世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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Impetus Peccatorum Obscurorum、The Wrath of the Saints of Wisdom、Als Folge dieser Traurigkeit...

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ウルの街

 

そこでは、多く運び込まれて行く

負傷者の対応に追われていたものの

 

香織という、エーテルの力で強化された治癒魔法により

多くの負傷者を助けだしていく事が出来た、その甲斐もあって

現在は運び込まれた冒険者たちも、落ち着いてきたので香織は

 

安静の為に横になっている親友

 

八重樫 雫…

 

 

彼女のもとに突きっきりになっている

 

八重樫の脇腹に浮かんでいる傷は、どんなに

治癒を当てても浮かんできてしまい、その度に

雫は痛みに苦しんでいく事になっていってしまう

 

現在では、痛みの方も治まっているので

香織は落ち着いた様子の雫に付き添ってやっている

 

「気分はどう?

 

 雫ちゃん…」

 

香織が、目をゆっくりとあけた雫に訪ねていく

 

「ええ、大丈夫よ…

 

 ごめんね香織、私のせいで

 疲れているのに迷惑を掛けちゃって…」

 

「気にしないで、雫ちゃん…

 

 私が好きで、やってるんだから」

 

雫は、申し訳なさそうに言うが

香織はそんな彼女に笑顔を見せて答えていく

 

「‥‥そういえば、姫奈たちは?」

 

「行方不明になってる冒険者を探しに

 北の山脈地帯に向かったよ、愛ちゃん先生と一緒にね」

 

雫は、姫奈達の行方を尋ねると、香織はそう答えた

 

「‥‥そうなのね…

 

 大丈夫かしら」

 

「大丈夫だよ、姫奈ちゃんは強いし

 風香ちゃんに纏ちゃん、優花ちゃん達もいるんだもん

 

 絶対に戻って来るよ」

 

香織は、雫を心配させまいとそう答えていく

 

向こうで何が起こっているのか

それらを知っていく術はない、しかし

姫奈達の強さも理解している、だからこその返答である

 

雫もそれは理解しており、香織のその返答に

これ以上は、何かを言うつもりはなかった

 

しかし

 

ーちょっと、やめて下さい!

 

 なんなんですか、貴方達!!ー

 

ーうるさい、私達は神殿騎士だ!

 

 この先の部屋にいる奴に用がある、邪魔するな!!ー

 

外から、何か騒がしい声が聞こえていき

雫は何事なのかと、少し不安を覚えていく

 

香織は、こちらに向かってきている

気配と声から、誰が来たのかが予想がつき

 

雫を守らんと、彼女の前に出ていった

 

それと同時に

 

「おい、逆賊!

 

 愛子はどこにいる!!」

 

扉をぶち破るように入ってきたのは

水妖精の宿においてひと悶着を起こした、神殿騎士の男性であった

 

「なんなんですか、貴方!

 

 ここは治癒施設だよ、ここには

 負傷して安静が必要な人達が大勢いるんだか

 

 静かにしてよ!!」

 

「黙れ、この裏切り者め!

 

 神の使徒でありながら、その役目を放棄し

 逃げ出した異端者の分際で、神殿騎士たる私に

 そのような口を聞くなど、おこがましいわ!」

 

香織の言葉に、聞く耳持たずの様子で

彼女に向かって、剣を抜いてその切っ先を向けていく

 

「っ!

 

 何のつもり…」

 

「聞いているのは、こちらだ

 お前達はただ、私の言う事にのみ答えろ!

 

 それ以外の発言は許さん!!」

 

余りにも横柄な態度に、香織も雫も

当然ながら不満の方を露わにしていく

 

「愛子をどこにやった!

 

 数日前から姿が見えん!!

 

 愛子をどこにやった!!!」

 

「それを聞いて、どうするつもりなの!」

 

香織は臆することなく、訪ねていく

 

「黙れ!

 

 聞かれた事にのみ答えろと言ったはずだ!!

 

 愛子を大人しく、我々のもとに戻せ

 さもなくば、貴様等の首をここで斬り落としてやる!!!」

 

そういって、余りにも詩織滅裂な返答をしていく

 

「‥‥本当に救いようがないよね、貴方…

 

 そんなんだから、愛ちゃん先生も

 愛想をつかして、貴方達の元からいなくなったんでしょ!」

 

香織は、負けじと返していく

 

「黙れ、愛子は貴様らとは違う!

 

 貴様等のような異端者が、愛子の事を語るなあああーーっ!!」

 

そういって、とうとう斬りかかっていく神殿騎士

 

しかし

 

「語ってるのは、どっちなのよ」

 

香織は、そういって

神殿騎士の剣をかわして

 

その首筋に手とうを当てて意識を刈り取った

 

「まったくもう…

 

 雫ちゃん、大丈夫!?」

 

「え、ええ…

 

 それにしても、この人は?」

 

雫は、倒れている神殿騎士について訪ねていく

 

「‥‥ああ、そういえば

 雫ちゃんは初めて会うんだっけ

 

 この人は、愛ちゃん先生の護衛ってことで

 農地開拓の旅に同行してる、神殿騎士の人だよ」

 

香織は、そっけない様子で答えていく

先ほどの対応で、完全に嫌気がさしたのだろう

 

雫自身も、神殿騎士の対応に

不快感を覚えているので、香織のその様子

それに対して特に、何も言おうとはしていなかった

 

そこに…

 

「ああ、もう!」

 

施設の関係者が入って来た

 

「あ、治癒師さん…」

 

「ごめんなさい、この人がいきなり

 ずけずけと香織さんのところに入っていって

 

 待ってもらうように言ったんだけれども

 聞いてくれずに、無理矢理押し切られてしまって…」

 

申し訳なさそうに、頭を下げていく治癒師の女性

 

「いいんです、悪いのはこの人なんですから」

 

香織は、治癒師をなだめるようにしていく

 

そこに

 

「団長!」

 

倒れている男性と、同じ鎧を着こんだ男性が駆け込んでくる

 

「ちょっと、神殿騎士様!

