世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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Amicus qui monstrum factus est Ein Monster, das ein Freund wurde

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

学校の校舎の人気のない、裏側

 

そこで、何人かの女子生徒が

一人の女子生徒に暴力をふるっていた

 

「きゃ!」

 

暴力を振るわれていた、その女子生徒は

 

二宮 風香

 

 

彼女であった

 

「あんたね、ちょっと運動が出来て

 見た目も可愛らしいからってさ、あんまし調子に乗らないでよね?」

 

「そうよ、貧乏人の癖に…」

 

そういって、激しく彼女を貶めていく女子生徒たち

 

「なんで…

 

 なんだって、こんなことを…」

 

風香は、その場に倒れ伏しながら

どうしてこんなことをするのかと訴えていく

 

すると、そんな彼女の頭を踏みつけるように蹴る女子生徒

 

「なんで?

 

 きまってんでしょうが?

 

 あんた、貧乏人のくせに

 監督に色目使って、部活のレギュラーを取ったんでしょ?」

 

「何言ってるの…

 

 そんな事…」

 

「そうでもなきゃ、あんたみたいな貧乏人が

 大会のレギュラーに選ばれるなんてありえないでしょうが!

 

 監督に身体でも売って、それでレギュラーでも取ったんでしょ?

 

 あんた、見た目だけはいいからさ?」

 

そういって、彼女の髪を乱暴につかんで

自分達の眼前にまで、持ってきて言い放つ

 

「そんなことしてない…

 

 監督はそもそもそんな人じゃないし

 レギュラーになれたのだって、必死に頑張って

 勝ち取ったものなの、そんなことして手に入れてなんて…

 

 絶対にありえないって!」

 

必死に抵抗の意志を示していく風香

 

しかし、それが相手の女子生徒の腹の虫に響いたようで…

 

「あんた、まじで生意気…

 

 服だって満足に買ってももらえない

 貧乏人のくせに、何偉そうにほざいてるわけ?」

 

「貧乏人だからって何?

 

 確かに私の家には、貴方達のように

 好きなものを買えるようなお金はないよ…

 

 でも、お金だけで人の価値は変わらないでしょ!」

 

「うっわ、くっさ

 

 そんな事、よくもまあ

 恥ずかしげもなく言えるわね」

 

風香の言葉を、まるで面白いことを言ったかのように

あからさまにバカにしたように、笑いを浮かべる女子生徒

 

「まあいいわ

 

 あんたがこの先、誰かに

 認められていく事なんて絶対にない…

 

 あんたのような貧乏人がこの先

 どうにかできることなんてないんだし

 

 まああんた、見た目はいいんだし

 きも親父に体を売り渡せば、金に困ることはないでしょうけどね?

 

 あーっはっはっ!!!」

 

そういって、風香をその場に倒して

笑いながら去っていく、女子生徒グループ

 

これは彼女、西宮 風香がかつて

受けていた日常の日々であった

 

西宮 風香

 

 

高校入学の際に、先輩や同級生に

注目された四人の女子生徒の一人で

 

周りから、四大女神と呼ばれて

男子生徒たちにとっての高嶺の花

 

女子生徒からの、理想の女性として注目を受けていた

 

風香は、運動神経がよく

特に小学生のころからやっている

バスケにおいては、一年でありながら

レギュラーに選ばれるほどの、実力を見せた

 

しかし、彼女の家は裕福とはとても言えなかった

 

家族は父と母、姉が一人、妹が二人いる六人家族

 

家族が多い上に、父親の稼ぎが少なく

母はパートのシフトを掛け持ちして、姉も

大学に通いながら、バイトをして家計を支えていた

 

風香も、高校に上がったら

アルバイトをしようと言ったのだが

 

母と姉から、三年間の高校生活

自分の好きなことを思いっきり楽しみなさい

 

そう言われて、小学生から始めて居た

バスケ部に入部し、部活も勉強も必死に頑張っていく

 

だが、自分の家が貧しいことへの弊害は

元々、人気の高かった彼女への嫉みから始まった

 

私物を隠されたり、授業中にちょっかいを出されたり

お昼ご飯を食べているときに、わざとらしくぶつかって

お弁当を言葉されたり、酷いときにはぶちまけたおかずを

わざと踏み付けたちされたりし、ついには人気のない所に連れられ…

 

しかし、風香自身はそれをおくびに出すことはなかった

 

家族や友達に心配をかけさせたくなかったからだ

 

ゆえに誰にも、この事を相談できずに

誰もいない屋上などで、一人さみしく食べることに

 

食堂に行っても、お金がかかるし

だからと言って、教室で食べていると

例のグループがちょっかいをかけてくるからだ

 

それでも、部活に励んでいく事で

そんなやっかみを振り切っていく風香

 

だが、そんな彼女にまさに、心を折られる出来事が起こる

 

「‥‥そんな、そんなことあり得ません!

 

 私が、そんなことでレギュラーを取ったなんて!!」

 

「そうですよ!

 

 彼女は、しっかりと実力で

 レギュラーになったんです!!」

 

風香が、監督に体を売ることでレギュラーになった

そんな話が、持ち上がっていき、そのことで彼女は

監督とともに、その職員室に呼び出されていった

 

リークしたのは、当然ながら

風香にやっかみを仕掛けていた女子生徒

 

風香は必死に、それは言い掛かりで

彼女達がこれまでしてきたことを訴える

 

しかし、その女子生徒は所謂、仮面優等生で

表向きは模範生で教師陣からの信頼も厚い

 

風香はあくまで、家が貧しいことによる

同情心のみで、教師たちから気に駆けられているだけで

教師側がどっちのいうことを信じるのかなど、言うまでもなかった

 

やっていないと、どれだけ訴えても

証拠がない以上は、証言は覆らない

 

これで優位を取れるのは、教師陣からの信頼

 

信頼が厚いのと、ただの同情心では

どちらの方を取っていく事になるのかは

 

明白であった

 

とりあえずは、謹慎という事になり

処分が決まるまでは、自宅に謹慎するという

 

そういった形になる

 

「どうして‥‥どうして、こんな…」

 

風香は、どうして自分がこんな事になったのか

未だに分からなかった、自分はただ自分が好きなことに

一生懸命に打ち込んできただけなのに、どうしてこんなことに…

 

すると

 

「西宮‥‥お前には本当に目をかけていたのに‥‥

 

 がっかりだよ‥‥」

 

監督から出てきた言葉は、今の風香に

一番、聞かせてはいけない言葉であった

 

「監督‥‥何言ってるんですか…?

