったのだった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
こうして、野営の準備を済ませて
改めて一同は寝静まっている、現在
見張りを務めているのは、姫奈である
すると、テントの中からもぞもぞと
一人の人物が出てくる、姫奈もそれに気づき
そっちの方に目を向けていくと、その正体はラナであった
「どうしたの、ラナさん?
まだ寝付けない?」
「‥い、いえ‥‥そういうわけではなく‥‥‥
その‥ちょっとお花を摘みに行こうかなって‥‥」
「‥‥そ、そう…
それじゃあ、気を付けてね…」
そう言って岩陰にいそいそと
向かって行くラナを見ていく姫奈
「ふう…
どうやら少しは落ち着いてくれたみたいね…」
暫く眠ったおかげか
ラナの顔色が少し良くなったように思えたので
安心した様子で、ラナの後姿を見ていた姫奈
一方、ラナの方も信用できる人物達であると感じたのか
生理現象のせいで起きてしまったが、それでも安心して眠ることができた
こうして、穏やかな気持ちで眠りにつくのはいつぶりになるだろうか
峡谷に逃げ延び、同族たちがマリアの手によって怪物に帰られて
魔物やかつての同族たちからも逃げ続けていくことになった、しかし
そんな折に出会った、異世界から召喚されてきた彼女たちは
自分のことを亜人族であると知っても態度を変えず、それどころか
自分の体のことを気遣って、さらには食料の方もしっかりと与えてくれた
こんなにも、温かい気持ちに鳴れたのは
フェアベルゲンに過ごしていた時以来だろうか
不意に、一族のこと、一人の忌み子と呼ばれた同族の少女の事を思い出す
「シアちゃんの事、あの人たちに話してみよっか‥‥
もしかしたら、協力してくれるかもしれないし‥‥」
そう言って用を済ませると、立ち上がろうと
体を支えるために岩に手を掛けたその時であった
「きゃあ!?」
突然、岩が回転ドアの様に動いて
そのせいでラナは転びそうになって身体をよろけさせた
ラナは何が起こったのかが理解できずに
岩の壁の方を見る、どう考えても自然の者ではないそれを見て
「ええええええ!!!!!!?」
ラナは大きな声をあげて、激しく驚いた様子を見せた
すると、見張りをしていた姫奈がいち早くラナのもとに駈け寄っていく
「どうしたの、ラナさん…?」
「姫奈さん、これを見てください!」
そう言って回転して向こうに
つづいている扉のような、岩の壁があった
姫奈はこれは一体どういうことなのかと辺りを調べていくと
ある壁に掘られた石板のようなものが目に入り、そこにはこう書かれていた
ーおいでませ!
ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪ー
「「‥」」
余りにも場違いなその筆跡に思わず声を失ってしまう二人
「‥‥ね、ねえラナさん…
ラナさんはこれを見てどう思う?」
「‥わ、私にきかれても‥‥
ですがこれは恐らく反逆者と呼ばれている
人たちが創り出した、迷宮なのではないでしょうか?」
「何、その反逆者だのって…?」
姫奈が訪ねると、ラナはそのことについて教えていく
解放者、トータスに広くは反逆者と伝えられている者たちは
神代の時代に、神に反旗を翻し世界を滅ぼさんとしたもの達の総称
しかし、その反逆は失敗に終わり中心人物であった七名の人物は
世界の果てに逃げ込み、その果てにおいて生み出したのが七大迷宮
嘗て姫奈達が訓練のために訪れたオルクス大迷宮も、その一つ
ラナがそのことを知っているのは、自分の故郷である
フェアベルゲンが、七大迷宮の一つであるハルツィナ樹海の中にあり
彼女達も大まかにそのことを伝えられていたから、らしい
「つまり、この石板に刻まれているミレディ・ライセンっていう人も…
その反逆者の一人ってことね、どう考えても胡散臭い感じがするけれど
