世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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reliquiae Diejenigen, die Widerstand leisten, und...

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

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ハイリヒ王国

 

ハジメたちが召喚された際に

彼彼女らの身元を引き受けていった国

 

王国に連れてこられた、一行は

この国においてそれぞれに与えられた力

 

天職やスキルと言った類のものを得て

不思議と、どこか有頂天になっていたのだ

 

彼等のいた世界では、剣はともかく魔法と言うものは

漫画やラノベの中だけの、所謂ファンタジーの存在と認識していた

 

そんなファンタジーの中だけの存在だった魔法を

自分達が手に入れていたという、その事実にどこか胸を高鳴らせていた

 

初めて魔法を使った実感、それを見た瞬間の感覚

 

まったくの子供ではないが、だからと言って

完全に大人になり切れていない彼彼女は、無意識の内に

遊び感覚と言う、覚悟などみじんもない気持ちを抱いていた

 

だが、そんな彼らに衝撃の出来事が起こった

 

全てのきっかけは、オルクス大迷宮において

檜山の軽率な行動によって、クラスメイト全員が

死の危機に落とし要られて行くというものであった

 

ベヒモスと言う強大な敵

トラウムソルジャーと言う次々に襲い来る恐怖

 

クラスメイトの全員が、その恐怖の前に

打ちのめされそうになっていく中で立ちあがったのは

 

南雲 ハジメ

 

 

クラスメイトの中で唯一、ステータスプレートが表示されず

そのせいで、王国からも教会からも見放された、所謂無能であった

 

元の世界で、四大女神の一人である

 

白崎 香織

 

 

彼女に気にかけてもらっているだけには飽き足らず

 

同じく、四大女神の一人である

 

南野 姫奈

 

 

彼女を人気の居ないところに誘い出して

襲おうとしたところを檜山達に妨害された

 

その後、檜山達の告発によって学校から処分が下され

被害者の姫奈や香織らの尽力もあって退学は免れたものの

 

それでも、いまだに図々しく学校に通っている恥知らずの存在

 

そんな彼が、この世界において不当な扱いを受けていたのを

クラスメイトの殆どの者が、彼に対してこう思っていた

 

ざまあみろ、あんなことをしておいて

今ものうのうとしているお前への天罰だ、と

 

正直に言って、彼等の成長度合いはかなり差が出来ている

 

例えば、勇者である

 

天之河 光輝

 

 

彼はクラスメイトの中でも特に

目覚しい成長を遂げており、それ故に

攻略組のクラスメイトの中でも群を抜いて高ステータスになっている

 

その他にも、クラスメイトの中でも成長はまちまちだが

中には、鍛錬を続けていても、なかなかステータスが上がらないものもいた

 

だが、そんな彼らの中に表立った劣等感を抱く者はいなかった

 

その理由は至極単純、自分達よりもさらにひどい者がいたから

 

それがハジメである

 

成長が芳しくないクラスメイトにとって

ある意味で、ハジメと言う劣等は精神的主柱であった

 

皮肉なことに、ハジメを見て優越感に浸ることで

それが一部のクラスメイトの士気を向上させていった

 

だが、そんな彼らの優越感を打ち砕いていく出来事が

オルクス大迷宮において、彼等の目に映っていく事になる

 

それが、ハジメが身を挺して自分達のために行動を起こした事

 

これによってクラスメイトも騎士団も

被害は多少受けたものの、一人も死傷者を出さずに済んだ

 

だが、この出来事がハジメへの優越感に浸っていた

クラスメイト達の心情に悪い意味で影響を与えていった

 

だが、そんな彼らのもとに、世界の悪戯か

彼等によってまたとない瞬間が訪れていった

 

それが、ハジメは敵である魔人族と手を組み

不当に力を得たと教会が発表した事であった

 

それを聞いた途端にクラスメイトの心の中で

何かが倒壊して、席を切ったようにしてハジメへの中傷を口走っていく

 

こうして、そんな彼らの後押しもあったのか

ハジメはクラスメイトや王国関係者、教会の人間

全てに見守られながら、ハジメは炎の中にへと消えていった

 

さすがのクラスメイトも、まさか目の前で

ヒトが殺されていく様を見ることになるとは思わなかったが

 

だが、その後のクラスメイトの反応はあっさりしていた

 

殺されたのが、自分達が毛嫌いしていた

ハジメだったというのもあり、異様なまでに割り切っていく事ができた

 

だが、この出来事がクラスメイト達の分裂を引き起こしていく

姫奈、風香、香織、雫、纏の五人が王国を出て言ったという事

 

クラスメイト達にとって、ある意味で

戦うための目標であった四大女神たち、それによって

彼女達と言う、目標を見失った一部のクラスメートは

白けたようにそのまま、攻略組の輪から外れていった

 

だが、そんな彼らの立場を貶める出来事が王国において引き起こされた

 

それが、罪徒と言う新たなる敵の襲撃

 

王都は氷河に包まれ、多くの者がその寒さに凍え

それによって、貴族や国民からも神の使徒の存在を求めた

 

やがては、聖徒の力に目覚めた姫奈によって

罪徒は倒され、それによって王国は結果的に救われた

 

誰もが、神の使徒の存在を崇めていく

 

これによって教会も、とうとう

国民たちの意志を無下には出来なくなっていき

 

やがて、クラスメイト達への戦闘訓練の開始を急いだ

 

だが、罪徒と言う強大な敵の圧倒的な力を見て

もはや、今の彼らに戦いに出たいという気力など残っていない

 

だが、教会に逆らえば最悪

王城、ひいては王国を追い出される可能性もある

 

生徒達の心は不安と恐怖でいっぱいいっぱいになっていく

 

だが、そんな彼らのためにと立ち上がった者がいた

 

畑山 愛子

 

 

クラスメイト達とともに召喚された教師で

元居た世界の学校において、教職員の中で

ハジメの数少ない味方であった女性であった

 

