世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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Tenebris cogitationes intus absconditae Das wahre Selbst in dunklen Emotionen

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ハルツィナ大迷宮

 

そこにあるとある場所において

オウから、詳しい話を聞いていたのは

 

一匹のゴブリン

 

その正体は、姫奈と風香、香織の仲間であり

本来ならば兎人族のお姉さんともいえる女性である

 

ラナ・ハウリア…

 

彼女は、改めて

オウから自分達がここに来た理由を聞いていた

 

フェアベルゲンに訪れた謎の女性

 

その正体は、強大な力を持った罪徒で

長老衆の蔑みのたったの一言によって

 

フェアベルゲンは、瞬く間に滅ぼされてしまった…

 

子供達もそれぞれ必死の思いで逃げていたが

その際に一緒に逃げていた、それぞれの家族も

その余波を受けて、そのまま亡くなってしまったという

 

「(‥なるほど‥‥

 

  私達一族が、フェアベルゲンから

  追放されている間に、そんなことが‥‥)」

 

「うん‥

 

 それで、そのあとに

 地面の中に落ちて、それで

 

 気が付いたら、ここにいたの‥

 

 周りは魔物だらけで

 とにかく必死に身を隠して‥

 

 そんな時に出会ったのが、姫奈さんなの‥」

 

怪我をしているゴブリン姿のラナの体調を

気にかけながら、話していく、こうしている間にも

 

ラナは、香織の治癒の力を受けていた

 

「‥‥ようし…

 

 これで、外傷は治ったよ

 

 それにしても、やっぱり現実味がないな…

 

 どう見ても、見た目はゴブリンなのに

 その中身はラナさん、だなんてね」

 

「まあ、私達に化ける魔物もいたぐらいだもの

 魔物に変えられてしまっているなんて現象があっても

 

 不思議だとは思わないわね…」

 

香織は目の前の出来事がいまだに信じられない様子である

 

姫奈自身は、割と理解が出来ているといった様子を見せている

 

「(‥それにしても、どうしてお二人は

  私の事が分かったんですか、正直に言って

 

  私は、いきなり斬りかかられるものだと‥‥)」

 

ラナはそう尋ねていく、のだが

 

「ええーっと…

 

 ごめん、やっぱり何言ってるのかわかんないや…」

 

香織は苦笑いを浮かべながら答えていき

それを聞いて、ラナは少し複雑そうにしていく

 

そこに

 

「あ、あの‥」

 

オウが、話しかけていく

 

「多分、姫奈さんと香織さんがどうして

 自分の事を助けてくれたのかって聞いてるんだと思います‥」

 

「えーっと…

 

 そうなの?・」

 

姫奈が訪ねると、ゴブリンの姿のラナは首を縦に振る

 

「‥‥まあ、ぶっちゃけて言うと…

 

 分かんなかったのよね…」

 

「(へ‥‥?)」

 

姫奈のカミングアウトに

ゴブリンの鳴き声越しにもわかるほどに

間抜けな声を上げて、あっけにとられていく

 

「うん…

 

 ぶっちゃけ、私たちは最初は

 仲間にいじめられているゴブリンが

 何かかわいそうだから助けてあげようかなって…

 

 それで、助けただけなんだよね…

 

 ハッキリ言って、オウちゃんが

 教えてくれないと、私たちも分かんなかった…」

 

香織が続けて、申し訳なさそうに呟いていく

 

「(そ、そんなぁ~‥‥

 

  でも、まあそれでわかってくれたなら

  もう何にも云わないよ、うん、もう何もいわない‥‥

 

  言わないんだよ~‥‥)」

 

ブツブツと、何かを言っていくラナ

 

「‥いじけちゃった‥」

 

「まあ、ぶっちゃけ見た目全然、ゴブリンだしな‥」

 

ダイが、はっきりと言い放っていく

 

「それにしても、オウ?

 

 どうしてアンタは、このゴブリンが

 ラナさんなんだってわかったの?

 

 この中で、一番にあなたは気が付いていたみたいだけど‥‥」

 

エルフ、森人族の少女のアルサジがオウに訪ねていく

 

「え、えーっと‥

 

 その‥」

 

オウはどうしようかと考えていると

 

「(ラナさん‥ここは‥‥

 

  このゴブリンはほかの魔物とは

  何だか違う雰囲気を感じたんだって言ってください

 

  いずれはバレるとはいえ、まずはこの場から

  どうにかして出ていく事を考えて往かないと‥‥)」

 

ラナが、ゴブリンの言葉が

他の面々に分からないのをいいことに

 

オウにそう、アドバイスを送っていく

オウは、それを聞いてわかったと頷いていく

 

「私ね、何となくだけれど

 このゴブリンさんが、今までに出会った

 ゴブリンとは何かが違うような気がしたの‥

 

 それで、助けてあげたときに

 魔物にしては、温かい感じがしたんだ」

 

少し無理があるかもしれないが

オウは精一杯考えて答えていった

 

「ふうん、そういうもんなのか?」

 

「なんかどっか取ってつけたような感じがするよな」

 

ダイとリョクが、最初にご門不を浮かべて来た

オウは、内心どうしようかと焦っていく様子を見せる

 

だが

 

「で、でも…

 

 このゴブリンさんが、危険じゃないって

 分かった事だって、事実なわけなんだし…

 

 僕は、それでいいと思うよ」

 

ドワーフ、土人族の少年のユーカがそう答えていく

 

「‥‥そうね、それでもしも危険な魔物だったら

 とんでもない事態になっていただろうけれども‥‥

 

 実際にこのゴブリンさんは危険じゃないみたいだし

 少なくとも、そこは当てにして大丈夫だって思うよ?」

 

「わ、私も‥

 

 オウちゃんは良い子だって知ってる

 だから私も、そんなオウちゃんの事を信じたい」

 

アルサジとランがそれに答えていく

 

「‥まあ、そうだな‥

 

 オウの答えにはまだ、納得が言ってねえけど

 このゴブリンが少なくとも、俺達を襲う気がないのも事実だしな‥」

 

「だったら、俺らも何も言わねえよ」

 

ダイとリョクも、渋々ながらそう答えていく

 

「‥‥ごめんね、オウ

 

 無責任に訪ねてしまって‥‥」

 

「う、ううん‥

 

 私の方こそ‥ごめんなさい‥」

 

アルサジは自身の質問のせいで

このような事態になってしまった事を謝罪する

 

