世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
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水妖精の宿
この宿は、かつてウルが湖畔の町と呼ばれる由来
ウルティア湖の要請伝説をもとに名付けられた場所である
宿を営んでいると同時に、飲食店も兼任しているために食堂スペースがある
そこのスペースの殆どをしめているのは
鎧を着て武装した数人の男性と何人かの少年少女
彼女らは、それぞれに出されている料理を堪能していたが
その中で一人の女性が、何処か浮かない様子を見せていた
「はあ‥‥今日も手掛かりなし…
一体何処に行ってしまったのでしょうか…」
ため息交じりにそう呟いていく一人の女性
畑山 愛子
この世界に、クラスメイトとともに召喚された
彼彼女がかようとある高校の社会科教師、現在は
天職の作農師の力を使って農地開拓の旅に出ている
そんな女性に、声をかけていくのは…
「元気を出してくださいよ、愛ちゃん先生
まだわかっていない事の方が多いんですから
あんまり悪い方向に思い詰めないでください」
「そうですよ、部屋だって荒らされていないんですから
もしかしたらどっかに行ってる可能性だってあるんです
もしかしたら、そのうちひょっこり現れるかもしれないって」
「そうだぞ、愛子
悪い事ばかり考えていては、それこそ
大事なことや良からぬことを見落としかねないんだ
それに、彼は優れた術師なんだろ?
だったら不測の事態くらい自分でどうにかできるさ
愛子がそれを信じてあげないでどうするんだ、まずは食べよう
問題はそこからだ」
愛子の旅に同伴しているクラスメイト
通称、愛ちゃん護衛隊、その一人である
園部 優花
玉井 淳史
教会の命令で、愛子の旅に同伴している
教会お抱えの神殿騎士、デビット・ザーラー
それぞれが愛子に言葉を投げかけていく、それを聞いて
「そうですね、先生が生徒を信じてあげないといけないですよね…」
愛子は不意に、一人の生徒の顔を思い浮かべていく
それは、向こうの世界でいわれのない罪を着せられてしまい
学校にも、家庭にも居場所を無くしてしまった一人の少年
だが、愛子はこの世界に来て、その少年と
その少年の数少ない味方の少女、その二人が
教会の手によって、炎の中にへと消えていってしまった
この出来事は、愛子の心に深い傷を負わせて行き
今でも出ていって仕舞った生徒たちの事が気がかりでしょうがなかった
そのきっかけはやはり、王国を襲った大寒波
それを引き起こした亜人族の少女、愛子もまた
その時に、国民の避難誘導に当たっていたので、それなりに
全容は把握している、その危機を救ったのは聖徒という力に目覚めた
一人の少女による奮闘である
その少女もまた、彼女の生徒であり
気にかけるべき存在である、しかし彼女達が
王国から出て行ったのを引き留めることはしなかった
いいや、出来なかったというのが正しいのかもしれない
彼女達の心情も、理解できてしまっているから…
南野 姫奈
元の世界のクラス委員で、例の事件の被害者
白崎 香織
ある意味で、彼を貶める原因である少女
八重樫 雫
香織の幼なじみで、クラスのまとめ役を担っていた少女
西宮 風香
姫奈の親友で、運動部のエースを務めていた少女
北浦 纏
彼とともに処刑された少女とは幼なじみで
お互いに気の置けない中であった、少女
この五人は、彼と彼女の処刑とともに
王国と教会に見切りを付けて、王国を出向した
愛子は、彼女らの無事を祈りながらも
愛子は戦いへの参加を拒んだクラスメイト
その無事の保障のために、愛子は教会の指示で国中を渡り歩いていた
「(‥‥いいえ、こんなんじゃだめです!
私は先生です、先生である私が
しっかり生徒を信じてあげないと!!)」
愛子は、気合を入れ直すようにパンパンと
自分の貌を叩いていき、深呼吸をしていく
「それでは、本日の晩御飯です
しっかり食べて、明日に備えましょう!」
愛子がそう言うと、愛ちゃん親衛隊の面々は
はーい、と素直に返事をしていく、そんなつもりで
言ったわけではないためにちょっと困惑してしまうが
生徒たちの元気な様子に、自然と笑みの方を浮かべていく
「うん、おいしい!
まさか異世界に来てカレーが食べられるなんて」
「カレーって言うかシチューだよな色合い的には
まあ味はカレーだけど…」
優花と淳史は、ニルシッシルに舌鼓を打っている
「うーん、この天丼もいけるよな
衣がサックサクでこんなのたべた事ないぜ」
「食べたことないって、言っておくけれど
本格的な天丼とほか弁の天丼を同じにとらえないでよね」
「うーん、俺はやっぱり
このチャーハンもどき一択だな」
「ギョーザっぽいのと一緒に出されるのが妙に親近感あるよね‥
もしかして、このメニュー考えた人、地球人?」
それぞれがそれぞれの料理を口にしていくと
そこに、六十代くらいの口ひげが立派な男性が訪れる
「皆様、本日のお食事の方はいかがでしょうか?」
「あ、オーナーさん」
彼は料理の感想を訪ねていく
「はい、とてもおいしいですよ」
愛子が代表して、味の感想を述べていく
しかし、それに対して
オーナーの表情はどこか浮かない様子であった
「ありがとうございます、ですが申し訳ありません
香辛料を使ったお料理は、本日お出しできるもので最後になります」
「ええ!?
それっていったいどういう事ですか!?」
オーナーの言葉を聴いて、一同は目を見開いていく
特にカレーが大好きな優花はこの世界のカレー料理
ニルシッシルを食べられなくなると聞いて、驚きの声を上げていく
「それはどうしてなのですか!?」
「単純な理由です、もう材料の在庫が無いのです
本来でしたら、このようなことが無いように材料は
定期的に調達をしているのですが、実は最近は流通ルートが
変更になってしまい、その対応で物流が罷り通らなくなってしまい
そのせいで、材料が思うように届かなくなってしまったのです…」
「物流ルートが変わった?
