世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:lOOSPH

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注意;この作品には人によっては少し不快に感じる描写があります

   原作、特にティオファンの皆様は出来ればプラウザバックをお勧めします
   それでもいいという心が強い人はどうぞご閲覧下さい


Stellarum legere Creating a Dragon Oberherr Esa ira se traga incluso el orgullo...

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ハジメたちが召喚される

およそ五百年前のトータス

 

そこにある、とある国が

闇夜を照らし出すほどの業火に包まれ

 

更にはその至る所に、多くの屍が横たわっていた

 

そんな身の毛もよだつ光景を見詰めているのは

和服のような服装に身を包んだ一人の少女であった

 

少女は目の前に移る、光景を見て

これは夢なのではと無意識に訴えていた

 

「こんな…こんなことが‥‥」

 

少女は、この国を治めている一族の姫であった

 

この国を、様々な亜人族をはじめとして

多くの種族が平穏無事に暮らせる国の礎を築いた祖父

 

その祖父の意志を継いで、この国を発展させて

さらに国を豊かにしようと奮闘した今の王である父

 

その父を政策面でも、伴侶としても

しっかりと支え、共に歩んで来た母

 

少女は、そんな祖父や両親を誇りに思い

そんな彼らのように生きていきたい、そう思っていた

 

だが、祖父や両親の築いた国は今や炎に包まれ

民たちの流した血に染まり、その屍が置かれて行き

 

もはや、祖父や両親の築いた国の影も形もなかった

 

そんな光景を目にし、立ち尽くしている

そんな少女のもとに一つの影が姿を現した

 

「姫様、ここに居ましたか!」

 

その正体は、少女よりも見た目が二回りほどの女性で

その服装は所謂、和風メイドを思わせていくものである

 

「ヴェンリ‥‥

 

 お主も無事であったか!」

 

「はい、 姫様も御無事で何よりです!!」

 

その女性の姿を見て、安堵の表情を浮かべ

すぐさま女性が少女のもとに駈け寄っていく

 

「ヴェンリ、父上と母上は!?」

 

「民を逃がすために奔走しています…

 

 私はオルガ様の命を受けて

 姫様を逃がすようにと言われました

 

 姫様、ここは危険です

 すぐにこの国から脱出しましょう!」

 

女性、ヴェンリと呼ばれた彼女は

少女にここから逃げ出すように促す

 

しかし

 

「何を言うておる、父上と母上が闘っておるのじゃぞ!

 

 それなのに妾だけが逃げ出すなど、出来るはずがなかろう!!」

 

「ですが、ここにいても

 ハルガ様やオルナ様の負担を増やすだけです!

 

 姫様の身に何かあれば、それこそ

 ハルガ様やオルナ様の奮闘が意味をなさなくなります!!

 

 敵はまだ姫様の存在には気が付いておりません

 

 この隙に脱出を…」

 

何とか、姫からこの国を脱出するように言うヴェンリ

 

そんな時であった

 

「姫様、ヴェンリ様!」

 

そんな二人に一人の男が、声を掛けられていく

 

「おおっ!

 

 無事であったか‥‥」

 

少女とヴェンリは男と知り合いだったようであり

彼の生存に、心から喜びの声をあげていく少女

 

「姫様、よかった…

 

 こちらにいらっしゃったのですね」

 

「うむ、お主も無事で何よりだった‥‥」

 

お互いに、無事を確認して喜び合って行った

 

その時

 

「見つけたぞ、我等が神的

 

 龍人族、クラルスの姫だ!!」

 

男は突然、そんな大声を上げていった

それと同時に、どこかに潜んでいたのか

少女とヴェンリを複数の騎士が囲んでいった

 

「こ、これは!?」

 

「どういうことじゃ!?

 

 これは一体‥‥」

 

目の前の事が理解できず、男に問いかけていく少女

 

そんな少女に対して、男は…

 

「決まっているだろう、我等が神の敵たる龍人族

 

 クラルス族の姫である、お前をここで殺すんだよ?」

 

「何を言うておるのだ?

 

 そんな冗談はよせ、なぜお主が妾を‥‥」

 

少女は、混乱を極めていく

 

「まだわかんねえのか?

 

 お前達の目論見、我等が神である

 エヒト様は全てお見通しになられた!

 

 お前達、龍人族が我ら神に刃を向け

 我等、人間族を滅ぼさんとしていることをな!!」

 

「なんじゃと!?

 

 そんな事はしておらぬ!

 

 第一、そんな事を企んでおらんのは

 この国で過ごしたお主も、わかっておるじゃろう!?」

 

少女は抗議する

 

だが、しかし…

 

「黙れ、そもそも穢らわしき亜人族を

 受け入れた時点で、お前達の運命は決まっていたのだ

 

 お前達はエヒト様の意志に背いた、それだけで

 貴様らが我等の敵であるという事は、確定なのだ

 

 我等が神に仇名す敵は、その神の名をもって裁く…

 

 それが、我等神殿騎士のお役目なのだ!」

 

「っ!

 

 神殿騎士じゃと!?」

 

それを聞いて、驚きを覚える少女

 

神殿騎士、聖教教会直属の騎士団

まさかそれが、このような場に居ようとは

 

ましてや、それが自分達が懇意にしていた人物

その人であったと誰がそんなことを予測できただろうか

 

「そんな‥‥

 

 お主は我らの思いに理解を示してくれていたではないか‥‥」

 

「フン、貴様等の様な魔物もどきの思いなど取るに足らん

 

 そもそも、お前達も亜人族も我らが神に見捨てられ

 東の樹海にへと追いやられた、卑しい存在でしかないのだ

 

 そんな貴様等の存在意義は我らの奴隷になるか、死ぬか…

 

 それ以外、許されてなどおらん!!」

 

ティオの消え入るような声に

男は吐き捨てる様に言い放っていく

 

「我らが目指した理想は?

 

 それを理解して、浮かべてくれたあの笑顔は‥‥」

 

「決まっているであろう、お前達の邪知暴虐を暴くための芝居だ

 

 貴様等の言う聞くに堪えん理想など、理解しようとも思わんわ!」

 

涙を浮かべていくティオ

そんな彼女の消え入るような声を

 

男はまるで、雑音のように聞き流していく

 

「お前たちのその理想の果てがいかなるものか…

 

 それをここで教えてくれよう、見るがいい!」

 

そういって、男がほかの騎士に言って

あるものをまるで旗揚げするように見せつけていく

 

それを見て、少女もヴェンリも絶句する

 

なぜなら、それは…

 

「あ…ああああ‥‥」

 

「いやああああ!!!

 

 オルナ様ああああ!!!」

 

両手足を杭に討ち込まれて、磔にされ

胸元から腹にかけて切り裂かれた和服の女性

 

顔が俯いているので、誰かは分からない

だが、二人はその正体が分かった、わかってしまった

 

その女性の正体は、少女の母にして

ヴェンリにとってお仕えする王妃であるという事を…

 

二人は余りの凄惨な様に、絶望し

喉が枯れるほどの絶叫を上げていった

 

「どうだ、クラルス族の姫…

 

 これが我らが神に刃を向けた者の末路…

 

 同時に、これからお前達が歩んでいく姿である

 直ぐにでもその首を取って、それを神敵達の王である

 

 貴様等の父に捧げてくれよう」

 

「いやああぁ!!!!

 

 母上、母上ええぇ!!!!」

 

「姫様、行けません!」

 

母のもとに向おうとする少女を

必死に抱き止めていくヴェンリ

 

そんな姿に対して

なんの感情もなく向かって行く男

 

「いい加減に、その耳障りな口を閉じろ!

 

 全ては我らが神の意志に歯向かった

 お前達の罪なのだ、怨むなら己の愚かさを恨め!!」

 

そういって、二人に向かって

槍を突き立てんとしていく男

 

その男の凶刃から、少女を

姫を守る為に立ちふさがるヴェンリ

 

二人に凶刃が迫らんとした、その時である

 

『『『ぐああああ!!』』』

 

男達に、何やら炎のような物が放たれ

それが男を始めとした神殿騎士たちを炎に包みこんでいった

 

「な、なんだ!?」

 

「み、みろあれを!?」

 

騎士の一人が指を、指すと

そこに現れたのは巨大な龍であった

 

龍は、少女とヴェンリのもとに降り立っていくと

 

「ティオ、ヴェンリ!

 

 無事か!?」

 

「父上!」

 

「ハルガ様!」

 

龍はたちまちに、壮年の男性の姿に変わっていく

 

この男性こそが少女、ティオの父にして

ヴェンリが最もお仕えせし主たる人物

 

ハルガ・クラルス…

 

 

この国を治める王であり、龍人族

クラルス族の族長の息子に当たる人物である

 

「父上!

 

 母上が…母上がぁ‥‥」

 

自身のもとに駆けつけた父、ハルガに対して少女

 

ティオ・クラルス…

 

 

彼女は嗚咽を交えて、子供ながらに母の凄惨な最期を訴えんとする

 

「わかっている‥‥

 

 何と、酷い事を‥‥」

 

ハルガは、自身の愛する妻のその姿に

言葉にならないほどの激情を覚えていく

 

「ハルガ・クラルス!

 

 

 よくも我らの同胞たちを‥

 

 我等が神に仇名す神敵めぇ‥」

 

同胞を殺されたことに怒りを露わにする神殿騎士

 

それに対して…

 

「黙れ!

 

 最初に戦いを、我等の国を攻め入ったのは貴様等だ!!

 

 大勢の罪のない者達を手にかけた

 貴様らの行いこそ、許されるものではない!!!」

 

ハルガはそう言い返す

 

「罪のない者、だと?

 

 貴様等の罪は、我が神に刃を向けた事

 その時点で貴様らの存在、そのものが罪よ!

 

 我等の神の意志に反する行い、それが何よりの咎よ!!」

 

騎士はさも当然のように

なおかつ怒りの表情を浮かべながら言い放つ

 

「神の意志じゃと、それならばなんじゃ!

 

 妾たちに自由に生きるなというのか

 自分達とは異なるから存在そのものを否定するのか?

 

 生まれた時から、不自由で存在を否定など

 そんな理不尽など、受け入れるなど出来るわけがない!

 

 自分達の望まぬ生き方をするなどという理由で

 身勝手にその命を奪われるなど、そんな事が当たり前であるなど‥‥

 

 そんなことがあっていいはずが、ない!!」

 

ティオは言い切る、だが

 

「我等が神敵のたわごとに、耳を傾ける気などない!

 

 お前達の運命は、我等が神によって決められた

 それこそが、お前達がここで滅ぶに値する理由よ!!」

 

もはや、神殿騎士たちはこちらの意見など

聞く耳持たずであり、それぞれの武器を構えていく

 

「龍人族、クラルス族よ!

 

 我等が神、エヒト様の意志において

 今この場をもって、滅ぶがいい!!」

 

そういって、騎士の一人が

ティオに向かって魔法を放つ

 

それを、ハルガが腕のみを変形させ

その表皮についている鱗を使って防ぐ

 

「父上!」

 

「ティオよ‥‥

 

 お主は、ここから逃げろ!」

 

ハルガは、言う

 

「無茶です、父上!

 

 父上は龍化の反動で、相当な魔力を消費しているはずです!

