世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:OOSPH

3 / 14
statum Ereignis

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

こうして、いろいろとひと悶着あったものの

全員が戦争に参加する意思を示したので、イシュタルは

さっそく準備にかかる、確かに彼らに特別な力を持っているとはいえ

今の今まで戦いとは無縁の生活をしてきた彼らにいきなり戦わせてるのは

流石に無茶が過ぎるだろう、だがそれについては心配はしていないとのことだ

 

これから彼らはある国に受け入れられ、そこで戦うための訓練を受けてもらうと言う事

 

こうして彼らは教会の発動した魔法によってまるでロープウェイのように

滑らかに移動していき、やがてその国、ハイリヒ王国へと訪れていったのだった

 

「なるほどね…

 

 これは言うなら、演出のようなものか…

 

 私たちの存在を、この世界の人間に

 知らしめようとしているわけだ、何というか…

 

 皮肉なものだな…」

 

「…そうだね…」

 

この移動方法を皮肉るようにつぶやく女子生徒

 

東雲 渚沙

 

 

それに対して力なくつぶやいていく男子生徒

 

南雲 ハジメ

 

 

そんなハジメを心配した様子で見つめている一人の女子生徒は

 

「‥‥大丈夫よ、香織…

 

 さっきも言ったけれど南雲のことは

 あとで時間があるときにゆっくり話せばいいんだから…

 

 だから今は生き延びることだけを考えましょう…

 

 南雲君と一緒にね…」

 

「‥‥うん、私の方も当てにしているからね、雫ちゃん」

 

背の高い女子生徒にそうさとされる

 

八重樫 雫

 

 

白崎 香織

 

 

彼女達は決意を新たに目的地である国

 

ハイリヒ王国にへとたどり着いていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

こうして王国に辿り着いた一同はさっそく王の間へと招かれて行く

 

扉が開くとそこには、奥の方まで伸びていっている

レッドカーペットが豪奢な椅子、玉座の方にまで続いており

 

その前には王様と言える威厳に満ちた男性が立ちあがっており

その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年

十四、十五くらいの同じく金髪碧眼の美少女が控えており、更にレッドカーペットの

両サイドにも人がおり、左サイドには甲冑や軍服らしき衣装をまとったもの達、さらに

右側には文官らしき人物たちがざっと数十人くらいが佇んでおり、生徒達を見詰めている

 

イシュタルは生徒達を玉座の前にまで歩かせるとそこで待っているように合図をし

自分は王の隣に立ちおもむろに手を出すと、王は跪き彼の手に軽く触れない程度のキスをする

 

「(‥‥なるほどね、どうやらこの国では

  王様よりも教会の方が立場は上の様ね…)」

 

「(…おっさんの手におっさんがキスするって誰得だよ…)」

 

渚沙とハジメはこの国を動かしているのが実質教会であると見抜く

なお、ハジメの方はおっさん同士のやり取りを見せられてややげんなりしていた

 

こうして、イシュタルが自分達のことを高らかに言うと

王はそれに合わせて、この世界を救ってほしいと述べていく

 

そんな軽いやり取りをかわしていく中

ハジメは王妃の隣に立つ、王女ともいえる人物の方を見ている

 

何故だか彼女に何か、惹かれる何かを感じ取りながら

 

こうして、謁見は終わり、生徒達の歓迎会を開くこととなり

パーティー用の会場にまで案内させられることになったのだった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

そこでは生徒達をもて為すために

とても豪華な食事が用意されていた

 

一同は異世界料理に舌鼓を打ち

更には多くの貴族やその関係者が

生徒達と交流をもとうとしきりに話しかけている

 

そんなこんなでわいわいと騒がしくなっている会場だが

なにぶん、状況が状況でもあるためにあまり乗り気ではない者もいる

 

「はあ…」

 

その者の一人でもある女子生徒

 

白崎 香織

 

彼女はあまり食事には手を付けている様子がなく

寧ろどうするべきなのかと考え事をしているようにも見受けられる

 

「お、お主‥‥

 

 少しいいか?」

 

そんな香織に話しかけていく一人の美少年

 

それは先ほどの謁見の際に王妃の隣にいた美少年であった

 

「貴方は確か‥‥ランデル殿下…でしたか?」

 

「おお、覚えていてくれて何よりだ

 改めて紹介しよう、余はこのハイリヒ王国の王子

 

 ランデル・S・B・ハイリヒである‥‥

 

 良ければだが、そなたの名前も教えてもらえないだろうか」

 

「え、えっと‥‥白崎 香織と申します…」

 

「ふむ、香織か‥‥うむ、良き名前だ‥‥

 

 それにしても元気がないようだが、体調がすぐれないのか?」

 

香織に向かって、何やら緊張した様子で話しかけてくる美少年

 

ランデル・S・B・ハイリヒ

 

 

彼は元気のない香織のことが気になり

これを機に香織と交流を深めていきたいと考えていく

 

「はい、別に何ともありません…

 

 ただ少し、別の世界に召喚されたという実感がないだけです…」

 

「おお、そうであったのか‥‥

 

 なあに、心配することは無い

 余はこの国の王子なのだからな

 

 余が決して香織のことを不安にはさせない‥‥

 

 だから、その‥‥これからまた、こうして余と

 話をしてくれると嬉しい、これから余の傍にいてほしいのだ‥‥」

 

そう言ってプロポーズまがいのことを口にするランデル

年頃とはいえまだ十歳前後の子供なのだ、はきはきとしている部分が目立つ

 

それは傍から見ると微笑ましいが

今の香織にはただの子供の背伸びにしか受け取れない

 

「フフフフ‥‥、ランデル王子はお優しいのですね…

 

 私のことを源築けようとしてくださっているのですね…

 

 でも私は本当に大丈夫ですから、お気遣いは結構ですよ」

 

「う、うむ‥‥

 

 そ、その‥‥余は‥‥」

 

その後も香織とランデルの会話は続いていて

それを見ていた男子生徒の視線は鋭いものであった

 

香織の方も何とか優しく応対していくが

ランデルの方も中々ひかない、するとそこに

 

「ランデル殿下、申し訳ありませんが

 香織は突然この異世界に召喚されてまだ混乱しているんです

 

 お気遣いは嬉しいですが、どうかこの続きは日を改めてお願いします」

 

香織に助け舟を出してくる、女子生徒が現れる

 

八重樫 雫

 

香織の親友である

 

「よ、余はただ、香織が元気がないのが気になって

 

 少し話をしただけで‥‥」

 

「それはありがとうございます…

 

 それでは、これで失礼します…

 

 ほら、香織、こっちで休んでて…」

 

「‥‥ありがとう、雫ちゃん…」

 

そう言って香織と引き離された

ランデルはその場に立ち尽くしていたのであった

 

「ひょっとしてあの王子様…

 

 香織に一目ぼれでもしたのかしら?

