世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
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オルクス大迷宮
このトータスに存在する七大迷宮の中で
おそらく、最もこの世界の人々に認識されている
この迷宮は、下に行けば行くほど
そこに住まう魔物の力が強くなっていく
それ故に、冒険者が腕試しで潜ったり
騎士団たちが戦闘訓練において、重宝したりと
大勢の人々が、このオルクス大迷宮に潜っている
そんな中で、これまでの歴史において
破られることのなかった六十五階層を突破し
更になおも、奥の方にまで進み続けていく者たちがいた
それこそが…
「みんな、ここを抜けたら
次は七十八階層、調子はどうだ?」
このトータスに、人間族を救うために召喚された
勇者達一行と、彼等とともに同行していく者たちである
この面々のリーダーであり、勇者である少年
天之河 光輝
彼が面々に呼びかけていった
「おう、問題はないぜ!」
「こちらの方も、問題はない」
それぞれのグループのリーダーである
檜山 大介
永山 重吾
彼等が自分達のチーム達のコンディションを確認しつつ問題はないと、返していった
「もうすぐ、八十階層だね‥」
そういって、髪をツインテ―ルに結んだ小柄な少女
谷口 鈴
光輝が率いる勇者パーティに属し
結界師として、守り役を担っている
その彼女が、どこか表情を暗くしながら呟いていく
「谷口、大丈夫か?
疲れてるなら、早く言えよ?」
そんな少女の様子を見て、心配するのは
背が高く、がっしりとした体つきをした少年
坂上 龍太郎
光輝の幼馴染にして親友であり
勇者パーティーの攻撃役を担っている
「ありがと、坂上君‥
でも、大丈夫だよ
これでも休憩とか挟んで
無茶とかはしてないつもり
だから、みんなの足を引っ張ったりとか
そんな事は絶対にしないようにするから」
「そうか…‥
まあ、お前がそういうんなら、いいけれどよ…‥」
少女の様子を見て、どこかやせ我慢をしているような
そんな風にも見えるものの、龍太郎はそう答えていく
「けっ、足手まといが調子のいい事言ってんじゃねえよ‥‥」
鈴のそんな様子を見て、明らかに侮辱の様子を見せていく檜山
すると
「檜山、お前の方こそ
調子に乗りすぎなんじゃねえのか?」
それに対して、檜山に物申してきたのは
永山が率いるグループに属する男子生徒
野村 健太郎
土属性に適性があってパーティーのサポートを務めている
「あ、んだよ野村?」
「なんだよじゃねえよ、お前ら
人にとやかく言う前に、まずは
自分達を鍛えていくべきなんじゃねえのか!?」
煩わしそうにしていく檜山に
苛立ちの方を隠さないで行く健太郎
二人が口論を始めていく
「なんだよ、う-っせーな
訓練だったら、しっかり受けてるじゃねえか?
現にこうして、俺たちはここまでやってきたんだぜ」
「それはお前が、天之河や坂上の影に隠れて
戦闘訓練を横着していたからで、お前らの実力じゃないだろ!
しかも、お前らがそれをまるで自分達の功績のように…‥
お前ら、そんなのでどうにかなるって思ってんのか!?」
野村の必死な訴えに、檜山はますますうんざりした様子を見せていく
そこに
「やめるんだ、野村
こんなところで輪を乱すような事をするのはよくない」
光輝が止めに入っていく
「輪を乱す様な事をしてきたのは、檜山の方だろ!?
そもそも、こいつらがここまで生き残ってきたのは
俺たちの影で横着して、上手く戦闘を押し付けてたからだ!
それなのに、こいつら仲間を侮辱するようなことを…‥」
「いい加減にしないか、野村!
鈴の事が心配なのはわかるが、だからって
それで仲間に当たっていくのはよくないぞ!!
これから先は、今よりもさらに過酷に鳴っていくんだ
そんな時に、周りを不安にさせるような行いは謹んでくれ!!!」
「そうだ!
大体、俺が谷口の悪口をいったって証拠はあんのかよ?」
光輝に便乗するように、檜山は野村を激しく責め立てる
「てめえ…‥」
野村は、そんな檜山に対して
更に苛立ちの方を見せていく
だが、そんな彼の肩を優しく叩いていく者がいた
それは…
「重吾…‥」
「‥‥天之河、檜山
うちの野村がすまなかった
俺が何とか言い聞かせるから
今回は、俺の顔を立てて許してくれないか?」
重吾はそういって、二人に向かって頭を下げていく
「はあ?
そんなんで、許してもらえr‥‥」
「あ、ああ…
永山がそういうならいいだろう」
檜山が意見をしようとするが
それを光輝が遮る様に了承する
「ここから先は、さらに過酷になっていくんだ
今まで以上に、ここにいるみんなで力を合わせていかないと
仲間の中でわだかまりが残っていたら、それこそ
俺たちを信じて送り出してくれたメルド団長に申し訳が立たない
だから今は、永山に免じてこの件は流そう
檜山もそれでいいだろ」
「わ、わかったよ‥‥」
光輝の間髪入れずに、強引に物事を終らせていく
その勢いに檜山は圧され、渋々と光輝の意見に了承した
「すまん、助かった…‥」
永山は、光輝にお礼を言うと
光輝は満足そうに先頭に戻っていく
「おい、永山!」
野村は、永山に物申そうとする
だが…
「‥‥わかっている、お前はただ
谷口を侮辱した檜山を諫めたんだろ?」
永山は、そう返していった
しかも
「わかってるなら、どうして…‥」
「天之河の言う通り、この先にいる魔物は
俺たちの想像を超えるほどの強力な奴がいるかもしれない
今一番にまずいのは、目の前のことに気を取られて
他の事が、疎かになってしまう事、今はまず仲間とともに
生きて戻っていく事、それが今何よりも重要なことなんだ…
だから、今は抑えておけ…
どのみち、それで困るのは檜山達の方だ」
重吾が、何とか諫めていく
「そうね‥
私は天之河君の言い分に全部
賛同するつもりはないけれども‥
今は少しでも、ここにいる私達が
生きて戻ってくることを考えましょう」
そう答えていくのは、永山グループの女子生徒
吉野 真央
付与術師を務める、このパーティーの
縁の下の力持ちである彼女も、そう答えていく
「…わかったよ…‥
今はそういう事にしておいてやるよ…‥」
野村は、一息つきながら重吾たちの判断に従う
「みんな…」
自身のパーティーの様子を見て、どこか
不安げな様子を見せていく一人の女子生徒
辻 綾子
このパーティーにおいて
唯一の回復役である治癒師だ
「みんな‥」
パーティ内で亀裂を起こしてしまった
そんな自分を内心で責めていく鈴
「大丈夫だよ、鈴」
そんな、鈴に優しく声をかけていくのは
鈴に続いて、小柄で眼鏡をかけている女子生徒
中村 恵里
勇者パーティーに所属し
降霊術師の天職を持つ鈴の親友である
「えりりん‥」
「鈴の出番がないってことは
僕たちは順調に戦えてるって事
でも、ここから先はどんな魔物が待っているのか
僕たちにも予想が付かない、そんな時に頼れるのが
鈴の結界による防御なんだ、今は必要な時に備えておいて
僕は鈴の事、頼りにしているからね」
恵里はそういって、鈴の頭を優しく叩いていく
親友である彼女なりに、鈴を元気づけようとしているのだ
鈴もそれを感じているのか、少し暗い表情だったのが
少しずつだが、明るさを取り戻していくのであった
「ありがと、えりりん」
鈴の感謝の言葉に、恵里も笑顔をうかべる事で返していった
それから、すぐに
「ようし、行こう!」
光輝が全員に指示を出していき
一行はそのまま、次の階層に続く道へと進んでいくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
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… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
下の階層に降りて来た、一行
そこには…
「わあ、まるでジャングルだね」
鈴が、そういって辺りを見渡していく
そこは、ここに来るまでに何度か見たこともある
大きな森林地帯、言うならばジャングルのような物であった
「みんな、気を付けろよ!
