世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:OOSPH

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1-1 est originale peccatum Anfang
Ad alium se orbem terrarum Beschworene Personen


辺りが光に包まれて行く中

暫くして何やらどよめきのような気配を感じた一人の女子生徒

 

白崎 香織

 

彼女はゆっくりと目を開けるとそこに映ったのは

どう見ても教室ではない気味の悪いほどに絢爛豪華な装飾の為された一室であった

 

「ここは‥‥いったいどこ…?」

 

辺りを見回していく香織

そこには自分のように状況が飲み込めず

動揺している様子のクラスメートの姿があった

 

暫く見回していると

 

「香織、無事!?」

 

自分に声をかけていく三人の少女達が駆けつけてきた

 

「雫ちゃん、姫奈ちゃん、風香ちゃん!」

 

「香織、よかった…

 

 どうやら全員いるみたいね」

 

親友の無事を知って安堵の様子を浮かべるのは

黒い長髪をポニーテールにまとめている女子生徒

 

八重樫 雫

 

 

「ええ、それにしてもここは一体どこかのかしら…

 

 私たちさっきまで教室にいたはずなのに…」

 

香織の無事を確認しつつも状況をどうにか確認していく女子生徒

 

南野 姫奈

 

 

「まさか、誘拐とそう言うんじゃないよね…

 

 ちょっと不安になってきたかも…」

 

そう言って顔見知りに出会えて少し安堵の様子を浮かべたが

得体のしれない周りの景色にやはり不安を隠しきれない一人の女子生徒

 

西宮 風香

 

 

四人はしばらく辺りを見回している

香織は不意にもう一人の人物の安否を確認しようとする

 

そして、他のクラスメートよりやや離れた場所にいる二人の男女

香織はその内の男子生徒の方を見て、安心した様子を見せていく

 

「…こ、ここは一体…!?」

 

その男子生徒

 

南雲 ハジメ

 

 

彼もまた他のクラスメート同様に混乱している様子を見せる彼

 

「南雲君、無事かい!?」

 

そう言って彼に駆け寄っていく女子生徒

 

東雲 渚沙

 

 

彼女は彼の無事を確認して安どのため息を付く

 

「…な、何とか…

 

 それにしてもここは一体…」

 

「私にもわからないが…

 

 少なくともただ事ではないことは確かだろうね…」

 

そう言って辺りを見回していく二人、しばらくすると

自分達のもとに歩みよっていく足音が聞こえ、それらは

ゆっくりと彼等の前に三十人近くの人物が姿を現し、さらに

一同のもとにその中でも恐らく位の高いであろう人物が前に出てくる

 

「勇者様、そしてご同胞の皆様、ようこそトータスへ

 

 私は聖教協会において教皇の地位についております

 イシュタル・ランゴバルドと申します、よろしくお見知りおきを

 

 皆様への歓迎の準備は整っております、ご案内いたしますのでどうぞこちらに‥‥‥」

 

イシュタル・ランゴバルド

 

そう名乗った老人は一同に深々と頭を下げ

事情を説明するために場所を変えて話をしたいと一同を案内していった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

案内された部屋はいくつもの

長いテーブルと椅子が用意された部屋に案内される

 

全員の席順はそれぞれのカーストの順番に

さらには、仲のいいもの同士で構成されていく

 

香織と雫は姫奈と風香と同じグループに

光輝は香織を誘おうとしていたが恵里に止められ

 

光輝は恵里と、彼女の親友である女子生徒

 

谷村 鈴

 

 

光輝の幼馴染で親友でもある

 

坂上 龍太郎

 

 

この四人で座ることになった

 

一方でハジメの方は自然と後ろの方になってしまい

誰とも仲良くすることなく、最後尾の列の方に座っていくと

 

彼の隣の席に渚沙が座り込んだ

 

「騒がしいのは苦手だからね…

 

 失礼かもしれないが隣、座らせてもらうよ」

 

「うん…」

 

渚沙の様な美少女が隣に座られても特に何の反応もない

だからと言って別に嫌がるわけでもなく、彼女が隣に座る事を了承する

 

やがて、全員が座ったのと

ほぼ同時に給仕のメイドが入室し全員に飲み物を行き渡らせていく

 

その給仕のメイドは全員が若く整った顔つきであるために

男子のほとんどが年相応にメイドたちを凝視している、そして

 

そんな男子たちを見詰める女子の視線は冷たいものであった

 

そんな様子を後ろの方から見つめている渚沙とハジメ

 

「ハニートラップだな…

 

 どうしても、私たちをここから

 出さないようにするのが狙いらしいな…」

 