世間で反逆者だって伝えられている人の名前何てそんな使う人もいないだろうし…
調べて見る必要があるわね…
ラナさん、皆を起こして連れてきて」
「え‥‥?」
姫奈の言葉に、彼女は不意に彼女の方に目を向けていく
「この迷宮に入ってみましょう…」
姫奈はそう言って、開いた扉の向こう側を見詰めながら言いきった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
こうして、ラナによって連れてこられた
風香、香織、雫、纏の四人は迷宮の入り口に連れてこられた
「…‥七大迷宮を作り上げた、七人の反逆者か…
でも、オルクス大迷宮だってベヒモスなんて
とんでもない魔物と戦わされたぐらいなんだし…
この中だってオルクス大迷宮と同じくらいは危険なんじゃ…」
「‥‥危険でも、行くしかないわ…
これからさき、教会と本格的に
対立したときのためにも、それなりに
力を付けて行った方がいいし、それに…
もしかしたら、私たちが元の世界に戻るための
足がかりを得られるかもしれないしね、そう考えても…
この大迷宮には、挑んでいく意味はある」
風香の不安そうな声に対して、姫奈は決意を秘めて手を伸ばしていく
「‥‥私も行く、少しでも
私たちが元の世界に帰れる方法が
この先にあるというのなら、私は行きたい…」
雫もそう言って腰に差している
アーティファクトの剣を強く握りしめて言う
「‥‥雫ちゃんが行くなら、私も行くよ
魔力が使えなくても、出来る事はあるし
それにこの世界に来てそれなりに自分でも
戦えるようにはなってきていると思うし、なにより…
私はもう、大事な人を失いたくはないもん」
香織はそう言って決意を込めた瞳で訴える
「‥‥最初に言っておくけれど、この先には
どんな危険が待っているのかわからないし…
最悪、貴方の事も守り切ることは出来ないかもしれない…
いざってときは、私たちのことを置いてでも生き残って…
それを了承するなら、ついてきて…」
姫奈はしんけんな表情で、香織に言って行く
ここから先はオルクス大迷宮と同じかそれ以上に
過酷な場所が待っている、おまけにここでは魔力は分解され
魔法が実質使うことができない仕様になっている
姫奈には魔力の他にエーテルという力があり
エーテル自体は使う分には問題ない、さらに言えば
風香、雫、纏の方も武器による戦闘やそれに合わせた技能があり
身体能力を向上させる効果には特に支障が見られない故に、戦う分に問題は無い
しかし、香織は典型的な後方支援系の魔法職
元々戦闘向きではない上に、身体能力系の技能も持ち合わせていない
魔力が分解されて、更にその状態で何があるのかわからない
迷宮に挑むのは、無謀とも取れるようなものである、他の者達は当然
香織は他の者達が迷宮攻略に行っている間は外で待っていてほしいというのが本音であった
だが、香織は昔っからこうだと決めたら簡単には曲げない頑固な一面がある
香織は高校に入ってから、人間の悪意の醜さをさんざん思い知らされてきた
香織の想い人であるハジメが貶められた件、王国の自分達への扱い
更には、それに対してのクラスメートたちの身勝手なふるまいなど
その中で、香織が感じてきたのは自分自身の無力さ
愛する人との約束を果たせず、更にはそれによって親交を持った友達も
守り切れず、嫌というほど自分自身の無力さを思い知らされてきた、それでも
それでもこうして必死にあがこうとしているのは香織自身の意地
独りよがりであと先考えない者であることは香織自身も理解している
しかし、それでも香織は仲間たちとともに行く決意を秘めていく
二度と、自分の大切なものを取りこぼさないようにするために
「‥‥それじゃあ、行きましょうか…」
「待って下さい!」
「‥‥うん?」
行きましょうかと、迷宮に挑もうとする
一同を呼び止めたのはラナであった、彼女もまた告げる
「私も‥私の事も連れて行って!」
自分も迷宮攻略に連れて行ってほしいと