こういったところは、隠れられる場所が多い
不意を突いて、魔物が襲い掛かってくることがある
できる限り、死角を造らないようにしていくぞ」
永山がそう指示を出していく
チームメイトたちも、それを受けて
それぞれで、前後左右について行った
「け、気を張り過ぎだっつの‥‥
こんくらいでビビってんじゃねえよ」
一方で、そんな永山パーティーに対して
不快な笑みを浮かべながら、見ている檜山
他の小悪党グループも、それに同調するようにして
森の中を、ずかずかと進んでいった、その時であった
「っ!
上から来るぞ!!」
そんな声が聞こえてくると
上の方から、何かが投げつけられる
「うわっと!」
檜山はそれを聞いて、慌てて
自身に向かって投げつけられた何かをよける
それは何と、堅いヤシのような実である
一行は上の方を見上げると、何と小さな人間くらいの
大きさの猿の群れが、木の上から一行を見下ろしていた
「猿!?」
「マッドエイプだ!
集団で襲い掛かる猿の魔物だ!!」
そうして木の上にいる猿の魔物
マッドエイプは、一斉に一行に向かって
ヤシの実のような木の実や枝や石などを投げつけていく
「っ!
この!!」
龍太郎が、手甲型のアーティファクトを構えて
エイプの群れに向かって、攻撃の方を仕掛けていく
その際に、エイプたちは散り散りになって
その場から逃げ出していった、だがしかし
「っ!
光輝!!」
「天翔閃!」
逃げ出したエイプたちの先に向かって
光輝がスキルの方を放っていった、それによって
エイプたちは、それを受けて見事に仕留められていき
光輝の一撃を受けた、エイプの亡骸は
そのまま地面の方にへと堕ちていった
亡骸から、流れ出ていくその血が
やがて地面の方を濡らしていくのであった
その一方で…
「マッドエイプの逃げ先を予測して
そこに攻撃を加えて行く、さっすが二人は息があってるね」
「油断しないで、鈴!
群れはまだ、完全に仕留めきれたわけじゃない‥
来るよ!!」
恵里がそう言うと、光輝の攻撃を逃れた
他のマッドエイプたちが、まるで武器のように
木の枝をもって、一行に向かってとびかかっていく
だが
「やあああああ!!!」
それを、光輝が剣の一振りで見事に切り伏せた
「光輝君!」
「鈴、恵里、二人とも無事か!?」
「な、何とか‥」
光輝は、剣を構えていき
向かってくるマッドエイプを迎え撃つ
しかし
「光輝、後ろだ!」
龍太郎の叫び声が、響いていく
すると、そこから襲ってきたのは
別の武器のように木の棒を構えたマッドエイプ
勢いよく、向かって来たので
光輝も防御の方が間に会わなくなる
しかし、そこに…
「我ここに、我らに刃を向ける者たちの目論見を阻まん‥
障壁!」
鈴は前に出て、手を翳していく
すると彼女の両腕に付けられている
腕輪型のアーティファクトが光っていき
そこに張られた結界に勢いよく
マッドエイプがぶつかってしまい
首の骨が折れたことによりに絶命
さらには勢いが強すぎたのか、潰れたような
そんな音とともに、マッドエイプの身体から血が噴き出した
それ故に、鈴の目の前には…
「ひぃ!?」
ぐちゃぐちゃにつぶれた、マッドエイプの顔面が
鈴のまさに目の前に迫っていた、結界によって阻まれているものの
それによって、鈴にとってはまさにおぞましい光景が映っていた
それによって、鈴は精神的な衝撃を受けてしまい
結界は即座に解除されてしまうことになってしまう
だが、そこに…
「鈴!」
「ふえ!?」
恵里の声が響く、すると結界が解除されたことにより
そこを狙って、マッドエイプたちが一気に仕掛けていった
「きゃああああ!!」
鈴は、パニックのあまりに
その場にしゃがみ込んでしまう
だが、その前に一人の人物が立ちふさがり
そんなマッドエイプに反撃を仕掛けていく
その人物は…
「我はの拳にて、我らに仇名すものを打ち砕く…‥
空拳!」
龍太郎であった
彼の一撃によって、マッドエイプは倒される
しかし、彼の攻撃のみではすべてを倒しきれず
「ぐあ!」
生き残った、マッドエイプの一撃を受けて
彼は、血を流すほどの怪我を負ってしまい
その血は、少量ながらも地面に滴り落ちていった
「あ、ああああ‥」
それを見て、鈴は表情をこわばらせていく
だが、龍太郎はそれでもこらえていき
自身に攻撃を仕掛けたマッドエイプの顔面を
思いっきり殴りつけて、地面に叩きつけていった
流石に、倒れるほどの者ではないが
それでも怪我を起こしてしまった事には変わらず
特に、鈴は自分を庇ったせいで
怪我を負わせてしまった事も相まって
更にショックを受けて、まともな判断が出来なくなる
「あ、ああああ‥」
その光景を見て、もはやどうしたらいいのか
分からなくなってしまう状態になってしまう鈴
「坂上!