愛子は、ハジメの冤罪について

ハジメがそんな人ではないと最後まで信じた

 

数少ない、味方であった

 

しかし、愛子はハジメが処刑されたことに

大きなショックを受けていた、元の世界でも

彼の無実を証明することが出来ず、挙句この世界でも

むざむざ、死なせてしまう結果に陥ってしまったのだ

 

しかし、そんな中でも愛子はせめて

今いる生徒たちを死なせてはならないと

自らを必死に奮い立たせていき、教会から

各地の農地開拓に赴いていく事を条件にして

 

迷宮攻略には、志願制にするという形で決着させた

 

こうして愛子は、神殿騎士たちと

彼女との同行を志願した一部の生徒とともに

 

農地開拓の遠征に赴いていった

 

そんな、紆余曲折があって

現在に至り、王城においては

闘いから離れている十数人の生徒たちが

大広間において、いくつかのグループに分かれて

話しをしており、その様子を生徒たちの世話を任されている

使用人たちが、そんな生徒たちの事を様々な心境で見つめていら

 

「聞いたか?

 

 天之河たちが、ついに七十階層を突破したらしいぜ?」

 

「まじかよ、ついこの間

 六十五階層を突破したって話だったのに‥」

 

男子のグループが、そんな話をしている

 

「やっぱり天之河君、この間

 帝国の人達に打ちのめされちゃって

 

 がぜんやる気になったんじゃないかな?」

 

「かもしれないよね

 

 さっすが、光輝君

 まさに私達のリーダー、だね…」

 

女子のグループも同じような話をしている

 

「やっぱり天之河君は違うよね

 やっぱり頼りになるよね、ね?」

 

「そうだね‥

 

 いっそ、このまま魔人族との戦争も

 天之河君が全部請け負ってくれればいいけれど‥」

 

そう告げていく生徒たち

精神が幼い彼彼女らは、どこか

自分がやらなくても、誰かがやってくれる

 

そんな、どこか他力本願な考えを抱いている

 

だが、そんなクラスメイト達であっても

自分達の周りの評価が変動していることに気が付いている

 

「それにしても、随分変わっちまったよな…

 

 昔は、俺達が歩いてたら

 あんなにも気軽に挨拶を交わしてくれてたのに…」

 

「無理ないんじゃね

 

 天之河たちみたいに、それでも

 戦おうって気になってるやつもいるし

 

 そいつらに比べたら、俺達なんて

 こんなとこでだべってるだけだしよ

 

 まったく、何だってこんなことになっちまったんだよ」

 

急に場の空気が暗くなっていく

 

召喚された時に比べると自分達を見る

周りの目が、どこか冷たいものになっている

 

ここに控えている侍女たちもそうである

 

一見すると、穏やかそうにしてい居る者の

ここにいる者たちの心境は、決していいものではない

 

恐らく大半は、思っているだろう

 

自分達が神に選ばれておきながら

こんなところで何を無意味に時間を過ごしているのか

 

勇者である天之河やほかにも戦ってる仲間がいるというのに…

 

最初は彼らを快く受けていた彼女らも

表向きは、それを出さないようにしながらも

内心ではただ、義務的に業務をこなしているだけである

 

クラスメイト達はうすうすながら、自分達の対応が

この世界に来た時から完全に変わってしまっていることに

 

うすうす感づいてきており、自分達の無力さに打ちひしがれ

内心では、苛立ちの方を募らせていった、そしていつだってその苛立ちは…

 

「それもこれも、みんな南雲のせいだ…」

 

その者達がもっともよく思っていないものに向けられていくものである

 

「そうだよな!

 

 あいつ、自分が無能なのをいいことに

 俺たちの事を裏切って、調子に乗りやがって…」

 

「あいつのせいで、俺たちはこんなことに‥」

 

「そうよ、あいつが勝手なことをしたせいで

 私たちの立場も悪くなってきているのよ!」

 

「本当に最低よ

 

 白崎さんにかまわれたことをいいことに

 南野さんにあんなことしておいて、のうのうとしてて

 

 挙句には、自分の裏切りに東雲さんまで巻き込んで…

 

 本当にあんな奴、死んで清々したわよ」

 

男子グループも女子グループも

同じグループではないものの、共通の話題として

 

かつて、自分達と共に召喚された男子生徒

 

南雲 ハジメを蔑んでいく

 

元の世界での冤罪のせいで、彼は

クラスメイトから嫌われていた彼

 

この世界に召喚されても、何も変わらず

王国関係者から疎まれ、教会関係者から蔑まれ

 

挙句には、彼が得た力で救われたにも関わらず

その恩を仇で返され、無能のくせに魔人族と手を組み

不当な力を得て、挙句には神の使徒を聞きに陥れた罪人

 

クラスメイト達も、その話を鵜呑みにして

と言うよりも、もともとかれの事を嫌っていたこともあり

 

彼の死に対して、何にも感じていないどころか

寧ろ、死んでくれて清々しているといった具合に口を開く

 

特に待機組は、対応が悪くなって来ている苛立ちもあって

それが特に出てきており、歯止めが来あなくなっている

 

だが、そんな様子を異様なように見てい者達もいる

 

「‥‥勝手な事ばっかり言いやがって…

 

 そもそも、その南雲が必死に頑張ってくれたから

 あの時、俺たち全員が生き残ることが出来たんだってのに…」

 

「…そうだよな、確かにあいつの力は異様だったけれどよ

 そのおかげもあって、こうしてだべってられるのによ」

 

「…でもさ、本当なのかな…

 

 南雲が実は、裏で魔人族とつながってたとか

 その魔人族の手引きで、あの力を得たんだって話…」

 

そんなグループに交わらずに、そんな会話をしている三人の男子生徒

 

相川 昇

 

 

仁村 明人

 

 

玉井 淳史

 

 

この三人であった

 

「そもそも、俺達ってまだ魔人族がどんな奴らなのかも

 分からないし、何よりどこにいるのかもわからないのに

 

 どうやって魔人族にあってたりなんてしたんだ?」

 

「魔人族からあっていた、とかじゃねえのか?」

 

「それこそ、あり得ねえだろ?