それはどうして?」
愛子は、訪ねていく
「…実はこの数カ月で、そのルートにおいて
様々に不可解な減少が起こってしまったです
ライセン大峡谷が謎の黒い炎に包まれてしまって
それで仕方なく、ハルツィナ樹海のルートを使っているのですが
そうなってしまうと、ここからどうしても遠くなってしまい
その姓で材料も状態が悪くなってしまう者も多く、それで材料が
そろわなくなってしまい、お客様の健康も考えると、無視のできる件ではなくって…」
「…わかります、うちも実家が飲食店なので
そう言ったところは、本当に注意していましたから…」
オーナーの話しを聴いて、優花も同意する
彼女の実家もウィステリアという洋食店を営んでいるので
材料の品質や衛生面などには、特に気を使っている
彼女がギャルっぽい見た目に反して、メイクなどが
控えめなのは、そう言った事情があるからである
最も、元がいいがゆえに彼女も
七大天使の一人に数えられているのだが
「そうなってくると、ほかにも材料とか
何か、別の流通ルートなんかがあったらいいんじゃ」
「それは…」
淳史がそう言うと、オーナーは気まずそうに
デビット達神殿騎士の方に、目線を向けていく
「…もちろん、それは検討していますが…
何分、香辛料は希少なものなので…」
「そういえば、このウルの町でも
この宿以外に香辛料を使ったお店は
ほとんどないんでしたね」
かつて香辛料は、世界でも希少なものとされてた
特に湖沼が広まった時には、それをめぐって戦争が起こり
多くの国々が滅ぼされてしまう事になったと、元の世界でも伝えられている
この世界は、元の世界よりも文明レベルが低い分
そう言った生産技術も芳しく、香辛料もとても希少なのだろう
「そうですか…
でしたら、私達に何か
手伝えるような事があれば
私のこの力で、その問題を
解決していく事が出来れば」
「おお、それはぜひとも
豊穣の女神様と呼ばれている愛子様ならば
すぐにでも、この問題を解決していただけるのですね」
「善処します、それとそ呼び方はやめて下さい…
女神なんて呼ばれる程、大したことはしていませんよ」
「何言ってるのよ、愛ちゃん先生!
愛ちゃん先生が頑張ってくれているおかげで
これまでにいくつもの町が食糧問題から解放されたのよ!」
「そうだよ、愛ちゃん先生はすっごい事してんだ
もっと誇るべきだって、俺も思うぜ!」
「そうだぞ、そう言った謙虚な姿勢ももちろん
愛子の素晴らしい所ではあるが、同時に自身が無いように
相手には感じ取られてしまう、愛子はもっと自分の力に自信を持て
愛子が、豊穣の女神と呼ばれているのが、その功績の証だ」
優花と淳史、デビットの三人が愛子に激を与えていく
余りの勢いに、愛子は少し引き気味になってしまう
「‥‥あ、ありがとうございます
私の力で救われている人がいるのであれば、それは…
それは本当に嬉しいです」
愛子は、笑みを浮かべていくが
その表情にはどこかやりきれなさが感じられる
デビットや淳史は、愛子の笑顔を見て
安堵の様子を見せていくが、優花のみがそれを見抜いていた
そんな時であった
「‥‥めんね、か…」
「‥‥くちゃん、わ…」
「‥‥じゃ、わ…」
食道の外から、何か話し声が聞こえて来た
「うん、どうした?」
「ああ、どうやら新しいお客様がいらっしゃっている様で…
すみません、そちらの対応の方に向かわせていただきます」
そう言って、新たにチェックインしたお客の対応に向かったオーナー
「新しいお客さんか…
いったいどんな奴なんだろうな?」
「そうだな、可愛い女の子とかだったらいいよな?」
「あんた達ねえ…」
どんなお客さんか気になってきたのか
不意にその話題で盛り上がっていく一行
一方の神殿騎士、特にデビットは
警戒した様子で食堂の入り口を睨みつける
「(もしも、愛子に危害を加える様なら‥‥
その時はっ!)」
そんな三者三様で盛り上がる一行
その時、入ってきたのは…
「‥‥それじゃあ、私達は席を取っておきましょっか」
「そうね、それからあとで雫の分の食事を運んでもらえるか
聞いておいた方がいいかも、出来れば昇華がいい奴をね」
「私は、お米のお料理にします
皆さんは何かおすすめはありますか?
私、それにします」
「まあ、それだったら席についてから決めよ?
私も何があるのか、ちょっと楽しみなんだ」
四人の少女達であった
不意に見えた顔を見て
愛子は目を見開いていった
何故なら…
「え…?」
その顔には、見覚えがあったからだ
それは、今から四か月前に二人の生徒が
教会によっていわれのない罪を着せられたことで
クラスメイトや多くの国民が見守っていった中で
炎の中に消えて行った…」
その後、そんな二人へのあんまりな態度に
クラスメイトや教会、王国を見限っていき
王国を去っていった、五人の少女達…
愛子は、それを聞いて思わず
扉を破るほどの勢いで飛び出して行った
「あ、あの!
ちょっと待ってください!!」
その声に驚いた面々は、そっちの方に目を向ける
お互いの目に映ったのは…
「‥‥南野さん、西宮さん…白崎さん!」
「畑山先生!?」
「先生!?」
「愛ちゃん先生!?」
この世界にともに召喚された恩師と
四か月前に王国を飛び出した、三人の少女たちであった…
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こうして、現在
お互いに邂逅を果たしたものの
呆然とお互いの顔を見詰めていき
僅かな静粛が立ち込めていく
その沈黙を破ったのは…
「南野さん、ですよね…
それに西宮さんに白崎さんも…
良かった、本当に無事でよかったです…」
愛子は涙を浮かべながら、三人の無事を心から喜んでいく
一方の三人も、そんな愛子の様子を見て、少し毒気を抜かれて
不思議と安心感という者を覚えていき、自然に落ち着きを取り戻す
「‥‥お久し振りです、先生…
先生の方もお代わりない様でよかったです」
姫奈が開口一番にそう言葉を放っていく
「あの、皆さん?
