世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
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謎のどす黒いバチェラム、もといスライムによって
引き起こされた激闘の末に、スライムに憑かれていた
北浦 纏
彼女を無事に救出した後は
彼女にこれまでの経緯を話していく
「‥‥なるほど、つまりここは
七大迷宮の一つのハルツィナ大迷宮で…
その試練のせいで、私たちは離れ離れになって
ラナさんも、魔物の姿になってしまっていると言う事ですね…」
「(そうなんですよ‥‥
本当にもう、どうしたらいいのか‥‥)」
ラナは頭を抱えていく
「元に戻す方法ってないんでしょうか?」
「私たちも目下、調査中よ…
なんにしても、私たちは進むしかないわ…」
「そうだね…
雫ちゃんも、きっと
次の階層にいるかもしれない…
それだったら、私は進みたい」
香織もそういって、姫奈の方針に従っていく
「そうですね…
他に方法がない以上は
そうするほかないでしょうね…
それでしたら、私もお手伝いします
ご迷惑をおかけした分、頑張らせてもらいますよ」
纏がそういって、グッと拳を作ってやる気を見せていく
それを見ていた一行は、微笑みを見せる形で誠の意志を尊重する
「そういえば…
あの子供達は…」
纏は不意に、自分の事を好奇な目で見ている子供達を見る
「あの子達は、フェアベルゲンの生き残りだよ…
私たちよりも前に、ここに来ていたみたい」
「そうだったんですね…」
纏は不意に、子供たちの方を見て
そのまま近づいていき、彼彼女らに
視線を合わせるようにかがんでいく
「初めまして、私は北浦 纏って言います…
あ、北浦が性で、纏が名前ですよ?」
「こ、こちらこそ…
私は、アルサジって言います」
「私はラン」
「オウっていうの」
「ユーカです
よ、よろしくお願いします…」
六人の内、四人は恐る恐るながら挨拶を交わしていく
しかし
「‥」
「‥」
熊人族と虎人族の少年たちは、いまだに警戒しているようだ
「‥‥えーっと、よかったら
貴方達のお名前を教えてもらってもいいでしょうか?」
「ほら、ダイ、リョク‥‥」
アルサジに押されて、纏の前につきだされて行く二人
「‥だ、ダイだ‥
まあ、よろしく‥」
「リョク‥」
「ダイ君にリョク君、ですね…
宜しくお願いしますね」
纏は笑顔で返していく
「‥‥なんだか警戒されている気がしますね…」
「しょうがないよ…
さっきまで、敵として
みんなに襲い掛かってきたんだし…」
「それに、あの子達亜人族は
人間族に対していい感情はもっていないみたいだしね…」
香織と姫奈はそう返していく
亜人族は神に見捨てられた種族
人間族からは疎まれ、魔人族たちからは蔑まれ
両方の種族からの干渉を受けないために
ハルツィナ樹海の奥地にフェアベルゲンと言う独自の国を作った
長きにわたって続いているこの確執は簡単には埋まらないのだろう
それでも纏は、笑みを浮かべていき
「ねえ、皆さん…
みんなが私の事を簡単には
信じ切れないのは分かっていますし
さっきまでは憑りつかれていた
それだけだからって言っても言い訳にしかなりません…
でも、これだけは忘れないでください
私は皆さんの事を蔑んだりなんてしませんし
傷つけるようなことは絶対にしません、ですから…
ゆっくりと、私の事を知って行ってほしいです」
纏はそう言って、笑みを浮かべて言う
ダイとリョクは、それを聞いて
どこか気まずそうに顔を背けていく
「ま、まあ…
何はともかく、早き先を進んでいかないと…」
香織は慌てた様子で、話題を変えていく
「それについては、待って…
風香が、捜索に回ってるはずだから」
姫奈がそう返していくと
一同の顔をなでるような感じで
風が吹いていったのを、感じ取った
それからしばらくして一同のもとに
何かがゆっくりと降り立っていった
「戻ったわね、風香…」
「ただいま、姫奈」
一同のもとに降り立つのは
西宮 風香
彼女は、風魔法を応用して
広範囲の捜索を得意とする
ちなみに、空を飛べるのもこの応用である
「雫ちゃんは…?」
「ううん、少なくとも
この階層に私達以外の人間はいない…
魔物の気配も感じられないよ」
風香の問いに、香織は残念そうにしていく
不安が見られないのは、少なくとも姫奈によって
提示した可能性の中でも、一番有用のあるものがある
それが…
「それじゃあ、次への階層の入り口は?」
「それなら、見つけたよ
魔力が集積しているところがあるから
多分、転移魔法陣があるんだって思う」
雫は、この階層の次の階層にいるという可能性である
「それじゃあ、そこまでいきましょう!
みんな、そこまで行ける?」
「へ、なめるな
昨日はよく眠れたから
体力なら、十分だぜ」
「私も、大丈夫」
子供達のコンディションの方も問題はないようである
それを確認した姫奈は、即座に判断を下す
「風香、案内の方をお願い!