 

 どうやらあの様子だと

 この世界の美人の基準は私たちの方と変わらないようね…」

 

「そうだね…

 

 まあ、ランデル君には悪いけど

 香織ちゃんを振り向かせるなんて無理だからね…

 

 ところ、香織の王子様はどこにいるの?」

 

その様子を離れた場所で見つめている二人の女子生徒

 

南野 姫奈

 

 

西宮 風香

 

 

二人は香織の本命である、ハジメの姿を探していた

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

生徒達のいるパーティー会場から離れた場所で

一人の男子生徒が夜空に浮かび上がる月を見つめていた

 

「…はあ…

 

 しつこい人だね、渚沙さんも…

 

 僕に何か用なのかな?」

 

そういうと彼の横の方から一人の女子生徒が現れる

 

「ううん、たまたまここに来ただけ…

 

 私はあんまり騒がしいのが好きってわけじゃないから…」

 

東雲 渚沙

 

 

向こうの世界にいた時に彼と最後にあっていた女子生徒である

 

「…そっか…

 

 まあ、いいよ…別に迷惑ってわけでもないんだし…」

 

特に気にすることなく、彼は夜空に浮かんでいる月を見ていた

 

「…ねえ、東雲さん…

 

 どうして東雲さんは、こんな僕に優しくしてくれるの?

 

 しってるよね…僕の噂…あの時と変わらず接してくれてるよね…」

 

「‥‥南雲 ハジメは一年のころに、四大女神の一人である

 南野 姫奈を人気のないところに誘い出して無理矢理関係を迫った

 

 しかし、寸でのところで檜山達四人によって止められ、学校側に告発されるも

 卑怯な手段を使って言い逃れをし、受けるべき罰を受けずにのうのうとしている

 

 最低最悪の人間…

 

 それが、貴方の学校でのほとんどの者達からの評価…

 

 でもそれは所詮は他人が勝手につけた評価だもの…」

 

渚沙はそこまで言うと、ハジメの方に向いて締めくくる

 

「‥‥貴方が本当はどんな人間かなんて…

 

 貴方の事をしっかり見ていればわかるもの

 あなたはそんなことをするような人じゃない…

 

 貴方の事をしっかりと見てくれる人は少ないけれどいるわ…

 

 だから卑屈にならないで‥‥貴方は決して一人じゃない…

 

 貴方がたとえそれを否定しても、受け入れようとしなくても…

 

 少なくとも‥‥わたしがいるんだから…貴方の事を

 本当の意味で理解してくれる人は少なからずいるのだから…」

 

そう言って教えられていた自室のある方へと去っていく渚沙であった

 

「…僕は…一人じゃないか……」

 

渚沙の背中を暫く見詰めていると

そんな彼のもとに誰かが歩いてくる音がする

 

「今夜は月がきれいですね‥‥」

 

「…うん?」

 

急に話しかけられ、ハジメはその声のする方に目を向ける

そこにいたのはきらびやかなドレスに身を包んだ美少女がいた

 

ハジメはその少女が何者かを理解していた

 

「…うん、貴方は確か…

 

 王女様?」

 

「謁見のとき以来ですね、改めまして

 

 リリアーナ・S・B・ハイリヒと申します」

 

そう言って左手でドレスのスカートの裾を上げ

右手自身の胸元に手を当てて頭を下げ、挨拶をする

 

「南雲 ハジメだ…

 

 それで、あんたのような人が僕に一体何の用だ?」

 

「い、いえ‥‥

 

 少し気になってしまったので‥‥

 

 どうして、南雲様は

 他の皆様とご一緒なさらないのかなと思って‥‥」

 

それを聞いてハジメの表情は

どこか鋭いものになっているのを感じるリリアーナ

 

「貴方には関係のない話だ…

 

 それに、僕はハッキリ言って

 あんた達の言う戦争には乗り気じゃない…

 

 いきなりこんな訳の分からない世界に連れてこられて

 そこで早々、戦争に参加して自分達を救ってほしい?

 

 僕たちのような子供にそんな大それたこと出来るわけないだろ!」

 

「っ!」

 

「あんた達の都合を勝手に押し付けられて

 しぬかもしれない戦いで殺し合いを強要して…

 

 はっきり言ってどうかしてんじゃないかって思ってる…

 

 エヒトだか何だか知らないけど、そんな訳の分からない存在に

 僕たちの人生を勝手に決められたり奪われたりなんかしてたまるものかよ!

 

 もううんざりなんだよ、訳の分からない都合に振り回されるのは!!」

 

ハジメはそう言って内に秘めた不満をリリアーナにぶつけてしまう

暫くして自分がやってしまったことに気が付いて少し公開をしている

 

すると

 

「…‥う、うううう~…うああ~…ああああ‥‥」

 

リリアーナは涙を浮かべて

まるで胸の内に秘めていたなにかをひりだす様に泣き始める

 

「…あ、いや…その……」

 

余りの反応にハジメは言いすぎてしまったかと思い

どう声を掛ければいいのかわからずしどろもどろになる

 

「…‥そうですね‥‥

 

 貴方の言う通りです‥‥

 

 私達は貴方達にすべてを押し付けようとしている‥‥

 

 お父様もこの国の方々も、皆さまを神の使徒として

 ていのいいように扱っていますが、扱いはある意味道具のようなものです‥‥

 

 本来だったら私達のことは私たち自身で解決しなくてはならないのに‥‥」

 

リリアーナは嗚咽交じりにそう言ってハジメに申し訳なさそうに頭を下げる

 

「実は私も、教会のやり方や今のお父様の在り方に疑念を持っていました‥‥

 

 かつての私が幼かった時のお父様はどんな時でも民の声に耳を傾け

 そのうえでこの国に住まう民のための政策を考える立派なお人でした‥‥

 

 しかし、南雲さん達をこの世界に呼び出すという神託を受ける数か月前の事です‥‥

 

 お父様は民の声に耳を傾けることはしなくなりました…‥毎日人が変わったように

 エヒト様に祈りを捧げるようになり、次第に教会の言いなりになってしまったのです‥‥

 

 私は何度も、何度も、お父様を説得しました、しかし…‥お父様どころか

 お母様も…‥ランデルも‥‥まるで、私の事をおかしなものを見る様な目で見るようになって‥‥

 

 気が付いたら、私の話を聞いてくれるものは殆どいなくなってしまったのです‥‥

 

 幸いにも私の話しを聞いてくれる者も何人かいたので、自分を保つことは出来ました‥‥

 

 でもやはり、同じ血を分けた家族にまるで

 異質な物を見る様な視線を向けられたショックはそう簡単には晴れませんでした‥‥

 

 今回のことだってお父様が決めた事です、まだ年端も行かない皆さんを

 戦いに行かせるなんてはっきり言って正気の沙汰ではありません、しかし‥‥

 