 

 そんな状態で戦うなど、無謀すぎます!!」

 

ティオは、父の今の状態では

あれだけの敵を相手どっていく事は難しい

 

それを理解し、母を失い

父まで失う事への恐れから

 

どうしても、その場を離れたがらない

 

そんなティオの頭を、優しくなでて安心させていく

 

「ティオよ‥‥

 

 お前は私の愛する妻、オルナとの間に生まれた私の宝だ‥‥

 

 お前を守り切れるなら、この命を投げ出す事にためらいはない‥‥

 

 私は愛する妻を守れなかった、だからこそ

 だからこそせめて、娘であるお前には生きてほしいのだ

 

 私やオルナの分もな」

 

「…嫌です、父上も一緒に行きましょう!」

 

自身の思いを聞かせるハルガ

それでも、ティオは彼の傍を離れようとしない

 

「いいや、私は一緒には行けない‥‥

 

 この戦火は、私が死ぬまで収まることはない

 だからこそ私はここに残り、最期まで戦わなくてはならんのだ‥‥」

 

ハルガは、そう答えていく

 

ハルガは感じていたのだ、この戦いは

この闇夜を照らし出すほどの戦火を終らせるには

 

自分がここで討たれなくてはならないと

だからこそ、自分はここに残り戦い抜かなくてはならない

 

だからこそ、愛する娘である

ティオには生きてほしいという

そんな切実な願いを抱いていく

 

だからこそ、迷いはなかった

 

「ヴェンリ‥‥

 

 娘を、ティオをここから連れ出してくれ‥‥

 

 こいつらは、私が引き受ける!」

 

「ハルガ様…」

 

ハルガは、従者であるヴェンリに

ティオを連れてここから離れるように言う

 

ヴェンリは、ハルガの覚悟を感じ

彼のその強い覚悟を尊重していく事を決めた

 

「っ!?

 

 ヴェンリ、一体何を!?」

 

「姫様、どうかお許しを…

 

 ですがこれが、ハルガ様の願いなのです!」

 

ヴェンリは、ティオを抱えながら

翼を広げて、そのまま飛び去っていく

 

「逃がすな!

 

 クラルスの姫を打ち取れ!!」

 

騎士たちが、飛び去っていくヴェンリに向かって

魔法を放たんとしていく、だがそれを阻むのは…

 

「貴様らの相手は、この私だ!

 

 私の娘に、手出しはさせぬ!!」

 

ハルガであった

 

「おのれぇ‥」

 

「私は誇り高き、クラルスの王

 

 ハルガ・クラルス

 

 

 我が国を滅ぼし、私の妻

 オルナ・クラルスを手に懸けた貴様らを‥‥

 

 我が命をもって、滅ぼす!」

 

ハルガは龍の姿となり

神殿基騎士たちと決死の戦いを挑む

 

自身の国、愛する妻を奪った者を

この手で滅ぼさんと挑む、しかし

 

ティオが背中越しに見た、彼の背中は

愛する娘を命懸けで守らんとする偉大な父の姿だった

 

そうして…

 

「父上ええぇ!!!!」

 

ハルガの姿は、やがて戦火の光に呑まれ

見えなくなっていってしまうのであった

 

そして…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「はっ!」

 

それから、五百年後

 

ヴェンリによって、大陸の外に存在する

龍人族の隠れ家に匿われることになったティオ

 

そこは、ティオの祖父である

 

アドゥル・クラルス

 

 

彼が立ち上げた、この場所に存在する

湯あみようの浴槽に、その身を浸していた

 

ただ、そこに張っているのはお湯ではなく水である

 

彼女はそこに、自身の身体を浸していた…

 

そこに…

 

「姫様、長襦袢をご用意いたしました…」

 

そこに、ほうれい線を浮かべた女性が

脱衣所に、綺麗に折りたたまれた服を置いて声をかける

 

それを聞いた、ティオはゆっくりと体を起こしていく

 

「うむ、すまんのヴェンリ‥‥」

 

体を起こしたティオ、五百年前の時は

少女と見まごう見た目であったがが、今では

女性といては背が高く、さらにはスタイルの方も

でるところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる

 

まさに絶世の美女、そう誰もが

そう答えるほどの女性に成長していた

 

ヴェンリが用意してくれた着替えに袖を通し

帯の方を締めて行くと、そのまま脱衣所を出ていき

 

そこで、ヴェンリと遭遇する

 

「姫様、体調の方は御変わりありませんか?

 

 ここのところ、水浴みの時間が長くなってきているようですが…」

 

「体調の方は、問題はない‥‥

 

 しかし、問題あるというならば

 恐らくは、心の問題やもしれぬな」

 

そういって、額に手を置いていく

 

「‥‥また、あの時の夢を…」

 

「…ああ、五百年前のあの時の事

 

 父上と母上が、守った国が滅ぼされ

 ついには二人まで殺され、何によりも

 記憶に刷り込まれているのは、あの時の‥‥

 

 奴らの、あの醜い笑み

 

 忘れようと思っても、忘れさせてくれぬ

 こうやって夢に出て、思いださせ妾を落ち着かせてくれぬ‥‥

 

 まるで、呪いのようにな」

 

自分の頭を握りしめていくようにして、抑えていくティオ

その指の間からの属、その瞳には怒りの念が宿っているようだ

 

「姫様、私はあの時に誓いました

 

 どんな事が合っても、私は姫様を支え

 何があっても姫様を守り通して見せると‥‥

 

 姫様、貴方様が望むのならば

 私の命をいかように使っていただいて構いません

 

 ですから、もしもの時は‥‥」

 

ヴェンリがそこまで言うと、ティオが

彼女の口元に自身の人差し指を当てていく

 

「ヴェンリよ、妾は前にお主に言ったはずじゃ

 

 あの時、お主はあくまで父上の命を遂行したのみ

 それを気に病むべき事ではない、じゃからこそ妾は

 お主を恨まぬし憎みもしない、じゃから話しはそれで終わりじゃ」

 

「姫様…」

 

ティオの言葉に、ヴェンリは感謝の意を表すように頭を下げていく

 

「それで、ヴェンリよ

 

 お爺様はどうした、今朝がたから

 お見かけをしておらぬ様なのだが‥‥」

 

「アドゥル様なら、私が姫様のもとに向かう際に出ていかれました

 

 どうやら、カルトゥス様に呼ばれたようで…」

 

ティオは不意に、自身の祖父にして

この龍人族の隠れ家において族長を務める

 

アドゥル・クラルス

 

 

彼がどうしているのかと尋ねると

それに対して、ヴェンリは答えていく

 

「カル爺にか?

 

 大陸に偵察に行ってから

 まだ一月も立っておらぬというのに‥‥

 

 まさか、もう大陸の方で何か動きが」

 

ティオは、そういってヴェンリの方に目を向けていく

 

「ヴェンリよ、急いで支度をするぞ」

 

「かしこまりました」

 

ティオの命を受けて、出かける支度をしていくヴェンリ

 

「(あれから五百年、この隠れ里に移り住んでから

  何の知らせも得られず、この場にとどまり続けておったが‥‥

 

  カル爺たちが戻って来たこれが、妾の

  ひいては龍人族に転機をもたらしていく事に繋がっていくやもしれぬ)」

 

ティオは五百年前、自身を守る為に戦う父、ハルガの消え行く背中を見詰めながら

自身の従者であるヴェンリに連れられていき、大陸の外において設立されたこの地

 

竜人の隠れ里…

 

 

そこに身を寄せていく事になった、ティオ

 

それからは、五百年間はずっとなんの音沙汰もなく

大陸の方で、動きが無いのかほ報告を待ち続ける日々

 

そんな悶々として、過ごしていく中でティオは

五百年間、そのうちに秘めた両親と国を奪った者達への憎悪

 

それを、父と母から教えられた高潔な精神で抑え込んでいた

 

そんな時に、大陸に調査を行っていたカルトゥスが

一月も立たずに戻ってきたと言う、知らせを受けて

祖父である、アドゥルが屋敷に赴いていった、それを聞き

 

聡明たるティオは、何か大陸で動きがあったのだと勘づき

急ぎ、祖父を追ってカルトゥスの元にへと向かって行った

 

やがて、支度を整えティオはヴェンリとともに

カルトゥスの御屋敷にお邪魔させてもらい、やがて

彼と祖父がいるという部屋にへと案内をされて行った

 

「失礼いたします、カルトゥス様

 

 姫様が、ティオ様がまいりましてございます」

 

従者の女性が、部屋の前で声をかけていくと

臆から男性の驚いた声が聞こえていき、しばらくして

 

入室の許可が下りたので、従者は軽く頭を下げていくと

 

「失礼いたします」

 

そういって、ヴェンリが襖を開けていき

ティオが、開かれた部屋にへと入っていく

 

「お前も来たか、ティオ‥‥」

 

「お久し振りで、お爺様‥‥

 

 カルトゥス殿も息災の様で‥‥」

 

そこには、二人の初老の老人が向かい合っていた

 

手前の客人の席には、緋色の神を持つ老人

彼こそがティオの祖父にして、この隠れ里の長

 

アドゥル・クラルス

 

 

奥にいるのが、この屋敷の主である

カルトゥス、今回の報を伝えて来た男性である

 

「お久し振りで、姫様

 

 それでこちらには何を?」

 

「カル爺よ、そなたも理解はしておられるはず

 妾がこの場に来たのが、ただの気まぐれではないことを‥‥

 

 大陸で情報を集めておられた、そなたが一月も立たずに

 こちらに戻ってきて、何もないと思わぬほうが不思議な事

 

 大陸のほうで、何やら動きがあった

 それをお伝えするために、こちらに赴いたのでしょう?」

 

ティオは、そう尋ねていく

 

それを聞いた二人は、驚いたが

どこか納得したような表情を浮かべていた

 

「本当にお主のその聡明さには、恐れ入る

 

 あれだけのことで、そこまでの事を予測するとは‥‥」

 

「ええ、これでも妾は、お爺様の孫ですので

 

 それでカル爺よ、大陸の方で一体何を見たので?」

 

ティオは、カルトゥスに訪ねていくと

その当人は、仕方がないと言わんばかりに口を開く

 

「族長も姫様もご存じの通り

 私は私の天職、監視者の力を使い

 

 大陸の方で、何らかの予兆がないかを

 文字通り監視しておりました、そんな時です

 

 大陸の北側において、大きな力の波動を

 私の天目が察知いたしました、それも一つではなく複数

 

 その数は、十数と確認しています」

 

「なんと、そんなにも大きな力が!?」

 

カルトゥスの報告を受けて、アドゥルは目を見開く

 

「私は、それを感じたのちに

 確実な情報をえる為に王国周辺に潜み

 

 そこで、出来る限りの情報を得ました

 どうやら、教会のもとに勇者を筆頭とした

 神の使徒という者達が召喚されたとのことでした」

 

「教会のもとに?

 

 という事は、悪神が呼び寄せたというのか!?」

 

それを聞いて、ティオは少し驚いたように問う

 

「ええ、そのようにございます」

 

「しかし、何故なのじゃ?

