世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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Imperfecta gravitas Ein Reich, das von der Lust heimgesucht wird

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ライセン大峡谷

 

魔力が分散する特殊なこの場所

 

嘗ては神に反逆する者を

この場所で処刑していたとされる

 

この場所に近づく、一つの影が現れる

 

龍の頭部を模したフードで目元を隠している

 

「この場所のどこかに、大迷宮があるのね…」

 

憤怒と激情の王

 

ナギサ

 

 

彼女は、フードを少し上げながら

ライセン大峡谷を見下ろしていく

 

そんな彼女の元に、二つの影が訪れる

 

「‥‥貴方達、ついてきたのね…」

 

「ん、ハジメの指示‥‥

 

 あなたのフォローに回ってほしいって」

 

運命と破壊の罪徒

 

リュナ・プレーヌ

 

 

「全く、ハジメ君は…

 

 本当に心配性なんだから…

 

 別にこのぐらい、私一人でも」

 

「でも、ナギサ‥‥

 

 そもそも、貴方はどうやって

 大迷宮の居場所を探っていくつもり?

 

 まさかとは思うけれども、峡谷全体を

 焼き尽くすとか、そんなことを考えているわけじゃないよね」

 

リュナにそう言われて、ナギサは少し気まずそうに眼を逸らす

 

図星のようだ

 

「そういう、リュナもそういった能力はもってないでしょ…」

 

「‥マウントを取るのは、よくない」

 

ナギサに返されて、不機嫌な表情になるリュナ

 

そんな二人に近づいていく一人の人物

 

「やれやれ‥

 

 仕方がありませんな、それでしたら

 儂に任せてください、こういうのは得意な方なので‥」

 

虚栄の王

 

リュカ

 

 

彼はそういって、二人の前に出て

峡谷の崖の方に、ゆっくりと近づいていく

 

「っ!」

 

リュカがそこに立って、しばらくたつと

リュナの頬になにかが当たる、するとそれは

更に、髪の毛や肩の方にも当たっていった

 

その当たったものの正体は、雨であった

 

突然の雨が、ライセン大峡谷全体に降り注いでいく

 

「な、なにこれ‥‥

 

 さっきまで天気が良かったのに、急に雨が‥‥」

 

「…」

 

リュナは訳が分からず、困惑しているが

ナギサは特に動じることはなく、雨に打たれている

 

「‥」

 

リュカの方も、ただ目を閉じて意識の方を集中させていく

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

 

そんなことが、外で起こっているとはつゆ知らず

ライセン大峡谷において、存在した七大迷宮の一つ

 

ライセン大迷宮

 

 

その攻略に勤しんでいる、六人の少女達がいた

 

かれこれ迷宮に入って、一週間は立っただろうか

内部構造が日に日に変わっていく中で、更には魔力も分散され

 

そんな中でいやらしいトラップに、挙句には

こちらの神経を逆なでしていく煽り文のメッセージ

 

そんなことがここまで続いていく中で、少女達はついに

今まで通ってきたものとは別の部屋にまで、たどり着いた

 

「いつもと雰囲気が違う…

 

 どうやら、ここがあたりの様ね…」

 

そういって、部屋を見渡していくのは

 

南野 姫奈

 

 

彼女は、辺りの方に目を向けていく

 

そこには、西洋風のファンタジーによくある

騎士の鎧が、何体も並んでいる、しかもどれも大きい

 

「ね、ねえ…

 

 もしかして、ここにある鎧…

 

 動いたりなんてしないよね…」

 

そんなことを呟いていくのは

 

白崎 香織

 

 

彼女はハジメの事を知るために、こういった

類の本を読んでいたので、不意にそんな考えを口にする

 

「ちょっと、香織!

 

 そんなこと、思ってても言わないでよ!!」

 

そういって彼女に注意するのは

 

八重樫 雫

 

 

香織とは幼馴染で親友である彼女が

この状況で縁起でもないことを口にする彼女を叱責する

 

すると

 

「ね、ねえ…

 

 さっきなんか、音しなかった?」

 

そんなことを訊ねていくのは

 

西宮 風香

 

 

「ち、ちょっと!

 

 だからそういうのは…」

 

「っ!

 

 皆さん!!」

 

北浦 纏

 

 

彼女が、風香の発言に突っ込むと同時に

 

ラナ・ハウリア

 

 

彼女が、一同に呼び掛けていく

 

すると、一同の方に向かっていきおいよく

何かが振るわれて行き、どうにかそれをかわしていく

 

「ちい!

 

 本当にいい性格しているわね

 

 ミレディ・ライセン!!」

 

姫奈は、武器である剣を取ると

自分達の周りにいる鎧騎士たちが動き出し

 

それが一斉に六人に襲い掛からんとしていた

 

「あ、あわわ‥‥」

 

ラナがそれを見て、少し震えていく

しかし、そんな彼女の方に向かって

 

騎士が剣をふるっていく

 

「ラナさん!」

 

そこに香織が飛び出していき

光属性による結界で、剣の一撃を防ぐ

 

魔力分解の影響で長くはもたないが

それでも、ラナを助け出すまでには十分の隙は出来たので

 

香織もラナも、無事に攻撃を受けずにすんだ

 

「大丈夫!?」

 

「え、ええ、何とか‥‥」

 

 

香織のおかげで、怪我もせずに助かったラナ

 

他の四人は、それぞれの武器を手に

向かってくる鎧騎士たちに攻撃を仕掛けていく

 

「はああああ!!!」

 

雫はアーティファクトの剣をふるい

ゴーレムに攻撃の方を仕掛けていく

 

鎧自身は斬り裂けないが、せめて関節部分ならと

恐らく、鎧の中で最も脆いであろう関節部分を狙っていく

 

すると、雫の狙いが当たったのか

鎧の関節部分が、見事に切り落とされていく

 

「やった!」

 

雫は狙いが当たって、笑みを浮かべていくが

その後ろに、剣を持った風香が自身の武器である

アーティファクトに風を纏わせていき、雫に向かって

剣を振るっていく騎士に向かって、剣の一撃を繰り出した

 

「油断大敵だよ、雫さん!」

 

「ありがとう…

 

 それにしても、キリがない…

 

 全然数が減っているようには思えないけれども…」

 

 

そういって、周りの方を見ていく雫

 

確かにまわりの方を見てみると、鎧騎士たちは

雫と風香が攻撃をしたのに、数が減っているようには見えない

 

すると

 

「おりゃああああ!!!」

 

纏は武器である槍を棒のように振るって

打撃技で次々とゴーレムたちを打ちのめしていく

 

その甲斐もあって、雫と風香の方に

寄っていた騎士たちも、纏の方に向かっている

 

「お二人共!

 

 大丈夫ですか!!」

 

纏は、無事に二人と合流する

 

 

「ええ、何とかね…」

 

「それよりも、この騎士たち…

 

 多分ですけれど、数は減っていませんが

 同時に増えている様子の方も見受けられません…

 

 恐らくですが、倒された鎧が再生しているんでしょう」

 

「再生って、それってつまり

 どうやっても倒せないってこと?」

 

纏の言葉に、風香は目を見開いていく

 

「いいえ、恐らくですがこの騎士たちは

 俗に言うゴーレムなんでしょう、ゴーレムを

 倒すには、体のどこかにある核を破壊するしか…」

 

纏はそういって、鎧式たち

俗に言うゴーレムの弱点を分析していく

 

だが、そんなことを考えていると

 

「きゃああ!!!!」

 

三人の耳に、女性の悲鳴が聞こえていく

その持ち主が誰なのかを理解していき、急いで

声のした方に目を向けていった、そこにいたのは

 

「っ!」

 

香織がラナを守る様に、アーティファクトの杖を手に

自分達に迫ってくるゴーレムに、追い詰められている様子が見えた

 

「香織、ラナさん!」

 

「雫さん!」

 

雫はたまらずに、飛び出していくが

それを纏が引き留めていく、同時に

雫が飛び出そうとした方に向かって

 

剣が振りおろされていく

 

「っ!