 

 ここにはたくさんの患者さんがいるんです

 いくら神殿騎士でも、患者さんのご迷惑になるようなことはやめてください!」

 

治癒師の女性が、言い放っていく

 

「申し訳ありません…」

 

その男性は、気を失った

同じ神殿騎士の男性を肩に担いで

 

急いで、その部屋の方を後にしようとする

 

すると

 

「神殿騎士さん!」

 

その神殿騎士に向かって、声をかけていく香織

 

「な、何でしょうか…」

 

「目が覚めたら、その人に

 それから他の神殿騎士の人にも伝えておいて下さい

 

 貴方達が、私達の事をどう思おうと勝手ですが

 もしも、それで私の大切な人達を傷付けようとするなら…

 

 今度は気絶程度では、済まさないから…」

 

香織は、圧のこもった声で言い放つ

 

「っ!」

 

男性を抱えた騎士は

思わずたじろいてしまう

 

「‥‥その事、おめおめ忘れないように…」

 

「‥‥わ、わかりました…

 

 肝に銘じておきます…」

 

そう返しながら、部屋を後にしていく神殿騎士

 

「‥‥香織…」

 

そんな香織の様子を見て、おそるおそる声をかけていく雫

 

「‥‥ごめんね、雫ちゃん…

 

 安静にしておかないといけないのに、騒がしくしちゃって…」

 

香織は、一息つくと、先ほどとは打って変わって

まるで無力感に打ちのめされたような悲し気な様子を見せる

 

「ううん、ありがとね香織…

 

 でも、本当にごめんね

 本当だったら、私が前に出るべきなのに…」

 

雫は、そう返していく

 

香織は自分の為に、立ち向かってくれている

それなのに自分は、自分の身体を蝕んでいる

自身の身体に浮かび上がっている傷が疎ましかった

 

香織の優しさに甘えっぱなしなのが、本当に申し訳ない

 

しかし、そんな雫の心境を知ってか知らずか

彼女の口元に何かが優しく押し当てられていった

 

「雫ちゃん、もうそういうのは言いっこなしだよ

 

 雫ちゃんは今は、病人なんだし

 こういう時は素直に誰かの厚意に甘えておくものだよ

 

 だからもう、謝るのも自分を卑下するのも終わり

 雫ちゃんには、傷を治してまた元気になってもらわないと、ね」

 

香織は、精一杯の言葉を雫にかけていった

 

雫が、段々と精神的にも参り始めていると感じていたからだろう

 

だから、出来る限りの言葉をかけて

雫に少しでも、前向きになってほしい

 

傷を治すだけでなく、心のケアの方も出来る限りにやっていく

それが香織が、自分がやるべき事であると信じているのだから

 

「そうだ、雫ちゃん!

 

 喉とか渇いてない?

 

 良かったら、もらってくるけれど」

 

香織は、雫にそう尋ねていく

 

「‥‥そうね、出来たらお願いしようかしら」

 

雫は、思わず遠慮しそうにしてしまうが

香織が自分の事を思ってしているのだと理解し

 

香織の言葉の通り、厚意に甘えさせてもらうことにした

 

「うん、それじゃあもらってくるね」

 

香織は、そういって部屋を出ていった

 

「‥‥香織…」

 

そんな香織が出ていった扉を、心配そうに見つめていく雫

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「ふう…」

 

香織は、外に出ると少し

落ち着きを取り戻したかのように

息を漏らしていった、外の風が肌に当たり

その冷たさが、不思議と心地よさを覚えさせる

 

香織は、この治療院の手伝いに駆り出されてから

碌に休めていなかったからだ、冒険者たちの治療や体調管理

 

同じ場所で療養している、二人のクラスメイトの状態管理に

何よりも、雫の身体に付いた傷の治療もあってなかなか心が休まらなかった

 

そんな時に、神殿騎士の狼藉もあり

雫が前にいる以上は、弱音も吐けなかった

 

だが、実際のところは香織自身もいっぱいいっぱいだった

エーテルの力で、治癒能力が強化されているとは言えども

 

それで、自身の心のケアが出来ているという訳でもない

 

それでも、必死に自分の心を奮い立たせていったが

やはり、そう長く続いていくという訳でもなかった

 

「‥‥どうしてこんなことになっちゃったんだろう…

 

 雫ちゃんが、あんなにも苦しんでいる

 私が王国を出ようって言いださなかったら…

 

 なんで私の決断は、たくさんの人を傷付けちゃうの…

 

 ハジメ君が苦しんだのも、私の軽率な行動が原因だし

 そのくせ、渚沙ちゃんのようにハジメ君の事を支えられてもいない…

 

 なんで私は‥‥大切なものを傷付けてばっかり何だろう…」

 

そんなことを、人知れず吐露していく香織

 

香織は持っているアーティファクトの杖を握り締めていく

 

そんな時であった

 

「うん?」

 

香織は、不意に騒ぎ声が聞こえていき

声のするの方にへと、急いで向かって行く

 

香織の目に映ったのは、どうやら

急患が治療院に運びこまれて行く様子であった

 

「すいません、何かあったんですか!?」

 

「おお、香織殿!

 

 実は急患だ、この町の入り口付近に

 倒れていたのを、見張りが見つけてな

 

 ひどい状態だったから、急いで治療と思って…」

 

香織は、そういって

倒れている人物の方を見る

 

香織はその人物の顔を見て

驚愕の表情を浮かべていった

 

それは何と…

 

「う…ううう‥‥」

 

「清水君!?」

 

愛子が行方を探していたクラスメイト

 

清水 利幸…

 

 

彼であったのだ

 

「危険な状態だ、一刻の猶予もない

 

 香織殿、治癒を手伝ってくれるか!?」

 

「わかりました!」

 

香織がそういって、清水を運んでいく人達について行く

 

しかし…

 

「(おかしい、何で清水君がこの町に…

 

  そもそも、行方不明になったのは

  ウルの街から馬車で二週間もかかるところ…

 

  馬車も何にもない清水君が、どうしてこんなところに…)」

 

香織は、不意に疑問符を浮かべていった

 

その時

 

「っ!」

 

香織は、急に誰かに抑えられた

 

それは何と、治療院に努めている職員であった

香織は急に抑えられたことに驚きががらも、すぐに

その抑えている腕をつかんで、振る抜いていった

 

その際に、職員たちの方から抜け出ていくと

香織は、目の前の光景を見て驚きの様子を見せる

 

それは…

 

「皆さん!?

 

 一体どうしたんですか!?」

 

何と、そこにいる治療院の職員や関係者

その全員が、香織の前に立ちふさがる様に立っていた

 

香織は、急いでアーティファクトの杖を構えようとするが

どうやら、先ほど押えられた際に落としてしまったようであり

 

手元にはなかった

 

すると、一団の中をくぐっていくように一人の人物が現れた

 

その人物は…

 

「清水君…」

 

そう、香織達とともにこの世界に転移されたクラスメイトの一人

 

「よう、久しぶりだな白崎‥‥

 

 お前らが王国を出て行って以来だな」

 

清水であった

 

清水の手に会ったのは…

 

「っ!