オウは少し戸惑いながらも、自分を信じてくれたならとそれを受ける

 

「(なかなか難しいですね‥‥

 

  シアちゃんの時は、私達が

  そういうのを気にしない人だって

  分かっていたからこそ、秘密を共有出来た‥‥

 

  でも、今は訳が違う、ここにいる子達は

  種族が本当にバラバラ、何よりここに落ちるまでは

  面識だってほとんどなかった子達なんだもの、不安はあるでしょうね‥‥)」

 

ラナは、治療を受けながらそんな彼らのやり取りを見つめていた

 

それからしばらくして

 

「はい、これで終わったよ

 

 聖徒に覚醒してからか

 体の構造が違う魔物でも

 治癒の方だできるみたい…」

 

「(ありがとうございます‥‥

 

  でも、私の身体はまだ元に戻らないんですね‥‥)」

 

怪我は治ったものの、ゴブリンの姿のままなのが気になるラナ

 

「ごめんなさい…

 

 何とか、元に戻せる方法があればいいんだけれど…」

 

「‥‥とりあえずは、様子見をしておきましょう…

 

 もしもこれが、敵の罠なら、その大元さえ倒せばいいし

 これが迷宮の試練の一環だっていうのなら、ずっとってこともない…

 

 元に戻せる可能性なら、ないわけじゃないわよ」

 

「(姫奈さん‥‥

 

  ありがとうございます!)」

 

そういって、頭を下げるゴブリン姿のラナ

 

言葉は話せないものの、こういったしぐさのおかげで

伝えられることもある、それを見てどこか安堵した様子を見せていく

 

「ところで、風香はまだ戻ってこないの?」

 

「もうそろそろかな?」

 

姫奈が不意にこの場にいない

もう一人の人物の話題に入っていく

 

その人物

 

西宮 風香

 

 

彼女は、三人の中では

最も運動能力が高いことと

 

風魔法の応用で、辺りの索敵を

行ってもらっているので、それを使って

これから進む道であろう、その先に向かっている

 

もちろん、深追いはしないように言っているが

それでも、まだ戻ってこないのは少し気になるところでもある

 

しかし、その心配も一同の耳に届いた言葉で、安堵に変わっていく

 

「おーい!」

 

一同のもとに戻ってくる風香の姿に安どするみんな

 

「あ、風香ちゃん

 

 戻ってきt…」

 

香織が、そこまで言うと

姫奈は剣を抜いて、風香に斬りかかっていく

 

「うわあ!?

 

 な、何するの…」

 

「‥‥…」

 

風香は、それを槍で止めると

姫奈はスンスンと、臭いを確かめる

 

「‥‥オッケー、本物ね」

 

「‥‥うう、戻ってきたと同時に攻撃されて

 挙句には臭いまでかがれて、もうお嫁にいけないよ…」

 

風香は事情が事情とはいえ、このやり方には

どこか異を唱えている様子であった、まあ当然であろう

 

仲間にいきなり攻撃されて、挙句には

自身の臭いを嗅がれる、相手が同性とはいえ

年ごろの一少女にしてみれば、色々と形容しずらいものである

 

「まあ、貴方の言う事も分かるわ

 だから、ここを早く出てしまいましょう…

 

 魔物に姿を変えられるのも、逆に

 姿を変えていく魔物も、おそらくはこの辺りの特徴よ

 

 オルクス大迷宮やライセン大迷宮も

 フロアごとに、それぞれ特徴があった

 

 だったら、ここを出ればその問題も何とかなるかもしれないしね…

 

 それで、調べてきた方に問題の方はない?」

 

「‥‥それについては、問題はなかったよ…

 

 一応は辺りにも索敵をかけておいたけれども

 この先に続く道の方に、魔物は見られなかった…

 

 進んでも問題はないと思うよ」

 

風香は、どこか早くここから出たい気持ちが

出ているようであり、そわそわしている様子が見られる

 

「‥‥じゃあ、行きましょう…

 

 でも一応は、辺りの警戒もしておいてね」

 

「うん!」

 

どこか、嬉しそうに答えていく風香を見て

しょうがないわねと呆れながらも、進んでいく

 

「‥なあ、臭いをかがれるのって

 そんなに嫌な言葉なのか、だって

 そうじゃないと、偽物かどうかも分かんねえし‥」

 

「ダイ?

 

 女の子には女の子の事情があんの

 それに踏み込んだら痛い目に遭うんだから

 くれぐれも、私たちの臭いもかがないように

 

 いい?」

 

アルサジは、笑顔でダイに言う

しかし、その顔はまさに笑っているのに笑っていない

 

そんな状態であった

 

「は、はい‥」

 

「わ、わかりました‥」

 

ダイはもちろん、自分が言われたわけではない

そのはずのリョクも、恐る恐る了承するのであった

 

姫奈たちと子供達は、周りに警戒しながら

次の階層にへと続いていく道を進んでいく

 

何事もなく、無事に進んでいき

そのまま、入口の方にまでやってきた

 

「‥‥とりあえずは何事もなく、進めたわね…」

 

「ああ、これでやっと

 臭いをかがれるなんて恥辱から逃れられるよー…」

 

風香はこころから、この階層からの脱出を喜んでいる様子

 

「待って、風香ちゃん

 

 この次の階層だって

 何があるのかわからないんだよ…

 

 身長に進んでいかないと…」

 

それを香織が諫めていく

 

「‥‥…」

 

「な、何…?」

 

香織の方をじっと見て

彼女の身体の方に、顔を近づけていき

 

クンクンと、臭いをかいでいく

 

「な、何…?」

 

「‥‥ごめん、いつもの香織だったら

 注意するよりもされる方だったから…

 

 てっきり偽物かと思って…」

 

「ちょっと!?

 

 それは二重の意味で失礼じゃない!?」

 

風香が行動の意味を伝えると

香織はショックを受けた様に言う

 

「‥‥そうよ、風香

 こう見えても、香織だって

 成長してるんだし、確かにまだ

 

 天然な部分が残ってるし、ちょっと

 無茶なことをしでかす傾向が大きいけれども

 

 それでも香織は、立派になっているのよ」

 

「姫奈ちゃん!