 

 だから、私は…」

 

「あんなに先生方が言っているんだ

 お互いに証拠がない以上はどうしようもないだろう!

 

 悪いが二宮、お前は部活をやめてもらう‥‥

 

 今のお前は、バスケ部にいるべき存在ではない‥‥

 

 退部届は、俺の方で用意しておく、家に帰ったら親御さんに話しておけ‥‥」

 

監督の冷たい言葉、訳の分からない罪を着せられて

挙句には、自分のやりたいことまで奪われてしまった

 

そんな、失意の果てに風香は家に戻っていく

すると、家の前では両親が待ち構えているように立っていた

 

「お父さん‥‥お母さん…?」

 

風香は、不意に両親に話しかけていく

すると、父親は風香に激しい怒りの表情を向けていくと

 

風香に向かって、バケツに入った水を勢いよくぶっかけていった

 

「お前!

 

 いったいなんてことしてくれたんだ!!」

 

父親は激高したように言い放つ

 

「お‥‥父さん…?」

 

「風香‥‥学校から連絡があったわ…

 

 どうして‥‥どうしてこんなことをしたの…

 

 確かにうちは貧乏だけど‥‥だからってこんなことを…」

 

母親も、悲しみのあまりにポロポロと泣き崩れていく

 

「ち、違う…

 

 私はそんなことを…」

 

「ふざけるな、学校から連絡がきたんだ!

 

 お前が監督に部活のレギュラーにしてもらうために

 体を売って、それでレギュラーにしてもらったんだってな!!」

 

父は怒りで、話しがまともにできる状態じゃない

 

「本当に違うの、私はそんな事…

 

 信じてよお父さん‥‥お母さんも」

 

風香は、母の方に目を向けていく

 

すると

 

「ええ、私は貴方を信じるわ‥‥風香…」

 

風香はそのことを聞いて、安堵の感情を抱く

 

だが、次の言葉を聞いて、再び絶望のどん底に落とされて行った

 

「風香、お父さんとお母さんには本当の事を話して…

 

 どうして‥‥どうしてそんなことをしたの?

 

 そんなにまでして、部活のレギュラーになりたかったの?

 

 それとも、誰かにそそのかされてやったの?

 

 お願いだから、答えて‥‥ねえ…?」

 

母の言う、信じるとは

あくまで風香の意志でやったんじゃない

 

しかし、それはあくまで

彼女がやったことが前提のものであった

 

それを聞いた、風香は絶望で表情を引きつらせていく

信じていた人に裏切られ、家族からも見はなされてしまい

 

それが、引き金となって

ついにはその場から走りだしていってしまう

 

涙を流し、ぬぐうことなく

ただただ、何もかもを振り切っていくように走り去っていく

 

そんな、彼女は行きついたのが

人気のない、河原であった、彼女は

そこにかかっている橋の下で、声を殺して泣いていた

 

どうして、どうしてこんなことになったのか

自分はただ、自分の望んだ高校生活を過ごしたい

その為にやりたいことを、全力で楽しみたい、それだけだったのに

 

「なんで‥‥何で、こんなことになったの…

 

 私は何にも‥‥何にもしていないのに…

 

 なんで私が‥‥こんな目に遭わないといけないの…」

 

風香は、自問自答を杭り返していく

 

「こんな現実なんて嘘だよ…

 

 夢だったら‥‥夢だったら覚めて…」

 

風香は訴えていった

 

すると

 

ー‥‥っかりし‥‥ー

 

「‥‥え?」

 

不意に風香の耳に、何かの声が聞こえたと感じた

 

「何、今の声…

 

 いったいどこから聞こえて…」

 

風香は、おそるおそる辺りを見回していく

 

すると、不意に自分の姿を水に写す

 

「‥‥気のせい…かな?」

 

風香はそういって、水から離れて行こうとした

 

その時

 

ーしっかりしなさい!

 

 ここは夢よ、現実じゃない!!

 

 自分の事を思い出しなさい!!!ー

 

「え!?」

 

今度は、はっきりと聞こえた

 

しかし、それはまるで

頭に直接響いていくような

 

そんな声であった

 

「自分の事を‥‥思い出す…?

 

 一体、何を言って…」

 

風香は不意に、言われたことを思い返していく

特に何も思い浮かべていく事はなかったが、不意に

 

何か、違和感を覚えていく

 

「何‥‥何かを忘れている…?

 

 いったい何を忘れて…」

 

風香は、頭痛を感じて

頭を押さえていく、その際に

 

自分の中に、何かが思い浮かんできた

 

「‥‥私…私は‥‥…」

 

すると、そこに

 

「あら、誰かと思ったら

 監督と不純異性交遊して

 退部になった、元バスケ部のエースじゃない」

 

あらわれたのは、自分を陥れた

女子グループであった、彼女らの方を見て

そのまま、呆然と立ち尽くしていた

 

「わあ、それにしても本当に無様ね…

 

 四大女神って言われて、学校中から

 ちやほやされてた、あんたがまさか…

 

 こんなところに落ちぶれているだなんてね…」

 

「ふん、ざまあないわ

 

 貧乏人のくせに、顔がいいからって

 調子に乗るからいけないんだっつーの…」

 

なおも、風香の事を馬鹿にし続けていく女子生徒たち

 

風香は、その女子生徒たちのところに

静かに、歩き始めていく、その表情は

影がかかっていて、伺い知ることは出来ない

 

「‥何よ?

 

 何かアタシ達に言いたいことでもあるの?」

 

「‥‥ええ、あるわよ…

 

 そしてそれはただ一つ…」

 

そういって、風香は腕を突き出す

その手に持っているのは、そう

 

アーティファクトの槍であった

 

「あんた達が何者かは知らないけれども…

 

 人の家族や友達の事、よくも好き勝手に

 捏造してくれたよね、私は確かに裕福とは言えないよ

 

 姉妹が多い上に、生活も苦しい

 でもね、それでも私たち家族はね…

 

 互いに支え立ってきたんだよ!