「そうだね…」

 

冷静に状況を分析している渚沙だが

ハジメの表情はどこか虚ろな様子であった

 

そんな彼を心配そうに見つめる香織の視線に

渚沙は気づいていたが、当人であるハジメは興味すらもわかないようだ

 

「‥‥さて、飲み物は行き渡ったでしょうか

 

 あなた方に置かれましてはさぞ混乱されている事でしょう

 

 一から説明させていただきますので、まずは話をお聞きください」

 

そう言って全員に飲み物が行き渡ったと同時にイシュタルが説明をしていく

 

「ここは貴方方がいた世界とは異なる世界、トータス‥‥‥

 

 我々人間族は何百年以上も前よりある種族と

 戦争を続けております、それはこの世界の南一帯を支配する、魔人族‥‥‥

 

 ここ数十年は特に大きな争いに発展することは

 無かったのですが、近年ある異常事態により人間族は追いつめられています‥‥‥

 

 もはや滅びるだけだった我々の元に我らが偉大なる創造神、エヒト様‥‥‥

 

 我が人間族が崇めし唯一神様がある日、我々に救いをもたらすために

 この世界よりも上位の世界より召喚されし勇者をこの世界に召喚していただけると‥‥‥

 

 それが皆様なのです‥‥‥」

 

イシュタルがそう言って一同の方を見て高らかに言う

 

「お願いいたします‥‥‥

 

 どうか我等人間族を救うために

 皆様の力を我々に貸していただけますか」

 

そう言って胸に手を当てて、頭をゆっくりと下げてお願いをする

 

しかし、それに抗議をする者がいる

 

「ふざけないでください!

 

 一体何の冗談ですか!?

 

 どっきりにしても度が過ぎますよ!!

 

 そもそも学校側の許可はとったのですか!?

 

 とっていないのならこれはただの誘拐ですよ!?

 

 早く私たちを返してください!!!」

 

畑山 愛子

 

召喚された際に教室にいたので

ともに召喚されてしまったようだ

 

しかし、そんな彼女の様子を見ていた生徒たちは

 

ーああ、また愛ちゃん先生が頑張ってるー

 

そんな風にちょっぴり和んでいる様子を見せていた

 

「…‥むう、困りましたな‥‥‥

 

 でしたら少々、外の空気を吸いに行きましょうか?」

 

イシュタルがそう言うとまたも案内を促されて

一同は恐る恐るイシュタルの後をついていく事になった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「イシュタルさん

 

 一つ、聞いてもいいですか?」

 

そう言って率先していくイシュタルに尋ねるのは一人の男子生徒

 

天之河 光輝

 

彼がそう言うとイシュタルは、何ですかなと受けごたえする

 

「先ほど、魔人族と戦争をしていると言っていましたが…

 

 その…‥魔人族以外に人間以外の人種がいるのですか?」

 

「おや

 

 あなたは私の言う事を信じて頂けるのですか?」

 

ほっほと微笑みながら話していくイシュタル

 

「…‥正直、信じられないという気持ちが強いです…

 

 しかし、この状況から考えて信じるしかないと思っています…」

 

「…‥いいでしょう

 

 それでは門につくまでの間に出来るだけ話をしていきましょう」

 

イシュタルの話によると

このトータスには大きく分けて三つの種族が存在する

 

北側の一帯を治めているのが、人間族

 

南側の一帯を支配しているのが、魔人族

 

上記二つの種族の大まかな関係は

先程説明された、それ以外の種族は

 

東側の巨大な樹海で過ごしている、亜人族

 

彼等は基本、自分達のいる樹海の中から出てくることは無いため

イシュタル自身はあまり気にしなくていいとやや綺麗に伝えていく

 

やがて、亜人族に関して簡単な説明をしていくと

 

「‥‥さて、つきましたぞ

 

 あとは貴方方の目で見て確認してくだされ」

 

そう言って門の前に立つと門がなんと自動的に開かれ

向こう側の景色が見えていく、そこに映ったのは自分達の

良く知っている景色とは全く別の景色を見て一同は固まる

 

「‥‥山の…上‥‥…?

 

 そんな‥‥それじゃ本当に…」

 

「信じていただけましたかな?」

 

これはどっきりでも誘拐でもない

ここは本当に異世界なのだと認識させられ

 

愛子先生はその場にへたり込んでしまった

 

生徒たちの方も愛子先生程ではないが

それなりに驚いている様子を見せていく

 

すると

 

「あの…」

 

そんな中、手を上げて質問をしていく生徒がいる

 

「私たちを召喚できたのなら…

 

 その逆はできませんか?」

 

その生徒、渚沙がそれを尋ねると

他の生徒達から質疑応答の嵐がイシュタルに投げかけられていく

 

「そ、そうだよ!