「ダメよ、この先はさっきも言ったけれども
なにが待ち受けているのかわからないのよ…
魔力を持っていない上に、身体能力だって
優れてもいない貴方が行っても命の保証は無いのよ!?」
「‥わかっています‥‥私が行っても足手まといにしかならないって‥‥
そういう事だったらここで待っていた方がいいのも、理解しています
でも、それを受け入れてしまえば、私はあの時、何もできない自分のまま‥‥
そんなの、私は嫌なの‥あの時何もできなかったせいで何も守れないのは‥‥
もう嫌なの!」
ラナもまた、涙を浮かべながら嗚咽交じりに言う
ラナ自身も香織同様に自分自身の弱さに打ちのめされてきたのだ
フェアベルゲンを一族で追放され、帝国兵に仲間を連れられ
峡谷では仲間たちが魔物になってしまい、結局元に戻すことは愚か
救う事も出来なかった、その過程で姫奈たちに出会えたのは幸運だが
このまま彼女たちの強さに縋っていくのも違うのだとも、ラナ自身感じしていた
だからこそ、自分の足で進んでいこうと
決意をした、もうあの時のような後悔をしないように
「‥‥まったく…2人そろって頑固なんだから‥‥…
それじゃあ行きましょう、ここで立ち止まっていても
どうしようもないだろうし、私たち自身にとっても大きな一歩になる…
気を引き締めて、行きましょう」
姫奈の言葉に、その場にいる一同は頷き
迷宮への入口をくぐっていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
ライセン大迷宮
姫奈たち一行は大峡谷において
偶然にも発見した、この場所を進んでいく
そこには迷宮の中とは思えないほどに
明るく照らされており、内装も良くも悪くも
迷宮らしさが醸し出されている作りで覆われていた
「思っていたよりも複雑そうな構造ね…
下手をしたら迷いそうね…」
「でもこのくらいだったら…
まだ何とかなりそうじゃない?」
姫奈と風香がそれぞれそんな会話をしていると
「‥‥油断しない方がいいわ…
こういうのは、眼に見えないトラップの
ようなものがどこかに仕掛けられているのが定番よ…
オルクス大迷宮の時だって、そのせいで
私たちは危うく死にかけることになったんだから…」
「‥‥そうだね…
とにかく気を付けて進みましょう…」
「はい‥‥」
姫奈の言葉を聞いて気を引き締めなおす香織とラナ
暫く進んでいくと、ラナが不意に足ががくっと下がり
同時に前の方からガコンと音を立てて何かが迫って来る
「みんな、ふせて!」
姫奈の声とともに慌てて地面にしゃがみこむ一行
すると、一同の首に当たる位置の部分を鋸のような回転刃が通りすぎていった
「今のは物理トラップね…
やはり、この迷宮も一筋縄ではいかないようね…」
姫奈はそう言って自身の過信を深く反省する
オルクス大迷宮においても騎士団たちが使っていた
フェアスコープを使用していたが、それは迷宮のトラップの
大半は魔力によって起こされるものであるためである、故に
この迷宮にあるのも同じようなものだとし、姫奈も警戒していた
しかし、今のは単純な物理トラップ
魔力は勿論、特別な何かを何もしているわけでも無い
それゆえに、魔力を感知するタイプの技能には一切引っかからない
「ひょっとしてこういうタイプの罠が何処までも続いてるってこと…?」
「‥‥可能性としてはあるでしょうね…
でも、そうだったとしてもここまで来た以上は
進んでいくしかないわ、たとえこの先に罠がある言ってわかっててもね…」
「そうだね…」
雫の問いかけに姫奈はそれでも進むしかないと告げる
纏もそれに同意し、一同は警戒を怠らずに進んでいく
「‥‥なんだろう…こういう何もないところって…
かえって、何かありそうな雰囲気があるよね…」
「ちょっと香織、そんな不吉なこと言わないでよ…」
香織が縁起でもない発言をするので、雫がツッコミを入れていくと
ガコンッ!
