世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
アルサジと離れ離れになってしまった姫奈
彼女は森の中を、必死に駆け回っていく
「っ!
闇雲に探し回っても
それこそ、なにも見つけられない…
だからといって、悠長にしていたら
アルサジちゃんが危なくなる、だとするなら…
どうにかして、この森を突破するすべを見つけないと…」
姫奈は、ここに来るまでの道中の際に
同伴させていた森人族の少女、アルサジを
魔物の襲撃の際に、彼女を庇った際にはぐれてしまう
この森自体が巨大な敵であるために
気配をたどろうにも、その大元の気配が大きすぎて
探り当てていく事は、出来なくなっていた
姫奈は、それでもわずかな可能性に欠ける為に
どうにかして、辺りの捜索を勧めて行く事にする
だが、そんな彼女の存在を
あざ笑うかのように目の前に現れたのは
「っ!?
また例の蟲の魔物か…」
姫奈は、またしても自身の目の前に
現れた虫の群を見て、うんざりした様子を見せる
蟲自体は過剰ではないものの、決して平気ではないので
いい加減に視界にいれていくのも億劫になってきた姫奈
しかし、姫奈の前に現れた虫たちの動きはおかしく
蟲の群は飛び上がっていくと、段々と形を作っていき
姫奈は、それを見て目を見開いていく
何と、蟲の群れたちは集まっていくと
何と虫が集まってできたようなようには
とても見えない、精巧な形をした女性の姿となる
銀髪碧眼の神秘的な見た目だが
その表情には感情が感じられない
まるで、人形のような印象を受ける女性である
「なにこれ…!
こんな魔物が、この迷宮に!?」
すると、その女性は両手に剣を持ち
それをもって、素早い動きで姫奈に斬りかかっていく
「っ!」
姫奈は、その一撃を受けて少し表情を歪めるが
それでもどうにか相手を押しやっていく、しかし
すぐさま相手の方は、姫奈に切り込んでいった
姫奈は、星力魔法を使って空を飛ぶが
木々が覆い茂っているのでそんなに高くは跳べない
しかし、それなら条件は相手も同じだと考える姫奈
だが
女性は、元の蟲の群に戻って
覆い茂っていく木々の中を通っていく
「なるほどね…
空中では、むしろ
あっちの方が有利ってことね…」
姫奈はそう言って、地面に降り立つと
自身を拡散させようと、蟲の群があたりに飛び交っていく
「‥‥…」
姫奈は、そんな中でも
深呼吸をして、精神を落ち着かせていく
すると、背後から群が集まって
女性の姿になり剣を振りかざさんとしていく
姫奈は、目を見開き
剣に炎を宿していき
それを使って、女性を切り裂いていく
女性は斬られそうな個所から
蟲の群に戻って、回避を試みるが
剣から噴き出していった、炎によって
群は次々と炎に包まれて行き、そのまま
地面に落ちて、煤になって崩れていった
「‥‥やっぱりこういうのは、不得意の様ね…
しかし、やっぱり全部は燃やしきれなかったか…」
残った蟲の群が女性の姿を模っていき
そのまま武器である剣を構えていった
だが、剣を二本とも地面に突きさすと
そのまま姫奈から距離を取っていくと
両手を、姫奈の方に向ってかざしていく
「‥‥接近戦だと分が悪いと思って
魔法による遠距離戦に変えて来た」
姫奈に向かって、魔法を放っていき
姫奈は、それを見てゆっくりと息を吐き
放たれて行く、魔法による攻撃を
交わしたり剣で振るって打ち消したりして
距離を詰めていく
「はあ!」
そこからすかさず、左手を突き出し
それを使って女性の右肩を貫いてみせ
そこから、感電死した蟲がボロボロと落ちていく
「あいにくだったわね…
自分の長所と短所の方もわきまえてる
それを踏まえて、私なりのスタイルを確立させてんのよ!」
そういって、剣と雷を振るうが
それを分裂して回避していき、すぐさま
自身が突き刺した二本の剣のもとに行き
それを抜き取って、再び挑んでいく
「今度は、両方か!」
姫奈は、左手に宿った雷を突き出し
それを使って再び女性を貫かんとする
しかし、その女性は手をかざすと
その放った雷による攻撃を相殺する
「へえ、そんな能力まで持っているなんてね…」
姫奈は、そういって武器である剣の方を構えていく
女性は間合いを取って、姫奈に切り込んでいき
姫奈も、武器である剣を使って攻撃に対抗していく
激しくぶつかり合っていく双方
「はああああ!!!」
姫奈は炎を纏った剣を振るっていき
それを女性が澄んでのところでかわしていく
だが、蟲の死体が落ちてくることはなくなっている
「ここまでの攻撃で蟲の数が減った分
私の攻撃の余波を受けることがなくなってきたみたいね…
でも、それは受け止め方を変えて行けば!」
そういって、左手を突き出していき
そこから電撃を放出させていき、全体的に放つ
これまでの数であったのならば
倒し損ねた個体が出る可能性もあるが
もう、蟲の数もだいぶ減ってきたので
殆ど仕留め損なっていく事はなくなっていくだろう…
そして、姫奈の攻撃は見事に功を制していき
女性は電撃をまともに浴びていき
ガラガラと崩れ落ちていくようにして
蟲の死骸に戻って、そのまま煤となって消えていった
「‥‥ふう…
もう少し開けた場所で
戦っていたら、危なかったかもしれないわね…」
姫和は呟いていく
「それにしてもこの森…
一体何処まで、続いているのよ」
そういって、自身から離れて行ってしまった
アルサジの安否を気遣って、彼女の無事を願っていく
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