 

 私の杖…」

 

「いけないなぁ、聖女様‥‥

 

 こんな大事なものを落としてしまうなんてな‥‥」

 

香織が持っていた、アーティファクトの杖であった

 

「‥‥何で貴方がここにいるの?」

 

香織は不意に訪ねていく

 

それは心配から来るものではなく

疑念から来るものである、それに対して清水は…

 

「…その問いに対しての答えは、お前の中で出ているんだろ?」

 

あえて、そう答えていく

 

「みんなを、元に戻しなさい!」

 

「それは困る、こいつらはせっかく

 手に入れた俺の大事な駒なんだからな」

 

香織の要求を静かに否認していく清水

 

「駒ですって…

 

 という事は、やっぱり…」

 

「その通り‥‥

 

 ウルの街を始め、北の山脈地帯を訪れた

 上位冒険者を攫って行ったのは、俺だよ‥‥

 

 俺の天職の事は知ってるだろ?

 

 ステータスプレートの開示の際に

 みんなの前で、発表されたんだからな」

 

清水は臆面もなく言う

 

「‥‥それじゃあ、魔物が頻繁に現れたのも

 そのせいで、多くの冒険者を手に懸けたのも…」

 

「ああ、俺だよ‥‥

 

 俺の天職である闇術師による闇魔法は

 言うならば、相手を洗脳して意のままに操る能力‥‥

 

 ただ、人間のような意志を持つ生き物を操るには

 どうしても向かなくってね、だから理性をもたない魔物を

 使役しようと考えたんだ、その為にお人好しの畑山先生の旅に同行したのさ」

 

清水の言葉に、香織は目を細めていった

 

「愛ちゃん先生の旅に同行したのは、その為…!」

 

「ああ、あのまま王国にいても

 俺にはもう、伸びしろはないと思ったからな‥‥

 

 しっかり、本当にやってられなかったぜ

 泥臭い畑仕事を、どろどろになりながらやるのは‥‥

 

 まあ、その甲斐もあって俺は目的の場所にまで来られたんだ

 そうなったらもう、畑山先生も戦いから逃げ出したモブ共も用済みさ

 

 そして同時に思い知らせてやるのさ、天之河じゃなく

 この俺こそが真の勇者、この世界の主人公dsって言う事をな!」

 

清水は塞を切ったかのように言う

 

「ふざけないで!

 

 愛ちゃん先生の気持ちを利用しておいて、勇者?

 

 そんなの、認められるわけないでしょ!!」

 

「認めざるを得なくなるさ‥‥

 

 人間族も、魔人族も

 俺こそが真の勇者であるんだってな!

 

 そうなったら、あの天之河だって俺に跪く

 南野や西宮、八重樫やお前だって俺のものになる‥‥

 

 全てが俺の思い通りになるのさ!!」

 

「ふざけるのも大概にして!

 

 自分が特別な存在にでもなったつもり!!」

 

香織が激高して言い放つと、香織に向かって

清水に操られた人々が、香織を押さえつけていった

 

「特別な存在になったつもり?

 

 違うな、俺は元から特別なのさ‥‥

 

 その証拠にここにいる奴等は、みんな

 この通り、俺の思い通りになっている‥‥

 

 あいつらも今頃は、俺がしかけた

 あいつらの手にかかって、死んでいるだろうしな」

 

地面に押さえつけられた香織を見下ろしながら

下劣な笑みを浮かべて、そう吐き捨てていった

 

香織は、その言葉を聞いてハッっと見開いていく

 

「あいつらって、まさかみんな!?」

 

「そういうこった、くっくっくっ‥‥

 

 ざまあみろってんだ、カス共

 どのみち、ああなる運命だったんだよ!

 

 畑山先生も殺したし、もう後はこの町を落とせば

 俺は魔人族から、勇者として迎え入れられるんだよ

 

 ここからいよいよ、俺を主役にした俺の物語が始まるのさ!!

 

 この俺、勇者清水の物語がな!!!!」

 

愛子達を手に懸けたことを、まるで

自分の武勇伝のようにして言い放っていく清水

 

「ふざけないでよ!

 

 愛ちゃん先生やこの町の人を

 そんな身勝手な欲望を果たす為に陥れて…

 

 そんな貴方が、周りから称えられるわけないでしょ!

 

 ただ、いいように利用されているだけじゃない!!」

 

香織はそう言い放つ

 

「おいおい、俺を何だと思ってる?

 

 俺はこの通り、人間だって思い通りに操れる

 俺は利用する側だ、利用されるなんてそんな間抜けにはならねえよ」

 

下劣な笑みを崩すことなく言い放つ清水

 

しかし

 

「そんな力に頼って、無理矢理に人を従えたって…

 

 そんな張りぼての関係なんて、長く続くはずない!」

 

香織は言い放つ

 

その言葉に、腹の虫が悪くなったのか

少し声を荒げながら、言い放っていく

 

「ほざけ、俺は選ばれた人間なんだ!

 

 闇術師なんて、人間相手には何の役にもたたない

 塵天職を、俺の才覚のみでここまで強くしていったんだ!!

 

 身の丈に合わない事をしたせいで親も居場所も、何もかもを無くして

 挙句にはこの世界に召喚されても天職も与えられずに、無様な最期を迎えた‥‥

 

 どっかの間抜けとは、違うんだよ!!!」

 

清水は言い放った

 

「‥‥ハジメ君を…ハジメ君を悪く言うな‥‥…」

 

それを聞いて、ひしひしと自身の中に

激情を湧きあがらせていく香織、それに対し…

 

「いいや、何度だって言ってやるよ!

 

 陰キャでうだつの上がらない雑魚のくせに

 身の丈に合わないことをするから、こうなるんだよ!!

 

 大方、女にいい所を見せようとでもしたんだろうが

 その結果、何もかも失っちまったら、世話ないぜ!!!

 

 間抜けどころか大まぬけもいい所だ!!!!」

 

清水は、ハジメの事を嘲っていく

 

「‥‥清水君、一つ聞いてもいいかな…

 

 さっき、女にいいところを見せようって言ってたけど…

 

 それって、どういう意味なの?」

 

香織は、表情に影を落としながら訪ねていく

 

「ああ、そんなの決まってんだろ?

 

 南雲は、雑魚オタクのくせに女を助けようと‥‥」

 

「おかしいよね、それ…

 

 だってクラスのみんな、天之河君を含めてみんな

 南雲君が姫奈ちゃんを襲ったって言ってるんだよ?

 

 私や雫ちゃん、姫奈ちゃんに風香ちゃん

 愛ちゃん先生や優花ちゃん達は知っているけれども…

 

 みんなと、積極的にかかわろうとしなったはずの貴方が…

 

 なんでそんな事、知ってるの?」

 

香織は不意に、清水の発言の疑問点をついて行く

 

「…あっちゃー、口が滑っちまったか‥‥

 

 まあいいや、どうせもうどうでもいい話だしな‥‥」

 

どこか、気怠気に呟いていく清水

 

「…まあいいや、どうせお前はここで終わる

 だったら教えてやるよ、お前も知ってんだろ?