 

 香織!!」

 

「ぐ、これじゃあ助けにも行けない!」

 

三人は自分達を囲んでいるゴーレムたちのせいで

香織達のもとに向かっていく事が、出来ない状態に

 

香織とラナの方に向かって、ゴーレムが剣を翳していく

 

「きゃ!」

 

香織は、ラナを守る様に彼女に覆いかぶさる

しかし、彼女に向かって剣が振り下ろされていく事はなく

 

香織とラナは恐る恐る目を開けていく

そこには、真っ二つに両断されたゴーレムと

その奥から、炎を纏った剣を手にしている一人の少女が

 

「姫奈ちゃん!」

 

それは、例の白い服に身を纏ったチームのリーダー

 

南野 姫奈

 

 

彼女は炎を纏った剣を払うように振り

急いで、香織とラナの方に駈け寄っていく

 

「二人共、大丈夫!?」

 

「うん、ありがとう姫奈ちゃん」

 

「ありがとうございます!」

 

姫奈は二人に、ついて来るように言うと

今度は三人を囲んでいるゴーレムの方に向かって行く

 

三人は、それなりに前線が出来ているので

姫奈は、武器である剣をふるって、一体を切り込んでいく

 

「はああああ!!!」

 

頭部を切り落とされて、ゴーレムの一体が

そのまま、倒れこんでいくが、そこにもう一体が

姫奈を、倒されたゴーレムの身体ごと切り付けんと

剣を勢いよく振り降ろしていった、姫奈はそれを見て

振るってきた剣を踏みつけて、高く飛び上がり

 

そのゴーレムを上段から切り付けていった

 

「大丈夫、皆!?」

 

「ええ、ありがとう姫奈…」

 

姫奈のおかげで、全員が無事に合流した

 

「みんな、ここは無理して相手をせずに

 

 急いで、先の方に向かって行くわよ!」

 

「先に?」

 

姫奈がそういうと、彼女は自分達がいた方とは

反対側の方に指をさしていく、そこには扉が見えた

 

「おそらくあれが正規ルートよ

 

 あの扉は、今までの迷宮にはなかった…

 

 つまり、あそこがこの迷宮のゴールに続いてる!」

 

「で、でも!

 

 扉はしまっていますよ!!」

 

纏いの言う通り、向かっている扉は閉まっている

 

向こうに行けるのかは、はっきり言って怪しい

 

「とにかく、皆はあの扉に向かって!」

 

姫奈は一同に扉に向かうように言う

雫は香織を、風香はラナに付き添って

 

全力で、扉の方に向かって行く

 

ゴーレムたちは逃がさないと言わんばかりに

姫奈たち六人を、巨体に似合わない速度で追いかけていく

 

「まったくもう、もうこうなったら

 なりふり構ってなんていられないわ!

 

 みんな、離れて!」

 

姫奈はそういって、武器である剣を翳すと

 

それを使って扉を、切り裂いていく形で無事に扉の向こうが見えた

 

「ようし!

 

 それじゃあ、急いで…」

 

「待って香織!」

 

「え?

 

 きゃああああ!!!」

 

急いで、扉の向こうに行こうとする香織だが

それを雫に止められると同時に、香織は落ちそうになる

 

そう、扉の先の床はわずかに飛び出ているだけで

その先は、下の方が見えないほどに深い堀になっていた

 

更によく見てみると、その向こうには足場がいくつも浮かんでいた

 

「みんな、身体強化を使って飛び出すわよ!

 

 雫は香織を、風香はラナをお願い!!」

 

「「「「「了解!!!!!」」」」」

 

その足場に飛び移るべく、五人は

身体能力を強化して飛び出していき

 

無事に、扉の向こうに飛び移るのに成功したのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

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そのころ、別の場所では

 

「さてー

 

 そろそろ、見えてくるかなー?」

 

そういって、先の方を見ているのは一人の兵士

 

その後ろには、一人の少女がうずくまっていた

 

「それで一応は確認しますけれど

 うまく、相手のところの中枢に潜り込めたら

 

 私たちはそれぞれで活動を開始していく‥‥

 

 そういう手筈でいいんですよね」

 

「うん、問題ないよ~

 

 シアさんも帝国には

 思うところがあるぽいし~

 

 ま~、それについては

 シアさんにお任せだね~

 

 やりすぎなかったら、きっと

 マスターだって許してく入れるだろうしね」

 

馬車の奥で、みすぼらしい恰好をした

少女が、帝国兵と打ち合わせの方をしていく

 

「ようし、腕がなりますよ!

 

 なんて言ったって、ハジメさんから任された

 初めてのお役目なんですからね、気合を入れて行きますよ!!」

 

「フフフフ、あんまり張り切り過ぎないでね~

 

 あ、見えてきたよ、シアさん準備して」

 

帝国兵にそう言われて、シアは急いで準備の方を勧める

 

見えてきたのは、大きな門である

そこには当然のように、門番が立っている

 

「おお、ご苦労!

 

 戻ってきたようだな」

 

門番が帝国兵に気軽に話しかけていく

 

「それで、成果の方は?」

 

そういって、荷台にいるシアの姿を見せていく

 

「おお、こいつは上玉じゃねえか

 白銀で、更には年若い兎人族と来た」

 

「ああ、こいつは物珍しかったからな

 こいつをこのまま、皇帝に献上しようと思ってな

 

 よかったら、通してもらえねえか?」

 

そういって、大胆に要求をしていく帝国兵(マヌエラ)

 

しかし

 

「うーん、あいにくとそいつは難しいかもな

 

 ガハルド皇帝陛下はとにかく、強いものを望む

 兎人族は亜人族の中でも非力だ、目を通してもくれねえだろうよ」

 

「そうか‥‥」

 

うーんと悩んでいく帝国兵(マヌエラ)、その陰で

シアはギリッと表情の方を強張らせていく、自分を弱い

 

それが周りの評価でしかないとわかっていても

その言葉に怒りを覚えていくが、それをどうにかこらえていく

 

「まあ、陛下はともかくほかの王族の方は気にいるかもしれねえ‥

 

 話の方は、こっちで付けておくから、馬車を付けておいてくれよ」

 

門番はそういって、馬車を止める場所を伝えて

帝国兵(マヌエラ)を中の方に入れていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

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‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ヘルシャー帝国

 

王国とは同盟関係にある、この国

 

しかし、この国で求められているのは

他者を引き寄せないほどの力、文字通りの実力である

 

それ故に宗教国家であるハイリヒ王国に比べると

お世辞にも信仰心があるとは言えないものであり

 

王国も教会も、魔人族と言う脅威がなければ

すぐさまに、この帝国に攻め入っていたのかもしれない

 

攻め入ったところで、実力主義の帝国に勝てるのかは五分五分だが

 

そんな帝国に、一つの馬車が入っていき

その中から、首輪につながれた少女が連れ出されていく

 

それから、しばらくしてこの場所に入ってきたのは

一人の男性だ、その男性はどう見ても平民にしては良い服を着ており

 

とってもいい身分であることがうかがえる

 

「これは、皇子殿下‥‥

 

 わざわざ、こんなところにまで

 赴いていただきありがとうございます」

 

「フン、何でも我々にいい手土産があるという話しだが?」

 

すると、案内の者が奥の方に目を向けていく

 

「おい、連れてこい!」

 

そう指示を出していくと、奥の方から

帝国兵と、その手には鎖が付いており

 

それにつながられているのは

 

「‥‥‥」

 

シアであった

 

「ほう、珍しい…‥

 

 白い髪の兎人族か…‥

 

 それに、見た目もいい

 売ればそれなりの金になるだろう…‥」

 

そういって、シアの方をまじまじと見つめていく

 

「それにしても、随分と強気な目をしているな

 

 脆弱な兎人族にしては、なんとも肝が据わっている」

 

そういって、顎を掴んで自分の方に目を向けさせていく皇子

 

シアは、あくまで抵抗しないだけで反応の方は見せない

 

「いいだろう、気にいった!