 

 天之河とか、南野みたいな奴だったらともかく

 無能だって蔑まれていた南雲の事、ほしいって思うか?」

 

昇の言葉を聞いて、確かにと納得して頷いていく

 

「…やっぱり、俺達…

 

 取り返しのつかねえこと

 しちまったんじゃねえのかな…

 

 教会が言ってたとはいえ

 俺達、あいつに助けられたことは本当なのに…」

 

「おい、淳史!」

 

玉井が、不意に自分達は南雲の事を無意識に陥れてしまったのではないか…

 

その発言に、仁村が慌ててその言葉を遮っていく

 

「だって、そうだろ…

 

 あの時は、天之河が言ってたから

 流されるように言っていたけれどよ…

 

 今にして思えば、考えれば考える程

 余計に、疑わしい部分は出て来るし…」

 

「それは…

 

 それは、俺達だって一緒だよ…

 

 でも、だからってどうしろって言うんだよ…

 

 南雲はもう死んじまったし、何よりもう

 南雲の件で詮索をするなって言われちまってるし…

 

 何より、俺達にあいつのことをどうこうする資格なんて…」

 

相川がそう、呟いていく

玉井も仁村もそれに賛同していた

 

自分達も向こうの世界で

南雲の事を蔑んでいたのは事実だ

 

三人は、向こうの世界において

別に檜山達のように表立ったことはしていない

 

しかし、南雲の事を助けなかったという意味では

自分達もほかのクラスメートと同類なのだ、しかし

 

そんな自分達の事を、南雲は体を張って助けてくれた

 

その出来事が、三人の考えを変えていくきっかけになった

 

しかし、彼等は迷っているのだ…

 

自分達は今まで自分達が屑だと蔑み

無能だと疎んでいた南雲に救われた

 

だが、そんな自分達がいまさら

彼の死を受けて、どのようにして行けばいいのか…

 

その迷いが、彼等に一歩を歩ませる勇気を抱かせないでいる

 

だからと言って、誰かにそれを問うこともできない

優柔不断だと言われるのは本意ではない、だがどうしようもない

 

彼らば、その決断を自分達で下せるほど大人ではないのだから…

 

そんな彼らの迷いなど知る由もなく、いまだに

南雲の事で盛りうう上がっている他のクラスメイト達

 

「大体、東雲さんも東雲さんだよね

 なんだってあんな奴の事庇ったりなんかしたんだか…」

 

「そうよね、まあ自分は優しい人アピールをしたかったんでしょうけど」

 

「そうかもね」

 

しかし、その話題は段々と歯止めが効かなくなってきており

しまいには、ハジメの一番の味方であった同級生の少女である

 

東雲 渚沙

 

 

彼女の事すらも悪く言うようになる

 

「それにしても、東雲の奴はどうして

 あんな奴にかまってたりなんかしてたんだろうな」

 

「さあ?

 

 好きだったとか、そう言う事じゃね?

 

 知らんけど」

 

「だとしたら、男見る目なさすぎだよな」

 

もう一方のクラスメイトのグループも同じように話していく

 

それを聞いていた、相川達は思うところがあるが何も言えなかった

自分達もあの時まで、彼等と同じ側にやっていたのだ、そんな自分達が

 

今さら何を言ったところで、どうしたらいいのだ口をつぐんだ

 

だが、そんなところに現れたのは

 

「いい加減にしなさいよ、あんた達!

 

 さっきから随分と勝手な事ばっかり言って

 そんな風に、死んだ人を悪く言うなんてなんとも思わないの!?」

 

その部屋に入ると同時に、入ってきたのは

 

園部 優花

 

 

菅原 妙子

 

 

宮崎 奈々

 

 

彼女達であった

 

「そ、園部!?

 

 なんでお前ここに…」

 

「愛ちゃん先生報告のために、一旦戻ってきたのよ

 

 あれから一か月もたって、何か変わったのかって思ったけれど

 あんた達はあれから、ちっとも変わっていないのね、呆れて何にも云えないわよ」

 

優花の言葉には、怒りを通り越した呆れが感じられる

 

クラスメイトの今も変わらぬ現状にうんざりしているようだ

 

「何よ!

 

 別におかしなことは言ってないでしょ!!

 

 そもそも、無能のあいつが出しゃばって

 余計なことをしたから、私達がこんなにも肩身の狭い思いして…」

 

「それは、そいつのせいじゃない

 

 あんた達がなにもしようとしないから、でしょ

 

 何にもしないから、何にも変わらない

 そんな事は当然のことでしょ、そのことで

 あいつのことを責めるのはお門違いでしょ!」

 

女子グループも男子グループも

どちらも、優花達の方に詰め寄っていく

 

「でも、あいつは俺達の事を裏切ってたんだぞ!

 

 無能のくせに魔人族に取り入って、調子に乗って…

 

 そのせいで関係のない俺たちまで飛び火して

 全部あいつが悪いんじゃねえか、それなのに

 なんで俺達が責められるようなことを言われねえといけねえんだよ!

 

 俺らは何にもしてねえのに、なんで俺たちが責められなきゃなんねえんだよ!!」

 

「何にもしていない、しようともしていないからでしょ!

 

 あの時、私たちはその南雲のおかげで助かった

 私だってそう、もしもあの時、南雲が動かなかったら

 アタシは最悪、死んでいたかもしれない、私がこうして

 ここにいるのも、あんた達がそうやっていられるのだって

 

 あんた達が無能って蔑んでいる南雲のおかげじゃない!

