世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
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ライセン大迷宮の攻略から、しばらくたったある日
ある冒険者の支部に、六人の少女達が訪れた
「いらっしゃいませ、本日の御用件は何でしょうか?」
受付嬢が、いつも通りに対応していく
「すいません、依頼の報告と
少し、今後のことで話しをしたいと思って…」
そういって、代表として前に出ていく一人の少女
南野 姫奈
彼女が要件の方を述べていく
「かしこまりました、それでは報告書を提出してください
その件でこちらから、お聞きたい事があれば
こちらの方からお伺いするか体でいたしますので
それでは、こちらの方で‥‥‥」
「それともう一人…
新しいメンバーが入ったんですけれど…」
そういって、姫奈が目を向けると
そこには、兎の耳を生やした女性がいた
ラナ・ハウリア
ライセン大峡谷で、出会った彼女
その彼女の首には、首輪のようなものがつけられている
「…奴隷登録の方はお済になられているようですね…
それでしたら、問題はありませんよ
こちらの登録名簿に名前をご記入いただければ
新たに、冒険者パーティーの一員としてご登録させていただきます」
「分かりました…」
そういって、姫奈は報告書と登録名簿に
記入をしていき、取りあえずの用事はすませたのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
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少女達が止まっている窓
「みんな、お待たせ…
とりあえずは、明日まではこの町に
居ることになるけれども、問題はないわね?」
姫奈は、自身のパーティーメンバーに呼び掛けていく
「うん、問題ないよ」
それに対して笑顔で答えていくのは
白崎 香織
彼女はいつもの感じで返していくが
その表情は、どこか暗く沈んでいるようであった
「香織…」
そんな彼女を心配そうに見つめていくのは
八重樫 雫
香織の親友である
「香織ちゃん‥‥元気がないわね…」
「仕方ないですよ…
あんなことがあったんですから…」
同じく心配そうに声をかけていくのは
西宮 風香
北浦 纏
彼女達も、かの出来事での事で
大きなショックを受けてしまっている様子である
「‥‥そうね…
それにしても、奴らは一体何者なのかしら…
自分達の事を、罪徒って名乗っていたけれども…」
「罪徒…
確かに強かったね…
最初に戦った女の子だって
香織ちゃんが覚醒しなかったら…
どうなっていたか…」
雫と風香が、ライセン大迷宮で出会った敵
罪徒のことで話しをしていく
「ええ…
正直に言うと、かなりの強敵だった…
まともにやり合ってたら、間違いなく負けていたわね…」
「そうね…」
雫は、自分の手を見つめていく
やはり、自分の武器であるアーティファクトの剣が
失われてしまった事を、気にしているのだろう、雫の天職は剣聖
剣を主体に戦う技能で構成されているので
剣を失ってしまった事は、大きなハンデになってしまう
別に冒険者として稼ぐことが出来れば
それなりに上質の剣は毛に入るので、闘う事自体に問題はない
ただ、また今度罪徒の様な強力な相手と戦うことになれば
もしかしたら、また自分の存在が足手まといになってしまうのでは
そう考えてしまう
「‥‥そういえば、罪徒のことについて報告は?」
「名前自体は伏せているわ、ただ…
あくまで以来の時に起こった出来事自体は
全部書いてる、こっちはどうせ調べられたら
分かっちゃうことだと思うし、取りあえずはそうしたわ…」
姫奈は言う
罪徒、と言う敵が現れたと報告を述べても
そう簡単には信じてもらえないと考えた姫奈は
名前自体は伏せて、未知の敵の襲撃を受けたと告げる
ただ、そこで起こったことについては
正直に報告に纏めておくことにしたのだった
こっちは逆に嘘をついたら、逆に不審がられると考えたからだ
「‥‥まあ、何にせよ…
そっちは明日の向こうの反応しだいね…
まあ、それについては明日になってから考えましょう…
問題は、次にどうするべきなのかだけど…」
「‥‥まず第一に、雫ちゃんの武器だね…
アーティファクトはさすがに無いとは思うけれど
それでも、内よりはましだと思うし、それに魔物相手なら
それで十分だと思うし…」
「ええ、お願いするわ…」
雫の武器の新調を予定に組み込む
「それで、次に向かう場所は決まってるの?」
「それなんだけどね…
実は一つ、気になる報告があったのよ…」
そういって、ある一枚の紙を一同に見せていく
「これって?」
香織が第一声に声をかけていく
「実は、私達がライセン大迷宮に行っていた間に
ハルツィナ樹海の方で、異変のようなものがあってね…
その樹海の方から、物凄い力が噴き出すように現れたらしいの…
その調査の以来の方が貼りに出されていたんだけれども…
どうにも奇妙だったのよね…」
「奇妙?