そちらの方はお知り合いですか?」
一方で、少し蚊帳の外になってしまった感が
少し寂しく感じていったのか、一行に愛子の事を訪ねるラナ
「うん、そうだよ!
この人は畑山 愛子先生
私達と一緒にこの世界に召喚されたんだ」
「先生、ご紹介します
こちら、ラナ・ハウリアさんです
私達が冒険者として活動していた時に
出会ってから一緒に旅をしているんです」
「あ、えーっとその‥‥
よろしくお願いします」
ラナは、いきなり振られたので
取りあえず、挨拶の方をしていく事にする
「こちらこそよろしくお願いします」
愛子も、それに挨拶で返していく
「‥‥取りあえず、席に付かせてくれる?
まずはおなかを埋めたいのよね」
姫奈のその言葉に、ほかの三人も同意する
すると…
「あの、よければ同席しませんか?
せっかくの再会ですし、色々と
お話を聞かせてもらえないでしょうか?」
愛子が、提案をしていく
四人は特に断る理由もないので
それに同意し、愛子の案内を受けて
彼女達の席に同席させてもらうことになったのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
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そこに入らせてもらうと、そこには
何人かの顔ぶれが目に映った、それに反応したのは
「姫奈、それに風香も、香織も
久しぶりね」
女子生徒の一人であった
「優花!
久しぶりだね、そう言えば
愛ちゃん先生の旅に同行するって
言ってたっけ、よかった元気そうで」
「風香も相変わらず元気そうね、ちょっと安心した」
「妙子ちゃんに奈々ちゃんも、久しぶりだね」
「うん、香織っちも皆も元気そうでよかった」
園部 優花とその友人である菅原 妙子と宮崎 奈々
彼女達とは、王国を出る前から交流があったので
しばらくぶりの再会を喜びあっていく双方、その一方…
「‥‥ところで、なんでそこに玉井君達がいるのかしら?」
男子生徒の三人の方には、少し冷たい視線を向けていく
「ええ、愛ちゃん先生の仕事を手伝いたいっていうから
愛ちゃん先生の許可をもらって一緒に旅をさせてもらっているの」
「へえ、そうなんだ…
でも、大丈夫なの?」
「まあ、今はまだね‥
でも私達と一緒に愛ちゃん先生の仕事は
しっかり手伝ってはくれているから、そこは
他のみんなよりは、信頼は出来る方だけれども‥」
「ふーん…」
妙子や奈々の話を聞いても、未だに
淳史たちへ疑惑の視線の方を向けていく
「あ、あのさ…」
それで、恐る恐る淳史が口を開いていく
「何…?」
「そ、その悪かった…
お前らが俺たちの事を嫌ってるのは理解してる
それが俺達の方に原因があるんだって言う事ももちろん…」
淳史は、自分なりに言葉を紡いでいく
「でも、俺たちだってあの時
南雲と東雲に助けられたんだ…
あの時の南雲はすごいって思った
今の今まで自分の事を虐げて来た俺達の事を
あんな風に一生懸命になって守ってくれていれ
あの時の南雲は、なんだか背中がでかいって感じたんだ…
俺は、ずっとあいつのことを女に手を出したくせに
その罪を認めなかった最低野郎だって思ってた、けれど…
俺たちは間違いなく、あいつに救われた
だから俺も、あいつの背中に少しでも近づきたいって思った…
だから!」
淳史が、そこまで言うと食堂にパァン、と渇いた音が響いた…
それは…
淳史が、頬を叩かれた音
その彼の頬を叩いたのは…
「‥‥ふざけないでくれる…?
ハジメ君に救われた?
ハジメ君みたいになりたい?
それじゃあなんで、何であの時
ハジメ君と渚沙ちゃんが処刑されるのを…
二人が炎の中に消えていくのを止めなかったの!?
それが本心だっていうんなら、何でハジメ君を
助けようとしなかったの、何でハジメ君の事を見捨てたの!?
なんで、あの時ハジメ君の味方をしてくれなかったの!?」
香織であった
香織は淳史に掴みかかって
激しく、責め立てていった
「それは…」
「あの時のハジメ君が、渚沙ちゃんが
どんなにつらかったか、どんなに苦しかったか…
考えたことある?
どんなに周りに虐げられても、それでも
必死に皆に認められたくって頑張っていって…
それが、それがやっとの想いで叶いそうになったのに…
こんなふうに返されて、挙句には渚沙ちゃんまで
自分の傍に居たせいで、あんなボロボロにされて…
それなのに、貴方達はそんなハジメ君の気持ちを
理解しようとしないどころか、踏みにじられてしまって…
それなのに、そんな風にとってつけたような答えなんて…
私は聴きたくなんてない!」
香織は、涙を浮かべながら激しく激高していく
「‥‥私もね、出来る事だったらハジメ君を助けたかった
ハジメ君は、私のせいであんな目に遭ったんだもん、だから
少しでもそんなハジメ君を助けられたらって、そう思ってた…
それなのに‥‥それなのに…」
「香織…」
優花が、顔を俯かせて拳を作ってプルプルと体を振るわせていく香織
そんな彼女を落ち着かせようとして、香織の名前を呟くように呼んでいく
しかし…
「っ!」
香織は、食堂を飛び出していってしまう
「白崎さん…」
淳史は、そんな香織の様子に
どうしたらいいのか、わからない様子ながらも
思いつめた様子で、飛び出した香織の背中を見詰めていく
「‥‥玉井君、貴方が貴方なりに
南雲君のことに思うことがあるのは理解できた…
でもね、そんな風に取ってつけたような言い方で
アンタがしてきたことが、許してもらえるって思ってるなら…
私は、アンタの事、絶対に認めないから!」
「私もよ!
