世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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Eripe escensionem、Unwanted Reunion、Ich werde mich entscheiden, ich bin bereit!

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

北の山脈地帯

 

そこで激戦を繰り広げた一行は

姫奈に武器の新調と、相川と菅原の二人の

治療もかねて一度、ウルの町に戻って来た

 

しかし、そこで一行は一つだけ

問題の方に直面していた、それは…

 

「ええ!?

 

 二人の怪我は治せない!?

 

 なんで!?」

 

優花は、ウルの町にある療養所において

 

「いいえ、正確には治すことが出来ますが

 どうしても時間がかかってしまいます、おそらく…

 

 三カ月はかかるかと…」

 

「三カ月って…

 

 そんなに待ってなんていられませんよ!

 

 せめて、三日でなんとかできませんか?」

 

ウィルが、必死に頼み込んでいく

 

「無茶を言わないで下さい!

 

 今いる、治癒師のステータスで

 あのお二方の治療を行うには、最低でも

 それくらいはかかります、下手に治癒を早めて

 不備があったら、それこそ体への不調はどのくらいかかるか…」

 

治癒師は、困惑した様に返していく

 

「…どうしよう、愛ちゃん先生…」

 

「‥‥しようがありません、お二人は

 いったんここで預からせてもらいましょう…

 

 そもそも、私達に融通を利かせて

 お二人を受け入れてくれたんです…

 

 それだけでも、十分すぎる位です」

 

奈々の言葉に、愛子はこれ以上は

無茶を言う事は出来ないと述べていく

 

「そうね、それに考えてみたら

 一般的な治癒師でもそれが精一杯なんだと思う…

 

 香織や綾子なんかが、異常なのよ」

 

「く‥

 

 香織っちが、治癒をしてくれたら‥」

 

「…悪い、俺たちがこの前

 白崎の機嫌を損ねちまったせいで…」

 

「…そういえば、南野はどこに行ったんだ?」

 

仁村が不意に、この場に姫奈がいないことに気付く

 

「‥…姫奈なら、武器の新調と

 宿屋に戻って、香織を呼びに行ってるよ…」

 

「‥‥ええ、香織さんも力に目覚めていますし…

 

 でも、来るのが遅いですよね…」

 

風香と纏がこの場にいない姫奈の消息を語る

 

「当然だよな…

 

 白崎の気持ちには気づいてたはずなのに

 軽々しく、南雲の事を口にしちまったし…

 

 もしかしたら…」

 

玉井は、今更ながらに自分の軽率さを後悔していく

 

そこに…

 

「もしかしたら何?」

 

不意に、声が聞こえると

そこに訪れたのは姫奈、そして…

 

「白崎さん!」

 

愛子は、訪れた少女の姿を見て目を見開く

 

「‥‥失礼します、こちらの二人

 私に預からせていただけないでしょうか?」

 

「え!?

 

 そんな、困ります

 こちらはすぐにでも治療が…」

 

訪れた少女の言葉に、街お抱えの治癒師は阻む

 

それに対して…

 

「問題ありません、これでも私も…

 

 治癒師ですから」

 

白崎 香織…

 

 

彼女はそう答えていく

 

そうして、香織はベッドで横になっている

妙子と相川、二人の間に立っていき二人に

それぞれの手を翳していき、二人に治癒を施していく

 

「…白崎、その…」

 

「何にも言わなくていいよ、姫奈ちゃんから

 事情は聴いてる、玉井君達の決意と覚悟の方は

 皆の様子から、大体は予想がついてるからね…

 

 一緒に闘ってくれたんでしょ?」

 

香織の言葉に、玉井は黙って頷いていく

 

「‥‥正直に言うと、私は玉井君たちの事は

 他のクラスのみんなと同じように許せない…

 

 でも、だからってここで貴方たちの事を見捨てたら

 それこそ、みんなを命を懸けて助けた南雲君の気持ちを

 踏みにじることになっちゃう、だから二人の事は治す…

 

 それに、好きとか嫌いとか関係なく

 もう目の前で誰かが死ぬのを見るのは、後味が悪いしね…」

 

香織は、そこまで言い切っていくと

二人にかざしていった手を、降ろしていく

 

「‥‥でも、一つだけ約束して…

 

 貴方達が変わろうとしているなら

 絶対に逃げずに、闘い続けてよね

 

 最期まで逃げずに立ち向かって行った…

 

 南雲君のようにね…」

 

香織のその言葉を、しっかりと受け止めて行く玉井

仁村もそれにあわせる様に頷いていく、彼の瞳も真剣である

 

それと同時に…

 

「う、ううん…」

 

「たえっち!

 

 良かった、無事に治って‥」

 

ゆっくりと体を起こしていく妙子に

良かったと飛びつく勢いで近寄る奈々

 

「こ、ここは…」

 

「ウルの街だよ

 

 昇と菅原の、治療のために一旦戻ってきたんだよ」

 

相川も無事に、治癒が完了したようであった

 

「すごい…」

 

それを見ていた、ウルの街お抱え治癒師も感服している

 

「さすがね、香織…」

 

「うん、さすがに安静は必要だけど

 それでも、身体を動かす分には問題はないはずだよ」

 

香織は、一息つきながら言う

 

すると

 

「あ、あの!」

 

治癒師の者達が、香織の前に立つと

彼女に向かって勢いよく頭を下げて行った

 

「香織殿と言いましたね、お願いがあります!

 

 貴方のその力、貸していただけないでしょうか!!」

 

「ふえ!?」

 

いきなりの事に、香織は間の抜けた声を上げてしまう

 

「実は、この町の付近で魔物が異様に

 発生するようになって、この院だけでも

 多くの人達がけがで運ばれているんだ…

 

 薬も治癒師の数も足りず、私達も手を尽くしたが

 さっきも言ったが完全に治癒が終わるにも時間がかかってしまう

 

 頼むせめて…せめて、子供達だけでも助けてもらえないだろうか…」

 

必死に頼み込んでいく

 

「ちょっと待ってください、確かに香織さんの治癒能力は

 優れていますけれど、治癒師ってそんなに人手不足何ですか!?」

 

纏は、治癒師に顔を上げさせ

事情の方を訪ねていった、すると

 

「優れた治癒師は、王国お抱えになって

 殆どが、王国や教会に引き抜かれているんです…

 

 お抱えになれば、街の治療院よりも

 生活は保障される、そうなったら将来は安泰だ…

 

 もちろん、全員が全員そうじゃないけれど

 何しろ、何百年も人間族と魔人族の戦争は続いているんだ…

 

 そんな中で、安定した生活を保障されるなら、その方がいいに決まってるからね…」

 

「そんな…

 

 で、でもそれでも国民のみに何かあったら

 何らかの政策の方は取ってくれたりしますよね?」

 

愛子は、信じられないと言った具合に訪ねていく

 

しかし

 

「…確かに、うちのように観光資源は

 教会や王国の方も、それなりに擁護してくれてる…

 

 でも、逆に王国にも教会にも何の利益も齎せていない

 辺境の街なんかは、何が起こっても知らんぷりなんだよ…

 

 私の故郷も、そうだった…」

 

「そんな…」

 

この国の実態を改めて知り、言葉が出てこない愛子

 

愛ちゃん護衛隊も、王国や教会のやり方に絶句していた

 

「うーん…

 

 もちろん、出来る限りの事はしますけれど

 私達はこれでも、その教会に目を付けられてる身なので…

 

 逆にここに留まる事が、皆さんに迷惑をかけてしまうかもしれません

 

 だから、ここにいることはお互いにリスクが大きいものと思います…」

 

香織も、もちろんその現状に心を痛めるが

逆に教会や王国に追われている自分がいる事で

ここにいる者達に迷惑を書けてしまうかもしれない

 

香織は、その事を危惧する

 

「頼む!

 

 せめて、せめて子供達だけでも…」

 

必死に頼み込む治癒師

 

「‥‥わかりました、それじゃあ

 私達がこの町にいる間だけでも、お手伝いいたします

 

 それでいいのなら、手伝いましょう」

 

香織も、話しを聴いて黙っていられないと踏んだのか

任せてほしいと言わんばかりに力強く申し出を受けていく

 

「い、いいのか?」

 

「もちろんです!

 

 いいよね、姫奈ちゃん?」

 

「‥‥もちろんよ、困っている人を助ける

 それだって、冒険者の立派なお仕事だもの

 

 貴女がそうしたいなら、そうすればいいわよ」

 

香織の申し出を、心より了承する姫奈

 

姫奈も、目の前で助けられるのなら

助けていきたい、それを心から願っている

 

「白崎さん…」

 

「先生、この場は香織に任せて

 私達も私達で出来る事をやりましょ

 

 行方不明になった冒険者を見つけて

 その帰りを待っている人たちに合わせてあげないとね」

 

姫奈は、愛子に言う

 

「そうですね…

 

 私もやるべきことをやりましょう」

 

「もちろん、私達も一緒にね」

 

「ああ!」

 

愛子と愛ちゃん護衛隊も、しっかりと

自分達がやるべきことを見据えていく

 

「それじゃあ、行きましょ!」

 

「そうだな、菅原と昇はここに残れ

 病み上がりで無理なんてさせられないしな」

 

「え、ええ…

 

 本当は一緒に行きたいけれど…」

 

「いいや、ここは厚意に甘えさせてもらおうぜ

 

 その代わり、この町の事は任せてくれ」

 

治癒を終えたとはいえ、病み上がりである

妙子と仁村は、この町に残る事になったのであった

 

「それじゃあ、まずは

 ここの冒険者ギルドに行きましょう

 

 何か、情報があるかもしれないし

 そこでどのように行動をして行くのかを決めていくわよ」

 

姫奈は、向かう前に予定の方を立てていく

 

その様子に一行は、さすがは学級委員長と

元の世界での時を懐かしむ様子を見せていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ウルの街の冒険者ギルド

 

そこで、一人の青年が姫奈達に声をかけていく

 

ウィル・クデタ

 

 

クデタ伯爵家の三男で、冒険者志願の思念である

 

フリューレン支部の支部長の計らいで

とある冒険者パーティーに属させてもらっていたのだが

 

ある敵に襲われてしまい、その際に仲間の一人に

川に突き飛ばされる形で突き飛ばされていき、ある場所で

身を隠していた所を、姫奈達と出会い、行動を共にしていった

 

「…本当にありがとうございます…

 

 私のわがままを聞いてくださって…」

 

「‥‥あくまでついでですから…

 

 それに受けたのはあくまで畑山先生で

 私達はただのついでですよ、それにどの道

 パーティメンバーの安否を知るまで、梃子でも動かないんでしょ?」

 

姫奈は呆れながらも、笑みを浮かべている

あくまでそう言う形にしているという定である

 

ウィルもそれを理解しているのか、姫奈の言葉に

特に何かを返していこうというそぶりは見えない

 

「ところで、ウィルさん…

 

 何か情報はありますか?」

 

「あ、はい…

 

 ここの支部の方に

 色々とお話を聞いていきました

 

 どうやら、ここのところ北の山脈地帯で

 冒険者が次々と行方不明になっている事件が

 頻発していりようです、この町でも数件がが確認されています…

 

 それから地図と、冒険者が消息を絶った所も教えてもらいました」

 

ウィルは、地図を広げて見せていく

よく見てみると、いくつか印もついてる

 

すると

 

「え?