 

 お父さんを支えるために、お母さんは

 パートのシフトを掛け持ちして頑張ってるし

 

 お姉ちゃんだって、大学に通いながら

 バイトもやって、そんなお母さんたちを支えてる…

 

 私も高校に入って、妹達と一緒に

 できる限りのことをしているんだよ…

 

 私たちはずっと、お互いを支え立ってきたんだ

 そんな私の家族をあんな風にして、絶対に許さないから!」

 

そういって、槍の穂先を女子グループたちに突き付ける

 

「‥フフ…

 

 まさか、こんなにも早く

 記憶が戻ってしまうだなんてね…

 

 ちょっと、君のことを侮っていたよ」

 

すると、その突き付けられた女子生徒は

笑みを浮かべていきながら、雰囲気を変えていく

 

「やっぱり、偽物だったんだね…

 

 どうしてこんなことを…」

 

「‥そうね、しいて言うのならば

 これは、大迷宮の試練なのよ、最も…

 

 あるもの達によって穢され

 試練の内容が変わってしまったけれどもね…」

 

試練、それを聞いて風香はすべて思い出す

 

自分たちが今まで、どこにいたのかを

 

「貴方は一体…」

 

「私のことは、目を覚まして

 迷宮の最深部にまでいらっしゃい…

 

 そこに、全ての答えがあるわ…

 

 最も、たどり着いたらの話だけれどね…」

 

すると、辺りの景色がまるで

ガラスのようにひび割れていく

 

「たどり着いて見せるよ…

 

 だって私には、すっごく

 頼れる仲間が、いるんだもの…

 

 みんなで貴方にあって

 じっくりと聞きたいこと聞かせてもらうから…

 

 覚悟しておく事ね!」

 

そういって、世界がひび割れていき

そこからあふれ出す光に、風香は包みこまれていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「‥‥う…ううん‥‥…」

 

風香はゆっくりと目を覚ましていく

 

そこに映ったのは、何やら息を切らしている

姫奈と香織、二人は聖徒の姿になって、それぞれの聖器を

手にしながら、肩を上下に揺らして、自分に向けて武器を向けている

 

そんな風に見えた

 

それゆえ

 

「‥‥ううん!?

 

 ど、どうしたの二人共!?

 

 いったい何が…」

 

二人が狂乱して、自分に攻撃を

仕掛けんとしているそんな風に見えた

 

「やった…

 

 眼を覚ましたみたいだね…」

 

「そうね…

 

 まったく、ひやひやさせちゃって…」

 

自分が飛び起きていくと同時に

二人は、武器を降ろして安堵の様子を見せていく

 

「え…?

 

 姫奈?

 

 香織ちゃんも…

 

 いったい何がどうなって」

 

「待ってて!

 

 とりあえず四人とも降ろすから…」

 

香織がそういって、円刃を飛ばすと

それを使って自分達をつるしている木の枝を降ろし

 

更にもう一つを使って

風香の足を付かせていく

 

風香だけではなく、他にも

雫と纏もまた、同じ円陣に乗っている

 

ゆっくりとエレベーターのように

下にいる自分達の方にまで、降ろしていった

 

「ふう、それにしても…

 

 これって一体?」

 

風香は、少し脱力したように

その場に倒れ込むように地面につく

 

「どうやら、ここは

 大樹ウーア・アルトの中…

 

 言ってみれば、ハルツィナ大迷宮の中みたいね…

 

 私たちはどうやら、アルテナとの戦いの際に

 偶然にもこの中に入り込んでしまっていたみたいなのよ…」

 

「ハルツィナ大迷宮って…

 

 つまり、ここが七大迷宮!?」

 

姫奈の説明を受けて、目を見開く風香

 

「そうだよ…

 

 私も風香ちゃんよりも先に目覚めたんだけど

 みんな、なかなか目を覚まさないから、ちょっと強引だけど

 この枝の先にあった核みたいなのを壊していこうと思ったの…

 

 想像以上に堅くて、手間取っちゃったけれども

 どうにか、核を破壊することに成功したって訳…」

 

「そっか…

 

 それで私、目を覚ましたんだね…」

 

そういって、ゆっくりと身体を起こしていく風香

 

「‥‥そういえば、雫ちゃんと纏ちゃん、ラナさんの方は無事?」

 

「ええ、何とかね…

 

 今降ろして…」

 

そういって、姫奈は降ろした一行の方に目を向けていく

 

「大丈夫、雫ちゃn…」

 

香織は、どこかうつろな様子で

放心状態の雫に駈け寄って声をかけていく

 

しかし、そこまでかけて行って

急に表情を変えていった、その時

 

香織は何と、雫の身体にを剣で刺し貫いた

 

「ええ!?

 

 か、香織ちゃん!?

 

 いったい何をやって…」

 

「っ!

 

 風香、危ない!!」

 

香織が雫を、刺し貫いたという

とんでもない光景を目の当たりにして

目を見開いていった、さらに姫奈に押され

姫奈も武器である剣を突き出していき、何かに向かって攻撃を仕掛ける

 

「ひ、姫n‥‥ってええええ!?」

 

突然のことに、理解が追い付かなかった風香だが

風香がおそるおそる見た光景の方にも、目を見開いていく

 

何故なら、姫奈が剣を突き立てている相手は纏であったからである

 

「い、一体何をやって…」

 

「落ち着いて風香、私達は正気よ…

 

 どうやら、この大迷宮は

 罪徒達の影響を受けてしまったみたいね…

 

 つまり、まんまと私たちはここに連れてこられたってわけね」

 

姫奈がそういうと、姫奈が差した纏と

香織が差した雫はその姿を変えていき

 

真っ赤で何やら皮が剥がれたような

醜悪な外見をした人型の異形に変化した

 

「な、なにこれ…!?」

 

「わからないわね、魔物にしては

 魔石が無いし、それに見てみなさいよ…」

 

姫奈は倒れたその異形をみると

異形はその姿を段々と液体に変えていく

 