軽はずみに、南雲君の事を口にしないでくれる
彼のことで、一番に傷ついているのは香織なんだから!!」
姫奈と風香も、毅然と言い放つ
「‥‥先生、ごめんなさい…
せっかく誘ってくれたところ悪いけれど
もう食事はいいわ、とてもそんな気分にはなれないし…」
「い、いえ…
私の方こそ、ごめんなさい
軽はずみな事をしてしまって…」
姫奈がそう言うと、愛子は申し訳なさそうにしていく
姫奈達が、食堂の方を後にしようと
出入口の方に向かって歩いて行こうとした
その時であった…
姫奈の眼前に、一本の剣が突きつけられる
「待て、不届き者
悪いが、お前達をここから逃がすわけにはいかん!」
鎧を着こんだ男性が、姫奈達を逃がすまいと
剣を戦闘にいる姫奈の方に突き付けて止める
「‥‥誰よ、アンタ…
名乗りもしないでいきなりこんなことして
随分と非常識なことをするのね」
「黙れ、神の使命を果たさずに
逃げ出した不届き者が何をぬかす」
姫奈は、ただでさえ香織のことで気が立っているのに
この男性の物言いに、さらに苛立ちを募らせていく様子を見せていく
「やめてください、デビットさん!」
「すまない愛子、だがお前も教会から聞いているはずだ
こいつらは、エヒト様に召喚され我々の為に戦うという
使命と力を与えられながら、それを放棄して逃げ出したのだ
神に与えられた使命を果たす責任から逃げ出した、不届き者だ!」
愛子は男性、デビットを必死に止めようとするが
デビットはそれを聞かずに、姫奈の方に突っかかろうとする
「やめてください!
ここで騒いだら、お店の
宿の皆さんに迷惑がかかるでしょう!?
いい大人が、どうしてそんな事も分からないんですか!?」
デビットのやり方に、ラナの方も怒りが込みあがったのか
騒いだら宿の人達に迷惑が掛かると、必死に注意をしていく
しかし
「貴様こそ、自分の立場が分かっていないのか
貴様の存在自体が、我々に不快を与えている
それが理解できていないようだな、この薄汚い獣風情が!」
デビットは、明らかにラナに対して
嫌悪感を隠そうとせずに、唾を吐きかける
そんな様子で、ラナに敵意の込めた視線を見せていく
「やめてくださいデビットさん!
なんでそんな言い方をするんですか!?」
「なんで、私は本当の事を言っているんだ
亜人は神から見放された、下等な種族
そんな奴が我らに意見するなど、おこがましい事だ!」
デビットは段々と、愛子の制止を聞かずにヒートアップしていく
「意見って、ラナさんはあくまで
お店に迷惑がかかるって注意をしているだけじゃないですか!?」
「それがおこがましいと言っているんだ!
魔力を持たぬ獣風情が、偉そうに礼儀を宣うな!!」
デビットはぎろりと、ラナを睨みつける
だがラナはそんなデビットにひるむことなく
彼の事を睨みつけていく
「なんだ貴様、その目は
獣が誇り高き神殿騎士に逆らうか!?」
デビットはそんなラナに、さらなる怒りを向けていく
「誇り高き神殿騎士?
貴女の言う誇りって言うのは、ちょっと
注意された程度で剣を抜くような小さいものなんですね
教会の事は、姫奈さん達に少し聞き及んだだけで
全部を知っているわけではありませんが、貴方を見ていると
器がしれますね」
ラナはそんなデビットに、怒りを通り越して呆れの様子を見せていく
それを聞いたデビットは…
「この下等生物があああーーっ!!」
ラナの言葉を聴いて、デビットは
彼女に向かって剣を振るっていった
しかし
「がはっ!!」
そんなデビットの鳩尾に一撃を加えた風香
デビットは、その一撃で見事に気を失っていく
「‥‥全く、こんなことで斬りにかかるなんて
ラナさんの言い分を認めているような物じゃない…
全く、小さな男だね」
床に倒れていく、デビットを呆れた様子で言う
「‥‥オーナーさん、食事だけど
お部屋に運んでもらうことは出来ますか?」
「はい、お持ち帰り用でしたらすぐに」
「じゃあ、お願いします
もうとても、ここで食事をする気は起こらないので…」
姫奈は、愛子たちの方に目を向ける
それを聞いて、愛子や優花たちももちろん
淳史たち男子組も申し訳なさそうにしていく…
騎士団の方は、一人は倒れたデビットの介抱に勤しみ
ほかの二人は、明らかに姫奈達に敵愾心を込めた視線を向ける
「貴方達に一つ言っておくわ
私達はここには依頼のためにきたの
貴女達とは関わらないし、関わってほしいとも思わない
今回の件が終わったら貴方達とはお別れ、そういう事だから」
そう言って、食堂から去っていく一行
「南野さん…」
愛子は、そんな彼女達の背中を心配そうに見つめて行くのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
部屋までの道中
「ラナさん、落ち込まないで
悲しいけれども、あれが外の世界の常識なのよ
気にしていったら、キリなんて無いわよ」
姫奈が、どこか元気のないラナに言葉を投げかけて行く
「‥わかっています、でも
私のせいで、せっかくの再会に
水を差してしまう事になってしまって‥‥」
「先に噛みついてきたのは、向こうよ
何でもかんでも自分のせいだって
抱え込んでたら、キリが無いわよ
それに、正しかったのはラナさんよ
少なくとも、あの男に対してはね…」
風香はラナに言う
「‥‥それにしても、まさか玉井君達も
畑山先生の旅に同行していたなんてね…」
「そうだね…」
姫奈と風香は、愛子の旅に
玉井たちが同行している事に驚きを見せていた
「あの、あの方たちが前に話してくれた‥‥」
ラナがおそるおそる訪ねていくと…
「ええ、私達と同じくこの世界に召喚されたクラスメイトよ…」
「‥それじゃあ、あの人たちは‥‥」
「女子のみんなは違うわ、あの達は
南雲君の事を気にかけてくれていたんだもの…
でも、あの男の子たちは別、あいつらも
向こうにいたときは、彼の噂を鵜呑みにして
南雲君を虐めていたんだよ」
ラナに簡潔に説明していく
「‥とても、そんな風には見えませんでしたけれど‥‥」
「少なくとも、今は少しマシになっている位よ…
でも、だからってそんな簡単に受け入れられるわけないじゃない…」
姫奈は苦々しげに呟いていく
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
向こうの世界にいたときの事
放課後、一人の男子生徒が
いそいそと帰りの準備をしていた
しかし、そんな彼のもとに
四人の男子生徒が近づいてくると
「おい、南雲!