 

 早速こいつを俺の屋敷に連れt…‥」

 

「ね~え~」

 

「‥うん?

 

 ぶぎゃ!」

 

帝国兵が突然、その見た目に会わないほどの

明るく甘ったるい感じの声を上げると、そのまま

皇子の顔を、自身の右手でつかみ上げて行き、そのまま

 

「な、何だ貴さm…‥

 

 こ、これは一体・うああー!!!!」

 

何と、黒い痣のようなものが

皇子の体に広がっていき、そのまま飲みこまれていく

 

「な、何だ貴様!」

 

他のもの達は、驚いてそれぞれ武器を向けていく

 

すると、シアはやれやれと言った具合で

自分の手に掛けられていた鎖を引きちぎり

 

更には首輪すらも、素手でちぎっていった

 

「マヌエラさん、ここからはもう

 

 好きにやらせてもらっていいんですよね?」

 

そういって立ち上がっていくシア

 

「うん、もちろん‥‥

 

 潜入の第一段階がもうこれでいいし

 あとはここの玉座をマスターに届けるだけだね」

 

そう言って、帝国兵はその姿を変えていった

 

青と赤のオッドアイ、紫と橙の真ん中に分かれたロングヘア―

赤色のローブに身を包んだ、あどけない少女の姿となった

 

「な、何だ貴様!?

 

 

 まさか、魔人族か!?」

 

「魔人族ぅ~?

 

 全然違うよ~

 

 私達は人間や魔人族なんてゆ~

 下等生物なんかとは、違うんだから~

 

 ねえ、シアちゃん」

 

「ええ、ここに来るまでの道中で

 いくら演技とはいえ、こんな奴らに

 好き勝手にさせられて、本当にむかっ腹が立ちました

 

 せっかくですから、そのうっぷんを晴らさせてもらいますよ~!」

 

そういって、その手に持ち出したのは大きな鎌

 

それを、振り回していき

向かってくる兵士たちをかえりうちにしていく

 

「あららー、シアちゃんったら

 久しぶりに動けるようになたからて

 

 羽目を外し過ぎだよー、まあいいや~‥‥

 

 さっさと、アタシも行てきますー」

 

そういって、その手に細身の剣を取り

そのまま、帝国兵の軍隊に単身に向かって行くのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥ 

 

帝国に強大な危機が迫っている中

そんなことが起こっているとはつゆ知らずに

 

帝国の帝城においては、ある準備が進められている

 

それは

 

「ガハルド陛下!

 

 王国に対して、書状を送りました」

 

「おう、ご苦労だったな」

 

それに対して、豪放磊落な感じで返していくのは

 

ヘルシャー帝国 皇帝

 

ガハルド・D・ヘルシャー

 

 

見た目は三十代半ばに見える

細身でスマートだが、鍛え上げられた

そんな体つきをしている偉丈夫の人物であった

 

彼ら同盟国であるハイリヒ王国に対して

書状を送ったのは、王国、もとい教会が勇者を

召喚されたと、話しを聞いたからである、しかし

 

帝国自身はだからどうしたという反応であり

最初のころは、勇者一行が召喚されたという話しを聞いても

 

正直に言って、即戦力たり売るのかと言うのが本音である

 

実力主義の帝国置いても、いきなり別の世界から来て

人類のために戦ってほしいと言われて、それで首を縦に振っても

果たしてそれが、どのようなものになるのかと言うのが本音である

 

しかし、ある時その勇者一行がオルクス大迷宮の六十五階層を

見事に突破して見せたという知らせを聞いて、ガハルドは気が変わった

 

歴代記録を更新したのだ、実力も申し分ない

ガハルドはそう考えて、その勇者に会ってみることにしたのだ

 

先ほど、使いの者が送った書状はまさにその為のものである

 

「勇者か‥‥

 

 それが果たして、どれほどのものか

 この俺自身が直接、手を合わせて確かめてみたいもんだぜ」

 

そういって、不敵な笑みを浮かべていくガハルド

 

そこに、突然扉が勢いよく開かれて行き

その中に帝国兵が一人、飛び込むように入っていく

 

「皇帝陛下、及び、皇太子殿下たちに申し上げます!

 

 我が国に襲撃者が現れ、まっすぐ皇城のもとに向かっております!!」

 

慌てた様子で、伝令を伝える兵士

 

「なんだと!?

 

 貴様ら、一体何をしていたのだ!」

 

そういって、兵隊に苦言を言い放つのは

 

バイアス・D・ヘルシャー

 

 

実力で皇太子となった実力者であるが

粗暴で女癖も悪く、弱者を蔑む甚振る下劣な性格

 

あくまで実力が認められただけで、父親であるガハルドから

親としての愛情は、まったくと言っていいほどに受けていない

 

「そ、それがその侵入者は我らが国の兵士になりすまし

 兎人族の少女を奴隷として引き取らせに行くと見せかけて

 

 そのせいで先ほど、第四皇子が侵入者の手にかかり‥」

 

「なんだと!?

 

 それで、被害の状況は?」

 

ガハルドは目を見開いていく

彼は息子たちのことは基本的に

放任しているが、だからと言って

無関心であるわけではない、それを聞いて

 

ただ事ではないのだと、察したガハルドは表情を険しくする

 

「今すぐに城中の兵を総動員して

 その侵入者の迎撃に当たれ、一歩たりとも

 

 ここに通すな、バイアス、てめえも戦闘準備にかかれ!」

 

そういって、早急に指示を出していくガハルド

 

しかし

 

「そ、それがすでに迎撃に当たっているのですが‥

 

 す、すでに部隊のおよそ大多数がせん滅されて

 近衛兵も、もはや半数以上が手にかかってしまい‥

 

 城内の兵力は、すでに壊滅状態となりました!」

 

「なんだと!?」

 

ガハルドはそれを聞いて、更に表情を強張らせる

伝令を伝えてきた兵はこの異常事態をすぐに伝えてきた

 

言ってみれば、敵が迎撃してきてそんなに時間がたっていない

そのわずかな時間の間に、城内の兵を壊滅状態に陥れたという事

 

おまけに、城内にいる兵士たちの中でも

特に実力者で構成させられている近衛兵を半分

 

伝令が伝えている間にはもう、最低でも半分以下になっている

 

それを瞬時に理解したガハルドは、覚悟を決めるように一息をつく

 

「おい、剣を持ってこい…‥」

 

ガハルドは静かに告げていく

 

「つ、つまり!?」

 

「こうなった以上はもう逃げられねえ…‥

 

 せめて、最後に覚悟決めてやるしかねえ

 バイアス、それからほかの奴等も構えとけ…‥

 

 俺達でそいつを迎え撃つ!」

 

ガハルドは、ごくりと息を呑んで告げる

 

こうなった以上はもう、自分も無事では済まないだろう

 

それだったら、最後まであがいていくのみだと

みっともないかも知れないが、それでも皇帝として

最後までその意志、いいや、意地を貫いていくのみだと

 

急いで兵が剣を持ち、それをもって向かわんとした

 

その時

 

「ぐああああ!!」

 

伝令としてやってきた兵が、何かに体を貫かれ

その場で倒れ、その周りには血が広がる様に流れていく

 

ガハルドたちが目を見開き

その奥の方に目をやるとそこに現れたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、見~つけ~た~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに現れたのは、何とまだ年端も行かない少女

年齢は大体、十代後半を迎えたばかりくらいだろうか

 

青と赤のオッドアイ、紫と橙で真ん中分けされた長い髪

赤色のローブを身にまとった、そんな外見の少女であった

 

「な、何だ貴様!