もしかして、その依頼に何か違和感が?」
風香が訪ねるが、それに大して姫奈は首を振る
「いいえ、依頼自体はただの調査依頼で特に違和感はなかったわ…
私が違和感をおぼえたのは、この依頼の話をした時の
他の冒険者や、ギルドの人達の様子がどうにもおかしくってね…」
「どうおかしかったんです?」
纏が不意に訪ねていく
「ええ…
冒険者もギルドの人達も
この依頼の話題を避けたがるのよ…」
「「「「え‥‥!?」」」」
姫奈の言葉にほかの、四人は疑問符を浮かべていく
「避けるって、そもそもギルドが出した依頼なのに…」
「ええ、ただこの町のギルドが発注したものじゃないみたいでね…
一応、ギルドがあるところはここだけじゃないしね…」
「そっか…
でもどうして、みんな
樹海の調査に行きたがらないんだろう…
調査依頼なんて、低ランクの冒険者が受けられるほど
簡単なものだと思うけれど、樹海にいる魔物ってそんなに強いのかな?」
香織が考え込むように言うと、そこに
「ハルツィナ樹海に、魔物はいませんよ」
答えていく者がいた、そのものは
ラナ・ハウリア
亜人族の中でも非力とされている、兎人族の女性である
「ハルツィナ樹海は、霧が常に出て居まして
魔物であっても、方向感覚を失ってしまいます
万が一、樹海の内部に入り込んだとしても
奥に入れば入るほど、その霧が濃くなるので
入ったらそう簡単に出ることは不可能なんです」
「つまり…
珠海の中には、なにもいないって事?」
風香がラナに訪ねていくが
「いえ、霧は実は一定周期で弱まっていく事があって
その隙をついて、魔物が入ってくることがあるんです
ただ、その時期は非常に短く、それ故に
それを把握しているのは私達亜人族だけなんです:
「亜人族だけ…?
そう言えば、イシュタルさんが言ってたわね
亜人族の国は東の樹海の中にあるんだって、なるほど…
責めるの簡単じゃないし、入ったら簡単には出られない…
守るには絶好の場所ってことね…」
ラナの言葉を聞いて、不思議と納得したような口ぶりを見せていく
「でも、本当にその樹海で一体何があったんだろう…
ライセン大迷宮であった、罪徒って人たちのこともあるし…」
香織は、不意にライセン大迷宮で激戦を繰り広げた
罪徒たちの事を思い出した、それと同時に一同は表情が暗くなる
「‥‥罪徒…
確かに手ごわい相手だった…
香織がもしも、聖徒の力に
目覚めてなかったら、もしかしたら…」
「私達の方も何にもできなかった…
結果的に二人の足を引っ張っちゃったし…
ミレディさんだって…」
雫と風香が、先の戦いでのことを口にする
「でも、私達が助かったのは紛れもなく
ミレディさんのおかげだよ、ミレディさんは私達に
全てを託してくれたんだ、それを絶対にむげには出来ない…
その為にも、他の大迷宮にもいってみないと…」
「そういえば、ハルツィナ樹海にも迷宮があるんですよね?
出来れば、迷宮の攻略にも挑戦してみましょう」
纏が不意に思い出したように言う
「そうね…
罪徒と戦っていくためには、正直に言って
今のままでは絶対に勝てない、最初に戦った
あのリュナって言う子に、一撃を与えることが出来たのだって
香織が、あの時に聖徒に覚醒していたという事を
知らなかったって言う事もあっただろうし、その証拠に
そのあとに現れたリュカや、そのあとに現れたあいつには…
全くと言っていいほど、歯が立たなかった…
理想としては、雫や風香にも聖徒として覚醒してほしいけれど
どうやって覚醒できるのかわからない以上は、ないものねだりは出来ない…
だったらせめて、神代魔法を手に入れて行かないと…」
「残る神代魔法は六つ…
ハルツィナ樹海で手に入る
神代魔法はどんなものなんでしたっけ?」
纏が確認するように言う
「‥‥えーっと…
空間魔法に生成魔法に、再生魔法、変成魔法…
あの時に聞いたのは、そのぐらいだったかしら?」
「そういえば、あの時のリュカは全員が
神代魔法を使ってはこなかったっけ…
でも、少なくともこの四つじゃないよ
だって、この四つの神代魔法はそれぞれ…
ナイズ・グリューエン…
オスカー・オルクス…
メイル・メルジーネ…
ヴァンドゥル・シュネー…
確か、こうだったはずだよ?」
風香が、姫奈が上げた神代魔法の使い手を
記憶から引っ張り出していくように上げて行く
「えーっと‥‥
残る解放者さん達は‥‥」
「ラウス・バーンとさっき上げたリューティリス・ハルツィナね…
でも、逆に言えば私達にすべての力を出すまでもないと
奴なりの手腕だったのかもしれませんね、逆に私達にはそんな力はないと…」
纏はどこか悔しげにつぶやいていく
「悩んでいてもしかたがないわ…
先ずは行ってみましょう…
亜人の国、フェアベルゲンへ…」
姫奈の言葉に、全員が頷くが
ただ一人、ラナは一人不安そうにしている
「ラナさん…」
「私達、ハウリア族は、フェアベルゲンを永久追放されました‥‥
そんな私を、フェアベルゲンが歓迎してくれるとは思いません‥‥
むしろ、そのせいでみなさんに迷惑をかけてしまう事に
なってしまうのではないのかと考えてしまいます、私達は
魔力を持たない亜人族の中でも、特に非力な兎人族です‥‥
歓迎など、してくれるはずが‥‥」
ラナは思い悩んでしまう
先のライセン大迷宮でも一番
彼女達の足を引っ張ってしまったのは
他でもない、自分自身である
ミレディとの戦いのときにも、その後の
リュナ、リュカ、更に一人現れた罪徒とに戦いなど
むしろ、自分がいたせいで窮地に陥ってしまった
ラナは、本当に彼女達と行動を共にしていいのか
離れたところで、自分には変えるところなんてない
だからと言って、このままいても
彼女達の足を引っ張って行ってしまう
いっそのこと、このまま離れてしまった方が…
そんなことを考えていると、ラナの手を優しく握られていく
「え‥‥?」
ラナは不意に、握ってきた人物の方に目を向ける
「ねえ、ラナさん…
もしかしてラナさん
自分はいなくなった方がいいって思ってる?」
その人物、香織はラナにそう尋ねていく
「だ、だって‥‥
私、皆さんの足を引っ張ってばかりで‥‥」
「そんなの、私だっておんなじだよ…
私があの時、闘えたのは
この力に目覚めたからってだけだよ…
むしろ、そうじゃなかったら、みんなの中だと
私が一番足を引っ張るんじゃないかなって思うよ…
でもね、ラナさんは今のままじゃだめだって思ってる…
それはね、ラナさんが自分は強くなりたいって
心から望んでいるからなんだって、私は思うんだ」
香織は言う