 

 南雲が、南野を襲ったって噂が学校に流れてたの‥‥」

 

「うん

 

 でも、あれは檜山君達が…」

 

香織は、学校に流れたハジメの噂について

それは自分達の罪から逃れるために檜山達が流したもの

 

香織も他の物も、そうであると認識している

 

だが、それは自分達の思い込みであると思い知らされる

 

「そもそも、その噂をどうして

 皆が信じ込んだのか知ってんのか?」

 

「それは‥‥っ!?」

 

香織は、顔を上げていった

 

そこに映ったのは、したり顔の清水であった

 

それは…

 

「教えてやるよ‥‥

 

 その事件の詳細を伝えたのは…俺さ!」

 

香織を、打ちのめすには十分すぎる位の真実であった

 

「そんな!?

 

 なんでそんな事…」

 

「決まってるだろ、俺はな

 あいつの事が気に入らなかったんだよ

 

 負け犬のくせに、お前って言う

 クラスの男子を骨抜きにしちまうほどの

 美少女を、ものにしちまっているんだからな

 

 そんな時に、知ったのが例の事件さ

 こいつを見て俺はチャンスだって思ったね‥‥

 

 だから、目撃者をよそって学校に進言した

 南野の事を狙っていた教師も多かったからな‥‥

 

 南野をだしにしたら、簡単に信じたよ

 おかげで、あいつは先生からの信用も無くした

 

 一人を除いてな」

 

最初は、気分がよさそうに話していたが

最後の一文を言う際のみは、どこか怒りを

抱えたような言い方をしていった、香織はそれを聞いて

その先生というのが、誰なのか考えていくようになった

 

「愛ちゃん先生の事…?」

 

香織はその人物、愛子の名前を出していく

 

「ああ、それ以来、畑山先生はあいつのことを

 気にかけていくようになった、しかもその後には

 

 東雲の奴とも、仲良くなったみたいじゃねえか

 

 それを見たときは、本当に思ったぜ

 なんだって世の中はこんなにも不公平なんだよって

 

 本当に惨めな思いが、ずっと俺の中にあったよ‥‥

 

 だが、もうそんなのはもう終わりだ!

 

 南雲は死んだ、もう俺の心をかき乱す奴はいない‥‥

 

 ここからは、俺の時代の始まりさ!!」

 

清水は、そういって

香織の視線に合わせる様に屈んでいく

 

「安心しろよ、お前のことは俺が

 たっぷりと可愛がってやる、南雲なんて

 くっだらねえ負け犬野郎のことなんざすぐにでも

 

 忘れさせてやるよ」

 

そういって、香織を洗脳しようと

彼女の眼前に自身の手を翳していた

 

その時であった

 

「ふざけないでよ…」

 

そんな時に香織が、低い声で呟いていく

 

「あ?」

 

「人の事を自分の身勝手のために陥れて

 挙句には、その人を本気で救おうとした

 

 そんな人たちの厚意すらも嘲って踏みにじる…

 

 貴方のような人を、私は絶対に許せない!」

 

香織は、押さえつけられながらも

それでも自分の中にある激情を湧きあがらせていく

 

「っ!?」

 

清水はそれを見て、急いで香織から距離を取っていくと

彼女の周りに、とてつもない閃光が放たれて行き、それが

彼女を抑えていた人たちを優しく、包み込んでいくのだった

 

やがて、その光が晴れたそこに現れたのは

 

「みんな…

 

 もう大丈夫だからね」

 

眠る様に倒れこんだ人々に

優しく、声の方をかけていく香織

 

「な、何だよそれ‥‥

 

 そんな力があるなんて‥‥」

 

それを見た、清水は驚愕の表情を浮かべていく

 

そんな清水を、睨みつけていくように見やる

 

「清水君、貴方は許されないことをした…

 

 皆のことやこの町の人達の事を傷付け

 愛ちゃん先生の優しさを踏みにじって…

 

 何よりも、あなたは何の罪のない人を…

 

 私の大切な人を陥れた!」

 

そういって、本を開くと

その部分の一ページを破き

 

それを剣にして、取っていき

その切っ先を、清水の方に向けていく

 

「て、てめえ‥‥

 

 俺の事を殺すってのかよ?」

 

「貴方だって、大勢の冒険者たちを

 自分の我欲を満たすために手に懸けた

 

 自分はやってもいいけれど、やられるのは嫌なんて

 そんな都合のいい言い分なんて、通ると思ってるの?」

 

香織は、厳しい口調で返していく

 

しかし

 

「…ああ、そうか‥‥

 

 お前の事を手にいれられればって

 思っていたが、それが出来ねえんなら‥‥

 

 もうここで、てめえを始末してやるよ」

 

清水は、どこかうんざりした様子で返していく

 

それと同時に…

 

「…そういえば、お前のお友達の八重樫も

 この松居にいるんだってな、それだったら‥‥

 

 この町を滅ぼすついでに、てめえを殺して

 八重樫を俺のものにしてやるよ、この俺の‥‥

 

 俺って言う主人公の隣に立つ、ヒロインとしてな!」

 

清水がそう言い放った、その時であった

 

清水の姿が代わり、それはまるで

身体が石のようなものに覆われた姿

 

形は所謂、大きな黒い猫をも思わせるものになった

 

「なにこれ…!?」

 

咎徒としての清水の姿を始めてみた香織は目を見開いていく

 

「どうだ、白崎!

 

 これが俺の新しい…いいや、俺の本当の力だ!!

 

 見せてやるぜ、この俺の力をな!!!」

 

清水は、そう言い放つと

自身の後ろから伸びている

 

尾のように形成されている

オーラのような黒いものをふるっていく

 

「っ!」

 

それが、辺りに振るわれていき

その際に激突した建物が、触れた部分から

消滅していった、それを見た香織は目を見開き

 

「さすがに、ここで戦うのはまずい…」

 

そう呟いて、急いでその場から駆け出していく香織

 

「はっはーっ!!!!

 

 どうしたどうした、白崎ぃ!

