世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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Dolor corrodit corporis Feinde und Kriminelle agieren hinter den Kulissen

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ユーカが、蛍たちによって導かれた道をたどっていくと

そこには、魔法陣があった、一同は意を決してその上に乗ると

 

一同は、そのまま地上に転送されていった

 

そこに映る景色を見て、目を日開いていく一同

 

そこには木々は焼け焦げてボロボロになり

辺り一面が焼け野原になってしまっていた

 

「これは…」

 

「おそらく、これが現実のハルツィナ樹海ね…

 

 罪徒の襲撃を受けてしまって

 こんなふうになり果ててしまった

 

 今まで、私達が見てた森は

 アルテナの一部で、そのアルテナが倒されたことで

 本来の景色に戻ってしまった、それはこの有様ってことね…」

 

余りの光景に絶句する香織に姫奈は呟いていく

 

「本当になくなってしまっていたんですね

 

 追放されてしまった身であるとはいえ

 故郷がこんなふうになってしまっているのは‥‥

 

 なんとも言えないですね‥‥」

 

「ラナさん…」

 

ラナがそう呟いていくと、風香は何も言えなそうに呟いていく

 

「‥大丈夫ですよ!

 

 もう私は、どんなことがあっても

 くじけたりなんてしませんよ、だって‥‥

 

 私には皆さんって言う掛け替えのない存在が

 いつだって傍にいらっしゃるんですからね」

 

ラナは笑みを浮かべて、姫奈たちに言う

 

「傍にって、一緒についていくつもり?」

 

「もちろんですよ、だって私はもう

 皆さんに守ってもらうだけの存在ではありませんからね」

 

そう言って、自身の右手をかざしていくと

そこには姫奈たちと同様に聖痕が刻まれている

 

「ラナさん‥‥あなたも聖痕を?」

 

「はい!

 

 でも、姫奈さん達や

 皆さんのように武器を出したりとかは

 できないんですよね、やっぱり魔力を持っていなくて

 

 その扱い方がわからなかったからかも、しれませんけれど‥っ!?」

 

ラナはそう言って、自身の聖痕を見つめていくと

彼女の聖痕は輝き始めていき、そこから何やら線をのばしていく

 

そこから、別の円陣が彼女の腕に刻み込まれて行く

 

しかも、この現象が起こったのはラナだけではない

 

「え?」

 

「きゃ!」

 

「こ、これは…」

 

姫奈、香織、風香の右手に刻まれた聖痕にも

同じようにして、線が伸びて新しい聖痕が刻まれる

 

ただ、ラナが四つだったのに対して

姫奈、香織、風香の円はさらに刻まれて行き

 

聖痕に刻まれた円陣の数は六つである

 

「これって一体何が…」

 

「‥‥円の数が増えて

 それが腕に伸びていくようにして

 線が刻まれて、その先に円陣が付いた

 

 これって一体…」

 

姫奈は不意に、自分のステータスプレートを覗いてみる

すると姫奈は不意に、あることに気が付いた、それは何と

 

レベルの十の位の数字と円の数が連動している事

 

「つまり、レベルが上がったことで

 聖痕の形が変化したっていう事なのかな?

 

 でも、もしも姫奈ちゃんの推測が正しいのなら

 少なくとも私達は円が一個はふえていたはずなのに…」

 

「‥‥もしかしたら、昇華魔法を手に入れた影響かも…」

 

「昇華魔法って、今回の迷宮で手に入れた

 どんな能力も段階的に新化しうることが出来る

 

 神代魔法の一つ?」

 

今回の戦いで手に入れた神代魔法、昇華魔法

 

どんな能力も昇華、つまり段階的に新化させることが出来る魔法

 

「‥‥ええ、身体能力や知覚能力も昇華させられる

 そこには魔法も入ってる、神代魔法自体も強化できるみたい…」

 

「そっか…

 

 すごいね、姫奈ちゃん

 そんな魔法を使えるようになるなんて…」

 

香織は説明を聞いて、姫奈が

昇華魔法を手に入れたことを素直に評価する

 

「‥‥いいえ、どうやら昇華魔法も

 重力魔法と同様に、エーテルの影響が

 その力を強化させたみたい、言うならこれは…

 

 超化魔法、って言った所かしらね」

 

姫奈はそう言って、ステータスプレートを取り出す

 

「「「超化魔法?」」」

 

「ええ、昇華魔法の本質は

 あらゆる情報に干渉する魔法…

 

 自分の身体に刻まれている情報

 それによって得た経験に合わせて

 その人の進化を促進させていく魔法みたいね…

 

 そして、私のこの超化魔法はそれを

 対象に一気に促進させていくみたい…

 

 たとえるなら、コンピューターに情報を与えて

 そのプログラムを促進させていくみたいなものね」

 

「なるほど…

 

 コンピューターが対象で

 プログラムは私達の力そのもの…

 

 それに、自分の今の肉体に合わせた

 情報をインストールして、それに合わせて

 肉体を強化させていく、そう言ったところね」

 

纏はなるほどと言った具合に認識する

香織と風香もそれを受けて認識していく

 

一方で…

 

「こ、こんぷーたー?

 

 ぷろらむ?

 

 な、何なんですかその例え?」

 

この世界になじみのない言葉に余計に困惑している様子

 

「ま、まあ要するに

 私達がこれまでに戦ってきた闘い

 その経験に合わせて、自身を進化させていくって事だよ」

 

「なるほど‥‥」

 

姫奈が出来る限り簡単に説明していったおかげで

ラナは、何となくながらも理解はしていくのであった

 

「それよりも、子供達の方に行こうよ

 

 これからの事、話しをしていくんでしょ?」

 

香織が不意に、訪ねていく

 

「そうね…」

 

姫奈も了承し、一行は子供達と合流し

子供達にこれからの事をどうするのかを離していく

 

「お姉ちゃんたち、ありがとう‥‥」

 

森人族の少女 アルサジが代表してお礼を言う

 

「ええ、でもごめんなさい…

 

 結局、フェアベルゲンも

 ハルツィナ樹海もこの有様だし…」

 

「別にいいよ、そもそもそれは

 あんた達のせいじゃないんだし…」

 

「それに、あんた達のおかげで俺達は

 前を向いて生きていきたいって思えるようになったんだぜ‥

 

 感謝こそすれど、責めたりなんかしないよ

 

 まあ、さすがにこの光景自体は堪えるけれどもさ‥」

 

熊人族の少年 ダイ

 

 

虎人族の少年 リョク

 

 

彼等は最初に出会った時に比べて

明るく前向きな笑顔を向けて答えて行った

 

「それで…

 

 みんなはこれからどうするの?