 それを言ったところで、お父様たちが聞いてくれるはずもなく‥‥

 

 私やランデルがパーティーに出席したのも、お父様からの指示です

 早めに神の使徒たちと交流を深めて、皆様からの信頼を盤石なものにしろと‥‥

 

 皆様と信頼を築くのは私も賛成です、でもその実は

 皆様を魔人族との戦いから逃さないようにするための楔を打ち込むこと‥‥

 

 それがあの歓迎の晩餐会の本当の目的なのです‥‥」

 

「…何だよそれ…

 

 どこまで腐ってるんだよこの世界は…」

 

リリアーナから聞いて、ハジメは驚愕と怒りに満ちた表情を浮かべている

 

「私も本音を言えば、皆様が元の世界に戻るための方法を見つけ‥‥

 

 皆様を戦いに巻き込むことなく、元の世界に帰還させたい

 しかし、召喚魔法を記していた記録のようなものは既に失われており‥‥

 

 調べようにも調べられなくなっているんです‥‥

 

 わたしがせめてお父様だけでも説得できていれば

 皆様を私たちの世界に呼び出し、この世界の都合を押し付けるような真似なんて‥‥

 

 そんな事を済んだかもしれないのに…‥ごめんなさい‥‥ごめんなさい…ごめんなさい‥‥」

 

そう言って泣き崩れてしまうリリアーナ

すると、ハジメは屈んでリリアーナの両頬に両手を当てて

 

自分野方へと優しく向けていく

 

「…そっか…あんたもつらかったんだな…

 

 それに、あんたも僕と同じなんだね…」

 

「え?」

 

リリアーナの言葉に何か共感するものを感じたハジメ

彼は彼女にリリアーナに嘗て自分の身に起こった出来事を話していく

 

高校に入学して一年が断とうとした時だった

 

ある日、ハジメは自分の事を

一方的に目の敵にしているグループの男子生徒

 

檜山 大介

 

 

中野 信治

 

 

斎藤 良樹

 

 

近藤 礼一

 

 

彼らに絡まれ、危うく集団リンチを

受けそうになったハジメの元に一人の女子生徒が通りがかった

 

南野 姫奈

 

 

彼らが思いを寄せている白崎 香織と同じく

四大女神に数えられている彼女が駆け寄っていく

 

すると、そんな姫奈に腹の虫を悪くしたのか

彼女の方にも襲い掛かろうとしたが、其れを止めんと

ハジメが抑え、姫奈に傷つくことは無くその場は収まった

 

結局、ハジメはボロボロになってしまったものの

どうにかその場を収めることが出来たハジメ、姫奈は

助けてくれたお礼と、結局助けられなかった謝罪の言葉をかける

 

ハジメは気にしないでいいよと笑って答え、姫奈にお礼を言った

 

しかし、檜山達の悪意はまだ終わっていなかった

そのことにこの時の二人は気づいていなかったのだ

 

後日、ハジメは生徒指導室に呼び出され

そこで何と衝撃的な言葉を耳にした、それは

 

ハジメが姫奈を人気のないところに

呼び出して関係を迫ろうとしていたと言うのだ

 

ハジメは混乱したが同時に察した

一体だれがそんなことを言ったのか

 

それを密告したのは案の定、檜山達であった

 

ハジメは必死に弁明した、檜山に襲われそうになったところを姫奈に助けられ

その姫奈に檜山達が襲い掛かろうとしたのを自分が止めたのだと、さらに言うと

彼は姫奈にはもちろん、檜山達の方にも一切手は出していない、覚えもないのだと

 

必死に意見をしていくハジメだったが

教職員たちはそんな彼の話など聞こうともしなかった

 

ハジメは何しろ授業中はほとんど寝ていることが殆どのため

殆どの教職員からはよく思われていなかったのだ、故に教職員たちは

ハジメの話に本気で耳を傾けようとはせず、処分が決まるまでの間、謹慎することになる

 

その後、事情を知った姫奈や教職員の中で唯一、ハジメの言葉に真剣に聞いていた教師

 

畑山 愛子

 

 

彼女らの奮闘によりハジメと檜山

喧嘩両成敗という形でどうにか退学は免れたものの

 

彼の周りの人間関係は大幅に変わってしまった

 

両親からは仕事の手伝いはおろか、愛情を注がれることもなくなり

学校においても殆どの生徒達から陰湿ないじめを受けるようになってしまう

 

おまけに教職員もそのいじめを黙認する始末

 

その結果、ハジメは全校生徒、すべての学校関係者

全員に疎まれてしまうことになり、やがて精神的にも追いつめられていった

 

それでも変わらず彼と親しくしている者もいたために

腐りきってしまうことは無かったものの学校でも家でも

居場所をなくし、ストレスにより、すっかりと変わり果ててしまった

 

「…あの日以来僕は両親の笑顔を見たことがない…

 

 どんなに話をしようとも僕の話を聞こうともしない…

 

 実の両親から理解されず、されようともしていない…

 

 その点は僕と貴方はまるで鏡合わせのようによく似ている…」

 

ハジメの話を聞いて、あまりにも壮絶な

過去の出来事に言葉を失ってしまうリリアーナ

 

「…僕だって毎日のように思っていますよ…

 

 あの時学校に申告していれば、いいや

 最低でも両親には相談していたら、もしかしたら

 両親だけでも僕の味方でいてくれるかも知れなかったのにってね…」

 

そういう彼の表情は口惜しさと悲しみの入り混じった表情で

リリアーナはその表情を見て、不思議と放って置いてはいけないと感じた

 

「…フフフ、何だかちょっと湿っぽくなっちゃったよね…

 

 今の今まで、過去の事なんて誰にも話そうとも思わなかったのに…

 

 どうして…話したりなんか…」

 

自分のやったことながら少し驚いた様子を見せていくハジメ

 

すると、彼の手にそっと手が優しく置かれていく

 

「…‥南雲さん、本当にお辛かったんですね‥‥」

 

「…え?」

 

そう言ってリリアーナはじっとハジメの顔を見つめていく

 

「…‥私もずっとこのつらさを誰かにわかってもらいたい

 ずっとそう思っていました、でも言ったところでどうしようもない‥‥

 

 そう思って話すことが出来ずにただたため込み続ける日々を送っていました‥‥

 

 つらかったんですね…‥苦しかったのですね‥‥私もそうでした…でも‥‥

 

 私は貴方に話をしてみて、本当に良かったと思いましたよ‥‥

 

 だって貴方は…‥わたしの話しを真剣に受け止めてくれたのですから‥‥」

 

「……」

 

不思議とハジメの目から涙が流れていく

 

「それに、貴方は決して貴方が思っているほど弱い人でもありません‥‥

 

 わたしこれでも、人を見る目はあるつもりなんですよ?」

 

「リリアーナ王女様…」

 

ハジメがリリアーナの名前をつぶやくと、彼の口元に

リリアーナのピンとたてた人差し指が突き出されてきた

 

「リリィ、と呼んでください‥‥

 

 王女様なんて言いにくい呼び方はなしですよ‥‥」

 

「で、でも王女様にそんな…」

 

「いいんです、それに‥‥

 

 ハジメさんとはこれからも仲良くしていきたいですから‥‥」

 

そう言ってリリアーナはその場から

離れるとハジメににこやかに微笑んで会場に戻っていった

 

「…リリィ…か……」

 

この世界に来て初めて親しい関係となった人物

だがハジメの心はどこか晴れやかになっている感じがしたのだった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

その翌日、さっそく訓練と座学が始められていく

 

「勇者御一行、今回は我々への協力を感謝する!