 

 行方不明になった所、わかるんですか?」

 

風香が不意に、その疑問点を口にしていく

 

「…実は、前にも言っていましたが

 最初は手当たり次第だったのが、ここ最近は

 高ランクの冒険者ばかりが狙われるようになった…

 

 実はここ最近は、パーティーが襲われても

 パーティー全員の行方をくらませる庫はなくなってきたんです

 

 その、戻って来た冒険者達からの情報を照らし合わせて

 そこから得た、ポイントがこの地図についている印なんです」

 

ウィルが説明していく

 

「…なんだか、随分とザルね…

 

 そんな、警戒されるかもしれない恐れはあるのに…」

 

「‥‥いいえ、逆だと思う

 会えて逃がしていく事で、むしろ

 冒険者達をここにおびき寄せているんだと思う…

 

 ウィルさん達のパーティーの人達のように

 善意で捜索に向かう者や、依頼という名目で

 ここまで来る冒険者達を待ち構えているのかもしれないわ」

 

優花は、こうなるともしかしたら

怖がって誰もこなくなると踏んでしまうが

 

姫奈は逆に、これで実力のある冒険者を

選別しているのだと、予想を立てていく

 

「なるほど、最初に手あたり次第だったのは

 選別を行う前だったために、そうなってしまったんですね…」

 

「そうやって、冒険者の行方不明を加速させて

 近隣の冒険者ギルドに依頼を出させれば、やがて

 腕に覚えのある冒険者達が分かる様になっていくわけだね」

 

「ギルドや、冒険者の心境を巧みに操作している

 

 何とも巧みなやり方ですね」

 

纏の言葉に、一行はごくりと息を呑む

 

「…まさか、僕たちが襲われたのも

 あのフードの男の計算通りだった…

 

 そういう事なんですか…?」

 

ウィルは、わなわなと表情をこわばらせていく

 

「…そうだったら、仲間が襲われて

 行方が分からなくなってしまったのは…

 

 全部、全部私のせいって事になるじゃないか!」

 

ウィルは悔しそうに叫んでいく

 

「落ち着いて下さい、ウィルさん

 

 ウィルさんも皆さんも、さらわれた冒険者の皆さんが

 心配だと思って、その捜索の依頼を受けたのでしょう?

 

 だったらウィルさんは、何にも悪くありません!

 

 悪いのは、ウィルさんの仲間を襲ったフードの人ですよ!!」

 

「で、ですが…

 

 私が、私のせいで皆さんが…」

 

涙を浮かべていくウィル

そんな彼の肩に手を置いていく愛子

 

「自分を責めないで下さい、ウィルさんは悪くないし

 何にも間違ってなんていません、だからこそウィルさんの仲間は

 ウィルさんの気持ちを尊重したんです、そうでなければ受けたりなんてしませんよ

 

 ウィルさんは間違ってなんていません、それをウィルさんが否定したら

 それこそ、ウィルさんを信じて、貴方の願いを受けたウィルさんの仲間の皆さん

 その気持ちを無下にすることに等しいんです、ウィルさんはそれでいいんですか?

 

 私は嫌です、そんな自分を苦しめるような考えを持ってしまうのは…

 

 それに、まだ諦めるのも早いです、今が自分に出来る事をやっていきましょう!」

 

愛子が必死に呼びかけていく

 

「愛子殿…」

 

ウィルは、愛子のまっすぐさに

彼女が必死に自分を支えようとしている

 

愛子なりの気遣いが、不思議と

ウィルの心に大きく響いていくのであった

 

「ありがとうございます!

 

 そうですよね、まだ

 諦めていくには早いですよね」

 

ウィルは、涙をぬぐっていく

 

「愛子殿、改めて…

 

 改めてよろしくお願いします!」

 

ウィルは、頼み込んでいった

 

「‥‥それで、どこに向かって行くの?

 

 このポイントで、敵が現れるのを待つ?」

 

奈々が、どこに向かうのかを訪ねていく

 

「‥‥いいえ、私達はあのフードの男に

 顔を覚えられています、警戒されるおそれがあります…

 

 待ち伏せをしても、現れるのかどうかも…」

 

纏も、頭を悩ませて行く

 

「それだったら、直接乗り込んでいくわよ!」

 

姫奈は、言う

 

「どういうこと?」

 

「この地図に書かれているポイントを見て

 気付いた事があるの、冒険者たちが消息を絶った

 場所はある一点を中心に、付近に現れた冒険者を攫って行ってる

 

 つまり、このポイントを結んだ中心部が、奴の居場所ね」

 

姫奈は、そう言って円を描くように付けられている印を

その中心に行くようにして、線を引いていく、その中心には…

 

「ここに仲間たちが…」

 

「‥‥あくまで可能性の範囲だけれども…

 

 でも、可能性自体は高いと思う

 

 早速、向かいましょう」

 

姫奈は言う

 

それに、その場にいる全員は頷いていく

 

「待っててください、ゲイルさん…

 

 ナバルさん、レントさん、ワスリーさん、クルトさん…

 

 絶対に…絶対に助け出しますから!」

 

ウィルも、決意を新たに仲間たちの救出を誓うのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

早速、冒険者が行方不明になったポイントに向かって行く

 

幸いにも、距離は近いので馬を走らせて

すぐにたどり着いていったのであった

 

「距離的には、直ぐについたわ…

 

 さあて、問題はこの奥ね」

 

姫奈は、そう言って森の方に視線を向けていく

 

「行きましょう!」

 

早速、向かおうとするウィル

 

しかし…

 

「待って、ウィルさん!

 

 速く行きたい気持ちも分かるけれども

 いきなり乗り込んでいったら、敵に気付かれるし 

 攫われた人達がどうなるのかだって、わからないわよ!!」

 

姫奈が、ウィルを制止させていく

 

「す、すいません…

 

 でも、それでしたらどうすれば?」

 

ウィルのその問いかけに、姫奈は

不意に空の方を見詰めていって、しばらくすると…

 

「‥‥日が傾いてからね…

 

 明るいと見つかりやすいし

 逆にこの森の中で夜は危ない…

 

 向かうとしたら、夕方ね…

 

 今は、突入するポイントの前にまで行きましょう」

 

「ポイント?

 

 どこから向かって行くのか、決めてるの?」

 

風香が、姫奈に訪ねていく

 

「この世界は、気候が私達の居た世界とは真逆で

 それゆえに、お日様が沈んでいくのも逆なの…

 

 だから、夕陽の影になるこの場所まで移動するわ」

 

「どうして、そこまで移動する必要が?

 

 それに、どうしてそこが夕日の影になると?」

 

ウィルが訪ねていく

 

「‥‥ウルの街にある、ウルティア湖の伝説よ…

 

 湖に水の精霊が、現れたのは

 湖に夕焼けが差した時だって言われてる

 

 湖に夕日が映るってことは、太陽が沈むのは

 街からみて湖の反対側、つまりはここが夕日の影になるところ」

 

「なるほど…」

 

「ちなみに、夕日の影になるところから向かうのは

 そこが向こうから見て、夕日の光がさすところだから…

 

 そこだったら、雲がかかっていない限り

 相手の方はまともに見る事は出来ませんからね」

 

姫奈が、夕日の位置を知れる方法を伝え

纏が、なぜ夕日の影になるところに向かうのかを説明する

 

「だから、決行は夕方なんですね」

 

「ええ、対策としてはね…

 

 まあ、上手くいくのかどうか

 これについては敵側次第としか言えないわ…」

 

姫奈は、ふうっと一息をついて行く

 

「今、出来る事をしっかりやっていきましょう…

 

 今の私達は、それでやっていくしかない」

 

姫奈は、そう言って

自身が指定した場所に向かう

 

「すごいよね、ひめっち‥

 

 私達とそんなに変わらないのに

 いろんな事知ってるんだもんね‥」

 

「もしかしたらさ、実は本当は

 俺たちよりもずっと年上だったりしてな…」

 

「んなわけねえだろ、馬鹿!」

 

「…あ痛っ!」

 

そんな風なやり取りをしていきながら

何とか、目的の場所にまでたどり着いた一行

 

予想より早くついたので、取りあえずは

夕刻になるまで、体を休めて準備の方をしていく

 

「…ねえ、姫奈…」

 

「うん?」

 

手持ちの整理をしている風香に

一人の少女が訪ねて来た、それは…

 

園部 優花…

 

 

こっちの世界で、ハジメ関連で親しくなったクラスメイトの女子である

 

「優花…」

 

「…姫奈、アンタたちが王国を出てから

 何があったのか知らないけれど、あの時から

 強くなったんだって言う事は、よくわかるよ…

 

 アタシ達でも勝てなかった、あの化け物を

 倒しきって見せたんだから、すごいって思う

 

 私達じゃ、敵わないなって…」

 

優花は言う

 

「‥‥そんなことないよ、優花だって強くなった

 

 だって、私達の攻撃が咎徒に通らなかった際に

 優花は率先して、咎徒の相手を引き受けてくれた…

 

 あんなの、普通だったら出来ないよ」

 

「そ、それは…

 

 でも、結局は止めきれなかったし

 何よりも妙子や相川に怪我させちゃった…

 

 もしかしたら、もっといいやり方があったんじゃないのかなって…」

 

優花は思いつめた様子で答えていく

 

「‥‥確かにそうかもしれない、でもね

 それは私達だっておんなじよ、いくら私達の攻撃が

 通らなかったからって、それであんな風に動揺して何にもできなかった…

 

 あの時に最も早く動けていたら、二人を危険に晒さずに済んだかもしれない…

 

 今だって、悔いは残ってるわよ…」

 

姫奈も言う

 

「‥‥だからこそ、私は次は出来る限り

 誰も傷付く事のない選択を取っていきたい…

 

 その為の、この作戦なんだから」

 

「姫奈…」

 

姫奈の、その言葉を聴いて優花は

自身の表情を引き締めていき、自分の頬を叩いていく

 

「アタシ、ずっと後悔してた…

 

 南雲が冤罪を張られた時に

 何にもできなかった、あの時の事…

 

 オルクス大迷宮で、魔物に襲われそうになった時

 アタシは南雲に助けられた、それなのにアタシは…

 

 何にもしてやれなかった…

 

 でも決めた、アタシは進むよ

 立ち止まらずに前に進んでいく!