そのころ
「これでどうでしょう‥‥
ここにある薬草が
どこまで聞く者なのか‥‥
ハッキリ言って分かりませんが‥‥」
アルサジはそう言って
怪我をしている相手の治療をしていく
その人物は、何と
「‥‥ありがとうございます…‥
さっきよりも楽になりました…‥」
植物と浸食の準男爵
アルテナ・ハイピスト
しかし、今の彼女の雰囲気はどこか違っていた
服装は、姫奈たちが知っている罪徒の服装は違い
アルサジが今も来ている服と雰囲気が似ており
髪飾りも正真正銘、鼻で出来た本物である
何よりも、流れ出ている血は
罪徒の赤と緑が入り混じったような色ではなく
人間と同じ、赤色をしていた
「お役に立てたのならば、光栄です‥‥
それにしても、まさかこのような場に
アルテナ様のような、高貴なお方にお会いできるとは」
「そんなにすごいものではありませんよ‥‥
私なんて、他の皆さんにくらべれば
何の力も持っていない、箱入り娘‥‥
私なんかよりも、アルサジさんの方がよっぽどすごいです」
アルテナは臆面もなく、そういっていく
「そ、そんな‥‥
私はただ、他にもここに落ちてしまったみんなや
他の子達のためにもしっかりしないといけないって思っているだけですよ‥‥
それに、私たちには頼りになって信頼できる人がいますから」
「‥‥そう、なのですね…‥
やはりあなたは本当に、すごい…‥
あなたは、誰かのためにもそんなに
一生懸命になる事ができる、それが何よりも
私には明るく、素晴らしいものであると感じます」
アルテナは、そういって
すこし背中の方に身を預けていった
「私は幼い頃から、お爺様…‥
森人族の長の孫娘として、皆が私の事を敬い
慕ってくださっていた、ですが殆どの者がどこか
一歩引いたようなもので、私はそれに寂しさを感じていました
ある時、私は出かけていたときに、今まで外に出たことが
無かったがために、帰り道が分からずにどうしたものなのかと
そんな時に私に話しかけてくれた子がいたんです…‥
彼女は亜人族の中でも、もっとの非力とされる兎人族でした…‥
しかし、彼女はそれでも私の事を気遣って
それどころか、私の帰り道を探すのを手伝ってくれた…‥
その時に私は感じたんです、これこそが私が求めていた関係なのだと
上下も、優劣も、強弱も、良し悪しも関係もない…‥
それが、私が何よりも求めていたものだと」
「兎人族の‥‥」
アルテナの話を聞いて、アルサジは不意に思い出す
今でこそ、ゴブリンの姿になってしまっているラナは
元々は兎人族の女性であったのだと聞いている、最初はラナは
四人の奴隷のような立場であったと考えていたのだが、ラナと合流し
彼女と姫奈たちとが過ごしていくのを見ていると
不思議とそう言った区別のようなものが感じられなかった
アルテナの言ったような、そんな関係を超えた関係
アルサジには、不思議とそう感じられていた
アルテナも同じ兎人族の少女と築いていった
もしかしたら、兎人族と言うのは不思議と
そんな関係を自然に築かせていく魅力でもあるのだろうか
自身があこがれていた、アルテナがそれを話すとき
今までに感じたことが無いほどに、素敵な笑顔を浮かべていた
「その人はアルテナ様の、大切なお友達なのですね」
アルサジは心からの言葉を投げかけていった
「‥‥ええ、彼女と過ごしていく日々は
私にとって、これまでの人生で感じたことが無い…‥
本当に大切なものでした、ずっとこの関係が
続いて行ければいいなと、心から願いました…‥
ですが、神に見捨てられた私には
そんな小さな願いをこの手に抱く事すらも、許されませんでした…‥」
そういって、頭上に向けて手をのばし
何かをつかむようなしぐさをしていく
だが、当然ながらその手は何も掴むことはない
それはまるで、大切な何かをつかみ損ねてしまったように
虚しく、哀れで、なんとも言えないものを感じ取っていく事ができる
アルサジは、そう感じていた
「私はずっと、友人を切り捨てた祖父たちを憎みました…‥
友人の行いを無下にした神をに、心から怒りを覚えました
しかし、一番に憎み怒りを覚えたのは…‥
そんな友人を助けられず、何もできなかった
祖父の孫娘と言う立場以外、なんの価値も示せなかった
強さを持たない、私自身でした…‥」
アルテナは、話していく
アルサジは、それを呟く彼女の言葉から
込みあがっていく、負の感情も感じ取っていた
「ですが、そんな瞬間はもう終わるのです…‥
この世界は、私になにももたらさなかった
ですが、そんな私に手を差し伸べて下さった…‥
あのお方がいらっしゃったのですから」
「あのお方‥‥?」
すると、アルテナの口調の雰囲気が変わった
さっきまでは、憎悪や悲しみと言った感情ではない
それらとは別の意味の、ある意味では
この世界の人間族や亜人族の多くが抱えているような
そう、浸水や崇拝、そう言った類のものである
「友人を失い、生きる道を見失ってしまった私に
新たな道を示してくださった、崇高なるお方…‥
あのお方の存在はまさに、私達のような
神に見捨てられた私達にとって、救世主ともいえる存在…‥
私はあの人に救われ、私達を虐げて来たもの達に
対抗するための力を私に与えてくださった、かのお方…‥
私たちは、あのお方の厚意に報いなくてはなりません」
暫く二人で歩いていたが、アルテナは足を止め
自身の後ろに恐る恐るついていっていた、アルサジの方に体を向けていく
「アルサジさん…‥
ともにこの世界に虐げられし同志よ…‥
同じくともに、あのお方のもとに参りましょう