 

 俺はハイリヒ王国騎士団長を務める

 

 メルド・ロギンスだ!!

 

 本日よりお前たちに訓練を行って行く事になるが

 その前に、お前たちに渡しておくべきものがある」

 

そう言って騎士の鎧に身を包んだ男性

 

メルド・ロギンス

 

 

彼がそう言うと、生徒達にある者を渡していく

それは銀色の12×7センチくらいのプレートであった

 

生徒達は其れをまじまじと不思議そうに見つめていた

 

「ようし、全員に配り終わったな?」

 

「これは…?」

 

「…これはステータスプレートと呼ばれている

 

 文字通り自分のステータスを数値化してくれるものだ

 

 またこの世界では最も信頼のある身分証明書でもあるからななくすなよ?」

 

そう言って気兼ねなく生徒たちに説明をしていくメルド

 

「まず、プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう?

 

 そこに、一緒に渡した針で指に傷をつくって

 魔法陣に血を一滴だけでいいから垂らしてくれ

 

 それで所有者が登録されるはず

 

 ステータスオープン、と言えば

 表に自分のステータスが表示されるはずだ、まずはやってみてくれ」

 

そう言って各々がステータスオープン、と呼ぶと

不思議なことにそのプレートに文字と数字が浮かび上がっていく

 

「浮かび上がっただろう、其れが今のお前らのステータスだ

 

 ああ、ちなみに原理とかそんなのは聞くなよ

 俺たちの方でもわからない、何せこいつはアーティファクトだからな‥‥」

 

「アーティファクト…?

 

 メルドさん、アーティファクトというのは…?」

 

アーティファクトという聞きなれない言葉に質問をしていく男子生徒

 

天之河 光輝

 

 

「アーティファクトっていうのはな

 現代じゃ再現することが出来ない機能を持った魔法の道具の事だ

 

 まだ神やその眷属たちが地上にいた神代に創られたと言われている

 

 そのステータスプレートもまたしかり

 昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ

 

 本来アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが

 これは一般市民にも流通している、身分証明に便利だからな」

 

「でもステータスプレートもアーティファクトなのに

 そんなに数をそろえていく事とかできるの、亡くなったりとかは…」

 

そう言って次に質問したのは女子生徒

 

南野 姫奈

 

 

「ああ、それについては心配いらない

 

 詳しくは話せないがこのステータスプレートを

 量産できるアーティファクトも存在しているから

 

 必要に応じて新しく生み出すことが出来るわけだ」

 

メルドはそう言って大まかな説明ををしていき

殆どの生徒達は少し眉をしかめながらもなるほどと納得していく

 

「さて、もう大体は確認できたと思うからさらに説明していくぞ?

 

 まず最初にレベルについてだ

 

 レベルは各ステータスの上昇とともに上がっていく

 

 上限は100で其れがその人間の限界を示す

 

 まあ大まかにいうとレベルとは

 その人間が到達できる領域の現在値を示しているという訳だ

 

 まあ、レベル100にまで達した奴はそうそうない

 自身の潜在能力をすべて発揮したと言う事だからな‥‥」

 

要するにゲームとは違ってレベルが上がるから

ステータスが上がるのではないと言う事である

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔具上昇させられる

 なお、魔力の高い者自然と他のステータスも高くなる傾向になる、ちなみに

 この原理についても詳しいことはわかっておらず、あくまで仮設の段階だが

 魔力が身体のスペックを無意識に補助しているからではないかと考えられている」

 

どうやら、ただ魔物を倒すだけでは一気に強くなれるという訳ではないらしい

 

「次に天職というのがあるだろう?

 

 それはいうなればその人間が持つ才能だ

 

 末尾にある技能と連動していて

 その天職の領分においては無類の才能を発揮する

 

 実は天職を持っている奴はとても少ない

 

 天職は主に、戦闘系天職と非戦系天職に分類され

 戦闘系は千人に一人、物によっては万人に一人の割合

 

 非戦系天職も少ない方ではあるが…割合は百人に一人

 十人に一人というのも珍しくないのが結構あって、その中でも生産職が一番多い‥‥」

 

そう言って説明を続けていくメルド

 

「そして最後にステータスだが…それは見たままだ

 

 だいたいレベル1の平均は10くらいだ

 まあ、お前たちならその数倍から数十倍くらいはあるだろう

 

 全く羨ましい限りだ、さてそれじゃあ

 各々のステータスプレートの内容は報告してくれ

 

 それを元にお前たちの訓練内容の参考にさせて貰うからな」

 

そういう事で各々のステータスを提示しに行くことになった一同

 

「姫奈ちゃん、風香ちゃん」

 

そこに香織と雫が、姫奈と風香のもとにやってくる

 

「あら、香織に雫…

 

 二人の方はどうだったの?」

 

「えっとね、私達はこうだったよ…」

 

そう言って香織と雫、姫奈と風香は

お互いのステータスプレートを見せあって行く

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

白崎 香織 17歳 女 レベル1

 

天職;聖女

 

筋力;40

 

体力;60

 

耐性;50

 

敏捷:50

 

魔力;190

 

魔耐:190

 

技能;回復魔法・光属性適性・高速魔力回復・言語理解

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

八重樫 雫 17歳 女 レベル1

 

天職;剣聖

 

筋力;60

 

体力;80

 

耐性;40

 

敏捷:150

 

魔力;50

 

魔耐:50

 

技能;剣術・縮地・先読・気配感知・隠業・言語理解

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

そして、香織と雫は渡された姫奈と風香のステータスを見る

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

南野 姫奈 17歳 女 レベル1

 

天職;聖剣士

 

筋力;40

 

体力;20

 

耐性;50

 

敏捷:50

 

魔力;410

 

魔耐:410

 

技能:剣術・縮地・先読・気配感知・隠業・炎・雷属性適性・炎・雷属性耐性・言語理解

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

西宮 風香 17歳 女 レベル1

 

天職;聖騎士

 

筋力;60

 

体力;40

 

耐性;60

 

敏捷:450

 

魔力;50

 

魔耐:50

 