 

 だから、だから姫奈達がどうしようも

 無くなったら、その時はアタシも闘う!

 

 南雲に助けられた事、絶対に無駄にしないから」

 

優花は決意を口にしていく

 

姫奈は、それを聞いて

笑みを浮かべながら、立ち上がっていき

 

「‥‥優花は強いよ…

 

 そして、これからも強くなれる…

 

 だからまずは、焦らずに

 自分のペースで強くなっていきなさい」

 

姫奈は、そう告げていく

 

「…ええ!」

 

優花も、笑みを浮かべて答えていく

 

その様子を影から見ている者が一人

 

「園部…」

 

玉井であった

 

彼もまた、友人であった相川が傷ついた事に心を痛めていた

もっと、上手い方法があったのではとずっと思いつめていた

 

しかし、姫名や優花も自身と同じように思いつめて居た事を知り

 

姫奈の真意をしり、彼の中に一つの決意が芽生えていく

 

「…俺も強くなる!

 

 誰も何も、傷つけさせたりしない…

 

 絶対に!!」

 

そう言って、一行のもとに戻っていく玉井

 

そして、いよいよ夕方が訪れるのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

日が沈みかけている夕方に

さっそく、行動の方を開始する一行

 

「‥‥ねえ、先生…

 

 先生はその、戦いに向いているスキルは

 持ち合わせていないんだし、別に戻って町に残ってても…」

 

姫奈は、同行をしている愛子に遠回しに

この先は危険だから、戦う事の出来ない彼女は

街に戻った方がいいと、警告に似た言葉を述べていく

 

それに対して…

 

「‥‥いいえ、生徒達が危険なところに向かうのに

 私が何もしないでいるわけにはいきませんよ、もう二度と…

 

 私がいないうちに、守るべき生徒を失うことになるなんて

 そんな事は、そんな事だけは絶対に嫌なんです、だから行きます

 

 これは私の意地、私なりの覚悟です」

 

愛子は、そう答えて行く

 

愛子はずっと後悔しているのだ、戦闘訓練の時に

教会からそう指示を受けていたとは言え、生徒達に同行しなかったことを…

 

そのせいで、自分が最も気にかけていた彼を

誰よりもそんな彼の傍に居た彼女を、失ってしまった

 

結局、自分は彼を助けることは出来なかった

 

しかし、だからこそ愛子は二度と自分が後悔しない選択をすると

 

だからこそ、彼女はこの道を選んだ

生徒達とともに死地に向かって行くという選択を…

 

何よりも、この件にはもしかしたら…

 

そう思ったら、なおさら黙っているわけにはいかないのだ

 

「‥‥やっぱり、愛子先生は愛子先生だね…

 

 でも、ここから先は危険があるかもしれない

 だから、くれぐれも優花達の傍を離れないで下さいね」

 

「優花達も、もちろん無茶はしないでね」

 

「ええ、わかってるわ!」

 

「任せてくれ!」

 

優花と玉井が、決意を秘めた声で答えていく

 

「それにしても…

 

 本当にこんなところに、ゲイルさん達が?」

 

「まずは捜索をしていきましょう…

 

 風香、お願い出来る?」

 

「…‥うん、やってみる」

 

風香は、そう言って

風の適性と星力魔法を組み合わせた

探知能力を使って、辺りを探っていく

 

「‥…うん?

 

 どうやら、向こうに洞窟があるみたい…

 

 身を隠すことが出来る位の、大きさの洞窟が」

 

「行ってみましょう!」

 

姫奈は、そう言って一行を連れて

風香が見つけた、件の洞窟を目指していくのであった

 

「ここが、そうなんですね…」

 

一行は、目的の洞窟に辿りついた

 

外観的には、なんの変哲もない…

 

「中に入ってみよう…」

 

「みんなも気を付けてね」

 

一行は、そう言って洞窟の中に入っていき

その中の探索の方を開始していくのであった

 

しかし、光源が自分達が入ってきた出入口のみなので

想像以上に暗く、足元も凸凹しているので歩くのにも用心していく

 

一行は松明を用意して、最低限の視界を確保していく

 

「…うーん、見たところ時に何か異常があるようには…」

 

ウィルが、そう言って不意に壁に手を触れると

洞窟の壁の感触とは、何か別の感触がウィルの手から感じられる

 

ウィルは、松明をその場所に持っていく

 

そこで見たのは…

 

「っ!?

 

 うわあああ!?」

 

何と、人の顔であった

 

不意にそれを視界にいれて、驚愕し

ウィルは思わず、後ろの方にバランスを崩す

 

「おっと!

 

 大丈夫?」

 

「あ、ああ…ありがとうございます…」

 

そんな彼を支える風香、そんな彼女にお礼を言うウィル

 

風香は、松明を掲げていくとそこにうつったのは

洞窟の壁に縛り付けられている、無数の人達であった

 

「この人達って…」

 

「ええ、間違いないわ…

 

 これは、行方不明になっていた冒険者達よ…

 

 似顔絵のとおりね…」

 

一行は、ここに向かう際に行方不明者の顔を

似顔絵を見てしっていたので、すぐに身元が判明する

 

それを知って、ウィルは慌てて辺りを見回していく

 

すると

 

「あ、ああ!?

 

 ゲイルさん!

 

 ナバルさんにレントさん

 ワスリーさんにクルトさん!?」

 

ウィルたちは、ある房にいる面々を見て

哀しみを込めた叫びをあげて、駆け寄っていく

 

「この人達が、ウィルさんの…」

 

「はい、私の冒険者パーティーのメンバーです…

 

 そんな…まさか…」

 

ウィルは、全く動かない様子を見て

最悪の想像が頭によぎっていく、そんな彼の前に出て

ウィルの仲間たちの安否を確認していった、その結果…

 

「‥‥大丈夫、まだ生きてる

 

 多分、この洞窟の湿気のお陰で

 食料や水が与えられない中でも生き延びれたんだと思う

 

 でも、このままだとまずいわ、急いで運び出さないと…」

 

姫奈の言葉を聴いて、安堵のため息をついて行く

しかし、おそらくは食料も水も満足に与えられていないのだろう

 

ウィルの仲間も、もちろん

それ以前から行方不明になった冒険者達

 

最長、二週間以上の人達は命にもかかわる

洞窟の湿気が水分の役目をしていたとはいえど

 

それでも普通では、飢餓に耐えきれるものではない

 

「とにかく、呼びかけて!

 

 意識が戻ったら、急いで水を!!

 

 自力で飲めないなら、少しずつで!!!」

 

姫奈が、指示を出していき

一行は冒険者たちに必死に呼びかけていく

 

「皆さん、しっかりしてください!

 

 助けに決ましたよ!!」

 

ウィルは、自分の仲間たちに必死に呼びかけていく

 

「しっかりしてください、助けに来ましたよ!」

 

何とか意識が戻った冒険者達の介抱をしていく一同

 

「うん?

 

 なんだこれ…?」

 

玉井は、不意に洞窟の奥に

何やら、ここには不釣り合いな鉱物があった

 

宝石のように、純度のある輝きをしているが

それ全体は真っ黒で、まるでこの洞窟全体を

真っ暗にしているかのような雰囲気であった

 

しかも、よく見てみると

その石のところどころには

黒っぽい紫色の宝石のような鉱物があった

 

玉井は、恐る恐るそれに触れようとすると

 

「触らないで!」

 

そんな彼に向かって、激しい声が欠けられていく

 

「…き、北浦…」

 

「うかつに触らないで下さい…

 

 危ない物かもしれませんよ」

 

そう言って、玉井をその石から離して

そこに張られているその鉱物をじっくりと見つめていく

 

「(この黒っぽい紫色の宝石…

 

  何処かで見たような…)」

 

纏が、そんな事を頭に走らせて行くと

 

『『『『っ!?』』』』

 

急に一行の周りの空間も動きが、ゆっくりになっていく

 

「これって‥‥あの怪物が現れたときの!?」

 

「…どういう事?

 

 この前、倒したはずなのに…」

 

この現象を一度受けた一行は、目を見開く

 

何故なら、この現象を引き起こしていた怪物

咎徒は、前に姫奈達の奮闘によって倒されたはずなのだ…

 

損な疑問を浮かべていく中、姫奈と風香は

聖痕の力を開放させて、一行を動きやすくしていく

 

「うわあっととと!?