それじゃあ、行くわよ!!」
こうして、次の階層に向かうことになった一同
「(待ってて、雫ちゃん…
絶対に助け出して見せるから)」
香織は、その先にいるであろう
親友の身を案じながら、歩を勧めて行くのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
ハルツィナ大迷宮
とある場所にて、一つの影がいた
緑色の目に赤色のロングヘア―、水色みがかった肌
一見すると、どこか凛としており
何とも身目麗しい雰囲気の女性がいた
女性はある場所において、何かを待っているように
その場で佇んでおり、目を閉じてじっとその時を待つ
すると、女性は不意に顔を上げて行く
『チヒロ、随分と連絡が取れなかったようだけれど
何かあったのかな…』
「…申し訳ありません、主様…
少々、トラブルが起こって
連絡の方が遅れてしまいまして…
そちらの方は終わりましたので
私の方から、ご報告がありまして…」
その女性のもとに誰かからの連絡が入って来る
『例の奴等が、ハルツィナ大迷宮に入り込んだ…
そう言う事だったら、こっちの方でも確認している…
そのことなら、報告を上げる必要はない
それで、奴らをこのハルツィナ大迷宮の苗床にする手筈…
整っているんだろうね』
「ええ、勿論です
私にお任せいただければ
すぐにでも、奴らをこの手で…」
『待った、チヒロ…』
通信の奥にいる人物は、女性の報告を遮っていく
「なんでしょうか?」
『君、どうやらフェアベルゲンにいる亜人を
鏖にしてしまったようだね、チヒロが怒ると
天候が荒れるから、分かりやすいんだよ
まったく、亜人の中に適性がいれば
それこそ、帝国の奴隷たちのように同胞にして
この世界に、解き放っていこうと考えていたってのに…』
「っ!」
それを聞いて、女性は表情を歪ませていく
『という事は、君に持たせている
僕の力、使いっぱぐれてしまったってわけだ…』
「も、申し訳ございません…
この失態における処罰はいかようにも…」
そういって、その場に跪いていく女性
しかし、女性は顔を上げていくと笑みを浮かべていく
「主様…
このような立場で
お願いを申し上げるのは恐縮ですが…
主様から与えて下さった、この力
私に使わせていただけないでしょうか?」
『もとより、そのつもりで預けたんだ、君の好きにすればいい
それでどうするの?』
女性はにやりと笑みを浮かべていく
「目障りな蜚蠊を一掃するには、餌に毒を仕込んでおくのですよ」
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
風香が見つけた、次の階層へと続く
転移魔法陣を通って、次の階層に入っていく
「ここが次の階層?」
「なんだか、狭ぇ場所だな‥」
二人の少年はそう言って、辺りを見回していく
「複雑な作りって感じじゃないわね…
それだったら、先に進んでみましょう」
姫奈がそういうと、一同はこくりとうなずき
そのまま、先の方にへと進んでいくと、やがて
外の方にへと続いていく、明かりが見えてきた
「あれが、この階層への本当の入り口ですね…」
「みんな…
覚悟を決めていきましょう」
そういって、一同は気を引き締めながら
この階層へと続いていく道を進んでいった
その先に映った光景は
「っ!?
こ、これって…」
そこに映ったのは、そこに映ったのは、辺り一面に広がっていく
大きな樹海である、これまでの階層も樹海のようなものだったが
この階層は、いつもよりも木の大きさは大きく
空の方も木漏れ日が通らぬくらいに、葉が覆いかぶさっている
「なんだか似てる‥‥
私たちの住んでいた所に‥‥」
「フェアベルゲンに?
そっか、フェアベルゲンは
本当はこんなに綺麗だったんだね…」
香織はそう言って、辺りを見回していく
木々はきれいに茂っており
水の流れる音が不思議と聞こえる
迷宮の中だと理解していても
不思議と自分達は自然の中に居るのだと思ってしまう
「そうだよ‥
俺達が過ごしていたのは‥」
「ああ、懐かしくなってくるぜ‥」
ダイとリョクは、その様子をみて
自分達の故郷を懐かしんでいる
かつては、自然に囲まれた美しいこの場所も
実際には、見るも無残な凄惨なものになり果ててしまっている
子供達は、それを理解しているがゆえに
樹海の光景をみて、かつての故郷を思いだしていたのだろう
ラナもまた、然り
一方で、かつてのフェアベルゲンを知らない
姫奈たちは、ここがかつてのフェアベルゲンに近いと知って
辺りの光景を見つめていく
「素敵なところだったのね…
貴方たちが過ごしていた場所は…」
「もちろんだよ‥
自然と一緒に生きて
森の恵みへの感謝もかみしめて‥
俺達は、生きてきたんだ‥」
ダイはそう言って、自分達の故郷を語っていく
「すっごく素敵だと思う…
私も、見て見たかったな…
フェアベルゲン…」
「(ええ‥‥
出来る事だったら
故郷が無事な状態で
私も、戻っていきたかったです‥‥)」
「ゴブリンさん‥」
ラナの悲し気な表情を見て
オウは、ただ抱きしめてやる
哀しいという気持ちを少しでも癒せるように…
「うん?」
ユーカが不意に、目の前に何かを見つける
「どうかしたの?」
「ねえ、あそこに誰かいない?」
ユーカはそう言って、指を差していく
その先にいたのは、何と一人の人物であった
長い黒髪をポニーテールに纏めており
それを抜きにしても、目の前にいる人物が女性であると分かる
子供達は、面識がないので誰なのかは理解できなかったが
姫奈たち六人は、その後ろ姿はの女性が誰なのかを理解した
「雫ちゃん…?」
香織は、不意に声を漏らすと
目の前の女性は、一行の方に目を向けていく
姫奈たちにはそれが誰なのか、理解できた
「雫ちゃん…
良かった、やっと会えた…」
「雫さん!
やっと見つけましたよ!!」
纏が、雫に呼び掛けていくが
雫は一同の方に寄ることなく
そのまま、向こうへと去っていった
「雫ちゃん!?
待って雫ちゃん、私だよ香織だよ
雫ちゃんの親友の香織だよ、雫ちゃんを探しに来たんだよ!」
香織は必死に呼びかけていく
「香織、気配探知で目の前の雫を捕らえて!