技能;剣術・縮地・先読・気配感知・隠業・凬属性適性・凬属性耐性・言語理解

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

それぞれのステータスを見て感服の声をあげていく四人

 

「聖女に剣聖ね…

 

 ファンタジー物にもよくある職業よね…」

 

「姫奈ちゃんに風香ちゃんも

 聖剣士に聖騎士なんてなんだかすごいじゃない?」

 

「あ、あははははは…」

 

四人はお互いのステータスを見せていき、笑いあっていく

 

そんな時に向こう側の方から何やら驚きの声が上がっていく

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

天之河 光輝 17歳 男 レベル1

 

天職;勇者

 

筋力;100

 

体力;100

 

耐性;100

 

敏捷:100

 

魔力;100

 

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・限界突破・言語理解

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

「ほお、勇者か‥‥

 

 初期値で既に三桁…技能も普通は二つ三つなんだがな‥‥全く頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あははははは…」

 

メルドに称賛されて照れ臭そうに笑みを浮かべる光輝

 

その後も光輝の親友である龍太郎や

同じグループに入っている恵里や鈴も続いて見せていく

 

その後もクラスメートが次々と見せていくが

ひとつのステータスは光輝にも匹敵する技能を持っている

 

おまけにそのほとんどが戦闘系天職である

 

そして、香織と雫もそれに続き

共にお墨付きをもらって行き、姫奈と風香も続いていく

 

「ほう、聖剣士に聖騎士‥‥

 

 聖なる力を持つとされる天職が

 さらに二人も現れるとはな、勇者ともども頼もしい限りだ」

 

「は、はあ…」

 

「が、頑張らせてもらいます…‥ね…」

 

どのくらい凄いのかピンとこないので

姫奈も風香も返事がしどろもどろになっていく

 

「香織、雫、南野さんに西宮さん…

 

 四人ともすごいじゃないか

 俺たちと力を合わせれば、きっと

 この世界を救える、一緒に頑張ろう!」

 

光輝がまたもずいっと四人の方に向かって行くが

四人はそれをややうっとおしそうにしつつも、なるべく

おとなしくいなそうとしていき、経過の方を見ていく

 

一方そのころ

 

「…うーん?」

 

何やらハジメは難しそうに頭をひねらせていると

 

「南雲君、どうした?

 

 早く見せに行った方がいいんじゃないか?

 

 それこそ目立ってしまうぞ」

 

「うん、ごめん…

 

 先に行ってて」

 

ハジメは自分を呼んでくれる渚沙にそう呼びかける

 

渚沙は渋々了承して、メルドの方にプレートを見せていく

 

その内容は

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

東雲 渚沙 17歳 女 レベル1

 

天職;槍・棒術師・錬成師

 

筋力;10

 

体力;10

 

耐性;10

 

敏捷:10

 

魔力;10

 

魔耐:10

 

技能:槍・棒術・錬成・言語理解

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

それを見た、メルド団長の表情は驚きの様子を見せる

 

「ほう、天職を二つ持っているのか

 それも一方は戦闘職でもう一方は非戦系‥‥

 

 しかし、ステータスが平均値なのと

 技能が最低限の者しかないのが気になるが‥‥」

 

「‥‥別にいい、あんまり多いと

 ごちゃごちゃして覚えにくいし、それに…

 

 寧ろその方が私にはあっているから…」

 

渚沙はそう言って元の位置に戻っていく

 

渚沙は改めて自分のステータスを確認ししようとしていると

何やら深刻そうな表情で見つめているハジメの姿が目に映った

 

「南雲君?

 

 どうしたの?」

 

「あ、いや…その…」

 

渚沙に話しかけられると驚いた反応を見せて

言葉もあやふやになっていき、少ししどろもどろになっている

 

すると

 

「おーい、そこの坊主ー!

 

 なにやってるんだー!!

 

 もう残っているのはお前だけだぞー!!!」

 

「っ!?」

 

だが、渚沙の姿をしばらく見ていたメルドが

それを通じて、ハジメの姿に気づき、彼にステータスを

見せに来るように大きく呼び掛けていく、ハジメはそれに思わず反応する

 

「あ、いや…僕は…」

 

言葉を濁しつつどうにかその場をやり過ごそうとしていくハジメ

 

しかし、そんな彼の様子に食いついてくるもの達がいた

 

「おいおい南雲~?

 

 いくら何でもそれはいけねえな~?

 

 皆見せたんだから、お前も見せろっての」

 

檜山 大介

 

 

更にはその取り巻きである

 

中野 信治

 

 

斎藤 良樹

 

 

近藤 礼一

 

 

彼らもまたハジメに寄ってくると

彼を逃がさないように四人で取り囲んでいく

 

「いいから見せろっての!」

 

「うわっ!?」

 

檜山が無理矢理ハジメの持っていたプレートを奪い

彼をそれこそ思いっきり突き飛ばす、檜山はまじまじと

ハジメのプレートを覗き込むが、四人とも不思議そうに首を傾げていく

 

「なんだこりゃ…何も映ってねえじゃん?

 

 まさか、南雲ぉ、びびって血を流してねえのか~?」

 

「ぶっあっはっはっはっ!!!

 

 マジかよ、俺たちは普通にできたぜ~?」

 

「自分でできねえんなら俺らが手伝ってやろうか~?

 

 やりすぎても知らねえけどよ~」

 

そう言って下卑た笑みを浮かべていく檜山達

すると、メルドがそんな一同のもとによって来る

 

「何をやってるんだお前等!

 

 集団で寄ってたかっていったい何をしている!!」

 

「い、いや違うんすよ

 

 南雲の奴がビビッてステータスプレート開いてねえから

 俺らで手伝ってやろうと思っただけで、別に何かしようとしてたんじゃ…」

 

メルドに言われてあわてて弁明していく檜山達

メルドは首を傾げながら檜山が取り上げたハジメのプレートを見る

 

確かにステータスは表示されていないが、メルドは有ることに気が付く

 

「…登録されている‥‥

 

 少なくとも、しっかりと手順は踏んでいるはずだが‥‥

 

 すまないが、予備のプレートを渡すから

 それにもう一度自分の血を垂らしてくれないか?」

 

「は…はい…」

 

そう言われて、メルドから予備のプレートを渡され

ハジメは持っていた針で自分の指をもう一回傷つけて魔法陣に垂らす

 

すると、プレートは光ることなく

刻まれていた魔法陣もまた消えてしまう

 

ハジメはステータスオープンと言うが

ステータスが浮かび上がってくる様子はない

 

「これは、どうなっているんだ‥‥?