 

 良かったらでいいんだけど私達と一緒に行く?

 

香織は、一緒に来ないかと誘っていく

 

すると

 

「香織お姉ちゃん‥

 

 その事について、みんなで

 話をして行ったんだけれど‥

 

 私達は、お姉ちゃんたちと別れて

 旅をしていこうかなって思ってるんだ」

 

翼人族の少女、ランがそう答えていく

 

「それは、大丈夫なの?」

 

風香が不意に訪ねていく、この世界の状況は

彼彼女らにとっては、とっても簡単に生きていけるとも思えない

 

ましてや、子供達だけではこの先で

無事にでいられる保証すらも無いともいえる

 

風香が心配するのも、必然だろう

 

しかし

 

「私達はね、考えたんだ‥

 

 この世界は確かに私達には優しくない

 お姉ちゃんたちの元を離れちゃったら

 

 私達のみに危険が訪れると思う‥

 

 だから、お姉ちゃんたちに

 ついていく事も考えたんだけど‥

 

 でも、考えに考えて気付いたんだ

 それじゃあきっと私達はこの先、お姉ちゃんたちに

 甘えてしまうことになっちゃう、だから私達は私達で‥

 

 お姉ちゃんたちとは別の道を行きたいって思ったんだ‥

 

 お父さんとお母さんたちの願いである

 強く生きろ、私も生きる為に強くありたい

 強くあっていきたい、だからそのためにも

 

 自分たちの力だけで生きていかないとって思ったんだ」

 

狐人族の少女 オウが笑顔で答えていく

 

「確かにそれは立派でな事ですけれど…

 

 現実は言うほど、甘くはないですよ」

 

纏は言う

 

「うん、わかってる…

 

 でも、皆さんとアルテナとの戦いを見て

 僕たちは皆さんの強さと覚悟、罪徒と言う

 強大すぎる敵の存在を改めて感じました

 

 同時に、あんなにも強いのがもしかしたら

 他もいるかもしれない、皆さんは強いけれど

 もしも、今の僕達が一緒に行ったら、きっと

 お姉ちゃんたちの足を引っ張ってしまうことになります…

 

 だから僕たちは、せめて自分の力で

 生きて行ける力を身に付けて行きたいんです

 

 もう、あの時のように生きていく事に臆病にならないように、て」

 

ユーカがそう締めくくっていった

 

「そっか、みんななら大丈夫だよ

 

 だってみんなは、あの罪徒に対して

 一歩も引かずに立ち向かっていったんです

 

 その強さを忘れない限り、大丈夫ですよ」

 

ラナはそう言って、優し気に呟いていく

 

「まあ、兎人族だって上手くやってんだ

 

 俺達なら何とか出来るっての」

 

「そうだな」

 

「ちょ、なんでそんな‥‥」

 

「ようし、その意気だ」

 

「風香さんまで!?」

 

ラナは最後にいじられれ複雑そうにしていく

 

「ラナお姉ちゃん」

 

そんな、ラナに話しかけていくオウ

 

「はい?」

 

「ありがとう、ラナお姉ちゃん

 

 私の事、守ってくれて

 私、ラナお姉ちゃんみたいに

 強くなって、絶対に会いに行くから」

 

オウは屈託のない笑顔を浮かべながら言う

 

「オウちゃん‥‥」

 

ラナはそれを見て、笑みを浮かべ

オウの両手を優しくつかんでいう

 

「オウちゃん、それにみんな‥‥

 

 私、最後まで絶対に逃げずに

 戦ってみせるよ、お姉ちゃんもしっかりと

 向きあって見せるから、だからお互いに強くなって

 

 そうしたら‥また会いましょう」

 

ラナは笑みを浮かべて言う

 

オウも笑顔を浮かべて、うんと返事をしていく

 

「フフフフ…

 

 なんだか不思議と

 みんなが大きくなったように感じるね…」

 

「そうね…」

 

香織の言葉に雫も返していく

ただ、彼女の表情はどこか引きつっている

 

子供達の手前、なるべく怖がらせないように

表情を崩さないようにしていく、それに気づいていたのは

 

「‥‥…」

 

姫奈であった

 

しかし、彼女はあえてそれを

この場で追及することはなく

 

子供達の方に目を向けていく

 

「さて…

 

 それでみんなはどこに行くの?」

 

「うん‥‥

 

 とりあえずはもっと遠くに行ってみる

 今はまだ当てのない旅だけれども、まずは

 私達がゆっくりと腰を下ろせる場所を探して行こうって思うんだ

 

 姫奈お姉ちゃんたちは?」

 

「私達は、今いる町を出て

 商業都市の方にまで言ってみようかなって思ってる…

 

 そこで、他の大迷宮を探して

 敵の情報について調べて見つつ…

 

 次の依頼を探してみようかなって思ってるわ」

 

アルサジと姫奈は、それぞれ答えていく

 

「結局、当てがないのかよ」

 

「だって私達は冒険者だもん

 

 風の向くまま、気の向くまま

 いろんなところを回っていくだけよ」

 

ダイのからかいに対して、姫奈は笑みを浮かべて答えていく

 

「それじゃあ、気を付けてね、皆…」

 

「はい、いつかまた‥‥

 

 会いましょう!」

 

こうして

 

姫奈達と亜人族の子供達は

別れの時を迎えていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

オルクス大迷宮、最深部

 

オスカー・オルクスの隠れ家

 

そこのある場所において

一人の少年が不意に顔を上げて行く

 

「…アルテナがやられたか…」

 

南雲 ハジメ

 

 

少年は静かに呟いていった

 

「‥あっけない‥‥

 

 せっかく、ハジメが力を与えたのに‥‥」

 

それに対して、静かな様子で答えていくのは

 

運命と破壊の侯爵

 

リュナ・プレーヌ

 

 

彼女のその言葉には、どこか底知れぬ怒りも交じっていた

 

「…まさか、こんなにも早く

 罪徒が一人討たれてしまうとはね…

 

 しかし、どういう事なのチヒロ?