 

 どうして、エヒトはそのようなことを?」

 

アドゥルは問いかけていく

 

「実は魔人族が、魔物を従える様になったとされ

 それをもって人間族側に大打撃をもたらしたとの事です

 

 おそらく、その力の均衡を保つために人間族側に勇者たちを‥‥」

 

「もしも、そうだというのならば

 これは由々しき事態、その力が真実の物ならば

 

 我々にとっても、脅威になりうるかもしれぬ

 その前に、我々の方でその者たちに接触を試みなくては‥‥」

 

アドゥルはそう提案をしていく

 

「アドゥル殿

 

 その件については、アロイスに一任をしようと思っております

 こういった類のことは、あのものが一番に優れておりますから」

 

カルトゥスはそういって、自身が知る中で

最も隠密に優れている者を行かせようと提案する

 

「そうじゃな、ならばさっそくアロイスに‥‥」

 

「いいえ、その御役目‥‥

 

 妾に一任させていただきたく存じます」

 

だが、それを承認しようとしたアドゥルの言葉を遮り

ティオが、自分達の一族の代表にと名乗りを上げていった

 

「ティオ、私の言葉を忘れたわけではあるまい」

 

「神討つ者が現れるまでは、我等は歴史の影に潜み待つ‥‥

 

 もちろん理解しております

 

 しかし、その時が来るのを待ち続けて五百年

 この長き時を待ち続け、ようやく時代の変化が訪れた

 

 その神が召喚したという、その勇者が果たして

 我等が求むべき存在であるのか否か、それを見極めるには‥‥

 

 我らもまた、大きな動きを見せていくべきであると考えます

 

 そのためにも、龍人族の代表としてその姫たる妾が向かうべきなのです」

 

ティオは自身の意見を二人に伝えていく

 

「確かに、お主の言う事も分かる‥‥

 

 しかし、我ら龍人族は表向きは世界の敵となっている

 もしもその勇者が、我等の敵である神によって懐柔され

 

 我らに刃を向けるような、そんな事になったらどうする!?

 

 お前は我等クラルス族の跡取りにして、龍人族の次代の長

 

 そんなお主の身に何かあれば、お主を守り

 命を落としたハルガとオルナに申し訳が立たぬ」

 

「お爺様の思い、このティオも理解しております

 

 しかし、勇者の存在が我らの運命を左右させるのならば

 なおの事、我らの代表として妾が向かって行くべきと考えます

 

 父上は妾に龍人族の、この世界の命運を託し命を落としました

 ならば、その意志を継ぎ未来を担うための道を切り開く事もまた努め

 

 ぜひとも、この妾に一任させていただけぬでしょうか?」

 

ティオはアドゥルに、自身の意見をぶつけていった

 

これにはアドゥルもカルトゥスも、驚きを禁じ得ない

 

「‥‥そこまで言うのならば、ティオ

 この役目、お主に任せよう、ただし‥‥

 

 くれぐれも、無茶だけはするな

 お主の魔力は我らの中でも厖大とは言え

 それでも、ここから大陸まで向かうのには

 相当なまでの魔力を消費してしまう、さらには

 

 我々は、その存在を神の目に留まらせていくわけにはいかん

 それゆえに人員を割くことも出来ぬ故、いくのはお主だけになる」

 

「心得ております

 

 勇者の存在、それが我等もとい

 この世界にとって凶となるか吉となるか‥‥

 

 それを見極める、その為のお役目です」

 

アドゥルの忠告をしっかりと承るティオ

 

しかし

 

「お待ち下さい、アドゥル殿!

 

 私は反対です!!

 

 大陸に向かわせるなど、それこそ

 敵の懐にへと突っ込んでいくようなもの

 

 それをティオ様一人にやらせるなど危険すぎます!!!」

 

カルトゥスは猛反対していく

 

「カルトゥスよ、お主の気持ちも分かる

 いいや、正直に言うと儂もお主と同じ意見じゃ

 

 だが、ティオの言う通り、我等がここに移り住んで

 五百年もたったというのに、大陸においてなんの兆しもない

 

 神は何かを目論んでいるのか、それとも

 それ以外の何か強大な力が蠢いているのか

 

 ティオ自身でそれを見極めてようと言っているのだ」

 

「それならば、ティオ様ではなく

 我等が向かいます、ティオ様が自らを

 犠牲にして行くというのならば、むしろ私が…‥」

 

「やめよ、カル爺!

 

 そんな風に自分の命を蜂に捨てるような真似はやめよ!!」

 

ティオは訴える様に言う

 

さらに…

 

「…この提案を申したのは、妾自身なのです

 その妾がしっかりと果たせなくては皆に示しが付きませぬ

 

 我々は誇り高き龍人族、この世界を守護する者として

 世界に訪れた、未知なる者たちのその力、見極めなくてはなりませぬ

 

 妾が、新たなる次代を切り開く切っ掛けに

 なりうるなら、これほどに誇らしいことはありませぬ

 

 それでは、童はここで失礼させていただきます」

 

ティオはそう言い切っていき、そのまま部屋を後にして行った

 

「ティオ様」

 

「全く、あの頑固さも父親譲りじゃな‥‥」

 

そんな彼女の様子を、呆れながらも

どこか嬉しくも懐かしそうに呟いていく二人の老傑であった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ティオが、大陸に渡っていくという決意を

祖父アドゥルとカルトゥスの二人に提示した翌日の早朝

 

彼女が、一人で大陸に向かい

この世界に召喚されたと言う勇者のもとに向かう

 

その話は、日をまたぐ前に

里中に広まっていった、当然ながら

その殆どが猛反対、猛抗議、猛説得の嵐である

 

しかし、ティオの決意は固く

ティオは旅の準備を終えて出発の時を迎えていく

 

しかし、この隠れ里から大陸までは相当な時間がかかる

速くても丸一日以上はかかる、だからこそ早朝を出発時刻にした

 

だが、祖父も指摘していたが

ティオの魔力は確かに、里の中でも厖大な方ではある

 

だが、それでも大陸につく頃にはその魔力も殆どが失われてしまう

 

そうなれば、ティオの身に危険が迫るのは火を見るよりも明らか

 

ティオが、旅立たんとしていく、その時

彼女のもとに、一人の女性が訪れていく

 

「姫様!」

 

それは、ティオの傍仕えであるヴェンリであった

 

「ヴェンリか‥‥」

 

「姫様、やはりお考え直しを

 姫様はただでさえ、ここ数年も

 まともに眠れていない状態で向かうなど…

 

 ましてやお一人でなど危険です、せめて

 せめてここはどうか、私に一任していただけませんか」

 

ティオを引き止めようとするヴェンリ

さらに、その後ろからさらに多くの者達が詰め寄る

 

「姫様!」

 

最初に名乗りを上げたのは、一人の男性

ティオと同じか、少し年上くらいの外見である

 

「アロイスか‥‥」

 

「姫様、ここはどうか

 どうか俺を同行させてください

 

 このお役目は、元々は私が果たすべきもの

 そのせいで姫様の身に何かあれば、それこそ‥‥

 

 それこそ私は、死んでも死にきる事は出来ませぬ

 だからせめて、せめて私にどうか同行の許可の方を!」

 

「それでしたら、俺が!

 

 俺が姫様を、ティオ様を命を懸けてお守りします

 姫様はこの里において、なくてはならぬ存在です

 

 俺の命ひとつで、姫様をお守りできるならば‥‥

 

 この命など、惜しくもありません!」

 

アロイス

 

 

カルトゥス率いる調査員の中でも、特に

隠密調査に長けていると言っても過言ではない青年

 

本来ならば、このお役目は彼に回されるはずであった

 

しかし、それをティオが名乗り上げて

しかも、一人で向かう事になると言うのである

 

それで何かあったら、とても耐えきれるほどのことではない

 

アドゥルが指示した事もあり、下がるしかなかった

だが、それでもやはり、彼女を失う事がどれほどに恐ろしいか

 

それは、この場にいる全員が同じである

 

「…皆の気持ちは嬉しい、同時に

 このように心配をかけてしまう事‥‥

 

 本当に申し訳ない‥‥

 

 ただ、こればかりはどうしても譲れぬ

 これは我らの為でもあり、同時に妾自身のためでもある」

 

それでも、ティオは一歩も引くことはない

 

「五百年前、妾は父上と母上を同時に失い

 同時に我等が築いた国すらも焼かれていった

 

 それから、この五百年の間に、その光景を

 何度も何度も夢に見ていく形で思い出されて行く

 

 それゆえ、妾はまともに眠れたことがない‥‥

 

 おそらくそれは、妾の心の中に

 妾からすべてを奪った人間達への怒りが渦巻き

 それが、夢という形になって表れているやもしれぬ‥‥

 

 じゃからこそ、妾はここで踏ん切りをつけたいのじゃよ

 

 この五百年間も渦巻いておる、この憎しみの心にな」

 

ティオは、自身の左胸に手を当てながら言う

 

ティオも感じていたのだ、自分の心の中には

自分の両親を、国を、その全てを奪った人間族への憎しみが…

 

だが、ティオはそれを父から教えられた

龍人族の誇り、その生き方でどうにか抑えていた

 

ー龍の牙は己の弱さをかみ砕き、憎悪と憤怒を押し流す

 

 龍の爪は鉄の城壁を切り裂き、巣食う悪意を打ち砕く

 

 龍の目は一路の真実を見抜き、欺瞞と猜疑を打ち破る…

 

 仁、失いし時、我らはただの獣なり

 されど、理性の剣を振るい続ける限り…

 

 我らは、龍人である!ー

 

ティオは、自身を守る為に命を懸けた父、ハルガ

そんな彼を誇りに思い、彼の娘に恥じぬ生き方をする

 

それが、今の彼女を奮い立たせているのだ

 

「ヴェンリよ‥‥

 

 この五百年、お主には本当に苦労を掛けた

 あの時から幼い妾に寄り添ってくれた、最初は

 そんなお主の思いに気付けずに苦労を掛けてしまった‥‥

 

 申し訳なかった…そして、本当にありがとう‥‥」

 

「姫様…」

 

ティオは、ヴェンリに優しく言葉をかけていく

 

ヴェンリはティオにとって、この五百年間

幼かった自身に、寄り添ってくれた存在

 

最初は、父を見捨てたことによって

その気持ちを拒絶してしまった事もあった

 

だが、それでも彼女はティオの傍に居続け

この五百年間、献身的に尽くしてくれた存在

 

もう一人の母、そう呼んでもいいくらいに

ティオにとは、かけがえのない存在である

 

ヴェンリにとっても、ティオは使えるべき主にして

自身にとっても、娘と思えるほどに大切な存在である

 

その彼女からの言葉に、感慨極まって涙を流していく

 

さらに…

 

「アロイスよ、そんな情けない顔を見せるな

 

 妾がいなくなったら、その時に爺様を守れるのはお主だけなのじゃぞ?

 

 お主がしっかりせねば、誰が爺様を、この里を守れるのじゃ?」

 

「‥‥姫様、貴方はずるいお人だ‥‥

 

 そんな風に言われてしまっては私

 もはや、何も言えなくなってしまうではありませんか‥‥

 

 承知いたしました、姫様がそこまで行って下さるのであれば‥‥

 

 このアロイス、何も申し上げることはありません」

 

アロイスはそう言われて、参ったと言わんばかりに天を仰ぐ

 

しかし、その表情はどこか嬉し気なものであった

それもそのはず、彼はティオに想いを寄せているのだ

 

彼だけではない

 

「俺だって、俺だって頑張ります!