 

 ここをどこだと思って…‥」

 

バイアスが、その少女に向かって言う

 

この帝城に入ってくるのは、恐れ多いのに

ましてや、甘ったるい声で無邪気に入ってきた

 

はたから考えると、無礼極まりない行為

 

「ねーねー、おじさん

 

 ちょと聞きたいことがあるんだけど、よい~?

 

 この帝国で一番偉い人って、一体誰なのかな~?」

 

そんなバイアスの様子を気にする様子もなく

無邪気な子供の様に、この場にいる者達に訪ねていく

 

それに腹を据えかねたのか、バイアスは少女につかみかかっていく

 

「無礼者がああああー!!!」

 

そういって、少女に乱暴を働かんとするバイアス

しかし、バイアスの伸ばした手の手首から先の部分が失われる

 

「‥‥は?」

 

バイアスは突然のことで、理解が追い付かなかった

自分の腕から先が突然に失われたという、その事実が

一瞬のみ、彼からその状況を理解させる痛みを忘却させた

 

しかし、バイアスがその痛みを感じて現実に戻されることはなかった

 

なぜなら

 

その時に、バイアスの視線は急に低くなってしまったのだから

 

「女の子に暴力をふるうなんて、最低だよー?

 

 男の子は女の子に優しくしてあげなくちゃー

 

 あ、そうそう、もう一度聞くねー?

 

 この国で一番、偉い人て誰ー?」

 

首を素早い速度で落とされたバイアス

 

バイアスは人格にこそ問題はあるが

実力で王太子にまで、上り詰めた実力者

 

油断をしていたとはいえ、その彼が

たったの二振りで伏せられたのを見て

ガハルドもその場にいる者達も全員が戦慄する

 

しかし、それ以上に戦慄したのは

そんなバイアスを切り伏せても事も無げに

屈託のない笑顔を向けていく、その少女の対応である

 

「なるほどな…‥

 

 どうやら、俺達が相手をしているのは

 想像以上の化け物らしいな、なるほど…‥

 

 こいつは、戦いがいがあるぜ!」

 

バイアスはそういって、自身が前に出ていく

 

「俺がヘルシャー帝国 皇帝

 

 ガハルド・D・ヘルシャーだ!

 

 

 てめえのご要望通り、この国で一番偉い奴だぜ」

 

そういって、高らかに告げていくガハルド

 

「へえ~、貴方がそなんだね~

 

 それだたら、話が早いや

 

 私は我らが神、偉大なる創生主によって生み出されし王

 

 色欲と肉欲の王

 

 マヌエラ

 

 

 ね、皇帝さん、この国、私達に頂戴~?」

 

ストレートにそう言い放っていく少女、マヌエラ

 

そんなことを臆面もなく、言い放つ目の前の相手に

ガハルドは、冷や汗を浮かべながらも、笑みを崩さない

 

「ほう、随分と単刀直入だな…‥

 

 しかし、そのためにわざわざここまで

 単身で乗り込んでくるとは、見上げた度胸だ」

 

「度胸?

 

 そんなのないよー

 

 だて、貴方達は目の前に

 虫が飛んできても、構えていく?

 

 それと同じ事ー」

 

ガハルドに無邪気な様子で言い放っていくマヌエラ

 

彼女にとって、帝国に戦いを挑むことは

言ってみれば、小さな虫を相手にするのと同じ

 

ガハルドは普通ならば、なめた口をと激高するが

単身で帝国が誇る、精鋭部隊を壊滅に追い込むほどの相手

 

実力は決して、口先だけではない

 

「へ、どうやら俺の命運もここで尽きたようだな…‥

 

 いいだろう、この俺の玉座、ほしいんだったらくれてやる

 その代わりにこっちの要求を呑んでもらいたい、いいか?」

 

「うん~‥‥いよ~

 

 譲てくれるなら、それに越したことはないしね~」

 

あっさりと了承してくれたマヌエラ

 

ガハルドはややあっけにとられたが

直ぐに切り替えて、こっち側の条件を告げる

 

「俺の首は好きにしてくれてもいい

 

 その代わり残っている者達の命は保証してもらう

 

 俺が提示するのはそれだけだ」

 

ガハルドは、実力主義者だが

かと言って冷酷な人物ではない

 

国は人がいて、初めて成り立つのだ

それにこれ以上、手を出されればそれこそ

国は、崩壊を迎えていく事になる、ガハルドも

それは避けたい、自分の命を差しだすくらいで

この国の無事を保証されるのなら、安いものだと考える

 

「‥‥へえ、存外優しいんだね~、皇帝さんは~

 

 いよ~、貴方の望み、聞いてあげる」

 

マヌエラは満足げな笑みを浮かべて、そう告げていった

 

「‥‥さて、ついでにもう一つ

 俺個人で要求をさせてもらうぞ…‥

 

 俺と、剣を交えてもらおうか」

 

そういって、ガハルドは果し合いを要求する

 

「え~、どうして?」

 

「この国は力が全てだ、どんな形であれ

 周りに認められるだけの力があれば成り上がれる

 

 てめえに王座を譲るのは簡単だが、ただハイどうぞと

 そう簡単に皇帝の椅子を譲っちまったら、帝国の尊厳にかかわる

 

 だったらここは、国を治める立場の者として

 俺は、俺の成すべきことを果たすのみだ、だから…‥

 

 ここで、お前と剣を交え、そのうえで俺の首を取れば…‥

 

 それで、お前の力は示されるってわけだ

 

 行ってみればこれが、俺なりの継承の儀って奴だ!」

 

そういって、剣を抜いていくガハルド

 

その表情は、どこか笑っているように見える

 

「‥‥殊勝な事言てる割に、随分と楽しそだねー」

 

「まあ、強い奴と戦うのは、俺の趣味だからな」

 

マヌエラはそう言いながらも、武器である細身の剣を抜いていく

 

レイピアやエストックに近いが、それに比べると太く

刃があるのかと、一見すると疑ってしまう形状である

 

「来いよ‥‥化け物!」

 

「化け物だなんて失礼だよ~?