辻、直ぐに治療を!!」
「うん!」
それを見て、重吾がすぐさま
綾子に治療を行うように言う
だが、そんな綾子に向かって
マッドエイプが、石や木の実を
投げつけんと、そこに潜んでいた
その時
「おりゃああああ!!!!」
影から、一人の少年が現れ
マッドエイプの死角から、短刀で
次々と不意を突いて、そのまま仕留めていく
それを行ったのは…
「ようし!
辻、今の内に‥‥」
「「「「あれ!?
遠藤(君)、いたの(か)!?」」」」
「‥‥んな!?」
遠方から仕掛けようちした、マッドエイプを仕留めた少年
遠藤 浩介
そんな彼に帰って来た言葉は
今の今まで、全く気が付かれていなかった発言
それを突き付けられた、遠藤は
まさに刃物を突き刺されたようなショックを受けた
「あ、ありがとう遠藤君…
取り得ず、行くね」
「お、おう‥‥」(´;ω;`)
涙を浮かべて、辻を無事に
負傷した坂上のもとに行かせた遠藤
彼のお陰で、無事に坂上の治療を
行っていく事が出来たのであった
「坂上君、大丈夫!?」
「だ、大丈夫だよこのぐらい
だから、気にすんな」
申し訳なさそうにしていく鈴に対して
そんな彼女に、笑みを浮かべながら言う
しかし
「け、やっぱり役立たずじゃねえか!
仮にも防御役が、仲間に怪我を
追わせていたんじゃ、世話ねえぜ」
結果的に、龍太郎を怪我を負わせてしまった鈴を
責めるかのように、辛辣な言葉を投げかけていく檜山
「ちょっと!
そんな言い方ないじゃないか!!
鈴だって、しっかりと自分の役目をこなしていただろう!!!」
「はん、その結果、仲間を死なせかけたんじゃ
そんなのこなせていないとの何にも変わんねえだろうが?
お友達を庇うくらいだったら、さっさとお家に帰したらどうだよ?
その方がよっぽど、お前らのためになるだろうよ」
親友の不手際をついて、鈴の精神を更に追い詰めていく檜山
そんな檜山の言動に、恵里の方も怒りを抑え切れなくなっていく
そんな二人の口論を止めたのは…
「やめろ、二人共
ここは迷宮内なんだ、まだ敵が潜んでいる可能性もある
こんなところで仲間割れを起こすのは、敵の思うつぼだ
ここは、俺に免じてもう矛を収めてくれ…」
光輝であった
「フン‥‥」
檜山は、渋々ながら引き下がっていく
「光輝君‥」
「すまない恵里、でも今は仲間のみんなで
この中を切り抜けて行くのが先決なんだ
今は、仲間同士でいがみ合う時じゃない…」
光輝は恵里に対してそう答えていく
それと同時に告げたのは、衝撃の一言であった
「…‥しかし、言い分が正しいのは檜山の方だ
さっきのマッドエイプの襲撃の際に
龍太郎がけがを負ったのは、間違いなく鈴のせい…
こればっかりは、どうにもならない
だから鈴、次に帰還したとき…
君をパーティーから外す」
「え‥!?」
光輝の言葉に、鈴は目を見開いていく
それに対して…
「ちょっと光輝君!?
いきなり何を言い出して‥」
「俺は本気だ、今おこなっている訓練を終えたら
鈴にはパーティーを外れてもらう、これまでの訓練
その様子を見ても、鈴がこの先戦っていくには力不足だ
今の鈴が同じパーティーにいたら、チームが危機に陥ってしまうだろう」
光輝からの突然、鈴に対しての
パーティ離脱宣言に恵理が声をあげていく
「そんな!
鈴は、僕たちのパーティーにおける
守りの要なんだよ、それを外してしまったら
いざって言う時に、一体誰が僕たちの事を守れるのさ!!」
「ここにいるみんなは、もうすでに自分の身は
自分で守れるくらいに強くなっている、現にここまで
鈴の力が無くてもやっていけた、問題はないだろう?」
しかし、光輝はあくまで自分の決定を押し通していく
「何言ってんだよ、今はそうだとしても
今後はそうだとも限らねえだろうが、現に
谷口が結界を張らなかったら、お前はどうなっていたか…‥」
龍太郎も、光輝に異見していく
「でも、結局その後で結界を維持できずに
龍太郎の事を守り切れなかったのも事実だ!
俺たちは、この世界の人達の命運を託されている
だからこそ、ここにいるみんなでこの訓練を乗り切って
来るべき闘いの為に備えないといけない、だからこそここで…
仲間の足を引っ張り、その結果
仲間を傷付ける事になったら、それこそ
俺たちに期待をかけている王国の皆様に申し訳が立たないだろう…」
だが、それでも光輝は自分の意見を曲げる事をしない
彼も彼なりに、親友である龍太郎が傷ついてしまった
今の結果に憂いているのかもしれない、だからこその決断
だが、それでも鈴はここに至るまで
皆の足を引っ張らないようにと必死に研鑽してきた
彼女をパーティーから外すのは、まさに
その努力を水泡に帰していくに等しいのだ
恵里も龍太郎も、鈴がここまで頑張ってきたのを理解している
だからこそ、二人は光輝のその判断に納得がいかなかった
何とかして光輝に、思い直してほしいと必死に考えていく
しかし…
「ありがと、恵里、坂上君‥」
鈴は、消え入るような声でそう呟いていく
「鈴‥?」
「‥‥ごめんね、必死に引き留めてくれて
でもいいんだよ、鈴は光輝君の判断に従う‥」
「そんな!?
