世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
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とある学校
そこでは生徒達がお昼を買うために、購買に並んでいた
そんな時である
「おら、どけえ!
ちんたら並んでんじゃねえぞ!!」
ガラの悪いグループが、列に割って入り
そのまま、先頭の方にへと歩み寄っていく
「ちょっと、ダメだよ!
皆、並んであるんだから
君たちも並ばないと」
購買の人が、その男子生徒に注意をしていく
しかし
「るせえ!
いいからさっさと、よこせ!!
ほら、メロンパンとオレンジジュース四つ!!!」
男子生徒は、それに対して逆切れし
その注意した購買の人に対して怒鳴りちらしていった
その男子グループは、この学校でも指折りの不良グループで
その場にいる生徒たちは、誰もがみんな何も言えない状況であった
そんな中に、現われたのは…
「いい加減にしろよ!
中学生にもなって、やっていい事と
悪い事の区別も、分かんねえのかよ!!」
一人の男子生徒であった
「ああ、何だてめえ?
誰に向かって生意気な口、聞いてんだてめえ!」
「俺はただ、周りに迷惑をかけるなって言ってんだ!
そもそも、そんな風に言われるようなことをしなきゃ
誰も何も言わないんだ、言われるようなことをするお前らが悪いんだろ!!
挙句に、そんな事を言われたら逆切れしてわめき散らして‥‥
だせえ事してんじゃねえ!!!」
男子生徒は、物おじせずに言い返していく
すると
「そ、そうだそうだ!
俺だって、何分も待ってんだぞ!!
それでも、順番はしっかり守ってるんだ!!!」
「そうだよ!
みんな、ここまで待ってるんだ
そんなみんなの気持ちを考えろよ!!」
それに触発されて、周りの生徒達も不良たちを責め立てていく
「…ちい、胸糞わりぃ
おい、行くぞ!」
罰を悪くした不良は、仲間を連れて
そのまま、その場を後にして行った
「ありがとう、助かったよ」
「いえいえ、人として当然のことをしたまでですよ」
購買の人に、お礼を言われて
笑顔でそう返していく男子生徒
彼が、中学生の頃の清水であった
この時の彼は、まさにヒーローであった
しかし、そんなヒーローの人生は
のちに大きく狂わされていく事になっていく
この時の彼はそんな事、夢にも思わなかったのである
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最初の切っ掛けは、些細な
いいや、ある意味ではとんでもないことであった
それは、清水が学校の階段を下りていた時であった
「うあああ!?」
清水は突然、背中を押され
そのまま、階段から転がされていった
「お、おい!?
大丈夫か!?」
「あ、ああ…何とか‥‥」
傍に居た同級生に、心配そうに声をかけて来たものの
大したけがはしていないので、清水は大丈夫と答えていった
清水は、一体何が起こったんだと
不意に階段の上の方を見上げていった
そこにいたのは、何と
いつぞやで清水がずる入りを注意した
いつぞやの不良グループがいたのであった
何とも言えない、にやけ顔でこちらを見詰めており
言葉にはしていないが、清水はそれに対してこう言っているように見えた
ーよくも、俺たちに恥をかかせたな
この程度で済むと思うなよ!ー
彼は、あくまで何となくであったが
不思議とそんな風に言っているように見えた
最悪なことに、清水の予想は悪い意味で合ってしまっていく事になる
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その日の放課後
清水が、家路についていた時であった
「そおらあ!」
「がはっ!」
突然、何者かが彼に襲いかかっていった
清水は、頭を思いっきり殴られたことで
意識を失って、その場に倒れ込んでいった
それから、しばらくして
「う…うう‥‥」
清水は、目を覚ます
そこに映ったのは…
「よお、お目覚めか?
ヒーローさんよ」
「っ!?
お前らは‥‥」
清水は、目の前にいた人物たちを見て驚く
そこにいたのは、自身があの時に
注意をした不良グループであった
しかも自身の身体は、椅子に縛られて
身動きが取れない状態になっていた
「よお、久しぶりだな清水君?
一年のくせに、よくも俺らに恥をかかせてくれやがったな!」
「ぐえ!」
不良グループの一人が、椅子に縛られた清水を
思いっきり蹴飛ばしていき、清水は椅子ごと地面に倒れこむ
「がはっ!」
「おいおい、何だよお前…
ああ、そういえばお前
あの時はよくも俺らの事を
ダサいって言ってくれやがったな!」
「げぶっ!」
さらに別の男が、清水の腹を思いっきり蹴り上げる
余りの力に、清水はせき込んでしまった
「うう、ごぼおっ!」
かなりの力で殴られたのか
そこで嘔吐してしまう清水
「うっわっ、きったね!
こいつ、吐きやがったぜ?」
「マジかよ、ここは俺らが気に入ってる溜まり場なんだぜ?
勝手に汚してんじゃねえよ!」
「があ!」
そういって、不良の一人が
清水の頭を思いっきり踏みつけていき
彼が嘔吐物を吐いた床に押しつけていく
「ぶぐ、ぐううう‥‥」
「ほら、さっさと綺麗にしろっつーの
てめえが汚したんだから、しっかり責任取れ!」
そういって、さらに無理矢理押し付けていく
すると
「やめとけ、そんなことしたらお前
靴が汚れちまうぜ?」
別の不良が、踏みつけている不良に言う
「うわ、まじかよ!?
これ買ったばかりなんだぞ!?
なに汚してくれてんだよ!」
「ぶふえ!」
不良は清水から足を離すと、その足で
清水の身体を思いっきり蹴り込んでいった
「おい、こら!
弁償しろ、弁償
てめえが汚したんだから
てめえが、金払えっての!!」
そういって、さらに殴るけるの暴行を繰り返していく不良たち
「そういう訳だから、こいつはもらってくぜ?