 

 喚べたんたら返せるはずだろ!?」

 

しかし、そんな生徒たちの問答にイシュタルは冷淡に答える

 

「皆さまのお気持ちは察します

 

 しかし‥‥皆様を元の世界に戻すことは私達には不可能です」

 

それを聞いて周りの者達から血の気が引いていくのを感じる

 

「どうしてですか‥‥召ぶことが

 出来たのなら返す事だって出来るでしょう…?」

 

「最初に言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です

 

 我々があの場にいたのは皆様を

 出迎えるためと、エヒト様への祈りを捧げるため

 

 我々には異なる世界に

 干渉するような魔法は使えません故

 

 皆様が元の世界に戻ることが出来るか

 どうかも、エヒト様のご意思次第と言う事ですな」

 

「そ、そんな…」

 

そう言ってその場にへたり込んでいく愛子先生

 

それと同時に生徒たちの方からもざわめきが聞こえていく

 

「ああ!?

 

 嘘だろ!?

 

 帰れないって何だよ!」

 

「な‥

 

 そんなの嫌よ!

 

 なんでもいいから返してよ!!」

 

「ふざけんな!

 

 戦争だのなんだのなんて冗談じゃねえ!!」

 

「なんで…なんでよ…

 

 私たちを返してよ!」

 

そう言って段々とパニックに陥られて行く一同

 

すると、そんな生徒たちに

呼びかけるように一人の男子生徒が声をあげていく

 

「みんな、ここでイシュタルさんを責めても意味がない!

 

 彼にだってどうしようもないんだ

 

 …‥俺は、俺は闘おうと思う

 この世界の人々が苦しんでいるんだと知って

 それを放っておくなんて俺にはできない、それに…

 

 俺たちがここに召喚されたのはこの世界の人達の危機を救うため…

 

 だったら、この世界の人達のために戦えば

 もしかしたら元の世界にかえしてくれるかもしれない…

 

 そうですよね、イシュタルさん!」

 

「…‥そうですな、エヒト様も

 我らをを救ってくれようとする皆様の願いを無下にはしないでしょう」

 

「だったら俺は…‥戦う

 

 それがこの世界に俺が召喚された理由なら…

 

 俺のやるべきことが、それしかないというのなら…

 

 俺は戦う、この世界の人々を救い、みんなとともに

 元の世界に帰れるように、俺が世界も皆も守るために…

 

 俺は戦います!」

 

光輝が一同にも聞こえるように高らかに声をあげていく

彼のリーダーシップとカリスマがいかんなく発揮されて行き

それまで後ろ向きだった他のクラスメートの表情に光がともっていく

 

すると

 

「へへっ、お前ならやっぱそういうと思ったぜ

 

 だったら俺もやる、お前一人にだけやらせるかよ」

 

「龍太郎…」

 

「ぼ、僕も、光輝君がやるって言うなら僕もやるよ」

 

「恵里…」

 

「わ、私も、エリリンがやるならやってみる‥」

 

「鈴‥」

 

光輝の親友であるがっしりとした大柄な男子生徒

 

坂上 龍太郎

 

 

光輝に思いを寄せる七大天使に連なる少女

 

中村 恵里

 

 

その恵里の親友であり

クラスのムードメーカー的な存在の女子生徒

 

谷口 鈴

 

 

彼女達が賛同するのと同時に

クラスメートの方から次々と声をあげていく

 

その傍らで愛子先生は、だめですよと

涙目になりながらあたふたしていたのだった

 

「(‥‥どうしよう…)」

 

クラスメイト達が次々と名乗りを上げていく中

香織は自分はどうすればいいのかわからずにいた

 

「‥‥香織、私ね、戦おうと思ってるの」

 

「え、どうして…!?」

 

雫の言葉を聞いて、香織は驚きの表情を浮かべる

 

「‥‥正直に言うと、私はイシュタルさんの言う事を全面的には信用してない…

 

 でもだからと言って戦争に参加しないなんて言って追い出されでもしたら

 それこそ、ここで何が起こるのかわからないのに持ち物らしい持ち物を持ち合わせていない

 今の私たちじゃあどんな危険が舞っているのかもわからないわ、だからここはあえて光輝に合わせて

 戦争に参加する方向で進めていきたい‥‥正直に言うと怖いけれども、そこに可能性が少しでもあるなら…

 

 私はやる!」

 

「雫ちゃん…」

 