 

 私は少なくとも、あんた達のように今の状況が不満なくせに

 何にも行動を起こそうとしない、そんな風にはありたくない

 

 だったらせめて、アタシにも出来る事を精一杯やる

 それが、あいつに命を救われたアタシがそれを無駄にしないために出来る事よ」

 

優花は言い切っていく

 

優花の言葉には強い決意が見て取れる

その決意をこめた言葉の前に、臆病風に

吹かれてしまったクラスメイト達が言い返せることは

 

何もなかった

 

「…悪いけれど、あんた達とこうして

 話しているつもりはないわ、私たちがここに来たのは

 次の遠征の準備をしていくためよ、別にあんた達のそれを

 どうこうしようなんて言う気はないわ、だから別にそうしたいなら

 そうすればいい、でもそうなることを決めたのはあんたたち自身

 

 それを理由にして、誰かのせいにするなんて…

 

 はたから見ると、見苦しいだけよ」

 

優花はそこまで言うと、妙子と奈々と共にその場を後にしていく

 

それを呆然とした様子で見つめていたほかの面々

 

「…出来る事を精一杯やる…か……

 

 そうだよ…そうだよな…」

 

それを見ていた淳史は、優花の言っていた

出来る事を精一杯やるというその言葉を復唱し

 

暫くして、立ちあがっていく

 

「‥‥淳史…?

 

 どうしたんだよ…」

 

それを見ていた昇と明人は

恐る恐る、淳史に訪ねていく

 

すると、淳史は二人に

その様子に気に留めることなく

 

ただ、その場から走り出していった

 

「お、おい!?

 

 淳史!?」

 

「どうしたってんだよ!」

 

二人は、そんな彼の事を追いかけていった

 

クラスメイトはそんな様子に

更に唖然とした様子を見せていく

 

そんな中で一人、何やら

含みをこめた様子で見つめている

 

一人の男子生徒の姿があった…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「園部、待ってくれ!」

 

淳史が、そういって優花の事を呼び止めていく

 

「何よ?

 

 あんたも、アタシに何か不満がある訳?」

 

「違う、そうじゃないんだ…

 

 俺が言いたいのは…その…」

 

玉井はしばらく言葉を濁していたが

すぐさま、顔を上げて口を開いた

 

「俺も…俺も愛ちゃん先生の護衛に…

 

 連れて行ってくれないか!」

 

彼の言葉に、三人は目を見開いていく

 

「どういうつもり…?

 

 なんだってそんなことを…」

 

優花は、警戒しながら問いかけていく

 

ここにいるのが嫌だから、逃げ出したいから

そんな不純な理由ならば、ひっぱたいてでも

突っぱねてやろうと思いながら、あえて問いかけていく

 

「…俺もずっと思ってんだよ…

 

 あいつが、南雲が今まで自分の事を

 嫌っていた俺達のためにあんなことしてたのに…

 

 本当にこのまま、ここで何にもしないで

 ただただ元の世界へ帰れるのを待つべきなのかって…

 

 でも、どうしたらいいのかわからなかった

 これでいけないのは頭の中ではわかってた…

 

 だからって、うかつなことをして南雲みたいに

 処刑されるかもしれないってそんな臆病な気持ちもあった…

 

 でも、俺、やっと気が付けたんだよ…

 

 俺はこれから、どうしたらいいのかって…」

 

玉井は、精一杯の言葉を投げかけていく

 

「俺だって、このまま何もしないままなんて嫌だ

 もしも、ここで何にもしないでいたら余計に自分が苦しくなる…

 

 でも俺には天之河や南野みたいな強い力なんて持ってない

 正直に言うと、俺は俺よりもすごい奴と比べて自信をなくしてたのかもしれねえ…

 

 でも、さっきの園部の言葉を聞いて俺、気付いたんだよ

 

 俺にだって、やれることがあるんじゃないかって

 こんな俺にだってなせることがあるんじゃないかって

 

 今の今までくすぶっていた、俺が言ったって

 説得力がない事なんて自分が一番わかってる…

 

 でも、俺だって今のままじゃいけないんだってことは分かってる

 

 だから俺も、俺自身に出来る事をやりたいんだ」

 

「…あんたの言う事は理解できるわ…

 

 でも、それだったら天之河や檜山達の方でもいいと思うけど?」

 

優花は少し、意地悪げに言う

 

「…正直に言うと俺は、天之河や檜山の野郎は信用できねえ…

 

 そもそも、あのオルクス大迷宮で俺達が死にかけたのは

 あの時の檜山の軽率な行動が原因だし、天之河の奴だって

 

 あの時の南雲の処刑を容認してた…

 

 いいや、二人だけじゃない

 あの場にいたクラスメイトだって

 南雲の存在をあんなにまで無関心でいたのが異常だった…

 

 正直に言うと、恐ろしいと思った…

 

 でも、愛ちゃん先生は違った、先生は

 そんなどうしようもない俺達のために

 自分の身を顧みずに、教会に向かって行った…

 

 愛ちゃん先生は、あんなことがあって

 ショックだったはずなのに、変わらずに

 俺達の事を第一に考えていてくれていたんだ…

 

 俺も、そんな先生の手伝いをしてやりたい

 出来るなら、俺にも先生の事を守らせてほしい…

 

 それじゃあ…ダメか…?」

 

淳史は祈願するように言う

 

すると…

 

「ダメなんかじゃないわよ」

 

優花はそう答えていく

 

「先生はね、あの事件の時

 南雲の事を唯一信じてくれたの…

 

 どんなことが合っても、生徒を信じる

 自分はそんな先生でありたいって言ってた…

 

 でも結局、南雲の無実を完全に払拭は出来ず

 今の状況も何とかしようとしてくれてた、でも…

 

 この世界に来て、作農師に選ばれて

 私たちと無理矢理引き離されて、挙句には

 冤罪を掛けられた南雲が、私たちの前で殺された…

 

 表向きは私達のためにと、必死につくろっているけれども

 内心はもう、ボロボロになっているんだって思うわ、いいえ…

 