 

 大迷宮は破壊したって、言ってたよね?」

 

ハジメはそう言って、前に控えている

緑の瞳に赤い髪、水色みが入った肌をしている少女に訪ねる

 

「…はい、もちろんです…

 

 大迷宮も、それに連なるウーア・アルトも

 私がこの手で破壊しました、それに間違いはありません」

 

嫉妬と羨望の大王

 

チヒロ

 

 

彼女は、思いつめた様子で答えていく

 

「チヒロ、貴方にしては随分な失態じゃない

 

 神代魔法を得させないために、その神代魔法を

 収めている七大迷宮を破壊させたって言うのに…

 

 本当に破壊しつくしたんでしょうね」

 

憤怒と激情の皇帝

 

ナギサ

 

 

彼女は、チヒロの詰めが甘かったのではと指摘する

 

だが

 

「でも、そういうナギサだって

 リュカやリュナと一緒に行ったのに

 

 みすみす奴らに、神代魔法を与えてしまってんじゃん

 

 人の事、言えないっしょ?」

 

怠惰と堕落の皇帝

 

カレン

 

 

彼女はナギサのライセン大迷宮でのことを指摘していく

 

「カレンさん

 

 今は誰かを責めている時ではありません…

 

 今、私達が最も優先するべきは

 アルテナさんを倒すほどの脅威が確かにいる事…

 

 我々が優先するべきは、その対策です

 仲間同士の煽り合いなど、なんの意味もありません」

 

強欲と貪欲の皇帝

 

サディ

 

 

彼女が場を整えていく

 

「…サディの言う通り…

 

 奴等は完全に、僕たちに相対する

 それだけの力を持つ、という事を

 アルテナを倒したことで、証明した…

 

 なんとしても、事の対策をしないとならない…

 

 シア!」

 

ハジメが通信をいれていくと

映像にうさ耳を生やした少女の顔が映る

 

ただ

 

『う‥うううう‥‥

 

 アルデナぢゃん‥‥

 

 どうじで、どうじで死んじゃっだんでずがぁ~‥‥』

 

狂長と幸運の子爵

 

シア・ハウリア

 

 

彼女はもはやかわいい顔が

台無しになるくらいに涙を流していた

 

「…シア!」

 

「‥っ!?」

 

シアは、ハジメからの通信が入ったことに気が付き

慌ててハジメに背中を向けて、顔を布で必死に吹いていく

 

「‥すみません、御見苦しいところを‥‥」

 

「いいや、別にかまわないよ…

 

 アルテナとは、かつての頃から

 仲が良かったんだろ、仲のいい友達が

 遣られてしまったいうのなら、取り乱すのはしょうがない…

 

 アルテナの仇を撃つ為にも、今よりももっとこっちの戦力のほうを

 増大させていく必要性がある、それで帝国の方で覚醒した罪徒はどのくらいに上る?」

 

『はい‥‥

 

 帝国で私たちのもとに付いた亜人およそ二~三百人の内

 罪徒に覚醒できたのが、大体三十人足らずと言った所ですね‥‥

 

 その中でも、私やリュナさんのように上位に昇華したのは

 十人足らずと言ったところですね、いかがですかハジメさん』

 

「…上位の罪徒をもっと増やしていきたい…

 

 アルテナを倒した存在の他にも、僕たちの

 脅威になりうる存在はまだいないけれども…

 

 今後もそうなるとは限らないからね…

 

 シア、マヌエラとともに下位の罪徒の育成

 それから上位の罪徒の力の制御の方を頼まれてくれる?

 

 いずれ来る戦いのためにこっちの勢力を

 盤石なものにしておきたいんだ、お願いできる?」

 

ハジメはシアに申請する

 

『了解です、この不肖シア・ハウリア‥‥

 

 ハジメさんのためにも頑張らせていただきます

 そして、ハジメさんが満足に行くノルマに達した暁には

 

 例の聖徒と言う方たちの討伐、是非とも私に一任を』

 

シアは真剣な表情でハジメに申し付ける

いつもならハジメに処女を授けると言って

ハジメをうんざりさせるのだが、今回は違うようだ

 

ただ

 

「調子に乗るなよ、残念兎!」

 

そんなシアの申し出に物申してきたのはリュナであった

 

『り、リュナさん!?」

 

「あいつらは私が殺す

 

 たとえシアが可愛い後輩でも

 それは譲れない、貴方は元帝国の

 情勢をしっかりと整えていると言い」

 

『わ、私だって友達を殺されたんです!

 

 このまま黙って見ているつもりはありませんよ!!』

 

「上等、だったらもう一度

 どっちが上なのか分からせてあげる」

 

『望むところです』

 

別々の場所にいるのににらみ合っていくリュナとシア

 

しかし

 

「いい加減にしろ二人とも!」

 

「きゃん!」

 

リュナの頭に拳骨を繰り出して

二人の口論を諫めていくハジメ

 

『は、ハジメさん‥‥』

 

「シア、さっきも言ったけれど

 君の申し出を受けるのは僕の課したノルマを

 無事に果たしてからだ、まずはそっちの方を優先してくれ?

 

 もしも、それを受けることが出来ないなら…

 

 僕は今後、君の対応を見なおさないと行けなくなる」

 

ハジメは怒気を含めた口調でシアに言い聞かせていく

それを受けてシアは、すっかり捕食者に睨まれた小動物状態であった

 

『は、はい!

 

 それではさっそく、行ってまいります!!