そして力を得て、共にこの世界に我々の痛みを憎しみを…‥
この世界の人間族どもと魔人族どもに、思い知らせてあげるのです」
そういって、手を差し伸べていく
アルテナのその瞳からは悪意や打算的な
そう言った類のものは感じ取れることはない
心から、自身に手を差し伸べている
そのせいで思わず、その差し伸べた手を取りそうになる
「‥‥アルテナ様‥‥
一つ、お聞きします‥‥
フェアベルゲンを滅ぼしたあの化け物を
送ったのは、貴方が言う、あの御刀のですか‥‥?」
少し戸惑いを含みながらも、そう答えていくアルサジ
「‥‥確かにそれは本当です、しかし
フェアベルゲンは我々の協力を拒み…‥
あの方の厚意を払拭した、その結果が
フェアベルゲン滅亡に導いただけ、言うなら…‥
フェアベルゲンが選んだ選択の結果です…‥
先にあのお方の厚意を無下にしたのは他でもない…‥
お爺様たち、フェアベルゲンの方なのです
私たちすべてに是があるとは言い切りませんが
同時に非があるのだと、肯定するつもりもまた…‥
毛頭ありません
言い悪いの問題ではなく、これが選択なのです」
アルテナは何事もないかのように返していく
まるでその認識が、当然のことであるのだと言い切るように
「アルテナ様‥‥」
アルサジは、戸惑ってしまう
だが、アルテナはさらに続けていく
「‥‥ですが、アルサジさん…‥
貴方は決してそのような
愚かな答えを下すようなことはしませんよね?」
アルテナは、そういってアルサジの顔を覗き込んでいく
「力こそが全て…‥
真に強き者こそが、全てを制する
それこそが、力による絶対の理です…‥
現にこの世界においても、人間族や魔人族は
魔法やスキルと言った力をもって、この世界で
大きな勢力を振るっている、そのせいで私たちは
いつだって、その荒波に巻き込まれてきたのです…‥
巻き込まれるのは、いつでも弱者でしかない…‥
あなたもそれを、十分に思い知らされてきたはずでしょう?」
アルテナは、さらに続けていく
アルサジも、彼女の言う事は理解できている
亜人族は魔力を持っていないという理由だけで
人間族からも魔人族たちからも蔑まれて来た
アルサジも、子供ながらにその現状に
憂いていたことも事実、そんな現状に嘆いていたのも
このまま何もできないことに苛まれ続けてきたことも事実
しかし、フェアベルゲンが滅ぼされ
挙句には家族も仲間も大半が炎に消え、雷に打たれ
大勢の命がそこで失われて行った
そんな、絶望の中でさらには
大迷宮に落とされてしまったそこで
貌も知らず、種族も違う子供達だったが
それでも必死に生き延びて行こうと
必死の思いで、抗ってきた、しかし
現実はやはり、残酷で大迷宮は彼女らが
生き延びていく事はとても敵わないほどの場所だった
そんな自分達に、手を差し伸べてきたのは
何と、自分達の事を蔑んできた人間族の女性であった
最初は、彼女は気まぐれで自分達の事を
助けに来たものであると考えていた、だから
最初はその人間族の女性、姫奈の事は警戒していた
だが、姫奈と過ごしていくうちに
彼女はどこか、自分が教えられた人間族と
何かが違うのだと、そんな認識を覚えて行った
自分たちの事を、守ってくれるだけでなく
自分達に、最低限の防衛の仕方などを教えてくれ
自分達に最低限の事を教えてくれた
その後、姫奈の仲間である香織や風香も
自分達に対して、当たり前のように優しく振舞っていき
やがて、自分もほかの子達も
彼女達に、自然と心を開いていった
弱いからだとか、そう言った決めつけや同情心を
自分達に向けて、そう向けていったのではない
それが、彼女達にとっては、当たり前の事
その当たり前が、アルサジたちの心を間違いなく支えてくれた
だからこそ、アルサジの中での答えは決まっていた
「‥‥アルテナさん、貴方の言っていることは
理解できるところはあります、、確かに力を得られなかった
私たちはいつだって、魔力と言う力を持った存在に虐げられてきた‥‥
でも、私はある人達に出会って気が付いたんです‥‥
私たちは今まで、魔力を持たないままでもここまで生き延びてきた‥‥
大事なのは力じゃない、自分が生きてきたことを貫く事なんだって!」
「っ!」
アルサジは言い切っていく
「力を求める事は、悪い事じゃない
でも、だからって力を求めてかつての自分達を
否定したって、そんなのは本当の強さとは違う!
私は、お父さんやお母さん、お兄ちゃんやお姉ちゃん
みんなが託してくれたこの命を、しっかりとつないで生きたい
それが今の、私の望みなんです、私が求めている者なんです
アルテナ様、貴方のその決断も決して否定はしません‥‥
でも、もう今のアナタはかつて私が憧れていた貴方じゃない
ただ力による強さを求めて、自分を見失った、哀しくてさみしい人です」
アルサジは言う、かつて憧れていたアルテナが
このようになってしまったのは、今のこの世界の情勢
因習によるものも大きい、それによって彼女の心は歪んでしまった
「‥‥それがあなたの決断ですか…‥
残念ですよ、せっかく同族からもう一人
同志が生まれるものだとおもっていたのに…‥」
すると、アルテナはその姿を
段々と変えていく、その姿は姫奈たちが遭遇した
学生服と軍服を掛け合わせたような作りで
袖は長く、脛にまで届くロングスカート
植物と浸食の準男爵
アルテナ・ハイピスト
罪徒としての姿を顕現させていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
そのころ、別の場所では
「っ!