お、何だよ結構持ってんじゃん」
そういって、不良グループの一人が
清水の荷物を勝手に漁ると、その中から
財布を取りだして、中にあったお札を抜いていく
「か、返せ‥‥」
清水は、お金を返すように言う
しかし
「あ、さわんじゃねえよ塵屑!」
「があ!」
そんな清水を、汚いものを払うかのように蹴飛ばす不良
「てめえのせいで、せっかく買った靴が汚れちまったんだ
お前が弁償すんのが、人として当たり前のこったろ
あの時、俺らに人として当たり前のことを偉そうにほざいたんだ
てめえも、もちろん人として当たり前のことをするのが当たり前だろ?
まさか他人に強制させて、てめえはそれに従わないなんて
そんな理屈、本気で通るって思ってんじゃねえだろうな、ああ?
おめえの方が人として、当然の事が出来てねえじゃねえか!」
「があ!」
不良が、清水の髪を乱暴に掴んで
自分の眼前にまで無理矢理上げていくと
嘲笑を浮かべながら、清水に言い切っていく
「やれやれ、とんだヒーローだな?
ようし、それだったらセンパイである俺らが
お前に人としての当たり前をしっかり教えてやる
これからよろしくな、後輩君?」
そう言い放って、不良グループは
清水を、開放するとそのまま去っていく
清水は拘束を解かれたものの、しばらくその場に蹲っていた
「畜生‥‥」
清水は、打ちのめされていった
いいように扱われて、挙句にはカツアゲまでされて
何とも惨めな結果になってしまった自分が情けなかった
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それから、しばらくして
ある日の朝
「おはよう、幸利!」
「うん、おはよう‥‥」
部屋からでて来た息子に、声をかける母
そんな彼女に対して、幸利は億劫な様子で返す
「どうしたの?
なんか随分とやつれているみたいだけど、学校で何かあった?」
「な、何でもない!
何でもないから!!」
清水は、慌てたようにそう返していく
実際は何でもないことはないのだが、それを
両親に話していくことは出来なかった、何故なら…
「おらあ!」
「がばばば、ごぼぼぼぼ!!!!」
ある時、吸盤を使って
無理矢理、顔を便器に押し込まれていく清水
それがしばらく続くと、顔を上げさせられていく
「へ、何ともきたねえ顔だな?
まあ、お前みてえな奴にはお似合いかもな?」
「も、もうやめてください‥‥
本当に…本当にもう‥‥」
あの日から、執拗に続く苛めの日々
それによって、清水の心は完全に折れてしまう
しかし
「ぶ、くくく…
あーっはっはっはっ!!!
聞いたかよ、許して下さいだってよ?」
「あー聞いた聞いた、なっさけねえ
ぎゃーっはっはっはっ!!!」
そんな彼の事を、嘲るように笑っていく不良
「あ…?」
清水は、きょとんとした様子で不良たちの方を見ていった
その時
「やーなこった?
俺たちに楯突いた罰だ、お前は一生
俺たちの玩具兼奴隷だ、これは決定事項なんだよ
そもそも、こんなことになったのもてめえが身の程をわきまえずに
俺らに楯突いたのが原因、つまりはお前自身のまいた種によるものなんだよ
だからてめえは、こんなことになってんだ
せいぜい俺らの玩具として、必死に楽しませてくれや」
「あ、あああ‥‥」
そう言って、不良たちは清水をトイレに放置し
そのまま、その場を後にしていくのであった
清水は、しばらくその場に
力なく、とどまっていたのだが
何とかして、立ち上がっていった
しかし、そんな彼に待ち受けていたのは
更なる絶望であった
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教室に行くと、そこには
いつも通りの風景が映った
そこには、小学生以来の友人も集まっている
「お、おはようみんな」
その友人たちに、元気がなくも
それでもいつも通りに話しかける清水
だが、それを受けて帰ってきたのは
「なあ、清水‥‥
悪いんだけれどもさ、もう
俺らに話しかけんのやめてくんねえ?」
「…え?」
まさかの冷たい、対応であった
「だって、お前と関わってたら
俺らまで巻き込まれるかもしれないんだ
そういうの、俺らごめんだからさ」
「…何言ってんだよ‥‥
だって、俺らは友達‥‥」
「もとはと言えば、お前が調子に乗って
あんな風にかっこつけたのが悪いんだろ!
俺らは何にも関わってねえし、何よりも
お前に関わるせいで俺らまで、ボロボロにされんのは嫌なんだ!!
だからさ清水、お前とはもう‥‥
絶交だから」
友人たちから、吐き捨てられた冷たい言葉
その言葉を聞いた清水は、自分の中で
必死に支えていた何かが、音を立てて崩れていく
そんな感覚に襲われ、絶望に打ちひしがれてる
だが非情にも、そんな彼に手を差し伸べる者は
いなかったのであった…
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
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… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
それから、しばらくして
「おはよう、母さん」
「おはよう」
リビングで言葉を交わしていく両親
しかし
「幸利の奴は、まだ部屋にこもっているのか?」
「ええ、もう一カ月も部屋から出て来なくなっているのよ」
両親のここでの、話題はいっつも
自室に引きこもる様になった息子の事ばかりである
「全く、兄と弟は休まずにしっかりと学校に行っているのに‥
突然、どうしたっていうんだ
早く部屋から出てきて、学校に行ってくれないと‥」
「そうね‥
いきなり部屋に飛び込んだら、いきなり
もう学校には行きたくない、だなんて‥
理由も行ってくれないし、あんまり
我がままばっかり言っていても困るのだけれど‥」
心配はしているようだが、息子の事情は知らないようで
どこか他人ごとのように思わせていくような雰囲気である
更には…
「幸利兄ちゃん、さっさと出て来いよ!
父さんと母さんが、呼んでるだろ!!
いつまでも部屋にこもってないで
さっさと、顔ぐらい見せろっての!!!」
清水の弟が、清水の部屋の扉を必死に叩いていくも
部屋の方からはなんの音沙汰もなかった、しばらくすると
「もういい、やめとけ!」
「兄ちゃん」
弟に声を掛けていく
「あいつが出たくないってんなら、もう好きにさせとけ」
「そんな、これでいいのかよ!