 

 では!!!』

 

シアはそう言って、通信を切っていく

 

「リュナ、君にしては随分と噛みついてきたね‥‥

 

 そんなにあの時の敗北は、屈辱的だったの?」

 

ハジメはリュナに問いかけていく

 

「確かにそれもある、ただ‥‥

 

 私も今のままでいいのかって思ってる‥‥

 

 シアはめきめきと力を上げているし

 さらにはもう一人、同志も増えてその子も発展途上‥‥

 

 なんだかだんだんとおいて行かれているような

 そんな気がしてしまって、本当に私は今のままでいいのかって‥‥」

 

リュナは自身の胸の内を口にする

 

リュナはあのライセン大迷宮での戦いで

侮っていたとは言えど、手傷を負わされてしまった

 

それ以来、リュナは自身の力を磨くために

研鑽を続けて居たが、力の伸びが悪くなっている

 

「なるほど…

 

 それだったら、そろそろリュナに

 何か役目を与えて行ってもいいかもしれないね…」

 

ハジメはそう言って、考え込む様子を見せていく

 

「リュナ…

 

 あんまり自分を思いつめるな

 今の君でも十分、戦力としては申し分はない…

 

 だから、今は自分の力をしっかりと携えていきな」

 

ハジメはそういって、リュナを下がらせる

リュナはまだ不満が残っている様子ながらも

ハジメの元から下がって、その部屋を後にしていく

 

「あーららー

 

 リュナちゃん、どうやら

 焦りの方が見え始めているね…

 

 いいの?

 

 あのままにしておいて?」

 

そういって、シュガーは

ハジメの座っている椅子の背もたれに

腕を置いて、ハジメの方に志う専を向けていく

 

「もちろん、言い訳はないさ…

 

 あの子に役目を与えて行こうと思う…

 

 ただ、アルテナを倒した奴らの存在の方も

 このままにはしていくことはできないのも事実だしね」

 

ハジメはそういって、この場に残っている王たちに目を向けていく

 

「あーららら…

 

 これは少しまずいかもしれませんね…

 

 チヒロさんが、奴らにむざむざ

 神代魔法を与えてしまった事によって

 こっちの方にも余計に飛び火しないといいんですけれどもね…」

 

暴食と大食の帝王

 

マリア

 

 

彼女は、魔物の肉をむさぼりながら

自分たちの今の状況を憂い、同時に

この事態を引き起こしてしまったチヒロに不満を口にする

 

「ハジメ様…

 

 申し訳ございません!

 

 私の不手際のせいで、奴らに

 神代魔法を渡したばかりか、挙句には

 アルテナと言う同胞をみすみす打たせてしまう結果に…」

 

チヒロは、詰む課せながらも必死に懺悔を口にする

 

だが

 

「それについては今はいい…

 

 それよりも現状の問題は

 アルテナを倒すことのできる程の

 強大な存在が、この世界に存在しているという事実…

 

 奴らにもうこれ以上、力を与えていく訳には行かない…

 

 リュナが持ち帰った残る四つの迷宮についての情報をもとに

 大迷宮の破壊及び、奴らを迷宮にいれさせぬようにしていく…

 

 そこで、お前達に残る四つの迷宮をそれぞれ

 担当を振り分けさせていく、もうこれ以上の失態は看過できない」

 

ハジメはそういって、この場にいる

八体の王にそれぞれの場所を割り振っていく

 

グリューエン火山は、マリア

 

メルジーネ海底遺跡は、チヒロ

 

シュネー雪原にある氷雪洞窟は、カレンとハルベルト

 

「…最後に残った、神山の方だが

 

 シュガー、お前とリュカそれに

 リュナの方に任せたい、そろそろ

 お前の力を、ここで見せてもらおうじゃないか?」

 

ハジメはそういって、自身の後ろで

椅子の背もたれの上に手を置きながら

その背もたれにもたれかかっている少女

 

シュガーに、命じていく

 

「へえ、まさか私に実行を命じるなんてね…

 

 それは何とも、わくわくするね」

 

そういって、背もたれにおいていない方の手を

何かを握りつぶしていくようにして、鳴らしていく

 

「サディ…

 

 お前は引き続き、このオルクス大迷宮で

 勇者どもの行動に目を光らせておけ、そして…

 

 それと兼任して、お前にこの迷宮の担当をしてもらう」

 

「了解です」

 

強欲と貪欲の皇帝

 

サディ

 

 

彼女は物静かながら了承する

 

「最後にナギサ…

 

 君には早速、動いてもらいたい…」

 

そういって、ナギサの方に話しを振っていく

 

「私は一体、何をすればいいの?」

 

「アルテナが倒されたこともあるし

 帝国にいる罪徒たちの育成の方も時間がかかるだろう…

 

 だから、その間に有益な存在を引き抜いておいたんだ…

 

 そのうちの一人に、この役目を任せたくてね

 その教育のために君に立ち会ってほしいんだ…

 

 頼めるかな?」

 

ハジメは言う

 

「‥‥その新人さんは?」

 

ナギサは訪ねていく

 

「…ちょうどいい機会だからここで紹介しておこう…

 

 龍喰と異界の大君主

 

 ティオ・クラルス」

 

 

ハジメがそういうと、そこに入ってきたのは

和服を模した罪服に身を包み、その手に扇を持った

 

豊満な身体付きをしている女性であった

 

彼女の瞳は、揺らぐことの無い

それほどの怒りと憎しみで揺れ動いていた

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ハルツィナ樹海の消滅

 

この出来事は、世界中に大きな動揺を呼んだ

 

人間族が収める北、魔人族が収める南

その間に挟まれているのが、東に広がる広大な樹海

 

ハルツィナ樹海

 

 

この場所には、亜人族の国であるフェアベルゲンが存在し

ゆえにこの周辺において奴隷を生業とする国家においてはまさに

稼ぎどころと言っても差し支えのない場所であったのだが、よもや

その場所が一瞬のうちに消滅してしまったことによって、国において

奴隷となってしまっている亜人族以外もまた、こうして絶滅したのだと

 

全ての国家は認識せざるを得ない状態になってしまうのであった

 

そんなまさに歴史的にも残るほどの大異変

その当事者である姫奈たちも、冒険者ギルドに

呼びつけられていく事になる羽目になったのであった

 

「‥‥それにしても、信じられない‥‥

 

 まさかあの広大な樹海が一夜にして

 消滅をしてしまうことになるだなんて‥‥」

 

姫奈たちが腰を下ろしていた町の冒険者ギルド

そのギルドの、支部長は困惑を隠せていなかった

 

ライセン大峡谷を燃やし続けていく、真っ黒な炎

 

一夜にして消滅したハルツィナ樹海

 

二度も規格外のことが起こって、支部長ももちろん

ギルドの方も、まさに天手古舞と言ってもいいぐらいに混乱していた

 

そういうこともあって、事情を知っているであろう

姫奈達を呼び出して、彼女達に事情を訊ねていく事になる

 

「そういう訳なので、戻ってきて早々で申し訳ないが

 ぜひとも事情の方を説明させてもらってもいいだろうか?