「な、なんなのこれ…

 

 水じゃないよね…」

 

「ええ、これは体液よ…

 

 多分だけれど、亜人族か魔物の、ね」

 

それを聞いて、急に気分を悪くしていく風香

 

「それにしても‥‥二人はよくわかったよね…」

 

「ええ、教えてくれた子達がいたから…」

 

そういって、姫奈はちらりと目線を物陰の方に向けていく

 

そこにいたのは、見た目は都市はも行かない子供たちの様であった

 

「あの子達は…?」

 

「フェアベルゲンに住んでいた亜人族たちの最後の生き残りよ…」

 

姫奈の言葉を聞いて、思わず姫奈の方に視線を向ける風香

 

「みんな、大丈夫?」

 

香織が、子供たちに優しく話しかけていく

すると、子どもたちの中で一番年上と言える少女

 

意見すると、人間のようだが

耳が長くとがっていることから

森人族、言うならばエルフの少女なのだとうかがえる

 

「あ、ありがとう…」

 

少女は、代表してお礼を言う

ただ、警戒をしているのかどこかそっけない…

 

「あの子達も、この場所に…」

 

「ええ、でも話の方はある程度は聞いてるわ…

 

 フェアベルゲンで一体何があったのか、ね…」

 

姫奈が、そういって風香に説明をしていく

 

きっかけは、一同がフェアベルゲンを訪れていく前

恐らくは自分達がライセン大迷宮で死闘を繰り広げていた時

 

亜人族の暮らす国、フェアベルゲンに一人の来客が訪れて来た

 

緑色の目に、赤く長い髪

水色の外套に身を包んだ一人の女性

 

女性は、フェアベルゲンの代表に話しを通してほしいと

その美麗な見た目に見合うほどの口調で、要求を述べた

 

見張りの種族たちは、紆余曲折あったものの

代表の一人である、森人族の族長で長老衆の長

 

アルフレリック・ハイピスト

 

 

彼が代表して、そのままフェアベルゲンに

招きいれていった、その道中でフェアベルゲンの文化に触れ

その素直に称賛していく姿に、アルフレリックは好感を覚えていく

 

段々と、信頼の方をきずきあげていった

 

その後、応接間に引き入れ

そこで彼女は、自身の目的を伝えた

 

ウーア・アルト、そこまで向かう道を教えてほしいと

その時は、霧が弱まっている周期ではないので、しばらく

日をまたいで、改めて道案内の方をさせてもらうと告げた

 

こればかりは、アルフレリック側でも

どうしようもないので、受けてもらうほかない

 

そんな折に、他の長老衆の面々が現れ

人間をかってにつれて来たアルフレリックを激しく攻めたてていく

 

やがて、口論が続いていき

他の亜人族たちがその用を見る中

 

アルフレリックと熊人族のジン

ジンに賛同する虎人族のゼルと

土人族、所謂ドワーフの族長のグゼ

 

この二つに分かれての水掛け論が始まっていき

次第に口論はヒートアップしていった、その時に

 

ジンが言った、何気ない一言

これがフェアベルゲンの運命を決めてしまった

 

そのあとは子供たちも何があったのかわからない

ただわかっているのは、ただただ蹂躙されていくフェアベルゲン

いいや、ハルツィナ樹海、子どもたちも必死にその恐るべき強大な存在に怯えて

 

無我夢中で逃げていった

 

しかし、自分達と同様に逃げていたものは

巻き起こる炎や、降り注いでいく雷に打たれたり

 

それによって、樹海は見るも無残に蹂躙され

生き残ったのも、この場にいる六人の子どもたちのみであった

 

子供達は無我夢中で逃げていく際に

偶然にも、そのまま地割れの中に落ち

 

その後は何があったのか

もはや、かのもの達が知る由もない

 

それから、この場所で

どれだけの時がたったのかわからない

永劫ともいえる様な時間をここで過ごし

 

そこに、偶然通りがかった姫奈に発見されて

 

今に至る、という事である

 

「嘘でしょ…

 

 そんな事が…」

 

「うん…

 

 私も話しを聞いたときは

 信じられなかった、けれども…

 

 私たちはそんな規格外の存在を知っている…

 

 だって、それ以外に考えられないもの…」

 

風香は話しを聞いても理解が追い付かないが

香織にそういわれて、それが出来る様な存在が思い浮かんだ…

 

「「「罪徒…」」」

 

ライセン大迷宮にて、初邂逅した存在

 

奴等のその強大な力は、身をもって知っている

だからこそ、子供たちの話を聞いて奴らの存在に行きついた

 

「確かに、フェアベルゲンを瞬く間に

 滅ぼしてしあったって言う、その存在は

 

 気になるけれども、現状の問題は

 この場にいない纏や雫、ラナさんの安否と…

 

 この子達をどうするのか?」

 

姫奈は、現状の問題を口にする

 

「もちろん、三人のことは絶対に見つける…

 

 問題はこの子達のことだけど…」

 

「‥‥この迷宮の辺りを見てみたけれど

 魔物が存在してた、ここにとどまり続けるのは危険だよ」

 

「かといって、連れていっても

 フェアベルゲンはもうない、だからと言って

 樹海から離れても、亜人族には生きずらいし…」

 

亜人族は、神に見捨てられた種族

 

それ故に亜人族は、人間が入ると

簡単には出られない、樹海の中で過ごしていた

 

だが、フェアベルゲンも樹海も

嘗ての面影は失われており、もう二度と

亜人族が過ごしていく事ができるとも思えない

 

かといって、外に出ても

殆どの国が亜人に対しての差別が激しい

 

そんな中を、年端も行かない子供達だけで

生き抜いていく事は、難しいに等しいだろう

 

「‥‥そうね…

 

 でも、まずはここから出て

 迷宮の奥の方に向かいましょう…

 

 なんにせよ、まずはここから

 出ることを目指さないとね…」

 

姫奈は、そういって

端っこの方でこちらの様子をみている

子供達の方に目を向けていき、声を掛けて行く

 

「貴方達…

 

 さっきも話したけれども

 私たちはこれから、この迷宮を

 攻略する為に、そろそろ行かないといけないの…

 

 貴方達はどうする?