「香織さん‥‥」
「強くなりたいって思うことは間違いじゃない
でも、その気持ちに蓋をすると、絶対に後悔する…
私だって、強くなりたいって気持ちに蓋をしなかった…
だから強くなれたんだって思うよ、まああくまで私の主観だけどね…」
香織は、香織なりにラナに言葉をかけていく
さらに、そんなラナの肩に優しく叩くように手を置くものが
「強くなりたいなら強くなればいいのよ…
私も一緒に頑張るから、今は出来る限りのことをしていきましょう…」
「そうだよ
それに、なんだかんだラナさんが
居なくなったら、それはそれでさみしいし…
だから、ラナさんさえ良かったら
これからも一緒に頑張っていこうよ」
雫と風香も笑顔で言う
特に雫は、アーティファクトの剣が折れてしまった時に
仲間の足を引っ張って行ってしまう事が多かったために
ラナの気持ちが理解できるのだろう、だからこそ他人ごとに思えなかったのだ
「皆さん‥‥」
ラナは、自分の事を受け入れてくれる一同の姿に
思わず、涙の方を浮かべていき、心が温かく感じていく
「皆さん‥‥
これからも‥よろしくお願いします!」
そういって、勢いよく頭を下げていくラナに
一同は笑顔で彼女の事を受け入れていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「そういえば、私達って迷宮を攻略して
結構強くなったわけだと思うんだけれど…
姫奈たちはステータスのほう、どうしてるの?
依頼の対応で、ステータスプレートを見せてるけど
何にも云われないの?」
風香が不意に訪ねていく
「あれ?
ステータスプレートって、多少の操作は可能なのよ?
それを使って、ステータスの数字をある程度偽造しているのよ?
まさかと思うけれど、知らなかったって言わないわよね…」
四人とも目を逸らす
どうやら知らなかったようだ
「‥‥ほんと、私が対応しててよかったわよ…
ところで香織?
あんたのステータスの方はどうなのよ
一回少し、見せてもらえないかしら?」
「わかった‥‥はい…」
香織は自分のステータスプレートを渡す
そこには
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
白崎 香織 17歳 女性 レベル18
天職;聖徒(セインター)
職業;稀人
称号;智慧の聖徒
筋力;72(84600)
体力;108(126900)
耐性;90(105750)
敏捷:90(105750)
魔力;342
エーテル;401850
魔耐:342(401850)
技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・言語理解・星力魔法・聖痕解放【+聖器召喚【+光付与】】・エーテル操作【+エーテルフィールド【+エーテル放出】【+エーテル濃縮】【+空間操作】】・・エーテル回復[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費エーテル減少][+エーテル効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動][+精神統一]・白・黄属性適性【+光生成】
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
「「「「「‥‥」」」」」
香織以外の少女は、開いた口がふさがらない
「‥‥香織、あんたこのまま
誰かにこれ見せてたら、大騒ぎよ…
聞いておいてよかったわよ、まったく…」
「そ、そうかな…
あんまり自覚がなかったから…」
香織は申し訳なさそうにしていく
「まったくもう…
やり方教えてあげるから
これ、よく見てて」
「はい…」
姫奈が香織にステータスの隠蔽を教えていく
その姿はやはり、委員長であると感じる他の少女達であった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
時間は、姫奈たちがミレディの助力で
無事に大迷宮から脱出してから、しばらくたったくらいまでさかのぼる
オルクス大迷宮において、無事に六十五階層を突破したので
一時的にそれを中断して、一度地上に戻っていく事になった
その理由は、勇者一行に会いたいという申し出が王宮に出されたのである
その場所は、王国と同盟関係を結んでいるヘルシャー帝国からである
今まで、音沙汰なく、勇者一行が召喚されたというお触れを出しても
なんの反応も見せなかったかの帝国が、突如として勇者一行にお目通り願いたいと
申し付けてきたのだ
王国側からすれば、今さらなんの用だと言わんばかりだが
帝国の方も、オルクス大迷宮の最高記録を突破したと聞くと
どうやら、その実力に興味がわいたようであり
早速、王国から勇者にお目通り願いたいと申し付けてきたのだ
しかし、そんな胸中などお構いなしの人物が王城にいた
それは
「ええい、お前達!
香織はまだ見つからんのか!!」
そういって、怒鳴り散らしているのは
ランデル・S・B・ハイリヒ
金髪碧眼の美少年で、ハイリヒ王国の王子である
彼が怒鳴っているのは、王宮直属の諜報部隊であり
ランデルが独断で、彼等の事を動かしているのだ
その理由は、王国を離れて行ってしまった
香織達四人の捜索、正確には香織の捜索である
ランデルは、香織達が召喚された時に開かれた
歓迎パーティーの時に出会った香織に、ひとめぼれし
出来る事ならば、戦いに赴かせるのではなく
自分の婚約者にして、傍に置かせようと考えていたのだ
しかし、香織は想い人であったハジメの処刑によって
王国や王族に見切りをつけて、王国の方を出て行ってしまった
それを聞いたときの彼のわめきようは、まさに
王族の威厳など、まったくもって感じさせないほどの身勝手なものであった
挙句には、独断で王宮直属の諜報部隊を動かして
香織達の、正確には香織の捜索に向かわせていく始末である
「恐れながら殿下…
我々にはほかにも調べなくては
ならないことが山ほどにあるのです…
全てに殿下の命を優先させていくわけには…」
代表の者が一人、意見を述べていく
彼等とて、諜報部隊である以上は
他にも調べないとならないことがあるのだ
幾ら王子の命令とは言えども
それらすべてを優先させていく事は簡単ではない
諜報部隊は、王国の安全を知るために
王国周辺、そこで様々な情報をもって調査を行っている
だが、まだ精神的にも幼いランデルがそれを理解できているわけもなく
「やかましい!