だって幸利兄ちゃん、家の事
何にもやらずに部屋に閉じこもってばっかりなんだぜ?」
兄の意見に抗議する弟
しかし
「いいわけねえだろ、学校にもいかずに
部屋に閉じこもって漫画やゲームばっかり
父さんや母さんが、俺らの為にって
必死に仕事を頑張ってくれてんのに‥
父さんも母さんも、甘すぎなんだよ
あんな金食い虫のために、あそこまでする事なんかねえのに‥」
「ホントだよ、父さんや母さんに迷惑かけて‥
いっその事、あんな奴なんかいなくなればいいのに‥」
清水の兄弟たちからの評価は、最悪であった
部屋に引きこもり、家の金で
漫画やゲームを買いあさって
そのくせに、家のことは何にもしない
そんな清水の事を、やがて
疎ましく感じていくようになっていった
学校にも家にも、居場所をなくした清水
そんな彼の数少ない、心のよりどころそれは…
「うーん、この作品‥‥
設定やデザインはいいんだけれど
ストーリーの方があれだよな、ようし
それだったら、ちょっと通してみるか‥‥」
ネットであった
最初は漫画やアニメ、ラノベと言った者が主流であったが
やがて彼は不意に、二次創作というものにはまっていった
自分が気に入った作品を基準に、それを
自分が思うような展開に持っていくのが存外、楽しい
何よりも彼の心を躍らせたのは…
「お、よっしゃ!
いいねが付いたぜ、コメントも悪くない
こういうのも、悪くはないかもな‥‥」
そんな彼の投稿を、評価してくれた事
それが彼には嬉しかった、現実で居場所のない清水
それがさらに、彼をネットの世界にはまらせていった
この生活がいつまでも、続くようにとも願うほどに…
だが、そんな日々に陰りが見え始めた
それは…
「っ!?」
清水の部屋が、いきなり
破られるように開かれた
そこにいたのは…
ものすごい剣幕の、兄と弟であった
「な、なんだよいきなり!」
「いきなりじゃねえよ!
いいからさっさと出てこい!!」
「いつまでも、部屋ん中で引きこもってんじゃねえよ
くそ兄貴!」
いきなりの事に戸惑う清水の意思をよそに
兄は、清水の事を殴り飛ばしていき、弟はそうして
部屋の外にまでふっ飛ばされた清水を、乱暴に蹴って
無理矢理に部屋の外に出していく
「そら!
連れて来たよ、母さん!!」
「苦労かけんじゃねえぞ、馬鹿!」
「いっつっ!
なんなんだよ、いきなり‥‥」
部屋の外に乱暴に連れ出された清水の目に映ったのは
悲しげな表情を浮かべている母と、真剣な面持ちをした父
その父の傍らには、何と松葉杖があった
「な、なんだよそれ‥‥」
「幸利、実はね‥
お父さん、仕事を辞めることになったの‥」
母が、重たい口を開いていく
「…は?
ど、どうして?」
「‥仕事の帰りに、車が突っ込んできてな‥
ついさっきまで、病院にいたんだ‥
一生、松葉づえが手放せないそうだ」
父が、そう口にしていく
「そ、それで仕事を辞めるって言うのかよ‥‥
その事と、一体どういう関係が‥‥?」
理解が追いつけて居ない様子の清水に対し
兄が、そんな彼に対して冷たく言い放つ
「つまり、もううちはお前の事を養うことは出来ねえってことだ」
「養えないって、そんな‥‥
うちはそんなに生活が苦しいはず」
「お前が自宅に引きこもって、漫画とかゲームとか
そんなのを無駄に買い込んでいったせいで、余裕がねえんだよ!
お前が湯水のごとく使いつぶしてる金は、父さんと母さんが
必死に働いて稼いだ金なんだよ、それをお前は無計画にバンバン使って
今までは何とかなってたけれど、父さんが一番稼いでいたから
その父さんが怪我で仕事を辞めることになったから、もうお前に
好き勝手させられるような余裕は、なくなっちまうってことなんだよ!」
弟が清水に、現実を突きつけるように言い放つ
「その通りよ、幸利‥
今までは、息子だからって少しは
大目に見ていたけれども、こうなった以上
うちも、もう限界なのよ‥」
母は、苦し気に言い放つ
「限界って…それってどういう‥‥」
未だに理解の追いつかない清水は、問いを投げかける
それに対して、兄が冷たく言い放つ
それは余りにも、残酷なものであった
「俺が答えてやるよ、幸利‥
お前、うちから出ていけってこったよ」
「は‥‥?」
兄が告げた、非情とも言える返答
その返答を聞いたとき、清水は
余りにも現実味がなかったのか、唖然とする
「出て行けって‥‥
一体何を言って‥‥」
「そのまんまの意味だ、うちにはもう
お前みたいなろくでなしを養うだけの余裕はねえ
それだったら、出て行ってもらうしかねえだろ?」
困惑している清水に、兄は淡々と続けていく
「追い出すって、ちょっと待てよ‥‥
そんな事、急に言われたって
大体それをいうんなら、兄貴達だって‥‥!」
「俺も兄さんは真面目に学校に行ってるし
兄さんも俺も、進路をしっかり決めてる
兄貴はどうなんだよ、碌に学校も行かずに
ゲームやパソコンばっかしてるお前の進路って
一体なんだっていうんだ、うん?」
弟が、呆れるようにして言う
「だからって、だからってそんなの‥‥」
「見苦しいぞ、今の家で一番いらねえのはお前なんだよ!
無駄に家系を浪費し続けてばっかりのお前なんか
もう、うちにいるだけで迷惑なんだ、はっきり言わせてもらう
邪魔なんだよ、お前がこの家に存在すること自体が」
ハッキリと言い放っていく兄
それを聞いて、打ちのめされて行くように膝をついて行く清水
だが…
「やめろ、二人共!