 絶対にそう、おまけに先生は自分の力を狙う奴らに

 しつこく言いやられて、このままだと先生の身に何が起こるか分からない…

 

 だからこそ私は、そんないっぱいいっぱいの先生を支えて

 そんな負担の方を取り除いていきたい、それが今の私に出来る事…

 

 私はそう信じて、先生の遠征に参加したわ…」

 

「園部…」

 

優花は、改めて問いかけていく

 

「改めて聞かせてもらうわ…

 

 一緒に行く事は良いけれども

 それでも、まったく危険じゃないとは言えない…

 

 未知の土地の開拓にいく事になる訳だし

 他の同行者たちの方も気を張っていないといけない…

 

 何よりも、外にも魔物はいる

 下手をすれば死ぬかもしれない…

 

 それでも、行く?」

 

それに対して、玉井は決意を秘めたように答える

 

「ああ、勿論だ!

 

 死ぬことの恐ろしさは

 あの時にいやと言うほど味わった…

 

 でも、俺だってこのままなのは嫌で

 どうにかしたいっていうのも本心だ、それに…

 

 先生は今、俺が一番信じられる人で

 だからできる限りで、何とか守ってやりたい…

 

 そう思ってんのも本心だ!」

 

精一杯の言葉を口にしていく玉井

 

「…明日の朝、私たちは出るわ

 その時に、先生に頼んでみたら?」

 

「すまねえ、サンキューな」

 

優花はそう言って、玉井に背中を向けて去っていく

玉井の方も、安どした様子でその場を後にしようとする

 

しかし、そこに…

 

「っ!

 

 お前ら…」

 

相川と仁村の二人が、玉井の前に現れる

 

「ふっ、何だよ…

 

 随分とかっこいい事、言うじゃん」

 

「の、のぞき見てたのかよ

 

 趣味悪いな」

 

「悪い悪い、謝るよ…

 

 そのお詫びもかねてさ

 俺達にも手伝わせてくれねえか?」

 

仁村が不意に、そう告げていく

 

「手伝うって、どういう…」

 

「俺達も一緒に連れて行ってくれって事だよ

 

 俺達だって、お前と同じで

 このままじゃいやだって、思ってんだから…」

 

「俺達だって、愛ちゃん先生の事は信じてる…

 

 俺達にも手伝わせてくれよ、だってダチだろ?」

 

そういって、二人が笑顔を浮かべていく

その表情に曇りはなく、真剣であるという事がうかがえる

 

それを見た、玉井は…

 

「お前ら…

 

 ありがとよ…」

 

温かいものを、心に感じ取って

玉井は、相川と仁村に礼を言う

 

二人もそれを受けて、照れくさそうな笑みを浮かべていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

翌日の早朝

 

「それじゃあ、皆さんあつまりましたね…」

 

そういって、園部達三人の姿を確認して

 

畑山 愛子

 

 

彼女は、神殿騎士と合流し

王国から旅立とうとしていく

 

「…待ってください…

 

 まだ、全員ではありません」

 

優花がそういって、愛子を止める

 

愛子はどういうことなのかと首をかしげると

四人のもとに、誰かが走り寄っていく姿が見えた

 

その正体は…

 

「ふう、間に合ったか!」

 

相川、仁村、玉井の三人の男子生徒であった

 

「た、玉井君!?

 

 それに、相川君と仁村君まで

 い、一体皆さんはどうしてここに?」

 

「おはようっす、愛ちゃん先生!

 

 俺も、いいや俺達も愛ちゃん先生の旅に同行させてください!!」

 

そういって、頭を下げて頼み込む玉井

 

「…それにしても、あんた達も来たんだ…」

 

「俺達だって、このままじゃいけないってのは分かってたよ…

 

 きっかけが欲しかったんだ‥‥一歩を踏み出すきっかけが…」

 

「それに、淳史が行くっていくのに

 俺達だけ大人しく留守番だなんて寝覚めが悪いし…

 

 そんなことでグダグダしていたら、かっこ悪いしな」

 

優花に聞かれて、そう答えていく相川と仁村

 

それを聞いて、少し表情を険しくしていたが

しょうがないなと言った具合に、一息ついていくと

 

「…愛ちゃん先生

 

 どうしますか?」

 

「え…?」

 

優花は愛子に訪ねていく

 

「玉井たちは、私たちの旅に同行させてほしいと言っています…

 

 そして、この旅の責任者は貴方です

 彼らに同行してもらうか、それを断るのか…

 

 あくまで決めるのは、先生です

 

 決断してください」

 

優花はそう言って、判断を愛子にゆだねていく

 

あくまでこの旅は、愛子が教会に命じられてやっている事

その度に関してのことは、あくまで愛子自身が決めていく事

 

しかし、愛子自身は悩んでいた

ハジメの件もあるがゆえに、これ以上

生徒たちに危ないことはさせたくはない

 

だが、玉井たちの決意は本物だ

それを無下にすることもしたく無い

 

思考していき、下した決断は…

 

「‥‥約束してください…

 

 決して無茶や危ないことは極力はしない、と…

 

 それが守れるなら、同行を許します」

 

それを聞いた、玉井たちは

 

「「「ありがとございます!!!」」」

 

そういって、俺の言葉を言った

 

「‥‥ふう…

 

 何だか、勢いに流されてしまった気がします…」

 

「そんなことないです

 

 あくまで、決めたのは彼等で

 先生はそれを尊重してあげたんです…

 

 私は、先生の決断は間違っていないと思いますよ」

 

優花は、少し自己嫌悪に陥った愛子にそう言葉をかけていった

 

「そうですかね…

 

 いいえ、そうです!