 

 それ、成長はしてるけれど

 中身は変わってないって言ってるようなものだからね!!」

 

姫奈のとところどころ、ディスられている言い方に

香織の方も、たまらずに突っ込みがてら抗議していく

 

「まあ、何にしても

 この香織は本物よ

 

 例の臭いはしていないし

 そこははっきりと言えるわよ…」

 

「そっか…

 

 ごめんね、香織」

 

「わかってもらえたならよかったよ‥‥ぐすん…」

 

すこし泣き顔になってしまっている香織

 

そんな光景を見ていた子供達

 

「‥な、なんだか変な感じだな‥

 

 この姉ちゃんたち強いのに

 なんかどこか抜けてるって言うか‥」

 

「でも‥

 

 私、こういうのは嫌いじゃないかも」

 

「ぼ、僕も…

 

 怖い人たちよりは、良いと思うし…」

 

子供たちは、どこかあっけにとられていた

姫奈と香織、風香は不思議と自分達が教えられている

人間と言う種族とは、まったくもってあってはいない

 

だが、不思議とそれが子供達に安心を与えてくれている

 

「(私も、最初に出会った時は

  みんなと同じ気持ちだった‥‥

 

  でも、亜人である私の事を知っても

  特にそれで何かを変えたわけじゃなかった‥‥

 

  私には、それが不思議と嬉しくて安心できて‥‥

 

  気が付いたら、私にとってそれが

  不思議と心地がいいなって感じたんです)」

 

「そうなんだ‥」

 

ゴブリン姿のラナはそう呟く

唯一、その言葉が分かるオウは

小さな声で、そう返していった

 

「ほら、お姉ちゃんたち!

 

 早く行かないといけないんでしょ?

 

 いつまでも騒いでないで、速く行くよ」

 

「うぐ‥‥ご、ごめん…」

 

子供に注意されて少し罰が悪そうにしながらも

自分に比があるのは、わかってはいるので謝罪する姫奈

 

「「ごめんなさい‥」」

 

香織と風香も、素直に謝っていく

 

そんなシュールな光景を見おさめにして

急いで、次の階層に続いていく道を行く

 

「…あれ?

 

 ここ、行き止まり?」

 

次の階層への入口に入るが

そこは、ちょっと中に続いているだけで

そこから先は、岩の壁に覆われた行き止まりであった

 

「なんだよ、どうなってんだ?」

 

「まさか、道を間違えたってわけじゃねえよな?」

 

ダイとリョクが、脱力したように言う

 

「っ!

 

 みんな!!」

 

香織が呼びかけていくと

一同が入った足元から魔法陣が広がっていく

 

「これは、転移魔法陣!?」

 

「みんな、急いで中央によって!!」

 

香織達が子供達を集めて

魔法陣の中心によって互いに身を寄せ合っていく

 

そして…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

次の階層

 

 

そこには無数の魔物たちが

おびえるように何かから逃げている

 

その先から、何かがつぶれる音が響く

 

それと同時に響いていくのは

骨が折れて、肉がつぶれていく

 

少なくとも、気持ちのいい音ではない

 

そんな音の中心では

何かが、魔物の群れ達を追い回していた

 

そこにいるのは、槍を振るう一人の人物

髪は肩の辺りまで切りそろえられた明るい茶髪で

きめ細かい肌と合わせて人形を思わせていく美少女

 

しかし、その少女の表情は

そんな身目麗しい容姿とはかけ離れ

 

怒り、憎しみといった

どす黒い何かを感じさせていた

 

「殺す‥‥みんな、殺す…

 

 みんな‥‥みんな…」

 

その体に、付着している

粘着性の液体から、何やら

どす黒いオーラが湧き出ている

 

そのせいで、少女は

その精神を犯されてしまっている様子

 

もう、その表情から

正気の様なものは感じられない

 

あるのは、世界への憎しみと

自身への理不尽への怒り、そんな自分と

まったく別の道へと問題なく歩めているもの達への嫉妬

 

例を挙げるのなら、このぐらいだろうか

 

「うああああ!!!」

 

少女の怒号は、辺りに響き辺り

その場にいた魔物たちすらもおびえさせた

 

魔物たちも、生き物である以上は

人間のように言葉を話したりするような

そんな知性は持ち合わせてはいないものの

 

それでも、何かを感じ取る慣性

それ自体は持ち合わせてはいるだろう

 

だからこそ、今の少女の中から

あふれ出ていくオーラのようなものに

逃げ出していく、しかしそんな中で逆に

寄っていくのもいた、それは見た目が生き物と言うべきか

 

全くもって言い表せないもの

 

姫奈たちが召喚された世界で言うスライム

この世界ではバチェラムと呼ばれる魔物である

 

その魔物が、少女の身体にさらに集まってきている

 

「うああああ!!!」

 

段々と押し寄せてくるどす黒い何かに押しつぶされていかんとする少女

 

そして…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

転移魔法陣から放り出された一同

 

「‥‥ふう…

 

 みんな、いるわね?」

 

姫奈が、全員の安否を確認していく

 

「私もいるよ!」

 

「なんとか無事だね…

 

 みんなは?」

 

香織と風香が第一声を上げて行く

続いて風香が子供達の方に呼び掛けていくと

 

「みんな、無事!?」

 

「なんとかな‥」

 

「足踏まれたけど、何とか無事だった‥」

 

「ごめん‥」

 

「私たちも無事にいます‥」

 

「僕も…」

 

子供達もかけることなくそこにいた

 

「‥‥あれ?

 

 ラナさんは?」

 

「あれ!?

 

 ラナさん、一体どこに…」

 

ゴブリン姿のラナの姿が見つからず、辺りを探していた

 

その時

 

「(ちょっとぉ~、すいませ~ん!

 

  私の声、聞こえてますよね~?)」

 

「っ!