兄弟で責任の押し付け合いをするな!!」
そういって、父が兄と弟に言い聞かせていく
「父さん、でも!」
「いいから、黙ってなさい!」
父は、兄や弟を静かにさせていく
「幸利‥
兄さんや弟は、ああは言ったが
父さんはお前の事を追い出すなんて
そんな事は出来れば、したくない
だからと言って、このままお前の事を
養い続けていく事が出来るのかと言われれば
正直に言うと、それは難しい事だろう、それで
父さんから提案がある、幸利‥
高校に行きなさい」
父は提案として、高校に行くように勧めていく
「はあ?
父さん、何言ってんだよ
中学を殆ど引きこもっていたこいつが
高校なんて行けるわけねえだろ、無理だって」
「わかっている、だからと言って
このまま、こいつを追いだしたところで
まともに生きていく事なんて、出来ないだろう?」
「そんなの、こいつの自業自得じゃん!
お父さんが、そこまで世話をする義理なんてないって!!」
父の提案に異議を唱えていく、兄と弟
「父さんは父親なんだ、家族の為に出来る事をしたい‥
だがもう、それは叶わない、だからお前達には将来
できる限り、何不自由のないように育てていきたい
それが、今の父さんに出来る限りの事だ‥」
父は歯がゆそうに呟いていく
それを聞いた、母は…
「幸利‥
これが、私とお父さんが出来る精一杯よ‥
大学に行けとまでは言わないわ、でも
貴方にはいずれ一人で生きていく最低限の力を
身に着けて行ってほしいの、それが今の私達の精一杯‥
だから‥ここで選んで‥
お父さんの提案に乗るか、それとも‥
兄さんたちの言うとおりにするか」
母が清水に言う
父親がもう、家族の為に出来る事はもう
このぐらいしかない、だからせめて清水には
一人でも生きていける、必要最低限の譲渡を口にする
とはいえ、母も今でこそこの有様ながらも
それでも、愛する息子として兄や弟の提示する
家から出ていくという提案の方は、少し濁らせていく
愛する息子に、出ていくなんて言う言葉を使いたくはない
母なりの愛情表現だったのかもしれない
だが、清水当人にとっては
そんなものを理解する余裕なんてなかった
彼の心境にあったのは…
「(ふざけんな、なんでだよ
なんでこんなことになったんだ‥‥
なんで俺ばっかりが、こんな目に
こんな事ばっかりさせられねえと行けねえんだよ!
なんで…なんでなんだよ‥‥)」
自分に降りかかってきた、本人にとっての不幸
それがまさに今、自分に降りかかってきたことによる葛藤
清水は、とても選べるはずもなかった
外の世界とのかかわり何て、彼にとっては
まさに恐怖以外の何ものでもないのである
だからと言って、家に出たところで
やっていけるはずもない、そんな力が無いからだ
自分に降りかかってきた不幸を恨みながら、彼が下した決断
それは…
「…わかった‥‥
行くよ、学校に‥‥」
高校への進学であった
「幸利‥」
「その代わり、一つ条件を出してくれ‥‥
どこに行くのかは、俺に決めさせてほしい」
清水は、そう言って条件を出していく
「てめえ、甘ったれるのもいい加減に‥」
「‥いいや、構わないよ
それで幸利が学校に行ってくれるのなら‥」
兄はそれに抗議しようとしたが、それを制止し
清水のその条件を受け入れていく事を了承した父
清水にとっては苦渋の決断である
もしも、進学先を勝手に決められて
最悪、地元の高校にでも行かされたら
またしてもいじめを受けてしまう結果になる
それだけは嫌だった、だからこその条件であった
父と母は無論、その条件を受けた
兄と弟は内心不満であったが、両親の意志に
渋々ながらも了承することで、家族会議は終了する
やがて、清水は家を追い出されるよりはましだと
進学を選び、やがて彼は自分の今の学力でも行ける高校を探し
そうして、進学を決めたのが…
例のとある高校なのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
やがて、彼は無事にとある高校に進学したが
やはり、中学校時代のトラウマがあってのことか
余り他人となじもうとしなかった
極力、他人との交流を避けて
教室の隅で、彼は大人しく過ごしていた
やがて、彼が入学をしてから
四人の同級生の女子が注目された
彼女達は周囲から、四大女神
そんな風に呼ばれていたものの
清水にとっては、そんなものはどうでもよかった
所詮はモテない男子が勝手にそうちやほやしているだけだと
そもそも、彼が学校に通って転機が訪れたのは彼女達ではなく
ある一人の男子生徒であった…
南雲 ハジメ…
ある意味で、学校で有名になっている男子生徒
その理由は、四大女神の一人
白崎 香織…
彼女が積極的に彼に絡んでいるからである
見た目は良くも悪くも平均的で
勉強の方も悪くはないが、態度の方も
授業中どころか、休み時間ですらも眠っている事が多く
同級生や教師からも、よく思われていなかった
清水自身は、彼のことは知っていたが
周りに乗せられる気も、ハジメの味方もしなかった
むしろ、学校中のヘイトがハジメに向けば
その分、自分がいじめられることはなくなるとも考えていく始末
そんな歪んだ、望みを胸の内に秘めていた清水
そんな中で起こったのが、例の事件
ハジメが、四大女神の一人である南野 姫奈を
校舎の裏側に連れ込んでいった、そのところを
檜山 大介のグループに止められたというもの
それが学校において、広まっていた
ハジメの周囲からの評価は、よくないのもあって
彼の行いを疑う者はほとんどいなかった、はずだった
だが、清水はある時に知ってしまった
彼の無実を証明するために、動いているものがいる事
その中には、その事件で被害に遭ったとされる南野もいると
それを知った瞬間、彼の中にあった何かが
まるで糸のようにぷっつりと切れてしまった