あれは、本物ね?」
「もちろんだよ、だって私が雫ちゃんを
大切な親友の気配を間違えるはずないよ」
香織は、自身をもって言う
「‥‥だったら、やることは一つ!
追いかけるわよ!!」
姫奈に言われるまでもなく了承し
自分達の元から離れていく雫の後を追っていく
「はあ‥‥はあ…
雫ちゃん‥‥どうして…」
息を切らしながらも、何とか先に進んでいく
「この樹海も、それなりに広いのね…
はぐれないように注意をしないと」
「そうだね…」
そういって、姫奈も星力魔法の力で
この辺りに探知を広げていく、すると
「‥‥ね、ねえみんな…
ちょっといい?」
「うん?
どうしたの姫奈?」
姫奈が何やら嫌そうな表情を浮かべていくので
風香が不意に訪ねていく、何かを見つけたのだろうか
「‥‥この辺り、妙に反応が多いのよね…
いいえ、大量にあるとでも言うべきかしら
反応のひとつひとつは小さいんだけれども…
それが、ものすごく大量にあるって感じで…」
「?
だから、何なんですか?」
何やら様子がおかしい、姫奈に不意に訪ねていく纏
「‥‥ちょっと待って、私も探知魔法を使ってみるね…」
香織が姫奈の様子がおかしいので
自身もその能力を使用してみることにする
暫くすると
「‥‥い、いいいい…
いやああああ!!!」
香織は、突然悲鳴を上げて取り乱していく
「(ど、どうしたんですか香織さん!?
一体何を見たんですか…)」
「ひぃ!」
すると、オウは上を見ると
短く小さい悲鳴を上げて表情を引きつらせる
「どうしたの、オウ?」
「あ、あれ‥」
「「「「「あれ?」」」」」
一行は不意に上を見上げる
そこにいたのは、何と大量の蜂であった
しかも地球にいる蜂よりもはるかに巨大な蜂である
「「「「「「ぎゃああああああ!!!!!!」」」」」」
その場にいる全員が悲鳴を上げる
でかい虫が大量に木にとまっているのだ
一般的な感性ならむしろ悲鳴を上げて当然である
「こういう事よ…」
「なんなのこの大量の虫!?」
だから言ったのにと言わんばかりに呟く姫奈と
かなり取り乱したように、姫奈にすがるように問い詰める香織
しかも、その悲鳴が聞こえたのか
巨大でさらにはおびただしい数の蟲が
一斉に一行の方に向って飛び込んでいく
「きゃああああ!!!!」
アルサジが悲鳴を上げる
香織は慌てて、円陣で自分達を囲って
自分達に向かってくる蟲の大群の行く手を阻んでいく
障壁にぶつかった蜂たちは
なんと辺りどころが悪かったのか
当たった方から順番にボトリッ、ボトリッ、っと
音を立てて地面に落ちていき、そのままうごかなくなる
「‥‥案外弱いんだね…」
「いやいやいやいや、それよりも
蜂の群が、障壁に集まり始めたんだけど!?」
香織はあっけなく落命した蜂たちを見てそう呟くが
風香はそれどころではないと激しく突っ込んでいった
確かにぶつかると、蜂はあっけなく絶命したが
さすがに集まるだけでは死ぬことはなく、障壁に寄り添っていく
「ぎゃああああ!!!!
よけいに気持ち悪いいいい!!!!」
「アルサジお姉ちゃん!」
蜂達がわらわらと密集しているのを見て
アルサジは、発狂気味になっていった
「速く障壁を解除して!」
「無理に決まってるでしょ!
それこそ大変なことになっちゃうよ!」
余りの光景に耐えかねて障壁を解除するように言うアルサジ
しかし、そんなことをしたらもれなく
蜂の群が自分達の方にやってきてしまう
すると、蜂たちは急に自分達の針が付いている部位
所謂、腹を振るわせたり、羽を振動させていくと、そこから
余りにもひどい甲高い音が鳴り響いていき一行の鼓膜に響かせていく
「お、おい‥
なんだよこの音‥」
「この虫たち、自分達のケツを振ってるぞ?」
ダイとリョクの呟きは、この音にかき消され
更には周りの者は耳を閉じているので聞こえていない
「‥‥まずいわね、これって熱殺蜂球!?
蜜蜂が天敵の雀蜂を蒸し殺すのに使う…
このままだと、まずい‥‥香織!」
姫奈は、香織に呼び掛けていくが
周りの音が激しいせいで、声が届いていない
「さすがに、聞こえないか…
でも、それだったら!」
姫奈は、香織の方に近づいて
彼女に耳打ちをする、香織は驚いた様子を見せる
香織は戸惑っている様子だが、姫奈は真剣な表情を見せている
それを見て、香織は少し困惑をした様子を見せていたが
姫奈の表情を見て、覚悟を決めたのか何か決意を秘めた表情を見せる
「(ああもう!
音が五月蠅過ぎて、どんな
やり取りしてるのかわかりませんよ!!)」
溜まらず、ツッコミを入れていくラナ
すると、香織は後ろの方を張っている円陣を開いていく
当然、その中に大量の蜂が入り込まんと進んでいく
「ち、ちょっと!?
一体何をやって‥」
余りの事に、子供達は完全に冷静さを失っていくが
姫奈はそんな中でも、前に進んで左手の方を突き出していくと
「はああああ!!!」
姫奈は前方に電撃を放出させて
それを群の方に向かって放っていく
電撃を帯びた蜂は落命して地面に落ちていき
それによって音の方が静まって、一行の声が聞こえ始めていく
「みんな、走るわよ!」
そういって、姫奈が炎を帯びた剣を振るって
残っている蜂たちを次々と焼いて切り捨てていった
一行は急いで、そのあとについていく
それから、しばらくして
「ふう…
ごめんね、驚かせてしまったみたいで…」
「本当だよ!