 

 人間!」

 

そういって、ガハルドがほぼ捨て身でマヌエラに向かって行く

そんな彼に、マヌエラは少し頬を膨らませて怒った表情を見せながら

 

武器である剣をふるったのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥ 

 

そのころ、帝国の町では

帝国兵士たちがボロボロで地面に伏していた

 

「しゃああおらああああ!!!!!!」

 

そこには、大鎌を振るって

次々と帝国兵たちをなぎ倒していく者が

 

その者は、白い髪でそれなりに長く

その頭部からは、兎の耳が生えている

 

はたから見ると、兎人族だと思うだろう

 

しかし、その強さはとても亜人族の中で

非力な兎人族のものであるとは、到底思えない

 

「な、何なんだよお前‥」

 

地面に伏した一人の帝国兵が

少女の方に目を向けながらつぶやいた

 

すると、少女はそれに気が付いたのか

武器である大鎌の鎌の部分を地面について

その呟いた帝国兵の方にへと、目を向けていった

 

「お前‥‥亜人じゃ‥

 

 兎人族じゃなかったのかよおおおお!!」

 

そう叫ぶと同時に、帝国兵の視界は真っ暗になった

 

「‥ふう、やれやれ‥‥

 

 本当にどこもかしこもおんなじことばっかりですね‥‥

 

 亜人族は魔力がないだの、兎人族は非力だの

 同じような事ばっかり言って侮ってくるんですから‥‥

 

 もういい加減、耳タコですよ‥‥うん?」

 

少女は、外の方から何か大勢の物が

入ってくる音を、その優れた聴力で察知する

 

「おっと‥‥

 

 どうやら、まだ外に

 出ていた分の兵士がいるみたいですね‥‥

 

 ちょうどいいです、私もまだ暴れたりない所でしたからね」

 

そう言って、部隊が入ってきたところにまで

その異様に優れた跳躍力で、すぐさま向かって行く

 

「っ!」

 

そこにいたのは、一人の騎士の鎧を身にまとった女性であった

 

「おや?

 

 指揮官は、女性でしたか‥‥

 

 それにその、鎧の感じ

 もしかして貴方は、王族の方で?」

 

そういって、ゆっくりと立ち上がっていく

 

「貴様、何者だ!

 

 この帝国の惨状は貴様の仕業か!!」

 

「そうだとして、何だって言うんですか?

 

 どうせこれから死ぬのに、そんなのを

 知ったってどうしようのないでしょうに」

 

少女は、そういって、鎌を再び肩の方に置く

 

「私はヘルシャー帝国 皇女

 

 トレイシー・D・ヘルシャー!

 

 

 これ以上のお前達の行いを

 見過ごすわけにはいかない!!」

 

「見過ごすって‥‥

 

 そもそも、もうみんな死にましたよ

 帝国の兵士も住人達も、老若男女問わずに全員‥‥

 

 のこっているとすれば、それは‥‥」

 

そういって、後ろの方に目を向けると

そこには、武器を持ったいくつもの人柄の影が

 

「っ!?

 

 こ、これは一体‥‥」

 

「さあ?

 

 その身に味わってみたら

 分かるんじゃないんですかね!」

 

そういって、大鎌を振りかざして向かって行くシア

 

トレイシー達も、一斉に向かって行く

 

それから、数秒後

 

ヘルシャー帝国は完膚なきまで

崩落されてしまったのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

帝国が罪徒たちの襲撃に会ったのと

同じくらいの時、こちらの方でも動きはあった

 

「ここは…

 

 なんだか不思議な空間ね…」

 

そう呟くのは

 

南野 姫奈

 

 

彼女の言う通り、目の前には

どのような法則なのかは分からないが

 

いくつもの足場が、浮かびあがっている

そんな奇妙な光景が、六人の眼前に映っている

 

「でも、それ以外には何も見当たらないけど…

 

 ここが本当に迷宮の最深部なのかしら?」

 

「分かりません…

 

 でも、こういうのは大抵は

 ラスボスと言うかダンジョンボス的な

 そう言った存在が、現れるのが定石なんですけど…」

 

しかし、目の前の不思議な現象以外に

特に何かが起こりそうな感じがしないという

 

八重樫 雫

 

 

そのあとで、何やら不吉なことを呟いていくのは

 

北浦 纏

 

 

彼女がそう呟いた、すると

 

足場は自然と上の方に向かっていき

一同はその先にあったものを見て、目を見開く

 

そこにあったのは

 

「あ、あれって…」

 

「ゴーレム!?」

 

目の前にあったものを見て、目を見開いていく一同

その心情を代弁するように言った、二人の少女

 

白崎 香織

 

 

ラナ・ハウリア

 

 

彼女らの言うように目の前にあったのは

全身が甲冑のような形状をしている騎士

 

それだけなら、先ほどのゴーレムと変わらないが

問題はその大きさで、推定でも二十メートルはある

 

右手は拳が赤熱化していて

左手には、腕に鎖がまかれており

その先には、フレイル型のモーニングスターがある

 

さっきまでのゴーレムとは、対峙したときの

威圧感と言うものが、まったくと言っていいほどに違う

 

すると、そんな一同を前に、ゴーレムの目元がギラリと光る

 

それを見て、その場にいる全員が身構えていく

 

辺りが静粛に満ち、やがて命がけの戦いが始まろうとした

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー、はっじめましてー

 

 みんな大好きミレディ・ライセンちゃんだよー」<きゅるん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「……」」」」」」

 

余りにも状況に似つ変わしくないその発言に

六人は、あっけにとられて言葉を失ってしまう

 

「なになになに~?

 

 せっかくこうして、挨拶したんだし

 こういう時は、あいさつし返すのが礼儀でしょ?

 

 まったくもう、なってないな~」

 

それを聞いた六人の少女達は全員が怒りを覚えていく

 

しかも、そのあとの動きは両手をそれぞれ

肩ぐらいまで持っていって、手のひらを上にかざして

それをくいっと、上の方に一瞬だけのばしていった

 

所謂、やれやれだぜと言った感じである

 

苛立つ心をどうにか抑えていき、姫奈が前に出ていく

 

「えーっと、ミレディ・ライセンって言ったわよね…

 

 あなたは一体何者なの?」

 

「お、ミレディちゃんに興味が出ちゃう~?

 

 ふっふーん、まあ無理もないよね

 この超絶美少女魔法使いのミレディちゃんの

 あんなところやこんなところを知りたいなんて

 

 でもね、乙女の秘密にはあんまり踏み込まない方がいいよ~

 

 それが、女の子への接し方の一番の礼儀だしね」

 

この発言に、段々と怒りを蓄積させていく六人

 

「ミレディ・ライセン…

 

 表向きは、神々に反旗を翻して

 敗れ去ったとされる七人の反逆者

 

 その一人がアンタなのよね、でも

 聞いた話によると、七人の内、四人は

 人間族で、ミレディもその一人のはず

 

 この世界の人間の寿命は、私達と何にも変わらない…

 

 つまり、千年以上も前の人間がここまで生きていられるはずはない…

 

 いいえ、魔人族でも亜人族でもそんなには生きられない…

 

 もしも、貴方がミレディ・ライセン本人だって言うなら

 いったい今日まで、どんなふうに生きて来たって言うの?」

 

姫奈は、どうにかして怒りをこらえながらも

ミレディに対して、気になる事を訊ねていく

 

「この世界の人間‥‥

 

 なるほどね、君たちはもしかして

 この世界とは別の世界からやってきたのかな?

 

 まあいいや、ここまで来たんだったら、教えてあげる

 そー言うのに適した魔法があって、それでちょちょいっとね

 

 要はそういう事」

 

ミレディは、はぐらかすように言う

 

「ちょっと、それだけz…」

 

「さてと、今度はこっちの番‥‥

 

 ここに来た目的は、何なのかな?」

 

今度は、ミレディがそう尋ねていく

 

「私達は、元居た世界から

 エヒトって神様によってこの世界に呼ばれた…

 

 最初は元の世界に戻るために、その世界の戦争に

 参加していく事にしたんだ、でもある時に私達の仲間の一人が

 

 特異な力を持っているってだけで、いわれのない罪を着せられて

 その彼も、彼を助けようとした彼女も、二人共目の前で殺された…

 

 私達は悟ったの、私達はあの場にいるべきじゃないって

 それで、私達は冒険者として活動するために、その国の王都を離れた…

 

 その時に、ラナさんに出会ったのよ…

 

 それで、彼女に大迷宮の事を聞いたのよ、貴方のことも断片的にね」

 

姫奈は答えていく

 

「おや?