 

 俺ではまだ、姫様に勝てないかもしれません

 でもいつかは、いつかは姫様に勝ってその隣に‥‥

 

 絶対に姫様に認めさせて見せます」

 

先ほど、ティオを命に代えても守ると言い切った若者

 

リスタス

 

 

彼もまた、ティオの伴侶として

名乗りを上げた里の男たちの一人

 

ティオは、その容姿の為に彼女の伴侶として

その傍に付きたいという者は後を絶たない、しかし

 

ティオは、誰にもその身を預けようとするものはいない

 

「その心意気は認めよう、じゃが

 妾が真に求めているのは強き者ではない

 

 されど、意志の堅牢なものではない

 

 強き意志を持ち、それに見合う力を持つ者

 それを持つ者こそが、新たな時代を築くことができるのじゃ

 

 ゆえに、たゆまずに努力を続けるがよい

 妾もまた、そうしたことでこの力をてにしたのじゃから」

 

ティオはそう答えていく

 

ティオはいずれが、龍人族を率いる姫

ゆえに彼女は、いずれはその未来を共に歩み

同時に、挑み続けていられるようなものを傍に置きたいのだ

 

父がそうして、母を選んだように…

 

「妾は誇りに思うぞ、お主たちに

 このように思われている事、それがどれ程に喜ばしいか‥‥

 

 しかし、だからこそ、妾は行く、行かねばならぬ

 

 さあ、我が愛しき同胞たちよ、妾を見るがいい!」

 

そこにいる者達が、ティオの

先ほどまで、優しい言葉をかけていた時とは

全く違うであろう、彼女の声に一斉に反応する

 

それはまさに威風堂々、王と呼ばれるにふさわしき覇気を纏っていた

 

そして、ティオは訴えかけるようにして言い放つ

 

「今、時代は新たな転機を迎えようとしておる

 それが我らにとってどのような運命を齎すのかわからぬ

 

 それでも、いいやだからこそ妾が行く、行かねばならぬ

 この新たな時代の先駆けとして、お主達が姫と呼ぶこの妾が

 

 信じろとは言わぬ、ただ見ておいてほしい、妾が行く道を

 

 その先を、この先に開かれるであろう、新たなる次代を!」

 

ティオは、そう言って呼び掛けていった

 

自身を愛し、自身を慕ってくれている里の者達に…

 

ティオは、その言葉を投げかけると同時に

その場で龍の姿となり、多くの同胞に見守られながら

 

ティオは、大陸にへと飛び立っていった

 

「姫様…」

 

「‥‥みんな、行こう

 

 姫様が戻るまでにできる事をやるぞ

 姫様は、我らにこの里の事を託したのだ‥‥

 

 それで何かあったようでは、姫様に顔向けができぬ

 

 行こう、姫様の思いを我々で果たすのだ」

 

「はい!」

 

ティオを見送っていった、一族は

彼女の想いをつないで行くためになすべきことを為す

 

そのために、一同は決意を新たに戻っていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

かつて、トータスの大陸には

ある一つの国が存在していた

 

水に溢れ、木々が生い茂るこの国を治めていた龍人族

その一族を収めていた、龍人族の王の姿に誰もが憧れ

誰もがその生き方を手本に、王のあり方を学んでいった

 

しかし、ある時龍人族は世界の真実に気が付いた

 

この世界に混沌を齎しているのは、人間族が信仰する神

 

エヒトであると…

 

ゆえに、龍人族の王であるティオの父

 

ハルガ・クラルスは、ティオの母である

オルナ・クラルスや娘のティオに、その真実を伝えた

 

だが、それを知ってか知らずか教会が

龍人族を神敵と定め、その国を攻め落とさんとし

 

オルナは打ち取られ、ハルガもまた

激しい激戦を繰り広げ、命を落とし国も落とされ

 

ティオは、祖父が身を置いている龍人族の隠れ里に移り住んだ

 

それから、五百年たってティオは大陸に身を落としていく事になった

 

ティオが最初に向かったのは、もちろん

嘗て自身の故郷があったであろうかの地である

 

空の上から、その場所を見下ろしていったティオは

そこに映った光景を見て、驚きを禁じ得なかった

 

なぜなら、そこには町が栄えていたからである

 

「ここにはかつて、妾達の故郷があったはず‥‥

 

 五百年の間に、このような町が建てられていようとは」

 

ティオは、驚きつつもまずは身を休める為に

人気のない所に向かって、そこで龍化を解いた

 

風属性の魔法で、身体を浮かせ

ゆっくりと、その場に降り立った

 

「勇者は、ハイリヒ王国にいるはず

 あの国は教会とのつながりが深いからのう‥‥

 

 とはいえ、そこまで行くほどの魔力はもう残っておらぬ

 先の街で、身を休めてそこで回復に努めていく事にしよう」

 

ティオは、そういって

先ほどの街にへと向かう事にする

 

そこで…

 

街の入り口には、門番

もとい見張りが立っている

 

そこに一人の人物が現れていく

それは、変装をしたティオである

 

この世界では、ティオの服装は目立つので

事前に用意していた、この世界の一般的な服に着替え

 

それで旅人を装う事で、無事に町の中にへと入っていった

 

「ふう‥‥

 

 何とか入れたのう」

 

ティオは一息ついて、辺りの方に目を向けていく

 

見たところ、街は栄えており

周りにいる者達の表情も活気にあふれている

 

「(一見すると、妾達がいたあの国を思いだす

  それほどまでに町は発展しているようじゃ‥‥

 

  しかし‥‥)」

 

ティオは不意に、ある場所に視線を落としていく

それは路地裏である、そこの方をよく見てみると…

 

難民がそこに、たむろしているのが見えた

服装や容姿からして、ひもじい生活を強いられているようである

 

「(…町が発展していけば、行くほど

  それにあぶれてしまう者もあらわれる

 

  かといって、このようにこのような問題に対して

  なにも手つかずにいるのは、気が滅入ってしまう)」

 

ティオはそんな様子を見て心を痛めるが

だからと言って、今の自分に出来ることはない

 

そんな無力感を、ティオは嫌というほど思い知らされる

 

「(まずは、身体を休めねばな

  ここに来るまでにかなりの魔力を消費した

 

  あれから、妾も魔力を高めてはきたが

  よもや、ここまで削られてしまうとは‥‥

 

  ここから隠れ里にまで連れて行ってくれた

  ヴェンリには、本当に感謝しかないのう

 

  まずは、魔力を回復させて

  それが済んだらすぐに王国に向おう)」

 

ティオは、まずは自分のなすべきことに

目を向けていこうと、身を引き締めていった

 

その時である

 

「な、何じゃあれは!?」

 

ティオは、目の前に映ったものを見て

思わず目を見開いて、驚きの声を叫ぶ

 

その目の前にあるのは、石造りの教会

だが、彼女が驚いたのはそこではなく

その教会の壁に彫られていた、レリーフである

 

教会の壁、その一面に彫られた巨大なそれ…

 

一人の男が十字架に磔にされ

その男を串刺しにするようにして

十八の武器が、あらゆる方向から貫いていた

 

ティオは、その壁に磔にされ

その身体に武器を突き立てられた男性

 

その彼に、見覚えがあった

 

それは…

 

「そんな…まさか、あれは‥‥

 

 父上!?」

 

五百年前、教会の物の手によって

その命を奪われた自身の父である

 

ハルガ・クラルス

 

 

その人であると、不思議と理解してしまった

 

ティオが、身体を振るわせて

そのレリーフを見上げていると

 

そこに…

 

「おお、お嬢さん

 

 随分と見入っているようじゃな

 あの教会にきざまれたレリーフを‥‥」

 

ティオが、レリーフを見て

圧巻されていると感じたのか

 

一人の老人が声をかけて来た

 

「お、おお‥‥

 

 そうじゃな、見事な出来で

 ついつい、見入ってしまった」

 

「そうじゃろ、そうじゃろ

 

 あれは、今から五百年前にエヒト様を裏切り

 この世界を滅ぼさんとした、龍人族の王を討ち果たし

 

 その栄誉を示すために、百五十年の歳月をかけて

 作り上げたとされている、この町のシンボルなのじゃ

 

 十字架は神の力を示し、それに龍人族の王を捕らえ

 その身体に刺さっている、およそ十八の武器は、かつて

 その時の戦いにおいて、龍人族の王を討ち果たした英雄達を現しておる

 

 その十八の英雄は、龍人族の王を討ち果たした功績を認められ

 特別な爵位を与えられたことで、貴族として迎え入れられたのだ

 

 それが、龍殺侯と呼ばれるもの…

 

 のちに、十八人の龍殺侯は多くの伴侶を迎え、子を為し

 その血筋は幅広い、その中には独立して爵位を得た者もいる

 

 今や、この国の貴族で龍殺侯の血を引かぬものは殆どおらん

 

 この町を収めている領主様も、龍殺侯の直径の子孫で

 この町がこんなにも栄えているのは、まさにその血が成している事

 

 まさに、英雄のなせる御業じゃな」

 

老人は誇らしげに、話していく

 

ティオは、表向きは抑えているが

内心では激しい何かが渦巻いていた

 

「(龍殺侯じゃと?

 

  何とふざけた称号じゃ

 

  おまけに、我等を裏切ったくせに英雄じゃと?

 

  いくら我らが表向きは、神敵として

  扱われているとはいえ、何という仕打ちじゃ!)」

 

ティオの父親を裏切り、その思いを裏切った者達が

後世においては、英雄として扱われているという事実

 

それを知って、彼女の中にある激しいものが

彼女の中を、かき乱していくようにして渦巻いていた

 

だが、それでもティオは自身の役目を頭の中で反芻し

左胸を抑えながら、ゆっくりと深呼吸をして落ち着かせていく

 

「(…ふう、やはり水浴みをしておらんせいで

  どうしても、この激情を抑え切れんように感じるわい

 

  とにかく、今はどこかで休ませられるところで

  しっかりと回復の方に専念していかなくてはならんな‥‥)」

 

ティオはまずは、疲れ切った自身の身体を

休ませていく事に専念しようと、辺りを捜索する

 

それから、しばらくして…

 

「(いかん、さすがに限界か‥‥

 

  仕方がない、今日のところは

  この町で一晩を明かすしかないな)」

 

ティオは、足元がおぼつかなくなって来たので

この町の宿で、泊まれるところを探してそこで

一旦は、身体を休めていくことにするのであった

 

「おや、お嬢ちゃん?

 

 見ない顔だね、もしかして

 この町にきたのは初めてかい?」

 

そんな、ティオに気さくに話しかけていく男性が

 

「うむ、遠い所からはるばるの‥‥

 

 ただ、今日はもう遅いゆえに

 どこかで泊まれる宿を探そうと思って」

 

「それだったら、教えてやるよ

 

 この先にあってな、名前は…」

 

男は、ティオに宿の場所を教えていった

 

「…うむ、すまぬ礼を言うぞ」

 

「いいってことよ、お嬢ちゃんこそ

 別嬪さんで一人旅なんだ、気を付けなよ」

 

ティオが礼を言うと、男は笑みを浮かべて

そのまま、その場を走り去っていくのであった

 

「(親切な若者じゃな‥‥

 

  エヒトに懐柔された人間どもだけではない

  それが、今の妾達のせめてもの救いじゃな‥‥)」

 

ティオは、そう呟きながら

男が教えてくれた、宿の方にまでやっていく

 

「すまぬ、急で申し訳ないが

 一人、泊められる部屋は空いておるか?」

 

「はい、こちらの部屋にございます」

 

宿の受付をしている、若い女性が

ティオに部屋の鍵を渡し、ティオは案内を受ける

 

「こちらでございます

 

 それでは、ごゆっくり…」

 

「うむ、すまなかった」

 

部屋に案内されたティオは、そのまま部屋の中に入っていき

服の上の部分のみを脱いで、そこに完備されているベッドの上に

横になって、落ち着いていくようにして一息をついていったのであった

 

「ふう…やっと一息が付けるの‥‥

 

 この町の者達は何と親切で親しみやすいのか

 

 まあ、妾が龍人族であるという事を知らぬというのもあるのじゃろうが‥‥」

 

ティオは、そういってこの町の人々の人柄を感じ

全ての人間が、自身の両親を奪った人間のようではない

 