 

 た、助かった…」

 

「安心するのは、まだ早いよ…

 

 見て、どうやらお出ましよ」

 

姫奈が、そう言って剣を構えていく

そんな彼女の視線の先にいたのは、何と

 

ウィルの仲間を襲ったフードの人物

あの時、倒したはずの咎徒であった

 

「…あいつ、まだ生きてたのか!?」

 

「っ!」

 

ウィルは、険しい表情を浮かべながら

武器である剣を抜いて、構えていった

 

「…ちっ、俺をコケにした挙句に

 ここまでたどり着いちまうとはな‥‥

 

 せっかく、こいつらを使って

 俺だけのパーティを造ろうと思ったのに‥‥」

 

一方のフードの人物の方も、どこか苛立ちを含ませたような

そんな口調で、救出された冒険者たちの様子を見て悪態をつく

 

「なんで、冒険者たちをさらったの!?」

 

優花が激しい口調で問い出していく

 

「決まってんだろ?

 

 こいつらを使って、俺の俺による

 俺の為だけの軍団を造るためだよ

 

 そうして、誰にも負けない軍団を造って

 認めさせてやるんだよ、天之河じゃなく‥‥

 

 俺が、真の勇者なんだってな!」

 

動機を話していく、フードの人物

 

「そんな勝手な理由で…

 

 そんな理由で、ゲイルさん達を

 ここにいる冒険者を苦しめたというのか!?」

 

ウィルは、叫ぶように言い放つ

 

それに対して…

 

「知るか、そんなもん

 

 つーかさ、もういいんだよ

 そいつらのこと何か、もうどうでも‥‥

 

 この世界の冒険者達だったら、少しは

 俺の役に立つのかって思って集めてたけれどさ

 もう、正直大失敗、どいつもこいつも雑魚ばっかでさ‥‥

 

 そこで、ちょっと狙いを変えることにしたんだよ

 そうしたら、まさかわざわざそっちから来てくれてよ

 

 色々準備の方を進めて居たら、まさか

 そっちの方から来てくれるとは思わなかったぜ?

 

 人数は足りないが、まあいいだろう

 その道、場所はわかってんだからな…」

 

フードの、人物は何やら含みのある言い方をしていく

 

「何を言って…」

 

「‥‥まさか、私達をおびき寄せようと!?」

 

「そういうこった、それにしても

 なんなんだよその力、王国を抜け出したお前らが

 ここにいる事にも驚きだが、そんな力を持っているだなんて知らねえぞ?

 

 どうやって、そんなチートを手に入れたんだってーの」

 

フードの人物は姫奈達に吐き捨てるように言う

 

しかし、直ぐに大人しくなって

二人やほかの面々を嘗めまわすように見つめていく

 

「…まあいいや、その力だって

 お前らを手に入れれば、直ぐに俺のもんだ‥‥

 

 そこにいる、雑魚なんかよりはずっと役に立つだろうさ!」

 

そんな風に、もう攫ってきた冒険者の事など

もう興味すらも持っていないと言った具合である

 

「貴方、自分の都合で攫っておいて

 勝手な事、言わないでくれる!?

 

 アンタの身勝手のせいで、ウィルさんが

 ここにいる人達の家族がどんなに悲しんだのか…

 

 考えたことあるの!?」

 

「うるせえよ、クソアマが!

 

 そんな生意気な口、二度と聞けなくさせてやるよ!!」

 

そう言って、フードの人物はその身体を

鉱物で構築された外観に変化、しかもその身体には

鎖で止めるように、フードのような布を体に羽織っている

 

外観は、人型の豚のような見た目である

 

布は黒色、体色は黄色である

 

「へえ、確かに見た目は不気味だけど

 特に何かが変わったようには見えないけれど?」

 

奈々は言う

 

「なめんなよ、俺だって伊達に

 冒険者共に戦いを挑んでいった訳じゃねえ‥‥

 

 俺のこの力は、戦いを通じてその力を糧に‥‥

 

 進化していくのさ!」

 

そう言い放つと、豚型の咎徒は

さらにその外観を変化させていき

 

何と、まるで黒い猫が直立し

二足歩行になったような姿になる

 

「なにあれ!?」

 

「変身した!?」

 

外観が変わったのを見て、驚きの声を上げていく一行

 

「どうだ、こいつが俺の更なる力‥‥

 

 こいつがどんな力を持っているのかを

 今、この場でさっそく見せてやるよ!」

 

そう言って、咎徒は背中からまるで

猫又の尾を思わせる黒いオーラをのばすように展開していった

 

その時

 

「っ!」

 

「危ない!」

 

姫奈は、何かを察し優花を

姫奈も同じく、こちらは纏を…

 

それ以外の面々に、向かって

咎徒の放った闇が当たっていく

 

「うあ!?」

 

「きゃあ!」

 

玉井と仁村、奈々の三人に向かって

何やら黒いオーラが放たれて行った

 

それを受けて、三人はその場に倒れこんでいく

 

「奈々!」

 

「玉井君、仁村さん!」

 

優花は那奈に、幸いに攻撃が当たらなかった愛子は

玉井と仁村、二人の方にへと急いで駆け寄っていった

 

しかし、二人にはどうやら目立った外傷は無い

 

「…よかった、無事みたい…」

 

安どのため息をつく優花

 

しかし…

 

「っ!

 

 あんた、一体何をしたのよ!!」

 

姫奈が激しく、問いかけていく

 

「…こいつらを倒しちまいな、奴隷共」

 

その問いに答えることなく

ただ、そう言い放っていく咎徒

 

すると

 

「「「はい、ご主人様…」」」

 

三人は、まるで機械のように起き上がると

同じように咎徒の言葉に、ただそう返していった

 

「え?

 

 奈々?」

 

「‥‥ご主人様の命令よ、優花っち‥

 

 死んでくれる?」

 

そう言って、奈々は優花に向かって

何の躊躇もなく、氷の魔法を放っていく

 

優花は、慌てて回避行動に移っていく

 

しかし…

 

「はあ!」

 

奈々は、そんな優花に追い打ちをかけるように

氷魔法による、氷の弾丸を次々と打ち出していく

 

「優花!」

 

「ちょっと、何やってるの奈々!?」

 

突然、優花に向かって攻撃する奈々に

驚きを隠せない二人、その原因を察した纏は

 

「貴方‥‥宮崎さんに一体何を!?」

 

咎徒に激しく、問いかけていく

 

その様子を見て、笑みを浮かべ

咎徒は高らかに言い放っていく

 

「どうだ、これが俺の力だ!

 

 この俺の力によって、こいつらは生まれ変わったのさ‥‥

 

 俺の俺による、俺の為に動く奴隷としてな!!」

 

「奴隷っ!?」

 

纏は、不意に後ろを振り向いていくと

そこに映ったのは、武器である曲刀を振るい

 

纏に斬りかかろうとしている、玉井の姿が…

 

「うあああ!!!」

 

「っ!」

 

纏は、それを武器である槍で止める

 

「玉井君、目を覚まして!」

 

「偉そうに指図してんじゃねえよ!」

 

そう言って、纏を押し切っていく玉井

 

「ぐう…」

 

玉井は、動揺していたこともあり

バランスは崩さなかったものの、圧されてしまった

 

「その生意気な口、二度と聞けなくしてやるよ

 

 体でな!」

 

そう言って、曲刀で斬りかかっていく玉井

 

しかし

 

「やああああ!!!」

 

そう言って、槍を使って玉井をふっ飛ばす纏

 

しかし…

 

ふっ飛ばされて地面に叩きつけられた玉井は

何と、風に吹かれるようにして消滅して行った

 

「っ!?

 

 これは…」

 

その様子に、目を見開いていく纏

その後ろから、玉井が剣を振るわんとしていく

 

だが、それを…

 

「おっと!」

 

纏は、それを見事にかわして見せると

その際に彼に向かって、蹴りを繰り出していく

 

しかし、蹴られた玉井はまたしても

吹かれるように消えて行ってしまうのであった

 

「(厄介ね…

 

  これはおそらく…)」

 

纏は、不意にある方に目を向けていく

そこにいたのは、こちらに手を翳している仁村の姿であった

 

「へっへっへっ!」

 

仁村は下卑た笑みを浮かべていた

 

さらに、猛攻は続いていく

 

「おりゃあ!」

 

玉井は、再び死角から剣を振るっていく

 

それを、槍で止めた纏はそれを

流すようにして、剣を槍で滑らせて

 

そこに透かさず、玉井の腕をつかんだ

 

「っ!」

 

「つーかまーえた…

 

 流石に、攻撃まで幻にするわけにはいきませんからね」

 

玉井は、纏の手を振りほどこうとするが

纏も、聖徒には覚醒はしていないものの、ステータスは

優花達や玉井達のそれを超えているので、簡単には振りほどけない

 

「大人しくしてな‥‥さぁい!」

 

「どわあああ!?」

 

纏は、ステータスの筋力を使って

玉井を勢いよく投げつけて行った

 

その先にいたのは…

 

「うん!?

 

 うわあああ!?」

 

見事に玉井は、仁村に激突

二人はそのまま、気を失って行った

 

「ふう…」

 

纏は一息ついていく

 

「フン、甘いんだよ‥‥

 

 俺の力が、こんなもんで

 どうにかなるなんて思ってんのか?」

 

咎徒は、そう言って

手を翳して、黒いオーラを

気を失った玉井と仁村にかけていく

 

すると、二人は立ちあがり

二人は何と、気を失ったまま

 

纏に攻撃を仕掛けていく

 

「っ!

 

 意識を奪っても、お構いなしですか!?」

 

余りの事に、圧倒されて行く纏

 

「ヒヒヒ‥‥

 

 どうだ、こいつが俺の力だ!

 

 もうこいつらは人間じゃねえ

 生きるも死ぬも、この俺の思い通りさ

 

 この力を使って、思い知らせてやる

 この俺こそが、本物の勇者なんだってな!」

 

笑いながら、言い放っていく

 

「あんた…!

 

 どこまで腐ってんのよ!!」

 

優花が、アーティファクトの投げナイフを

咎徒に向かって投げつけて行った、だがそれを

 

地面を走る、氷の波がナイフの行く手を遮っていく

 

その氷を出したのは…

 

「ご主人様に手を出さないでくれるかな、優花っち」

 

奈々であった

 

「奈々、目を覚まして!