 

 そこにいるのは、兎人族の女の子だね

 

 なるほど、リューちゃんからいろいろと

 伝えられているって言う事か、という事は?

 

 もしかして、ここ以外の大迷宮はいくつか攻略したのかな?」

 

「‥‥いいえ、オルクス大迷宮には入ったけれど

 そこは途中で抜けて来たし、何よりも貴方達のことも

 この大峡谷で、ラナさんに出会うまでは知らなかったわ…

 

 言ってみれば、本格的な攻略はここが初めてよ」

 

姫奈はそう答えていく

 

「‥‥そっか、君たちも君たちなりに苦労したんだね」

 

「‥‥私達がここに来たのは、元の世界に戻るため

 その答えを探すために、ここにやってきたの、教えて…

 

 元の世界に戻る、方法を!」

 

姫奈は本題の方に入っていく

 

「分かったよ、君たちの覚悟はしっかり伝わった

 

 でも、だからこそミレディちゃんは容赦なんてしませーん

 変に手心を加えたら、それこそ試練の意味がなくなっちゃう

 

 だからこそ、ミレディちゃんは心を鬼にして

 君たち若者を導いていかないと、行けないのです!

 

 さあ、来なさい試練の攻略に挑むもの達よ

 ここから先は、力と力のぶつかり合いと行きましょう!!

 

 もしも、勝つことが出来たら、その時は

 貴方達が知りたがっていること、この世界の真実を教えてあげよう!!!!」

 

そういって、左手に持ったメイスをブンッっと振るい

その上で、目の前にいる六人の少女達に戦いを仕掛けんとする

 

「まあ、こうなるのもわかってたけどね…

 

 みんな、覚悟はできているわね!

 

 雫、風香、纏、一緒に行くわよ

 香織はラナさんを守りつつ、私達のサポートを!!」

 

「「「「了解!!!!」」」」

 

「皆さん、どうか気を付けて‥‥」

 

ラナは、香織とともに奥に引っ込んでいき

姫奈は剣を、雫も剣、風香は槍、纏は長槍を構えていく

 

「雫!」

 

「ええ!」

 

まずは、姫奈と雫が飛び出していき

目の前にいる巨大なゴーレムに斬りかかっていく

 

「先制攻撃とは、勇ましいね‥‥

 

 でも、貴方達程度の攻撃じゃ

 私のこの身体は、斬れないよ!」

 

そういって、右手を翳して

二人の攻撃を、防がんとしていく

 

しかし

 

「え!?」

 

姫奈の剣によって、翳した右手は

ズタズタに、斬り落とされてしまう

 

「ええ!?

 

 う、嘘でしょ!?

 

 この鎧には、アザンチウム鉱石が使われてるから

 そう簡単には、斬ることなんて出来ないはずなのに」

 

「私も、ここに来るまでに貴方の迷宮に

 散々、おちょくられてきたからね

 

 今回もマジで行かせてもらうから!」

 

姫奈はどこかしてやった感を含めた表情を浮かべていく

 

姫奈は先ほどの騎士ゴーレムの襲撃において

聖徒としての力を解放しており、そのままここまで維持している

 

並みの武器ならば、この世界で最も堅いとされる鉱物

アザンチウム鉱石でできた鎧は、斬る事は出来ないが

 

姫奈の生成した武器は、並みのアーティファクト以上の性能があり

例え、アザンチウム性であろうとも、ステーキみたいに斬ってしまう

 

これには、ミレディも本気で驚いた様子を見せていく

 

しかし

 

「‥‥ふう、斬られたことには本気で驚いたけど

 どうやら、このゴーレムの再生機能に影響はないみたいだね‥‥

 

 その点はよかったよ、だって何にもやらないでやられてたら

 それこそ、試練の意味がなくなっちゃうからね、そういう訳で‥‥

 

 ここからは仕切り直し、私の方も全力で行かせてもらうね!」

 

そういって、再生した右腕をかかげると

そこに、先ほどの騎士ゴーレムたちが現れる

 

「う、浮いてる!?」

 

「なるほど…

 

 もしかして、あれが

 奴の言う、神代魔法って奴なのかな」

 

他の面々も、それぞれ武器を持って挑んでいく

最初に騎士ゴーレムたちの襲撃を受けたときは

慌てていたので、姫奈の土壇場になってっしまっていたが

 

他の面々、特に後方支援型の香織と

そもそも戦闘が出来ないラナ以外はそれなりに強い

 

一気に沢山は無理でも、それなりにばらけていれば

彼女達もゴーレムを相手取っていく事は出来る、しかし

 

「でも、あくまでこいつらは相手にしない…

 

 

 どうせ倒したって倒したって

 元に戻っちゃうんだしね、それだったら…

 

 ボスの方を先に叩く!」

 

そういって、ミレディ・ゴーレムの方に

騎士ゴーレムを蹴りこんで、その勢いで向かって行く

 

「へえ、確かにこのゴーレムたちは再生機能があるから

 無理に相手にしていると、時間も体力も消費しちゃう

 

 確かにその考え方は悪くないよ、け・れ・ど‥‥

 

 私の方だってそれなりに強いから、あんまり侮らないでよね!」

 

そういって、左手のメイスを振るっていく

 

風香はそれに気づき、槍を突き出してメイスに対抗する

 

さすがに空中で勢いのあるメイスの方に分があるが

風香は、ぎりぎりで攻撃を流し、横に飛ばされて空中に

浮いている足場の一つに、どうにか足をかけていく事に成功する

 

しかし

 

「っ!?

 

 うわわわわ!?」

 

その足場が突然動き出し

風香は、その勢いで足場に

貼り付けられてしまう、しかも

 

目の前には、別の足場が迫ってきている

 

「きゃああああ!!!」

 

足場と足場がたがいに勢い良くぶつかった

 

「風香!」

 

姫奈は、風香の方に呼び掛けていく

 

「‥‥な、何とか…

 

 風の力で、気流を操作して

 その勢いでどうにかつぶされずに済んだよ…

 

 それにしても、この足場といい空に浮くゴーレムと言い

 本当にこの場所って、重力の法則とか完全無視だよね」

 

風香はそういって、広い足場に着地していく

 

「‥‥重力…もしかして!

 

 それが、奴の使う魔法ってこと!?」

 

姫奈はそういって、ミレディ・ゴーレムの方に目を向ける

 

「その通り、重力魔法‥‥

 

 それがミレディちゃんの神代魔法‥‥

 

 まあ、定義自体は、ほかにもあるけれど

 それについては教えてあげないよ、まあ取り合えず‥‥

 

 重さを自由に操れるものだって、覚えておいてね!」

 

そう言って、メイスが再びふるわれていく

 

「っ!」

 

雫は、剣を構えて防禦の構えを取るが

 

「雫ちゃん!」

 

香織が、聖絶を展開していき

雫をメイスによる攻撃から守っていく

 

「っ!

 

 雫ちゃん、今のうちに…

 

 このままじゃ、長くはもたないよ…」

 

「香織!」

 

雫は、急いでその場から離れ

雫がはなれると同時にメイスは結界をやぶり

そのまま、足場を砕いていってしまった

 

「どう?