そう改めて認識していく、ティオであった

 

「(休んだら、しっかりとなし得なくてはならん‥‥

 

  父上と母上、お二人の意志を継ぐためにも、必ずや)」

 

ティオは、ベッドの上で改めて決意を新たにしていく

 

先ほどの教会に彫られていたレリーフが示すように

龍人族は今や、世界の敵としてこの世界の人々に認識されている

 

だからこそ、ティオの両親は殺された

ティオの心の中には、今でも両親を殺した人々

正確には、聖教教会に対しての憎悪が渦巻いている

 

だが、それでもティオはそれを抑えつつ

自分達の使命を果たさんとしていく、その理由は

 

彼女が幼いころから言い聞かされていた

 

ーどんなに打ちのめされても、その身を

 憎しみに染めてはならない、憎しみで力を振るえば

 その瞬間に、そのものは獣となり果ててしまう、だが

 

 最期まで己の、己が身を預けられるものの為にその力を振るえ

 その決断を下せる意思こそが、竜人が竜人とたらしめるものなりー

 

彼女は、父のその言葉を胸に五百年間

今の今まで、己を利してここまできたのだ

 

「(父上‥‥

 

  妾は、必ずやこの世界を

  そしてこの世界に住まう者達の為に‥‥

 

  この力をふるって見せましょう)」

 

そういって、手を伸ばして

電灯の明かりを掴むようにして

 

その拳を握りしめていき

 

ティオの意識は、段々と薄れていき

そのまま、眠りについていったのであった

 

ティオは、母と父を失ってからおよそ五百年

その時の光景がフラッシュバックされるようにして

夢の中に、その時の光景が写し出されてきたのである

 

それ故に、彼女は意識がすぐに覚醒することが多く

この五百年において、まともに眠れるようになるのは

およそ十年に一度くらいの不定期な周期であり、だからこそ

体調がすぐれず、朝において冷水を使って体を冷やすことで眠気を払っていた

 

だが、それも五百年も続けば日に日にそれは効かなくなっていく

 

それでも、ティオは龍人族の姫として

自身を慕ってくれる皆の為に気丈であろうとした

 

だからこそ、この世界に召喚された

勇者達一行との接触を名乗り出た、自身が

ひいては龍人族の未来を、切り開いていくために

 

しかし龍人族の隠れ里から、この大陸まで

龍人族の中でも、膨大な魔力を持ったティオでも

大幅に力を消費していく事になってしまうことになった

 

体調の事もあったが、それでも

何処かの道端に倒れなかっただけでも上等である

 

だが、いくら龍人族の中でも

特に強い力を持っているティオであっても

寝入ってしなえば、もはやただの無防備な少女

 

そんな、彼女に忍び寄る不穏な影が…

 

「こちらです」

 

扉の向こうから、聞こえてきたのは

ティオをこの部屋に案内した女性の声

 

女性は、用意した部屋の鍵を開けると

何やら異様に武装した男たちがぞろぞろと入り込んでいく

 

「こいつが、龍人族の姫か‥

 

 しかも、五百年前に打ち損じたクラルス族の姫、か」

 

「ふん、何とも愚かなものよ

 貴様の動向など、筒抜けであったというのに‥

 

 ここで一気に、こやつを斬り殺して‥」

 

そういって、男が権を抜こうとするが

 

それを隣の男が制止する

 

「よせ、こいつを拘束して

 連れてくるようにと領主様の命令だ

 

 まずは、魔封の拘束具で縛り付けるぞ」

 

「「おう!!」」

 

そういって、男たちはティオの無防備な身体を

拘束具を使って、がちがちに縛り上げていった

 

そして…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

オルクス大迷宮

 

オスカーの隠れ家…

 

 

そこにある一室で一人の人物が

何やら、文献を読み漁っていた

 

そんな彼のもとに現れる一人の少女

 

白目と黒目が反転し、赤色の長髪

爪が橙色になっている、十代後半の少女

 

「どうしたの、ハジメ?

 

 随分と読み込んでいるみたいだけれど?」

 

憤情の皇帝

 

ナギサ…

 

 

彼女は、そんな彼に静かに問いかけていく

 

それに対して…

 

「うん、このオスカーの隠れ家にあった文献を

 改めて読み返していたんだけれども、ちょっと気になるものを見つけてね…」

 

南雲 ハジメ…

 

 

彼は、ナギサに気兼ねなく話していく

 

「気になるもの?」

 

「ねえ、ナギサ…

 

 龍人族って知ってる?」

 

ハジメは不意に訪ねていく

 

「‥‥ええ、知っているわ

 王国にいた時に、座学で教えられたわ

 

 何でも、五百年前に神に刃を向けて

 この世界を滅ぼさんとしたって聞いたけれど?」

 

「…そうだね、僕も聞いている

 

 でも、僕はここで実は世界を混乱に導いているのは

 人間族が信仰している、エヒトであるって知ったけれど

 

 そうなってくると、見方が変わって来るって思わない?」

 

ハジメが言う

 

「‥‥表向きは、世界の敵として認識されているけれど

 もしもエヒトが世界の敵側であるとするんだったら、確かに

 とらえ方が変わってくる、実際は龍人族は世界の為に戦った?」

 

「あるいは、僕たちのように

 この世界の真実を知ってしまったせいで

 

 龍人族は、神敵として滅ぼされてしまった…

 

 そうなってくると、ちょっとこれはおいしいかもしれないね」

 

ハジメは、そういって

ある人物に声をかけていった

 

その人物は…

 

「どうかしたの、ハジメ?

 

 ハジメから声をかけてくれるなんて」

 

運命と破壊の公爵

 

リュナ・プレーヌ…

 

 

彼女は物静かながらも、どこか

ハジメに対して嬉しそうな反応を見せていく

 

「うん、リュナに少し訪ねたい事があってね…

 

 龍人族についてなんだけれども…」

 

「ん‥‥

 

 龍人族は、龍化と呼ばれるスキルを使って

 自分の姿を龍の姿に変異させることができる

 

 私も、子供のころは王としてのあり方を教わるために

 龍人族の在り方を、伯父様から教えてもらっていたから‥‥」

 

ハジメの問いに、リュナは答えていく

 

「そうだったんだ…

 

 それじゃあ、龍人族が生き残っているのかどうかについては…」

 

「‥ごめんなさい、龍人族が滅ぼされたのは

 私が生まれる、およそ三百年前くらいだから‥‥

 

 生き残りがいるのかどうかは、わからないけれど

 いるとするんだったら、大陸の外にいる可能性がある

 

 そこだったら、教会の手も回らないと思うから」

 

リュナは、ハジメにそう答えていくものの

どこか、自信の無さと申し訳なさが入り混じっている

 

そんな表情を浮かべていた

 

「大陸の外ね…

 

 それだったら、どうする?

 

 そこに目を広げて、龍人族の生き残りが

 いるのかどうか、探っていってみるの?」

 

ナギサが不意に、ハジメに訪ねていく

 

しかし

 

「…いいや、ダメだ…

 

 今のままだと、見つけたところで

 僕たちに協力を求めたとしても、無駄だろう…」

 

「ん‥‥

 

 龍人族は、高潔で製錬な精神の持ち主

 私やシア、アルテナのようにこの世界に対して

 理不尽を覚えていたとしても、首を盾には振ってくれないと思う‥‥

 

 龍人族の力は強大だから、引き入れたら戦力として十分だとは思うけれど‥‥」

 

ハジメの返答に対して、リュナもまた

それは、難しいものであると補足する

 

「それじゃあ、諦める?

 

 そもそも、龍人族が生き残っているのかどうか

 その保証もないって言うのも、現状な訳なんだしね…」

 

ナギサは、どうするのかとハジメに訪ねていく

 

「諦める?

 

 僕はあいにくとそんなに諦めがいい方じゃないよ

 

 それに、引き抜く件にしても問題はないさ

 どんな人格者でも切っ掛け一つ起これば自体は変わるさ」

 

「切っ掛け?

 

 それって一体」

 

リュナは訪ねていく、それに対して…

 

「それを用意するのは、この世界だよ

 

 まあ、そのきっかけが起こるのも

 そんなに気が遠くなるようなものじゃないさ」

 

ハジメは、そういって

立ち上がっていくと、リュナの横を

通り過ぎる形でその部屋を後にしようとする

 

「どこにいくの?」

 

その場を後にして行こうとするハジメに訪ねていくリュナ

 

「決まってるでしょ、新しい同胞を迎え入れに行くんだよ

 

 さっそく、そのきっかけが起ころうとしているのさ

 

 ナギサにリュナ、二人もついてきてくれる?」

 

ハジメはそう尋ねていくと

 

「ん、もちろん‥‥

 

 ハジメがそういうなら

 私は断る理由なんてない」

 

「しょうがないわね…

 

 いいわよ、貴方の考えに

 最後まで付き合ってあげようじゃない」

 

ハジメが同行を求めると

リュナもナギサも断ることなく

 

彼の後をついて行くのであった

 

誰も知らない場所で、世界の悪意に

さらされた者達が動き始めていった

 

この世界の運命は、刻一刻と

狂気の一歩を踏み出していく事となるのであった

 

・… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ティオは再び、例の夢を見た

 

ティオの故郷は聖教教会に滅ぼされ

母、オルナが無惨な死体を晒されている

 

その光景を、見せられ

ティオの中に抑えていた激情が

自分でも抑えきれなくなるほどに膨れ上がっていく

 

そんな時、そんな自分を必死に抑え込んでいく

一人の人物がいた、その人物はそんなティオの事を

必死に言い聞かせていくようにして、抑え込んでいく

 

その人物は、ティオの父親であり

かつての龍人族の王でもあった人物

 

ハルガ・クラルス

 

 

彼であった

 

彼は、怒りで身を繰り出そうとしているティオを

必死に抑え込みながら、彼女に必死に言い聞かせていく

 

ー…どんなに打ちのめされても、その身を

  憎しみに染めてはならない、憎しみによって

  力を振るえば、その瞬間にお前はただの獣と化す

 

  最期まで己の、己が身を預けられるものの為にその力を振るえ

 

  その決断を下せる意思こそが竜人が竜人とたらしめるものなり!ー

 

ティオは、その言葉を聞いて

自分をどうにか取りもどしていく

 

ティオは、ハルガからこの言葉を受け

自身の中にある怒りや憎しみと必死に抑え込んでいく

 

彼が教会によって、殺されてから

五百年間、ずっと彼より教えられた

龍人族の誇りや生き様を貫いていった

 

だが、五百年たっても彼女の中にある

怒りや憎しみは、収まる事はなかった

 

五百年前のあの出来事が、およそ十年くらい

その周期で夢という形でフラッシュバックしていき

 

忘れる事も出来ず、必死に抑えていけば行くほど

彼女の精神は段々と摩耗していっているように感じていた

 

そして…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「はっ!?」

 

ティオは、またあの夢を

自身の母が、父が殺された

 

あの時の出来事を夢の中で思い出し

その影響でベッドから飛び起きていくような

 

そんな勢いで、身体を振るわせていった

 

だが、ティオはそんな自身の身体に違和感を覚えていく

 

それは…

 

「っ!?

 

 こ、これは一体‥‥」

 

今の自身の身体の状態であった

 

首と腰、両手足と縛られ

そのまま、磔にされるような

そんな形で拘束されていた

 

「…な、なんじゃこれは!?