お前なに帰ろうとしてんだよ?」
「そうだよ、お前…
まさかとは思うけれど
掃除せずに帰る気なのかよ?」
そう言って、彼に悪意を込めた表情を浮かべながら言い放つ
「掃除って…
そもそも、今日の掃除当番って
確か、玉井君と三浦さんじゃないn…」
ハジメがそこまで言おうとすると、彼に向かって水がかけられた
「うぜんだよ、犯罪者!
本来だったらてめえみてえなくそ野郎が
こんなところにいて言い訳がねえんだよ
その所わかってねえ見てえだから
俺たちでわからせてやってんだよ
いいからさっさとやれ
それがいやだったらさっさと学校やめろ!
お前みたいのがいるせいで、学校の空気が悪く何だよ!!」
南雲の胸倉を乱暴につかんで、ハジメに脅迫まがいの事を言い放つ
「そんなの…僕のせいじゃないだろ…
僕はただ…」
「うっぜえな、口で言っても
分かんねえんだったら、身体で教えてやるよ!」
そう言って、ハジメの貌に拳を振るおうとしたそこに…
「やめなさい、あんた達!」
そんな男子生徒に、呼びかけるのは姫奈であった
「南野…」
「あんた達、ちょっと様子を見に来たら…
一体何をやっているの」
姫奈は、ずかずかと三人に歩み寄っていく
「玉井君、貴方今日の掃除当番は
貴女と三浦さんでしょ、それだったら
早く道具を出して、掃除の方をすませなさい
出ないといつまでたっても終わらないでしょう!」
「なんだよ、南野…
なんで南雲の味方をするんだよ
そもそも、こいつにひどい目に遭わされたのは
お前だろ、なのになんでこんな奴の事を庇うんだよ!」
姫奈の言葉に、玉井は言い返していく
「私が言いたいのは、貴方がやる事をやらずに
それを誰かに押し付けて行こうとしていることが許せないの!
いいから準備をしなさい、三浦さんももうすぐ戻って来るわ
相川君も仁村君も、ここで油を売ってるんだったらさっさと帰りなさい!!」
「なんでだよ、何でこんな奴の味方が出来んだよ
こいつは、みんなが真面目にやってる中で居眠りしてて
皆がどれだけ、こいつに迷惑をかけたか…」
玉井は必死に弁明する
「今、迷惑をかけているのは貴方でしょ!
今日の掃除当番は貴方なんだから
貴女がその責任をしっかり果たしなさいって言ってるの!!
わかったんなら、準備をしなさい!!!」
しかし、身勝手な言い分は姫奈にあっさりと切られてしまった
相川と仁村は、罰が悪そうに教室を後にしていく
「…いい気になんなよ」
玉井は小声で、ハジメに吐き捨てた
「南雲君、大丈夫?
っ!」
姫奈は、玉井たちに絡まれていたハジメを見やる
先ほど玉井たちにお茶を掛けられてしまったせいで
顔や制服はもちろん、鞄や教科書にまで及んでいた
余りの事に、姫奈は何も言えなかった
「南雲k…」
「っ!」
姫奈の言葉を振り切る様に
ハジメは、濡れた教科書の入った
鞄を抱えながら、教室を出て行ってしまう
姫奈は、そんな彼の様子を心配そうに見つめていた
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「‥‥っ!」
不意に、ある時の出来事が脳裏に浮かび
不意に怒りが込みあがってきている様子を見せる
「姫奈さん‥‥」
「‥‥ごめんなさい…
とにかく部屋に戻りましょう
雫や香織の事が心配だしね」
そう言って、鍵に書かれている部屋に向かい
先に戻っているであろう雫や纏の元に向かって行く
そして、部屋について入っていくと
そこにはベッドから体を起こしている雫と
その雫に付き添っている、纏の姿が先に映る
「姫奈さん…
先ほど、香織さんが戻ってきました
愛子先生が、来ていたそうですね」
纏が、恐る恐る訪ねていく
「ええ…
優花や妙子に奈々もいたわ…」
「そっか…
元気にしてた?」
雫も訪ねていく
「ええ、ただちょっとね…」
風香と姫奈が、食堂での出来事を話していった
「そっか…
玉井君達もいたのね…
それでどうだったの?」
「そうね、少なくとも南雲君のことは
彼らなりに考えを改めているのは分かった…
でも、だからってそんな簡単にあいつらを
認めるなんてことは出来ないし、何よりもあいつらは
私達がどういった気持ちでいるのか、理解しようともしてない…
少なくとも、あいつらを簡単には認めてやる気はないわ」
姫奈は言い切る
「‥‥でも、せっかくの愛子先生のご厚意を
無下にしてしてしまったような気もしますね…」
纏は言う
「‥‥そうね、それについては
後で私の方から話しをしておくわ…
それに、玉井君達も彼らなりに
あの時の南雲の事は認めているみたいだし…
ただ、それよりも許せないのは神殿騎士の奴よ」
姫奈は言う
「神殿騎士って確か…
教会お抱えの騎士団よね
そんな人たちも来ていたの!?」
「ええ、おそらく先生の懐柔と監視が目的でしょうね…
先生は私達の為に奮闘してくれた事、教会も知ってると思うし…」
「ええ、正直に言うとあんなのが教会騎士だなんて
見ただけで、考えの小ささが感じられますよ、全く‥‥」
ラナは、そこまで言うと不意に黙り込んでいく
「‥‥どうしたの、ラナさん?」
「‥いいえ、わかってはいたはずなんです
外の世界の人達全員が、あんなのじゃないって‥‥
わかっていたんですけれど、やっぱり目の前で
ハッキリと言われてしまったのが、やっぱりショックで‥‥
私の耳って、気味が悪いんでしょうか?」
「そんなことないわよ
むしろ、ラナさんの耳は可愛いと思う」
先ほど、神殿騎士に言われたことがショックだったようで
不意に酷評された自身のうさ耳に触れながら呟いていった
「皆さんは、どう思います?