 

 こうやって、武器の一撃を

 協力にしていく事だってできるんだから‥‥

 

 それにしても、サポート自体は悪くないね

 さっきのも迷わずに、メイスがあの子に当たる

 範囲って言う必要最低限の力しか展開していなかった‥‥

 

 案外、ああいうのが厄介かもね‥‥それだったら‥‥」

 

ミレディはそういって、香織の方に目を向けていく

 

すると、ミレディは武器であるメイスを使って

後ろの方に下がっている香織の方に目を向けて行く

 

「やああああ!!!!」

 

ミレディは武器であるメイスを振るい

香織の方に攻撃を仕掛けていく、香織はそれを見て

 

「聖絶!」

 

香織は防御を展開し、迫ってきた攻撃を防いでいく

 

「香織!」

 

「そうはいきませんよ!」

 

香織を狙っていくミレディに、纏は武器をもって

ミレディの方に向かって、武器である槍を勢いよく振るう

 

だが、ミレディはそれをもう片方の右手で防ぐ

纏の一撃はさすがに姫奈ほどはなく、アザンチウムの鎧は砕けない

 

「残念、パワーはまだゴーレムの方に分があるよ

 

 君はまだまだ、さすがにこの鎧を砕くにも力不足だしね」

 

「そうですね…

 

 姫奈さんの、剣みたいにはできませんね…

 

 でも、一瞬でも攻撃の意識がこっちに向けば…」

 

「「はああ!!」」

 

その後ろから、雫と風香が

それぞれの剣と槍でミレディを斬る

 

流石のゴーレムも、関節部分は脆かったのか

鎧を直接狙うよりは、手ごたえがあった、しかし

 

「言ってなかったっけ?

 

 このゴーレムには、再生能力があるんだって!」

 

そういって、再び攻撃の方を繰り出していく

それを使って、雫と風香はそれぞれ、地面に

勢いよくたたきつけられてしまい、打つ伏していく

 

「雫ちゃん、風香ちゃん!

 

 っ!!」

 

香織は、二人の方に回復を使って

二人の傷をどうにかして癒していく

 

「おお、やるじゃん

 

 回復を一度に、二人に

 でも、それだっていつまで持つかな?」

 

そういって、右手をクイッっと動かすと

周りに浮かんでいる、足場が全部香織の方に向かって行く

 

「戦闘においては、回復役は真っ先に狙われる‥‥

 

 これ、ミレディちゃんから君たち若者への助言

 

 よく覚えておくんだね、ウフフフフ‥‥」

 

そういって、足場を一気に落としていく

 

「香織!」

 

姫奈が、剣を手に急いで香織の方に向かう

香織の方には無事につくだろうが、香織に比べて

更には、ラナまで連れ出すとなると手間も時間もかかる

 

「はい、まずは三人だね

 

 残念だけどここで、君たち

 三人ともゲームオーバーだね」

 

ミレディはそういったのち、足場が一斉に三人の方に降り注ぐ

 

「香織!」

 

「姫奈!」

 

「ラナさん!」

 

雫、風香。纏が三人の名前を叫ぶように言う

 

「ごめんね、でも私はこれでも

 永遠ともいえる時まで、ずっと

 

 待ち続けて来たんだ、だからこそ

 容赦なんてしないし、躊躇だってしない‥‥

 

 君たちの覚悟は立派だけど

 ここでやられるくらいなら‥‥

 

 君たちはそこまでだったってことだね‥‥」

 

ミレディは普段の明るい口調とは似つかわしくなく

静かに、それも冷淡に言い放つ、しかしそこに侮辱や蔑みは感じられない

 

ミレディも、他の三人も砂煙に覆われたその場所をみる

 

その攻撃が迫っていく中

ミレディの放った足場が直撃せんとしていく

 

そんな様子を、香織は悲し気に見ていた

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

香織はこのトータスに来たのをきっかけに

彼女は、あるきっかけを持つことが出来た

 

それは、南雲 ハジメと仲良くできたことだった

 

元の世界ではある事件のせいで、疎遠になり

なんとか彼ともう一度話がしたいといつも思っていた

 

すると、そんな思いが実ったのか

ハジメとそれなりの会話ができるようになり

 

彼女は笑顔が増えていく

 

だが、そんな彼女の思いをあざける様に

ハジメは、いわれのない罪を着せられて

自身のことを仲裁してくれた、ある少女とともに

 

自分の目の前で、炎の中に消えて行ってしまった

 

それからしばらくして、彼女は打ちのめされてしまう

 

自分はなんて、浅はかなんだろうか、自分はなんて無知なんだろうか

 

その後、ハジメを二に追いやった教会とハイリヒ王国

そんな彼の事を何とも感じていないクラスメートたちと決別し

 

紆余曲折あって、香織は親友の雫や姫奈、風香、纏

彼女らとともに、冒険者として活動していく事になる

 

しかし、職業上自身が戦えることはなく

いっつも自分の無力感にさいなまれていく事になる

 

このままではだめだ、逆に自分が仲間の枷になってしまう

 

自分の目の前で大切な人を失いたくない

自分のせいで誰も傷ついてほしくない

 

もう絶対に、自分が何もできなかったせいで

自分が無知だったせいで、大切な人が失われていくのは…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「うああああ!!!

 

 聖絶!」

 

香織が、姫奈の前に立って

自身と姫奈、ラナを囲むように

防御結界をはって、衝撃から守っていく

 

「嘘でしょ!?

 

 でも、そんな程度の防御じゃ

 この攻撃を防ぎきる事は出来ない!」

 

ミレディは、まさか香織に

まだこれほどの余力があったことに驚いたが

 

それでも、容赦をするのは失礼だと感じ

とどめを刺してやると言わんばかりに攻撃を更に仕掛けていく

 

「無茶よ、香織!

 

 あなたにはもう、魔力が殆ど

 のこっていないのに、あれだけの攻撃を…」

 

「そんなの関係ない!」

 

香織は姫奈の言葉を振り切る

 

彼女は、大切な人を守ると誓ったのに

結局何にもできなかった、自分にもっと力があれば

守れるだけの力があれば、大切な人を、ハジメをあの

炎の中から救えたのかもしれないのに、結局できなかった

 

香織は自覚していた、自分が国を出たのは

ハジメを処刑した王国やそれを止めなかったクラスメートと

距離を置きたかった、しかしそれはただの言い訳に過ぎない

 

その本心、それは逃避である

 

彼を守れなかった自分、誰かを傷つけてばかりの自分

そんな自分から逃げる為に、彼女はみんなの元を飛び出した

 

そして、今も彼女はそんな彼女についてきてくれた

親友の雫や、姫奈、風香、纏の事を守れるように強くなりたい

 

もう二度と、弱い自分から逃げたくないと

もっと強くなるために戦いたいと、その思いを秘めて

 

しかし、このライセン大迷宮に来てから

彼女は、守るどころか何の役にも立てず

 

皆の足を引っ張ってばかり

 

そして今も、自分が何もできなかったせいで

このライセン大峡谷で知り合った兎人族のラナ

 

自分を守るために来た、姫奈を危険な目に遭わせてしまっている

 

香織はそんな現状で怒りを覚えていた

 

「 私はもう嫌なの、私が何にもできないせいで

 私の大切な人が、目の前でいなくなっちゃうのは…

 

 もう嫌なんだよ!」

 

香織は心からの願い、後悔

それらを織り交ぜた心からの思いを叫んだ

 

それと同時に、迫ってきた足場が一斉に

姫奈と香織、ラナの居る場所に勢いよく着弾していった

 

「香織!」

 

「姫奈!」

 

雫と風香は、同時にそれぞれの親友の名前を叫ぶ

 

纏も声には出さないが、その表情は引きつっている

 

「‥‥‥‥」

 

ミレディの方は、何も言わない

ただ、足場を浮かせようと手を翳そうとした

 

その時

 

「「「っ!?」」」

 

「え!?」

 

その場所が突然光りだし、足場は

そのまま、何かに押し出されて行った

 

その中心にいたのは

 

「‥‥…」

 

周りに、何やら四つの盾のような

そんな結界を、張られており、さらに

 

その後ろには、アーティファクトの杖ではなく

何やら本のようなものを手に持った、香織がいた

 

ただいるだけではない、その姿も変わっており

服装が姫奈のそれと同様に、白を基調とした服装に変化している

 

しかし、姫奈がどこか剣士を思わせる服装なのに対し

香織のそれは、どこか神官、そう言った装束を思わせるものだった

 

「か、香織!?