 

 一体何が‥‥」

 

自分が今、おかれている状況を

理解できずに、困惑していくティオ

 

そんな彼女の耳に聞こえたのは

何やら、重いものを着込んだものが

こちらの方に歩み寄っていく音

 

ティオは不意に、そっちの方に意識を向けていった

 

やがて、自身の目の前にある扉が開かれて行き

そこから、鎧を着こんだ人物たちが次々と入り込んで来た

 

その人物たち所謂、この町の騎士団を引きつれるように

一人の男性が部屋の中に入り込んで来た、その人物はゆっくりと

ティオの方にへと近づいていく形で、歩み寄っていった

 

すると…

 

「…ようやく御目覚めのようだな、クラルスの姫君よ

 

 お前が大陸を超えて、英気を養うためにこの町に

 やってくることは、容易に想像できたおかげでこうして

 お前を捕らえることに成功し、ここに連れてくることができた

 

 多少の犠牲はやむなしと思っていたが、思いのほか貴様が

 ぐっすりと眠り続けていたおかげで、無駄に犠牲を払うことなく

 どうにかして、貴様をここまで連れてくることができて良かったわ」

 

男性は、嘲笑的な表情を浮かべながらそう言い放っていく

 

「っ!?

 

 これはお主の仕業か!

 

 一体何の真似じゃ!?」

 

「何の真似だと?

 

 どうやら、貴様は自分達の立場を理解していないようだな

 

 我等が神を裏切り、我等人間族を滅ぼさんとした神敵め!

 

 我等の祖先が、全て根絶やしにしたものと思っていたが

 よもや、生き残りがいようとは、何とも忌々しいものよ!!」

 

ティオの問いかけに、男性は彼女の髪を乱暴に掴んで言い放つ

 

「我等の祖先じゃと‥‥!?

 

 まさか貴様は、あの時に

 父上と母上を殺したもの達の!?」

 

「そうとも!

 

 龍人族の王と王妃

 奴等が収めていた国を滅したのは‥‥

 

 我が先祖たちの功績によるものよ!!」

 

ティオの問いかけに、男性は臆面もなく答えていく

 

龍殺侯

 

 

五百年前、ティオの母、オルナを殺し

更には父でもある、ハルガを討ち殺した十八人の英雄

 

彼等はその功績を称えられ、特別な爵位を与えられた

 

それが、龍殺侯であった

 

「龍殺侯じゃと‥‥

 

 随分とふざけた称号を‥‥」

 

「ふざけた、まあ貴様等からすればそうであろう

 だが、貴様の父親や母親が我らが神に刃を向け

 世界を滅ぼさんとしなければ、このような事にはならなかった…

 

 お前達の身から出たさびよ!」

 

ティオの言葉に対して、そう吐き捨てる男性

 

「確かに我らは、神に挑まんとした

 じゃがそれはこの世界を、ひいては

 この世界に生きる全ての生きとし活ける者を守る為に‥‥」

 

ティオが、自身の意見を口にしようとした

 

その時であった

 

ティオの右目に向かって、短刀が突き立てられ

そこから勢いよく、目玉がえぐり取られて行った

 

「ぐああぁ!!!!」

 

ティオの絶叫があたりに響き渡っていく

 

それに対して…「ぐえっ!」

 

右目をえぐり取られた痛みによる絶叫を、まるで

無理矢理に抑え込んでいくようにその首を乱暴に締めあげていく

 

「ああ…があ‥‥」

 

その衝撃が、喉を傷付けてしまったようで

その口からわずかながら、血が流れ出ていった

 

「我らを守る?

 

 ほざくな、我等が神に刃を向けた時点で

 お前達は我らの、いいやこの世界の敵なのだ

 

 それが我らが神がお前達に下した、お前達の運命なのだ

 

 本来ならば、貴様のようなものは

 この場で処刑をしてやりたいところだが

 お前の存在をこうして確認できた以上は

 

 お前の他にも龍人族の生き残りがいることは明白だ

 お前達の生き残りが何処にいるのか、直ぐに吐いてもらおう

 

 そうしたら、この目玉一個で勘弁してやる」

 

ティオに顔を近づけていきながら、領主は

龍人族の隠れ里の居場所を教えるように言う

 

しかし

 

「…侮るなよ、若造‥‥

 

 妾とて、ここに赴いた以上は

 それなりの覚悟をもってここにおる

 

 それしきのことで、一族の事を話すと思うな!」

 

ティオはそれでも、覚悟を決めた表情で男に言い放つ

さすがは、真の王族としてたたえられた龍人族の姫である

 

そんなティオの態度に、腹の虫を悪くしたのか

彼女の首から、自身の手を乱暴に放していった

 

その表情から、まるで自分の思い通りに行かないことに

癇癪を起こした子供のような、そんな怒りを浮かべているのが分かる

 

「自分の命よりも、自分の民を守るだと?

 

 それだったら、その大口をいつまで

 ほざき続けられるのか、ここで試してやろう!」

 

領主がそう言うと、彼の傍に控えて居た者達に

何かを指示すると、その男達はティオのもとに行き

両側から、それぞれ顔と抑え瞼を開かせていった

 

「き、貴様!?

 

 一体何を‥‥」

 

「これから貴様が受ける事から

 目をそらさないようにするのだ

 

 これは貴様が選んだ事、いまさら

 音を上げるなど、そんなつまらん真似をするなよ?」

 

ティオの問いに、ただそう言い切っていく領主

 

領主が指示を出すと、ティオの無理矢理

開かされた瞼に針のような物を刺されて行く

 

それによって瞼は、自力で閉じることは出来なくなってしまう

 

「あ…あああ‥‥」

 

「しっかり見ておくがいい、龍人族の姫よ

 

 これが、お前の下した決断だ!」

 

そういって、両側に控えていた男たちは

ティオの顔から離れていくと、別の男達から

何かを受け取っていき、彼女の両腕の方にいった

 

その受け取った何かというのは、木の杭であった

 

しかも、その杭は年季が入っていてボロボロで

それで自分の手を傷付けないようにと手袋をした手で持ち

その杭の先を、ティオの腕に向かって充てる程度に刺していくと

 

その杭の反対側を討ち込むようにして、木槌を討ち込んだ

 

「があぁ!」

 

喉が潰されている状態なので、先ほどまでの

凛々しい声とは全く似つかない、野太い声による悲鳴を上げた

 

しかし

 

「なんと醜い声だ、まあ貴様のような奴にはお似合いよ

 

 だが、この痛みはまだまだ続くぞ、お前達にはまだまだ

 この世界を手に懸けんとした報いを受けなくてはならんからな」

 

男がそう言うと、ティオのもう片方の腕にも杭が討ち込まれて行く

撃ち込まれた腕から血が流れていき、それがゆっくりと滴り落ちていく

 

「はあ…はあ‥‥」

 

「ふん、いまさら後悔しても遅いわ

 貴様が素直に、一族の事を話せば

 

 このような目に遭う事はなかったのだからな」

 

更に次に、用意されたのが釘であった

 

その釘は錆びており、それをもって

今度はティオの手の方にあてていく

 

その場所は指である、指を一本抑えられ

そこに向かって、釘が一気に打ち込まれて行く

 

「ああぁ‥‥」

 

余りの痛みに、ティオは表情を歪ませていく

だが男たちは、そんなティオの事など気にも止めることなく

 

更に一本、二本とすべての指に釘を討ち込んでいき

止めと言わんばかりに、手の平にまでうち込まれて行った

 

「はあ…はあ‥‥」

 

「ふん、これでも口を割らんか

 龍人族というのは、無駄に頑丈なのだな」

 

「いかがいたしましょう」

 

ティオの様子を見て、龍人族の居場所を聞き出すことは出来ない

それならばと趣向を変えると男達に何かを指示していった、それは…

 

「い、一体何を‥‥」

 

ティオは、両側に短刀を持った男たちが立ったのを見て

頭の中で理解していることを、無意識に否定しようとしていく

 

それに対して…

 

「さあ、どうするのだろうな?

 

 自分の身体に聞いてみるがいい!!」

 

領主がそう言った、その時

 

「ぐああぁ!!!!」

 

ティオの小指が切り落とされると

血だまりの中に、ポトリと切り落とされた小指が落ちた

 

さらに、薬指、中指、人差し指と

向かって外側から指が次々と切り落とされていった

 

その時であった

 

「があ!」

 

ティオの喉が乱暴に、掴み上げられ

そのまま顔を上の方にへと向けられていく

 

「いい加減に貴様の声も耳障りよ

 

 おい、あいつを黙らせろ!」

 

そういって、傍使えの女性に命じて

ティオの口を無理矢理開かせて何かを飲ませていく

 

ティオはまずいと思い、急いで吐きだそうとするが

上むきにされて、さらに無理矢理口を閉ざされた事で

強制的に、飲まされた何かを呑みこされてしまうのだった

 

それによって…

 

「が…がああああ‥‥」

 

ティオは、声が出なくなってしまう

出そうとすれば喉から激しい痛みが走っていく

 

「どうせ喋らぬのなら、そんな口も声もいるまい

 

 せいぜい、その痛みをかみしめて

 お前達一族の罪を噛みしめていくがいい」

 

ティオの喉が潰された後も、拷問は続き

両手のみならず、両足の指も斬り落とされ

その痛みによって声をあげると、それが潰れた喉に響き

 

全身は、想像を絶する痛みに蝕まれていく

 

やがて、ティオの多くの龍人族たちを魅了した容姿は

今や、そんな面影を感じさせないほどに変わり果ててしまうことになった

 

片目を潰され、もう片方は瞼を固定され

無理矢理開かされたことで、次第に血が涙のように流れ

 

両手足から、血が滴り落ちていく

 

「ふん、随分と醜くなったな

 まあ、我らを滅ぼさんとしたものには相応しいがな」

 

そんなティオのことを、まるで

ばっちいものを見るような目で見つめる領主

 

自信がそうさせるようにしたのを、まるで他人事のように…

 

だが、そんな男の身勝手なふるまいも

気にならないほどに、ティオの精神は摩耗していった

 

ティオは体を散々に痛めつけられ、声も出せず

指を切り落とされていく、壮絶な行いによって

ティオの心も限界を迎えつつあった、だがそれでも

領主たちの残酷な行いはとどまっていく事を知らなかった

 

それは…

 

「どうしましょう、この有様だと

 龍人族の居場所を吐かせることはもう…」

 

「来ないならば、来させればいい

 

 こいつの死体を晒して、それを使って

 龍人族共を、おびき寄せていくのだ

 

 五百年前に下らぬ理想を掲げ

 それによって自分の愛する者を死なせる要因を造った

 あの龍人族の女王と同じ末路を、辿らせてやろうではないか?」

 

「っ!?」

 

ティオは、男の言葉に反応し

痛みに耐えるようにゆっくりと顔を上げていく

 

「なるほど、思えばその二人も愚かな事を考えたものですね

 

 我等が神の威光のもとに、大人しくしていればいいものを」

 

「我等の神の威光が理解できぬほど、頭が回らなかったのであろう

 所詮は獣、自分の愚かさすらも理解できぬ、哀れな存在でしかなかった

 

 それが奴等、龍人族という存在なのであろうよ

 

 エヒト様を欺こうなど、出来るはずがないのに」

 

その男の続けて言う言葉に、ティオは

無理矢理に開かされていた目を更に開かせていく

 

「さあて、それではそろそろ

 その四肢を切り落とし、その死体を晒し

 

 龍人族滅亡の旗印にしよう、恨むのなら

 お前に、この運命を背負わせたお前の両親を恨むのだな」

 

そういって、剣を手に取っていく領主

 

そして、そのまま…

 

「んんん!?」

 

喉が潰れてしまっているせいで、ティオは

もはや声にもならない悲鳴を上げていった

 

そんな彼女の右腕は、何と

肩から先が失われてしまっていた

 

「さあ、無様な死体を晒して

 貴様の一族を呼び寄せるがいい!