私の耳‥‥」
「ど、どうってもちろん
可愛いとは思うけれども…」
「でしょうね、だって姫奈
ラナさんが寝ているときに
ラナさんの耳を、触ろうとしてたし…」
風香が口元を手で抑えながら答えていく
「んな!?
貴女やっぱりあの時…」
「別に隠すことないじゃない
いいじゃない、女の子らしくって
私は可愛いと思うけれどな、そんな姫奈も…」
赤面しながら、風香に言い負かされて行く姫奈
「姫奈ってかわいいものが好きなんだ…
意外…」
「そういう雫ちゃんも、人のことは言えないでしょ
私、知ってるんだよ、雫ちゃん寝るときにラナさんの耳を
顔に付けて、うっとりした表情を浮かべていたのを…」
姫奈の意外な一面に驚かされたが
そこにいつの間にかいた香織がカミングアウトする
「「「へえ~」」」
姫奈と風香、纏はにやにやと雫の方を見る
「も、もう!
そんな笑みを浮かべながら見ないでよ、全く…」
「ウフフ」
照れくさそうにしていく雫
そんな様子に自然と笑みを浮かべていくラナ
「‥‥姫奈ちゃんに風香ちゃん
その、ごめんなさい!
せっかくの食事だったのに
私のせいで食べられなくなってしまって…」
ひとしきり笑い合っていくと、香織は先ほどの事を謝っていく
「‥‥もういいわよ、それに
香織の気持ちも分からなくもないしね…」
「でも、玉井君達も南雲君のことは
本当に後悔しているみたいだし、それに
優花達だって玉井君達の同行を許してる…
という事は、ハジメ君への後悔は本物だと思う
そうでないと、優花は絶対に愛ちゃん先生の旅に
同行させていく事はないと思うし、だから少しずつでいいから
玉井君達の事を見ていてあげたらどうかな?
認めるかどうかは、慌てて決める事じゃないし
それにどの道、依頼が終わったらお別れだしね…」
風香がそれなりにアドバイスを送っていく
「‥‥うん…」
香織は、一旦は了承する
「でも、食事の方はどうするんですか?」
「ええ、それについてはここのご主人が
お持ち帰り用に詰めたものを用意してくれるって
だから、食事の心配はしなくていいの
今はしっかり食べて、しっかり寝て
明日に備えておきましょう、明日は夜明け前に出るからね」
「え!?
そんなに早く!?」
姫奈の提示した起床時間に、目を見開く風香
「イルワさんはああいってたけれど
やっぱり、生きて帰ってきてくれた方がいいじゃない
恩を売れるけれども、やっぱりその方がいいと思うしね…」
「‥‥そうだね」
姫奈の言葉に香織は強くうなづく
「‥‥それで、明日早速
ウィル・クデタの捜索に行くわ…
向かうのは私と風香と、ラナさんと纏…
雫は傷の調子はどうかしら?」
姫奈は、雫に傷の調子を訪ねていく
それに対して
「‥‥ごめんなさい、今は落ち着いてるけれど
それでも満足に動けることはまだ無理みたい…」
「そっか…
じゃあ、香織
雫に付いていてあげて…
いざという時は、貴方の能力を使って
雫の体を診てあげてほしいのよ、いいかしら?」
「もちろん
でも、姫奈ちゃん達の方は…」
「それについては、任せて下さい
回復は無理でも、サポートなら
私の力でも行えます、それに姫奈さんに
戦い方についてはしっかりと教え込まれましたから」
香織の不安そうな呟きに、ラナが答えていく
ハルツィナ大迷宮での闘いで、聖徒に覚醒したラナ
彼女の能力は戦闘向けではないものの、ほかの一行を
サポートしていく事に長けているので、そっちの方で支えに
支えていきたいと決意を新たにして行く、戦闘の方も姫奈に
しっかりと仕込まれているので、足手まといにはならぬと自負する
「そっか…
でも、何が起こるか分からないし
罪徒の事もあるし、万が一って言う事もあるから
気を付けてね」
「はい」
香織の心配の言葉に、ラナは元気よく答えていく
「それじゃあ…
食事が来たら、みんなは先に食べておいてくれる?」
姫奈は、そう言って立ちあがっていき
そのまま、部屋の方を後にしようとしていく
「どこかにいくの、姫奈?」
「ええ、ちょっとやる事があってね…」
姫奈はそういって、部屋を出ていく事にしたのであった
ラナは首をかしげていたが
姫奈が何処に向かったのか
他の面々は、姫奈の向かって行く場所が
どこなのかが予想できているのか、特に
何も言わずにただ、見送っていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
その日の夜
愛子は自室で、寝付けないのか
自分でこの世界のお茶を入れながら
物思いに窓の外から、夜空を見詰めていた
愛子が考えて居るのは、無論
この町で出会った、五人の生徒達
全てのきっかけは、元の世界でも
この世界でも迫害を受けていた一人の少年
南雲 ハジメ…
そんな彼の味方であり続けた少女
東雲 渚沙…
二人がこの世界にいわれのない罪を着せられ
一同の目の前で炎の中に消えた、それがきっかけで
五人の少女が王国を出ていってしまう、その少女達と再会し
しばらくぶりに会った彼女達と少し、話をしようと
食事の席を共にして行こうと思った、だがそれがあまりにも
軽率な行動であったのだと、愛子は思い知っていく事になった
今でこそ、ハジメへの認識を改めた玉井たち
しかし、少女達からすれば彼らはまだ
ハジメの噂を真に受けて、彼を陥れたクラスメイトの一人
そんな彼らと彼女らを合わせるとどうなるのか
その考えが足らなかったのだ、おかげであの後は
皆でそれなりに楽しめていた食事も、かなり気まずい
雰囲気になってしまい、結局はそんな空気の中で解散となった
「私の考えが足りなかったせいで…
こんなことになってしまうだなんて」
愛子は、自身の考えの足りなさをひどく後悔していた
このままではいけない、どうしたらいいのか
愛子はそんな事ばかり悩み、考え込んでいた
そんな時である
窓が不意にコンコンと何かを叩いていくような音が聞こえた
愛子もそれに気が付いて、叩かれた窓の方に行ってカーテンを開けると
そこにいたのは
「こんばんは、先生」
姫奈であった
「南野さn!?」
「しっ!