 

 何しろ、二度も常識外れな出来事が起こって

 ギルド中が困惑をしている、それを収集するために

 少しでも、事情の説明の方をお願いしたい、包み隠さず

 

 全て話して、もらえないだろうか…」

 

支部長はそういって、この場にいる一人の少女

 

南野 姫場

 

 

彼女に事の次第を訊ねていく

 

「もちろんいいです…

 

 ただ、これから話す話は

 全て真実です、嘘はつきません…

 

 それを了解してくれるなら、お話します」

 

「むしろこちらからもお願いしたい…

 

 話してもらえないだろうか」

 

支部長は了承して、姫奈は話していく

 

まず第一に話していったのは

フェアベルゲンは自分達が見ていた時には

すでに滅んでいた事、その件にかかわっているのは

前にも話したことのある罪徒であったという事である

 

消滅したのは、今の今まで目に映っていた樹海は

その罪徒によって生み出されていた、疑似的なもので

姫奈たちがその樹海の大元の罪徒を決死の思いで倒したことで

樹海もまた消滅し、それが今の現状になってしまったという事

 

ちなみに、アルサジたちの事は伏せておいた

ここのギルドのもの達は亜人であるラナにも普通に

接してくれることも会って、信頼は出来るだろうが

 

この件はもはや、この支部だけに納められるような出来事ではない

 

その件に彼彼女らを巻き込まないようにするために

彼らの事は伏せておくことにしたのであった、そうして

 

事情の全てを話し終えていく姫奈

 

「…罪徒…

 

 確かにその話しを聞くと

 その存在はまさに、魔人族や魔物なんかとは

 比べるのもおこがましいほどの恐ろしい存在だ…

 

 最初にその話を聞いたときは、半信半疑だったが

 

 確かにそれは、全てのギルドに通達を出さなければ

 ならないほどの恐るべき存在と言ってもさしつかえはない…」

 

話しを聞いた支部長は、姫奈の話を聞き

急いでこの事を伝えておかないとと考える

 

「支部長、もう一つお願いが…」

 

「わかっている

 

 この話をしたのは、一介の冒険者

 それが君たちであるという事は伏せておく

 

 君たちの事情も分かっているつもりだからね

 

 そこは安心してくれていい

 

 むしろ、戻ってきてすぐに呼び出してしまい

 申し訳なかった、宿に戻ってゆっくり休んでくれ

 

 それからもう一つ…」

 

そういって、支部長は姫奈に封筒を渡す

 

「これは?」

 

「前にギルドの後ろ盾が欲しいと言っていた時に

 フリューエンを勧めたよね、その時に流通の件も話したけれど

 この町に残っている商人たちを、フリューエンにまで護衛をしてほしい

 

 そこのギルドマスターには、すでに話は付けてあるから

 今から一週間後の早朝に、正門に来てもらえればいいから

 

 それまでは、ゆっくりと休んでいてくれ

 

 それから、今回の依頼の報酬も用意してある

 この後、受付に言ってそこで受けとってくれ」

 

支部長は色々と融通を聞かせてくれていた

 

「ありがとうございます」

 

姫奈はお礼を言って、封筒を受け取って

そのまま部屋を退室していくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

そのころ

 

「っ!」

 

雫は一人、脱衣所で一人

表情をしかめていた、何かに耐えるように

 

自身が来ている服をゆっくりとめくっていき

そのまま、あらわになった自身の左わき腹の辺りを見て

 

思わず目をそむけてしまう

 

自身の左わき腹に浮かび上がっているのは

まるで自分の肌に根を張っているような形状の傷であった

 

その傷を見て、恐る恐る服を直して

自身の左わき腹をゆっくりとさすっていく

 

「ふう…」

 

雫は、一息つくとその表情は

どこか柔らかいものになっていく

 

その宿屋の個室に設けられている

個別の欲情において、軽くお湯を浴びていき

 

用意していた着替えの方を着込んでいく

 

そこにはすでに、浴場に言っていた

香織と風香、纏にラナの四人が戻ってきていた

 

「みんな‥‥戻ってきていたのね…」

 

「うん、すっごく広いお風呂だったよ

 

 それにお風呂の方おすっごく気持ちよかったし…」

 

「ええ、おかげで疲れの方がゆっくりとれたよ

 

 雫ちゃんも一緒に来たらよかったのに」

 

「ダメですよ、風香さん

 

 雫さんは一応はけが人なんです

 傷が響いたら大変ですからね」

 

「まあ、ある意味来ない方がよかったですよ

 

 まさか、私たちの入浴を覗き見られているとは思いませんでしたから‥‥」

 

大浴場について楽しげに語っていく一行だが

ラナの言葉を聞いて、少しげんなりした容子を見せていく

 

実は五人が入浴をしているときに

この宿の看板娘がその様子を覗いていたのだ

 

ちなみにその娘は、この件について

女将である母親にこってり絞られていったのは、別の話

 

それを聞いて、雫も苦笑いを浮かべて行った

 

「そういえば、雫ちゃん?

 

 怪我の方は大丈夫?