 

 ステータスが浮かび上がらないどころか

 プレート自体の効力も失われているようにも見える‥‥

 

 こんなのは前代未聞だぞ‥‥」

 

ステータスプレートが表示されない

 

こんなことはメルド団長からしても驚きの事であった

 

そんな様子を見ていた他の面々の反応は

一部の者は侮辱、またはハジメに向けて

あからさまに小ばかにした様子を見せているものが大半である

 

「それってつ~ま~りぃ~

 

 南雲はステータスに表示されることが

 ないほどに弱いってことじゃないっすか~?」

 

「そうだよな、それ以外考えられねえよなあ?」

 

「あ~あ~可哀そうなやつだな~

 

 いいや、あいつみてえな奴にはお似合いか?」

 

「だな、やっぱりあいつみたいなやつはああいうのがお似合いなんだな」

 

そんな中でもあからさまにハジメをののしってくる檜山達

他のクラスメートは檜山達のようにあからさまな態度は出して来ないが

まるで同意する様に笑みをうっすらと浮かべていたり、中には頷く者もいる

 

だが少数ながらもそんなクラスメートの反応に一部の者は深不快げに眉をひそめている

 

やがて、クラスメートの反応に我慢ができずに声をあげようとした、その時

 

「いい加減にしなさい!

 

 平気で人を貶める様な事をして恥ずかしくないんですか!?」

 

そんなクラスメートを叱りつける一人の女性

 

畑山 愛子

 

クラスとともにこの世界に転移された教職員である

 

「へーへー、さーせんさーせん

 

 ちょっとしたじゃれ合いっすよ」

 

「もっと心を込めて謝りなさい!

 

 いくら何でも檜山君のやっていることは目に余ります!!

 

 そんな調子でいつかひどい目に合うのは檜山君なんですよ」

 

そう言って檜山に叱りつける愛子だが

当の檜山はうっとおしそうに彼女の言葉を受け流している

 

すると

 

「そこまでにしてください畑山先生

 

 檜山はただ、みんなと同じようにしない南雲を注意しただけですよ」

 

「天之河君…!」

 

そう言って愛子の肩を叩いて彼女を止めた光輝

 

すると、彼は

 

「いい加減にしろ南雲!

 

 どうしてお前はそうも周りに迷惑しか書けないんだ!!

 

 檜山や畑山先生に申し訳ないだろう、速く謝れ!!!」

 

何とハジメのことを一方的に攻め立てていった

さらにはハジメを無理やり引っ張り出していき

檜山と愛子の前で頭を掴んで無理やり頭を下げさせていく

 

「ほら!

 

 しっかり心を込めて謝るんだ!!」

 

「があああ…!」

 

物凄く強い力で掴まれているのか

痛みのあまりに悲鳴のような声を漏らしていく

 

「あああ…!!!」

 

「やめて、光輝君!

 

 南雲君が痛がってるじゃない!!」

 

「すまない香織、いくら君の言う事でも聞けない…

 

 南雲は人に迷惑をかけたんだ

 だからしっかり謝罪をさせないといけない!

 

 悪いことをしたら誠意を見せる、人として当然の事だろう!!」

 

香織が慌てて止めようとするが光輝はいう事を聞かず

なおもハジメの頭を力強く下げさせていく、ハジメはとうとう声も上げられなくなる

 

すると、そこに

 

「はあ!」

 

「があ!」

 

そんな光輝に一発ぶちかまして

彼をひるませて、ハジメを救出するのは

 

「‥‥人と屏風は直ぐには立たず…

 

 そうやっていつまでも自分の正しさばっかり

 こだわっていたら、それこそやっていけないよ?

 

 天之河君」

 

東雲 渚沙

 

 

彼女はそう言って頭を痛そうに抑えるハジメを

安静にさせつつそう言い放ち、光輝の方を見る

 

「東雲さん、悪いけれどもこれは南雲自身の問題だ

 

 手を出すのはやめてもらえないか?」

 

「私にはむしろ手を出していたのは貴方の方にも思えたけど?

 

 いくら南雲君のことが気に入らないからって

 必要以上に痛めつけるのはいくら何でもやりすぎだよ」

 

「気に入らないって…

 

 俺はただ南雲にしっかりと…」

 

「正しいことを正しいと思う事自体は悪いことだとは言わない

 

 でも、正しさばっかり押し付けたってそれでどうにかなるわけでも無い!

 

 自分の正しさを無理やり相手に押し付ける貴方のやり方は‥‥間違ってる!!」

 

渚沙はハッキリ言うと光輝は打ちひしがれたようにその場に立ち尽くす

渚沙はそんな光輝に目もくれず、頭を押さえているハジメに付き添ってやる

 

「‥‥メルド団長…失礼ですが

 南雲君は今日の訓練は休ませてあげてください…

 

 いくら何でもこの状態で戦闘訓練は無理です…」

 

「…あ、ああ…わかった‥‥」

 

メルド団長の許可を得て

ハジメを連れてその場から出ていく渚沙

 

「南雲君…」

 

「‥‥ごめんなさい…

 

 先生がしっかりしていなかったばっかりに…」

 

「そんな…

 

 先生は何も悪くないですよ…」

 

渚沙に付き添われて退室していくハジメを心配そうに見つめる香織

ハジメを護れなかったどころか余計に火に油を注いだ結果になって

申し訳ない気持ちでいっぱいになって涙を浮かべて泣いていく愛子

 

そんな愛子を落ち着かせるように雫が彼女を諫めていた

 

「‥‥でもどうして南雲君…

 

 ステータスプレートが表示されなかったのかしら…

 

 檜山の言う通りって可能性も捨てきれないけれど

 メルドさん自身もあの現象には前例がないって言ってたし…」

 

「…‥まあ、それは今は置いておきましょ…

 

 それよりも今後はどうするのかよ、戦いのこともだけど

 南雲君、ただでさえ立場が悪っていうのにあの結果、もう

 彼がこの先どんな目にあってしまうのか想像に固くないしね…」

 

これからのハジメの待遇に最悪の予想をしていく二人の女子生徒

 

南野 姫奈

 

 

西宮 風香

 

 

二人がそんな話をしていると

 

「‥‥そんな事…そんなことはさせないですよ…

 

 私がそんなことは絶対にさせたりなんてしません…

 

 私は教師として生徒の味方であり

 守り抜かなくてはならないんです…

 

 その中にはもちろん、南雲君も入っています…

 

 ですから‥‥わたしが

 絶対に南雲君につらい思いはさせません…

 

 あの時、南雲君のために何もできなかったから…

 

 せめてこのくらいは…」

 

そう言って決意を内に秘める愛子なのだが

そんな彼女の決意をあざ笑うかのようなことがすぐ後に起こる

 

「その…愛子殿‥‥

 

 申し上げにくいのですが‥‥

 

 愛子殿にはここにいる者達とは

 別行動をとってもらうことになります‥‥」

 

「ふえ!?」

 

申し訳なさげにつぶやいたメルド団長から出た言葉は

まさにそんな愛子の決意をむげにするようなものであった

 

「そ、それはどうして…」

 

「愛子殿の天職は作農師と言うとても珍しい天職で

 さらには技能の方も戦闘では役には立ちませんが

 

 生産職でさらには技能も含めればこの国の食糧問題を

 一気に解決することが出来る可能性も秘めているのです‥‥

 

 ですからこれより、愛子殿には戦闘ではなく

 農地開拓の方に力を入れてほしいとのことで‥‥」

 

「そんな!