 

 アンタは操られてるのよ!!」

 

必死に呼びかけていく優花

 

しかし…

 

「氷よ、かの者を凍てつかせ

 そのものの動きを封じろ、氷縛!」

 

奈々は、自分を止めようとする優花に向かって

冷気を放ち、彼女の足元を氷で覆っていく、それによって…

 

「きゃ!」

 

優花は、凍った地面に足を滑らせて

そのまま、地面に倒れこんでいってしまう

 

「はい、これでおしまい!」

 

「があ!」

 

そんな優花の背中を踏みつけて

彼女を凍った地面に無理矢理、押さえつけていく

 

「優花!

 

 このっ!!」

 

風香は、咎徒の方に目を向けていき

武器であり槍のアーティファクトを構えていく

 

「ヒヒヒ‥‥

 

 どうだ、こいつを使えば

 誰もかれも、俺の思い通りだ‥‥

 

 誰も俺も見下さないし利用しないし

 何より、誰も俺の事を裏切ろうとも思わない

 

 そんなに強い奴もむかつく奴も、俺の気分次第でいいようにできる

 女だって、それこそ俺の思う通りの事をしてくれる、これこそが俺が‥‥

 

 俺の求めた、本当の闇属性の力だ!」

 

タカが外れたのか、何とも歪んだ本心を口にしていく咎徒

 

「随分と他人を思い通りに出来るのが、嬉しいみたいね

 

 でもね、他人を思い通りに操れるからって

 その人の心まで思い通りに出来るなんて、思わないで!」

 

姫奈は、そう言って

武器である剣を構えていく

 

「あ?

 

 てめえこそ、そんな風に偉そうな口を

 聞いてられんのも今の内だぞ、クラスの奴等からは

 高根の花だったお前も西宮も、白崎も八重樫もすぐにでも

 俺の思い通りの飼い犬に出来るんだ、今のこの俺の力なら‥‥

 

 それが、出来るんだぜ!」

 

咎徒が、腕から闇を放っていき

それを、何ともろに受けてしまう姫奈

 

「姫奈!」

 

姫奈が、敵の闇の力を受けたてしまい

そんな彼女に激しく声の方をかけていく風香

 

「ひ、ひひひ‥‥

 

 これでもうお前は、俺の思い通りだ‥‥

 

 さあて、俺のところに来て俺に奉仕をしてもらうぜ」

 

歪んだ笑い声を上げながら、姫奈に下劣な命令を下す

姫奈はゆっくりと咎徒の方に、ゆっくり歩いていく

 

「姫奈、しっかりしてよ!

 

 姫奈!!」

 

「さあ、俺のものになれ!

 

 南野!!」

 

そう言って、両手を広げて

姫奈を抱きしめようとする咎徒

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカじゃないの?

 

 アンタ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

そんな言葉と同時に、咎徒に向かって

勢いよく、拳の方が叩き込まれて行った

 

それによって

 

「がはっ!」

 

地面に倒れこむ咎徒

 

「‥‥いったでしょ?

 

 他人を操れるからって

 他人の心を手に入れられると思うなって…

 

 って言うか、アンタの能力が効いていないのは

 さっき、私が優花を庇った際に分かってたはずでしょうが?

 

 よっぽど、自分の力を盲信していたみたいね」

 

姫奈は、言い切って

自分の体を払っていく

 

さらに…

 

「なんでだ、何で俺の力が効かねえ!?」

 

「‥‥さあね、それについては

 私達もよくはわかってないのよ…

 

 でも、わかっている事だったらあるわ

 

 ねえ、清水君?」

 

「え!?」

 

「っ!?」

 

姫奈の言葉に、風香も優花も驚きの様子を見せる

 

「…あ?

 

 なんで俺が、清水だって思うんだ?」

 

「‥‥私たちの事を前から知っているような口振りだったし

 それに、ウィルさんの話や、他人を操る能力、これは主に

 闇属性の魔法によるものよね、貴方の適性は闇術師だったはず…

 

 行方不明になった冒険者には、闇属性に適性のある人はいなかった

 行方をくらましている人たちの中でそれがあるのは、彼だけだからね」

 

姫奈はそう言い切ると、自分の顔を

覆っている布を外していき、素顔を晒す

 

「…ちい、俺の力が効かないだけでなく

 俺の事まで見破られるなんて、どこまで俺を

 コケにしやがったら、気が済むんだてめえらは‥‥」

 

それは、顔にそばかすが付いた少年であった

 

「そんな‥‥清水君!?」

 

まさか、冒険者をさらっていたのが

自身の生徒であったという事に、愛子は

驚きを隠しきる事が出来ない様子を見せる

 

「‥…まさか、本当に清水君が…」

 

「なんでよ…

 

 なんでこんなことを!?」

 

まさかの正体に驚きを隠しきれない一同

 

「…決まってんだろ、証明して見せるんだよ‥‥

 

 この俺こそが、本物の勇者なんだって言う事を‥‥

 

 その為に俺は、この力を手に入れたんだ!

 

 世界すらも思い通りに出来る、この咎徒の力をな!!」

 

「咎徒の力、ねえ…

 

 聴きたいんだけれど、貴方

 その力を一体何処で手に入れたのよ」

 

姫奈は、問いかけていく

 

「たまたまだよ‥‥

 

 俺が強い魔物達を手にするために

 畑山先生たちと別れて、ここに来た時‥‥

 

 俺のもとに、魔人族が現れたのさ

 ある条件を満たしたら、俺を勇者として

 魔人族側に、迎え入れてやるって言われてな」

 

「条件?

 

 それって一体!?」

 

風香は問いかける

 

「それはな…

 

 畑山先生を、殺す事さ」

 

「っ!?」

 

清水の言葉を聴いて、驚きの表情を浮かべていく愛子

 

「何を驚いてんだよ、当然のことだろ?

 

 何しろ、あんたの能力のお陰で

 人間族の物資供給は安定しているようなものだ

 

 ある意味、勇者以上に優遇されるその力

 魔人族が指をくわえているだけな訳ねえだろ?

 

 だから、魔人族の方も手を回してきたのさ

 豊穣の女神、アンタをつぶせば人間族は大打撃…

 

 今のあんたは、それだけの存在ってことだよ」

 

「清水君…」

 

清水の言葉を聴いて、言葉が出ない

 

「あんた…そんなの、本気で言ってるの…!?」

 

優花は、奈々に抑えられながらも問いかけていく

 

「こんな時に、嘘なんて言うかよ?

 

 人間族はみんな見る目がねえ

 どいつもこいつも天之河、天之河‥‥

 

 ちょっと顔がいいからって、女まで

 あいつのほうにひょいひょい寄っていきやがって‥‥

 

 だから思い知らせてやるのさ、見る目の無いバカ共に

 俺の力がどれほどのものなのかを、この力を使ってな!

 

 あの冒険者共は、その為の餌だ

 あいつらの力を手に入れるたびに

 俺は、自分でもわかるくらいに強くなった‥‥

 

 これで俺は、俺こそが本物の勇者なんだって証明してやるのさ

 

 最も、人間族の、じゃなく魔人族の、だけれどもな」

 

狂った、笑みを浮かべながら言い放つ清水

 

「随分と都合がいいのね…

 

 本気で自分が、魔人族に勇者に

 迎え入れられるなんて、思っているの?」

 

姫奈は、問いかけていく

 

「…ひっひひひ‥‥

 

 南野、さすがに俺だって魔人族が

 そんなに都合のいい条件を出してくれるなんて思ってねえ‥‥

 

 俺はこの力を高めることを思いついたのは、まさに

 魔人族が、俺の事を裏切ろうとしたら、その時はこの力で

 俺が魔人族たちを支配し、利用する側にまわってやるのさ‥‥

 

 どっかの馬鹿みたいに、魔人族の甘言に乗せられて

 おめおめ、殺されるような無様を晒すような真似はしねえよ」

 

清水は、そう答えていく

 

「‥‥誰が、魔人族の甘言に乗せられたって…?」

 

姫奈は、不意に低い声で問いかけていく

 

それに対し、清水は気分が増長しているのか

そんな様子の姫奈に向かって臆することなく吐き捨てた

 

「決まってんだろ、南雲だよ、南雲!

 

 あいつは弱いくせに、魔人族とつながって

 俺たちの寝首を掻こうとしやがったんだ、でも

 結局はドジ踏んでって、無様に惨めに死んでいきやがった‥‥

 

 俺はあんな馬鹿とは違う、利用されるんじゃなく利用してやる!

 

 俺の力ならできる、あいつなんかとは違うんだよ!!」

 

席を斬る様に、死んだハジメの事を侮辱する清水

その表情は、まさに彼の死をあざ笑っているのは明白であった

 

「…しみずぅ、アンタ…」

 

優花は、地面に押さえつけられながらも

ハジメの事を侮辱する清水に怒りを表していく

 

「俺はあいつみたいな、雑魚とは違う

 俺は勇者なんだ、俺こそがこの世界の真の主人公なんだよ!

 

 それを邪魔する奴は、俺の力でみんな奴隷にしてやんのさ!!

 

 その為にも、手始めにウルの街を滅ぼしてやる‥‥

 

 この俺の力を魔人族に、人間族たちに思い知らせてやるのさ!!!」

 

そう言って、清水は再び

黒い猫のような外観に戻っていく

 

「逃がさない!」

 

風香が、風魔法を使って

その場から、離れようとする清水

その後を追おうとしていった、その時

 

「シャアア!!」

 

「うわっと!?」

 

横から、飛び出してきた何かによって

その行く手を阻まれてしまい、そのせいで

清水を追い続けていく事が出来なくなってしまう

 

風香の行く手を阻んだ、その正体は…

 

「こいつ!?

 

 こいつも生きていたの!?」

 

蛇型の咎徒であった

 

風香は、この前の奴が生きていたのかと

驚いた様子を見せていくが、それに対して

 

「いいえ、身体の色が違う!