お前はそれでいいのかよ!」
「いい訳ないよ!」
鈴が、激しい声で訴える
その声には、悔しさがにじみ出ている
「言い訳ないに決まってるでしょ‥
鈴だって、ここに来るまでに
必死に頑張ってきたんだもん‥
途中で投げ出すなんて事
そんな事、したくないに決まってるよ…」
鈴は、そう述べていく
その目からは、涙が浮かんでいる
「‥‥だけど、みんな強くなっていって
鈴の守りがなくても闘って行けてるのも事実だし
だから、どうにか皆に遅れないようにって
必死に食らいついてきた、でもやっぱり無理だよ
さっきも、マッドエイプの死体を見て引いちゃったし
そのせいで、坂上君の事を傷付けちゃった、もう無理だよ‥
鈴が弱いせいで、みんなを傷付ける位だったら
もういっそのこと、パーティーを外れて王国に戻るよ」
「鈴‥」
「谷口…‥」
鈴は、自身の思いを吐露していく
恵里や龍太郎の励ましを受けて
なんとか必死に取り繕ってきた鈴
しかし、結局は自分の力不足で
龍太郎を傷付けることになってしまった
その事実によって、鈴は完全に
自分の無力感によって精神を折られてしまった
その様子を見て、恵里も龍太郎も何も言えない
単純にかけてやる言葉が見つからなくなってしまったのだ
言葉が出ない、親友が、仲間が苦しんでいるのに
何の言葉もかけてやる事も出来ない、代わりに声をかけたのは
「君にこんな決断をさせてしまってすまない
だが、俺は勇者として何よりもリーダーとして
仲間を誰一人と失う訳にはいかないんだ、これは
そのために必要な判断、どうか分かってほしい…」
鈴の離脱を進めた、光輝であった
「うん、わかってる‥
鈴は大人しく、光輝君の判断に従うよ」
鈴は、もう完全に諦めた様子であり
光輝の決定に、反論する気力もない様子である
「うん、それじゃあ行こう
転移の魔方陣がまだ見かけないから
魔方陣が見つかるまでは一緒に行こう
みんなも、辺りを警戒しながら行くぞ!」
そういって、光輝の呼びかけにしたがっていく一行
檜山達は、光輝が檜山の意見を尊重したことに
少し舞い上がっているのか、鈴に対してあからさまに
不快な笑顔をうかべて、表情を落としている鈴を見ている
その様子を見て、悔しさと怒りに身を震わせる龍太郎
しかし
そんな彼の肩を優しく叩く者が
それは…
「坂上…」
永山 重吾であった
「永山…」
「お前の気持ちはわかる、本音は
お前や中村と一緒だ、だが谷口自身が
その決定に従った以上は、お前にも俺にもどうしようもない…
これは、谷口の心の問題なんだ…
あいつ自身が、立ち上がろうとしない限りは
俺たちの誰が言っても無駄だろう、今は様子を見るしかない」
重吾がそういって、彼なりの助言をしていく
それに対して…
「僕も永山君の意見はもっともだと思う‥
鈴の問題は、僕たちがどうにかして
解決できるほど、簡単な事じゃない‥
それに、僕は鈴にはこれ以上
苦しんでほしくはない、だからあくまで
僕は、鈴自身の意志を尊重していきたい‥
だから今は、鈴の様子を見守っていこう‥
今の鈴には、少しでも休める時期が必要なんだ」
「中村…‥」
恵里の言葉を聞いて、頭が冷えたのか
自分の中にあった激しい感情が収まっていくのを感じた
龍太郎にとって、鈴も恵里も
信用しきれる数少ないクラスメイトである
だからこそ二人、特に志を同じにする鈴には
これから共に、歩み寄っていって行きたいと願っている
だが、恵里に言われて気が付いた
それは、自分の独りよがりになってしまっていたことに
そんな風になってしまった、自分自身に
喝を入れていくようにして、自身の頬を叩いていく
「そうだよな、中村の言う通りだ…‥
あくまで決めるのは、谷口だし
あいつがそうしたいって思ったことを
していくのが、本当の友達だよな」
そういって、一呼吸置いて呟く龍太郎
「坂上…」
「‥‥ただ、俺は谷口には抜けてほしくない…‥
この意志自体は変わらねえぜ」
「僕も同じだよ
僕は例え、この先何があっても
最期の最後まで、鈴の傍に居たいからね‥」
自分達の意志が変わらないことを伝えていく
「幸せ者だね、谷口さん‥
あんなにも大切に思ってくれている
そんな人が、傍に居てくれてるんだし」
「そうだね…」
そんな様子を、静かに見つめる真央と綾子
そんな会話もありながら、一行は次の階層にへと
続いていく階段、あるいは魔方陣を見付けるために
先にへと進んでいこうとする
「ようし、みんな!
それじゃあ、次の階層にへと向かおう…」
「待った!」
光輝が一同に、呼びかけようとしたところに
待ったをかけた者がいた、それは自身の天職を使い
この辺りの捜索を行っていた、円藤であった
「どうした、浩介?」
「この近くに気配を感じたんだ
多分、マッドエイプの群れだろう
仕留め損なった群れの一部が
他の群れと合流して、向かってきてるんだ!」
浩介が、そういって一行に伝えていくと
「全員、構えろ!」
光輝が、全員に呼びかけていく
それを聞いて、その場にいる全員が
それぞれの武器や装備を構えていく
「みんな‥」
鈴は、先ほどの離脱宣言のせいか
自分が加わっていくのか、そんな迷いを見せる
すると
「鈴」
「えりりん‥」
恵里が、鈴に優しく声をかけていく
「どのみち、帰還用の魔法陣が無いと
ここからはどうすることも出来ないんだ
だからせめて、戻るまではがんばろ?」
恵里の言葉に、こくりと頷き
腕輪型のアーティファクトを付けた
自身の手を突き出して、構えていく
そこに…
「来たぞ!」
他の群れを連れて来た、マッドエイプ
その先鋒隊ともいえる猿たちが飛びかかっていく
その先にいたのは…
「きゃああ!!!」
回復役の綾子であった
「辻!」
綾子のピンチを見て、真っ先に
向かったのが彼女に想いを寄せる健太郎であった
だが、その時
何やら鈍い音があたりに響く
まるで何かを勢いよく貫いたような
そんな音が…
「っ!」
辻は、閉じていた目をおそるおそる開いていく
すると彼女は、目の前の光景に表情を引きつらせる
その映っていた光景、というのは
彼女の眼前に迫っていたマッドエイプの身体から
何やら鋭いものが飛び出しており、その部分から
マッドエイプの血が、ぽたりぽたりと地面に滴り落ちていた
そのマッドエイプの死体が、ゆっくりとその場に倒れていき
辻や、彼女のもとにやって来た健太郎がおそるおそる目を向けると
そこにいたのは、蠍であった
ただ、当然ただの蠍ではない
鋏は四本あり、尾も二つあり、さらには
大きさの方も大体、五メートルは超える巨体である
しかも
「うそ‥‥だろ‥‥」
「何…あれ‥」
浩介と真央も、驚きを禁じ得なかった
なぜなら、そこには…
その巨大な蠍がなんと、三体もそこにいたからである
これには一行も、マッドエイプの群れも驚愕
マッドエイプの群れは一斉に、その場から逃げ出していく
だが、その群れを一体の巨大蠍が巨大な鋏を振るい
群れたちを薙ぎ払ってふっ飛ばしていき、それによって
マッドエイプの群れは、壊滅状態となった
その一方で…
「ど、どうすんだよ!」
「わかんねえって!」
一行の方も、それを見せつけられ
もはやどうしたらいいのかわからない
そんな状態で、混乱状態になっていく
「ここは俺が引き受ける!