 

 もう一回治癒の方、掛けとく?」

 

「ええ、大丈夫よ…

 

 ごめんなさい、心配をかけてしまって」

 

「そうだね…

 

 本当に今回の事は大変だったよ…

 

 こうして無事にみんなでここに

 集まっていられたのを見ると、本当に

 あの時の戦いが、嘘なんじゃないかって思うよね…」

 

風香がそういうと、他の面々も

口には出さないものの、それを肯定していく

 

無事にこうして宿に戻って

ゆっくりと屋根のある部屋で一同に介している

 

それを見ると、不思議とあの時の出来事は

夢だったのではないかと、感じてしまう五人

 

「でも、現実なんですよね‥‥

 

 あの戦いも、フェアベルゲンの事も

 珠海がなくなってしまっていることも全部‥‥」

 

「‥‥そうですね…

 

 むしろ、夢のような光景です…

 

 東を追い尽くしていた樹海が

 一夜にしてしまっただなんて…」

 

纏も、首を横に振りながら言う

 

「アルテナを倒せたけれども

 敵は彼女一人じゃない、ライセン大迷宮で

 出会った奴等や、ラナさんが出会った奴もいる…

 

 それらが全部、あの時のアルテナと同じくらいだったら…

 

 私達‥‥戦えるのかしら…」

 

雫も不安を述べていく

 

すると、そこに

 

「‥‥そのことで思いつめていてもしょうがないわよ

 

 私たちがアルテナを倒せたのは、まさに奇跡ともいえる結果

 それは確かに、私たちの実力だけでは遠く及ばないものかもしれない…

 

 でも、言い方を変えれば実力さえ伴っていれば勝てない相手じゃない

 アルテナを倒すことが出来たという事は、倒すこと自体は出来るってことよ

 

 私たちはハルツィナ大迷宮での戦いを得て、新たに昇華魔法を手に入れたし

 この闘いで風香とラナも聖徒に覚醒した、私たちが成長していっていることは間違いないわ」

 

姫奈が、入って一同に言葉を掛ける

 

「姫奈ちゃん、お帰り」

 

「大変だったね、帰ってきて早々

 ギルドから呼び出しを受けるだなんてね」

 

「しようがないわよ…

 

 ハルツィナ樹海が一夜にして消失しちゃったんだもの…

 

 まあ、ここのギルドマスターさんには事情は

 ある程度は話しているし、何よりもあの人は信用できる

 

 それよりも、いい知らせが入ったわよ」

 

そういって、姫奈はあるものを一同に見せていく

 

「これって?」

 

「親書よ、フリューエンのギルドマスターへのね…

 

 珠海への消滅の調査今から一週間で終わるから

 そこで、ここにとどまっている商人たちをフリューエンまで

 護衛を指せてもらってほしいって言う、指名依頼ももらったわ」

 

「そっか…

 

 私達、やっと次の町に行けるんだね」

 

風香は嬉しそうにしていく

 

「ええ、次の町に行くまでに

 準備を整えて、同時に鋭気をやしなって置かないとね

 

 特に雫、あんたは特に休んでおいた方がいいわ、樹海から

 戻ってきてから、随分とやつれているように見えるけれど?」

 

姫奈に言われて、雫はうぐっっと表情を強張らせていく

 

「あんたは出来る限り休んでなさい…

 

 しっかり食べて、しっかり寝なさい

 休む事だって立派なトレーニングなんだからね」

 

「‥‥え、ええ、わかっているわ…

 

 ちょっといろいろあって、気を張ってしまってるだけよ」

 

姫奈に言われて、そうごまかしていく雫

 

しかし、香織は雫がそれが

ごまかしであることを見抜いていく

 

「それじゃあ、おやすみなさい…

 

 咲に休ませてもらうわ」

 

「「「おやすみなさい」」」

 

風香、纏、ラナの三人は

雫が寝室に戻っていくのを見届ける

 

「姫奈ちゃん…」

 

「‥‥わかっているわ…

 

 雫の傍には、あんたがついててあげて

 準備や買い出しの方は、私たちの方で進めておくわ」

 

姫奈に許可をもらって、雫の傍にいることを決める香織

 

その一方の雫の方は…

 

「ぐ…

 

 まただ‥‥また痛みがぶり返してきた…」

 

誰もいない寝室で、雫は

左脇腹の部分を抑えていく

 

雫が左わき腹に痛みを覚え始めたのは

ハルツィナ大迷宮において、みんなで力をあわせ

 

アルテナを倒した時からであった

 

最初の時は、香織の治癒魔法をかけてもらった際に

痛みが引いたので、それで何とか収まったと感じた

 

だが、戦いを終えてしばらくしてから

その痛みは段々とぶり返していったのだ

 

雫は宿に入って、部屋に入って早速

痛みを感じる左わき腹の方を見てみると

 

そこに例の傷があった

 

香織達が大浴場に向かった際に

一人、部屋のお風呂に入ると言ったのは

この傷の事があるからだ、彼女がこの傷の事を

黙っていたのは、単純に心の準備ができていないから

 

自分自身でも、その傷を見て

表情をしかめてしまったほどだ

 

それを信頼している友人であったとしても

自分以外の者に見せるにはそれなりの勇気が必要になる

 

ハルツィナ大迷宮での激戦において

自身もほかの者も肉体的にも精神的にも

かなり疲弊している状態なのである、そこに

自分の左わき腹に浮かび上がったこの傷を見せるのは

すこし憚られてしまうのも無理はないのかもしれないだろう

 

だが、雫の身体を蝕んでいるこの傷は

徐々に、時間を掛けつつ少しずつ体の方を蝕んで行く

 

そのせいなのか、雫の左わき腹から

感じ取れて行くその傷は、痛みが増していっている

 

「ざまあないわね…

 

 敵に操られて、みんなの事を

 傷つけて、挙句の果てにはこんな…

 

 なんとも滑稽なものね…」

 

自嘲気味に呟いていく雫

 

「‥‥でも、そんな私には

 ある意味でぴったりなのかもしれないわね…」

 

そういって、自身のベッドの上に倒れこむ雫

 

その際に飛び込んだわけではなく、それこそ

傷が響かないようにそっとベッドの上に横になった

 

しかし、それでも

 

「っ!