 

 どうしたのよ、それ…」

 

「っ!

 

 見て、彼女の右手!」

 

風香は香織の右手に、目を向ける

そこに浮かんでいたのは、姫奈のそれと同様の例の紋章があった

 

「え、ええええ!?

 

 な、なんなのさそれ!?

 

 そんなの、さすがの私でも吃驚なんですけど!?」

 

ミレディの方も、この現象には驚いている

 

「香織…」

 

「ごめんね、姫奈ちゃん…

 

 私ね、ずっと思ってたんだ…

 

 このままじゃだめだ、皆に守られて

 ばっかりじゃいけないって、私にだって

 出来る事があるのは分かってる 、でも私は…

 

 雫ちゃんや姫奈ちゃん、皆と並んで戦いたいんだって!」

 

そういって、本を開いて

右手を翳していく香織、すると

 

三人を囲んでいた四つの光の円盤が

大きさを変えて、香織の周りに集まっていく

 

「姫奈ちゃん、行こう!

 

 雫ちゃんたちも協力して!!

 

 みんなで、この試練をクリアしよう!!!」

 

香織がそういって、皆に呼び掛ける

 

「‥‥わかったわ、その代わり無茶はしないで

 

 それだけは言っておくから、一緒に決めるわよ!」

 

「うん!」

 

そういって、香織は姫奈とともに並んでいく

 

「おっと、行けない行けない‥‥

 

 たとえ君たちの力がどんなものなのか

 分からないからって、試練である以上は

 絶対に手を抜くわけにはいかないんだ、とはいえ‥‥

 

 こっちも負けてあげる気はないからね!」

 

そういって、右手を振るって

空中に浮かせている足場を再び向かわせていく

 

「姫奈ちゃん!」

 

香織は、姫奈に自身の周りに浮かせている

円盤状の光、四つの中一つを纏わせていく

 

すると、姫奈は自身の体から何かすごい力が

湧き上がってきているのを感じていった

 

「す、すごい…

 

 これだったら、まだいける!」

 

姫奈は、武器である剣を持って

再び、ミレディゴーレムのもとに向かう

 

「へえ、なかなかいい動きだね‥‥

 

 でも、君のことはしっかりと

 対策の方はしているよ、何しろ

 君の力は異常だ、警戒するに越したことは‥‥

 

 無いからね!」

 

そういって、左手の鉄球を飛ばしていく

姫奈はそれを、かわそうとしていくが

 

その前に、他の方向からも

足場が姫奈をつぶさんと迫っていく

 

「姫奈!」

 

姫奈は鉄球と、足場につぶされてしまう

 

「さあて、やっとこれで終わりかな‥‥っ!?」

 

ミレディがそう一息ついていくと

ミレディが振るったメイスや足場が突然

 

バラバラに切り裂かれていった

 

その中から出てきたのは、何と

無傷で剣を構えた、姫奈の姿であった

 

「うっそ~っ!?

 

 効いてないどころか無傷!?

 

 いや、違う、これは回復か!?

 

 受けたダメージを瞬時に回復したのか!?」

 

ミレディは、終始驚きっぱなしである

 

「そうだよ!

 

 これが私の力…

 

 みんなを守るための力だ!!」

 

そういって、香織は残る三つの光の円陣を

まるで、投かんしていくかのように放っていく

 

「うそ、飛ばしてきた!?

 

 でも、これくらいなら!」

 

ミレディはそういって、足場を使って

円陣の行く手を阻まんとふるっていく

 

しかし、その円陣はまるで

意志がある様に、足場をかわして

ミレディゴーレムの方にへと向かって行く

 

「ええ!?

 

 そんな、魔法は一度はなったら

 組んだ魔法式通りの動きしかしないはず‥‥

 

 そんな複雑な動き、出来るはずがない!」

 

ミレディゴーレムは、そう言いつつも

右腕を翳して、攻撃を凌がんとしていき

 

手を突き出していく

 

円陣は、その右腕をかわしていくと

構造上、脆くなる関節の部分を的確に切り裂いていき

 

右腕を切断していく

 

左腕の方も、姫奈が剣をふるい

それを使って、切り裂いていった

 

「本当にやってくれるね‥‥

 

 でも、ゴーレムちゃんには

 再生機能があるんだって忘れたかな?」

 

ミレディゴーレムはそういって

両腕の再生を試みていく、しかしそこに

 

「雫ちゃん、風香ちゃん!」

 

香織が、雫と風香の名前を呼び掛けていくと

雫と風香がそれぞれ、ミレディの左右に回り

それぞれの武器を、構えて腕の部分に向けていく

 

「はああああ!!!」

 

「ええええい!!!」

 

二人が、その接合部分に向かって攻撃をすると

その部分が、見事に切り裂かれ、落ちていった

 

「今よ、纏!」

 

姫奈が最後の一人に呼び掛けていく

 

それは

 

「これで、終わりいいいい!!!」

 

纏の一撃が、ミレディゴーレムの脳天に

勢いよく直撃し、そのまま下の方に落下していき

 

激しい轟音が、辺りに響いていった

 

「か、勝った‥‥?」

 

ラナはそういって、目の前の光景を見て

やや呆然としながらも、静かにそう呟いてくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

そのころ

 

大峡谷の方では、大雨が降り続けていき

その様子を、そびえたつ崖の上から見下ろす一人の人物

 

「うん?」

 

仮面の人物が、何かに気が付く

 

「どうしたの‥‥?」

 

「‥ある場所で、激しい揺れを感知した‥

 

 この感じは、峡谷で起こる自然現象にしては妙じゃ‥

 

 どうやら見つけたやもしれんぞ、この峡谷の大迷宮を‥」

 

その彼に尋ねていく、金髪の少女

 

「それじゃあ、早速行きましょうか…

 

 場所が分かったのなら

 やることは、単純でいいんだしね…

 

 それじゃあ、さっそk…」

 

「待って、ナギサ‥‥

 

 ここは私が行く」

 

そういって名乗りを上げたのは

 

運命と破壊の罪徒

 

リュナ・プレーヌ

 

 

彼女がずいっと前に出ていく

 

「リュナ、これは私が判断したことよ…

 

 あなたがでしゃばるような真似を…」

 

「でも、ハジメの望みでもある

 

 ハジメの望みをかなえたいという覚悟は

 私だって半端に持ってなんていない、だから‥‥

 

 ここは、私に行かせてほしい‥‥」

 

頼み込むリュナ

 

すると

 

「…いいでしょう、だったら

 あなたのその覚悟、しっかりと見届けさせてもらうわ…

 

 私達の出番、なくせるものなら、ぜひともそうさせてみなさい」

 

憤怒と激情の王

 

ナギサ

 

 

彼女がそれを了承すると

リュナは迷わずに崖の方に歩いて行き

 

「運命と破壊の罪徒

 

 リュナ・プレーヌ‥‥

 

 

 行く」

 

そういって、無数の蝙蝠になってばらけていくリュナ

 

更なる戦いの時が、迫ろうとしていた

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?

  • 原罪(スルー推奨)
  • 傲慢
  • 虚飾
  • 嫉妬
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 憂鬱
  • 暴食
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