皆は様子を見て、どうにか
この場から抜け出してくれ!!」
光輝が前に出ていく
「無茶だよ、光輝君!
いくら何でも、あんなのを
一人で引き受けるのは、自殺行為だよ!!」
「無茶でも、俺はやる!
俺は勇者なんだ、こんなところで
つまづいてなんていられない、行くぞ!!」
光輝は、自身のアーティファクトである聖剣を構えていき
「天翔!」
聖剣の必殺の一撃を巨大な蠍に向かって振るった
すると、何と…
「へ?」
光輝の攻撃が当たると同時に、巨大な蠍は
まるで、砂が崩れるようにして消滅していった
もう一体の蠍も、鋏をふるって仕掛けていくが
「空拳!」
龍太郎の一撃をうけて、これまた
呆気なく崩れて行ってしまうのだった
これによって…
「‥‥倒せ‥‥ちゃったの?」
余りにもあっけなく倒されたので
その場にいる全員が呆気にとられてしまう
「な、なんだよ見かけ倒しかよ
驚かせやがって‥‥」
檜山は、そういって
自身の顔から流れている汗を拭う
その拭った汗が、地面に落ちた
その時
「っ!」
うわああああ!?」
檜山の足元から、何やら
長い物が伸びていくと、それが
檜山の足元から、素早く張っていき
それが、檜山の身体を縛っていく
「な、なんだよこれ!?
ひいいいい!?」
檜山は、何とか必死に自身を縛っているものから
逃れていこうとするが、その際に自身に向かって
牙を向けて、シャーッっと声をあげる蛇が眼前に迫る
そこに…
「やあ!」
首の頭部が切断されていき、それによって
檜山の身体を縛っていた、蛇の胴体も先ほどの
巨大な蠍と同様に、砂のように崩れ落ちていった
「全く‥‥
調子のいいことを言っといて
結局はこのざまかよ、全く」
そういって、短刀を手に取って
檜山に対してそう言い放ったのは
浩介であった
檜山は、それを受けてばつの悪そうな表情を浮かべていく
「それにしても、これは一体…」
いきなり檜山の足元から現れた蛇
その蛇は浩介が首を切り落としたと同時に
まるで砂のように崩れ落ちていった
「っ!
いったいこれは、何がどうなって‥」
真央が、いきなりの魔物の襲撃に
困惑の様子を見せていった、その時
「っ!
真央ちゃん!!」
「え?」
綾子が、真央の名前を悲鳴を上げるように呼ぶ
真央は突然のことで、反応が遅れてしまったために
自身に向かって、迫ってきているものがいたことに気付けなかった
その正体は…
「きゃあああ!!」
何と、この場には絶対に似つかわしくない
巨大な鮫が、彼女に嚙り付かんと勢いよく迫る
「フン!」
それを、重吾が前に出て拳を振るい
鮫を撃ち抜いていくと、鮫は今まで突然に
襲ってきた魔物達と同様に、砂のように崩れた
崩れた砂は、勢いよく三人にかかってしまう
幸いなことに目には入らなかったが、それでも
「ぶっ!
ぺっぺっぺっぺっ!!
二人共、無事か…」
「ぺっぺっぺっ!!
口に砂が入った‥」
「ぺっぺっ!!!
でも、おかげで助かったよ…」
三人は、口の中に入った砂を出すために
辺りにその砂を唾とともに吐き散らしていく
すると
その三人の周りに、今度は今までよりは小さいが
それなりに大きな何かがいっせいに現れる、それは何と…
蜂であった、それもかなりの大群である
「うああああ!!!!!」
「きゃああああ!!」
おびただしい数の蜂の群れが
一斉に一向に向かって襲い掛かっていく
「な、なんだよこれ!」
「この!」
一同は攻撃を仕掛けていくものの
今まで単体だったのとは違い、今回は大群
おまけに、大きさも小さい方なので
パニックになった状態で闇雲に攻撃を仕掛けても
一、二、三体ぐらいにあてられる程度であり大したものにはならない
「っ!
みんな、ある程度でいいから
俺のところに集まってくれ!!」
健太郎が、ほかの面々に呼びかけていく
面々は、彼の声がした方に向かって
出来る限り近づいていった、それと同時に
「我ここに、我らを守る城壁を築く!
土壁!!」
健太郎は、土術師の天職によって
強化された適性の土魔法を使って
全員を、土の壁で覆うようにすることで
蜂の群れからの攻撃を、凌ぐことができた
「ふう…‥
みんな、無事か」
「ああ、何とか…
たすかったぞ、健太郎」
こうして、どうにかして無事に
蜂の大群に寄る猛攻から逃れる事ができた
「ありがと、野村君…
お陰でたすかったよ」
「ん、お、おう…‥」
想い人である綾子にお礼を言われ
ゆるんでしまいそうになる頬を抑えていく
「くっそっ!
なんなんだよ、あれ!!
急に蠍だの蛇だのが襲ってきたと思ったら
あんな蜂まで現れるだなんて、一体どうなってんだ」
困惑のあまり、辺りに当たり散らす檜山
「落ち着け檜山!
今はとにかく、この場を
どうやって切り抜けるのか
それを考えていくのが先決だろう」
「どうやってって、どうやってだよ!?
あんなにたくさんの群れがいるんだぞ!?
倒しても倒しても、次々に現れてくんのに
あんなのをどうやって切り抜けるっていうんだよ!」
永山が諫めようとするが、それが余計に檜山を苛立たせていく
「確かにそうだ‥‥
だからと言って、ずっとこの場に
居続けていくのも難しい、この壁は
健太郎の魔力によって保たれているから
それがなくなっちまったら、こいつはなくなって
最悪、またあの蜂の大群に襲われちまう、健太郎どのくらい持つ?」
「…しばらくは大丈夫だ、けれども
今後の事も考えていくと、やっぱり
できるだけ早く対策を考えてほしいかな?」
「出来るだけって‥‥
無理に決まってんだろうが!
あんなにたくさんの敵を相手に
どうやって一気に仕留めんだよ!!」
健太郎の返答に、近藤が焦りによる困惑で怒鳴る様に喚く
「(確かにそうだ‥
あんなにたくさんの敵
闇雲に攻撃を放っても倒しきれない
だからって、ここにずっととどまり続けていても
いずれは、野村君の方で限界の方が来てしまうだろう‥
だとすると、そんなに猶予はないと考えるべき‥
一体どうしたら‥)」
恵里は必死に考え込んでいた
そんな時…
「っ!