この森から感じ大きな気配が強くなったみたい…」
香織は、森全体から感じ取る大きな気配
それが強くなったことを気配感知で感じ取っていく
しかし、気配はその大きさのせいで、思うように測れない
「急ぎましょう!
何だか嫌な予感がします!!」
「そうだね」
纏と風香の二人も急いで、他の面々との合流を急がんとしていく
そんな時であった
「っ!
誰!?」
香織は不意に、近くで草を踏み分けていく音を感じ取り
その音のした方に向かって、本のページから生成した刀を構える
しかし、そこに現れた人物の姿を見て
香織は驚いたように目を見開いていく
何故なら、そこに現れたのは
「‥‥雫ちゃん…?」
そう、姫奈たちの最後の仲間である
八重樫 雫
彼女が、一同のもとに現れてきた
「雫ちゃん!」
香織は、雫の姿を見て
急いで駆け寄っていく
ただ、香織はただ近寄っているわけではない
ラナの時に現れた、偽物を見破る術は
独特の臭いのみであり、それを確かめるために
あえて近づいていく必要性があるのである
香織は、感覚を研ぎ澄ませて行きながら近づいていく
「臭いはしない…
ってことは、本物の雫ちゃんだ!」
香織はそう言って、涙を浮かべながら
雫の方に急いで駆けつけていき、そのまま勢いよく
香織は雫に勢いよく抱き着いていった
「‥‥か…おり‥‥…」
「‥‥そうだよ、雫ちゃん…
雫ちゃんの親友の香織だよ…
ごめんね、直ぐに駆け付けられなくって…
でもよかった‥‥またこうして雫ちゃんにあえて…」
香織は泣きながら、雫を強く抱きしめていった
その時
「‥‥逃げて…」
「え?
‥‥っ!?」
雫が短くそう呟いていくと
香織の胸元に衝撃が走っていく
香織は、身体をふるわせながら
その衝撃の方に目を向けていくと
そこには…
雫の手によって、剣が香織の身体に突き立てられていた
「そんな‥‥どうして…」
香織は余りの光景に絶句した
「香織さん!」
纏がそれに気が付いて
武器である槍を振るって
雫を香織から引き離していく
風香は、雫に体を突き立てられ
倒れこまんとしていく香織の身体を支えていく
「香織、大丈夫!」
「‥‥大丈夫、自然治癒を
強化させて、治してるから」
香織は、そういって自身の傷口に
手をかざし、治癒を施していった
「っ!
雫っ!!
これは一体…」
風香は、雫に怒鳴ろうとするが
その際に見た様子を見て怒りも言葉も失ってしまう
何故なら、そこには…
「あ、ああああ…
いやああああ!!!
香織、違うの、これは違う…
やだ、やだやだ、いやああああ!!!」
雫の表情は、香織を刺したことによる罪の意識で
酷く歪み切ってしまってしまっている、しかしそれに対して
雫は、自身の武器である
姫奈からもらったアーティファクトの剣を構えていた
「ごめんなさい、姫奈ぁ!
私、私は、こんな‥‥こんなことを…
ああああ!!!」
今度は、自身に剣を譲った姫奈への懺悔を繰り返す
そのあまりの光景に、風香も纏も
香織の方も、思わず傷の痛みも忘れるほどに絶句していた
「なんなのよこれ…
一体何が起こってんのよ!」
「ひどい‥‥こんなの…
こんなのってないですよ!」
もはや、どんなことを口にしていいのか
風香も纏も同様のあまりに思いつくことが無い
だが、雫はそんな二人や香織
果ては、雫自身の意志など尊重せず
香織達に向かって斬りかかっていく
「っ!
纏!!」
「はい!」
動揺をぬぐいきれないまま
風香は纏とともに雫に立ち向かっていく
風香と纏、それぞれの武器を使って
どうにかして、雫の一撃を止めていく
幸いと言うべきなのか、どうやら
身体強化系のスキルは付与させていないので
風香と纏、どちらか一方の攻撃だけでも止められる
「風香さん!
雫さんの方、お願いします!!」
「わかった!」
風香は、雫の相手を纏に任せて
風香はその隙に、雫を回り込んで行く
その際に、雫の首元に何か
野球玉くらいの大きさの何かが見えた
それを見た、風香は思わず
「ひい!?」
短い悲鳴を上げる、何故ならそれは
蚊あるいは壁蝨に見える蟲のような生き物だったのだから
風香は、それを見て思わず距離を取ってしまう
「なんで、雫に虫が…
そうか、もしかして雫が
私達に襲い掛かったのは…
此奴に操られていたから!?」
風香は分析する
雫が自分の意志に反して
香織や自分達に襲いかかったのは
この蟲に操られてしまったからなのだと
それならばどうにかしたがいいと考える
しかし、それでも問題はある
蟲が苦手だからとか、そう言った問題ではない
雫に憑りついてる状態が問題なのだ
それは
「風香さん、どうしたんですか!?」
「雫を操ってるやつを見つけた
でも、ちょっとまずいかもしれない…
この魔物、雫ちゃんの首全体を
抱えていくような形で張り付いてる
これじゃあ、はがせない!」
風香は苦虫を嚙み潰したように言う
雫に憑りついている虫は、彼女の
首元に足を回し、張り付くようについている
このままだと、攻撃も出来ないし
無理矢理はがそうとすれば、雫に攻撃が
くわえられてしまう、雫はまさにこの虫によって
人質に取られてしまっているような状態である
幸いなのは、さすがに雫のスキルを使用させていく