 

 ぐう…」

 

雫の身体に入ってくる痛みは

体全体に及んでいく様子を見せる

 

このままだと、痛みのせいで

満族に休むことも、眠りにつくこともできない

 

そうなってしまえば、ただでさえ

自分だけが聖徒に目覚めていないというのに

 

そのせいで、満足に戦うことができない

そうなってしまえば、他の面々の足を引っ張ってしまう

 

それだけは、何としても避けないと、と思い

無理矢理にでも眠りに付こうとしていくのだが

 

「ああああ…」

 

やはり痛みの方が増してしまう

 

結局、今の雫に出来たのは、その痛みを

なるべき声に出さないようにして耐えること

 

ただ、それだけしかなかった

 

結局雫はその日、一睡もできなかったという

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

 

とある離れた山脈地帯において

黒いローブに身を包んだ一人の人物がいた

 

その人物は、ある場所において

何かの大群を引き連れていた、それは

 

魔物の大群であった

 

魔物の大群を背に、ゆっくりと動くその人物

その様子は魔物が近くにいるのに慌てている様子も

同時に逃げだそうとしている様子の方もまた見られない

 

まるで魔物たちは、その人物に従っているような

そんな風に見える、まるでご主人に忠実なペットのように

 

「いいぞ、いいぞ‥‥

 

 これだけの数がいれば、俺は十分に

 やっていける、それをもって俺は絶対に思い知らせてやる‥‥

 

 俺が…俺こそが勇者なんだってな‥‥」

 

そう呟いていく、その人物

その口調はどこか、少年のような

どこか砕けたような様子が見て取れる

 

そんな時に、少年は不意に何かを感じ取る

 

何者かが、自分のもとに近づいてくる

そんな気配を、一体何者なのかと恐る恐る見ていくと

 

そこに現れたのは…

 

「なんだ、この辺りの魔物の動きがおかしいと思って

 調査に来てみたが、まさかこんなところに人間がいたとはな」

 

そういって、現れたのは一人の人物

その人物に気付いた少年は、驚いた様子を見せる

 

「な、何だてめえ‥‥!

 

 俺に何のようだ!?」

 

「貴様こそ、こんなところで一体何をしている?

 

 何者か走らんが、我らの邪魔をすると言うのなら

 ここで抹殺させてもらうことにするぞ、人間族の小僧」

 

目の前の男性は、耳がとがっており

さらには肌もこの世界の人間族に比べると

 

褐色で、瞳の色も黄色になっている

 

「…あ、あんたもしかして‥‥

 

 魔人族なのか!?」

 

「いかにも、そうだが?

 

 そういう貴様は何者だ?

 

 ここで一体何をしている」

 

そういって、目の前の魔人族の男性は少年に訪ねていく

 

「お、俺は‥‥

 

 俺はこの世界に召喚された、勇者だ!」

 

精一杯に声を張っていく、少年

 

「…勇者?

 

 そうか、貴様だな?

 

 この世界に召喚されたという

 神の使徒と言うのは、それにしても

 我らが神が警戒せよとのお告げがあったから

 どのようなものなのかと思って、来てみたが…

 

 見たところは、戦いの心得など知らぬただの餓鬼じゃないか?」

 

魔人族の男性は、どこか失望したような口調で答えていく

 

「だ、黙れ!

 

 お、俺の力を見くびってんじゃねえ!!

 

 周りを見てみろ!!!」

 

少年がそう言い放っていくと

その周りには、魔人族に睨みを利かせた

魔物の大群の姿があり、それを見て驚愕する魔人族

 

「(ほう、この若さでこれだけの数の魔物を

  従えていくとは、まあ所詮は雑魚ばかりだが…

 

  それでも、将来性はある

 

  このまま、こいつらをせん滅してもいいが

  あのお方から、神の使徒に接触し可能ならば引き入れろ…

 

  そのように命を受けているからな)」

 

魔人族の男性は、目を伏せると

 

「おお、なんという力だ…

 

 このような力をもつものが、よもや

 人間族のもとに居ようとは、なんとも恐ろしい」

 

芝居であることがばれぬように言い放っていく魔人族

 

「へ、俺の力、思いしったかよ」

 

「あ、素晴らしい、実に素晴らしいとも…

 

 しかし、わからないな、これほどの力を持ちながら

 なぜ君はこのような場所にいるのだ、君が勇者として

 認められているのならば、むしろ王国は重宝する者だと思うのだが」

 

「王国の連中の見る目がないだけだよ

 

 俺が本気になれば、てめえらなんざ

 此奴らを使って簡単につぶせるんだよ!」

 

そう言い切っていく、少年

 

「なるほど、人間族はこれほどの力を持つ者を

 見抜く目利きがなかったという訳か、なんとも惜しい

 

 実に惜しいものだ、むしろ君こそが勇者にふさわしいと言えるのに」

 

魔人族の男性は、少年の反応を見て

ここで切りだしてみるかと提案を口にする

 

「真なる勇者よ、君に一つ提案をしよう…

 

 我らのもとに来ないか?」

 

「何‥‥?」

 

突然の申し出に、目を何度も見開いてしまう

 

「君の力は、本当に素晴らしい

 それなのに君は、見る目のない人間族のせいで

 その力を持て余していく、なんとも惜しい、実に惜しい…

 

 だが、我らならばその才能をいくらでも活かしてやろう

 そして、その力をもってこの戦争を終わらせたその暁には…

 

 我等は君を、真なる勇者として歓迎しようではないか」

 

「ほ、本当か‥‥

 

 本当に俺を迎え入れてくれるのか?」

 

少年は、魔人族の甘言に乗せられんとしていく

 

「だが、待て‥‥

 

 そんな体のいい事を言って

 いざって時は俺を裏切る気じゃねえだろうな?