 

 ここに残るか、それとも一緒に行くか?」

 

子供達に訪ねていく姫奈

 

「俺たちはどうでもいいや‥」

 

「もう俺達には帰るところなんてない‥

 

 だったらアンタらについていって死んでも

 ここに残って死んでも、結局は同じだ」

 

熊人族と虎人の少年は、諦めた様子でそう答えていく

 

「私は‥ついていきたい‥

 

 ここのお姉ちゃんたちは

 少なくとも、私たちの知っている

 怖い人間族とは全然違う、ついていっても

 

 大丈夫、だと思う」

 

狐人族の少女はそう告げる

 

「私も、ここにいて黙って魔物に襲われるよりはいいと思うし…」

 

「ぼ、僕は…」

 

翼人族の少女も、それに合わせる

一方で土人族の少年は、どこか戸惑っている様子を見せる

 

「‥‥見事に意見がバラバラね…」

 

姫奈は、頭を抱えていくが

森人族の少女が、率先していく

 

「…ねえ、人間族のお姉さん…

 

 もしも、私達が一緒に行くって

 言ったら、私達のこともここから出してくれる?」

 

意を決したよう言う

 

「‥‥それはもちろん…

 

 貴方達がそれを望むなら」

 

「…わかった…

 

 それじゃあ、私たちをここから連れ出してほしい!」

 

エルフの少女は、意を決したように言う

 

「お、おい何を勝手に‥」

 

「そもそも、こいつらは人間族なんだぞ!

 

 俺たちの事を、ただの家畜のようにしか

 思っていない、畜生以下の畜生だ!!」

 

熊人族と虎人族の二人の少年は、もう反発する

 

「でも、ここから先に行くには

 私達だけじゃ、どうにもならない

 

 かといって、この場にとどまり続けても

 ずっと安全だなんて思えない、だったら

 私はここから出たい、少なくともここよりは

 

 安全だって思うから」

 

エルフの少女は言う

 

「…で、でも…

 

 外に出たって、フェアベルゲンも

 僕たちの事を守ってくれていた樹海もないし…

 

 外に出ても、僕たちが生きられる場所なんて…」

 

しかし、ドワーフの少年が不安を口にする

 

「そうだよ、俺の父ちゃんだって

 目の前で炎に焼かれたんだし‥」

 

「俺の母ちゃんも、俺を庇って

 雷に打たれたんだ、そんな俺達が

 外に出たところで、どうにもなんねえじゃんか‥

 

 俺達なんて、もういっそこのまま‥」

 

熊人と虎人の少年は、悲し気な表情を浮かべていく

 

すると

 

「‥‥ダメだよ、そんな事…

 

 死んだ方がいいなんて、絶対に考えちゃダメ…」

 

香織が、そういって子どもたちに話しかけていく

 

「なんだよ人間‥

 

 同情なんていらねえんだよ

 どうせ、この世界は俺達には

 どこまでも生きずらい世界なんだ‥

 

 そんな世界で生きて行こうなんて

 そんな事、出来るはずもないだろ」

 

「だから、死んじゃえばいいって思ってるの?

 

 二人のお父さんとお母さんは

 本当にそんなことを望んでいるの?

 

 そんなことないよ、だって二人にとって

 お父さんとお母さんはとっても大切なんでしょ?

 

 つまり、とっても大切に思ってくれていたってことでしょ?

 

 そんなお父さんとお母さんが、命を懸けて

 守ってくれた貴方達が死んじゃウ事を、本当に望んでると思う!?

 

 貴方達のお父さんとお母さんは、そんなに最低な人たちなの!?」

 

「っ!

 

 そんなわけねだろ!

 

 父ちゃんは俺に、戦士として

 厳しくしてたけど、男手一つで

 俺の事を育ててくれたんだ、そんな父ちゃんが

 俺の事をそんな風に思ってるわけ、ねえだろ!!」

 

「俺の母ちゃんだって、そうだ!

 

 身体が弱いのに、俺に辛そうな買いを見せずに

 いっつも笑顔で、俺の前にいてくれたんだ

 

 そんな母ちゃんが、俺の事をそんな風に…」

 

そんな二人に、優しく抱きしめてやる香織

 

「それだったら、お父さんとお母さんが

 守ってくれた、自分達の事をそんな風に思ったらだめだよ

 

 今ここで死んじゃったら、貴方達の事をここまで

 大切に育ててくれたお父さんやお母さんの気持ちを

 貴方達自身の手で、、踏みつぶしてしまうのと同じなんだよ…

 

 この先何があるかなんて、無責任なことは言わない

 でも、だからっていきなり何もかも諦めちゃったら…

 

 そんなの‥‥悲しいだけだよ…」

 

香織は、涙を浮かべながら訴えていく

二人の少年も、なぜだか涙を浮かべていく

 

「私…私は生きたい…

 

 生きてここから出て、お父さんとお母さんの分まで生きたい…」

 

「僕も…僕も弱虫でへっぴり腰だけど…

 

 それでも、母さんが大切にしてくれた

 僕自身の命、大切にしていきたいよ」

 

翼人族の少女も、ドワーフの少年も

涙を浮かべながらも、決意を掲げていく

 

「私も‥

 

 人間族は、信じられいけど

 お姉ちゃんたちは信じられるよ…

 

 だって、私たちのことでこんなにも

 泣いてくれるんだもん、だからお姉ちゃんを…

 

 信じられる」

 

狐人族の少女も、ここから出る決意を固める

 

「‥お前ら‥」

 

「‥そうだ‥

 

 何やってんだよ、俺達‥

 

 こんなんじゃ父ちゃんに

 しっかりしろって殴られちまう‥」

 

熊人族と虎人族の少年たちも、渋々ながら

ここから出ていく事に同意していくのであった

 

「すごい…

 

 一瞬で、子供たちの警戒を解いちゃった…」

 

「香織が、聖徒に覚醒する前に

 聖女の天職に選ばれた理由が…

 

 何となくだけれども、わかった気がするわ…」

 

姫奈と風香は、素直にその様子に感服していく

 

「姫奈ちゃん」

 

そんな時に香織が、姫奈に声を掛けていく

 