という事は出来ないという事である、それによって
攻撃自体は、決して脅威ではないのだが、雫はこれでも
聖徒に覚醒した姫奈と香織に次いで身体系のステータスは高い
同じく聖徒に覚醒していない状態の風香や纏では
どうにか攻撃に対応させていくいく事が精いっぱいである
「香織さん、傷の方は!?」
「なんとか、治癒は出来た
けれども、雫ちゃんを操っている
蟲をはがしていくのは、難しいかも…」
香織は、治癒をすませていき
なんとかして立ちあがっていった
だが、さすがにショックとダメージは大きかったようで
現状の香織でも、雫に憑りついている虫をはがすことは難しいようだ
「そんな、一体どうしたら…」
風香は段々と思いつめていく
今の香織では、雫と渡り合えても
雫に憑りついた蟲をどうにかすることはできない
このままだと、結局のところジリ陳になる
「もう嫌‥‥もう嫌なの…
お願い香織‥‥助けて…
死ぬのもいや‥‥誰かを殺すのも嫌…
いやいやいやいや、いやああああ!!!」
雫の悲痛な叫びが三人のの戦意を更に喪失させていく
どうにか雫の事を助けたい、だがそのためには神業をもってしないとできない
高度なテクニックを用いなければならないという緊張感に
雫の悲痛な叫び声のせいで、誠意がそがれていく、まさに
一つの命か複数の命、どちらかを選べというまさに残酷な選択
「(どうしよう…
雫ちゃんを助けるには、雫ちゃんの首の後ろについている
あの蟲を如何にかしないといけない、だけれどもそのためには
雫ちゃんの首に至らず、なおかつ蟲だけを切っていく
神業とも言える技術が必要になる、でもいったいどうしたら…
どうしたらいいの…)」
風香は、思い悩んでいく
だが、その一瞬の隙をつかれて
蟲に操られた雫が剣の切っ先を風香に向けていき
「風香さん!」
纏が荒げた声で、風香に呼び掛けていく
しかし、思いつめていた事によって生じた隙が
風香の反応を遅らせてしまう結果になってしまう
「があ!」
風香は、直撃自体はどうにか避けたものの
雫の卓越した剣術によって、その一撃が風香の身体から
血を溢れさせていった
「あ、ああああ…」
自分がまたしても、大切なものを傷つけた
自分のせいで、友人が傷ついてしまった
そのショックが、雫の精神にさらなる傷をつかせていく
「風香さん…」
纏もその光景を見て、表情を引きつらせていく
だが、雫の身体に向かって風香が押さえつけていく
「‥‥捕まえたよ、雫ちゃん…
もう二度と、貴方をここから
離したりなんかしないんだから!」
「‥‥風…香‥‥…」
雫は不意に、風香の表情を見る
そこに映ったのは、力強い笑みを浮かべた風香がいた
「大丈夫、雫ちゃん…
怖がらなくていいんだ…
今は私の事を信じて、私に全部を預けて!」
風香は精一杯に、雫の事を元気づけていく
しかし
「さあ…
さっさと、そこから離れてくれる?
雫ちゃんの身体は、雫ちゃんのものなんだから…
勝手に好き勝手しないでくれる!」
そういって、雫の首元についている
蟲の方に視線を向けていく、しかし
「助けて‥‥風香…
お願い‥‥止めて…」
雫の弱々しくも、必死の訴えが風香の耳に入る
「‥‥大丈夫、雫ちゃん…
私は雫ちゃんの事も皆の事も
もう二度と、誰のことも絶対に…
死なせたりなんてしない!
私は、私の大切を諦めたりなんかするもんか!!」
風香はそう言いきった
その時
風香と雫、正確には
風香を中心に、辺りが光に照らされて行く
「こ、これは!?」
「風香ちゃん…」
纏と香織も、その光景をただ見つめていく
「私はかつて、大切な友達がいた
でも、気が付いたらその子の気持ちから
すれ違いがおこってた、それでお諦めたくなくって
どうしたらいいのか、ずっと悩みに悩んで
そんな私の背中を押してくれたのが、南雲君だった
彼のおかげで私は、友達の事を諦めずに済んだ
だから私も、そんな彼に出来る限りのことをしてあげたかった
それなのに、彼は理不尽な人の悪意に呑まれた
私も姫奈も、香織も雫もどうにかして
そんな現状を如何にかしてあげたかった
でも、結局私は、彼の事を助けられなかった
あの時に、私達を助けるために立ちむかった
そんな彼を、だから決めたんだ、私はもう絶対に…
傍にある大切なものを、守り抜いて見せる
近くにある大切な何かを、私は手放したりしない…
だから、私は絶対に…
諦めるもんかああああ!!!」
風香がそういうと、彼女の右腕に光が宿り
その右手を、風香は勢いよく払うように振るって行った
その中から、現れたのは
制服と修道服を合わせたような造りだが
彼女の、スタイルに合わせてか
シンプルでシュッとしたスタイリッシュな服装になっている
「この光は…」
雫は、風香から距離を取りながら
そのまま、距離の方を開けていった
その中からあらわれたのは
その手に何やら何かの持ち手を持っている
しかし、その先には所謂、刀身のような部分が付いていない
「これってもしかして…
でも、これじゃあどうしようもないよ
せめて、短いけれど丈夫な短刀みたいな感じで…」
風香が不意に、そんなのを思い浮かべると
持ち手の先から、光で出来た刀身が勢いよく伸びていく
「うわっ!?