今は夜です、ほかのみんな
特に神殿騎士の人達が起きると面倒です…
取りあえずは、中に入れて下さい」
愛子の口元を抑えると、愛子に中に入れるように言う
「姫奈さん、食堂ではすいませんでした…
私の考えが足りないばっかりに…」
「もうそれはいいです…
先生に、どうしても伝えたい事があって…」
姫奈は、そう言って愛子に
ミレディから教えてもらった世界の真実
この世界で起こってる人間族と魔人族
その戦争は、この世界で信仰されている神
エヒトによって、引き起こされているという事
それに気が付いた、一部の者は
この世界を神の支配から解放する為に
解放者
そう呼ばれる者たちを組織した事
しかし、彼等は守るべき者達に裏切られ
結局、神へ戦いを挑むこともなく敗れてしまい
やがて一部の者は、この世界に散っていき
その場所で自分達の力、神代魔法を引き継がせていく
そのための試練の場を設けていった事、その場所こそが
七大迷宮と呼ばれる場所、自分達はそのうち
ライセン大迷宮とハルツィナ大迷宮を攻略していき
二つの神代魔法を手にいれた事を伝えて行った
「‥‥そんな…」
「‥‥信じるか信じないかは
先生の自由です、何にせよ…
今のままでは私達は、元の世界に
帰ることは叶わない、それも事実…
そして、私達が元の世界に戻るうえで
七大迷宮の攻略は必須です、だから私達は
その為に、冒険者として活動しながら旅をしてるんです」
姫奈の言葉に、愛子は驚きを隠せなかった
「そんなにも危険な旅に、皆さんは…」
「確かに、これは危険です
でもエヒトがこの世界に混乱を
引き起こしている張本人である以上…
ほかに手段はありません」
愛子は、姫奈の覚悟を感じ取った
それでも生徒がそんな危険な旅に行くことが
愛子としては、やはり心配でならなかった
「‥‥それに、エヒトの事も気になりますが
未だに動きを見せない以上は、今はどうしようもありません…
何よりも私達が今、一番に危惧しているのはエヒトではありません」
姫奈は、さらに本題の方に入っていく
「それはどういう…」
「先生、覚えていますか?
私達が王国を出る前に
王国を氷河期に包みこんだ存在を…」
姫奈は不意に、王国を襲った大寒波の事を思い出す
「はい、魔物による猛攻であると教会から報告を…」
愛子はそう答えていく
それに対して…
「その時に、大寒波で王国を包みこんだ存在…
それが罪徒と呼ばれる存在が引き起こしたものなの」
姫奈が、罪徒の存在を愛子に伝えていく
「罪徒…?」
「‥‥簡単にまとめると、罪徒は
この世界そのものの驚異ともいえる存在よ…
その力はまさに絶大で、奴らとの戦いの果てに
私達が攻略した二つの七大迷宮は、消滅してしまった…
ライセン大峡谷は、炎に包まれ
ハルツィナ樹海は、もう見るも無残な状態になった…
しかも、それぞれ一体の罪徒の手によってね…」
姫奈の話を聞いて、まさに
信じられないと言った表情を浮かべていく
「そんなにも恐ろしい存在が、この世界に!?」
「ええ、奴らの力の源である、ラルヴァ…
それは、この世界のあらゆるあり方を塗り替えてしまう力…
言ってしまえば罪徒は、たった一体で世界の在り方を
変えてしまうほどに強大な力を持っている存在と言う事です
そのラルヴァの、罪徒の力に対抗できるのが
私があの王国での戦いで手に入れた、この力…
聖徒‥‥エーテルの力…
そして、ここまでの戦いで私以外にも
香織と風香、あと旅の途中で出会った兎人族の女の子…
私達の中では、その四人だけ…
つまり、現状で奴らに対抗しうる存在は
このトータスにおいては、私達四人だけであるという事です…」
姫奈は、そう答えていく
「っ!?