何やら、静かな雰囲気でそれこそ嫌な音が響いていく
「「「「‥‥か~お~りぃ~‥‥」」」」
「ええ!?
わ、私のせいじゃ…」
理不尽な追及に意見しようとする香織だが
そんな彼女の発現を遮るように床が傾いて
スロープのようになっていく、さらにそこに
追い打ちをかけていくように何やら上の方から
ぬめりを持っている液体が流れてさらに摩擦力まで奪われて行く
一同はどうにかして、耐え抜いていくのだが
「きゃああ!!!!」
ラナのみは手段を持っていないので
そのまま下の方にまでラ落下していくが
そんな彼女の手を掴み上げていくものがいた
「しっかりしなさい!
こんなくらいで動揺していたら
それこそ、身なんて持たないわよ」
「‥はい‥‥」
姫奈はそう言って、辺りの方を見回していく
良く見ると、その奥には何やら穴のようなものが見えていた
「あれって、ひょっとして落とし穴!?
いくら何でもガチすぎるって…!」
「‥‥っ!?
皆さん、横の方に抜け穴があります!
そこから脱出しましょう!!」
纏が指さした方に、確かに抜け穴があり
一同はそこに、急いで飛び込んでいく、纏につづいて雫
「香織!」
「うん!」
その雫に手を引かれて、無事に穴に入った香織
さらに続いて、風香もまた抜け穴に到達していき
姫奈はラナを抱えているので手を伸ばすことは出来ない
「ラナさん、しっかりつかまっていて!」
「はい!」:
姫奈はそう言うと、聖痕を解放して
身体能力を高めて、横穴の方まで飛ぶように走りながら辿り着く
「ふう‥‥みんな、大丈夫?」
「な、何とかね…
それにしてもガチでこっちの事殺しにかかってるよね…」
「まあ、迷宮なんだし半端なことは仕掛けてこないと思ってたけど…」
「うう、ごめんなさい‥‥私のせいで…」
「香織さんのせいではありませんよ‥‥まあ、でも…
流石に今のは少し、吃驚しました‥‥少し休憩を挟みまs…」
纏がそう言って休憩を提案しようとすると
纏は不意に目に留まったあるものを見て硬直する
「どうしたの、纏ty…」
「何かあった‥‥の…」
一同は纏の様子がおかしく、彼女の方に駈け寄ると
そこにうつっていた者を見て、言葉を失ってしまう
そこにあったのは一つの石板、そこに書かれていたのは
ー焦ってやんの、だっさ~い
このくらいで手間どるようじゃ先が思いやられるね、ぷふー
「「「「「「‥‥‥」」」」」」
石板に書かれている煽り文句に思わず一同は怒りで拳を強く握っていく
「‥‥すーはー、すーはー…
落ち着きましょう、そう落ち着くのよ…
こんなので心を乱していたらそれこそ
相手の思う壺、気にしていたらきりがないわ…
纏の言う通り、此処はいったん休憩を取ってまた攻略を勧めるわよ…」
姫奈は深呼吸しつつ、呼吸を整わせて一同に指示し
一同もまた、気を落ち着かせて、姫奈の言葉に同意するのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
休憩を挟んだ一同は、その後も色んなトラップや
待ち受けていく魔物等と対峙しながらも進んでいく
五人のうち四人が、魔力の分解に対して
あまり大した障害にならぬ身体強化系の技能を
持ち合わせていたために、難なく突破していくが
「‥‥…」
やがて開けた道に出てきた一同
先ほどとはうって変わって、そこはとても
物静かで、一同の歩いていく音のみが聞こえている
「‥香織さん‥‥?
どうかしたんですか?
さっきから、元気が無いように見えますけれど‥‥」
「‥‥え!?