 

 生徒達がたたかいにいくというのに

 私だけが安全なところにいるなんてできません!」

 

「お気持ちは俺も同じです‥‥

 

 しかし、これは教会が決定したことです‥‥

 

 みなさんの処遇の方は、教会に一任されているので‥‥」

 

「そんな‥‥だからって…」

 

愛子は抗議をしていこうとする、しかし

 

「いいじゃないすか先生

 

 行ってあげてくださいよ!」

 

「そうっすよ、なんてったって愛ちゃん先生の技能が

 この世界の人達の気がを救うってことなんですから

 

 行ってあげてくださいよ」

 

檜山グループが愛子に行くように進めていく

 

しかし、彼等が愛子に行くように進めているのは

当然この世界の人間のためではない、愛子がいない方が

ハジメを陥れやすいためで、邪魔ものである愛子を追い払おうとしているのだ

 

愛子は勿論、香織や雫、姫奈、香織、他の一部の生徒も四人の意図に気づいている

 

愛子はもしも自分がいなくなって大切な生徒であるハジメのみにもしもの事があれば

そう考えるとどうしても思い切って決断をしていく事は出来ずに戸惑っている様子を見せる

 

すると、そんな彼女の様子に彼女の背中を押してやる一人の生徒が現れる

 

「安心してください、畑山先生!

 

 先生がいない分は俺がしっかり見ておきます

 ですから先生は安心して訓練を受けてください

 

 先生の力で、この世界の人々を救ってあげてください!」

 

それは光輝である

 

光輝の方は檜山達とは違い、この世界の人々のことをしっかり考えている

 

だが彼の言葉にも愛子は安心することは出来ない

いかんせん、ハジメのことを悪物のように扱っている

そんな彼に任せていたら、それこそハジメは余計に追い詰められるかもしれない

 

それゆえ、さらに渋ってしまうも愛子を見て

光輝は、それを単純に自分達を心配しての事だと考え

心配入らない、俺たちは大丈夫だと力強く話していく

 

すると、そんな様子にとうとう我慢できなかったのか

一人の女子生徒がたまらず飛び出し、声をあげていく

 

「いい加減にしなさいよ天之河、愛ちゃん先生が困ってるでしょ!」

 

園部 優花

 

 

渚沙や恵里に並ぶ、七大天使の一人に数えられる女子生徒

 

彼女はそう言って愛子の方に行って彼女に進言する

 

「愛ちゃん先生、先生のお気持ちはわかります…

 

 でも、ここは行ってください…」

 

「園部さん!?

 

 しかし…」

 

「下手に逆らったら向こうは何をしてくるかわかりません…

 

 もしも、愛ちゃん先生が要求を拒んだせいで向こうが私達に

 理不尽な要求でもして来たら、それこそ大変なことになります…

 

 南雲やクラスのことは、私に任せて下さい

 愛ちゃんはとにかく教会になるべく怪しまれないようにして…」

 

優花の真剣なまなざしを見て、愛子は静かに頷く

彼女は檜山達や光輝のように自分のためでもなく

ハジメや他のクラスメートの事も視野に入れて話している

 

なにより彼女もまた、ハジメのことを気遣っている数少ない人物の一人

 

愛子は優花の言葉を聞いて、今は向こうの要求をのむことに決めたのであった

 

「‥‥わかりました…

 

 不本意ですが、行ってまいります…

 

 くれぐれも、けがなどをしないように…」

 

「はい…」

 

そう言って愛子は教会の申し出を受けることにするのであった

 

「メルドさん…

 

 生徒達のことはよろしくお願いします…」

 

「分かりました‥‥」

 

そう言って愛子は迎えが舞っている方に向かって行くのであった

 

 

「…‥さあて、先生がいない分不安は残るが

 それでも俺たちは頑張って行かないとならない

 

 みんな、これから力を合わせて乗り越えていこう

 絶対にこの戦いに勝利して、みんなで無事に元の世界に帰るんだ!」

 

光輝がそう言って他のクラスメートに呼び掛けていくと

クラスメートの表情にはどこか安堵のような雰囲気が出ている

 

「‥‥愛ちゃん先生…

 

 南雲君にとって数少ない味方なのに…」

 

「そうね‥‥愛ちゃん先生がいなくなることで

 南雲君への避難が今まで異常に集中していくでしょうね…」

 

香織と雫はそれぞれこれからのことを心配していた

 

「でも、優花の意見も最もね…

 

 下手に断っていたらそれこそ

 私達が何をされるのかわかったものじゃないし…」

 

「優花ちゃんの判断があれでよかったのか…

 

 はっきり言うと、私達の方でもわからないし…」

 

姫奈と風香は考え込むようなしぐさを浮かべていく

 

「はあ…」

 

当人の優花の方も、何やら思いつめた表情を浮かべている

 

「優花」「優花っち」

 

そんな彼女に心配そうに話しかけていく二人の女子生徒

 

菅原 妙子

 

 

宮崎 奈々

 

 

二人は向こうの世界にいた時から優花とは仲が良く

いっしょにおしゃべりしたり、プライベートでもよく

一緒に出掛けていたりしているほどである、そんな二人なので

優花がそれなりに決断を下したものであると当然ながら感じていたのだ

 

「…奈々、妙子…

 

 ごめんね、心配かけちゃって」

 

「ううん、あの時の優花の判断は正しかったと思うよ…

 

 下手をしたら私達の身の安全も脅かされる可能性もあったわけだしね…」

 

「でも、やっぱり問題は‥」

 

奈々がそう言ってちらりとあるグループの方を見ていく

それはもちろん、今いるクラスメートの中でも特に問題視されている

 

檜山達であった

 

「そうね…

 

 タダでさえ、南雲の立場は悪いのに

 ステータスが表示されないっていう理由で

 殆どの奴らが南雲を無能だって蔑む反応を示していくでしょうね…

 

 愛ちゃん先生がいなくなったことで

 それこそあいつらは行動を起こしてくると思う…

 

 しっかり目を光らせておかないと、あいつらただでさえ

 自分の力におぼれてる感じするから何しでかすかわからないしね…」

 

優花はそう言って渚沙に連れられて退室したハジメの安否を考えている

 

「それにしても優花は本当に南雲が心配なんだね…」

 

「ええ、あいつにはいろいろと恩があるからね…」

 

「そう言えば優花っちは前に南雲っちに

 不良に絡まれたところを助けられたんだっけ‥?