あんなに虫が集まってるのに
結界の後ろの部分を解除させてって
一瞬正気を、疑っちゃったんだからね」
姫奈がそういうと、香織が頬を膨らませていきながら言う
姫奈はあえて一か所だけ結界の抜け道を開けて
そこに群を誘導させて、そこに攻撃を放って倒すというもの
それは見事に功を奏したものの
辺りに耳障りな音が響いていたせいで
直接伝えられた香織以外は、何も説明を受けなかったので
余計に香織と同じような考えをしていた
「ま、まああの群からどうにか逃げられたから
それについては別にいいけれども、どうするの?
さっきの蟲の大群に襲われたせいで
雫ちゃんが去っていった方向が分からなくなっちゃったよ」
「あ、そういえば…!?
どうしよう…」
風香に言われて、雫の事を思いだす香織
「しかし、あんまりむやみやたらに移動をするわけにはいかないわね…
またさっきみたいに、蜂の群につかまってしまう恐れもあるしね」
「そんな…」
姫奈の言う事も理解はできるものの
それでも、親友である雫の安否が心配である香織
香織自身、じっとはしていられないが
だからと言って、ゆっくりともしていられない
どうしたらいいのかと、悩んでいると
香織はあるものを見つけ、思わず立ちあがった
見つけたものの、正体は…
「雫ちゃん!」
またしても、雫の姿であった
香織の声に気が付いた雫は
不意に一行の方に目を向けていき
すぐさま、奥の方にへと走りだしていく
「待って、雫ちゃん!」
「ちょっと、香織!
一人で勝手に行かないで!!」
思わず飛び出していく香織
姫奈が、そんな香織を追いかけていく
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「はあ‥‥はあ…」
ある程度の森の中を進んでいき
そこで立ち止まって、辺りを見回していく
「雫ちゃん…
雫ty‥‥っ!?」
いきなり後ろから、口元を抑えられる香織
彼女の口元を抑えたのは…
「静かにしなさい!
また、蜂の大群が来たらどうするの!?」
姫奈であった
彼女は香織の口元を抑えながら
大きな声を出さないように促していく
それを聞いた香織はもがくのをやめ
その反応を確かめた姫奈はそっと口元を離してやる
「香織、これからは一人で勝手に
走りださない事、わかったわね?」
「ご、ごめんなさい…」
香織の事を、きちんとしかりつけていく
そんな二人のもとに、他の面々も駆けつけていく
「あーいたいた…
もう、急に走りださないでよ」
「全くだぜ‥」
風香と子供達は息を切らしながらも合流していく
「うう、本当にごめんなさい…」
「それに結局また、雫の事を見失っちゃったし…」
姫奈は、呆れたようにため息をついていく
すると
「うん?」
狐人族のオウが、自身の狐耳をピコピコと動かしていく
「どうしたの‥?」
「‥足元から何か音がする‥
何がが貼っていくような音‥」
オウはそう言って、一同に伝えていく
「足元?
うん‥‥」
香織は不意に、足元を見ていく
そこに見たものを見て、不意に動きを止める
そこで見たものは…
「「「「「「きゃああああああ!!!!!!」」」」」
向こうの世界においても、家の至るところ
特に台所に潜んでいることもあって、見ただけで
人間を恐怖に陥れることから、黒い悪魔の異名を持つ虫
所謂、ゴキブリである
その姿を見た一行は、それを見て悲鳴を上げずにはいられなかった、
おまけにこちらに向って一直線に向かってくるので
なおさら、その場にとどまってなどいられるはずもなく
「もう、なんでこの樹海には
蜂だけじゃなく、あんなのまでいるの!」
「これも、試練なんじゃない?」
「何の試練なのこれ!
姫奈、貴方、虫とか大丈夫でしょ!?
何とかしなさいよ!!」
風香が急いで、姫奈に言う
「無理よ、あんなに多いと
一気に倒していくのは無理よ
倒し損ねて、残ったのが襲い掛かったら
それこそ、大変なことになると思うけど?」
「じゃあ、どうするのよおおおお!!!」
一人だけ冷静な姫奈に、風香は悲鳴交じりで問いかける
「それだったら…
これで!」
姫奈は、傍にあった木を切り
それを倒して、所謂バリケードを作る
それによって追ってきたGの群れは
足止めを喰らい、動きに乱れが出ていく
「あ、せき止められた‥」
「今の内に、離れるわよ!
あんなのはただの時間稼ぎなんだし…」
「了解!」
姫奈の言葉を受けて、いそいで離れていく一行
どうにかして、Gもどきの群から逃れた一行
「あーもう!