貴様、この余に意見するとは何様のつもりなのだ!?
余り、勝手なことを口にするようならば
貴様も、貴様の家族も全員、極刑に所処すぞ!!」
「そ、そんな…
私はただ…」
「黙れ!」
そういって、ランデルが部隊の一人に手を上げようとすると
「何をしているのですか、ランデル!」
激しい激高とともに、一人の少女が介入する
「王女殿下!」
その少女の姿を見て、彼女にも控えていく諜報部隊
この少女は
リリアーナ・S・B・ハイリヒ
ハイリヒ王国の王女で、ランデルの姉である
「ランデル、貴方は一体何をやっているのですか‥‥
仮にも王国のために、動いてくれている諜報部隊を
身勝手なことで動かしていく挙句に、手を挙げようなんて‥‥
一体何を考えているのですか!」
「お言葉ですが、姉上
余はこの国の王族です、王宮に付けるものは
世のために動くことが全てで、それを完遂することが全て
それを成しえぬ愚か者など、排斥した方が王国のためなのです!」
ランデルは、姉であるリリアーナの事を睨みながら言い放つ
そこには、リリアーナの事を姉として見ている様子は全くなく
ただ疎ましい存在としか見ていない、そんな雰囲気を醸し出していた
「ですが、諜報部隊は我ら王国のために
必要な情報を集めていく事が仕事なのです!
それを、王族の身勝手で振り回しては
万が一、この国に危機が訪れたときに対処が出来なくなります!!」
「ええ、その通りです
しかし、これもまた王国のために必要な事‥‥
我らの元を抜け出した、神の使徒を連れ戻し
王国に害悪を齎さぬように、我々のもとで保護する
それとてりっぱな事です!」
ランデルは、それらしいことを述べているが
リリアーナはそれが、あくまで自分を正当化するために
それらしい理由を、ただ述べているだけにすぎないと理解している
「香織達が王国を去ったのは、あくまで我々のもとに残る以外の選択をしただけです!
彼らの教育がかりであるメルド団長も、それを了承したことは
ランデル、貴方だって聞いていたではないですか、それなのにどうして‥‥」
「一介の騎士団長の決定等、どうでもいいこと!
余が認めて居なければ、了承していないのと同じ
それならば、勝手なことをしたもの達を連れ戻すのは正当な行いよ」
ランデルは、バッサリと言い放つ
「ランデル、貴方‥‥」
「言っておきますが、父上と母上も余の意見を尊重してくださった‥‥
よって香織を連れ戻すのは当然の行い、よってこのもの達は
その命を果たさなくてはならないのです、それから姉上、余はむしろ
あなたの方が王族として、ふさわしくないことをしているのではないですか?」
「え‥‥!?」
ランデルは、むしろ非があるのはリリアーナの方ではないのかと言い放つ
「あなたは王女だ、王女である貴方は
我らの同盟国であるヘルシャー帝国の皇太子との仲を深め
我等と帝国との関係を盤石なものにしなくてはならない
聞いたところによると、最近は
皇太子の誘いを無下にしているそうではないですか!」
「無下になど、していません!
私はむしろ、王国を背負う王族として
しっかりと同じ目線に立って話しをして‥‥」
すると、リリアーナの頬に衝撃が走る
ランデルがリリアーナの頬を殴ったのだ
「‥‥王国を背負う王族?
何をうぬぼれたことを口にしている‥‥
貴様など所詮は、我らの政略のために
その身を捧げていく事しか役に立たぬ者‥‥
そんなものが王国を背負うなどと、軽々しく口にするな!」
「ランデル‥‥」
叩かれた頬を、抑えながらリリアーナは
悲し気な表情で、ランデルの事を見つめている
「神の使徒である勇者一行の中に居た裏切り者を
のさばらせていた挙句に、その後の混乱すらも抑えられない‥‥
このような失態を続けざまに犯した結果
余が、彼等をうごかすことになったのです‥‥
つまりは、彼等が余計な仕事をする羽目になったのは
姉上、いいやリリアーナ、貴様に原因があるのだ、そんな貴様に
余のやり方に、軽々しく口に出していいはずがないであろう!
勇者一行のことすらも、まともにつなぎとめらえぬ、貴様は‥‥
政略の道具としてふるまう他に、一体何が出来るというのだ!」
ランデルの言い草に、リリアーナは大きくショックを受けていく
「‥‥引き続き、香織の捜索を続けろ!
それが何よりも最優先である、わかったら行け‥‥
これは、王命である!!」
そういって、虫が悪そうにしてその部屋から出ていくランデル
「ランデル‥‥
あなたは変わってしまった‥‥」
リリアーナは、そう呟いて首を小さく横に振っていく
「り、リリアーナ殿下…」
それを見ていた、諜報部隊の者達は
心配そうに、彼女の方を見ていくが
リリアーナは、そのまま何もかも
振り切っていくようにその場から走り去って行ってしまった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
それから、三日くらいして
「…‥何ですって!?