自分がいじめられていた時は、誰も助けてくれなかった
小学生のころからの友達も見捨て、教師も実質見放した
家族はそんな事情を知ろうともせずに
両親はただ押しつけがましいことをするだけで
兄弟に至っては、学校での事情など理解しようともせず
学校に行かない彼の事を、まるで腫物のように扱う始末
挙句には、通いたくもない学校に通わされた…
それに対して、ハジメは彼の事を助けようとする者がいる
その事実が、彼の事を狂わせていく…
ハジメに対して、劣等感や嫉妬
様々な感情が無理矢理に混ぜ込まれ
それによって、憎悪を浮かび上がらせていった清水は
ある時、偶然にも見かけたネットの掲示板を見付けていた
主に、学校での出来事や愚痴を言い合って行くようなものだった
だが何の因果なのか、その掲示板には多くの者がアクセスしていた
ここ最近は、ハジメの事件のことが多く
当然ながら、その多くは酷評が多かった
しかも、今の話題は例のハジメの話ばかり
清水は今ならばと、そこに自分の書き込みを贈った
そして、その書き込みによって
一人の少年の人生が大きく狂わされた
清水は、それが不思議とたまらなく心地よかった
自分以外の誰かが、自分と同じ目に遭っていくそれを
傍観しているのは、まるで自分が掌で動かしている気にさせた
それを引き起こしたのが、自分であるというのなら
人を操る事の快楽、彼がのちに異世界に召喚されて
相手を操る能力にたけた力を手にしたのも、そう言った
彼の内に芽生えていった本質が現れたのかもしれない
やがて彼は、その力に覚れていき
その果てに彼は、人であると事を捨てたのだった…
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「っ!」
清水は、不意に目を覚ました
そこに映ったのは、見慣れない部屋
それと同時に、彼の目に映ったのは…
「清水君!
目を覚ましたんですね」
自身が殺そうとした人物
畑山 愛子
それに驚いて、清水は彼女の事を
反射的につき飛ばそうとするのだが
その際に、自分の腕が動かないことに気が付き
不意に自身の手を見てみると、拘束されているのが映った
「んだよ、これ‥‥」
「あんたが気を失っている間に
拘束をさせてもらったわ、まあ最も…
そんなのなくったって、アンタは
満足に動ける状態じゃないだろうけれどもね」
そういって、声をかけてきたのは…
清水にとっては、意外な人物であった
「南野‥‥!?
なんでお前が、ここに?」
「生きていたことがそんなに驚き?
私だって、ここに来るまでに
いろんな修羅場を乗り超えてきたのよ
そんな簡単に、やられると思わないでよ」
「まあ、戻ってこられたのは
優花のお陰なんだけれどもね…」
風香が、少し苦笑を浮かべると
清水の元に姿を現すように現れた
「久しぶりね、清水…」
「園部‥‥」
園部 優花…
自身を見下ろしている彼女は、まるで
自分に判決を言い渡す裁判官のように感じた
「なんでだよ‥‥
なんでお前ら生きて‥‥」
自分が殺したと思った相手が生きている
その現実を受け入れられないと言ったような
そんな様子の方を見せていく清水、そんな彼に対して
「それを、アンタに話す義理なんて無いわ
一つ言えるのは、アンタの思惑通りにはまるほど
アタシ達は弱くなかった、それだけのことよ」
優花は淡々と言い放った
「畜生、なんでだよ‥‥
なんでてめえ等ばっかり、俺だって
俺にだってその位の力があってもいいだろうが‥‥
それなのに、どうして!」
清水は不満と悔しさを織り交ぜた様な表情を浮かべ
自分の周りへの不平不満を、臆することなく口にしていく
「清水君…
どうして、こんなことを…
こんなことをしたって、誰も貴方の事を
認めてなんてくれないのは、目に見えているのに…!」
「うるせえ!
どいつもこいつも、うぜえんだよ
俺の事を認めようとしないんだったら
無理矢理にでも認めさせりゃいいんだからな!!」
愛子の問いに対して、清水は吐き捨てていく
「‥‥自分を無理矢理に認めさせるために
他人の心を操って、弄ぼうとしたって言うの?
向こうの世界で、貴方がそうしたように!」
姫奈が不意に、訪ねていく
「白崎さんから聞きました…
清水君だったんですね、ありもしない噂で
南雲君の事を陥れるように仕向けたのは…」
愛子が悲しげに言う
だが、そんな彼女の様子を気にもとめることなく
清水は吐き捨てていく
「ああ、そうさ‥‥
南雲が南野を襲おうとしていたって噂を
ネットを使って学校に流したのは、俺だ?
でも、だから何だ?
そもそも、あいつが学校中の奴等から嫌われていたのは元々だ
それは、お前の方が一番わかってんだろ、白崎?」
清水は下卑た笑みを、香織に向けていく
「っ!」
「お前が、そもそも南雲に関わらなかったら
あいつは少なくとも、あんな風に騒がれることもなかった
俺はそれに、少し手を加えてやったに過ぎないんだ
俺が何をしようとしまいと、いずれはああなってんだよ
きっと南雲も、地獄でこう思ってるだろうぜ
お前がいなかったら、こんなことにはなってなかったってな!」
清水は、香織に唾を吐きかけていく様に言い放った
「清水…
あんたねえ!」
「大体、南雲も南雲さ‥‥
陰キャのくせに、身の丈に合わない
生き方なんてするから、あんな風になる
最初っから、ああなる運命だったんだよ!」
優花の怒り声を気にすることなく、さらには
自身が陥れたハジメの事もボロカスに言い放った
そこに…
「ぐえ!」
清水は起こしていた身体を、無理やりに押さえつけられる
押さえつけているのは…
「そうね、確かにアンタの言う通りよ…
彼自身にも、非自体はあった
でもね、だからと言ってそれであんたが
彼の行いをどうこう言う資格なんて在るはずないでしょ!