雫ちゃんを見つけて追いかけたと思ったら
蜂とか嫌な虫ばっかり、何なのこれって…
まるで、誘い込まれているみたいだよ~」
香織は、うんざりと言った様子で叫んでいく
「誘い込まれている…?」
姫奈は不意に考え込んでいく
「ちょっと待って…
そう言えば、これって…」
姫奈は、不意に立ちあがっていき
目の前にある木の前に立っていくと
その樹に対して、勢いよく剣を振るい一刀両断する
「ち、ちょっと!?」
「どうしたの、姫奈ちゃん!」
姫奈の突然の行動に、一同は目を見開いていく
だが
「‥‥やっぱりそうよ…
この森は、あの時と同じ
アルテナが生みだした森よ!」
「アルテナ様が!?」
姫奈は、確信をもって言う
「どうして、そう思うの?」
香織は、姫奈に訪ねていく
「これ見て…
木って言うのは動物と違って
血とかそう言ったものはないの…
でもこの樹…」
木の切れた部分に手をやると
そこに赤と緑が入り混じった色の液体が
「これって…」
この独特な血の色は、覚えがある
ライセン大迷宮での戦いで
自分達を最初に襲ってきた罪徒
運命と破壊の罪徒
リュナ・プレーヌ
彼女に一撃を与えたときに
彼女の身体から流れた血の色と同じである
「そ、そんな‥‥
だって、アルテナ様は
私たち、森人族にとって‥‥」
「ごめんね…
実は私達が、ここに落ちてきたのは
そのアルテナに戦いを仕掛けられたいざこざのせいなの…」
「そして、今やそのアルテナ様は
罪徒と言うとんでもない存在になってる…
もう彼女は、亜人としての道を外れてる
私たちにとって、もう倒すべき相手なのよ」
姫奈は言う、アルサジはショックだったようで少し放心状態になっている
「アルテナさんって、そんなにすごい人なの?」
「ああ‥
アルテナ・ハイピスト‥
森人族の長老にして、長老衆の長
アルフレリック様の孫娘で、優しくて穏やかな性格から
森人族にとって、憧れの存在だったんだよ」
「そうなの!?」
「俺たちのところにも話が届いていたからな‥
だからこそ、余計に信じられねえぜ」
ダイとリョクも、アルテナの話を聞いたことがあるらしく
大まかながら、香織と風香、もとい一行に話していった
「(そういえば、シアちゃん‥‥
森人族の族長の娘さんと
仲良くなったって嬉しそうに話してた‥‥
族長の娘同士、話が合ったみたいで
二人で何度かあっていたみたいよ‥‥)」
「そうなんだ‥」
不意にラナは、ある意味すべてのきっかけになった
シア・ハウリア
彼女の事を思い出した
しかし
「そんなことない、アルテナ様が‥‥
あのお方がそんなことをするわけない!」
それでも、かたくなにアルテナの事を信じぬくアルサジ
「アルサジちゃん…」
香織は見て居られない様子を見せていく
しかし、自分達がここに落ちたのは
アルテナに襲われた時なのは、事実である
「‥‥アルサジ、別に私達の話を
無理に信じろとは言わない、信じてくれないならそれでいい…
だからこそ、ここで蹲らないで」
「で、でも‥‥
もしも、皆さんの言う事が本当だったら‥‥」
アルサジは首を横に振りながら言う
アルサジは、ここまでの道中で
姫奈たちへの信頼は抱いている
だからこそ、彼女達が自分達に
悪戯に嘘をついていくようなことをしないことも理解している
だが、理解はできても心が受け止め切れない
それが、彼女を立ち止まらせてしまう
「‥‥いい、私たちの話が本当か嘘か
それを確かめる術は、一つしかない…
おそらく、私達をここに落としたアルテナも
私たちの事を確実に倒すために、ここにきているかもしれない…
それだったら、その時に私たちの話が本当か嘘か…
その目で見て、確かめて見なさい」
「目で‥‥見る‥‥?」
アルサジは、恐る恐る姫奈の方を見る
「人間は嘘をつく、善意からであれ悪意からであれ…
どうして人間は嘘をつくのか、それは
嘘をついている人間のみが真実を知っているからよ
そして、真実なのかどうかを確かめるのは
自分の意志で、その真実の方に意識を向けていく事…
真実を見ようとしなかったら、永遠に嘘が真実のままよ
あなたが信じたいその人が、どうなっているのか
逃げたところで、余計に嘘に振り回されてしまうだけ…
それが嫌だったら、真実から自分を背けないで」
「真実から‥‥自分を‥‥」
アルサジは、しばらく思い悩んでいたが
すぐに顔を上げて、立ちあがっていった
「わかった‥‥
私、まだ信じられないけれど
それでも私、自分の意志で確認したい‥‥
誰かに言われて納得できないなら
自分の意志で見て、確かめていきたい!」
そういって、アルサジは改めて立ちあがっていく
「ええ、それじゃあ行きましょう…
みんな、くれぐれも一人にはならないで」
姫奈はそう言って、周りのもの達に呼び掛けていく
だが
「っ!?」
「みんな‥‥!?」
そこに一同の姿はなく
姫奈とアルサジだけとなった
「また、離れ離れに…」
すると、姫奈の耳に何やら
がさがさと音が鳴り響いていき
姫奈は、それに気が付いて
武器である剣を使って迫ってきたなにかを攻撃する
それは何と、木の枝であった
「これって…
っ!?」
姫奈は、自身に襲い掛かってくる
木の枝による猛攻を剣の一振りでいなしていき
姫奈は、アルサジを庇いながら
如何にかして敵の猛攻をやり過さんとしていく
「アルサジ!