ヘルシャー帝国から使いの者が!?」
自室において、リリアーナは
自身の直属であるメイドである
ヘリ―ナ・アシエ
彼女から、帝国の使いの者が
王国に来訪してきたという報告を受けた
「はい…
どうやら、勇者様一行が
オルクス大迷宮の最高記録と
突破した事を聞いて、ぜひとも
お目通りを願いたいと、王国側にお達しが…」
「それで、それに対して何と?」
リリアーナは、おそるおそる訪ねていく
「ええ、帝国は一応は同盟国で
軍事力の方では、王国よりも上ですから…
余り、それを無視するのは得策ではないよ
考えたので、それでその申し出に、応じた様で…」
「そうですか‥‥
それにしても、どうして
勇者様のもとにお目通りしたいなどと‥‥
どうにも、気になりますね‥‥」
リリアーナは、どういう風の吹き回しなのかと考える
これまでずっと勇者の事については知らぬ存ぜぬを貫いていた
帝国が、どうしていきなり、勇者へのお目通りを申請したのか
「…‥ヘリーナ、クゼリーに伝えてください‥‥
彼女の方に、様子をみてもらう事にしましょう」
「わかりました、それではさっそく…」
そういって、部屋の方を後にしていくヘリーナ
彼女は、不意に自室の窓の方に目を向けていく
「…‥あなたがいなくなってから
私のみに降りかかるのは、悪いことのみ‥‥
あのパーティーの時に、ほんの少しだけ
あなたと過ごすことが出来たあの時間だけが‥‥
私が感じた、楽しい時間でした‥‥」
物思いにふけっていくように呟くリリアーナ
そんな彼女の記憶に、よみがえるのは
勇者と共に召喚された、ある一人の少年
彼と話す機会はほとんどなかったが
それでも、彼に向かって言いたいことが言えたのは
不思議と、楽しいと感じることが出来た瞬間であった
やがて、時間の合間を見つけては
彼と本音で話しをしていき、とても有意義だった
しかし、彼はある時、冤罪を掛けられて
彼と仲の良かった少女とともに炎の中に消えていった
それ以来、リリアーナの中ではすでに
教会や国王である父のことも、王妃の母のことも
すでに見限っている、弟であるランデルもあのざまである
もう、リリアーナの中で王国への思いは薄れていっていた
「願うならば、もう一度‥‥
あなたとお話をしたいです‥‥
ハジメさん‥‥」
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
勇者一行は、帝国の使いの者と面通しのために
一度、王城に戻ってきていた
謁見の間において、五人ほどの人物
この人物たちこそが、帝国からの使者である
そのうちの一人は、フードを深くかぶっており
目元を覆い、他の四人と同じように控えていた
彼等と向かい合っているのが、ハイリヒ王国の国王
エリヒド・S・B・ハイリヒ
その横には、王国の重鎮やイシュタル達司祭数人
その中には、迷宮攻略に進んでいる面々もおり
その中には、一同のリーダーであり勇者である
天之河 光輝
彼の姿もあった
「よくぞいらっしゃった、帝国の使者の皆さま
こころより、歓迎いたしましょう」
「こちらこそ、急な要望を聞き入れて下さり
心より感謝申し上げます、それでそちらにいらっしゃるのが
勇者一行の皆さま、という事でよろしいでしょうか?」
前に出ている、使者が光輝たち面々の方に目を向けていく
「ええ、こちらにいらっしゃる方が
我ら人類を救うために、エヒト様が呼び寄せになられた
勇者様と、その一行にございます
そして、こちらが‥‥」
エリヒド国王が、そこまで言うと
何を言おうとしているのかを察した光輝が前に出ていく
「天之河 光輝です…
本日は、僕ごときのために
遠い所からお越しいただいてありがとうございます」
そういって、丁寧に挨拶をしていく
彼は、ここまでの迷宮探索において
最初に比べると面構えがよくなっている
恐らく、光輝に想いを寄せている女性たちが
今の彼を見れば、桃色の声援を上げる事だろう
それほどまでに成長をとげているようであった
「ほほう、貴方様が‥
見たところ随分とお若いですが‥
本当に、あの最強と言われている冒険者でさえも
歯が立たなかったとされている、あのベヒモスを倒されたので?
主観ではありますが、そうは見えませんが‥?」
そういって、光輝の方をまじまじと見ていく使者の人物
「えーっと、そうですね…
よければお話の方を聞かせましょうか?
それとも、六十五階層のマッピングを…」
対する光輝は、どこか居心地の悪さを感じたのか
疑っていく使者の方に、どうにか証明の方を提示していく
「‥ほほう、それはぜひともお聞かせ願いたい‥」
使者はうまく食いついていき、光輝はそれを見て
話しの方をしていく、ここに来るまでの道中で何があって
どのようなことがあったのか、六十五階層のマップを
見せながらかいつまんで話していき、光輝なりに武勇を語っていく
「…‥とここまでが、今までの道のりです…
これで、御納得いただけましたでしょうか?」
光輝は、どこか期待を込めた目で見つめながら聞いていった
すると
「ほほう、なるほどなるほど…
実に素晴らしいこと、勇者様も勇者様のお仲間も
なかなかにお強い、話の筋をお聞きすればするほど
なんとも麗しい…」
「ありがとうございます」
使者の者がそういって、光輝たちの道筋を高く評価していく
光輝も、他の勇者パーティーの面々もまんざらではない様子を見せていく
「ええ、実に素晴らしいのですが‥
少し腑に落ちない部分が一つ‥」
使者の声色が少し変わっていく
「‥確かに皆さまはお強い、並みの冒険者では
なかなかに歯が立たないとは思うでしょう、しかし‥
ハッキリ申し上げて、教会がどうして勇者殿を推していくのかが
はなはだ疑問に感じます、勇者達一行を推すのならば納得ですが‥
勇者様お一人を推すにしては、どうしても特別勘と言うものが感じられません」
「ま、待ってください!