そんなの、ただの身勝手な八つ当たりじゃない!!」
姫奈であった
「姫奈…」
「‥‥彼は、アンタと決定的に違うところがある
それが何か分かる?」
「は、知らねえよ
興味だってねえしな」
清水は、嘲るように言い放つ
「それはね、自分が理不尽に晒されたからって
他人を陥れたりしようと、考えなかった事
彼はどんな状況でも、それを他人に圧しつけるなんて
そんな考えを持っていなかった、持とうともしなかった…
そうじゃ無かったらオルクス大迷宮で
私達の事を助けるために立ちあがったりなんてしなかったわ」
「っ!」
姫奈は、言い切っていく
「クラスのみんなは、ハジメの事を貶めた
でも彼は、そんなみんなの事を見捨てなかった
アンタのように、自分を認めなかったからって
自分とは違うからってそれで他人を陥れたりなんてしなかった…
それがあんたと彼との決定的な違いよ!」
「あんたは、自分の為に力を振るった
でも南雲君は、誰かのためにその力を振るった
それが、貴方とハジメ君の違いなんだよ」
風香も、そう続けて言う
「清水君…
貴方が過去に何があったのかは
正直に言って、わかりません…
ですが、だからと言ってあなたが
この世界で多くの人達を傷付けた事
向こうの世界で、一人の人生を狂わせたこと…
それらは決して、許されることではありません
しかし、だからと言って貴方の事を
断罪することは、私にはできません…
だって、私は貴方の事を止める事が出来なかった
貴方と向き合おうとしなかった、そして何よりも…
貴方を救う事が出来なかった…」
愛子は言う
愛子は、清水のやったことは許せない事だと理解している
しかし、愛子はそれでも清水の事を責めようとはしなかった
いいや、自分が彼を責めることは出来ないと感じていたのだ
彼の傍に居ながら、彼を止められなかった
それが自身の、愛子の罪であると感じているから
「なんでだよ…なんであんたは‥‥
そんなことして、アンタに何の得が‥‥」
「そうですね、正直に言うと
私もこの考えは甘いかなって思ってます…
でも、私にできることなんてそれこそ
こうやって寄り添ってあげられるくらいですから」
愛子は、そう答えていく
清水は、不思議とそんな愛子の表情を見ていた
自分をいじめていたもの、自身を見捨てた同級生とも
自身を疎んだ兄弟とももちろん、両親の向けていたものとも違う
そんな愛子の表情に、不思議と目を向けていた
その時であった
「っ!
うあああ!!!!」
「っ!」
清水は突如として、自身に寄り添った
愛子の不意を突いて、彼女の事を突き飛ばした
「っ!」
「清水!」
愛子は、突き飛ばされ
そのまま尻もちをついて行く
愛子の想いを無下にしたと思い
優花は、清水に対して激しい怒りを浮かべ
彼に突っかかっていこうとした
その時
「っ!
優花、ダメ!!」
風香は、何かを感じ取り清水に向かって
突っかかって行こうとした優花を制止する
優花はそれを聞いて、足を止めた
この行動が、優花の生死を分けていった
何故なら、そこに…
「ぐあああ!!!!」
こちらに向かって、何やら攻撃が放たれ
それが、清水の胸元を一気に貫いていった
「今の攻撃!」
姫奈は、攻撃の方角から
その攻撃を仕掛けていった
その相手の位置の方を補足する
そこにいたのは…
「あれは…!」
姫奈は敵の居場所を察知した
そこにいたのは、鳥のような影があった
「魔人族か…」
姫奈は、敵の位置を補足した
だが
「遠すぎる…
風香、狙える!?」
「ごめん…
あそこまで距離が離れてたら、もう」
姫奈は風香に追撃を頼もうとするが
風香でも当てられない距離にいるので
もう狙う事は出来ない状態であった
「なんだったの…今の…」
「魔人族ね…
多分、先生を狙ったんだと思う
私達が関心をこいつに向けている隙を狙って…」
姫奈はそういうと…
「清水君!」
愛子は即座に、自身を突き飛ばした清水に目をやる
そこにいたのは…
「清水君…
そんな、どうして…」
魔人族からの攻撃を受けて
胸に大きな穴をあけてしまった
清水の姿が、そこに映っていた
「清水…アンタ…
愛ちゃん先生を助けるために…」
「…へ、そんなんじゃねえ‥‥
ただ…綺麗ごとばっかり抜かしやがる
そんな奴の顔を見ているのが…我慢できなかっただけだ‥‥」
弱々しくも、そんな風に吐き捨てていく清水
そんな彼の身体が、段々と崩れ落ちて行っている
胸元の黒っぽい紫色の宝石であるダークにも
ダメージの方が入っているために、致命傷となっている
そんな清水の凄惨な姿に対し、その場にいる
ほぼ全員がやりきれないような表情を浮かべていた
「清水君…」
「…畑山先生…俺は‥‥あんたの命を狙った事も
その過程で…この町を襲った事も‥‥大勢の命を奪った事も
間違ったことをしたなんて…思っちゃいねえよ‥‥もちろん
俺が向こうの世界で…南雲に対してやった事に対しても‥‥だ‥‥
でもさ…アンタの言葉を聞いて‥‥
俺と必死にむき合おうとしていたのを感じて‥‥
不思議とそれが…嬉しかったって思ったのも事実だ‥‥
バカだよな…そんな事‥‥思ったってもうどうにもならねってのに‥‥」
どこか、諦め気味に呟いていく清水は
愛子の顔から、自身にの目線を背けていった
「あんたみたいな人に…もっと早く‥‥
会っておきたかったぜ‥‥」
清水はそう呟きながら、完全に崩壊していった
「清水君…」
愛子は、目の前で死んでいった清水を
涙を浮かべながら、その最期を見届けていった
「愛ちゃん先生…」
そんな彼女に、少し悲し気な様子で見つめる優花
そんな彼女の、傍にやってきたのは…
「先生…」
香織であった
「白崎さん…