香織は雫の言葉を聞いたと同時に気づいていた

彼女の身体が震えていることに、彼女も不安でこわいのだろう

 

戦争に参加すると言う事は、敵を殺さなければならない事

 

雫自身もそれが分かっている、しかしほかに元の世界に

もどれる方法が分からない、故に彼女は闘うと言う選択を選んだ

 

自分や親友である香織のために

 

それを感じた香織は、雫の震える体を

抑えてあげるようにそっと彼女の手に自分の手を添える

 

「‥‥大丈夫だよ、雫ちゃん…」

 

「‥‥香織…?」

 

香織は決意を秘めた瞳を雫に見せていく

 

「‥‥雫ちゃんを一人でなんて戦わせないよ

 

 怖いのは私もおんなじだけれど、雫ちゃんが戦うなら

 私も勿論戦う、雫ちゃんに全部を背負わせたりなんてしない

 

 どんなことがあっても私はいつだって雫ちゃんと一緒だよ…

 

 絶対に一人でなんて戦わせないから…」

 

「‥‥香織…ありがとう‥‥…」

 

「‥‥雫ちゃん…」

 

そう言って二人はお互いに笑いあって行く

 

すると

 

「ちょっとそこの百合百合のお二方?

 

 なに二人だけで盛り上がっているのかしら?」

 

「「っ!?」」

 

そんな二人の様子を傍らで見ていた姫奈が二人に話しかけていく

二人は驚いて姫奈と風香の方に目を向けて驚いていくのであった

 

「まったく、何勝手に二人だけの誓いにしようとしているのよ?

 

 その話し、私にもかませて頂戴よ

 元の世界に帰りたいって気持ちは私だって同じなんだから」

 

「ちょっと姫奈、抜け駆けはよくないよ

 

 その話し、私にも協力させてよ

 だって二人のことが心配だからさ」

 

そう言って姫奈と風香も雫と香織に協力したいという意思を示す

 

四人はお互いに決意を秘めて、何としても生き延びようと決意する

 

すると、香織は何かを思いついたように表情を明るくしていく

 

「ねえねえ、南雲君の事も誘っていいかな?

 

 南雲君のこともやっぱり心配だから…」

 

「フフフフフ、本当に香織は南雲君のことが好きなんだね

 

 でも…‥南雲君の方はオーケーしてくれるのかな?」

 

「まあ、声だけでもかけておきなさいよ…

 

 そんなに気になるんだったら」

 

そう言って風香と姫奈に背中を押され

香織はハジメの方に向かって行った

 

一方のハジメの方は

 

「ねえ、南雲君‥‥南雲君はどう思ってる?」

 

「…そうだね…」

 

一緒に行動をしている女子生徒、七大天使の一人

 

東雲 渚沙

 

彼女とともにこれからのことを話していた

 

「正直に言って、僕はあのイシュタルって人のことは信用するのは危険だと思う…」

 

「‥‥その理由は?」

 

ハジメは自分の意見を渚沙に話していく

 

「…まず第一にあの人、天之河君を誘導させているように見えた…

 

 多分だけれど彼が僕たちの中で一番影響力があるんだってことを見抜いたからだと思う…」

 

「なるほど…私たちにこの世界のことを話しつつ

 私たちをどうしてもこっち側に引き入れようとしている…

 

 思っていたよりもあのお爺さんはやり手の様ね…」

 

ハジメはさらに話を続けていく

 

「そしてこれが一番の理由…

 

 僕たちにあることをさせようとしている…」

 

「戦争‥‥だね…」

 

ハジメのその言葉を聞いて、渚沙は有ることを思い浮かべていく

 

イシュタルは、教会の者達は自分達に何をさせようとしているのか

渚沙もハジメの言葉を聞いて、いいやそれ以前に気が付いていたから

 

「口惜しいけれども僕にはそれを止めることは出来ない…

 

 教会の奴らに何をされるのかわからない以上は口惜しいけれど…」

 

「そうね‥‥ここは…天之河の意見にに乗るしかない…」

 

そう言って二人は、内心では賛同しつつ向こうの出方を見ていく事にする

 

するとそんな二人に、正確にはハジメに話しかけていく人物がいた

 

「あ、あの‥‥南雲君…」

 

白崎 香織

 

四大女神の一人であり

ハジメのことを気に掛ける人物の一人である

 

「え、白崎さん…?」

 

「あのね‥‥その…

 

 南雲君、私達のグループに入らない?