 

 私は決めたんです

 私は生徒たちを誰も死なせないと」

 

そういって、自身に喝を入れるように

自分の頬をパンパンと激しく叩いていった

 

余りに強く叩きすぎて少し赤くなってしまったが…

 

「それでは、行きましょう

 

 そろそろ、出発の時間です」

 

そういって、六人に呼び掛けると

六人全員がこくりとうなずいていき

 

直ぐに、神殿騎士たちとの合流場所に向おうとする

 

だが、そこに

 

「待ってくれ!」

 

愛子たちの後ろから、話しかけていく声が聞こえた

そういってそこに駆けつけてきたのは、控えめで大人しい雰囲気で

顔にそばかすを持った、一人の男子生徒であった

 

「あなたは‥‥清水君!」

 

「愛ちゃん先生‥‥

 

 俺も連れて行ってくれ!

 

 頼む!!」

 

清水 幸利

 

 

玉井たちと同じ待機組の一人だが

玉井たちともほかのグループにも混ざらず

隅っこで大人しくしている、目立たない少年であった

 

「ちょっと!

 

 あんた、いきなり何を言って…」

 

「悪い、園部‥‥

 

 でも、俺も玉井達と同じなんだ

 俺だって、南雲の死に何も感じなかったわけじゃない‥‥

 

 ただ、俺には天之河や南野みたいな力はない‥‥

 

 それでも俺も、このまま何もしないままだなんて

 絶対に嫌だ、何より南雲は、あんなことをした俺達のために

 身体を、命を張って戦ったんだ、俺も逃げるよりは闘いたい

 

 どんな形であっても、俺はもう逃げるだなんて絶対に嫌なんだよ」

 

清水は、必死に訴えかけていく

 

「でも、私たちの旅立って

 まったく安全ってわけじゃないんだよ

 

 道中にだって、魔物はいるんだし

 盗賊や魔人族だってどこかに潜んでいるかもしれない‥

 

 危険と隣り合わせなのは変わらないんだよ?」

 

「もちろんそんなのは、承知の上だ‥‥

 

 でも俺だって、戦闘職で

 後方支援の魔法職なんだ

 

 まったく戦えない訳じゃない

 絶対に足を引っ張らないように努力する‥‥

 

 だから頼む、俺も連れて行ってくれないか?」

 

清水は、決して引き下がらない様子を見せていく

 

「‥‥わかりました、同行を許しましょう」

 

「先生!」

 

それを聞いた先生は、清水の意見を尊重して受け入れていく

 

「ありがとうございます!」

 

清水はそれを聞いて、頭を勢いよく下げてお礼を言った

 

「先生…」

 

「こんなにもお願いしているんです

 それを無下には出来ません、それに…

 

 作業上、男手は多い方がいいですから

 

 でも一つだけ約束してください

 決して無理をしない事と勝手な行動はしない事…

 

 それだけは、守ってくれますね」

 

「も、もちろんだ!

 

 よろしくお願いします」

 

愛子の述べた条件に、清水は了承していき

こうして、愛子のもとに優華、奈々、妙子に加え

 

玉井、相川、仁村、さらには清水も加わっていき

 

改めて、農地開拓の旅に出ていく事になるのであった

 

だが

 

この時、愛子や他のクラスメイト

のちに合流することになる神殿騎士たちもまた気がついて居なかった

 

この同行を申し出たクラスメイトの中に一人

表に出ぬ悪意を秘めている者がいることに、そして

その者が、のちに一つの騒動を引き起こしていく事になる事…

 

この時は誰も知る由などなかった…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

優花と待機組のクラスメイトの口論が起こって

暫くした後、玉井、仁村、相川、そして清水

 

それ以外の面々が、少し微妙な空気に

なってしまったのちに、その場は解散となっていく

 

その場には、彼等の世話を務めている侍女たちが残る

 

その場から、クラスメイト達がいなくなると

侍女たちは、席を切ったように話しをしていく

 

「‥まったく、毎度のことながら

 こんなところでいつまで無駄な時間を過ごしているのかした

 

 こんなところで、無駄な時間を過ごす位なら戦闘訓練に参加位なさればいいのに」

 

その内容は当然ながら、待機組への不平不満が殆どである

 

自分達は神に選ばれた身だというのに

闘いにも出ずに、こんなところで何を無駄に時間を過ごしているのか、と

 

「‥全くよ、随分と落ちぶれたものよね

 王族や教会の命令が無かったら、あんな人たちの

 お世話なんて、絶対にしてくなんてないわよ、まったく‥」

 

「それもこれもあの裏切り者のせいよ‥

 

 無能のくせに、魔人族に取り入って

 不当に力を手に入れて、私達を嘲るなんて‥

 

 挙句には勇者様の慈悲も無下にするなんて

 とんだ身の程知らずものね、ああいう奴をまさに

 

 生き恥を晒す、その言葉がお似合いよ」

 

ハジメは自分の無能を棚に上げて

魔人族に取り入って不当に力を得て

人間族に刃を向けんとした裏切り者…

 

それが教会がもたらした、ハジメの評価

 

実質、教会に実権を握られている王国は

その教会の判断に不満を抱いている者はいない

 

侍女たちもまた、然りである

 

「そういえば、その肝心の勇者様も

 帝国の使者との決闘において、完膚なきまでに

 叩きのめされたという話しも聞いたけれど‥」

 

「そんなの、その使者が姑息な手段を用いたに決まっていますわ

 

 エヒト様が選ばれた勇者様が、そんな負けるはずなんてありえません」

 

「そうですわよ

 

 自分の弱さに耐えかねて、魔人族に取り入り

 不当な力をもって、我々を裏切ったあの無能とは違うのですよ!」

 

エヒト様は絶対、だからかの神が選んだ勇者は何物にも負ける事はない

 

そんな妄信を抱くと同時に、無能と蔑んで来たハジメの事を

これでもかと言わんばかりに詰っていく、彼が処刑さえても同様である

 

「そういえば、王国から出ていったと呼ばれている

 五人の使徒たちの事、いまだに見つかる様子はありませんの?」

 