私は本当に、ダメな教師ですね…
南雲君のことも東雲さんの事も助けられず
清水君だって、彼の凶行を止められないばかりか
大勢の人たちの命を危険に晒していく事になりました…
もっと早くに、気付いてあげていれば
もっと早くに止めることが出来たら、誰も何も…
取り零す事なんて、なかったのに…
私は本当に‥‥本当にダメな先生です…」
愛子は、涙を浮かべていく
それに対して…
「‥‥そんなことないですよ
愛ちゃんは、立派な先生です」
香織は言う
「え?」
「私、正直に言うと清水君の事をこの手で殺してやりたい…
そう思っていました
でも、先生はそんな私にも体を張って訴えてくれました
どんな時でも先生は、生徒の味方でありたいていうその気持ち…
私にも伝わりました、清水君にもきっとそれが伝わったんだと思います
だからこそ、彼は魔人族の攻撃から先生を守ったんですから…」
香織は言う
「白崎さん…」
「私はそれでもやっぱり…
清水君のことは許せません、許すつもりだってありません
でもこれはあくまで私の意志…
先生には先生の強さがあるんだって、私は思います
ハジメ君、私の大切な人がハジメ君だけの強さを見せてくれたように…」
香織は言う
「先生、先生はどんな時だって
私達の味方であり続けていこうとしている…
それは、先生にしかない先生だけの強さなんだって
私は思っています、だからこそ先生、その強さを…
先生だけの強さを、先生自身が否定しないで下さい
その先生の強さに、支えられている人達はたっくさんいるんですから…」
香織がそう言うと…
「そうだよ、先生!」
その言葉を受けて、一番に声をあげたのは玉井であった
「玉井君…」
「俺、ずっと迷ってたんだ…
天之河に言われて、戦うしかないって
だから俺、言われるがままに訓練をして行った…
でも、あのオルクス大迷宮で死にそうになって
それ以来、俺はずっと戦っていく事が怖くなった…
闘わないと帰れない、でも戦うのが怖い
そんな俺達がここまでやってこられたのは間違いなく…
先生のお陰だよ」
玉井は答えていく
「先生はどんな時だって、私たちの事を
いっつも案じてくれたんです、だからこそ
私達もそんな先生の事を、精一杯支えていこうって
だからこそ、私達は先生の旅に同行したんです、だから…
だから先生は、先生のままでいいんです」
「それに、別に先生だからって何でもかんでも
一人でしょい込んでいく必要はないって俺は思うんだ
だからさ、辛いって時はいつでも俺らに頼ってくれていいんだよ
俺等だって、先生に頼りっぱなし何て、ちょっと気が引けるしさ」
「宮崎さん‥‥仁村君…」
この場にいない二名以外の愛ちゃん護衛隊の面々の
その言葉に愛子は、余りの感慨深さに少し涙を浮かべていく
「皆さん、こんな頼りない先生に…
これからもついてきてくれるのですか?」
愛子は、訪ねるように呟いていく
その問いに対して…
「当たり前でしょ?」
ただ、短く答えていったのは…
優花であった
そう答えながら、愛子の背中を優しく叩いていった
「先生…」
「私達は良くも悪くも、この世界に来て
色々と変わってしまった、そんな時でも
先生は、先生である事を、いいえ
生徒を守ろうとする意志だけは変わらなかった…
香織の言う通り、それが畑山先生の強さなんだって思う」
「そうだね…」
姫奈達は、そんな様子を見続けていく
「愛子殿は本当に、色んな人に慕われているのですね…」
ウィル自身も、そんな様子を温かく見守っていく
「…それにしても、どうして清水は最後に
愛子殿の事を助けたのでしょう、あんなことをしても
どのみち自分は、あのまま殺されていたというのに…」
ウィルは、最後の清水の行動に対して疑問符を浮かべていった
「清水君は多分、自分を受け入れてほしかったんだと思いますよ…」
その問いに、答えたのは纏であった
「え?」
「私は、清水君とそれほど親しかったわけじゃありませんから
正直に言うと、清水君がどのような事を思っていたのかは分かりません…
でも、清水君はかたくなに自分が勇者であることにこだわっていました
もしかしたら、清水君は誰かに自分の事を受け入れてほしかったのかもしれません
だからこそ、自分と必死に向き合おうとした愛ちゃん先生の存在に、救われたんだと思います…」
纏は答えていく
「…自分を受け入れてくれる、か…
それでも私は、彼の事は許せません
私の事を受け入れてくれた仲間達を傷付けて
大勢の冒険者たちをその手にかけたんですから」
ウィルは言う
「‥‥そうですね、私ももちろん
彼のやって来た事を許す気はありません
愛ちゃん先生だって、でもだからこそ
先生は、清水君に生きていてほしかったんです
生きてさえいれば、やり直せるチャンスはありますから」
ウィルの言葉を否定せずに肯定していく纏
ウィルは、愛子の生きていてほしかった
その言葉を聞いて、不意に思い直していく
自身にとっては許されない存在である
しかし、それでも愛子にとっては守るべき大切な生徒
生きていてほしい、そう願うのは
むしろ当然のことなのかもしれない
「纏殿は、この結果に満足しているのですか?」
ウィルは不意に、そんな事を訪ねていく
それに対して、纏は答えていく
「‥‥この結果に満足しているのは
死んだ清水君ただ一人です、私達も
もちろん、愛ちゃん先生も満足なんてしていない…
できるはずないですよ」
纏は、そう答えていった
こうして、愛子の人探しの依頼も
姫奈が受けていた人探しの依頼も無事に完了した
後は、ウィルをフューレンに連れていくのみ
姫奈は、ウィルを連れて
ウルの町を後にしようとした
その時であった
「皆さああん!!!!