おい、永山
砂がかかったじゃねえか!!」
「ん?
ああ、すまん
辻と吉野を助けた際に
砂がかかってしまってな…
ある程度は払ったつもりだったんだが
まだ残っていたようだな…」
永山の身体にかかっていた砂の残りが
近くにいた、中野にかかってしまったようであり
永山は、謝罪しながらなるべく
全員にかからないように砂を落としていく
「しっかし、あっついな‥‥
さっき激しい戦いを繰り広げたから
なおの事、熱く感じちまうぜ‥‥」
「わるぃ…‥
急いで作ったから
風通しとかそういうのは
考えていなかったんだよ…‥」
浩介が、額からでる汗を拭いながら
健太郎の造った土壁のシェルターの不備を言う
即興とは言え、そこまでの考えに
至れなかった事を健太郎は謝罪する
浩介やほかの面々から、流れ出ていく汗
それが意図せずに、地面に滴り落ちていった
その時であった
「っ!
みんな!!」
鈴が、一同に叫ぶように言う
一同は彼女が急に切羽詰まったような
そんな大きな声をあげたことに驚きを見せた
それと同時に
地面から突然、植物の蔦のようなものがのび
それがシェルターという狭い空間の中でそれが
一気に展開されて行き、それが内側からシェルターをぶち抜いた
「きゃ!」
幸いにも、その蔦から脱出したのは
鈴や、彼女の声に反応して対処した
恵里と龍太郎、ついでに浩介であった
他の面々は…
「うあああ!!!!」
「しまっ!
ぬおおおお!?」
その伸びた植物によって、ほかの面々は
その蔦によって拘束をされてしまう、さらに…
「光輝君、みんな!」
「っ!
マジかよ、見ろよあそこ!!」
龍太郎が、それを指さしていく
そこにいたのは、先ほどに自分達を
襲って行った、蜂の大群であった
「ぐう…
この!」
光輝が、聖剣をふるって
自身たちに近づいてくる蜂たちに対抗する
だが、当然蜂たちは拘束された他の面々にも
襲い掛かろうとしているのは、明白であった
それによって
「ひいっ!
く、来るなあ!!」
檜山が自身の武器である剣をふるって
蜂の大群の方を、何とかして追い払おうとする
その一方で…
「く、くそっ!
我ここで、我等の敵を焼き尽くす…
炎弾!!」
「我ここで、我等の敵を吹き飛ばす…
風塵!」
檜山と同じ小悪党組の中野と斎藤がそれぞれの天職と適性
それに物を言わせた魔法を使って、蜂の群れに攻撃を仕掛ける
しかし、蜂の大群が迫ってくる恐怖と焦りから
それぞれの炎を、やたら滅多らに放っていった
それによって…
「きゃあああ!!」
真央の身体を拘束していた、蔦に魔法が当たり
それによって、蔦は砂のように霧散していった
しかし、それによって
彼女はそのまま一気に真っ逆さまに…
「真央ちゃん!」
「あぶねえ!」
綾子の悲痛な叫びが響くが
真央が地面に落ちる前に素早く
彼女の事を助けだしたものがいた
それは…
「大丈夫か!?」
「え、ええ‥
何とか」
浩介であった、浩介はすぐに
真央の事を降ろして、ほかの面々の方を見る
蔦によって、拘束されてしまっていることで
思うように動けず、更には迫りくる蜂の群れによって
もはや、殆どの物が正常な判断が出来なくなっている様子
「くそ‥‥
それにしたって、なんで
こんなものが生えてきたりなんか‥‥
いや、今はそれよりも何とかして
皆を救出する手だてを考えねえと」
「でも、どうするの!?
蔦を攻撃すれば、みんなの事は
助けられるけれども、あんなにも
高い所にいると、蔦をどうにかできても
全員を受け止め切るのは、いくら遠藤君でも」
「わかってる
だからこそ、どうしたらいいのかを考えてるんだ‥‥」
浩介は、そうは言うが内心は焦りもあって
最善策は考えついていく様子が見られない
それは、恵里も龍太郎も同じである
「みんな‥」
そんな様子を、力のない声で呟きながら見ているのは…
鈴であった
鈴は、これまでの道中によって
完全に自信を損失してしまっており
もう、自分で何をしようと言う
そんな気力すらも、起こらない
もは、現状を怯えたように見る事しか
出来ない心境になってしまっていたのだ…
仲間が危ないことになっているのに
それをただ、黙って見ているだけしかできない
それがさらに、鈴の心に大きくのしかかっていく
「(みんなが危ない、それはわかってる‥
だけれども、私の力で助けられるのかな‥
坂上君のときみたいに、私のせいで
誰かを傷付けるような、そんな事になったら‥
私‥‥私は‥)」
鈴は、完全に自分自身を見失っている
どうしたらいいのか、誰にも家にその問いを
自分で答えも出せないのに、自分自身に問いかけていく
自分を見失いかけていった、その時であった
そんな自身の手を、掴んでいく者はいた
それは…
「鈴!」
「えりりん‥」
親友である、恵里であった
「鈴、よく聞いて‥
あの蔓に囚われてしまったみんなを
助けるためには、鈴の力が必要なんだ
お願いだよ鈴、僕の‥‥みんなの為に力を貸してくれないか?」
恵里が、鈴に向かって行った言葉
それは、ある意味で鈴の予想をはるかに超えていた
「そんな、無理だよ‥
私の力で、みんなを助けるなんて‥」
「そんなことない、むしろそれが出来るのは
鈴だけなんだ、今こそ鈴の力が必要なんだよ!」
恵里は、切羽つまった様子で言う
それを見て恵里は、気休めではないという事は感じられる
しかし…
「無理だよ、だって私は役立たずなんだよ
チームの足を引っ張っているだけなんだよ
坂上君の怪我だって、私のせいで‥」
鈴は、完全に心が折れてしまっている様子である
完全にもう、自分の力を信じ切れない様子であった
その時である
「違う!」
「‥‥え?」
そんな彼女に、声をかけたのは龍太郎である
「俺がけがをしたのは、あくまで仲間を
お前を守る為にって俺が突っ走った結果だ
お前のせいでも、ほかのだれでもねえよ
俺がそうするべきだって思ったから、そうした
ただ、それだけのことなんだよ!」
「坂上君‥」
龍太郎は、まっすぐな瞳で鈴に訴えていく
「確かに俺は、あの時に怪我を負っちまった
そして、俺はその事を後悔してる
だってそのせいで俺は、仲間をこんなに
辛い思いを抱かせていく事になっちまった…‥
俺は俺自身が許せねえ、仲間を守ったのに
その結果、俺は仲間を傷付けちまったんだからな…‥
でもな、俺はあの時にお前の事を守った事
俺がそうするべきだって思って行動したこと
俺は間違っていたとは思ってねえ
もしも、あの時に俺がお前を助けなかったら
俺は絶対に、俺自身を許せなかった、だから
だから俺は、俺がするべきだって思った事
俺は、俺の行動が間違っていたとは思ってねえ!