 

 ラナさんの声が聞こえる‥

 

 でも、なんだか弱々しい様な‥」

 

ラナの言葉を唯一聞くことが出来るオウが

ラナの弱々しい声をその耳で聴きとっていく

 

その場所は

 

「「あ‥」」

 

「(早くおりてくださああい!!!!)」

 

一同の下敷きになってしまっていた

 

それから、しばらくして

 

「(うう、酷いですよ皆さん

 

  いくら今の私の姿が魔物だからって

  みんなで私を足蹴にしていくだなんて‥‥)」

 

「みんな、気が付かなかっただけだってば‥

 

 ほら、みんな誤ってるから」

 

自分を足蹴にして、知らんぷりされたことに

すっかり拗ねて、頬膨らませて一同にそっぽを向いている

 

所謂、ほっぺをぷくーっと膨らませて

一同に背中を向けて、つーんと無視を決め込んでいる

 

元の姿のラナなら、男の気を引けるだろうが

いかんせん、今はゴブリンの姿なのでなんとも気色が悪い

 

「(吹き出しもひどいですね!?)」

 

何にせよ、全員がそこにいることは確認された

 

「‥‥さて…

 

 それじゃあ、ここから先に進みましょう…

 

 香織、子供達の方をお願いね

 風香は前に出て、索敵の方をお願い」

 

「わかった」

 

「オッケー」

 

そういって香織は子供達の傍に

風香が一行の前に立って、扇動していく

 

「なあ、なんでこんな回りくどい事するんだ?」

 

「魔物なんて、片っ端から倒せばいいのに‥」

 

血の気の多い、ダイとリョクは呟く

 

「あのね、私達を守らないといけないんだし

 もしも襲ってきたら、対処の方あできないでしょ

 

 それに、姫奈さん達にはほかにやらないといけない事があるんだし」

 

アルサジが、それに答えていく

 

「やらないといけない事?」

 

「ほら、姫奈さん達は同じように

 この迷宮に迷い込んだ仲間がいるって‥」

 

「‥ああ、そういえばそうか‥」

 

ランに説明されて、ダイもリュカも納得する

 

「それに、この場所にどんな魔物がいるのかもわからないのに‥‥うん?」

 

アルサジは、そこまで言うと

自身の頬に。何かが当たる感触を覚える

 

「どうかした?」

 

「あ、はい‥‥

 

 何だか、雨が降ってきたみたいで‥‥」

 

「雨って…

 

 ここは迷宮内なのに

 雨なんて降るかしら?」

 

姫奈は、自分の身体を伝っていった感触を覚えた

 

それは、アルサジの言うように、雨のようだが

それにしては妙に粘り気がある、なんだか嫌な感じがした

 

「‥‥嫌な予感がするわね…

 

 香織、私達の頭上に障壁を展開して!」

 

「わかった!」

 

そういって、香織は一同の頭上に

円刃を使って、降ってきている雨のようなものを遮る

 

障壁越しに、落ちてきたそれは

タダの雨にしては、妙に粘着性がある

 

「まさか、迷宮にも雨が降るなんて…」

 

「いいえ、これは雨じゃないわ」

 

姫奈はそういって、自身の身体を伝った

水を指で掬って、それを見つめていった

 

見たところは、なんの問題もなさそうである

 

「いったい何なんだろう…

 

 この液体…」

 

「(っ!

 

  危ない!!)」

 

「っ!

 

 風香お姉ちゃん、危ない!!」

 

ゴブリンの姿のラナの呼び声に

反応したオウは、風香に呼び掛けていく

 

その時

 

「きゃ!」

 

地面の下からも、液体が噴き出していく

 

風香は、かまわずそれを全身で浴びてしまい

更にはそれによって、全員にも飛び散ってしまう

 

ただ、姫奈はそこから一番奥にいたため

余りかからず、子供達の方もオウだけが

とっさに、ゴブリンの姿のラナがかばったので

 

この二人は、液体がかかることはなかった

 

「っ!

 

 これって、スライム?」

 

「でも、気配は感じられなかった…

 

 そう考えるとこれは、この迷宮のトラップってところかしらね」

 

姫奈は言う

 

一見すると、スライムにも見えるが

この液体はあっちこっちから噴き出していき

 

それらが、一同の方に向かって湧き出しているのだ

 

「どうしよう…

 

 このままだと、私たちの地面の周りが

 全部この液体に覆われちゃう、そうなったら…」

 

「最悪、この中を掛けていくしかないわ…

 

 液体自体は触れても、大したことは

 なさそうだし、多少濡れるのを我慢すれば…」

 

姫奈は言う

 

しかし、障壁を張る前に

多少の液体を浴びてしまった

一同の様子がおかしくなっていく

 

「な、なにこれ‥‥

 

 何だか‥‥どす黒い何かに覆われていくような‥‥」

 

アルサジは、不意に呟いていき

自身の心に、真っ黒な何かを感じ取っていく

 

そこに浮かんできたのは、抑えきれないほどの悲しみと怒りである

 

「どうしてなの‥‥どうして‥‥

 

 お父様も、お母様も死んだりなんてしたの‥‥

 

 どうして、みんな殺されないといけないの‥‥?

 

 許せない‥‥許せない‥‥」

 

次第に、一同の様子がおかしくなっていく

 

「みんな…?」

 

姫奈とオウは、かかっていた液体が少なかったからか

影響自体はまるで出ていない様子である、それ故なのか

一同の様子がおかしいことにいち早く気付くことが出来た

 

だが

 

「‥‥ハジメ君…ハジメ君!」

 

「父ちゃん‥!」

 

香織や子供達が次々と様子がおかしくなっていく

 

「まずい、みんな!

 

 気をしっかり持っt…」

 

「うるさい!

 

姫奈が呼びかけようとしていくが

そんな姫奈に攻撃を仕掛けていったのは

 

香織であった

 

「香織…!」

 

「お前のせいだ…

 

 お前のせいで、ハジメ君は…

 

 いわれのない悪評を付けられて

 友達からも、家族からも見捨てられた…

 

 何よりも、そのせいで私はハジメ君から距離を取られた…

 

 許せない‥‥許せない…

 

 お前だけは絶対に許せない!」

 

そういって、姫奈に向かって攻撃を仕掛けていく香織

 

その表情からはどうしようもないほどの怒りが感じられ

もはや、姫奈の言葉が届いていく様子は見られない

 

「いったい何がどうなって…」

 

姫奈は、香織の攻撃に対応していくと

その背後から、殺気を感じ取って攻撃を交わす

 

「きゃ!」

 

その攻撃を仕掛けてきたのは…

 

「‥‥嫌い、皆大っ嫌い!

 

 確かにうちはお世辞にも裕福とは言えないけど

 だからって、なんでそれだけで私達の事を決めつけられないといけないの!!