六人の亜人の子どもたちも、それぞれの表情から

警戒の色は失われていた、香織の呼びかけの効果もあったかもしれない」

 

「ようし…

 

 それじゃあ、行きますか」

 

姫奈がそういうと、急いでここから

外に出ていく意思を固めていく姫奈

 

風香も香織も、亜人の子どもたちも

それを聞いて、改めて迷宮を進んでいく化身を固めていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「はあ‥はあ‥‥」

 

ある場所において、ラナは

魔物の群れに追われて、必死に走っている

 

ラナを追っているのは、俗に言う

ゴブリンと言う感じの魔物であった

 

「(な、なんなのあれ‥‥

 

  急にこんなところに来たと思ったら

  いつの間にかこんなところに来ていて‥‥

 

  おまけに、私の姿がゴブリンになって‥‥

 

  もう、何がどうなってるの!?)」

 

そういって、自分の現状に困惑しながら

どうにかして、折ってくる魔物の群から逃げていくラナ

 

しかし、動きずらそうにしていた足取りだったので

そのまま、その場に転んでしまい、そんな彼女に容赦なく

 

魔物の群が襲い掛かっていく

 

もうだめだと思った、その時

 

自身に襲い掛かろうとした魔物の群れは

一瞬で、全て叩き伏せらえてしまうのであった

 

「‥え?」

 

ラナは、おそるおそる

覆っていた目を開けていくと

 

そこにいたのは、姫奈たちの姿であった

 

「姫奈さん‥香織さん‥‥

 

 良かった、無事だったんですね!」

 

そういって、姫奈たちのもとに駈け寄ろうとしていく

 

しかし、姫奈が自身の持っている剣をラナに容赦なく振るっていく

 

「い、一体何を‥っ!?」

 

ラナは、何かに気が付いた

 

「はああああ!!!」

 

さらに姫奈は、武器である剣をふるって

ラナの身体を両断せんとふるって行った

 

「まずい‥このままだと‥‥」

 

さすがにここに居続けて居ると

自分の身が危ないと感じて、その場から駆け出す

 

しかし、そんなラナの目の前に

風香が、武器である槍をもって立ち塞がっていく

 

「っ!

 

 風香さん‥」

 

ラナは、自分に槍を向けて

ゆっくりと迫っていく風香

 

「風香さん!

 

 私ですよ、ラナです!!

 

 私の声が聞こえないんですか!?」

 

ラナはそういって、風香に必死に訴えていく

 

「はああああ!!!」

 

しかし、風香はそんな彼女の話を

聞こうともせずに、槍を振るって攻撃を仕掛けていく

 

「風香さん!

 

 私が分からないんですか!!」

 

風香はそれでも、何とか訴えていくが

 

風香は、そんなラナに向かって

初めて基地を開いていった、最も…

 

「なんなのかしら、この魔物…

 

 襲い掛かる様子も、攻撃を仕掛けていく事もしないで

 ただただ逃げるばかり、一体どういう事なんですか?」

 

「っ!」

 

ラナは、そう言われて

自分の姿の方を見ていく

 

何故なら、今のラナは

元の兎の耳が生えた女性の姿、ではなく

 

小鬼、俗に言うゴブリンの姿なのだから

 

「(っ!

 

  分かって、もらえないと

  思ってはいましたけれど‥‥

 

  まさか、ここまで‥‥)」

 

自分にさらに、攻撃を仕掛けていく

風香の攻撃をかわしていくが、そんなラナに向かって

 

「(きゃああ!!!!)」

 

ラナは、いきなり後ろから叩かれて

その場にうつ伏すように、倒れこむ

 

彼女を叩いたのは、纏であった

 

「(ま、纏さん‥‥)」

 

「まったく、ちょこまかと逃げ回って

 煩わしい魔物ですね、いい加減に観念して

 

 倒されてください!」

 

そういって、手に持っている槍を振るって

ゴブリンにmなってしまったラナに攻撃を仕掛けようとするが

 

そこに

 

「(え‥‥?)」

 

そんな、纏の一撃を止めた者がいる

 

それは…

 

「‥‥一体何をしてくれてんのよ、あんた!」

 

姫奈であり、彼女はそのまま

纏を切り伏せて圧していった

 

ゴブリンの姿になったラナは

余りにも突然の出来事だったので呆然としていた

 

「大丈夫!?

 

 ラナさん!」

 

「(え‥‥?)」

 

ゴブリン姿のラナは、自分の事を

名前で呼んでくれた香織に向かって

 

驚いた様子で、訪ねていく

 

「(香織さん‥‥

 

  私が分かるんですか?)」

 

ラナは訪ねていく、しかし

さすがに意思疎通とはいかないようであり

 

香織は何を言っているのかは分からない

 

「待ってて、ラナさん…

 

 すぐに終わらせてくから」

 

そういって、ゴブリン姿のラナを

離れた場所に連れ出していき、優しく言う

 

「さあて…

 

 あんた達は一体…

 

 なんなのかしら?」

 

そういって、姫奈は剣を自分達の偽物に向けていく

 

すると、偽物たちの外見が

どろどろと溶けていくように変化していくと

 

先ほど、雫とラナに化けていた

内臓がむき出しになったような

醜悪の外見の人型の異形が現れる

 

すると、その異形はその手に

髑髏の口から刃が波を打ったような

そんな形状をしている大鎌を手に取っていく

 

「やろうってわけね…

 

 だったら、遠慮なくいかせてもらうわ!」

 

そういって、剣を手に三体の異形に切り込んでいく

 

異形も、手に持った大鎌を手に

迎えうたんとしていくが、力の差は歴然

 

三体の異形は、姫奈の素早い動きに

対応しきることが出来ずに瞬殺されてしまった

 

「(すごい‥‥)」

 

「ラナさん…

 

 それにしても、どうしてゴブリンの姿に?」

 

香織は、ゴブリンの姿のラナに

どうしてこのような姿になってしまったのかと疑問を浮かべていた

 

「‥‥もしかしたら、これが大迷宮の試練なのかもしれないわね…

 

 ミレディさんが、言ってたじゃない

 大迷宮にはそれぞれに決められたコンセプトっがあるって…

 