離れないでよ!!」
「はい!」
姫奈は、アルサジを連れて行きながら
猛攻が続いていく枝の群を、いなしながら
どうにか、その場から離れていく
「まずは、皆と合流しないと…」
姫奈はそう言いながら、ひとまずその場から離れていった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
一方で、香織達三人は
何とゴブリン姿のラナと子供達とはぐれてしまう
「しまった…
分断されちゃった…」
風香は、辺りを見回しながら呟いていく
「‥‥ごめんみんな…
私が、よく周りを見ずに
雫ちゃんの事を追いかけて行ったせいで…」
「謝らないで下さいよ、香織さん
今は誰が悪いかではなく
他のみんなとどうにかして合流しないと…」
「纏ちゃんの言う通りよ…
今はまず、姫奈や子供達と合流しないと」
そういって、武器を構えて辺りを見回す風香
「‥‥そうだね…
今はまず、この森をどうにかして
抜け出さないと、いけないよね」
香織は気持ちを凝り変えて、まずは
はぐれた面々との合流を優先させようとする
「そうね…
ましてや、姫奈はともかく
ラナさんや子供達だけじゃ
万が一、魔物に襲われでもしたら」
そういって、心配そうにしていく風香
だが、不意に自身の鼓膜を何やら金属を鳴らすような
そんな音が、揺らしていった
音のする方に、目を向けていくと
そこに現れた者の姿を見て、警戒を強めていく一同
何故なら、そこに現れたのは
「おやおや…‥
まさか、こんなところに
いらっしゃったんですね…‥
あなた方がここに落ちて以来
今か今かとずっと、探しまわっていたんですよ?」
植物と浸食の子爵
アルテナ・ハイピスト
彼女が、武器である錫杖を突きながら
三人のもとに、現れてきたのであった
「アルテナ!
やっぱり、この森は貴方が…」
「そうですよ
さすがに他の階層までに
この力をのばしていく事ができませんでしたが
その甲斐もあって、この迷宮で探し者を見付けることが出来たんです」
「探し者?」
アルテナの物言いに、首をかしげる纏
「貴方達の仲間の一人、と言えばお判りでしょうか?」
「っ!
もしかして、雫ちゃん!?」
香織は、それを聞いて
不意に親友である雫の姿が脳裏に浮かぶ
同時に香織は、本のページをやぶり取って
そのやぶったページを剣の形に変えて構えていく
「雫ちゃんをどうしたの!?」
「残念ですが、貴方のその問いに答えるつもりは永遠にありません…‥
なぜなら、貴方方はここで、死ぬよりも恐ろしい目に遭ってもらうんですから」
アルテナはそう言って、武器である錫杖を地面に突いて鳴らしていく
すると、自分達の周りに茂っている木々が
風が吹いたように、枝や葉を鳴らしていく
すると、そこから繰り出されて行った枝が
勢いよく三人の方に向かって攻撃が繰り出されて行く
三人はもち前の身体能力で、どうにかそれをかわし
本体の方である、アルテナの方に向かって攻撃を仕掛けていく
「はああああ!!!」
香織は、武器である剣を振るって
アルテナに向かって斬りかかっていく
すると、アルテナは防御を行う事なく
香織の攻撃をそのまま、受けていった
「きゃ!」
アルテナは、攻撃を受けて
そのまま後ろの方に倒れていった
香織はそれを見て、目を見開く
「(え!?
どういうこと?
なんだって、私の攻撃を
防御もしないで受けてたりなんて…)」
香織は、アルテナがあまりにも
自身の攻撃をあっさりと受けたことに目を見開く
そもそも、攻撃が避けられないにしても
彼女達罪徒の身体は、彼女らの細胞を覆って居る
細胞壁、言うならば天然の鎧に覆われているのだ
それが身体全体を追っているとはいえ
防御姿勢を取ろうとして来ないのはおかしい
違和感を覚えた香織は、そこで攻撃の手を止める
だが、そんな彼女に向かって
木々の枝が、意志を持つかのように
香織に向って勢いよく突き出されて行く
「っ!
この!!」
香織は、迫ってくる枝に対抗して
円陣を刃のようにして放っていき
それを使って、枝を切り落としていく
だが、四方八方から来るので
流石の香織も対応が仕切れない
だが、そこに
「はああああ!!!」
風香が武器である槍を振るって
香織の背後から迫ってきた枝を払い落していく
纏もそれに続いて、攻撃の方を続ける
「大丈夫、香織ちゃん!」
「うん、ありがとう…
でも、アルテナには逃げられちゃった…」
香織がそういうと、先ほどの猛攻のどさくさにまぎれて
アルテナの姿は、どこにも見あたらなくなってしまっていた
「いったいどういう事なんでしょう…
どうして、奴は急に姿を…」
「私達に恐れをなして逃げた!
‥‥なんてことないですよね
そもそも、香織さん以外に自分達に
対抗できる存在なんて、ここにはいないのに…」
「‥‥…」
香織は、胸の奥に何かが引っかかる様な感覚を覚え
アルテナの行動の違和感を覚えていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
そのころ
「アルサジお姉ちゃん!
姫奈お姉ちゃん、香織お姉ちゃん!!
どこー!!」
ランが必死に呼びかけていく
「くそ‥
よりにもよって、こんなところで
離れ離れになっちまうだなんて‥」
「でも、何だってみんながいなくなったんだ?」
「わかんない…
でも、言えるのは
今の僕たちは危険な状況だって言う事だね…」
ユーカが答えていく
ここにいるのは、魔力がないのを抜きにしても
まだ運動能力がお世辞にも発達しているとは言えない子ども
ここでは、罪徒と言う強大過ぎる相手でなくとも
魔物や先ほどの巨大な虫の群が襲い掛かりでもすればひとたまりもない
子供達は幼くものの、理解力に乏しいわけではない
いいや、仮に乏しくなくとも理解はできるだろう
今の自分達が、どれほどに危ない状況なのか
「どうすんだよ‥」
「どうするって‥
そんなのどうしたら」
不安がよぎって、気が気ではない様子を見せていく
「どうしよう‥」
オウもそれに流されるように不安に駆られて行く
だが
「(大丈夫です!)」
ラナが声をかけていく
オウはそれを聞いて、彼女の方に意識を向けていく
「(オウさん‥‥)」
ラナはオウに話しかけていくと
「みんな、静かにして!