俺は勇者としてみんなを
この国を引っ張っていくために必要で…」
光輝が少し、弁明していくように言う
「確かに勇者どの‥
あなたには周りを引っ張っていく魅力があるし
実力のほどもありますが、はっきり申し上げて‥
そのくらいならば、この国にも該当する者はいます‥
ハッキリ申し上げます、貴方様の実力は
教会が推すにしては、余りにも惹かれるものはありません」
使者が光輝にさらにボロクソかけていく
「恐れながら、使者殿……
こちらの勇者様はまだ、訓練を始められて
数カ月しかたっていおりません、むしろこの数カ月で
ここまでの結果を残せたことは、評価するに値するものだと考えます」
「確かに、教皇殿の言う通りです‥
ですが、それはあくまで勇者殿の力ではなく
勇者殿たち全員の実力によるもの、それに聞いたところ‥
どうやら、勇者パーティーの面々によって
それに、ばらつきがある様子、多少は問題はないでしょうが‥
余りにも大きいと、本格的な闘いになると
帰って味方を窮地に陥らせてしまう事になりますが‥」
「で、ですが…
もしそうなったとしても、その時は
俺がみんなの事を守って見せます!」
光輝は、言い切っていく
「‥ほう、言いますね‥
勇者殿、貴方には実力はあるのは理解しますが‥
果たして、それを実行できるほどの力があるのかどうか‥」
使者はゆっくりと立ち上がりながら言う
すると
「それでしたら、失礼ですが…
俺と模擬戦をしていただけませんか
直接、実力を見ていただければ俺の言っていることが
決して、口だけではないという事、わかってもらえると思います!」
光輝がそう宣言をしていく
「‥随分と浅はかですね‥
私はこれでも、帝国の使者です
帝国を代表して、こちらに来ています‥
万が一、それで私の身に何かが起こり
王国と帝国の同盟に傷が付いたら、どうなるか‥
あなたは、そのことをわかってて発言しているのですか?」
「そ、それは…」
使者にそういわれて、光輝は思わず身じろいた
自分の軽はずみな行動のせいで、帝国と王国の関係に
傷がついてしまったらどうするのか、そのことを念頭にいれていなかった
返答に困り、言葉を詰まらせる光輝
しかし
「それについては、我々が責任を負いましょう
勇者殿の実力について、疑問をもったまま
帝国に帰してしまうほうが、それこそ関係に影響を与えるかもしれぬからな‥‥」
「私もかまいません、勇者様は我等人類の、この世界の希望……
それがいかなるほどのものかを知って
いただくために、ぜひとも勇者殿の提案を推奨致しましょう」
エリヒドとイシュタルは光輝の提案を推していくように告げていく
「‥やれやれ、国王陛下に教皇殿まで提案をされては
それを無下にするのは、逆に失礼に当たってしまいますね‥
いいでしょう、むしろ話しを聞くよりはその方が私としても
勇者殿の実力を推し測る事が出来て、色々と面倒でなくていい‥
いいでしょう、勇者殿のご提案‥受けて差し上げましょう‥」
そういって、使者は光輝の申し出を、受けることにしたのだった
「ありがとうございます!」
光輝がそういって、お礼を述べていき
早速、準備の方が進められていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
戦闘訓練でよく使う広場において
先ほどまで、謁見の間にいたもの達の内
王族や貴族、その関係者
教皇や司祭の者達は観覧席にて様子を見つめている
一方で、試合の審判と判定を下すために
メルド率いる騎士団は、会場の方にいた
光輝も対戦相手の方も、互いに向きあうようにして
互いに腰に、刃引きされた模擬戦用の剣を差していた
光輝は剣を抜いて、それを構えていくが
対する対戦相手の方は、剣を抜くどころか
構えすらも行おうとはしていない、まるでさっさと
こんな茶番を終わらせてしまいたい、そんな態度である
光輝はそんな相手の姿に、内心怒りを感じていた
自分は世界を救うためにこの世界に召喚された勇者なのに
幾らなんでも、油断をし過ぎであると、だったらここでその態度を
崩して、自分の実力をわからせてやろうと、そう思って剣を握る手を強めて行く
「それではいざ、尋常に‥
始め!」
騎士団の者のその言葉とともに、模擬戦が開始された
「はあああああ!!!」
光輝は出だしから、いきなり技を繰り出す
疾風のごとく繰り出したその素早い足運びで
目の前にいる相手に向かって、勢いよく斬りかかり
その剣をふるい、相手に一撃を加えていく
はずだった
「…‥え!?」
剣は空を斬った、いいや正確には斬った
斬ったはずだったのに、そこに相手の姿はなかった
「‥どうしました?
そこに私は、いませんよ?」
そういって、後ろの方に回っていく対戦相手
光輝はそれを確認して、素早く剣を振りぬいていく
しかし、これもまた空振り
「悪くはありません、大した動きですよ‥
ですが、問題は貴方の方ですよ、勇者殿」
「っ!