 

 この前の奴とは、別の奴よ!!」

 

姫奈がそう指摘する、確かにこの前の蛇は緑色だったが

風香の行く手を阻んだこの蛇は、赤色の体色である

 

姫奈は、急いで風香のもとに駆けつけようとするが

そんな彼女に向かって、上空から弾丸のような物が降り注ぐ

 

姫奈は、それをかわしたり弾いたりして

空からの奇襲に対応していく、その時上にいたのは…

 

「クエエ!!」

 

何と、鳥型の咎徒であった

 

こちらも前回とは、体色が違っている

この前は赤色だったが、今回は青色である

 

「ヒッヒヒヒ‥‥

 

 お前らの方は、どうにも

 やりにくいからな、だから

 お前らの相手は、そいつらに任せるぜ!」

 

そう言って、その場を素早く離れていく清水

 

おそらく、ウルの街に向かったのだろう

ここからウルの街は、少なくともウィルを所よりも

時間はかからない、直ぐにでもついてしまう事だろう…

 

「この!」

 

風香は、槍を手に持って

自分に襲い掛かっていく蛇型の咎徒に

戦いの方を挑んでいく事にする、一方の相手は…

 

「シャアア!!」

 

持ち前の、素早い動き

それによって、残像が蛇のようになって

 

それが、風香の方に向かってとびかかっていく

風香はその攻撃を、どうにかかわしていったその際に…

 

地面が、一気に陥没しているのが映った

 

「こいつ、前の奴より攻撃力が強い…

 

 逆に速さはそれほどでもないけれど…」

 

風香が、そう言って地面に手をついて

持ち前の運動神経で、バク転をしながら体制を立て直す

 

しかし、そこに蛇型の咎徒の背中から伸びた尾が振るわれて行く

 

「おっと!」

 

その尾による一撃を、どうにかかわしていく

それによって、周囲の木々がなぎ倒されて行き

 

辺りに、木々が倒れこんでいく

 

「っ!

 

 まずい…」

 

姫奈が、それに気が付いて聖剣を取り出し

それを使って、木々を次々と斬り落として被害を押えていく

 

だが

 

「クエエ!!」

 

「っ!」

 

姫名に向かって、鳥型の咎徒が

四肢に付いた鋭い爪で切り裂かんと襲い掛かる

 

「風香…姫奈…」

 

その様子を、苦々しげに見つめている優花

 

しかし

 

「があああ!!!」

 

「大人しくしててよ、優花っち

 

 抵抗しなかったら、優花っちも

 すぐにでも幸利様の僕にしてもらえるからね?」

 

奈々にさらに、踏みつけられる優花

 

「…奈々、目を覚まして…

 

 アンタは、清水の奴に操られてるだけよ!」

 

「もう目なら覚めてるよ、優花っち

 

 幸利様はいずれ、勇者としてこのトータスに

 その名をとどろかせるお方なんだよ、そんなお方と

 一緒に居られるなんて、女として最高の栄誉じゃない?

 

 むしろ、目を覚ますのは優花っちの方だよ?」

 

奈々は、さらに言う

 

「なんですって…?」

 

「優花っちさ、自分の恩人の想いを大事にしたところで

 その人はもう、優花っちのところに来てくれるわけじゃないんだよ?

 

 それなのに未練ったらしく、そいつのことばっかり考えててさ‥

 

 そんな風に思い続けたところで、どうせ彼は優花っちの事を選んでくれるわけでもないし‥」

 

奈々は、そんな事を口にし続けていく

 

「…そんなの関係ない、あいつは

 どんな時だって、あいつはあいつの生き方を貫いた…

 

 だから、アタシもアタシの生き方を

 貫いていきたい、そう思っただけよ…

 

 奈々はそれでいいの、そんな風に誰かに勝手に

 自分の生き方を決められて、いいように使われて…

 

 アンタはそんな生き方に、誇りを持てるの!?」

 

「誇り?

 

 そんなの、持って生きて居たって

 それで死んじゃったら、元も子もないじゃん

 

 それに、どんな形でだって結局は最後に

 名を残せるのは、生き残った者だけなんだもの…

 

 だったら、その生き方を自分よりも強い人に

 委ねていくって言う選択肢も、十分にありだと思うけど?」

 

奈々は、臆面もなく言い返していく

 

「…アタシは嫌だ、そんな生き方…

 

 誰かの言いなりになって、死んだように生きていくくらいなら

 最後の最後まで、自分の意思で立ち上がって、精一杯生きて死ぬ…

 

 それがアタシの、アタシなりの生き方よ!」

 

優花はそういって、地面に手をついて立ち上がっていく

奈々は自分が踏み敷いていた優花に、圧されて行くのを感じていく

 

「な、何!?」

 

「奈々、アンタがそんな生き方をしたいって言うなら

 私は別にそれでもいい、アタシの生き方を押し付けるなんてしない…

 

 でもね、今のあんたは奈々じゃない!

 

 私は友達の意思を、心をこの手で絶対に掴み取ってやる!!

 

 そして、アンタの本当の気持ちを取りもどす!!!」

 

優花は、そう言って立ち上がっていくと

奈々はそのままバランスを崩して尻もちをついた

 

「‥‥っ!

 

 この、クソアマがぁ!!

 

 調子に乗ってんじゃねえ!!!」

 

奈々は、優花の首を絞め上げていく

 

「ぐう…」

 

「あんたなんて、アタシやたえっちがいなかったら

 ずっと一人ぼっちだったくせに、粋がってんじゃねえよ!

 

 家が洋食店だったせいで、周りの女子の流行りについて行けず

 

 そんなアンタに、アタシ達が声をかけて

 やらなかったら、どうなってたと思ってんのよ?

 

 アタシ達二人に出会ったから、今のあんたがいる

 アンタの生き方はアタシ達が与えたようなもんだろうが

 

 自分の生き方は自分で決める?

 

 説得力ねえんだよ、アンタの言葉には!

 

 アンタは所詮、アンタ一人では生き方も決められない

 しかも自分でそれに気が付いてもいない、ただの勘違い女よ!!

 

 そんなあんたが何を言おうとも、所詮は子供の主張

 誰の心にも響かないわよ、あんたの空っぽな思いなんてね!!!」

 

そう言って苛立ったように、吐き捨てていく奈々

 

「ぐううう…」

 

首を絞められて、段々と意識が薄れていく

 

その中で、彼女の脳裏に浮かんだのは、とある記憶であった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

優花は所謂、ギャルと言われる見た目の

まさに今どきの女子高生ともいえる少女である

 

しかし、彼女がそうなったのは

周りの流行に合わせたことによるものであり

 

本人は、実家が飲食店を経営している事もあって

衛生面の方は気を付けて、羽目を外さないようにしていた

 

そんな彼女は、高校でのある事がきっかけでる運命的な出会いを覚えていく

 

それは…

 

優花がある時、一人で帰路についていた時であった

 

「よう、かーのじょ?

 

 もしかして、この後、暇?

 

 それだったら、俺らと遊ぼうぜ?」

 

何と、ガラの悪い他校の男子グループに絡まれてしまう

 

「悪いけど、そう言うのは受けないことにしてるの…

 

 それに、お家のお手伝いもしないといけないし…」

 

優花は、家のこともあったし

何よりも、こういったタイプに関わると

どんなふうになるのかも、想像がついていたので

 

慌てて、男子たちの元から抜けようとする

 

しかし

 

「きゃ!」

 

「そんなつれないこと言うなよ

 

 俺たちが楽しい事、してやるからさ」

 

優花の腕をつかんで、彼女を自分達の元に引き寄せていく

 

「いや、放しt…むぐ!?」

 

「おっと、静かにしてろ?

 

 へっ、大人しくついてくりゃ

 痛い目を見ずに済んだってのにな…」

 

そう言って、優花を連れて行く男たち

 

そして、優花は人気のない裏路地にまで連れこまれた…

 

「んん!」

 

「へっへっへっ…

 

 あんまり抵抗するなよ、そしたら

 すぐに。気持ちよくしてやっからよ」

 

そう言って、男二人掛かりで抑えられ

その間に、ほかの男たちが優花の体をまさぐり始める

 

優花はそういった経験はないが、この状況から

彼女はこれから自分が何をされるのか、嫌でも理解してしまう

 

必死に振りほどこうとするが、男二人掛かりで

抑えられているのでそれも敵わない、ほかの男たちに

好き勝手に体をまさぐられていき、次第に目に涙を浮かべていく

 

優花は、段々と精神的にも疲弊していき

次第に抵抗する気力の方もなくなっていった

 

「(もう嫌…誰か…)」

 

「誰か、助けて下さい!」

 

「…っ!」

 

自分が、心の中で誰かに助けを求めるのに

重なる様にして、誰かが助けを呼ぶ声が聞こえてくる

 

「な、なんだ?

 

 どっから、聞こえんだ?」

 

「わ、わかんねえ

 

 どこに嫌がる、すぐに見つけて黙らせろ!」

 

男たちはそれを聞いて、辺りを見回していく

しかし、助けを求める声の持ち主はどこにもおらず

 

次第に、男たちの心に焦りが見え始めていく

 

「お、おい!

 

 まずいんじゃねえか!?」

 

「こ、これってもう逃げた方がいいんじゃねえか!?」

 

「ちっくしょう!

 

 これからだったってのに!!」

 

男たちはやがて、優花を襲う事よりも

誰かが来る前に、ここから離れる事を優先

 

服がはだけた優花の事をほっぽり出して

そのまま、蜘蛛の子散らすように脱兎のごとく逃げ出した

 

その場に、残された優花ははだけた服を

男たちにまさぐられた身体を覆う様に抑えていく

 

もしも、男達が逃げ出さなかったらどうなっていたのか

そんな恐怖から、少し過呼吸儀になって息を切らして行った

 

そんな時であった

 

遠目の方から、不意に誰かがその場を見ていくのが見えた

 

「あ…」

 

優花は、その誰かの存在に気付く

制服は自分が通っているとある高校の制服であった

 

服装の感じから、男子であることはわかった

優花はその男子生徒の事を知っていた、なぜなら

悪い意味で、その男子生徒は有名であったからである

 

男子生徒は、優花の様子を見た後

特に何もするわけでもなく、そそくさと

その場を去っていく、まるで自分の無事を確認した様に

 

優花は、そんな彼の意外な行動に

何時しか、男たちに服をまさぐられた恐怖が拭われ

 

急いで家路について行くのであった

 

その後、家に戻った優花は両親に事情を話し

自身を襲おうとした男子生徒たちの事を話していき

 

男達は、元々の問題行動もあって

通っていた高校を退学し、どこかにへと引っ越していったという

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

それから、しばらくして

優花の事を聞きつけた妙子と奈々が

心配そうに、優花に詰め寄っていった

 

「優花、大丈夫だったの!?