 

 あんなに威勢のいいことを言っといて

 俺の力を見せたら、急に逃げ腰かよ!!」

 

そんな、白崎の後ろを素早い動きで追っていく

 

香織は、余りのその素早さに驚くも

なんとか距離の方を保っていこうとする

 

「ちょこまかと逃げ回ってんじゃねえ!」

 

清水が、そう言うと

背中の尾のように形成された闇を

逃げていく香織に向かって、突き出していく

 

「きゃ!」

 

それを受けて、空中に放り出される香織

 

直撃はして居ない様子、しかし

 

「そおらあ!」

 

清水は、空中に放り出され

無防備になった、香織に向かって

 

両手から展開された爪を構え

香織の身体を引きさかんと向かって行く

 

すると、香織のもとに一つの光の円陣が現れ

それが清水の方にへと向かって行くのだった

 

「っ!」

 

両腕をクロスさせて、それを防いだものの

円陣はすぐさま、香織の方にへと向かって行き

 

彼女は、それに乗り込んでいた

 

「なんとか、間に合ったね…」

 

香織は、ほっと一息つくと

後ろの方にいる、清水の方に目を向けていく

 

「うがあああ!!!!」

 

清水は怒り声を上げていき、同時に

円陣に乗っている香織の姿を見付けた

 

「なめやがってぇ‥‥

 

 うがあああ!!!!」

 

清水は、荒げた声をあげながら香織を追っていく

 

「ようし…」

 

香織は、それを見て

清水との距離を離れ過ぎずに

自身を追わせていくように保っていく

 

そして…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ある場所にまで辿りつくと

 

「ようし、ここだったら…」

 

街の外れにまで、たどり着くと

香織は自身の乗っている円陣から降りていく

 

それから、しばらくすると

 

「うがあああ!!!!」

 

鉱物で出来たような外観の黒猫のような人型の異形

 

咎徒の姿となった、清水がそこにやって来た

 

「なんだ?

 

 もう鬼ごっこは終わりか?

 

 こんなところまできて、もう諦めたか?」

 

香織が、その場にとどまったのを

自分から逃げられないと認識する清水

 

それに対して

 

「‥‥諦めるか、確かにその方が楽かもね…

 

 でも、少なくとも今の私は諦める気なんて

 

 これっぽちも無いんだからね!」

 

香織は言い放つ

 

その表情は、普段の彼女のどこか

穏やかで優しい雰囲気のそれを感じさせない

 

それほどの怒りに満ちた表情である

 

「へえ‥‥

 

 随分と言うじゃねえか、それだったら

 お前が手に入れたその力とやら、ぜひともここで‥‥

 

 見せてもらおうじゃねえか!」

 

そういって、自身の背中から伸びている

尾のように構成された闇を、香織に振るっていく

 

香織は、それを何とかかわしつつ

清水の方に向かって、円陣を飛ばしていく

 

清水は、それに気づくと

なんとかそれをかわしながら

 

香織の方にへと、駆け出していく

 

香織も剣を手に取って、清水を迎え撃たんとしていく

 

「しゃあああ!!!!」

 

「っ!」

 

香織は、清水の爪による一撃を止める

 

そこから…

 

「フン‥‥」

 

「ぬうっ!」

 

清水と香織の鍔迫り合いが始まる

 

だが、次第に力の方では

香織に圧され始めているのに気づいた清水は

 

「フン!」

 

「きゃ!」

 

香織の身体に、蹴りを入れ込んでいき

突然の一撃によってふっ飛ばされた香織に

 

さらに、爪に黒い闇属性のオーラを纏わせ

それをまるで、鎌鼬の如く飛ばしていった

 

香織は、すぐさまにそれに反応し

闇による攻撃を、聖徒の力によって

強化された身体能力を使って、見事にかわす

 

そこにすかさず、円陣を飛ばしていく香織

 

清水も、それを咎徒の力によって

発達した動体視力で交わしながら駆け抜けていき

 

透かさずに、香織に向かって

爪をふるって仕掛けていった

 

「はあ!」

 

香織は、それを軽くかわして

手に持っている件の切っ先を清水に向ける

 

それと同時に…

 

「ぬお!?」

 

清水に向かって、四つの円陣が振るわれ

それが、彼の四方から勢いよく斬り込んでいく

 

しかし

 

「なめんなあああ!!!!」

 

清水は、全身に真っ黒な闇を纏わせ

その闇に振れた四つの円陣を消滅させていった

 

「なるほどね…

 

 貴方のその闇は、触れたものを

 消滅させていく力があるみたいだね」

 

「へっへっへ‥‥

 

 俺の手にした力には

 こんな力があるんだよ!」

 

そういって、清水は全身を闇に覆い

その姿をまるで、巨大な黒い猫の怪物のように変貌させた

 

「どうだ!

 

 これでもう、俺にはどんな攻撃も通らねえ

 つまり、てめえの攻撃だって効かねえんだよ!!」

 

勝ち誇ったように言い放つ清水

 

それと同時に、辺りにまたしても

二つの尾のような闇をふるっていく

 

香織は、円陣を召喚し

それに乗って清水の攻撃をかわしていく

 

「はっ!

 

 逃げるのかよ、白崎!!」

 

そんな、白崎を嘲るように

清水はその背中から、まるで

毛を逆立てるかのように弾丸を飛ばす

 

「っ!」

 

その弾丸を、円陣を使って防いでいく香織

 

しかし、円陣の方も攻撃を受ければ受けるほど

徐々に削れている、いいや消滅していると言った方がいいだろうか

 

「ひっひひひっ!!!!

 

 どうしたどうした?

 

 早くどうにかしねえと

 その盾ごと。てめえを消しちまうぜ?」

 

香織の形成が不利なのを悟って

煽るような言い方をしていく清水

 

「(こんなところで、諦めてたまるもんか!

 

  絶対にこの戦い、負けるわけにはいかないんだもん…

 

  私が持てる、全ての力を使って絶対に勝つんだ!!)」

 

香織は、攻撃を防ぎながら

手に持っている剣の力によって

 

清水の放った闇を付属した弾丸の雨を全て払っていく

 

「んな!?」

 

まさか、払われると思っていなかったのか

清水は、自身の攻撃を払われた事に驚きを見せる

 

「やああああ!!!」

 

香織は、自身の足に星力魔法を纏わせて

重力を無視した走りで、清水に向かって行く

 

「ひい!?」

 

思わぬ行動に、情けない声をあげ

自身に向かってくる、香織に向かって

闇属性によるオーラを放っていった

 

香織は、それを剣を振るって

斬りさいていくようにして、相殺していく

 

香織は、そのまま清水に向かって斬り込んでいった

 

「ぎゃあああ!!!!」

 

自身の身体が、見事に炸裂した清水

 

しかし、香織は不意に

自身の攻撃による手ごたえがおかしいのに気づく

 

それは…

 

「っ!?