だからお前も、お前がやるべきだって思う事に
全力で挑んでいってみろよ、だってお前の力は…‥
誰かを守る為の力なんだろ!」
「あ‥」
龍太郎はの言葉を聞いて、鈴は不意に
この実戦訓練の前に、親友である恵里や
これを機会に仲良くなった龍太郎に向けて
自分の決意を、口にした事があった
ー二人の事は、鈴が守るよ
だってそれが、鈴の力なんだもん!ー
その時の言葉を不意に思い出した
しかし、次第に周りが力をつけて行くたびに
その劣等感に苛まれてしまい、それによって自分でも
気が付かないうちに、あの時の言葉、決意を忘れてしまっていた
鈴は、龍太郎の言葉を受けて
彼女は俯かせていた顔を上げていった
「えりりん、鈴はどうしたらいいの?
作戦を教えて!」
「鈴‥」
鈴の表情に力強さが宿ってきたのを感じ
恵里は、作戦の内容を話していくのであった
それから
「坂上君、遠藤君!
こっちの準備はできたよ!!」
「いいけれど、谷口の方は大丈夫なのか?」
浩介が心配そうに声をかけていく
それに対して…
「大丈夫だよ、だって鈴は‥
僕の自慢の親友なんだから」
恵里は笑顔をうかべて、答えていった
こうして…
「それじゃあ、頼むぜ!」
「うん!」
鈴はそういって、目の前で
一行を捕らえている蔦の方に目を向ける
「(蔦自体の耐久力は大したことない
だから蔦自体は一撃でも当てればいい
問題は、それと同時にどうやって
蔦に捕らえられているみんなを無事に
助けていく事が出来るのか、そのためには
鈴の結界を使って、みんなを守りつつ蔦ごと包み込む事‥
まずは、みんなと蔦を丸ごと一気に包み込めるくらいの結界を張って!)」
「まずは、みんなとあの蔦の大きさを見て
絶対に皆を外に出さないようにすること‥
蔦は激しい動きよりも、みんなの動きを
抑え込む方に重点を置いている、だから
蔦が激しい動きを見せていない、今がチャンス!」
鈴は、しっかりと蔦の動きと大きさ
それに捕らわれている一同の位置等も目視する
その上で…
「我ここに、我らの障害となるものを阻む‥
聖壁!」
鈴は結界を発動させて
蔦と一同をまとめて結界にとらえる
「こ、これは障壁!?」
「もしかして、谷口さん!」
自分達が、結界に覆われたのを見て
その結界が誰の手によって発動したのかを理解する
それは…
「ようし!」
恵里はそれを見て、鈴にサムズアップをする
さらに…
結界に阻まれたことで、蜂の大群は
一斉に結界に激突してしまい、それによって
蜂の大群は、あっという間に砂となって全滅した
一方の蔦の方も、結界によって動きが制限され
そのまま、一行を自然に下におろしながら同じく砂になって、消滅していった
「はあ…はあ‥‥」
「た、助かったのか…」
地面に降ろされた一同は、その場にへたり込んでいく
「い、今のは一体…」
光輝も、無我夢中だったのか
状況を呑み込めていない様子である
「光輝君!」
そんな光輝のもとに、恵里が駈け寄っていく
「恵里…
これは一体何が…」
「鈴のお陰だよ!
鈴がみんなの事を、助けたんだよ」
恵里が、鈴の方に目を向けていく
「あ、あはははは‥」
少し、気まずそうにしていく鈴
自分が戦力外だと判断した、鈴が
自分やほかの皆の事を助けたという事
それを伝えられて、呆然としている光輝
だが
「そ、そうか…
恵里は優しいな、友達の為に
自分の手柄を譲ってあげるだなんて…」
光輝は、やはり信じ切れないようである
そもそも、光輝はこの時
無我夢中で抵抗していたので
鈴の活躍そのものに気が付いていないのだ
「いや、だからみんなを助けたのは鈴の力‥」
「わかっている、もう何も言うな
俺には全部わかっているとも、でも恵里
友達の為にとは言え、あんまり過度な評価をしてはいけない
実力が伴っていないと、それは本人のためにはならないからね
まずはありがとう恵里、それに龍太郎もおかげで助かった」
光輝の悪癖が出てきてしまい
鈴の功績をかたくなに認めようとしない
それに対し…
「おい、光輝!」
「待って坂上君、今はとにかく
ここの出口についてからにしよ
ここにいたら、また魔物に襲われるかもしれないし
今はまず、みんなでここから出ていく事を優先しようよ」
恵里に続いて、龍太郎も物申さんとするが
それを鈴が止めていく、彼女の言っている通り
ここに留まっていて、もしも魔物にまた襲われるような
そんなことになっては、みんなが無事に戻って来た意味がない
龍太郎も恵里も、鈴の言う事ももっともであると
今は光輝への抗議の方は渋々ながら後回しにしていく事にする
「本当に頼もしいよ、恵里に龍太郎
俺は二人やみんなのような、頼もしい仲間が
一緒に闘ってくれる事、本当に頼もしく思うよ
これからもよろしくな、二人共」
光輝は、そういって龍太郎と恵里に向かって
笑顔でそう言っていく、だがその発言にはやはり
彼の中で鈴の存在は、もういないもののように扱っているのが見え隠れする
その発言に龍太郎も恵里も、思うところを覚えながらも
あくまで、鈴の意見を尊重するためにここはこらえていく
「真央ちゃん、大丈夫!?」
「ええ…遠藤が助けてくれたからね‥
まあ、最初はまずいって思って
本当に汗が止まらなかったけれどもね‥」
彼等の中で、一足先に助け出され
というよりも放り出されてしまった真央に
心配そうに声の方をかけていった、綾子
「ちくしょ~、かっこいいなあお前~」
「いやいや、別にそういうつもりじゃ
ただ俺は、仲間が危ないって思ったから
無我夢中だったってだけだよ」
「それだけでも、すごいと思うぞ
誰かのために動けるって言うのはな」
真央を助けた雄姿に、健太郎から
少し妬みが入った小突きを入れられる浩介
重吾は、そんな浩介の行動に
素直に称賛の言葉を投げかけていく
しかし
「おい、行くんだったらさっさと行くぞ!