 

 私だって‥‥私達だって…好きで貧乏なんてやってねえんだよ!!!」

 

そういって、武器であるアーティファクトの槍を振るっていく

 

「‥‥風香、まさか、貴方まで…

 

 もしかして、この液体のせいか!?」

 

姫奈は、香織の障壁によって

阻まれている液体を見て、言う

 

彼女達の様子がおかしくなった理由

 

それは、十中八九

この液体のせいだろう

 

だからこそ、液体があんまりかかっていない

姫奈は、その影響を受けていないという事なのだろう

 

「み、みんな‥」

 

一方、子供達の中で唯一

液体を浴びていないオウであるが

 

「なんでだよ、父ちゃん‥

 

 なんで父ちゃんが殺されないとならねえんだよ‥」

 

「父ちゃん、母ちゃん‥

 

 うああ!!」

 

子供達の方は、香織や風香のそれと違って

怒りではなく、悲しみの感情を出していた

 

「おじい様‥‥おばあ様‥‥」

 

「母さん…」

 

「うああ‥」

 

余りの光景に、オウはどうしたらいいのかと戸惑っている

 

姫奈に頼りたいが、姫奈は香織と風香の対応にかまけている

 

とてもではないが、どうにかできる様な状態ではない

 

「どうしよう‥どうしたら‥」

 

オウは一人、自問自答を繰り返していた

 

だが、そんなオウに話しかける者が

 

「(大丈夫だよ‥どうか落ち着いて‥)」

 

そういって話しかけてきた人物を見て

オウは、目を見開いていた、何故ならその人物は…

 

「ラナさん!?」

 

「(オウちゃん、こういう時は

  相手のことは考えずにただ呼び掛けて‥‥

 

  みんなの事を考えて、迷うのなら

  それは考えずに、ただ自分の言葉をぶつけて!

 

  みんなに呼び掛けて行くように!!)」

 

ラナは、そうアドバイスを送っていく

 

「‥わかった」

 

オウはそれを聞いて、子供達の方に向いていく

 

「みんな、しっかりして!

 

 どうしてそんなに悲しんでばっかりいるの

 どうして苦しんでばっかりいるの、確かにみんなは

 みんなの家族や、皆の居場所を奪われてしまった事は

 

 悲しいし、苦しい事だって思う‥

 

 でも、私達がそれで手に入れたのは

 なにも悲しみと苦しみだけじゃないでしょ!?」

 

オウの呼びかけに、子供達は彼女の方に向いていく

 

「私たちのお父さんとお母さん

 お兄ちゃんやみんなは、私たちの事を

 逃がすために、全部を注いだんだよ

 

 私たちは、そんなみんなの思いを決意を‥

 

 ここに来るまでに貰ったんだよ‥

 

 だからお願い、その悲しみと苦しみの中に

 確かにある、それらよりも大切なものを、みんな‥

 

 思いだして!」

 

オウは言う、すると

 

「‥‥そうだった‥‥

 

 私達は、あの時‥‥

 

 大切な思いを残されたんだ‥‥」

 

「父ちゃんも、かあちゃんも、命を懸けて

 俺を生かしてくれた、だから俺は生きるって決めたんだ‥」

 

「そうだ‥

 

 こんなところでうじうじしちまったら

 それこそ、父ちゃんにどやされちまう」

 

「そうだよ…

 

 母さんは最後の最期まで

 僕の幸せを祈ってくれたんだ…

 

 だから僕は、母さんの分まで生きていきたい!」

 

「私も生きる‥もう後ろ向きになんてなりたくない!」

 

子供達は、自分達の身体に染み付いた

粘液から流れ込んでいく、どす黒い何かを払拭していく

 

「みんな!」

 

それを見た、オウは嬉しそうな笑顔を浮かべていく

 

「(やったね、オウちゃん!)」

 

「ラナさんのおかげだよ

 

 それにしても、どうしてラナさんは

 私を庇って、粘液を浴びたのになんともないの?」

 

オウは不意に、首をかしげて疑問符を浮かべていく

 

「(分かりません‥‥

 

  多分ですけれど、今の私は

  亜人ではなく、魔物だからかも‥‥

 

  この液体は、魔物には効かないからかもしれません‥‥)」

 

ラナはそう推測していく

 

ラナにも抱えている思いがあるかないかと

言われると、当然ながらある、自分は帝国兵に

襲われてしまった際に、仲間を見捨てて逃げてしまい

 

挙句には、自身の軽率な行動が原因で

自分の仲間たちを、魔物に変質させてしまった

 

その時の感傷は、今でもラナの心に残り続けて居る

 

だからもしも、この液体が浴びた者の

どす黒い感情を呼び起こしてしまうのなら

 

ラナにも、その時の感情が現れるはずだ

 

だから、液体を浴びた自分に

何の影響も出ない理由は、それは

 

今の自分は、魔物の姿だから

 

それ以外に考えられないのである

 

「そっか‥」

 

「(何にせよ‥‥

 

  最低でも香織さんを

  この液体をやり過すには‥‥

 

  香織さんを正気に戻さないと‥‥)」

 

ラナの言葉を聞いて、オウは力強く頷いた

 

「姫奈お姉ちゃん!

 

 二人に呼び掛けて!!

 

 このままだと、私たちもこの液体を浴びて

 みんなと同じになっちゃう、だからお願い!!!」

 

「っ!?

 

 分かった…」

 

姫奈も、それを聞いて

自分を殺さんと迫る二人に目を向ける

 

「あんた達、いい加減にしなさいよ!

 

 情けないとは思わないの?

 

 確かにアンタたちのその怒りは

 もっともなのかもしれない、でもね!!

 

 だからって、そんな得体のしれない液体を

 浴びてしまっただけで、そんなのに捕らわれる程

 

 あんた達の意志は脆弱なものだったって言うの!?」

 

姫奈は、そういって

聖徒の姿になり、その手に聖器の剣

 

聖剣を手に取っていく

 

「確かに、この世界に来て私達は

 大切なものを失って行った、でも…

 

 それと同時に得た者もあったはずよ

 

 私たちを召喚した教会や

 そんな私達を受け入れた国と袂を分かち…

 

 冒険者として過ごしていくうちに

 私たちはこのトータスの、世界の真実をしった…

 

 でも、そんな中でも私達は決してあきらめずに

 前を向いて、希望を見失うことなく、進んでいく…

 

 私たちの事を命を懸けて守ってくれた南雲君や

 私達に全てを託してくれた、ミレディさんのあの時の行動…

 

 あの時のそれぞれの、折れず曲がらない強い意思を…

 

 もう一度、心に刻め!」

 