 

 前に話したことあるよね」

 

奈々の言葉に優花はそうよ、と頷くと

妙子の方はにやにやと優花の方を見ている

 

「あによ、妙子…?

 

 ずいぶんと腹立つ笑顔をこっちに向けているのね…」

 

「い~や~?

 

 あの時から、本当に南雲のことを気にするようになったな~って思ってね…

 

 もしかして優花、あんた惚れたか~?」

 

妙子がからかい気味に言うと

 

「んな!?

 

 い、いいいいきなり何言い出してんのよ!?」

 

「わ-い、優花っち顔まっかー

 

 すっごくわかりやすーい」

 

赤面して動揺を見せていく優花に

さらに奈々の方も妙子に便乗していった

 

優花は同様のあまりあわあわと手を振りながら否定していく

 

「あっはっはっはっはっ…

 

 ごめんごめん、からかいすぎちゃった…」

 

「わたしの方もごめんね‥」

 

暫く三人で騒いでいると

流石にやりすぎたと思ったのか、二人の方から折れる

 

すると、二人は先ほどとうって

変わって真剣な表情になっていく

 

「私も協力するよ優花…

 

 優花は南雲君の事を愛ちゃん先生から託されたんだもん

 私も勿論、優花に協力するから、一緒に頑張ろう、ね?」

 

「もちろん、私も協力するから」

 

「二人共…」

 

親友である二人の真剣なまなざしに

優花はお礼を言いながら互いの手をがっちりとつかみ合ったのであった

 

さらに

 

「ねえ、雫ちゃん‥‥姫奈ちゃん…風香ちゃん‥‥…

 

 わたし、ずっと思ってたんだ‥‥本当に

 このままでいいのかなって…あの時からずっと思ってたんだ‥‥…

 

 私‥‥ずっとどうしたらいいのかなって…考えていたんだ 

 

 ねえ‥‥私は南雲君のために出来ることって…何なのかな?」

 

「香織…?」

 

親友のいつもとは違う雰囲気に少し驚いた様子を見せていく雫

 

香織がそう問いかけると

 

「‥‥まったく、あんたらしくないわね香織…

 

 以前のあんただったらそんなこと口にせずに

 すぐに行動に移してたじゃない、今まではそれが問題だけど…

 

 今こそ、行動で示すべきなんじゃないかしら?」

 

「どういう事…?」

 

姫奈の言葉に香織は首を傾げていく

 

「アンタもうすうす感じていると思うけれど

 はっきり言って今の南雲には味方が全くと言っていいほどいないわ

 

 今までかばってくれていた畑山先生も

 私達とは別行動をとることになってしまっているから

 ハジメ君のことを実質護ってあげるうえで一番頼れる人がいない…

 

 そういう時はどうしたらいいのか、もう答えは出ているようなものよ」

 

「どうしたらいいのかって…?」

 

「決まってるじゃない

 

 香織が南雲のことを護ってあげればいいのよ」

 

「‥‥え…?

 

 ええええ!?」

 

姫奈は香織にそう言って提案すると

香織は驚いたように声をあげるのだった

 

「そ、それは無理だよ…

 

 だって南雲君がそれを受けてくれるのか…」

 

「‥‥どうしてそう思ってんの?」

 

「‥‥そ、それは…その‥‥…」

 

香織がここまで踏み込めないのには訳があった

 

ハジメが学校中の人々に

忌み嫌われるようになった事件

その事件のせいで、ハジメの立場が

それこそ危うくなっていくのを感じ

 

香織は自分は最後までハジメの味方でいてあげようと

彼にそれこそ今まで以上に構うようなっていったのだが

 

やがてそれによってハジメはたまりにたまった感情を噴出させた

 

いつ自分が香織に構ってほしいと頼んだ、香織が自分に構いすぎるから

自分がこんな目に合ったんだろう、はっきり言って迷惑以外の何者でもない

 

本当に自分のことを考えてくれているのなら、もう自分に構わないでくれ

 

その言葉を聞いて、香織はショックを受けた

自分はただハジメと仲良くなりたかっただけなのに

それが簡潔的にハジメの事を苦しめていたという事実に

 

それを受けて一時は不登校になりかけ

学校をやめるとまで言いだすまでになった

 

だが、自分の恋を応援してくれた雫や母、薫子の説得もあって

今はハジメとは必要最低限のかかわりしか持たないようにしつつ

ハジメのもとに降りかかっていく仕打ちから、何とかして彼のことを

ハジメを助けようと今まで行動してきた、しかしそれでも彼との関係は

変わることはなく、段々と自分に自信を無くしてしまっていたのだ

 

故に香織は今も、決断に迷っている

だがそんな彼女の様子を見て、姫奈は言った

 

「…‥なんであんたはそうやって自分を責めるのよ

 

 だってあんたは何にも悪い事なんてしてないじゃない」

 

「え…?」

 

「別に好きな人と仲良くなりたい、そう思うのは悪い事じゃないでしょ?

 

 ハジメ君があんな目に合ってるのは

 そもそも檜山達の下らない動機のせいであって

 アンタは何も非なんてないじゃない、むしろそれで

 いつまでもうじうじしていることの方が一番駄目なことよ!

 

 本当に彼のことが好きなら、彼の事を護ってあげたいなら

 いつまでもうじうじしないで、行動で示してあげなさいよ!!

 

 たとえ迷惑だって思われても、突き放されても

 それでもこういう時くらい我儘になりなさいよ!!!」

 

姫奈の言葉を聞いて、しばらく呆気に取られていた香織だったが

姫奈の最後の言葉を聞いて、ぐっと拳をつくり始めていき、姫奈を見る

 

「‥‥そうだよね、姫奈ちゃん…

 

 こういう時くらい

 我儘にならないとだめだよね…

 

 確かにハジメ君に拒絶されるのはショックだけど…

 

 だからってずっと子のままだっていうのも嫌だから!」

 

そう言って決意を新たにしていく香織

その力強い瞳には迷いは感じられることは無い

 

姫奈もそれを感じていたので

笑みを浮かべて香織を見ている

 

さらには

 

「香織、もちろん私も協力するわ」

 

「絶対に南雲君やみんなと一緒に

 この戦いを乗り切って、私達のいた元の世界に帰ろう!」

 

「雫ちゃん‥‥風香ちゃん…」

 

親友である雫や風香の言葉を受けて

頼もしさを感じた香織は二人と姫奈とともに決意を秘める

 

それぞれが、それぞれの決意を秘めていく

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

そのころ、光輝に乱暴されたハジメを

彼の自室に連れて言って休ませてやった渚沙

 

その後、ハジメをゆっくり寝かしつけておこうと考え

渚沙は一度、彼の部屋を出ていき、その場に立ち止まる

 

「‥‥まったく…

 

 どこの世界にいても、どうして

 面倒な事しかもってこれないのか…」

 

そう、自分達がさっきまでいた訓練場の方を見て呟いた

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。