こんなところでちんたらなんかしてられねえだろうが」
そんな様子に、横やりを入れていく檜山
他の小悪党組も、そんな檜山に同意するように
どこか、うんざりしたような表情を浮かべて行く
そんな中で、檜山は自分が携帯している水の方を口に含んでいく
「あ、おい大介!
自分だけずるいぞ!!」
「ずるかねえよ、って言うか
お前らだって水、持ってんだろ!?」
「そんなもん、とっくになくなっちまったよ
つーか、そもそもお前、俺たちの分の水
がぶがぶ飲んでたじゃねえか、俺たちにもよこせよ!」
「いやだよ、こいつは俺んだ!」
小悪党グループで、水の奪い合いが始まっていく
それによって…
「「「「ああっ!?」」」」
檜山の水筒が、地面に転がり
中の水が、そのままこぼれてしまう
「おい、良樹に信治!
お前らが余計な事っすっから!!」
「うるせえよ、大体元はと言えば…」
小悪党による小競り合いが起こらんとしていた
その時であった
檜山が落とした水筒の中から出た水が
地面の砂にしみこんでくと、その砂は次第に
大きく盛り上がっていき、それによって大きな塊が現れる
「な、何だこれは!?」
すると、その塊は砂を一同に浴びせていく
思わずそれを、ただ顔で覆うだけで防いだ
すると、その砂が当たった箇所が焦げて
穴が開いていく、さらにそれが肌にまで届き
「あっつ!
なんだよこれ、あっち!!」
「もしかして、あの塊は所謂
熱を蓄える炉のような物なんじゃ‥
その熱を帯びた砂を浴びせているんだよ!」
その放たれた砂は次々と、一同に向かって放たれる
「でも、何だってあんなのはいきなり…‥」
「多分、こいつらの本体はこの砂なんだ
砂自体は無害だけれど血や汗に水、所謂
液体がしみ込んでいく事で、魔物に変質するんだ!」
「なるほど‥‥
こいつは、さっき檜山が溢した水を吸って誕生したのか」
恵里が推測し、浩介も経緯を思い返して納得する
しかし
砂の塊は、さらに一行に向かって砂を放っていく
「ひいいい!!!!」
なさけない、声をあげながら
急いでその場から逃げ出す檜山
他の小悪党組も、それに乗じて逃げ出していく
「お、おい待て!」
「いいや、今はこれでいい
今のみんなの状態であんなのと
闘っていたら、キリがないもの
みんな、出口まで走って!」
戦おうとする光輝だが、それを恵理が止める
敵の正体が砂である以上は、まともに戦ってもキリがない
檜山達のように、一旦はここを抜け出すことを強要していく
そうしないと、光輝が従わないと判断したからである
光輝も渋々ながら、ここは一旦は逃れる事を提案する
しかし、砂の塊は逃げていく一行を追って
堪えず仁、砂による攻撃の方を放っていった
その際に…
「きゃ!」
綾子が疲れによって、足がもつれ
その場に転んでしまうのであった
「綾子!」
「辻!」
健太郎が、それを見て
転んだ綾子の元に向かい
自分達と、敵の間に土の壁を作る
「ようし、今の内に逃げるぞ!」
「う、うん…」
綾子の手を引いて、急いで
その場を逃げ出していく健太郎
しかし、壁の高さと強度が足りずに
上の方から、砂を放っていく砂の塊
「健太郎!」
「綾子!」
重吾と真央の叫びが響く
しかし、二人の背中に向かって
高熱の砂が勢いよく迫っていった
その時
「我ここに、我らに仇名すものを拒む‥
聖絶!」
二人の前に、結界が張られ
それによって砂が阻まれた
結界を張ったのは…
「二人共、今の内に早く行って!」
「谷口!」
「で、でも谷口さんは…」
鈴であった
鈴の張った結界によって、放たれた砂が阻まれていく
幸か不幸か、砂は煙を上げながらも鈴の結界に阻まれて行く
「私の事はいいから、速く行って!」
鈴は、そういって
自分にかまわずに行くようにする
そんな時であった
「谷口、そのまま結界張ってろ!」
「え?
きゃ!?」
鈴の身体が、急に持ち上がっていく
それによって、鈴は結界の力を緩めそうになってしまう
鈴の身体を持ち上げたのは…
「さ、坂上君!?」
「言ったろ、俺達に刃お前が必要だって
それよりも結界に集中しろ、出口まで行くぞ!」
龍太郎であった
彼は鈴の事を抱えながら
そのまま一行とともに出口にへと向かって行くのであった
こうして、無事に出口のあるところにまで逃げ出した一行
「はあっ、はあっ…‥
谷口、大丈夫か?」
「う、うん‥
ありがとね、坂上君」
息を切らしていく龍太郎に
少し戸惑いながらもお礼を言う鈴
「龍太郎…」
光輝はそんな様子に、少し困惑した様子を見せていく
そんな彼に声をかけていくのは…
「これでわかったでしょ、光輝君
鈴は決して、戦力不足なんかじゃないって」
恵里であった
「た、確かに今回はたまたま
助けられたけれど、次がこうとは…」
「その次に、むしろ今回のような事が起こるかもしれないんだよ
知ってるでしょ、オルクス大迷宮は下の階層に行けば行くほど
そこにいる魔物も強くなっていくんだって、ここでの魔物にあんなに
苦戦させられたんだもん、次も絶対に鈴のような守り手の力も必要になる
鈴は、これからの僕たちに必要な存在なんだよ!」
恵里が、そう言って光輝に物申していく
「光輝君、自分を貫く事は悪いとは言わない‥
でも、だからってその全てが正しい事だとは限らない
自分の間違いを受け止めて、その上で自分を磨いていくのも大事だよ
光輝君には、自分の間違いから目を背けるような
そんな人にはなってほしくない、それが今の僕に言えることだよ」
恵里は優しく光輝にそう訴えていく
彼に真剣な思いを抱くが故の言葉である
「わ、わかった…
俺も出来る限り、努力しよう」
光輝はそう答えていく
しかし…
「(そんなことはない、俺は正しい
何にも間違ってなんていない、今回は
たまたま、調子が悪かっただけだ、次は…
次こそは絶対に、俺が正しいと証明するんだ!)」
内面では、恵里の忠告など歯牙にもかかっていない
こんな不安を抱えながらも、一行は
次の階層にへと進んでいくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
-
原罪(スルー推奨)
-
傲慢
-
虚飾
-
嫉妬
-
憤怒
-
怠惰
-
憂鬱
-
暴食
-
色欲