今、私達が一番しちゃいけないのは
私達が私たちの事を考えられないようになること‥
今は焦らずに、自分達が生き残る事を考えよう」
オウは精一杯に答えていくと
他の子供達は、それを聞いて静かになる
「…そうだね…
アルサジ姉ちゃんや姫奈さん達の事は
気になるけれども、僕たち自身がしっかりしないと…」
「け、弱虫ユーカのくせに生意気だぞ?」
「でも、その通りだ‥
俺達がしっかりしねえと
それこそ、あいつらに笑われちまうぜ」
一同は落ち着きを取り戻していった
「‥とは言ったけれど‥
先ずはどうすりゃいいんだ?」
ダイはそう言って、辺りの方に目を向けていく
これから何をしようにも、周りは木々に覆われており
何処に進めばいいのかと言う、検討の方もつかない状態である
「一番は離れ離れにならないことだね…
こういう状況でバラバラになって
しまう方が、リスクとしては大きいと思うし…」
「その位は言われなくても、わーってるよ
つっても、アルサジ姉や姫奈姉ちゃんたちが
どこにいるのかも、まったくわからねえし‥
本当にここから、どうすりゃいいんだか‥」
そういって、子供たちなりにこれからの事を考えて話し合っていく
「‥っ!」
ランは、どうしようと思い悩んでいると
不意に自身の視線の先に、あるものを見据えていく
それは…
「‥お母さん‥」
ランは、不意に立ちあがっていく
「?
どうしたの、ランちゃん‥」
ランが急に立ちあがったのを見て
隣に座っていたオウが、訪ねていく
ランの見ている、視線の先には
翼人族の女性の後姿が映っていた
女性は、しばらくすると奥の方に消えてしまう
「っ!
待って!!」
ランは、それを見て思わず駆け出していく
「ランちゃん!」
オウもそれを追いかけていき
他の子供達も急いでその後を追っていく
「お母さん!」
そういって、そこをのぞき込むと
そこには確かに、ランと同様の翼人族の女性がいた
ただ、見た目はボロボロであり
どうやら少し、怪我をしている様子だ
「‥お母さん‥?」
ランは、恐る恐る女性に話しかけていく
女性はゆっくりと顔を上げて行き、ランの方を見る
「‥ラン‥なの?」
その女性が苦し気に呟いていく
自身の名前を呼ぶその声を聞いて
ランは、その目から涙を浮かべていく
「お母さん!」
ランは、思わずその女性に抱き着いていく
「‥ラン、ランなのね‥
良かった‥無事で‥」
「お母さん‥お母さん‥」
お互いに涙を流しながら抱きしめ合っていく二人
その様子に、駆け付けた子供たちは目を見開いていく
「あ、あれって‥」
「(翼人族の女性‥‥
ひょっとして、皆の他にも
ここに落ちて生き残った人が!?)」
ラナは、驚きの声を上げて行く
自分とここにいる子供達以外はみんな
罪徒に滅ぼされたと思っていたのだ
それなのに、目の前にはまぎれもなく
翼人族の女性であった、つまり自分たち以外にも生き残りがいたという事だ
「お母さん‥よかった‥
本当に‥生きててくれた‥」
「私も、貴方が生きていてくれて
ほんとうに良かったわ、ラン」
それから、しばらくして
ランは自身の母と再会できた喜びからか
少し疲れたように、眠りについていき
他の子供たちはおそるおそる近づいていく
「あ、あの‥」
オウが代表して、ランの母親を訊ねていく
「‥あら、貴方達は‥?」
「あ、えーっとその‥
俺達はその、ランと一緒に
ここに落ちてきたというか‥
落ちてしまって自然にここに来ちまったって言うか‥」
ダンは、どう答えて行けばいいのかわからず
少し会話がしどろもどろになってしまう、しかし
「俺はリョク‥
ラン、つまりあんたの娘とは
一緒にここに迷い込んぢまって‥
そんな折に、あんたと再会したんだ‥」
リョクが見るに見かねて、そう答えていく
「そうだったの‥
だとすると、お礼を言ってあげないとね‥
ありがとう、私の娘を守ってくれて」
そういって、ランの母親はお礼を述べていく
それを聞いて照れ臭いのか、少し戸惑った様子を見せていく一同
特にダイとリョク
そんな風に話をしていると
母親に膝枕をされていたランが
瞼を揺らし、そのままゆっくりと目を開けていく
「あ、起きた?」
「‥うん、お母さんの膝
すっごくあったかかった‥
本当に‥本当にお母さんが生きててくれたんだ!」
そういって、母親に抱き着いていくラン
ランの母もそんな娘の頭を愛おしそうに撫でていく
そんな光景を見て、不思議と
これまでに抱いていた不安な気持ちが払しょくされて行く
「(なんにしても、この子達以外にも
生き残りがいたのは幸いでした‥‥
でも、何なんでしょう‥‥
それはとってもいいことなのに
どこか奇妙な感じがするのは)」
ラナ自身も、その光景には素直に嬉しく感じている
だが、どうにも彼女にどこか、違和感のようなものを抱く
ラナはそれが何なのかもわからないために、どうしても答えが出ない
「ねえ、ゴブリンさん‥」
すると、ラナの言葉に反応したのか
現状、ゴブリンの姿になっている彼女と
唯一、会話をしていく事ができるオウが声をかけていく
「(どうしたんですか、オウさん?)」
「ねえ、私の気のせいなのかもしれないんだけれど
この辺りって、妙に甘い匂いが漂っている感じがするんだ‥
今は、そんなことは関係がないって思っちゃうかもしれないけど‥」
そう言って、ラナに気になる事を打ち明ける
「(甘い匂い‥‥?