 

 変な事とか、されてない!?」

 

「え、ええ…

 

 服をはだけさせられたり

 体を触られたりしただけで…」

 

「もう、それ充分にまずいじゃん!

 

 今度は、なるべく一人でいない事

 用事が無いときは、私達がなるべく一緒にいるからね!!」

 

自身の心配をしてくれる二人に、嬉しくも圧倒されながら

優花は自分の教室に入っていった、そんな時に優花は不意にある男子に目をやる

 

「あ…」

 

その男子生徒こそ、この前

自分の事を助けてくれた男子生徒であった

 

不意に、あの時の光景が脳裏に浮かぶ

 

「うん?

 

 どうしたの優花っち?」

 

「…え、ああいや…

 

 何でもないわ」

 

奈々に不意に声を掛けられた優花は

慌てて、ごまかすように答えて行った

 

「……」

 

優花は、不意にその男子生徒

南雲 ハジメの事を目で追っていた

 

時は立って放課後

 

いそいそと帰る準備をしてる、ハジメに

優花は、人目が少なくなったのを見計らって声をかけていく

 

「あ、あの!」

 

「うん?」

 

優花は意を決して、話しかけて行くと

話しかけられた相手、ハジメはきょとんとした様子で優花の方を見る

 

「そのさ…この前の事なんだけどさ…」

 

優花は、本題の方に進んでいく

 

「この前って、なんのこと…?」

 

「この前、私が裏路地で襲われそうになった時

 あんた、大声を出してアタシの事、助けてくれたよね!」

 

優花は、そう言うとハジメはまるで

覚えがある様にと、身体の方を振るわせていく

 

「あ、ああいや…その…」

 

「待って、別にその事を責める気なんてないの!

 

 ただ、あの時のお礼を言わせてほしくって…」

 

優花は、慌てた様子のハジメを

少し困惑しながらも、理由を言って落ち着かせる

 

「その、さ…ありがとう、南雲…

 

 もし、あの時あんたが助けてくれなかったら

 アタシ、本当にあの時どうなっていたのか…

 

 だからホントに…ありがとうね…」

 

「そ、そんな…大した事なんて…

 

 僕には結局、あのぐらいしかできなかったし…

 

 それに、おんなじ学校の子が危ないの

 見過ごしたら、やっぱり後味だって悪いし…

 

 それに、無事だったのならそれでいいし…」

 

ハジメは、ハジメなりの言葉を口にしていく

 

「…ね、ねえ南雲…

 

 一つだけ、聞かせてもらってもいい?」

 

「うん?

 

 何?」

 

優花は、恐る恐る訪ねていく

 

それは…

 

「あんたはどうして…

 

 アタシの事を助けてくれようと思ったの?」

 

優花はそういって、改めて訪ねていく

ハジメにとって優花は親しいどころか

あの出来事まで、関わろうとも思わなかった

 

ただの同級生でクラスメイト、それだけの関係…

 

しかし、ハジメはあの時に自分が襲われそうになったのを

身を呈して守ろうとしてくれた、その理由がわからなかった

 

正直に言うと、何か下心があるのではないか?

 

むしろ、その方が納得できる

 

正直に言うと、こんな事を

不躾に聞いていいものではない

 

優花もそう感じていた、ただ同時に

不思議と彼という人物を理解したい

 

その気持ちが、無意識のうちにまさっていたのかもしれない

 

優花のそれに対し、考え込むような仕草を見せていくハジメ

 

「うーん…

 

 どうしてって、言われても

 ちょっと答えるのは難しいかな…」

 

「…どうして?」

 

ハジメの次の言葉を聴いて

優花は、また別の意味で驚いた

 

それは…

 

「だって…

 

 目の前で誰かが目の前で危ない目にあってたら

 どうにかしてあげないといけないって思うのは…

 

 それって、当たり前の事じゃない?」

 

ハジメは、照れくさそうにしながらも

臆面もなく、当たり前のように答えて行った

 

優花は、それを見て

本当の彼がどう言った人物なのか

 

断片的にだが、わかったのかもしれない

 

彼は決して、特別に強いわけじゃない

天之河のような、誰かを自然に引っ張っていく

そんなタイプとは、まったく別であると

 

それでも彼は、彼なりに意志をもって

出来る限りの事をやっていく、それでもって

目の前の事に立ち向かっていく事が出来る人間

 

彼は、そんな人間だと

 

正直に言うと、彼が自分を助けたのはあくまで

たまたま、目の前で自分が危ない目にあっていたから

 

でも、彼は自分の事を助けるために

自分に出来る限りの事をしてくれた

 

そして、自分の事を助けるために手を尽くしてくれた

 

それは、絶対に間違いない

 

彼は彼なりに、自分のために動いてくれた…

 

それだったら、自分も自分に出来る限りで

彼のその行為に報わなければならない、そう思った

 

「…ね、ねえ南雲!」

 

優花は、声を上げていた

 

「え、な、何?」

 

「その、さ…えっと…

 

 うちさ、実家が洋食屋なんだ…

 

 だからさ、よかったらうちに来てよ!

 

 お礼に、御馳走してあげるからさ!!」

 

優花は、そういってハジメを

自分の実家に誘って行った

 

「あ、いやだから別に僕はそんなのの為にやったんじゃ…」

 

「わかってる、でも

 あの時にあんたが来てくれなかったら

 

 もしかしたら、酷い目に遭っていたのかもしれない

 それなのに、このまま何にもしないでいるって言うのは

 

 アタシ自身が許せないの、言っておくけれど

 これはただ、私自身がそうしたいの、だから

 気が向いたときとかでいいから、足を運んでほしいの

 

 その時に、私なりにお礼させてもらうから!」

 

優花は、優花なりに思いを口にしていく

 

あくまでこれは、自分がそうしたいだけ

だから別に無理に聞いてほしいわけじゃない

 

ただ、あの時のお礼を、感謝の意志を伝えたい

 

それだけの事

 

ハジメは、優花の言葉を聴いて

最初は驚いた様子の表情を浮かべていた

 

しかし、しばらくすると笑みを浮かべていき

 

「ありがとう

 

 それじゃあ機会があったら

 その時は、お邪魔するね」

 

ハジメは、そう答えた

 

自分の為に何かをしたい

その優花の気持ちを尊重したのだ

 

優花もまた、その答えに笑顔をうかべていった

 

これが、優花とハジメの初めての接点であった

 

優花は、彼がお店に来てくれる

その日を待ち続けてたのであった

 

だが

 

その機会は残念ながら、訪れることはなかった

 

件の出来事が、彼に振りかかっていき

彼はそのせいで、学校内外でいわれのない罪を…

 

背負わされてしまい…

 

それが、二人の関係を引き裂いてしまうのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「あんたに出来る事なんてない!

 

 そうやって無様な姿をさらしていくくらいが

 アンタのような、つまんない女にはお似合いよ!!」

 

奈々は、優花の首を絞め上げながら

優花のことを、辛辣に罵倒していった

 

すると、そんな奈々の身体を抱きしめるものが現れる

 

「ダメです、菅原さん!

 

 もうこれ以上、誰かを苦しめないで下さい!!」

 

それは、愛子であった

 

「…愛ちゃん…先生……」

 

意識が薄れていくが、そんな中でも

奈々を必死に止めようとする愛子の姿が見えた

 

「っ!

 

 この‥‥離せ!!」

 

「離しません、もうこれ以上

 生徒が苦しんでいくのを、黙って

 見ているなんて、そんな事は出来ません!」

 

愛子は必死に訴えていく

 

「ええい!

 

 離せ!!

 

 土いじりぐらいしか

 能の無い役立たず教師が」

 

奈々は口汚く愛子を罵倒していく

 

「‥‥そうですね、私は本当に役立たずです

 目の前で苦しんでいる生徒の為に私は何にもできなかった…

 

 挙句には、その彼が目の前で炎に包まれて行くのを

 ただ、黙って見ている事しかできなかった、生徒の事を

 守る事が出来ないなんて、私は先生である資格はありませんよ…

 

 でも、だからこそ目の前で救う事が出来るかもしれない

 誰かがいるのを、黙って見ているなんてそんなことは出来ません!」

 

愛子は、それでも奈々を止めようとしていく

 

だが

 

「ぬかせ!

 

 アンタなんかに、誰かを助けるなんて

 本気でそんな事が出来ると思ってんの!?」

 

「出来るかできないかじゃない!

 

 助けるんです、そのためにも私は

 私にできる事で生徒を、皆さんを守る

 

 そのために、私は戦うんです!!

 

 ここで動かなかったら、菅原さんの事も救えなくなる!!!」

 

愛子は、言い切る

 

「っ!」

 

愛子が、奈々を止めようとしているのは

奈々に掴まれている優花だけではなく、彼女の首を

締め上げている奈々のことも、思ってのことである

 

「愛子殿…」

 

愛子が、優花達のために

必死に立ち向かっていくその姿に

 

ウィルは固唾をのんで見守る

 

しかし

 

「ぬかせ!

 

 そんなでかい口が二度と聞けないように

 アンタの身体ごと、氷漬けにしてやるよ!!」

 

奈々は、自身にしがみつく愛子に

自身の天職である氷術師による氷の魔法を

ぶつけて行こうと、愛子に向かって手をかざした

 

その時

 

「ぐう…ううう…」

 

「っ!」

 

優花が、自身の首を絞め上げている

奈々の腕を、力一杯に掴んでいった

 

奈々はそれに驚き、思わず優花の方を見る

 

「あ、あんた‥」

 

「そうよ、奈々が

 アタシの友達がこんなことして…

 

 何にも感じないわけない…

 

 だって奈々は、南雲のことで思いつめてた

 アタシに、黙って手を差し伸べてくれたもの…

 

 そんなあんたが、こんなことをして平気なわけない!