 

 その‥‥南雲君もきっといろいろ大変だと思うし…

 

 何より私、少しでも南雲君のことを助けてあげたいの…

 

 だから…」

 

「…ごめん」

 

香織がそこまで言うと、ハジメはハッキリといい放った

 

「…わるいけれど、急には決められないし…

 

 それに、僕なんかが白崎さんとおんなじグループに

 入ったって足手まといにしかならないと思うし、だから…」

 

「‥‥そんな…そんなことないよ南雲君!

 

 だって、南雲君は‥‥南雲君は…」

 

そういって言葉を続けていこうとする香織だったが

それを阻んできたものがいた、その人物とはもちろん

 

「ダメだよ、香織、こんな奴なんかじゃなくて俺と一緒に組もう?

 

 もしもこいつが香織に手でも出して来たらどうするんだ?」

 

天之河 光輝

 

彼であった

 

「…‥南雲、もう香織に関わるな

 

 確かに香織は誰にでも優しいから

 お前のような奴にも分け隔てなく接してくれている

 

 でもな、はっきり言ってお前みたいなやつが

 いつまでも香織の世話を焼かせているのはみるにたえない

 

 だから、はっきり言わせてもらおう、お前のような奴は

 香織の傍に立つのにふさわしくなんてない、二度と香織に関わるな!」

 

「…別に元からそんなつもりもないよ…」

 

そう言ってハジメは力ない声でつぶやいてその場から離れていく

 

「まって南雲君!

 

 お願いだから話を最後まで聞いて!!」

 

ハジメのもとに駆け寄ろうとする香織だが

それを光輝が彼女の腕を引いて、引き止めた

 

「やめるんだ香織!

 

 君は彼のような人間とかかわるべきじゃない!!」

 

「何でそんなこと光輝君に決められないといけないの!

 

 私が誰の傍に居ようとそれは私の勝手じゃない!!

 

 私がどうしたいのかは、私が決めたいんだよ!!!」

 

そう言って自分を引き留める光輝に必死に反論する香織

 

「香織、俺は香織のことを思って行ってるんだ

 香織をあんな奴の傍に置いたらどんな目にあわされるか!

 

 あいつが一年の時に何をしたのか香織も知っているだろう!!」

 

「知ってるわよ、そんなの!」

 

光輝がそう言うと、香織の代わりに答えた人物がいた

それは香織と雫の事を誘った二人と同じ四大女神と呼ばれる少女

 

「一年のころ、南雲が私を人気のない場所に誘って襲おうとして?

 

 そこを偶然通りがかった檜山達が助けに入った、だったっけ?」

 

「ああ、そうだ!

 

 しかもあいつはその罪に対しての罰を何も受けていない!!

 

 自分の行いを悔い改めないだなんていくら何でも最悪だ!!!」

 

「ふざけないでよ!

 

 あれは違うんだってさんざん言ったでしょうが

 そもそもあの件なら南雲だってしっかり罰はうけたわ!!

 

 それなのに何の罰も受けていないなんて何でそんなこと言うのよ!!!」

 

光輝と姫奈の口論はヒートアップしていくが

流石にこれ以上は大事になると考えて二人の人物が止めていく

 

「おい光輝、そこまでにしとけって

 

 こんなところで言い争ってたって

 どうにかなるわけでもねえだろう」

 

光輝の親友である、龍太郎

 

「姫奈もだよ、気持ちはわかるけど

 事を大きくしたらそれこそ南雲君が悪目立ちしちゃうよ…」

 

「香織も、ここはこらえて

 また落ち着いたときに南雲君と話をしましょう…」

 

「‥‥わかったわ、香織もここは言う通りにしましょう…」

 

「‥‥うん…」

 

姫奈と香織も、風香と雫にそれぞれ諫められ

納得していない様子でそれぞれが引き下がっていくのであった

 

「‥‥南雲君…」

 

悔し気な表情でその場を去っていったハジメに

心配そうに話しかけていく渚沙は、自分の元からも

離れていこうとするハジメの手を引っ張ることで引き留める

 

「まって‥‥話はまだ終わって…」

 

しかし、ハジメはその手をいつもの彼では

考えられないと言えるほどに乱暴に振りほどいた

 

「…終わらせるか終わらせないかじゃない…

 

 もうとっくに終わってるんだよ、僕の中ではもうね…

 

 僕は蜘蛛の糸のように張り巡らされた人の悪意に自分でも

 知らないうちに捕らえられ、その悪意を秘めたやつに食われた…

 

 その結果が、今の僕ってことさ…」

 

そう言ってどこか投げやり気味に言い放っていくハジメ

渚沙はそんな彼に何も言うことが出来ず、申し訳なさそうに顔を落としていた

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 


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