はあああああ!!!」
光輝は再び、剣をふるって攻撃を仕掛けていく
常人ならば眼で追うのも簡単ではないその素早さ
しかし
「速いだけでは、攻撃は当たりませんよ」
「っ!」
パワーでもスピードでもだめ、それならばと
「あまり、避けてばかりでは芸がありませんね‥
いいでしょう、ここからは手を出させてもらいますよ」
相手の方も、光輝の雰囲気が変わったのを察したのか
武器である剣をここでようやく抜いていき、その切っ先を光輝に向ける
光輝はやっとその気になったかと、むしろ喜びをあらわにして
自分が劣勢なのにも関わらずに、なぜだかやる気の方を見せていく
「来い!」
光輝は、パワーでもスピードでもダメだと考え
それならば技術の方で勝負をしようと、攻撃を仕掛けていく
向こうの世界でも剣道を習い、全国レベルの腕前を持っている光輝
さらにそれに加えて、この世界で培ってきた技術も組み合わせていき
今度こそと、一撃を加えんとしていく
そして剣を構えて、相手の方を見ていく
「それでは、遠慮なく‥‥」
そういって、持っていた剣を構えて
光輝の方に向かって駆けだしていく相手
だが、それが光輝の狙いだった
光輝は、向かってくる相手の動きを見切り
それをうまく利用して、相手に一撃を見舞う
言うならば、カウンターである
光輝は、まさに自分に向ってくる相手に向かって
剣を大きく振り上げて、相手に向かって振るっていき
その一撃は強い直撃とともに、見事に決まった
これには、試合を見ていたもの達も
おおっ、っと感服の声を上げた、誰もが思った
勇者が勝ったと、光輝も当然
自分が勝ったのだと信じて疑わなかった
疑わなかった、はずだった
「ぶふぇ!?」
そんな光輝の脳天に向かって
ものすごい衝撃が加えられていき
そのまま、意識を刈り取ってしまった
「‥ダメですよ、勇者殿‥
とどめを刺せたと思った瞬間が一番、油断や慢心が生まれる
それが理解できていないなんて、やはりまだまだですね」
そういって、立っていたのは先ほど
光輝が一撃を与えたと思った対戦相手であった
「はい、これで試合終了‥
騎士団の皆さん、後はお願いします」
「あ、はい‥」
そう言われて、気絶している光輝を運び出ししていく
しかし、騎士団の対応が少し遅れたのも無理はない
何しろ、誰もがあの時、光輝が見事に一撃を与えたのだと
騎士団は思っていたからだ、騎士団だけではない
王国の重鎮たちも教会の司祭たちも、クラスメートも
誰もが、光輝の勝利に間違いないと思っていたからである
「‥やれやれ‥こんなのが勇者で
人類の希望だと推しているのなら‥
人間族の未来は、なんとも真っ暗ですな‥
身体面はともかく、精神面はダメ‥
これでは、いざという時に強い決断を下せません‥
彼がもしも、指揮官としておいていくのなら、ね‥」
使者はそういって、その場を後にしようとすると
その使者の前に、騎士団とは別の甲冑を纏ったもの達が立ち塞がる
「‥これは一体、何の真似かな?」
「貴様、勇者様に対しての様々な無礼‥
もはや見過ごせはせんぞ!」
そういって、使者に槍を向けていく神殿騎士たち
「無礼って、私は思ったことを口にしただけですよ
これから我々が行くのは戦争なのですよ、生き死にのやり合い
死ぬかもしれないではなく、下手をしたら死ぬのです
それなのに、相手を見極めなくては
勇者が無能で、その無能のために死ぬなんて言うのは‥
我々はごめんですので‥」
「勇者様は、エヒト様が召喚された
我等、人間族の救世主なのだぞ!
それを貴様程度の見分で推し測るなど‥
身の程をわきまえろ!」
騎士の一人がそう怒鳴る
「‥やはり、くだらないな‥」
「なんだと?」
使者はため息をつくと、続けて言う
「くだらないと言ったのですよ
あんた達も、教会も、この王国も‥
ハッキリ申し上げますが、我々は
この国のためにもエヒトのためにも命を懸けるつもりは‥
毛頭ない!
勇者殿にそれだけの力があるというのなら
今後の行動でそれを示してごらんなさい、それが
できた暁には、喜んでこの命をエヒト様のために捧げますよ?」
使者は、騎士たちの耳元に囁くように呟いていく
「きさまぁ!
エヒト様まで、侮辱するか!!」
神殿騎士は、その使者に向かって
剣をふるって、切り付けていった
しかし
「‥え!?」
しかし、そこに使者の姿はなく、神殿騎士は
気が付いたら、一人を除いて全員が倒れていた
「やれやれ‥
こんな程度で、斬りにかかるなんて
なんとも器が知れます、これならばまだ
私の言葉を聞き入れた王国の騎士団の方がましですよ‥
まあいいでしょう、今回はわざわざ時間を作ってくださった
教皇様の顔を立てる為に、彼等の行いについて謝罪しましょう‥
それでは引き続き、勇者様にはご検討のほどと、お伝えくださいね‥」
「ま、待て!」
その残った一人が、斬りかかっていく
だが、それを止めた者が
「なにしてるんですか?
後ろから、いきなり斬りかかっていくとは
仮にも騎士たるものが行う者ではありませんよ」
それは、その手に三日月状に曲がった
大鎌を持った使者の一人が、その鎌を使って止めていく
「き、貴様‥
我らに刃を向けるか‥」
「先に仕掛けてきたのは、そちらではないですか‥
自分の行いすらも、理解できぬとは
憤りを通り越して、呆れて果ててしまいますね‥
とにかく、我々は戻らせていただきますよ
今日はいきなり模擬戦をやらされて、大変だったんですから」
そういって、鎌を使って騎士を推し
そのまま、尻もちをつかせて転ばせた
「このぉ‥」
「いい加減にしてください!