そういって、剣を掲げていくと

その件に炎を纏わせていくと、そこから

勢いよく、熱風のようなものが吹き荒れていく

 

すると

 

「‥‥姫奈ちゃん…

 

 そうだ、私が抱いてる

 ハジメ君への想いって言うのは

 

 こんなに黒いものなんかじゃない!」

 

「確かにうちは貧しい…

 

 でも、それでもお父さんやお母さん

 お姉ちゃんや妹達と、笑顔で過ごしてきたんだ…

 

 貧しいからって、全部が全部、不幸だったわけじゃない!」

 

二人の体にかかった液体は、二人が再び

強い意思を持つのと同時に、姫奈の熱気で蒸発していった

 

「すごい‥」

 

「(さっすが、姫奈さん‥‥

 

  いいえ、きっとそれだけではないですね)」

 

子供達にかかっている液体が全て蒸発していく

 

姫奈の剣に纏われた炎から放たれた熱風によって

一同にかかった液体は蒸発していった、しかしラナは

一行が黒い何かに捕らわれてしまったのは決して、それだけではない…

 

ラナはオウや姫奈の呼びかけによって

彼女達の中に巣食ったどす黒い何かが

払われて行ったのだと、感じていたのだった

 

「はあ‥‥はあ…

 

 な、何とか振り切れたよ…

 

 ありがとう、姫奈ちゃん…」

 

「いいえ、私は何もしていないわ…

 

 それよりも、障壁を前方と左右だけに張って!

 

 この液体をかき分けて、進んでいくわよ!!」

 

姫奈がそう指示を出していく

 

香織はそう言われて、前方と左右に

障壁を張って、液体をかき分けながら進んでいく

 

「うえ…

 

 障壁ごしに見ても

 あんまり気持ちのいいものじゃないね…」

 

「みんな、走って!

 

 下の方から湧き出してくる

 液体の方に目を向けて行って!!」

 

姫奈は指示を出していく

 

障壁を下に張れば、その問題はないが

そうなると思うような移動が出来なくなってしまう

 

何より円刃に乗れる人数も限られるので

どうしても、移動はこれ以外に取ることが出来ない

 

「‥‥なんだか、ちょっとした海みたい…

 

 最も、まったく綺麗って感じはすいないけれどもね…」

 

「全くね…

 

 それにしても、どうして

 こんなにもたくさんの液体が…」

 

段々と、障壁で遮った所以外の

足元が液体に覆われていき、足がつかるほどになっている

 

「うえ‥

 

 こんなところ、上手く出られるのかよ‥」

 

「わかんねえけど‥

 

 だからって、どこかにいれば

 安全だって言う保証もねえし…」

 

ダイとリョクも、周りを見て警戒している様子を見せていく

 

「(‥っ!

 

  オウちゃん、あそこ!!)」

 

ゴブリンの姿のラナが

オウにある場所を伝えていく

 

そこにあったのは

 

「みんな!

 

 あそこの上、液体が出てきてないよ!!」

 

オウはみんなにも、そのことを伝えていく

 

「なるほどね…

 

 あそこに上がれば、ひとまずは安心みたいね…

 

 風香、行ける!?」

 

「ええ!

 

 香織、姫奈

 小さい子供達を抱えて!!」

 

風香がそういうと香織はオウを

姫奈はランを抱えていく、ちなみに

オウはゴブリンの姿のラナの事を抱えている

 

「風よ!」

 

風香が槍を振るうと

一同は風によって吹き荒れていき

 

そのまま、上の方に上がっていった

 

「‥‥よっと…

 

 みんな、大丈夫?」

 

「なんとかね…

 

 それにしても…」

 

自分達がいた部分は、どす黒い液体に覆われ

自分達の知っている海とは似ても似つかない濁った海が出来ていた

 

「うげえ‥

 

 遠目で見てみると

 ますます、へんな感じがするな‥」

 

「でも、臭いとかそういうのは感じねえな‥」

 

ダイとリョクがそう呟いていく

 

「‥‥どう、姫奈?

 

 何か分かりそう?」

 

「そうね…

 

 この液体から、微量な魔力を感じるけれど

 魔物のそれと違って、漂っている程度だと思うわ…」

 

「どういうこと?」

 

水に向かって、探知を掛けていく姫奈だが

現状、この階層を海のように覆って居る液体には

バチェラム、もといスライムから感じる本格的な魔力は感じられない

 

せいぜい、この液体に微力な魔力が漂っているのみである

 

「‥‥多分だけど、これは

 魔物の身体からあふれて来た

 

 所謂、その魔物の一部のようなもので

 この液体自体に、意志とかそういうのは感じられない…」

 

「という事は…

 

 この液体を垂れ流している

 本体の様なものがこの階層にいるってことね…」

 

姫奈の言葉を聞いて、そう解釈していく風香

 

「‥っ!?」

 

すると、オウが何かを感じ取った

 

「(どうしたの?)」

 

「わかんない‥

 

 でも何だろう、わかんないけれども

 この近くから、なんだかとてつもない‥

 

 激しい何かを感じてる‥」

 

オウの言葉を聞いて、一同も彼女をみる

 

「その気配は‥‥どこから、感じるの?」

 

香織が恐る恐る訪ねていく

 

「‥っ!

 

 来た!!」

 

オウが叫ぶように言うと

目の前に広がる、液体の海から

何かが、ぬぼーっとゆっくりとせりあがってきた

 

「‥‥殺す…殺す‥‥…

 

 私の代わりにいる、奴等

 みんなまとめて、殺してやる…」

 

そういって、一同の周りにいる陸地に

ゆっくりと這い上がっていくように現れた

 

「こいつ‥魔物!?」

 

「って、魔物がしゃべってる!?

 

 そんな事って‥」

 

目の前に現れた、謎の魔物を見て

おそるおそる、下がっていく一同

 

「ちょっと待って…

 

 この声…」

 

姫奈は魔物が呟いている声に聞き覚えがあった

 

「みんな‥‥みんな、殺してやる…!」

 

こちらを睨みつける憎悪の瞳

それを見て、姫奈たちは驚愕する

 

「「「纏(ちゃん)!?」」」

「(纏さん!?」

 

そう、目の前に現れた

液体に覆われている人型の正体

 

それは、姫奈たちの仲間である

 

北浦 纏

 

 

彼女であった

 

「どういう事よ…

 

 なんだって、そんな姿に

 なっちまってるのよ、纏!」

 

姫奈は叫ぶように言う

 

すると

 

「南野‥‥姫奈…

 

 西宮‥‥風香…

 

 白崎‥‥香織…」

 

自身の仲間である、彼女達の名前を上げて行く

 

それを聞いて、名前を挙げられた三人は

ごくりと生唾を飲み込んでいった、だが

 

そんな一同の期待は…

 

「‥‥ろ…」

 

瞳は一瞬、穏やかになったが

直ぐに憎悪を含んだものとなり

 

「殺す!