 

 その時こそ我々の、いいや

 この私による新たな時代の先駆け…

 

 新たなる、龍殺侯の誕生なり!!」

 

そういって、ティオの身体を更に斬りつけていき

彼女の両足もまた、膝から下の部分が斬り落とされてしまう

 

そんな様子と、これからの自身に約束された将来に対して

悦にふけり、それによって不快な笑みと耳障りな笑みを浮かべる領主

 

ティオは段々と、意識を薄れさせていく

 

そんな中で浮かんでいったのは、もえあがる故郷と

磔にされて殺された母に、自身を守る為に立ち向かっていく父の背中

 

自分はすべてを失った、国も両親も

それを奪ったのは、他でもない守るべきもの達によって

 

世界を守る為に戦わんとした自分達を、神敵とし

一方的に攻め立てて、挙句にはその命すらも奪った

 

しかも、その功績によって自分達を裏切った者達は

龍殺侯、などという薄汚い勲章を手にしたというのだ

 

目の前にいる男は、そんなもののために

自身を嬲り殺し、さらには自身の死体を晒して

自分を信じて慕ってくれている、龍人たちも貶めんとしていく

 

これが、こんな奴等を守ろうとして

両親は殺され、自分達は歴史の裏に消えていった

 

こんな理不尽があっていいものか、薄れ行く意識の中で

ティオが最期に抱いたものは、この世界やそこに生きていく全てへの怒り

 

「(…こんな、こんな奴等のせいで

  父上や母上、わらわの国やそこに住む

  全ての民の命が奪われたというのか!?

 

  挙句には、己の我欲を満たさんと

  我ら一族に刃を向けようというのか!?

 

  こんな、こんな奴らを守ろうと

  妾達は躍起になっていたというのか‥‥

 

  許せぬ、許せぬぞ…こんな奴らに殺されるなど‥‥

 

  認めてたまるものかああぁ!!!!)」

 

ティオは、五百年間抑え続けていた憎悪によって

その心に残っていた、高潔で清廉な心は塗りつぶされて行く

 

それほどの憎悪によって、薄れゆく意識を必死に保たんとしていく

 

しかし、それも今のままでは長くはもたないであろう

 

むしろ、今のティオの状態では、もはや

終わりの時を迎えるのは時間の問題であろう

 

えぐり取られた右目、瞼を縫い付けられて

無理矢理に開かされている左目に潰された喉

 

右腕も両足も切り落とされ、残されたのは左手のみであった

 

その左手も、指を全て切り落とされており

もはや、死んでしまった方が幸いなのではという

 

ティオの今の状態は、それほどまでにむごたらしい状態である

 

「(力が欲しい‥‥

 

  こんな理不尽を引き起こしている

  この世界に抗うための力が、欲しい‥‥)」

 

ティオは、薄れゆく意識の中で力を渇望していく

だが、そんな彼女の願いに反してティオの力が抜け

同時に、自身の身体から段々と温かさが失われて行く

 

それを感じ取っていった

 

「さあて、これで最期だ!

 

 無様に屍を晒すがいい!!」

 

そういって、剣を掲げ

残った左腕を切り落とさんとしていった

 

その時であった

 

「え?」

 

領主の身体を、いきなり何か

とがったものが貫いていった

 

自身の身体から、突き出されたそれを見て

不意に自身の後ろの方に目を向けていくと

 

そこには…

 

「ん、そこまで‥‥」

 

「な、なんだ貴様は…

 

 ごふっ!」

 

金色の長い髪に、赤色の瞳を持った十打後半位の少女「

彼女は、自身の武器である槍を使って領主の身体を貫いた

 

領主は、何が起こったのかわからないまま

そのままずり落ちていくかのように、倒れていった

 

「(だ、誰じゃ‥‥)」

 

その少女は、辺りに散乱した死体の山に

見向きもせずに、変わり果てた姿になった肉塊

ティオだったものにへと、歩を歩めていくと彼女を見る

 

「見つけた、でも‥‥

 

 あと一歩、遅かったみたい

 この人が多分龍人族、でももう

 こんな姿になってしまっていたら‥‥」

 

少女は残念そうに呟いていった、そこに

 

「いいや、まだ生きているよ‥‥

 

 でも命の灯が消えかかってるね」

 

一人の少年が現れる、白と黒に分かれた髪に

目もまた右目は人間と同じだが、左目の方は

それが反転した色になっているオッドアイである

 

その彼は、もはや見るも無残になった彼女の元に赴き

彼女の瞼を無理矢理に開かされた右目の方を見ていった

 

「さすがにこの状態じゃ、話も出来ないね…

 

 しょうがないな、ちょっとだけサービスしてあげるよ」

 

そういって、少年はティオの首元に自身の指を突き立てていくと

 

「あ、あああ‥‥

 

 こ、声が戻った‥‥!?」

 

ティオは、自身の声が戻ったのを感じ取る

 

「な、何者かは知らぬが礼を言う‥‥

 

 妾は、ティオ・クラルス‥‥

 

 

 龍人族…クラルス族の姫じゃ‥‥」

 

「ティオだね、逸れには及ばないよ…

 

 それで、その龍人族の姫である君が

 こんなところで、どうしてそんな姿に?」

 

再び、話せるようになったてティオに対し

彼女のこれまでの経緯を訪ねていく少年

 

その彼に対して、ティオは自身の経緯を話していった

 

「妾達は、五百年前‥‥

 

 聖教教会から神敵、すなわち

 世界の敵と認定され国ごと滅ぼされた‥‥

 

 じゃが、妾達を含めた一部の者は生き残り

 エヒトの力が及ばぬ、この大陸の遥か彼方にある

 我等一族の隠れ里において、来るべき時に備えながら

 世界の動きを見ていた…そんな時であった‥‥

 

 大陸の王国において、この世界とは異なる力を感じ取ったのじゃ‥‥」

 

「僕たちの事か…」

 

ティオの話を聞いて、少年は静かに呟いていく

 

「それを感じた我等は、その者達が我らに

 ひいては、この世界にどのような結果をもたらすのか‥‥

 

 一族を代表して、妾が向かう事にしたのじゃ‥‥

 

 我らの存在は秘匿に鳴っているがゆえに

 護衛もつけられず、一人でここに訪れた‥‥

 

 しかし、妾の膨大な魔力をもってしても

 隠れ里から、この大陸に飛んでいくには相当に

 魔力を消費してしまう、それで妾は魔力を回復するために

 

 この懐かしき地に足を踏み入れたのじゃ‥‥」

 

「懐かしき地?」

 

少年は不意に、ティオの言った

懐かしいと言う言葉に反応する

 

それに対して、ティオは答えていく

 

「五百年前、この地には

 我が父と母が収めていた国があった

 

 水があふれ、木々に覆われた場所で

 そこには様々な種族がその垣根を超えて

 誰もが笑顔をうかべていた、平和な国があった

 

 しかし、その国に突如として聖教教会が攻め込み

 それによって母上は殺され、父上も我らを守る為に命を落とした‥‥

 

 この地は妾にとって、生まれ育ったかけがえのない場所

 

 それゆえに、妾はここに足を踏み入れたという訳じゃ‥‥」

 

「なるほどね、魔力を消費してまともに動けない状態のせいで

 あっさり捕まってしまった結果が、この有様って訳なんだね…」

 

少年の問いかけに、ティオは何も答えなかった

彼の言う通りなので、何にも言い返せないのである

 

「妾の両親は我らを、しいてはこの世界の為だけに

 自らの力を振るってきた、妾はそんな二人が誇りであった

 

 そんな二人を人間どもは、自分達の名誉のために

 父上と母上に汚名をきせ、その命を奪った挙句には

 自分達はそれによって、偽りの栄誉と薄汚い勲章を手にし

 

 ついにはその子孫は、妾を利用して我等一族を滅ぼさんとした‥‥

 

 あんな奴らを守る為に母上は殺され、父もそのせいで命を落とした

 

 許せぬ…あんな奴ら‥‥許せるはずがない!」

 

少年によって治された喉が再び

潰れてしまうようなほどの荒げた声で

自身がため込んでいた怒り、憎しみの念を

言葉にして吐き捨てていく、そこにはもう

高潔で清廉な龍人族の姫は、感じられなかった

 

目の前にいるのは、自分からすべてを奪った人間達

そのきっかけを生み出した悪神、そんな理不尽を生み出した世界

 

その全てに怒りを覚えた、復讐者であった

 

ティオの言葉を受けた、少年は

懐からあるものを取り出していくと

 

それを、ティオの身体に勢いよく埋め込んでいった

 

「がはっ!」

 

ティオの体の中に、何かが巡り合っていく

まるで自分の中に何かを流し込まれて行くような感覚

 

「いいよ、それだったら僕が君の怒りに答えよう

 君の怒りが本物だというのなら、僕が君に力を貸してあげる

 

 最も、力に呑まれて君は知性も理性もない

 化け物になり果ててしまうかもしれないけれど

 

 逆に、この力を手にすれば君は

 世界に抗える力を手にすることができるだろう

 

 さあ、その力をもって、再びこの地に君臨するがいい

 

 ティオ・クラルス!」

 

 

ハジメは、そういって自身の腕をティオの身体に突き刺した状態で

ティオに呼び掛けていくようにして、彼女に言い放っていった

 

「(ああ、何じゃこれは‥‥

 

  もしやこれが、死ぬという感覚か

  結局、妾はこのまま何もなせずに終わるのか‥‥)」

 

意識が遠のいていくのを感じ取るティオ

 

しかし

 

「(何もなせずに終わる…ふざけるでない!

 

  妾の全てを奪った者達、その血を引いている

  ただそれだけで、貴族のように祀り上げられた忌まわしき者達!!

 

  妾の無念、怒り、憎しみ、それらすべてを思い知らせてやるまで‥‥

 

  死んでたまるものかああぁ!!!!)」

 

ティオの五百年も抑え込んで来た、怒りによって

薄れていた意識が再び覚醒していった、その結果

 

「うぐああぁ!!!!」

 

ティオの身体から、何やら九つの龍の頭が伸びていき

それが、自身たちのいる部屋の天井、壁、床の全てを破壊していく

 

「すごい‥‥

 

 こんなにも、大きな力に目覚めるなんて‥‥

 

 これって!」

 

「うん、どうやら辺りを引いたみたいだね…

 

 さあ、今こそ新たな同志の誕生を見届けよう!」

 

その様子を見届けていく少年と少女

 

そして…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

やがて、その力は…

 

「っ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

領主の館から、勢いよく天に向かって

伸びていくように現れたそれを目にしていく

 

それは、何と…

 

「な、なんだよあれは!?