ううん、大丈夫だよ…」
「とても、大丈夫には見えませんけど‥‥
何か気にしている事でもあるんですか?」
ラナはそんな香織の様子が気になって
彼女に尋ねていく、香織は立ち止まって
すこし俯き気味になって、ラナに話していく
「‥‥ねえ、ラナさん…
私ってやっぱり、誰かを
傷付けることしかできないのかな…」
「え‥‥?」
香織のそんな問いかけに、ラナは思わず香織の方を見る
「‥‥ラナさんには前に話したよね…
私たちの仲間の一人が、他の皆に裏切られて
理不尽な冤罪を突き付けられて、殺されたこと…
実はその男の子はね、私たちがこの世界に召喚される前から
ずっと他の皆に疎まれていたの、私の浅はかな考えが原因でね…」
「‥どういうことですか‥‥?」
香織の悲し気な表情にどこか気が引けてしまう部分もあったものの
何故だか不意に、聞いておかないといけないと感じてそのまま聞いていく
「私ね、その男の子がね、おばあさんとそのお孫さんが
ガラの悪い人達に襲われているのを守っている姿を見て
私は彼に惹かれたの…
ある日、再会して仲よくなろうと思って
私の方から積極的に話しかけていったんだ…
でもそのせいで彼は、ありもしない汚名を着せられて
学校では勿論、家の方でも居場所をなくしてしまったんだ…
この世界に来て、少しでも彼が傷つかないように守ることが出来たら…
そう思って、私は聖女の天職で優れた回復能力で彼の事を
守れればッて思ったの、でも結局私は彼のことを守れなかった…
それどころか、彼のことを目の前で殺されて行くのを止められなかった…
あの時‥‥守ってあげるって…約束したのに‥‥…」
香織は目元に涙を浮かべていき、拳を震わせながら嗚咽交じりになっていく
「‥香織さん‥‥大切な人を守れなかった後悔は
私にもわかります、でも私は香織さんは間違っていない‥‥
少なくとも、私はそう思っています‥‥
だって、誰を守ろうとすることは絶対に間違ってなんていないと思いますから‥‥」
「‥‥ラナさん…」
ラナはそう言って、前を向いて自分達が付いていっている者たちの方を見る
「もう二度と、大切な人を失いたくないなら
失ったものよりも今いる人を見ていきましょう‥‥
私は少なくとも‥大切な人達が失っているとは考えていませんから‥‥」
「‥‥うん…そうだね‥‥…
もう二度と、大切なものを失わないように
もっと気をしっかり持たないと、ここでくじけたら
それこそ、私はあの時と同じ、また守れなかったって
後悔するだけに、なっちゃうんだもん…」
そう言って持っている杖を強く握りしめて
他のメンバーに遅れないようにしっかりついていく
つもりだったのだが
ガコン!
「「「「うん?」」」」
「「あ‥」」
掛けだした際に、香織の足もとから何やら不吉な音が鳴り響いた
「「「か~お~りぃ~‥‥」」」
「香織さん…」
「え、ちょっと待って!?
別にそういうつもりじゃ…」
ジト目で睨まれ、いたたまれなくなる香織
すると、一同の元に何か大きく重たいものが
ゴロゴロと転がってくる音が響いていく、そして
一同の前に現れてきたのは
通路をほぼ埋め尽くすほどの大きな大岩で
一同の方に向かって、勢いよく転がって来る
「わあ、定番の転がって来る岩だねー…」
「っていうかいざ受けて見たらシャレにならないんだけど!?