そんな、四人だけでそんな
王国をあんな風に氷点下にしてしまうような
そんな相手を、いくら何でも四人だけでなんて…」
「‥‥ええ、私達だけじゃおそらく無理でしょう…
でも、対抗するためのあてはあります、それもまた
七大迷宮です」
姫奈は説明していく
「七大迷宮…?」
「私達が、これまでの旅において
七大迷宮の試練を乗り超えていく事で
私達は、二つの神代魔法を手に入れました…
その際に、私が神代魔法を手に入れた際に
その力はエーテルによる影響を受けたのか…
元々の力が強化されたように、変化したんです
今確実なのは、この力のみ…
聖徒やエーテルには、私達にもわからないところがあります
他の二人も、その力に目覚めていく事が出来ればいいけれども…
条件が曖昧である以上は、余り期待はできません
何よりも、今の雫の状態だと…」
姫奈が不意に呟いていくと
「え?
雫って、もしかして
八重樫さんの事ですか?
そう言えば、食堂で会った時も
八重樫さんと北浦さんのお姿が見えませんでしたが…」
もしかして、お二人に何か!?」
愛子は、姫奈のその言葉から
姫奈や風香、香織の他にも王国を出た少女達
あの時に姿を現していなかった雫と纏の事を思い出す
それに対して姫奈は失言だったと
頭を抱えてしまうものの、どのみち
バレるとも考えたので、観念して話すことにした…
「実は、雫がハルツィナ大迷宮での攻略の際に
敵の攻撃を受けてしまって、負傷をしているの…
今でこそ、聖徒の力に目覚めた香織の治癒によって
抑えられてるけれど、今でもベッドから体を起こすのが精一杯みたいで…」
「そんな…」
姫奈から、雫の現状を聞いて
ショックで絶句の表情を浮かべていく
「ここに来たのも、受けた依頼の場所から
一番近くって、なおかつ休めるところがあって…
だから、ここをいったん拠点にすることを決めたの
雫を少しでも、休ませてあげられるようにね」
「‥‥そうだったんですね…
そんな事情があるのに、私は…」
愛子は猶更、食堂での自身の考えの至らなさを悔いる
姫奈はそんな愛子の様子を察したのか
不意にこっちから話題を振っていった
「先生…
先生の方は、どうなんですか?
これまでのことで、何か変わったことは?」
愛子は不意に聞かれて驚いたものの、姫奈が
自身に気を使わせてくれたのだと察してお言葉に甘えることにした
「はい、教会から農地開拓を行うように言われ
優花さん達と一緒に、各地を回って開拓作業をしています…
それで、現状報告のために王国に寄った際に
玉井君達が、自分達にも手伝って欲しいと言って
少し強引でしたけれども、同行をすることになったんです…」
「玉井君達…
先生が同行を許可したんですか?」
姫奈は、不意に訪ねていくと
「いいえ、許可をしたのは園部さんです…
まあ、男手が欲しかったというのが主な理由ですが
玉井君達も、あの時からずっと思い悩んでいたみたいなんです…
南雲君が自分達の為に戦ったのに、それなのに
このまま王国でじっとしていていいのかって、それで
南雲君に助けられた命を無駄にしないために何かできる事から
始めていきたい、そう言って旅の同行を申し出ていきました」
「そっか…」
姫奈は、それを聞いて少なくとも
玉井達は言葉が足りなかっただけで
彼等なりに、ハジメの行いを認めている
そう感じていた
「‥‥ただ、実は少し問題が起こっていまして…」
愛子が不意に、そんな事を呟いていく
「問題?」
「姫奈さん…
清水君を覚えていますか?」
愛子は不意に、とある名前を口にしていく
「清水君…?
確か、教室の隅で目立たずにいた
あの暗い雰囲気の男子の?」
「はい、実は清水君も玉井君達と一緒に
私達の旅に同行してくれていたんですが…
およそ、二週間前に姿を消してしまったんです
最初は何かに巻き込まれたのかと思いましたが
その時の彼の部屋は荒らされていた様子が無くって…」
「つまり、さらわれたのではなく
自分から姿を消した可能性がある、と…」
姫奈の言葉に、愛子はこくりと頷く
「‥‥清水君は、天職が闇術師です
他の系統に関しても、それなりに
高い適性をもっていました、ですから…」
愛子は、根拠を答えていく
「‥‥つまり、清水君の探索の為に
私達にも協力をさせてほしいという事?」
「はい…
恩着せがましいですが
もう、この付近で清水君の情報は
進展の方が無いんです、そうなってくると…
残っているのは、北の山脈地帯だけなんです
私達と一緒に入る生徒や神殿騎士の皆さんも
腕は立つのですが、それでもそこに踏み込んでいくのは…
お願いしますどうか私達の、清水君を
探し出すのを手伝っていただけませんか!?」
愛子は必死にうったえていく
「‥‥ごめんなさい、私達もここには
別の依頼を受けているので、私達には
そのお願いを聞き入れるという事は出来ません…」
「そんな…」
姫奈の言葉を聴いて、悲し気な表情を浮かべていく
しかし
「‥‥ただ、私達の受けた依頼は人探しです
私達には、体調が万全でない人もいます、だから…
私達の依頼を手伝ってくれるというのなら
そのついでに、先生のお手伝いをさせてもらいます…
あ、これはただの独り言ですからね」
姫奈は、愛子に背中を向けていき
わざとらしく、そんな事を言い出していく
愛子は、それを聞いて目を見開き
それと同時に…
「姫奈さん…」
愛子の表情には、どこか嬉しさがにじみ出ていた
「‥‥先生、先生が私の話を聞いて
それをどうするのか、あくまでそれは
先生が決める事です、先生はこの世界で
信用が出来る数少ない人です、だから私も…
先生を信じます…」
姫奈は、そう言って窓を開くと
そこから飛び降りていく形で愛子の部屋を後にする
愛子は、そんな姫奈の背中を心配そうに
風に吹かれながら、見つめているのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
-
原罪(スルー推奨)
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傲慢
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虚飾
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嫉妬
-
憤怒
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怠惰
-
憂鬱
-
暴食
-
色欲