 香織が見せられたって言う、あの出来事もしかり

 もしかしたら、これも試練の一環なのかもしれないわね…」

 

姫奈は推測を述べていく

 

ハルツィナ大迷宮でのコンセプト

それが、今回の事で何を表しているのか

 

「まあ、それはいいとして

 問題は、ラナさんは元に戻るのかってことだけど…」

 

香織は、不安そうにこちらを見つめている

ゴブリンの姿に変えられたラナの方に目を向けていく

 

「少なくとも、ずっとこのままっていう事はないと思うわ…

 

 そうでないと、試練の意味がないもの」

 

「‥‥そうだよね、試練である以上は

 突破できないなんて、そんなこっちが

 お手上げな状態になっている事にはならない…

 

 でも、なんだかこの試練の様子

 なんて言えばいいのかわからないけれども…

 

 おかしい気がするんだよね…」

 

姫奈がそう答えていくが、香織はその推測に疑問を浮かべていく

 

「‥‥確かにね…

 

 ウーア・アルトがあんなにも

 無残な状態になってしまってるんだもの…

 

 大迷宮自体にも、影響がないともいえないわね…」

 

姫奈自身も、香織の推測に対して

否定している様子を見せることはない

 

可能性としては、十分にあり得るからだ

 

「(そ、そんな‥‥

 

  それじゃあ、私はもう

  元の姿には戻れないってことですか!?

 

  そんなの‥そんなのは嫌です!)」

 

ラナも、悲痛の叫びを訴えていくが

悲しいことにそれを聞いてくれる者はいない

 

はずだった…

 

「ね、ねえ…」

 

狐人族の少女が、ゴブリンの姿のラナに話しかけていく

 

「(はい?

 

  って貴方はいったい?)」

 

「私はオウ…

 

 あなたのお名前は?」

 

普通に意思疎通が出来て

そのことにラナは目を見開いて

 

狐人族の少女

 

オウ

 

 

彼女の方を見た

 

「(オウちゃん‥‥

 

  あなた、私と話すことが出来るんですか!?)」

 

「う、うん‥

 

 でも、皆には内緒にしてるの‥

 

 私の子の力は、許されないものだから‥」

 

許されないもの…

 

彼女のこの能力は、ラナ達ハウリア族が

追放される原因となった、固有魔法なのだろう

 

つまりは、彼女もまたシアと同じ

亜人でありながら、魔力を持っている

 

つまり、忌み子であるという事だ

 

「(‥そうだったんですか‥‥

 

  でも、それなのにどうして

  私にこうやって話しかけてくれたんですか?)」

 

「そ、それは‥

 

 小鬼さんが、困っていると思ったから‥」

 

困惑したように答えていくオウ

 

それを聞いて、ラナは不意にシアの事を思い浮かべた

 

シアも優しく、自分の持っている

その力を誰かのために使ってあげていた

 

きっとこの子もそうなのだろうなと、感じていた

 

「(‥それだったら‥‥

 

  私がこの子にしてあげられることは‥‥

 

  一つだけだよね)」

 

そういって、ゴブリンの姿のラナは少女に優しく語り掛けていく

 

「(‥それじゃあ、オウちゃん‥‥

 

  私が元に戻るまでの間に

  他の子達に私の事をさりげなく教えてくれませんか?

 

  私は決して、あの人たちと敵対するつまりはないんだって‥‥

 

  オウちゃんのその力のことは、もちろん内緒で)」

 

「う、うん‥

 

 やってみるね‥」

 

こうして、オウと言う

自分の気持ちを代弁するすべを手に入れたラナ

 

それから、オウの必死の呼び掛けて

ゴブリンの姿のラナには自分達には敵意がない

 

そう、訴えていく事で

どうにか、ラナへの警戒をやめてくれるようになった

 

最も、熊人族の少年と虎人族の少年

この二人だけは、まだ納得いっていないようだが

 

「(‥ところで、姫奈さん達はどうして

  私のことが分かったんでしょうか?

 

  姫奈さんや香織さんの力でも

  今の私の姿を見分けることは

  できないって、思いますけれど‥‥)」

 

不意にラナは呟くと

 

「‥ね、ねえ‥

 

 どうして、お姉ちゃん達は

 この魔物さんに敵意がないって‥

 

 そういうのがわかったの?」

 

オウが不意にたずねていく

 

「‥‥うーん…

 

 口ではどうやって

 説明したらいいんだろう…

 

 何となくだけれども

 このゴブリンがラナさんだって

 そんな感じがしたとしか、わからないわね」

 

「‥‥そうだね…

 

 私も何と書くとしか言えないかな…

 

 それに、ラナさんだって

 今は私たちの大切な仲間なんだし…

 

 ちょっと姿が変わったぐらい。どうってことないよ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

姫奈と香織はそう答えていく

 

それに対して、風香は苦笑いを浮かべていく

 

ちなみに余談だが、風香のみは

正体を見抜くことが出来ずに、このゴブリンが

ラナさんだといった時には、物の見事に驚かれた

 

「‥フン、果たしてどうかな?」

 

「‥そうだよ

 

 もしかしたら、敵意がないって見せかけて

 俺たちの命を奪おうと虎視眈々と狙ってるんじゃないのか?」

 

熊人族と虎人族の少年は、そう答えていく

 

「ちょっと、二人共

 

 いくら何でも本人の前で

 そういうのはやめなさい」

 

「そ、そうはいっても‥」

 

そういって、エルフの少女が

言い方の悪い二人をたしなめていく

 

「(‥そういえば、他の子達の名前は?)」

 

「うん‥

 

 森人族の女の子が、アルサジお姉ちゃんで‥

 

 熊人族の子がダイお兄ちゃんで

 虎人族の子がリュクお兄ちゃん‥

 

 翼人族の子が、アイちゃんで

 もっさりしてるのが土人族のユーカ君…」

 

オウがさりげなく教えていく

 

ちなみに、姫奈たちは子供たちの名前は

ここに来るまでに教えられているために

 

全員のことは把握している

 

「まあなんにせよ

 ラナさんは見つかった…

 

 残るは、雫だけだけど

 この辺りに反応がないのを見ると

 もう少し離れた場所にいるのかもしれないわね…」

 