 

 そんな‥‥どうして…?」

 

香織は、自身の振った剣が

清水を斬り込んでいった直前で

まるで、何かに止まったかのように

 

寸止めしてしまっていた

 

「な、なんだか知らねえが助かったぜ…

 

 今度はこっちが形勢逆転だぜ!」

 

そういって、香織に向かって爪を振るい

その際に飛んでいった土煙が香織の貌にかかった

 

「きゃ!」

 

目に当たって、しまったのか

目の痛みに開けていられない状態になってしまった

 

「(どうして…

 

  今のはまるで、聖器が

  自分から攻撃を止めたような…)」

 

香織は、視界を奪われてしまった状態ながらも

すぐさま治癒能力をしようして、同時に先ほどの

攻撃がまるで、清水に攻撃するのを拒んだような異変について考え込む

 

だが、その時

 

自分の首根っこを何かがつかみ上げていった

 

「っ!」

 

「ひっひひひ‥‥

 

 手こずらせやがって、まあいい

 これでもうてめえも終わりだよ‥‥

 

 素直に、俺のものになってりゃ

 こんなふうに苦しまずに済んだのによ」

 

香織の耳に聞こえたのは、清水の下卑た声

 

香織は自身の首が、ものすごい力で

締め上げられているのを感じ取っていく

 

「うぐぐぐぐ…」

 

「まあいいや、お前はいなくても

 町には八重樫がいんだろ、それだったらいいや‥‥

 

 お前をここで殺したら、あいつのことは

 俺がたっぷりと可愛がってやる、そう言う訳だから

 

 さっさと南野達のところに行きな!」

 

勝ち誇ったようにいいながら

香織の首を一気に締め上げていく清水

 

しかし

 

「‥‥ふざけるのも、大概にしなさいよ…

 

 私の友達や信頼できる先生を、私の大切な人を奪っておいて

 さらには、私の親友である雫ちゃんまで奪おうって言うの?

 

 そんなの‥‥そんな事、絶対にさせるわけないでしょう!」

 

「ぬう!?」

 

香織は、清水の手を掴んでいく

清水はとんでもない力に目を見開いている

 

清水によって奪われた大切な人達

それに飽き足らず、親友の雫にまで手を掛けようとする

 

その彼の性根に、怒りを覚えていく香織は

 

「うああああ!!!」

 

自力で、清水の腕を解いた

 

それによって

 

「うわっととと!?」

 

清水は、驚きのあまりに香織を掴んだ手を離し

そのまま、後ろに後ずさりをしていくのであった

 

香織は、まだ視力が回復していないので

地面に降ろされた際に少し、ふらついたものの

それでも、体制を崩すことなく立ちあがっていく

 

「許さない!

 

 貴方のような外道にもうこれ以上

 私の大切な人に手を出させるもんか…

 

 絶対に貴方に、自分の行いの報いを受けさせてあげるから!」

 

香織は、荒げた声で言い放つ

 

「ふ、ふん‥‥

 

 眼を潰された状態で何ができるってんだよ

 

 所詮、てめえの威勢は口だけだあああ!!!!」

 

そういって、清水は闇をふるって行き

それを目の見えない状態の香織を挟み込むようにふるう

 

「っ!」

 

香織は、その攻撃をかわしていく

まるで清水の放った闇の位置が分かる様に

 

「っ!」

 

清水は、再び背中から

猫が毛を逆立てるようにして

闇で生成された弾丸を放っていく

 

「星力魔法!」

 

香織は、武器である剣に重力魔法

それが、聖徒の力によって強化された

 

星力魔法

 

それを使って、清水の放った弾丸を全て払っていく

 

「っ!

 

 こ、このぉ!!」

 

清水はたじろきながらも、向かって行き

自身の腕についた爪に闇を纏わせて振るう

 

だが、香織はそれすらもかわしていく

 

「やあ!」

 

「ぐえ!!」

 

香織のすれ違い様の肘鉄を受けてよろける清水

 

「な、何なんだよお前‥‥

 

 なんで、目を潰されたのに動けるんだよ!?」

 

「目が見えなくても、耳は聞こえるし

 臭いは分かるし、感触だってあるでしょ?」

 

香織は臆面もなく答えていく

 

実は香織の身体には、ハルツィナ樹海で手に入れた神代魔法

昇華魔法、それが聖徒の力によって強化されたのが超化魔法

 

これは、重力魔法とは違って

自動的に発動されるものであるため

使いたいときに使えないが、その分

 

一度発動すれば、その人物の力を

それに合わせた力に超化させることが出来るのだ

 

香織は、これにさらに魔力探知の技能も含め

清水の攻撃や、彼自身の居場所を探っているのである

 

「ええい、ほざけ!

 

 そんなもんで、そんなもんで

 この俺の力に対抗何て出来る筈がねえ!!」

 

清水は、やけっぱちになって

香織に向かって攻撃を放っていくが

 

「清水君、もう貴方の力じゃ…

 

 私には勝てない!」

 

香織は、そういって

清水に向かって駆け出していく

 

「ふ、ふん!

 

 そんな事したって無駄だぜ

 お前の攻撃はなんでか、俺には届かないんだからな!!」

 

「その答えも、もう導きだしてるよ!」

 

清水の苦し紛れに、そう返していく香織

 

香織は、剣を振るうが

その剣で清水の事を斬らなかった

 

すると、清水の身体を覆っていた

闇の衣がはがれて、清水自身の姿が現れる

 

「はあ!」

 

「ひい!?」

 

その清水に向かって、香織は

剣をふるっていく、ただそれ自体は

清水を斬る事はなかった、その代わりに

 

「ぐあああ!!!!」

 

清水は、その際に生じた

重力による襲撃が繰り出されて行き

 

それによって、清水は大いに吹っ飛んでいった

 

「ちくしょう‥‥

 

 なんでだ、何だってこいつの攻撃を

 さっきから受けてるんだ、あの時の剣の一撃は‥‥

 

 あれは、はったりだったのかよ!」

 

「はったりじゃないよ!

 

 確かにこの聖器による攻撃は効かなかった…

 

 だってこれは、人間を守る為の武器だからね」

 

そういって、本を掲げていく香織

 

聖徒の使う武器、聖器はいうなれば

人間を守る為に振るわれるもの、故に

守るべき人間に振るってもそれを傷付けるのを

 

聖器自身が、拒絶する

 

咎徒も分類上は、人間であるために

守るべき人間に攻撃を振るわせない

 

だからこそ、香織の剣は

清水を斬るのを、止めたのである

 

「バカな、それじゃあ‥‥

 

 なんでその攻撃が、俺に当たって‥‥」

 

「それは、貴方に向かって

 放っている攻撃は、聖器による

 

 攻撃じゃないからだよ」

 

香織は答えていく

 

香織が剣による攻撃から

魔法による攻撃に切り替えたのはその為

 

聖器に魔法を纏わせて、それを使って

攻撃を放つ、魔法自体はこの世界の人間が

使っているそれと同じの為に、清水も普通に受けた

 

なお、咎徒になった清水に対して攻撃が入ったのは

単純なステータスの差によるものである、七代迷宮のうち

二つを攻略し、さらにはそこで起こった熾烈な戦いも乗り超えてきたのだ

 

聖徒の力による恩恵を差し引いても、かなりのもの

 

清水もそれなりに鍛えていたとはいえ

七大迷宮を攻略できていない以上、まさに雲泥の差である

 

「なんだよ…そんなの‥‥

 

 そんなの反則だろうが!」

 

「そんな力を手に入れておいて何言ってるの!