 

 みんな殺してやる!!

 

 目についた奴は、何だろうと

 誰だろうと、みんなみんな殺してやる!!!

 

 うがああああ!!!」

 

そういって、手に持った槍を

棒のように振るい、一同に攻撃を仕掛けていく纏

 

「な、何だよ‥

 

 全然ダメじゃん‥」

 

「‥でも妙だぜ、あの粘液‥

 

 俺たちのように液体がかかったとか

 そう言ったレベルじゃねえよ、あれって‥」

 

リョクの言う通り、纏の身体を覆っている粘液は

香織達や子供達に駆けられた液体にしては、妙である

 

纏の身体を覆っていくほどに多い

と言うよりも、彼女の身体から液体が流れている

 

「‥ひょっとして‥

 

 あのお姉ちゃんにかかっているのは

 液体じゃなくて、その液体を生み出している

 

 本体なんじゃ‥」

 

ランは、そう推測していく

 

「だとしたら、やることは決まったわね

 

 あいつを倒して、纏を救いだすわよ」

 

そういって、武器である剣を手に取り

香織と風香も、それぞれの武器を手に取っていく

 

「でもどうするの?

 

 纏ちゃんの身体を覆っている本体に行きつくには

 あの、例の液体を極力浴びないようにしないといけないのよ」

 

「私が、障壁を使って

 防いでもいいけれども…

 

 それだと、攻撃の時に一度解除しないといけないし…」

 

風香と香織も、大いに悩んでいく

だが、姫奈は二人とは違ってその様子はない

 

「‥‥それについては大丈夫よ…

 

 私だったら、この液体の効力を

 無力化していく事なら、出来ると思うから…

 

 でも、もって恐らく四分間だけしかないから

 風香と香織は、奴に近づいていくだけの時間を稼いで!」

 

姫奈は言う

 

「‥‥それだけあれば、行けるのよね…」

 

「‥‥ええ、わずかでもタイミングがずれたら

 奴にたどり着くことが出来ても、纏から本体を

 切り離していく事ができなくなってしまうわ…

 

 その為のキーマンは、貴方達よ!」

 

姫奈の言葉を聞いて、ごくりと生唾を呑む

 

失敗は許されない、その遠回しな言い方が

香織と風香に、極度の緊張を与えていった

 

「‥‥はああああ…」

 

姫奈は、ゆっくりと剣を振るっていき

精神を研ぎ澄ませて行き、目を閉じていく

 

しばらくして

 

「っ!

 

 はああああ!!!」

 

姫奈は自身の身体に炎を纏わせていき

目を見開き、目の前にいる纏の方に目を向ける

 

「姫奈ちゃん!

 

 自分の身体に炎を!?」

 

「そっか!

 

 確かにあれだったら

 液体を浴びても蒸発して

 何の効果もない、けれども

 あのままだったら、自分の身も燃やしてしまうわ!!」

 

「そのための四分間と貴方達のサポートよ…

 

 行くわよ、二人共!」

 

「「っ!!」」

 

香織は本のページを開き

風香も、手をかざして魔法の構えを取る

 

「殺す、殺す…

 

 みんな‥‥みんな…

 

 私が殺してやるんだああああ!!!」

 

そういって、武器である槍を振るい

そのまま、自身に向かってくる姫奈に向かって行く

 

棒を振り回せば回すほど

辺りに液体が飛び散って行き

 

陸地の方にも、例の液体が及んでいく

 

だが、全身に炎を纏った姫奈は

その炎によって、液体がかかる前に

蒸発をしてしまうので、液体の影響は受けない

 

「狙い通りね…

 

 この液体は触れると、そのうちに秘めた

 黒い感情に覆われてしまう事以外は、普通の液体なんだ…

 

 だったら!

 

 はああああ!!!」

 

姫奈は、かまわずに突っ込んでいく

纏はそれを見ても臆することなく、姫奈に向かって

 

容赦のない攻撃を撃ち込まんとしていく

 

「串刺しになれええええ!!!」

 

そういって、槍を勢いよく振るい

言葉とは裏腹に、姫奈をぶっ潰さんとしていく

 

「ちょっと…

 

 言葉と攻撃が一致してないわよ

 もうこれは、完全に支離滅裂ね!」

 

そういって、自身の武器である槍を突き出し

それによって纏の武器である槍をふっ飛ばしていく

 

「‥‥あ!?」

 

「ようし…

 

 香織!」

 

「うん!」

 

風香が、香織にバトンタッチをしていき

彼女は、円刃を纏の方に向かって振るっていく

 

「お、おい香織姉ちゃん!

 

 いったい何を‥」

 

「っ!

 

 見て!!」

 

ダイはそれをみて、仲間を切り裂いていくと思ったが

ユーカはそれは違うと、円刃の動きを見て理解していく

 

「うああああ!!!」

 

纏の四肢を、円刃がまとわりつき

それによって、纏は動きを封じられた

 

「ありがとう、二人共!

 

 今こそ、この攻撃に全てを掛ける!!」

 

姫奈は、全身に纏っていた炎を

武器である聖器、聖剣に纏わせていく

 

「殺す、殺す…

 

 殺すうううう!!!」

 

そういってあがく、纏

彼女の全身にかかっている液体

 

その左肩の部分の液体が

まるで、こちらを見ている目玉のように

きょろきょろと、姫奈の方に向けていた

 

「それが、あんたの本体ね…」

 

姫奈は目標を見て、剣を振るっていく

だが、その本体、いわゆるスライムは最後の抵抗と

言わんばかりに、自身の身体を纏の首に張り付けていく

 

「ああ、本体が首に!」

 

「ダメ、そのままだと

 纏の首も飛ばしちゃう!!」

 

香織と風香は、呼びかけていく

 

だが

 

「それがどうしたってのよおおおお!!!」

 

そう言って、ためらう事なく

その剣を振るって行った、しかし

剣そのものは何とも精密な動きで

 

切っ先の部分を使って

纏の首ではなくスライムの本体のみを切り

 

それによって本体ごと、纏の身体に

纏われていた液体が全て霧散していった

 

それによって、纏は力が抜けたように

その場に倒れこんでいくのであった

 

「「纏ちゃん!!」」

 

香織と風香は急いで、倒れた纏のもとに駈け寄っていく

 

「待って!