姫奈は、この場にいない雫が何処にいるのかと呟いていく

 

「‥‥雫ちゃん…

 

 無事だといいけれども…」

 

「姫奈はどう思う?」

 

「‥‥そうね、もしもこれが

 迷宮の試練であったとしても

 

 フェアベルゲンを滅ぼした奴の罠でも…

 

 雫は生きている可能性があると思うわ」

 

姫奈は、答えていく

 

「どうして、そう思うの?」

 

「試練だったら、簡単に倒されると

 意味がないから、最悪逃げ回っていれば

 死ぬことはないと思う、其れに敵の罠にかかっていたとしても

 

 即座に殺すなんて事はせずに

 私達を確実に倒すための罠にはめるための

 囮として使った方が、有用性はあるしね…

 

 もちろん、だからって悠長にもしていられないけどね…」

 

アイが訪ねると、姫奈はそう答えていく

 

「雫ちゃん…」

 

香織は、大切な親友である

雫の身を案じて、彼女の名前を呟いていく

 

「姉ちゃん‥

 

 そんなに大事なのか?

 

 その、雫ちゃんって奴が‥」

 

「‥‥雫ちゃんはね、私が小学生の頃から

 よく一緒にいた、大切な友達なんだ…

 

 ちょっと厳しくって、口うるさい所もあるけれど

 

 でも、優しくっていっつも私のわがままに

 付き合ってくれていたんだ、それなのに私は

 そんな雫ちゃんに甘えてばっかりで、まだ何にも

 してあげられていないんだ、だから絶対に雫ちゃんを助けたい…

 

 今の私のわがままは、雫ちゃんのために何かをしてあげる事だって思ってるから」

 

ダイが訪ねると、香織はそう答えていく

 

「そっか‥

 

 会えるといいな‥

 

 その、親友って子に」

 

「もちろん、会えるよ

 

 だからこんなところで

 立ち止まってなんていられないんだよ」

 

そういって、香織はうんっと

腕を上げて、力強いをアピールしていく

 

頑張らないとね、と言っているようだ

 

「それにしても…

 

 まさか、ウーア・アルトが

 大迷宮の入り口だったなんてね…

 

 みんなは知ってたの?」

 

「ううん…

 

 私たちは、大迷宮や解放者のことは

 聞かされた程度だったから知っていたの…

 

 詳しいことは、長老様方だけだったけどね」

 

「長老様…

 

 確か、フェアベルゲンを

 実施、取りまとめている人達なのよね?」

 

「そうさ‥

 

 ここにいる俺達の一族

 その長が、長老衆の一角を担ってる‥」

 

「でも‥

 

 長老衆も、あの化け物に‥」

 

リョクは、悔し気に呟いていく

 

「そっか…

 

 ごめんね、なんだか辛い事を

 思い出させちゃったみたいで…」

 

風香は、間接的にとはいえ

悲しい出来ごとを呼び起こしてしまった事を謝罪する

 

「‥‥それにしても、不思議な話よね…

 

 大迷宮なんて、普通だったら

 簡単に入る事なんてできないはずなのに…

 

 まるで、私たちの事を守るみたいに

 この迷宮の中に落としてしまうなんて…」

 

「まあ、ここも危険と言えば、危険だけどね…

 

 とにかく、ここから出るためにも

 この大迷宮の試練を突破しないとね…」

 

そういって、奥の方に進んでいく一同

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

一同が、攻略に向けて

進んでいく様子を見せていく中

 

とある場所において

一人の少女が目を覚ましていく

 

「う、ううう…

 

 ここは…

 

 そうです、私は確か

 罪徒に襲われて、地面が崩れて…

 

 そうだ、みんなは!?」

 

暫くは、呆けていたものの

自分の現状を理解して、急いで飛び起きていく纏

 

すると、自身の身体に

何やら、べたべたとした何かが張り付いている

 

「‥‥なんですか、これ…

 

 べたべたして、気持ち悪い…

 

 って言うか、何か私の身体を

 ゆっくりと張ってきてるんですけれど!?」

 

そのべたべたした、液体は

何と自分の身体にゆっくりと張っているのに気づく

 

そう、この液体は生きているのだ

 

「こ、この…!

 

 そうだ、槍は…!!」

 

纏は急いで自分の武器である

アーティファクトの槍を探していく

 

しかし、槍はどこにもない

と言うよりも液体はゆっくりと

纏の身体に張っていき、頭にまで行きついた

 

「こ、この…

 

 このまま黙って、食べられるものですか…」

 

そういって、自分の身体に張り付いてくる

その粘液をどうにかして、自分の身体から引きはがさんとしていく

 

しかし、魔法に適性のない彼女が

全てを散らせていくことは出来ずに

 

次第に包みこまれていく

 

「‥‥き、気持ち悪い…

 

 何だかまるで、心が何か

 不快な何かに包まれて行くような…

 

 そんな感じが…」

 

纏は、自分の心が何やら

不快な何かに包みこまれていくような

 

そんな感覚に襲われていく

 

「‥‥るせな…」

 

すると、その不快な何かは

纏の心にまで及んでいった

 

「‥‥許せない…

 

 何もかも、許せない…

 

 みんな敵だ、目につく者は、全部敵…」

 

粘液に包みこまれた纏は

自分の心を瞬く間に包みこんだ

 

激しい憎悪と敵意のままに

ゆっくりと立ち上がっていき

 

僅かに、粘液に包まれていない

左目の目つきが、異様に鋭くなっていった

 

「うああああ!!!」

 

そんな、彼女は

今までの人生でもあり得ない

 

それほどまでの怒号を上げて行く

 

「殺す‥‥皆殺す…

 

 目につく者、前に立つ者

 どんな奴も、みんなみんな…

 

 私が殺してやる!」

 

やがて、その姿は変質していき

その姿は、異形の何かに変化した

 

一同が知らない間に

悪意に満ちた試練がまた一つ

 

一同の方に牙を向けんとしていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?

  • 原罪(スルー推奨)
  • 傲慢
  • 虚飾
  • 嫉妬
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 憂鬱
  • 暴食
  • 色欲
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