なにこれ…」
急に出てきた刀身に、目を見開き
それを見て、風香は自身の聖器の特性を理解していく
「‥‥そういう事か…
それだったら、私にぴったりかもしれない!」
そういって、風香は雫に向かって
自身の聖器を手に掛け出していった
「っ!」
操られた雫は、そのまま
風香の方に向って駆け出されて行く
そのまま、雫は自身のアーティファクトの剣を
風香の方に向かって、振るっていくと風香はそれを
腕に張られた光の盾によって見事にふせいで見せていき
「はああああ!!!」
風香は、もう一方の聖器を振るっていった
それによって、見事
「‥‥え?」
雫についていた蟲は、真っ二つに切り裂かれた
雫の首元には、蟲が突き刺した際に出来た傷のみを残して
蟲はそのまま、地面に音を立てて倒れていった
「あ、ああ…
うああああ…」
余りの同様に、言葉が出て来ずに
その場で少し困惑している様子を見せる雫
そんな雫を優しく抱き留めていくのは
「あ…」
「雫ちゃん‥‥もう大丈夫だよ…
雫ちゃんはもう自由、誰もなにも
傷つける事なんてないんだ、だから…
もう、安心して…」
風香がそういって、倒れこんだ雫を
優しく抱き留めながら、優しく呟いていく
「あ…」
雫は、それを聞いて自分の手を突き出し
その手の指を開いたり閉じたりしていく、そうして自分の意志で
自分の身体を動かすことが出来るようになったことを理解していった
そして
「‥‥よかった…」
雫はそう言って、がっくりと身体の力を抜いていくと
風香の身体にずっしりと重みの方を感じ取っていった
「雫ちゃん!」
香織はそれを見て、あわてて雫の安否を気遣う
「‥‥大丈夫、気を失っただけ
やっぱり、ショックが大きかったのかもしれない…
しばらくは、休ませてあげた方がいいかも」
「そっか…」
風香の言葉を聞いて、香織は
雫に合えた嬉しさと、彼女の安否を
心配していくそんな二つの感情が渦巻いていた
だが、今表に出ている感情は
親友である雫と再会が出来た事への喜びであった
「‥‥それにしても、風香さん
まさか、風香さんがこの土壇場で
聖徒の力に目覚めるなんて、そのおかげで
雫さんを無事に介抱することが出来ました…」
「そうだね…
でも、私たちにはまだ
やらないといけないことが有るんだ」
風香は、そういって表情を引き締めていく
「そうだね…
姫奈ちゃんやラナさん
それに、アルサジちゃん達の事も
たすけださないといけないんだから」
香織も、添えに頷く
「急ぎましょう!
もしかしたら、敵の方も
何か動きの方を見せているかもしれません」
纏が言う
風香は、それを聞いて
目を閉じて意識の方を集中させていく
すると、彼女の周りから
風がふわりと吹き始めていく
「私ね、なくした者や手に入れられないものは
諦めた方がいいんだって、ずっとそう思ってた…
私には私の事を大切に思ってくれる家族が
傍にいてくれればいいって、それが正解だって思った…
でも、あの時彼は、私のために出来る限りのことをしてくれた
あの時に私、ほしいものを諦めなくても、我慢しなくてもいいんだって…
そんな私の考えを、変えてくれた…
だからもう私‥‥我慢するのは…
もうやめる!」
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
別の場所において
子供達は、絶句していた
「嘘‥だろ‥」
「なんだよ‥これ‥」
子供達の目の前には、もはや子供達が見るには
何ともおぞましいと評されるほどにとんでもない光景が広がっていた
そこは、森の中でも特に木の生えている場所が
均等になっている、言ってみれば林ともいえる場所である
そこにある、木々の生えている地面からは
水たまりが出来ていた、ただの水たまりではない
赤黒く染まり、辺りに鉄が錆びたような悪臭がただよっている
そう、水たまりの水の正体は…
血
所謂、血だまりである
「なにこれ‥うぶっ!
うおええ!!」
オウが動揺していると、その敏感な嗅覚が
更なる臭いを感じた、その匂いを嗅いだその時
オウは、抱えていたゴブリンを少し乱暴におろし
その彼女に背中を向けると、そこで胃の中身をぶちまけていく
「ど、どうしたの?」
ランは臭いに鈍感なのか、オウが突然
嘔吐したことに驚愕する、だがそれはオウだけではない
「うおええ!!」
「うええ!!」
ダイとリョクの二人も吐いていく
「二人共、大丈夫!?」
「こ、このぐらい‥」
「ぐう‥
なんだよ、あの木
鉄臭いだけじゃなく‥
変な臭いもしやがるぞ‥」
ダイとリョクも、相当参っている様子を見せている
「(この樹には一体何が‥‥)」
ゴブリン姿のラナは、いそいで
原因であろう、木の様子をみていく
しかし、ある部分を見て目を見開き
思わず口元を抑えていく、幸か不幸か
子供達に比べると、吐き気は覚えたが
そこから、中身をぶちまけることはなかった
子供達に比べると、耐性があるからだろうか
「ゴブリンさん?
一体何が‥」
「(きちゃダメ!
他のみんなも絶対に!!)」
ラナの様子を見に行こうとしたオウが
彼女のもとに行こうとすると、彼女がそれを止める
ラナの目に映ったのは、木の洞に
無理矢理押し付けられた、亜人の死体であった
しかも、よく見てみると他の木々にも
おびただしく、さまざまな亜人の死体が押し込まれていた
「(ひどい‥‥
フェアベルゲンを襲撃した際に
殺した亜人族の死体をこんなところに‥‥)」
ラナは、腕で鼻元を抑えながら
余りの惨状を見て、思わず目を背けていく
「(オウさん‥‥
ここから一度、離れましょう
動くのが辛いなら、ランさんとユーカ君‥‥
みんなに手を貸してあげてください)」
ラナはそう告げていく
「み、みんな‥
ここはいったん離れようよ‥
ここに居たって辛いだけだし‥」
オウが精いっぱいに、口を開いて
精一杯にその口を開いていった
一同のそれが伝ったのか
返事はないが、ゆっくりとその場から
離れて行こうとするのだが、臭いに参っている
三人の子供は、よろよろと足取りがおぼつかないように歩いて行く
ダイとリョクの二人を、それぞれ
ランとユーカが支えてやっている
「無茶はしないで‥」
「わ、悪い‥」
「うう、まさか俺がお前に身を預けられることになるとはな‥」
「こういう時は、素直にお礼を言いなよ‥」
残るオウの方は、ゴブリン姿のラナに背負われる
背の関係状は背負っていく形になってしまうものの
オウは、ラナの優しさに触れていったおかげで、気分が
すこしはよくなっていく様子を見せていき、自然に笑みを浮かばせていく
「ありがとう‥ゴブリンさん‥」
「(気にしないでください‥‥
私はこう見えて、皆よりはお姉ちゃんですから)」
ラナは笑みを浮かべて答えていく
最も、表向きはただゴブリンが
不気味な表情を浮かべているようにしか見えないのだが
「ねえ、ゴブリンさん‥
どうして、ゴブリンさんは
そんなにまでして、私たちの事を気にかけてくれるの?