こちらも貴方達の都合を聞いたんです
だったらそちらも我々の都合に合わせてもらう番です‥‥
それとも、未熟な勇者殿に軍事力では
我々帝国に劣る王国の指揮を取らせ、我々
帝国に攻め入るおつもりですか?
言っておきますが、教会が加わったところで無駄ですよ
向かってくるのならば誰であろうとも、全力で叩きつぶす‥
それが、我々の流儀ですから‥」
フードから、あふれ出ていくオータに
騎士の者も、その場にいる者も皆、畏縮していく
フードの人物たちは、そのままその場を後にするのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
帝国の使者の二人が、誰もいない場所を歩いていると
「‥それにしても、本当に見ていて
気分の悪いものでしたね、そこが知れます‥‥
神だか何だか知りませんが、そんなもので
私達を抑え込もうだなんて、なんとも考えが浅い‥‥」
そういって、フードを脱いでいく使者
その頭部には、兎の耳の様なものが生えている
「まいじゃないー
マスタから言われた役目は
しかりと果たしてきたんだからー
それに、噂の勇者君の実力も測れたし
今回はこれで十分とゆ事にしておこよー
シアちん」
そう言って、光輝と模擬戦をしていた使者の顔が
段々と真っ黒に変わって、右側に流れるようにして
その形を変えていき、別の顔の方に変わっていった
赤と青のオッドアイ、紫と橙で真ん中に分かれているロングヘアー
さらにその衣服は、瞳とは左右非対称で、赤と青で分かれていた
色欲と肉欲の王
マヌエラ
それに対して、彼女に話しているのは
狂長と幸福の罪徒
シア・ハウリア
元兎人族で、罪徒に覚醒した少女である
「しかし、マヌエラさんも大胆ですね
あんな風に、やっていたら
教会も黙ってはいませんよ?」
「そだね‥‥
でも、別に教会や王国くらいなら
攻めてきたとしても、問題はないよー
ただ、一番気がかりなのは
奴らが崇めている奴の方だねー」
マヌエラは言う
「‥エヒト、ですか?
まあ、ここまでの事をやったのに
何の音沙汰もないのは、気になりますけれど‥‥
まあいいんじゃないですか?
エヒトが誰を差し向けようとも、そんなことは‥‥」
「‥‥そだね‥‥
それじゃあ、シアちんは
先に帝国に戻ててくれるー?
私はねー、ここであっておく人が
いるから、その人に会いに行てくるー」
「あっておく人?
こんなところに知り合いなんているんですか?」
シアは首を傾げながら、問う
「そうだねー
でも、もしかしたら
シアさん達のお友達を
増やすことが出来るかもしれないよー?」
マヌエラは、そういって
背中から翼を広げて、そのまま飛び去ってしまった
「私の‥お友達‥‥?
まさか、こんなところに
ハジメさんの助けになるような人が?」
シアは、信じられないといった具合に呟いていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
それから、しばらくして
「…‥う、ううううう…」
模擬戦からしばらくして
気を失っていた光輝は、瞼を揺らして
そのまま、目をゆっくりとあけていった
その時、一番に目に映ったのは
「光輝君!
良かった、目を覚ましたんだね!!」
中村 恵理
光輝がリーダーを務めている
勇者パーティーに所属する少女であり
降霊術師の天職を持つ少女である
「恵理…‥俺は一体‥
そうだ試合、試合は!?」
「‥‥終わったよ、もちろん光輝君の負けでね‥」
自分がまけた、それを聞いて光輝は
それが信じられないという顔をしていく
「そんな、そんな事…
そうだもう一度、もう一度試合を!」
「何度挑んだっておんなじだよ、それに
光輝君が気を失っている間に使者の人達は帰ったから
どっちにしたって無理なんだよ」
恵理がそう伝えていく
「そんな、俺は負けない、負けるわけには…
俺は勇者で、この世界を守るために戦う…」
「光輝君、落ち着きなよ!
焦ったって結果は変わらないよ
今は現実を受け入れて、もう一度‥」
恵理が光輝に言葉を投げかけていく、しかし
「うるさい!」
「きゃ!」
思わず差し出された恵理の手を乱暴に払っていく光輝
「俺は勇者だ…‥救世主なんだ…
こんなところで待っているわけには…」
そういって、ブツブツと呪詛のように呟いていく光輝
「光輝君‥」
余りにも見て居られない状態の光輝に寄り添っていく
「光輝君、負けることは恥ずかしいことじゃないよ
むしろ、負けることでしか得られないものがある
だから今はゆっくり休んで、休んで体を休めたら
もう一回訓練をやって、強くなっていこうよ、そしたら
きっと今度は光輝が勝てる、僕だって一緒に頑張るから‥‥ね?」
「恵理…」
恵理の優しさに、思わずその言葉に甘えてしまう光輝
「‥‥大丈夫だよ、例え光輝君がどんな風になっても‥
僕はいつだって、光輝君の傍にいるから」
そういって、光輝をなだめていく恵理
それに対する光輝は
「(待っててくれ香織、雫…
俺は絶対に強くなって
この世界を救い、二人を迎えに行く…
俺はもう二度と、負けたりなんかしない…)」
光輝の心には、自分の元から離れていった
幼馴染の二人、その姿しか見えていなかったのであった
光輝の身に起こった、この出来事が
彼や彼に付き従うクラスメイト達の命運を左右すること
光輝や恵理、当然他のクラスメートたちもまだ知らないのであった
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
-
原罪(スルー推奨)
-
傲慢
-
虚飾
-
嫉妬
-
憤怒
-
怠惰
-
憂鬱
-
暴食
-
色欲