 

 てめえらは俺に一体何をしてほしいんだ?」

 

そういって少年は魔人族の狙いを聞きだしていく

 

「そうだな…最近この大陸で起こっている

 謎の異常現象のせいで人間族も魔人族も土地が疲弊していてね

 

 そんな時に人間族のもとに、荒れ果てた土地を耕して

 土地を復興して、食糧問題を解決に導いている存在が現れた

 

 何でもそのものは、豊穣の女神、と呼ばれているらしくてな」

 

それを聞いて、少年は目を見開いていく

 

その呼び名は、聞き覚えがあったからだ

 

「そうだ…

 

 彼女の存在はある意味で

 勇者よりも危険な存在だ…

 

 いずれその存在は脅威になりうるだろう…

 

 その影響を最も強く受けているのが

 人間族の町の中でも食料の生産を増やしている

 

 ウルの町…

 

 豊穣の女神の命と、いま彼女の居る町を

 見事に滅ぼしてくれることが出来た暁には

 

 君を我らの勇者として、迎え入れることを約束しよう

 

 我々からの要求は以上だ、後は君がこの話を受けてくれるかのみだ

 

 受けてくれるね?」

 

魔人族の男性は、そういって少年に手を差し伸べていく

 

「(…畑山先生を殺せってことか…

 

  そんな事…)」

 

少年は、魔人族の提示してきた条件を…

 

「(‥‥楽勝じゃねえか

 

  勇者よりも厄介な能力っつっても

  所詮は生産職、闘いには向いちゃねえ

 

  それに、魔物たちに街さえ襲わせれば

  あの馬鹿みたいにお人好しなあいつのことだ

 

  たとえ、護衛の騎士が逃げる様に言っても

  絶対に聞かずに、町のために残るって抜かすにきまってら

 

  それだったら、先生を殺すのも町を滅ぼすのも簡単だ

 

  こんなにもちょろいのが条件だっていうんなら

  すぐにでもどうにでもなるって話じゃねえか、だったら‥‥)」

 

むしろ意気揚々として受け入れる気満々になっている

 

「…いいぜ、それだったらやってやる

 

 もしも俺が約束の方を果たしたら

 その時は、約束の方は守ってくれよ」

 

少年は快く受けていく

 

「もちろんだとも

 

 歓迎するぞ、我らが勇者よ」

 

魔人族の男性と少年との間に契約が入っていった

 

しかし…

 

「(フン、こんなにも簡単に

  こっちの口車に乗ってくれるとはな

 

  神の使徒などと言っても所詮は餓鬼…

 

  おだてれば、すぐに調子に乗る…

 

  まあ、この小僧がしっかりと

  こっちの条件を受けてくれるのならば

 

  それはそれでいい、果たせなかった場合は

  我々の方で、手を打っておけばいい、使えるだけ

  使いつぶして行ったら、後は適当に始末しておけばいい…

 

  我らの目的を果たしてくれるのならな…)」

 

「(こいつの言う条件は簡単だが

  所詮は口約束、いざって時は裏切られる可能性もある

 

  それだったら、こっちもこっちで保険を

  かけて置かねえと、南雲の馬鹿みたいに

  簡単に寝首を掻かれちまう、こいつらに俺が

 

  あんな奴なんかよりも、いいや

  天之河なんかよりも優れているんだって

 

  それをしっかりと奴に認めさせねえといけねえ

 

  そのためにも‥‥もっともっと力を手にしねえと…)」

 

お互いの心情はお互いがお互いを利用することしか

考えていない、打算的かついびつなものでしかない

 

お互いの心境をしることもなく、少年は

準備の方に時間がかかると称して、再びここで

落ち合う約束を取り付けて、分かれていくのであった

 

それから、魔人族の男性の方は…

 

「フン、あんな餓鬼が神の使徒だと?

 

 所詮は力をもっておぼれているだけのガキ…

 

 あんなものに自分達の命運を握らせていくとは

 人間族もこれで終わりだな、奴を勇者としているのならばだがな…」

 

先ほどの少年に対して、散々な評価を下す

 

最も、最初っから彼の事を利用することしか

考えていないので当然と言えば当然ともいえる

 

「まあ最も、勇者が何者であろうとも

 我等、魔人族側の勝利は揺るぎはしない…

 

 あのお方が手にした、あの力がある限り

 我等は戦力の方には事欠かないのだ、あんな小僧が

 必死に集めて来た有象無象の魔物ごとき、いくら束になろうと

 

 あのお方が生成した、魔物の前には足元にも及びはせんのだから」

 

そういって、控えさせていた一匹の飛竜

その龍の顔に手をあてると、その龍は魔人族の男性を

主として認めているのか、その手による愛撫を受け入れていく

 

「だが、あの小僧の力は確かに目を見張るものがあるのも確かだ…

 

 うまくいけば、こちらの手を汚すまでもなく

 ウルの町も例の豊穣の女神も葬れるやもしれん…

 

 しばらくは、こちらの様子を見ていって

 状況次第で、本国へ連絡を入れていくとしよう」

 

魔人族の男性は、そういって

飛竜の背中に乗り、そのままか滑空していき

 

そのまま飛びたっていった

 

一方で、フードの人物の方は…

 

「もっとだ、もっと力を付けねえと‥‥

 

 証明してやるんだ、俺こそが真の勇者だって‥‥」

 

そういって、呪文のように呟きながら

洞窟の中で、ゆっくりと座り込んでいった

 

力が欲しい、誰にも舐められず誰にも向きだされずに

どんな奴も従えさせることができる、そんな圧倒的な力を…

 

その身の内に、どす黒い欲望を抱えていき

それによって身も心も犯されていく中、フードの人物は

その洞窟の奥において、何やら輝いていく何かを見つける

 

「なんだ‥‥?」

 

フードの人物が、それに気が付いて

洞窟の奥の方に行くと、そこにあったのは

 

黒みがかった青色の鉱石であった

 

「なんだこりゃ‥‥

 

 こんなもん、王国の書物でも見たことねえぞ‥‥」

 

そういって、その鉱物の一つを手にしたフードの人物

 

すると、その身の内にものすごく

強大な力が湧き上がってきたのを感じた

 

「おおおお!!!」

 

それを受けて、フードの人物の身体からも

鉱石と同じ黒みがかった青色のオーラが纏われて行く

 

「これだ、この力だ…

 

 この力があれば、俺は!」

 

男の笑いが洞窟内に不気味に響き渡っていく

 

その様子を、洞窟の外から

木にとまった一羽の烏が見つめていた

 

洞窟の中で起こっている現象をみて

面白そうに、何よりも満足げに見つめ続けていたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの出来事が引き起こされた、この闘い

 

それが、世界の命運をかけた少女達に

この先の出来事において苦渋の選択を強いていく事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           

多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?

  • 原罪(スルー推奨)
  • 傲慢
  • 虚飾
  • 嫉妬
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 憂鬱
  • 暴食
  • 色欲
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