だって、ゴブリンさんはもともと兎人族で
言ってみれば、他のみんなに意地悪をされていたのに‥」
「(‥確かにその通りですよ‥‥
私達、兎人族はほかの亜人族よりも
お世辞にも強くないせいで、戦闘部族な
他の亜人族たちから、意地悪をされてきました‥‥
でも、そんなのを気にしていても
どうにもならないんだって、私は思ってます‥‥
それに、いじわるをされたから
その人にいじわるをしてもいい訳ないしね‥‥)」
ラナはそう答えていく
「‥強いんだね、ラナさん‥
私達、子供だけど周りのみんなが
兎人族たちの事を悪く言ってた‥
この前だって、兎人族の一族の一つが
身内の中に魔力を持っている忌み子をかくまっていたって
そのせいで、フェアベルゲンをおいだされたって話を聞いた‥
私も、それについてはあんまり知らなかったけれども
でも、どうして魔力を持っているって言うだけで、そんなことに
なっちゃうんだろうって、あんまりよくわからなかった‥」
「(‥それが、フェアベルゲンのしきたりですからね‥‥
私たちもそれを理解しているからこそ
長老衆の決定を、甘んじて受け入れたんです‥‥
むしろ、処刑にならなかっただけ
せめてもの慈悲であると受け止めるべきだと‥‥)」
ラナは精一杯明るく振舞っていく
ラナ自身、ハウリア族の追放に関して
思うところがないわけではない、むしろ
この追放がきっかけで、ハウリア族の歩んできたのは
地獄だった
魔物の群に襲われ、帝国によって
一部の仲間は連れ去られてしまい
逃げ込んだライセン大峡谷において
仲間たちは、悪意に呑まれて自身以外は
魔物に変えられてしまった、正直に言って
自ら死を選んだりしても、おかしくないほどの
壮絶な出来事、そんなことを経験しても彼女が平静で
いられるのも、おそらくは姫奈たちとの出会いがきっかけだろう
姫奈たちは亜人である自分の事を分け隔てなく
接してくれた、ライセン大迷宮での死闘の中でも
自分たちのために戦った、ミレディの勇敢な行動
そのあとで、倒れた自分を介抱してくれた人々の事
それらの出来事が、彼女の中の何かを変えたのかもしれない
彼女が悪意に呑まれなかったのは、まさに
そんな彼女の事を支え続けてくれた人たちの存在があったのかもしれない
何よりも、ラナ自身は性根が優しい
元より誰かを憎んだりする性分ではないのだろう
だからこそ、目の前にいる子供達相手でも
このように、気にかけてあげたりもしているのだ
オウはそれに対して、子供ながらにそれに対して
どこか危うさのようなものを感じ取り、オウは黙って
ラナの事を抱きしめていった
「ありがと‥ラナお姉ちゃん‥」
それ以上何も言う事はなく、ただ
彼女は静かに、そう呟いていった
「(どうかしたんですか、オウちゃん?)」
オウの突然の行動に、少し驚いたものの
自身の事をようやくな和えで呼んでくれたことに
ラナはどこか、嬉しさを感じ取っていくのであった
ラナは、他の子供たちとともに
急いで、林の方から離れていった
先ほどの光景を見た子供達には
臭いや感覚のみで感じたものだけではない
何とも言えない、心に来るものがあるだろう
ラナ自身も、先ほどの光景を嫌でも忘れることはない
子供達にはおそらく、一生かかっても忘れることなど叶わない
だが、それでもラナはやれるだけの事を
やって行こうと、決意を新たにしていく
今のあの子達の傍にいて垂れるのは、自分だけなのだから
「(わたしも頑張ります‥‥
最期の最後までやれる限りの事を
やって行きます、だからみんな‥‥
絶対に、死なないでくださいね)」
ラナはそう言って、決意を新たにしていく
前に進んでいこうとする、子供たちの命を
絶対に奪わせたりはしない、と
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「‥‥哀しいですよ、アルサジさん…‥
私の手で、いくら元とはいえ
同族を手に掛けていく事になってしまうとは…‥
非常に残念です」
そういって、その手に持っている錫杖を構え
その柄尻を、アルサジの方に向けていくと、それを
勢いよく、アルサジの方に向かって突き出していった
「っ!」
アルサジの身体に到達せんとした
その一撃は、彼女の身体に触れんとした距離で止められた
それを止めたのは
「はあ‥‥はあ…」
姫奈であった、彼女はぎりぎりで
アルテナの武器である錫杖を止めることに成功する
「姫奈さん!」
アルサジがおそるおそる瞳を開いていき
自身を助けてくれた、少女の名前を呟いていく
「‥‥私の中でよくぞ
ここまで来ることが出来ましたね…‥
この森では、探知系の能力は
封じられるだけ、封じたつもりだったのですが…‥」
アルテナは、目を細めながら言う
「そうね、私自身も驚いているわよ…
正直言うと、賭けだったからね!」
そういって、左手を振るい
そこから振るわれる電撃を使って
アルテナを自身、正確にはアルサジから引き離していった
「行くわよ、アルテナ…
あんたとは、ここで決着を付ける!」
そういって、剣を振るって