「ええ、ランデル殿下が血眼になって探しているようで‥

 

 まあ、戻ってきたところでどうしようもないと思いますけれど‥」

 

侍女たちの話題は、王国から出ていった

姫奈たちの方にへと変わっていった、例の王国全土を

文字通り震え上がらせた、あの大事件を機に、完全に王国と

音信が効かなくなった様子の姫奈たちを、ランデルが王国の諜報部隊に

探させているという話しは、すでに王城内でもひろまりつつあった

 

正確には、ランデルが見つけたがっているのは姫奈達ではなく…

 

白崎 香織

 

 

彼女ただ一人であるのだが

 

「そうですわね‥

 

 所詮は戦いが嫌で逃げた愚か者

 

 仮に連れ戻したところで、勇者様のお役に

 ひいては、私たちのために役に立つとも思えませんわね」

 

「そうですわね‥

 

 まったく嘆かわしいですわ

 エヒト様に選ばれたと言うのに

 一体何が不満であるというのか‥

 

 まったくもって、理解に苦しみますわね‥」

 

侍女たちは笑いながら、ハジメだけでなく

王国を見限った姫奈達の事もこき降ろしていく

 

すると、そこに

 

「いい加減にしてください!

 

 いくら何でも、それ以上は聞き捨てなりませんわ!!」

 

別の侍女が、その侍女に向かって物申さんとしていく

 

「に、ニアさん」

 

「彼等はいきなりこの世界に連れてこられたんです

 

 その上でいきなり戦えと言われて、そんな簡単に

 その状況を受け止め切れているとなぜそう言い切れるのですか!?」

 

ものすごい剣幕で、侍女たちに言い寄っていく侍女の女性

 

ニア

 

 

彼女は、そう呼ばれている

 

「で、ですが‥

 

 彼等は結局、闘うことを決めたではありませんか!

 

 それなのに、いまさら及び腰になるなど‥」

 

「彼等には戦う以外に選択肢がなかったんです‥

 

 それに彼等は、闘うことがどう追う事なのか

 その心構えすらなっていない、子供なんですよ!

 

 そんな子供達に、何もかもを押し付けて

 挙句、及び腰になったら罵詈雑言の数々‥

 

 そんな体たらくで、情けないとは思わないのですか」

 

「そ、そんなこと‥

 

 剣聖と言う天職に選ばれておきながら

 戦いから逃げ出した、あの八重樫 雫

 その世話係を務めておきながら、おめおめと

 その逃亡を許してしまった、貴方にとやかく

 言われる筋合いなど、まったくもってありませんわ!」

 

侍女は言い放つ

 

実は、神の使徒にはお世話係として世話役が付けられていた

 

ここにいる彼女達は、先ほどの食堂で

時間をつぶしていたクラスメイト達の世話役

 

あの事件以来、クラスメイトは攻略組と待機組

大きく分けると攻略組、待機組、愛ちゃん親衛隊

王国を抜け出した姫奈たちは、逃亡組と認識されている

 

評価の方は攻略組、愛ちゃん親衛隊、待機組、逃亡組と

高い方からこのように羅列していっている、もっともこれは

あくまで教会や王国がこのような待遇を設けているわけではない

 

言ってみれば、カーストのようなものである

 

ニアの立場上、逃亡組である雫の元世話役なので

最下層に位置しているのに、このように意見できるのは

そもそも、そう言った序列をよく思っていないからにほかならず

 

逆らってはいけないとも、申し付けられていてもいないからである

 

「逃げることの何がいけないのですか‥

 

 雫様も、貴方達がお世話を担当されている

 神の使徒の皆さまは、まだあどけなさが残る子供に変わりありません

 

 雫様だって、本音を言えば逃げたかったはずです

 投げ出したかったはずです、誰かにすがりたかったはずです

 

 私も雫様のお気持ちの全てを理解しているなどと

 そんな勝手なことを申し上げるつもりはありません

 

 ですが雫様に、皆様が担当されている皆様に

 貴方方が抱いている理想を、おしつけないでください!」

 

そういって、ニアは作業に戻るために

その場から、去っていったのであった

 

「‥何ですの、偉そうに‥

 

 戦いから逃げ出した臆病者を庇う、愚か者の分際で」

 

そんなニアの後ろ姿を、恨めし気に

見つめながら、そう吐き捨てていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ハジメの死をきっかけに

段々と変わり始めていく情勢

 

その様子を、傍から感じ取っているもの達もいる

 

「…‥その後の様子は‥‥」

 

リリアーナ・S・B・ハイリヒ

 

 

彼女は、自身の前にかしこまっている自身直属の女騎士

 

クゼリー・レイル

 

 

彼女に現在の状況を訊ねていく

 

「はい、まず第一に勇者一行が七十階層を突破し

 

 その後も攻略の方を順調に進めている様です

 

 勇者様方や檜山様たちのステータスの成長が目覚しく

 メルド団長からも、むしろ自分達の方が彼らについていく事が

 困難とされてきたので、次からの訓練は極力、彼等だけにやらせるスタンスの様で…」

 

「…‥そうですか‥‥

 

 そう言えば、愛子さんがこちらに

 お戻りになられたとお聞きしました‥‥

 

 代わりの方は?」

 

リリアーナは、愛子たちの様子を訊ねる

 

「はい、神殿騎士の報告によると

 どうやらここのところ、世界各地で

 異常気象や現象が起こっているらしく

 

 その影響で、愛子様のスキルで

 どうにかその状況にも耐えうる作物を

 量産しているのですが、気候の変動が激しく

 

 同じ場所に戻っては、また開拓作業とてんてこ舞いの様で…

 

 それで、教会への報告を済ませたのち

 すぐさま出発をしたようで、今日の早朝に出発されました…」

 

「なるほど‥‥

 

 愛子さんも大変の様ですね‥‥

 

 そう言えば、神殿騎士の方々は

 その作業の手伝いをなさっているのでしょうか?