 

 貴方は結局m力に溺れた

 それが何よりの貴方の敗因よ!!」

 

香織は言い切っていく

 

「敗因だと‥‥

 

 ふざけるな、俺は

 俺はまだ負けてなんていねえ!」

 

そういって、爪から黒い斬撃を

それぞれの側から、五つずつの合計十本を繰り出していく

 

香織は、その際にゆっくりと目を開いていく

 

「もうこれで、終わりにするよ…

 

 貴方の行いも、私自身の過ちもね!」

 

香織は、そういって剣をふるって行き

その一振りで、自身に向かって行った攻撃を全て払い

 

そこから

 

「はああああ!!!」

 

香織が、剣を勢いをつけて振るっていった

 

それによって…

 

「はああああ!!!」

 

「んなあ!?」

 

香織の一撃が、清水に勢いよく振るわれて行き

 

それが、見事に清水の身体に一撃を食らわせた

 

「ぐあああ!!!!」

 

香織の、渾身の一撃を受け

清水の身体は、激しいダメージを受け

 

そのまま、清水は地面に倒れこみ

やがて、元の清水の姿に戻って倒れこんだ

 

「があ‥‥

 

 バカな…俺が‥‥」

 

自身が破れたことが信じられないまま

そのまま、地面に倒れこみ、意識を失った

 

「うああああ!!!」

 

香織は、気を失ったであろう清水に向かって

止めをささんと言わんばかりに、剣を振るった

 

だが、それを

 

「っ!?」

 

 

香織の剣を振るわんとした、剣を持った腕を

誰かがつかむことによって、それを止められた

 

その誰かは…

 

「‥‥そこまでよ、香織」

 

「っ!

 

 姫奈ちゃん…」

 

清水の口から、死んだと聞かされていた姫奈

 

さらにそこに、風香や纏に優花

愛子と奈々に玉井、仁村やウィルが現れる

 

「清水君!」

 

「先生!」

 

愛子は、気を失っている清水に駈け寄る

そんな彼女に慌ててついて行く優花達

 

「気を失ってる…

 

 もしかして、これは香織が?」

 

「‥‥…」

 

優花が訪ねていくが、香織はそれに答えなかった

香織の心境は、答えられる気分ではないからである

 

「香織、一体何があったのか教えてくれる?」

 

「‥‥うん…」

 

香織は、渋々ながら事の顛末を話していく

 

「そんな‥‥清水君…」

 

清水が、ウルの街で行おうとしている事を知り

自分の生徒が許されないことをしようとしていたことに

 

ショックを隠せなかった

 

優花達も同様である、確かに付き合いこそ短かったが

それでも愛子の、農地開拓の旅を一緒した仲間であった

 

彼の自分達への行いは、理解はしているが

いざ突きつけられるとやはり愕然としてしまうのであろう

 

「それで、香織…

 

 貴女はあの時に、何をしようとしていたの…?」

 

姫奈は、どこか必死にこらえたように

自身が止めた香織の行いについて問いかける

 

香織は、それに対して

 

「‥‥決まってるでしょ…

 

 こいつを、清水君をこの手で…」

 

「バカ!

 

 確かにこいつは許されないことしたけれど

 だからって、アンタがそんな事をするまで…」

 

優花が、そう言い切っていく前に

 

「それだけじゃないよ!

 

 こいつが犯した罪は…

 

 それだけじゃないの…」

 

香織の表情は怒りに染まると同時に

哀しみの涙が、彼女の目からあふれていく

 

「こいつが‥‥ハジメ君を…

 

 私の大好きな人を‥‥追い込んだんだよ…

 

 学校だけじゃなく‥‥家からも居場所を奪ったんだよ…

 

 それをこいつは‥‥まるで、自慢するように笑いながら話したんだよ…」

 

香織が、ひりだすように言う

 

それを聞いた一同は…

 

「そんな…」

 

「そんな…まさか…」

 

さらにショックを受けるのであった

 

「‥‥お願いだよ、姫奈ちゃん…

 

 その手を離して…」

 

香織は、少し低い声で姫奈に

自身を掴んでいる手を離すように言う

 

しかし

 

「‥‥ダメよ…

 

 もしも、この手を離したら香織…

 

 貴女は一体、何をするつもりなの?」

 

「決まってるでしょ!

 

 ハジメ君を苦しめたこいつを、この手で…!!」

 

香織が、そう言い放ったその時

 

香織の頬を何かが当たる、それは…

 

「っ!」

 

「いい加減にしなさい!

 

 これ以上、私の大切な人を悲しませるつもり!?」

 

姫奈の平手である

 

「姫奈ちゃん…

 

 だけど、こいつはハジメ君の事を

 貴女だって、ハジメ君のことが…!」

 

「ええ、そうよ貴方と同じ気持ちよ!

 

 でもね、大切なのは貴方だって同じなのよ香織!!

 

 貴女がそんなことをしたら、一番に傷つくのは他でもない…

 

 貴方なのよ、香織…

 

 私はもう、これ以上大切な人が傷ついていくのを見たくない…

 

 彼が炎の中にへと消えていった、彼を通じて友達になった

 あの子をこの手で、助ける事が出来なかった、私はもうあんな…

 

 あんな哀しい思いなんてしたくないの、だからお願い…

 

 こんな奴のための貴方の手を汚さないで‥‥自分の手で自分を傷付けるのは…

 

 もうやめて!!!」

 

姫奈は、そういって香織を引き留めるように

彼女の事を、思いっきり抱きしめていった

 

「南野…」

 

「ひめっち‥」

 

その光景を、愛ちゃん護衛隊の面々は見守る

 

「香織!

 

 私も同じだよ!!」

 

「風香ちゃん!?」

 

風香も声をあげていく

 

「香織、貴方が愛する南雲君は

 貴方がそうやって、自分の手を汚して

 誰かを傷付けること、喜ぶって思ってる!?

 

 そんなことないよ、彼はあのオルクス大迷宮の時に

 皆を守る為に、ベヒモスに立ち向かって行ったんだよ!