 

 目の前で誰かが苦しんでいるのに、こんなところで

 黙って見ていくだけだなんて、そもそもアタシは考えてない!!

 

 目の前で誰かが危ない目に遭ってたら、自分に出来る限りで助けてやる…

 

 あの時、南雲がそうしてくれたように、アタシも

 アタシに出来る事を全力でやって、大切な友達を…

 

 救って見せる!!!」

 

優花が、力強くそう言い切った

 

その時

 

優花の右腕から、オレンジ色の光が輝き

その光に驚いた奈々は、優花を思わず離した

 

同時に、愛子もまたその光を浴びて

顔を手で覆うと、それによって奈々から手を離してしまった

 

「こ、これは…」

 

その光は、その近くにいた者たちにも届く

 

「これって…」

 

「あの時の光…」

 

「という事は…

 

 まさか!?」

 

三人は、優花の方に目を向けていく

 

優花は、光に包みこまれて行く

 

「こ、これって…」

 

優花は、自分の周りを包み込んだ光に

驚きと困惑の様子を見せていった、その時

 

優花の右手に、紋章のような物が光る

 

「…これって…」

 

その紋章は、色は違うが

姫奈や風香、香織の右手に

浮かんだものと同じ形であった

 

ー親愛なる友を救いなさいー

 

「…え?」

 

優花の頭に声が響いていく

 

優花が不意に、どこから声がしたのかと

辺りを見回していくが、再び声は響いていく

 

ーあなたはかつて、自身を救った恩人を救いだせず

 

 その後悔を、内に秘めながら今を過ごしていました

 

 しかし、その後悔があなたの中にある決意を芽生えさせた

 

 貴方のこの力は、その決意によって生まれたのですー

 

「決意…」

 

優花は呆けていると、今度はその耳に声が聞こえる

 

その声には聞き覚えがあった、何故なら

 

「優花っち‥」

 

「奈々!?」

 

自分の首を絞め上げていた、奈々の声

だが、それは先ほどまで聞いていた荒々しいものではない

 

弱々しく苦しそうな、悲痛な声

 

「‥‥優花っち、お願い‥

 

 これ以上アタシ、優花っちを

 友達の事を傷付けたくない、お願いだよ‥

 

 アタシを止めて!」

 

奈々の消え入りそうな、声が優花の耳に入っていく

 

「奈々っ!」

 

優花は、決意を付けたように

グッっと拳を造って、構えていく

 

「待ってて、奈々…

 

 私が絶対に、絶対に止めてあげる!

 

 お願い、もしもこの力で大切な人達を

 助け出せるのなら、私にその力を貸して!!

 

 あの時の彼のように、誰かを助けたいの!!!」

 

優花は、己の決意を口にしていき

 

彼女の右手に光が集まっていくと

優花は、その光を地面に向かって放つと

その光は、優花の体を包み込んでいき

 

優花の服装は、変わっていく

 

元の服装の面影を残した

動きやすい灰色を基調とした服装になった

 

やがて、光が払われると

そこには聖服に身を包んだ優花の姿が

 

「園部さん…」

 

優花の変化に、愛子を含めた

その場にいる全員が驚きの声を上げていた

 

「優花さん…

 

 まさか、貴方も聖徒に覚醒を…」

 

纏は、驚きを隠せずにいる

 

「‥‥な、なによそれ‥

 

 姿が変わったからって

 それがどうなるって言うのよ!」

 

奈々は、そういって手を翳し

優花に氷の魔法を放たんとする

 

だが

 

「ん!」

 

「っ!」

 

優花は、素早く後ろを取り

彼女の後頭部に手とうを入れて

 

意識を刈り取った

 

「てめえ!」

 

それを見て、玉井や仁村も仕掛けていく

 

だが、ただ操られているだけで

ステータスが変わっていない二人では

聖徒に覚醒した、優花の相手ではなく

 

瞬く間に、意識を刈り取られる

 

「優花、気を付けて!

 

 敵はまだ、残ってる!!」

 

風香が、優花に呼び掛けていく

 

すると

 

「シャアア!!」

 

蛇型の咎徒が、優花に襲いかからんとしていく

 

それに対して…

 

優花は、大きく飛び上がっていき

蛇型の突撃をどうにか躱して見せていく

 

だが

 

「クエエ!!」

 

そこに潜んでいた、鳥型の咎徒が

武器である両手の爪をふるって斬りつけていく

 

優花は、それを足に付けている

ショルダーに仕込んでいる短刀を取りだし

 

それを使って、鳥の爪を止めて見せる

 

だが、いかんせんそこは空中

飛行能力など微塵も持っていない優花は

そのまま、鳥型の勢いに圧されて行き、地面に落ちていく

 

「ぐううう…」

 

優花は、そのまま

地面に向かって落とされて行く

 

その下において、蛇型の咎徒が

まるで獲物を待ち受けるようにして

 

優花に向かって、牙状の腕を構え

それを使って、優花に斬りかかっていく

 

一方の鳥型の咎徒の方も、上空から

優花にとどめを刺さんと足についたかぎ爪で斬りつけていく

 

上空からも地上からも、攻撃を仕掛けられんとする優花

 

だが

 

「っ!」

 

優花は、二人の咎徒をぎりぎりまで引き付けていき

二人の攻撃が今まさに振るわれんとした、その時である

 

優花は、二体をそれぞれ

踏みつけるようにけって宙を移動する

 

それによって二体の攻撃をかわす

 

しかも、それだけではなく

 

「シャアア!!」

 

「クエエ!!」

 

二体のそれぞれの攻撃がそれぞれに炸裂し

それによって二体は、そのまま真っ逆さまに落ちていった

 

二体とも、地面に勢いよく激突

その反動のせいか、立ち上がりのも億劫のようで

 

足つきがふらついている様子を見せていく

 

「今だ!」

 

優花は、武器である短刀に

自身の適性である炎を付与させていき

 

それを使って、二体に素早く斬り込んでいき

 

「やあああ!!!」

 

優花の、炎を纏わせた一撃が

二体の咎徒に見事に炸裂していった

 

「「ぎゃああ!!」」

 

二体の身体は、ガラガラと

まるで石が崩れていく様にして崩れていき

 

更には、その胸元で輝いていた宝石が地面に落ち

そのまま、真っ二つに割れてしまうのであった

 

「奈々、それにみんな!!」

 

優花は、急いで操られていた仲間のもとに向かう

 

三人は愛子とウィルの二人によって介抱されていた

 

「優花さんが意識を刈り取ったおかげで

 

 特に目立った外傷はありませんよ」

 

「よかった…」

 

三人の無事を確認できて

安堵のため息をついて行く優花

 

しかし

 

「だけど、このままにしておくことも出来ないわね…」

 

そこに姫奈と風香、纏の三人も合流

その話を聞いて、姫奈は第一に声を上げていく

 

「どういうこと?」

 

「清水の力は、もう私達が知っている

 闇魔法のそれとは勝手が違っている…

 

 三人とも、目を覚ましたところで

 洗脳が解けている保証はないって事…

 

 もしかしたら、また私達に襲い掛かってくるという

 その可能性もある以上ずっとこのままにも、してはおけないし」

 

「だとすると、やっぱり…

 

 操っていた張本人を何とかしないといけないね」

 

風香がそう言うと、優花は不意に

ある人物の方に目を向けていった

 

そこにいたのは…

 

「清水君…」

 

悲し気な表情を浮かべている、愛子がいた

 

無理もない、自身とともにこの世界に流れ

短い間ながらも苦楽を共にした生徒が、このように

とても許されないことをしたのだという事を理解してしまったのだから

 

「先生」

 

そんな愛子に向かって真剣な様子で

声をかけていくのは、姫奈であった

 

彼女は問いかけていく

 

「南野さん…?」

 

「先生が清水君の事を心から心配して

 彼の事をできれば救ってあげたいんだって…

 

 その気持ちは理解できる…

 

 でももう彼は、人としての道を完全に外してしまい

 ウィルさんの仲間や多くの人達を危険に晒したのも事実…

 

 だから、先生にとっては最悪の選択を取る事にもなるかもしれない…」

 

姫奈は言う

 

「‥‥最悪の選択って…

 

 まさか、清水君を!?」

 

「先生!

 

 清水君はもう、それほどの事を

 許されないところにまで来ちゃってる…

 

 だから先生、覚悟を決めてください…

 

 万が一彼が、止められなかった時のことを…」

 

纏が言う、その口ぶりから

彼女も本意ではない事が伺える

 

愛子も、もちろん理解していない訳ではない

だが、それでもやはり自分の生徒を失う事の恐怖もある

 

ハジメと渚沙の件が尾を引いているゆえに、猶更である

 

愛子は、生徒を助けたいという気持ちが強い

しかし、気持ちだけではどうにもならないことは

 

あの時に嫌というほど味わされた

 

こんな時に何もできない自分が、許せない

 

「‥‥わかっています、私だって

 清水君が許されないことをしたことは…

 

 ですが、その役目を皆さんにだけ背負わせるのも出来ません!」

 

愛子は、顔を上げていく

 

「私も行きます、戦う事は出来なくても

 それでも私は、皆さんと一緒に立ち向かいます!

 

 私は先生です、生徒にすべてを背負わせるなんてしません!!

 

 だから、だからこそ私も行きます、いいえ。行かせてください!!!」

 

愛子は言う

 

それに対して…

 

「やっぱり先生は先生だね」

 

風香は、笑みを浮かべてそう言った

 

「そうと決まったら、急ぎましょう!

 

 恐らく、清水君はウルの街に向かったはず

 香織やラナさんがいるけれど、街で暴れられたら大変なことになるわ!!」

 

「ええ、急ぎましょう!」

 

姫奈と優花は、街に戻る決定を固めていく

 

「清水君…」

 

愛子も、悲し気ながらも覚悟を決め

自身の表情を引き締めていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?

  • 原罪(スルー推奨)
  • 傲慢
  • 虚飾
  • 嫉妬
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 憂鬱
  • 暴食
  • 色欲
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