 

 香織、纏の周りを障壁で覆って!!

 

 もしかしたらまだ、襲いかかってくるかもしれない…

 

 目を覚まして、大丈夫そうだと判断するまでは警戒を解かないで!」

 

姫奈が二人に呼び掛けていき

香織に、障壁を張っていくように言う

 

香織は、アーティファクトの白杖を構えて

それによる障壁を張って、纏を覆っていく

 

風香と子供達は固唾をのんで見守っていくと

 

暫くして、纏の瞼が揺れていき

 

「う、うん…」

 

纏は、目をゆっくりとあけていき

身体の方を起こして、様子をみていく

 

「‥‥あれ、皆さん…

 

 どうしてここに…?

 

 私は確か、スライムに襲われて…」

 

「‥‥大丈夫そうね…

 

 香織、もういいわよ」

 

姫奈にそう言われて、障壁を解除していき

香織は纏に向かって、思いっきり抱き着いた

 

「纏ちゃああああん!!!」

 

「きゃ!?

 

 か、香織さん!?

 

 どうしたんですか急に!?」

 

香織にいきなり抱き着かれて

状況が呑み込めない様子を見せる纏

 

「(纏さん!

 

  よかった、無事ですね)」

 

ラナは纏に呼び掛けていく、だが

 

「っ!?

 

 ま、魔物!?」

 

纏はそれを見て、あわてて武器を構えていく

 

「待って、纏ちゃん!

 

 この魔物は敵じゃないよ

 この魔物はね、ラナさんなんだよ!!」

 

「‥‥はい?」

 

風香にそう言われて、言わずもがな

目をぱちくりさせて、目の前のゴブリンに目をやる

 

「(纏さん)」

 

ラナは、精一杯の笑顔を見せる

 

しかし

 

「‥‥やっぱり、ゴブリンにしか見えませんよ」

 

「(そ、そんな‥‥)」

 

纏にはっきりと言われて

ガーンと言う擬音が出てくるほど

大きなショックを受けて、膝を崩していく

 

「あ、あの‥

 

 あのゴブリンさんはね

 本当に他のゴブリンさんとは違うんです‥

 

 わからなくても、嫌わないで上げてください」

 

オウがそういって、纏に言う

 

「え、えーっと…

 

 この子達は…」

 

「まあ、取りあえずは

 落ち着けるところに行くわ…

 

 そこで、詳しい話をしていくわね」

 

姫奈が、そういって

先ほどの戦いで液体まみれになった

この場から急いで離れて行こうと提案する

 

纏も、それにとりあえずは了承していくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

そのころ

 

 

ハルツィナ大迷宮の深層部

 

そこでは、物凄い数の蟲が

不気味な様子で蠢いている

 

「いやああああ!!!」

 

そんな群れから、急いで逃げているのは

 

八重樫 雫

 

 

この場所に飛ばされた、彼女は

はぐれてしまった香織や他の一同を探すために

 

辺りを散策していたのだが

そんな中で、彼女が遭遇したのが

 

おびただしい数の昆虫が

一斉に雫のもとにやってくると言う

 

もはや、恐怖を感じるなと言う方が

不可能にも感じ取れる恐ろしい光景である

 

雫も内面は年頃の女の子なのだ

こんな大量の蟲に追いかけられては

パニックになるのは必然である、それでも

正気でいられるのは、彼女なりの抵抗なのかもしれない

 

しかし

 

「はあ‥‥はあ…」

 

そんな雫も、とうとう目の前の群に追い詰められていった

 

無理もないだろう、何しろ目の前にいる

この蟲の軍団は、かの台所の黒い悪魔が大きくなった

そんな見た目で、さらには群れで何かを形づけられるほどに大きい

 

戦闘力も一匹一匹はむろん、大したことはないが

何分、雫もパニックに陥るほどの膨大な数がそこにいる

 

見た目は凛々しくも、中身は年相応の少女なのだ

そんな彼女が、そんな大量の群れに覆いつくされて行ったら

 

精神的にも摩耗していく

 

となると当然

 

「も‥‥もうだめ…」

 

雫は発狂し、そのまま意識を

失って行ってしまうのであった

 

そんな雫に群がらんとしていく蟲の群

 

雫の肉体は、そのまま大量の蟲に

覆われて行ってしまうことになった

 

そんな様子をみている、一つの影

 

その陰は手に持っている、長い棒のようなものを地面に突くと

 

その杖から、金属が鳴る音があたりに響いていく

 

すると、蟲の群は

その人物に気が付いて

 

そっちに襲いかからんと

その人物のもとに近づいていく

 

「‥‥虫けらのくせに…‥

 

 この私の前に立ち塞がろうなど…‥

 

 身の程をわきまえなさい!」

 

そういうと、蟲の群が動きを止めると

そのまま、蜘蛛の子を散らすように引き上げていく

 

その場に残ったのは

気を失った雫のみが遺される

 

「‥‥フフフフ…‥

 

 どうやら、思わぬ拾い者をしたようですね

 

 それでは、そろそろ始めましょうか

 

 チヒロ様…‥」

 

その彼女の身柄を見つけて

不敵な笑みを浮かべていくその人物

 

その背後から、もう一人の人物が現れる

 

「フフフ…」

 

緑色の目に赤い長髪、水色の外套を羽織った女性

 

「それでは、チヒロ様…‥

 

 この女にとどめを刺しておきますか?」

 

「…いいや、彼女にはこのまま

 私たちの役に立ってもらうことにしましょう…

 

 あなたの話だと、彼女の仲間も

 このハルツィナ大迷宮に落ちたのは、確実…

 

 とはいえ餌にする戦法はさすがに見破られたので…

 

 こういうのはどうでしょう?」

 

嫉妬と羨望の王

 

チヒロ

 

 

彼女は更なる策をめぐらせて行くのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?

  • 原罪(スルー推奨)
  • 傲慢
  • 虚飾
  • 嫉妬
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 憂鬱
  • 暴食
  • 色欲
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