 

 それほどに大変だというのなら、もちろん

 男手も必要になってくるでしょう、どうですか?」

 

リリアーナの問いかけに、クゼリーは

 

「愛子様に言われると渋々手伝っているそうですが

 基本は、そう言ったことは愛子様や優花さま達がやっているようです

 

 自分達は、愛子様の護衛だから万が一に備えたい、と言って…」

 

呆れたように答えていった

 

「…‥やれやれ、なんとも情けない話ですね‥‥

 

 農地開拓は力仕事であるがゆえに、何よりも

 男手が重要であるというのに、そこを女にやらせて

 自分達は、楽な方に行ってしまうとは、これが教会が誇る

 神殿騎士のあり殻なのだと思うと、なんとも情けなく感じてしまいますね‥‥」

 

「‥‥ですが、先ほど

 待機組となっていた神の使徒様の内

 

 四名が、愛子様の旅に同行することになったようで

 今朝、共にご出発なされました、愛子殿の負担もこれで

 一気に減るものだと、思いたいですが…」

 

「…‥無理でしょうね‥‥

 

 男手が多少は加わったところで

 それで大まかな解決につながるとも思いません‥‥

 

 ステータスが多少高いといは言えども

 それでも、全ての食料問題の解決につながるとも思えませんよ‥‥

 

 まあ、何にしてもその加わった方々の頑張り次第‥‥

 

 言えることは、そのぐらいですね」

 

そういって、椅子の背もたれに

身を任せていくように、押しつけていくリリアーナ

 

「いったいどうなってしまうのでしょう…

 

 王国の行方は…」

 

クゼリーが不意に呟いていく

 

しかし

 

「…‥正直に言って、もうどうでもいいですよ

 

 教会の下僕になり下がったこんな国に

 もとより未来などあってないようなものです」

 

「リリアーナ様…

 

 そのような発言は…」

 

「控えろというのですか、クゼリー?

 

 それこそ冗談と言うものですよ

 私はもうとっくに、この国もこの国に

 生きている民も、もはやどうでもいいんです‥‥

 

 帝国はすでに滅び、お父様もお母さまも

 ランデルの方にばかりかまけている、もう‥‥

 

 私がこの国に存在する理由など

 無いに等しいという事なのです

 

 それでしたら、そのように致しましょう‥‥

 

 私自身も、もう‥‥

 

 こんな王国にいる意味など、どこにもないのですから‥‥」

 

そういって、自分の手を掲げていく

すると、その手からじゃらっと金属がこすれる音が響く

 

「本気、なのですね…」

 

「ええ、あのお方が授けて下さった、この力

 

 私が思うように使っていいと言ってくださった

 それでしたら、私は私の意志で、この力をあの人のために

 使う事に致しましょう、貴方は何か不満ですか、クゼリー?」

 

リリアーナはそう言って、自身の前に控えているクゼリーに訪ねていく

 

「‥‥いいえ、私もあの時にどこまでも

 リリアーナ様についていくと決めた身です…

 

 誰に言われたわけでもなく、私自身がそう決めた事ですので…」

 

クゼリーは、顔を上げながら答えていく

その表情に迷いはなく、真剣な顔つきであった

 

「フフフフ~‥‥」

 

リリアーナはそれを聞いて、妖しい微笑みを浮かべていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ハルツィナ大迷宮

 

身体にかかった、液体を

落とすために、服を乾かしていく一同

 

その中で一行は今後の方針を決めんとしている

 

「さて…

 

 香織と風香、それに続いてラナさん

 それからさっき、纏の事を救出したけれど…

 

 私は、次の階層に行くべきだと思う」

 

「そんな、雫ちゃんはどうするの!?」

 

「その雫ちゃんがいるのが、おそらく

 次の階層だって、姫奈は睨んでいるのよ

 

 本体の方はどうにか倒したけれども

 まだまだ、この階層に例の液体は残量してる

 

 探索どころじゃないよ」

 

「それに、ラナさんや私の事も考えると

 各階層に一人ずつ、転移させられている

 

 その可能性も決して捨て切れませんしね」

 

「(でも、一番の問題は‥‥)」

 

ラナは、自身の向かいの奥の方で

寝息を立てて寝ている子供達の方を見る

 

ラナの言葉を伝えていく事ができるオウも

同じく寝ているので、ラナの言葉は残念ながら

他の面々には、聞こえていない、しかし表情を見て

 

何を訴えたいのかは、理解は出来ている

 

「そうね…

 

 確かに、この先に何があるのか

 それが分からない以上は、つれていくのは危険…

 

 でもだからと言って、放っておくこともできないし…」

 

「雫ちゃんを探すのと同時に

 あの子達を最低限、傍にいる事…

 

 私と風香ちゃん、ラナさんでやりましょう」

 

「じゃあ、私と纏が前に出るわ…

 

 纏もそれでいいわよね?」

 

「はい、問題はありませんよ」

 

そういって、一行はこれからの事を決めていく

 

「(‥あの子達は、故郷も親も友達も

  一気に失ってしまうことになった‥‥

 

  せめて、あの子達には生きていてほしい

  私の身勝手な願いですけれど、それでも‥‥

 

  それでもやっぱり私は、あの子達には‥‥)」

 

ラナは、そういって切なる思いを口にする

 

もっとも、その言葉は誰にも届かないが

ラナ自身は今は、それでいいと思っている

 

こういうのは、誰かに聞かせると

不思議とその願いが叶わなくなってしまうのでは

 

不思議と、そう感じてしまうから

 

「‥‥私たちも休みましょう…

 

 次の試練はきっと、今まで以上に

 厳しいものになるかもしれないからね…」

 

姫奈のその言葉ともに、一行も休むことにしたのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?

  • 原罪(スルー推奨)
  • 傲慢
  • 虚飾
  • 嫉妬
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 憂鬱
  • 暴食
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