アルテナに向かって斬りかかっていくが
それをアルテナは、武器である錫杖を使って受ける
「愚かな…‥
罪徒として覚醒した…‥
植物と浸食の準男爵
アルテナ・ハイピスト…‥
その私を倒そうなどと
百八年早いのですよ!」
そういって、アルテナは姫奈を押しきっていき
突き飛ばした姫奈に向かって、木々の枝が迫っていく
だが、姫奈は剣に炎を纏って行き
それによって迫ってきた枝を焼ききっていった
「あんたが何者であろうが関係ない…
あんたはここで、このハルツィナ大迷宮
いいえ、フェアベルゲンの地で切り伏せる!」
姫奈は、そういって空中をけるように移動する
姫奈は、重力魔法が進化した
星力魔法を纏わせた一撃をアルテナに向かって振るう
だが
「フン!」
アルテナは、それを武器である錫杖を突き出し
その切っ先のみで、見事に受け止めて行って見せた
「っ!」
「フフフフ…‥
私にばっかり、かまけていると
それこそ、大変なことになっちゃいますよ?」
あなたじゃなく、貴方の守るべき子がね!」
そういって、左手の指を鳴らす
姫奈はそれを見て、アルテナが何を仕掛けようと
してるのかを瞬時に理解し、いそいでその場から移動
姫奈が駆けつけた先は…
アルサジの方であり、アルサジに向かって
つきだされんとした、その攻撃をどうにかして
炎を纏った一振りで全て薙ぎ払って行くことで相殺する
「なんともやるせないものですね…‥
守るべきものがある者は
その守るべき者が有るせいで
どうしても、そちらの方を優先させないといけない…‥
そんな塵なんてさっさと切り捨てれば
私に一撃を与える事ぐらいはできるかもしれないのに…‥」
そういって、アルテナはアルサジの事を指して言い放つ
「何よその言い方…‥
借りにもあなたと同じ、森人族で
フェアベルゲンで生まれ育った仲間じゃないの!?」
姫奈は、ふつふつと怒りをこみ上げさせながら言う
しかし
「仲間?
ますます、煩わしい…‥
そんなものがあるから
あなたも満足に戦えずに
私に一方的に蹂躙されているというのに
はああああ!!!!!」
アルテナは、再び木々の枝を
姫奈とアルサジの方に向かって放っていく
姫奈は、アルサジを庇いながら
迫ってくる攻撃の全てを、切り伏せていく
だが、アルテナの言う通り
アルサジを庇いながら戦っているために
思うように攻め切れない
「姫奈さん、もういいです!
私の事はかまわないでください!!
このままだと、姫奈さんまで‥‥」
アルサジは、自分を見捨てるように姫奈に言う
今のままだと、自分の存在が
姫奈の足かせになってしまう
それが耐えられなかった、しかし
「‥‥バカなこと言わないでよ…
ここでアンタの事を見捨てたら
あんた達をここまで連れて行った意味がないじゃない…
あんた達とであった時に、私たちと誓ったでしょ
みんなで生きて、この迷宮から出るんだって!」
「で、でも‥‥」
姫奈は、断固として自身の意志を曲げない
「愚かな…‥
仲間を死なせずに私に挑もうなんて
うぬぼれているにも、ほどがあるというもの…‥
愚かしすぎて、逆に同情すらも覚えてしまいますね」
「仲間の存在を否定して、力に逃げているあんたは…
どうしようもなく、哀れで哀しい存在ね…
アルテナ・ハイピスト!」
アルテナに対して、言い放っていく姫奈
「‥‥本当に貴方とは
考え方が違うようですね…‥
いいでしょう、それだったら
その後ろで抱えている屑事、叩き伏せて差し上げましょう!」
そういって、左腕に持っている錫杖を掲げていくアルテナ
そこに…
「「っ!?」」
姫奈とアルサジの足元に魔法陣が輝き
二人は光に包まれて、どこかにへと飛ばされてしまう
「何!?」
アルテナも、目を丸くして
目の前の出来事に驚きを禁じ得なかったのだった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「っ!」
姫奈は、アルサジを守ろうと
彼女の事を強く抱きしめていた
それから、しばらくして
意識の方を、恐る恐る外に向けていくと
そこは、大きな広場であった
「ここは一体‥‥っ!?」
姫奈は、広場の方に向かって
ゆっくりと伸びていく枝が見えた
何かと警戒をしていると
二人の周りを蛍のような光が漂う
「これって…?」
すると、姫奈とアルサジのもとに声が聞こえる
ーその枝を渡って、道は蛍たちが案内してくれるから…‥ー
「っ!
誰!?」
姫奈は、急に聞こえた声を聞いて剣に手を掛ける
姫奈の問いに、声の主は答えた
ー私はリューティリス・ハルツィナ…‥
解放者、いいえ今は反逆者と言えばいいかしらね
私はこの大迷宮の作り主、貴方達に試練を与えるはずだったものよー
声の主、リューティリス・ハルツィナは
姫奈とアルサジに自身のもとに来るように告げていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
-
原罪(スルー推奨)
-
傲慢
-
虚飾
-
嫉妬
-
憤怒
-
怠惰
-
憂鬱
-
暴食
-
色欲