とにかく逃げるわよ!」
そう言って、身体能力系を持っていない香織とシアを
それぞれ雫と風香が抱えて急いでその場から逃げ出していく
ただ一人を除いて
「姫奈!?」
「何してるの、早く逃げるわよ!」
一人、姫奈は逃げずに転がっていく
岩の方に向き合う様にして立ち止まっている
「‥‥あのねえ…こっちだってねぇ‥‥…
我慢の限界ってもんがあんだよ、こん畜生おおおお!!!」
姫奈のそんな怒り声とともに、炎を纏った拳による一撃が放たれて行き
それによってその一撃をもろに受けた、大岩はものすごい轟音とともに粉々に吹っ飛んだ
「「「「「えええええ!!!!!?」」」」」
余りの光景に、一同は思わず驚いた様子を見せていく
大岩がふっとんだ衝撃でパラパラと辺りに砂埃が吹き荒れていき
それによって姫奈の服が大きくたなびいていき、しばらくしてそれも収まった
「‥‥ふう…これですっきりした‥‥…
それじゃあ、急いで先に行きましょ…」
ガコン
「‥‥え…?」
「「「「はい?」」」」
姫奈はすっきりした様子で先に行こうと一同に進めていくが
その際に後ろから何か大きなものが勢いよく落ちていく音が響いた
そこにあったのは
「「「「「「ウソでしょおおおおお!!!!!?」」」」」
今度は先ほどの大岩と同じくらいの大きさの鉄球
更にはその鉄球からは何やら液体が流れていて
周囲のがれきなどを溶かして迫ってきているのであった
「ああああもう、何てもの
作ってんのよミレディ・ライセエエエエン!!!」
そう言いながら、必死の形相で逃げていく一同
すると
「皆さん、あそこに横穴があります!
あそこに入りましょう!!」
纏が横穴を見つけ一同は急いでその中へと飛び込んでいくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
こうして、無事に転がる鉄球の追求から逃れられた一同
「‥‥た、助かったみたいね…」
「うえええええ…
もう二度とあんな目には合いたくないよ…」
風香がそう言ってグロッキーになったようにその場に座り込む
「休んでいる暇はないわよ、ここにだって
何らかの仕掛けが施されている可能性は否定できない…
油断しているとまたさっきの様に…」
「‥‥あら?
この部屋、一度来た覚えがあるような…」
そう言って、纏が姫奈の言葉を遮って一同に問いかける
遮られた姫奈も他の面々も、そう言われてきょろきょろと見回していく
「‥‥ねえ、ここってひょっとして…」
「‥‥最初に入ったところに…似てるよね‥‥…」
雫と香織が、そんなことを言っていると
不意に目の前にあった見覚えのある石板の足もとに文字が浮かび上がる
そこに書かれていたのは
ーお疲れ様でーす、ようこそスタート地点へ
ねえねえ、今どんな気持ち?
苦労して辿り着いた場所が最初の部屋だったって知って
いまどんな気持ちー?
どんな気持ち―なのー?ー
「「「「「「‥‥‥」」」」」」
今まさに、ここまでたどり着くまでの
苦労を嘲るような煽り文句に六人の表情は
怒りも何もかも通り越して無表情となっていく
ここまで死にそうになってようやく辿りついた場所が
まさかのスタート地点、さらにはこれ以上にない煽り文句
ただでさえ、ここまでいろいろと苦労した罠をくぐった
その苦労をまさに、一気に踏みにじられたような気分に
一同はプルプルと身体を震わせていた
これまではなるべく、迷宮攻略に専念するために
こみあげてくる怒りをどうにか抑え込んできた彼女達だったが
五人のうちの誰か、或いは
五人全員の口から、声にならない声が
漏れる様にして、辺りに響き渡っていく
ここまでどうにかして、抑え込んできた一同だが
もう最早、抑えが効かず
あふれ出てくる怒りをこらえきれなかった
それは、普段は温厚な香織や纏、ラナも
流石の二人もついに堪忍袋の緒が切れた
当然ほかの三人も
一気に爆発させた
「「「「「「ミレディイイイイイイ!!!!!!」」」」」」
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
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原罪(スルー推奨)
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傲慢
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虚飾
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嫉妬
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憤怒
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怠惰
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憂鬱
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暴食
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色欲