 

 そんな彼が、いくら自分を陥れたからって

 誰かが傷ついていくのを、喜ぶような人だと思う?

 

 私は少なくとも、そうは思わないよ

 私だって部活のことで悩んでいた時に

 南雲君に手を差し伸べられた、彼に背中を

 押してもらったおかげで、私は今まで以上に

 大好きなことにうち込めるようになったんだよ…

 

 誰かのために、自然と手をのばせる彼がここに来たら

 きっと彼は、姫奈と同じように香織の事を止めていたよ

 

 何よりも香織、貴方のために!!」

 

「あ…」

 

風香の言葉を聞いて、目を見開く香織

 

「そうですよ、香織さんの大好きな南雲さんは…

 

 誰かのために自然と行動が出来る人のはずです

 それを私に教えてくれたのは、ほかでもない香織さん

 

 貴方じゃないですか!」

 

纏も訴えるように言う

 

さらに…

 

「白崎さん、私は貴方に謝らないといけない…

 

 南雲君を救えなかったこと、そのせいで貴方や

 彼を信じてくれた人達の事を悲しませてしまった事…

 

 何よりも、清水君の凶行に気付くことが出来なかった…

 

 それはここで、責められても仕方のない事です

 

 後悔してもしきれません…

 

 だけど、いいえだからこそあなたに道を

 踏み外させるようなことは絶対させません!

 

 生徒が目の前で苦しんでいるのを、止めないなんて…

 

 先生を名乗れません!」

 

「先生」

 

愛子はそういって、香織に祈願するように言う

 

「香織、正直に言うと私もあんたと同じ気持ちよ…」

 

「優花ちゃん?」

 

前に出たのは、優花である

 

「私もこいつが憎い、今ここで

 こいつの事を殺してやりたいぐらいに…

 

 だけど、そんな事をしたってはっきり言って

 それは自己満足だし、何よりもこんなことをしたって

 

 亡くした者は、もう戻ってこない…

 

 私は、あいつに助けられたのに

 結局、なんの恩返しも出来なかった…

 

 でも、だからってそれを怒りや憎しみでごまかしたって

 悲しいって気持ちは消えるわけじゃない、でもねそんなアタシを

 悲しい気持ちから救ってくれたのは、愛ちゃん先生や妙子、奈々だった…」

 

「優花っち…」

 

優花は言う

 

「香織、アンタの中で南雲の存在が

 すっごく大きいんだって言うのはわかった…

 

 だからこそ、南雲の事を傷付けたこいつや

 皆の事が、許せないんだって言うのは分かる…

 

 アタシにとっても、そうだから…

 

 でもね、ここにいるみんな、アタシ達も含めて

 皆があんたの為にこんなにも必死に体を張ってる…

 

 だから、アンタも皆の事も見てあげなよ…

 

 アンタの事を、本気で止めようとしたみんなの事を、さ…」

 

優花のその言葉を聞いて、香織は

自身を抱きしめている姫奈に対して

 

顔を埋めるように、していく

 

「‥‥私、ずっとつらかった…

 

 大好きな人が、私のせいで傷ついて

 それなのに、何にもしてあげられなくって

 

 挙句には、炎の中で消えていくのを助けられなかった…

 

 私が何かをすれば、大切な人たちが傷ついていく

 まるでそれを現すかのように、雫ちゃんも傷つけちゃった…

 

 だから私‥‥私は…」

 

香織は、そこまで言って姫奈の身体に

顔を埋めて、そこで声を殺してないていく

 

大切な人を守るどころか、傷つける事しかできない

でも、そんな自分の事を大切に思ってくれるもの達の存在

 

それが、香織の秘めていた悲しみを

涙という形で、溢れさせていくのであった

 

「皆さん…」

 

その様子を見ていたウィルは

複雑な心境を抱きながら見守っていた

 

「皆さんは最初、本当に普通の学生だったんです…」

 

愛子は、不意に口を開いていく

 

「え?」

 

「でも、ある出来事がきっかけで

 皆さんはそれぞれで、色んなものを

 若くして、抱えていく事になったんです…

 

 そのきっかけは、一人の男子に懸けられた冤罪でした…

 

 訳の分からないうちに、その男子生徒は

 学校にも、家にも居場所がなくなってしまい…

 

 私もあの子達も、必死にその彼を救うために動いたんです…

 

 しかし、事態が好転することはなく

 やがて、その彼は学校から実質的に村八分にされました

 

 この世界に来てからも、彼の周りは変わりませんでした

 

 他の皆のように力が与えられず、挙句には

 自分達を召喚した国にすらも同じようになり

 

 挙句には、彼はまたも冤罪でみんなの

 あの子達の目の前で炎の中にへと消えていきました…

 

 私はずっと悔しかった、彼を救えずあの子達の悲しみもぬぐえず…

 

 どんなに無力なのかと、打ちひしがれてきたのか…」

 

愛子は悲し気な表情を浮かべている

 

「愛子殿…」

 

「こんな小さな手でも、手をのばすことで

 誰かを救うことが出来るなら、迷わずに手をのばす…

 

 私はそう決意しました…

 

 でも、やっぱり駄目ですね、私には結局

 誰かを救えるような、そんな力なんてない…

 

 操られた生徒の前で、何もできなかった…

 

 でも、何よりも一番悔しいのは…

 

 謝った道に進んでしまった生徒を…

 

 止める事が出来なかった事です」

 

愛子がそういって、視線を写したのは

 

気を失った、清水であった

 

ウィルはそれを見て、思い知らされた

ここで倒れているこの男は、自分のパーティメンバーや

それ以外の多くの冒険者たちを、我欲の為に手に懸けた憎むべき存在

 

しかし、それでも愛子にとっては

誰よりも気にかけていた教え子なのである、と…

 

「愛子殿…

 

 私は正直に言うと、この者を許す事は出来ません

 それだけの罪を、この男は犯しました、それは変わりません

 

 ですが愛子殿、貴方は間違いなく私の仲間達や

 大勢の冒険者を救ってくださいました、それも変わりません…

 

 だから、愛子殿…ここで聞かせてもらえませんか?

 

 愛子殿は…このものをどうしたいのか…」

 

「ウィルさん…」

 

ウィルはあえて問う、自分は清水を許せない

その気持ちは過去も今も、そしてこれからも変わらない

 

同時に大勢の冒険者たちを結果的に救った愛子の気持ちも尊重したい

 

それが、今のウィルが下した決断である

 

そして…

 

「私は…」

 

それを受けた、愛子の決断とは…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?

  • 原罪(スルー推奨)
  • 傲慢
  • 虚飾
  • 嫉妬
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 憂鬱
  • 暴食
  • 色欲
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