たた大変ですうううう!!!!!!」
街の方で、待機をしていたはずの兎人族
ラナ・ハウリア
彼女が、一行の元に慌てて駈け寄っていった
「ラナさん?」
「どうしたのよ、ラナさん
そんなに慌てて」
余りの慌てぶりに、困惑しながらも
取り合えず理由を訪ねていく、風香
「大変です、大変なんです!
この町が、この町に向かって
黒い波が迫ってきているんですよおお!!!!」
ラナは言う
「黒い波?
言っている意味が分かんないわよ」
「と、とにかく来て下さい!
来てくだされば、直ぐにわかりますから!!」
「ちょっと、わかったわかった
ついて行くから、そんなに引っ張らないでってば…」
ラナに引っ張られて行く香織
それを見た、愛子達も…
「皆さん、私達も行きましょう!」
「ええ!」
ラナ達の後をついていく事にするのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
ウルの街
そこでは、町中の人々が
何やら慌ただし様子を見せている
「これは一体、何が起こって…」
ウルの町の冒険者ギルドのギルド長が
何やら、不測の事態を迎えている様子を見せている
そこに…
「ギルド長さーん!」
ラナが、香織を引っ張り出していき
それを追って、姫奈と風香、纏も到着
それに遅れて愛子達とウィルも無事に到着した
「おお、ラナ殿
それに姫奈殿や愛子殿も、よく来て下さった」
ギルド長が、一行の到着を心より望ましく歓迎する
「ギルド長さん、一体何が…
ラナさんはただひたすらに
大変としかいってくれなくって…」
「うむ、実は‥」
ギルド長が、事情を説明しようとすると
この町の物見やぐらから、警鐘が鳴り響いていく
それと同時に…
「大変だ、黒い波が!
黒い波がさらに迫って来たぞ!!」
見張り番の声が、辺りに響いていく
風属性によって声が拡張されているようである
「黒い波?」
「ああ、実はさっき見張りが、北東辺りの方角から
この町に向かってくる黒い波を見たって報告があってな
段々と、この町に向かってきているってんで
町の方でも、それがパニックになっちまっていてな」
ギルド長が、経緯を放していく
「みんな!」
「うん!」
「ああ、ちょっと待て!」
姫奈達が急いで、報告のあった場所にへと向かう
ギルド長が制止をしながらも、その後を追いかけていった
やがて、一行はウルの町の北東付近の入り口から
その方角の方にへと目を向けていった、その時であった
「うそ、でしょ…」
「なにあれ…」
遠目からでもわかるほどに、黒い何かが
まるで砂浜に流れていく波の如く迫っていた
まさに、黒い波である
「すっごく真っ黒です…
あれって一体…」
「…‥あれは、マモノの大群だよ…
マモノの群れが集まって、それが
波のように見えているんだ、間違いない…」
風香が、黒い波の正体はマモノ達の群れが集まったものと伝える
「マモノの大群ですって?
という事は、この件には
罪徒が関わっている、という事ね…」
「間違いないよ…
遠目で見ただけでも、あんな風に
視認できるくらいだもん、絶対に自然災害じゃない!」
風香が確信をもって、姫奈に答えていった
「ギルド長さん!
急いで避難の方を!!」
「わかっている!
今、この場にいる冒険者や
衛兵総出で、当たって入るところだ…
ただ、問題はあの黒い波が
どのくらいで町に辿り着くのか…」
ギルド長の方で、すでに避難の方は進めている
だが、ウルの街は観光都市であるため
人が多く、避難がなかなかスムーズに進んでいない
「ちなみに、黒い波が辿り着くまでどのくらいかかるの?」
「遠目からだと、大まかでしか言えないけれど…
多分、後二日後に到着するわ!」
風香が答えていく
「二日!?
ダメだ、とても避難が間に合わない
町から逃がすための馬車も足りないのに…」
ギルド長が、頭を抱えていく
「とにかく、出来る事をやるしかないわ!」
姫奈は、そういって前に出ていく
「南野さん…
一体何を?」
愛子は、おそるおそる
姫奈に一体、何をしようとしているのか
それを訪ねていく
「‥‥最低でも、避難が完了するまでの間
マモノの群れの方を食い止める、それしかない!」
「そんな無茶だよ!
だって、あんなにも数が多いんだよ!?
いくらひめっちが強くったって
一人でどうにかなんて出来ないよ!!」
姫奈の提案に、奈々が無茶であるという
「ええ、確かに群れをまとめて
相手にしていくのは私でも無理ね…
でも、群れ全員を相手にしていく必要はないわ!」
「どういうことだ!?」
姫奈の言葉に、玉井が問いかけていく
「あれほどの数のマモノが、自然にウルの街に
向かって行くなんてことは、まずありえない
恐らく、マモノ達の群れを指揮してる
言うのならボスのような存在がいるはず…
そいつをどうにかできれば!」
「そんな、そうだったとしても
あの中から、それを見つけだすなんて…」
愛子は、やはり姫奈の考えは
無茶としか思えないと感じていた
だが
「…‥確かに、姫奈一人だったら厳しいかもね…
でも、それだったらみんなでやればいいんだよ
聖徒の力に目覚めたのは、何も姫奈だけじゃない
それに、私達の元にはもう一人、新しい戦力もいるしね」
風香は、そういって優花を見る
「アタシが?」
「ダメだよ、いくら何でもそんな事!」
優花を生かせることに、反対する奈々
「でも、群れを抑えるにはどのみち
少しでも戦える人は多い方がいい!
優花はどうしたい?」
風香が問いかけていく
「…奈々、心配をしてくれてるのは分かる…
でも、目の前で大勢の人たちが
危険に晒されるのを黙って見ているのだけは嫌!
だから、私もやるわ!」
優花もまた、闘う意思を決めていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
-
原罪(スルー推奨)
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傲慢
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虚飾
-
嫉妬
-
憤怒
-
怠惰
-
憂鬱
-
暴食
-
色欲