そう言えば、確かに
妙に甘ったるい匂いが‥‥)」
そういって、ラナは不意にランと母親の方に目を向けていく
すると、驚きの光景を目の当たりにしていく
「(う、嘘でしょ!?)」
ランを抱えている母親の姿はそこになく
代わりに、不気味に蠢く苗がランの体を包んでいた
「お母さん‥
これかもずっと
私の傍にいてくれるよね」
ランが懇願するように言う
すると
「(だめええ!!!!)」
ラナは必死に呼びかけていくが
残念ながら彼女の声はただの鳴き声にしか聞こえない
だが
「ランちゃん!」
オウが率先して出ていき
ランと苗木を引き離そうとしていく
「オウちゃん!
何するの!?」
「聞いて、ランちゃん!
これはランちゃんのおかあさんじゃない
目の前にあるのは、ただの小さな木なんだよ!!」
オウがそう訴えていくと
ラン以外の他の子供達も目を見開く
「嘘だよ!
ここにいるのは、お母さんだよ
ランのたった一人のお母さんなんだよ!!」
ランはそれでも、必死にしがみついていく
すると、オウに続いてほかの子供達もランを引き離さんとする
「みんな‥」
「なんで‥みんな‥
いやああ!!」
流石に四人分の力には耐えきれず
そのまま、引き離されて行ってしまう
「いったた‥
ひどいよ皆、どうしてこんな‥」
「…見てみて…」
「‥え!?」
ランは悲し気にほかの子供達の方を見ていくが
ユーカがそういって、ランの母がいた方に目を向けていく
ランは改めて、そっちの方を向くと
そこにはランの母の姿はなく、代わりに
一本の苗木が、そこに立っていた
「どういうこと‥お母さんは‥?」
「(おそらくあれは、幻覚だったんです‥‥
私達に甘い幻覚を見せて、ここにとどまらせようと‥‥)」
ラナがそういうと、オウは不意に鼻をぴくぴくさせていく
「‥ね、ねえ‥
何だか、すっごく嫌なにおいがする‥」
「(嫌な臭い‥‥?)」
オウは不意に呟いていく
「臭いって、どんな臭いだよ?」
「甘い匂がするのか?」
「ううん、さっきのランさんのお母さんの時の臭いとは全然違う‥
すっごく、嫌な感じの臭い‥」
オウは呟いていく
「(なるほど‥
恐らくこれは‥)」
ラナはオウが何の臭いの事を言っているのかを理解していた
オウが感じた臭い、それは…
血の臭いである
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「いったい何なのこの森‥‥
一体何処まで、覆いつくして‥‥」
アルサジと姫奈は、森によって
分断されてしまい、他の面々を探して
森の中を散策していく
「わからない…
でも、この森が少なくとも
ただの森ではないという事だけは分かるわ…
私たちも、ハルツィナ樹海に来た時も
同じように、樹海に迷い込まされたからね…」
「そうなんだ‥‥
ひょっとして
それも、アルテナ様が?」
アルサジが不意に訪ねていく
「‥‥そうね、言わせてもらうなら
そうだと言っておくわ、何にせよまずは
この森から出てこないと、話にならないしね…」
「そうですね‥‥」
二人がそんな会話をしていると
二人のもとに何かが向かってきている
「っ!
アルサジ!!」
「きゃ!」
姫奈はアルサジを突き飛ばし
向かって来たもののに向かって
剣に炎を纏わせていき
それを使って一気に燃やし尽くしていく
その正体は、例の黒い悪魔を模した蟲の群であった
「っ!?
しまった!」
姫和は自身がかばった、アルサジの方に目を向けていく
しかし、気が付いたときにはすでに遅く、そこに彼女の姿はなかった
「やってくれたわね…」
姫奈は悔しそうに、呟いていく
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「姫奈さん!」
アルサジは自身を庇って、突き飛ばした姫奈の姿が
見えなくなったことに気付き、辺りの方を見まわしていく
ただでさえ、まともな戦力には成りえないのに
この状況で魔物にでも襲われればまずいことになる
どうにかして、合流を図ろうとするアルサジ
「うん?」
すると、どこかで何かが草をかき分ける様な音が響いていく
アルサジはそれを聞きつけて、その音のする方に向かって行く
すると、誰かの苦しそうな息遣いが聞こえてくる
アルサジは、そこを覗いていて見ると
そこに一人の女性の姿を見つけていった
「っ!?
あなたは‥‥」
アルサジが、発見したのは
木の幹に背中を預けていた一人の女性
その女性には、自身と同じ長い耳をしている
「私以外にも、森人族の生き残りが‥‥」
アルサジは、そっとその女性に近づいていく
「‥‥誰…‥?」
すると、女性はアルサジに気が付いたのか
彼女のいる方に顔を向けて話しかけていった
「‥‥す、すいません‥‥
何だか苦しそうな声が聞こえたので
大丈夫なのかなって、思ってそれで‥‥
っ!?
あなたは‥‥!」
アルサジは慌てて弁明するが
彼女はその女性の顔を見て目を見開いていく
何故なら、その女性は
「あら…‥
あなたは確か…‥
アルサジちゃんだったわね…‥
よく私のところに会いに来てくれていた」
アルテナ・ハイピスト
服装が罪徒の服ではない事以外は
まさに、彼女そのものであった
彼女の身体には、切り傷があり
そこからは、血がにじみ出ていた
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
-
原罪(スルー推奨)
-
傲慢
-
虚飾
-
嫉妬
-
憤怒
-
怠惰
-
憂鬱
-
暴食
-
色欲