 

 まさか、魔物か!?」

 

「そんな、何で町の中に魔物が

 しかも領主様の家から現れるんだよ!」

 

九本の巨大な首を持った、巨大な龍

それが、街の方にへと一斉に伸びていき

 

『『『『うわああああ!!!!』』』』

 

『『『『きゃああああ!!!!』』』』

 

その巨大な九つの首は、そこから

街を覆っていくようにして伸びていく

 

その際に、道中の建物を全てなぎ倒し

そこにいた住人達は、食らいついたり

ふっ飛ばしたり、とにかく嬲り殺しにしていく

 

老若男女問わず、浮浪者も何も構わずに…

 

やがて、九つの首が伸びている中心の部分に

二つの金色の眼光が、こちらを睨みつけていくように鋭く妖しく光っていた

 

街が破壊しつくされ、辺りから阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡っていき

 

やがて領主の御屋敷が破壊されて行くと、そこから

九つの首が伸びているような、漆黒の球体が浮かび上がっていく

 

すると、九つの首がまるでメジャーを巻き戻していくかのように

球体の中に引っ込んでいくと、その九つの首は段々と形を成していく

 

それは、先の拷問によって失われた部分

左手以外の四肢、頭部、上半身や下半身や

左手に重なり合う様にして、その左手の失われた五指など…

 

それは、一つの人型を形成していった、その時

 

辺りに風が吹き荒れていき、やがてその風によって

街は完全に崩れ去っていき、あんなにも栄えていた風景は

見る影もないほどに変わり果てた、それはかつて聖教教会に

人間族の裏切りによって蹂躙された、ティオの故郷のように

 

「すごい‥‥

 

 まさか、ここまでの力に目覚めるなんて‥‥」

 

その光景を見詰めていたリュナは

驚きのあまりに言葉を失っていた

 

やがて、その風が起こった中心に

背中に三対六枚の翼を、腰から下に向かって

巨大な尾が一本の伸びた者がゆっくりと降り立って行く

 

一人の女性であった

 

ただそれだけではない

 

「…‥‥」

 

彼女は、自身の顔を確認するように触れていくと

自身の身体の方をまじまじと見つめていくと、内心驚いた様子を見せる

 

「おお…何という事じゃ‥‥

 

 あんなにも、見るも無残であった

 あの妾の肉体が、嘘のように戻っておる‥‥

 

 まるで、夢の様じゃ‥‥」

 

自身の身体が、元に戻っていることに

驚きと喜びの入り混じった声をあげていた

 

そこに

 

「夢じゃないよ、ティオさん…

 

 君の身体は、確かに戻ったんだよ」

 

ハジメと、その彼に付き添うリュナ

その二人がティオの元にへ、現われる

 

ティオも、二人の存在に気付き

彼と彼女の方に意識を向けていく

 

「お主等は‥‥

 

 もしやこれは、お主等が与えてくれたのか?」

 

「半分正解…

 

 それは君の中に渦巻いていた、およそ

 五百年間抑え込んでいた、怒りや憎しみ…

 

 それから、僕が君の中に埋め込んだ

 あるものが合わさった力、その力に僕が少し

 手を加えたことによって目覚めた力、その力を

 君はこの世界の理不尽への怒り、それに抗う意思によって

 

 君は、罪徒に覚醒したんだよ」

 

ハジメが、簡潔に説明をしていく

 

「罪徒‥‥?

 

 余り実感がわかぬが、確かに

 妾の内に、大きな力が宿っているのを感じる‥‥」

 

そういって、自身の中に強大な力が渦巻いているのを感じ取っていくティオ

 

それに対して…

 

「…ハジメ殿、と言ったか‥‥

 

 失礼を承知で聞かせてもらうが、どうして

 見ず知らずの妾を助けただけでなく、このように

 施しを与えるようなことを、正直に言うとこれは‥‥

 

 お主になにか、有益を齎すとは限らぬかもしれぬのに‥‥」

 

ティオは、不意に疑問を浮かべていく

 

確かにハジメは、ティオを助け

更には力も与えてくれた、しかし

 

余りにもこちらに有益が過ぎる部分もある

万が一にも、力を与えてたものが自身に刃を向けること

そんなことが起こるかもしれないのに、余りにもこちらに有益すぎる

 

ティオは聡明である、故にハジメの行為は迂闊すぎる

しかし、彼はそんなことを想定しないようなタイプでもない

 

正直に言うと、どこか理解が及ばない

未知の何かと対峙をしているような感覚であった

 

だが、そんな疑問に答えたのは…

 

「そんなの、答えは単純‥‥」

 

ハジメと同行していた少女

 

リュナ・プレーヌ…

 

 

彼女であった

 

「ハジメはただ、貴方の事が放っておけなかった‥‥

 

 それ以上の理由なんてないよ」

 

「何とっ!」

 

少女の返答に、さらに驚きの声をあげていくティオ

 

「私、自分の家族に裏切られて

 オルクス大迷宮に封印されてしまったの‥‥

 

 そこからの日々は地獄だった、もう

 数えるのも億劫になるほどの時の中で

 腕も足も動かせない中で、何にもない暗闇の中を

 過ごしていた、死にたくとも死ねない、声も届かない‥‥

 

 そんな時、私はハジメとであった‥‥

 

 ハジメは、私の力を知っても何も変わらないどころか

 私に自由と力、何よりも名前と生きる意味を与えてくれた‥‥

 

 ハジメは当たり前のようにそれが出来る、それをしてくれる

 

 私に私が前を向く意味をくれたように、貴方にも

 貴方が前を向いていけるための切っ掛けを与えた‥‥

 

 ハジメは、そんな人なんだよ」

 

リュナの言葉を聞いて、ティオは不意にハジメの方を見る

 

彼が自信を見る目は、どこか

優しげで安心したような温かいものであった

 

ティオは、それを見て不思議と

どこか引き込まれるような何かを感じた

 

お人好しでも、何か腹積もりがある訳でもない

何かの為に、為していく事が辺り前なのだという

 

ハジメがティオを引き込もうという気持ちがあるのは本心

しかし、彼が傷ついたティオを助けたのは、それが彼にとって

 

自然の行動だから

 

ティオは、そんな彼の心を感じ

自身が彼の純心に不思議と惹かれていくのを感じた

 

「そうか‥‥

 

 これが、ハジメという男の魅力か‥‥

 

 よもや、妾の中にまだこのような心が残っていようとは‥‥」

 

ティオは、自身の心に温かい何かを感じた

それは不思議と心地よくて、手放したくない何か

 

ティオは、自身を助けてくれた彼に

何よりも彼という強くも危うい存在を支えられる

 

そう決意したティオは、ハジメの方に顔を向けていく

 

「ハジメ殿!」

 

ティオは、決心したように彼の名前を呼ぶ

 

「うん?

 

 何かな?」

 

「ハジメ殿、不躾な申し出であることは

 承知のうえで、そなたに頼みがある‥‥

 

 妾を、そなたとともに行かせてはくれぬだろうか!」

 

ティオは、そういって頭を下げてお願いをしていく

 

「それは、どうして?」

 

「妾は、死にかけていた所をお主に救われた

 このご恩をしっかり返せなくては、妾の気が収まらぬ‥‥

 

 どうか、妾をそなたのもとにおいてはいただけぬであろうか‥‥」

 

ティオは、必死に頼み込む

 

「…それは、もちろん構わないけれども

 その代わり、僕の意見の方も聞いてもらうよ?」

 

「なんであろうか?」

 

ハジメは、ティオに訪ねていく

 

「ティオは、本当にそれだけの理由で僕について行きたいの?

 

 君がその力を得るに至った、その本心を僕に聞かせてくれるかな?」

 

ハジメは、ティオに問いかけるように言う

 

「…妾は、父上と母上におのが生き方を学んだ‥‥

 

 その力を、ただ相手を倒す為ではなく何かを守る為にふるえと‥‥

 

 父上も母上も妾に教えた通り、その力を民や国を守る為にふるって来た

 妾は、そんな父上と母上を心から尊敬しておった、今もそれは変わらぬ‥‥

 

 じゃが!

 

 それを人間どもは、神に惑わされたとはいえ

 母上を見るも無残に惨殺し、挙句には父上まで死に追いやった!!

 

 それでも、妾は必死に父上と母上の教えを守って、その怒りを抑えて来た

 

 五百年、父上と母上が失って五百年間もずっとじゃ

 しかし、父上や母上の死を何度も何度も思い出すたびに

 その気持ちに蓋をし続けるのは、もう苦しいだけじゃった‥‥

 

 じゃが、妾はもうその気持ちに蓋をするのをやめる、

 父上と母上を死に追いやり、あろうことかそれを踏み台に

 悠々自適に過ごしていくなど、そんな事許せるはずがない‥‥

 

 許せるものかあああ!!!!

 

ティオが、そう訴えていく

 

それに対しての、ハジメの返答は…

 

「…そうだね、許せないよね

 赦せない気持ちを許せないと思う事…

 

 それは、悪い事じゃないよ」

 

ハジメは、ティオの考えを肯定していく

 

「ハジメ殿‥‥」

 

「復讐は何にも生み出さないって言うのは、ただの戯言…

 

 僕たちを追いやった奴等は、僕たちの苦しみを

 まったく理解しようとせずに、何不自由なく過ごしている

 

 僕たちという存在なんて、まったく気にも止めずにね…

 

 やがては、僕たちの事なんて忘れて、やがては何不自由なく

 それぞれに幸せをかみしめて、平穏な日常を過ごしていく…

 

 こんな理不尽が許されると思うか?

 

 僕はそうは思わない、そんな奴等こそが本当に苦しむべきなんだ

 そうでなければ、一体僕は何のために存在するのかと打ちのめされる

 そんな苦しみを一生抱えて過ごしていく事になるんだ、そうならないためにも…

 

 僕は、力を手にしないといけないんだ…

 

 例え、どんなことになってもね…」

 

ハジメの決意の言葉、彼の自身の憎しみを肯定する

その言葉に、ティオは改めて決意の方を新たにしていく

 

「ハジメ殿、そなたの望みをかなえる手伝い

 ぜひとも、妾にも手伝わせていただきたい‥‥

 

 妾をぜひとも、貴方の進む道に行かせていただきたいのです!」

 

ティオは言う

 

それを聞いたハジメは、どこか安堵したような表情を浮かべていき

 

「ぜひともよろしく、歓迎させてもらうよ‥‥

 

 ティオ・クラルスさん」

 

「ティオで構いません、それから

 もう一つ、ハジメ殿に経緯のある呼び方を許可していただきたいのです」

 

ティオは、どこか照れくさそうにしていく

 

それに対して…

 

「…ま、まあそれは好きにしていいよ…

 

 ティオがそうしたいなら、別にそれで…」

 

ハジメは、そう答えていくと

 

「ありがたき幸せに存じます

 

 ご主人様!」

 

「ぶふぉ!?」

 

ティオが、自身の事をご主人様と呼んだ

その事に思わず、盛大に噴き出してしまうハジメ

 

「な、何でご主人様…?」

 

「妾は、御主人さまに身も心も捧げていく所存

 それならば、ご主人様を主人として扱うのは自然の流れです」

 

ティオの発言に、ハジメはいろんな意味で頭を抱えていく

 

「フフ、ご主人様だって‥‥

 

 それだったら、私もご主人様って呼んでいい?」

 

「勘弁してくれ…」

 

リュナの言葉を流しながら、心労が増えそうだと頭を抱えていくハジメであった

 

そして…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

それから、しばらくして

 

時系列的には、大体

姫奈達がハルツィナ大迷宮に挑んでいた位のころ

 

オスカー・オルクスの隠れ家を拠点にするハジメたちは

新たに同胞として加わった、ティオの力を見定めたうえで

 

彼女に冠を与えていく事にした

 

ティオは、和服を模した制服のような服装に身を包み

ハジメのもとを訪れ、彼の前に控えていくのであった

 

「…よく来てくれたね、リュナから聞いたよ

 無事に君は自分の力を手にすることができたようだね

 

 そんな君に、星を詠み、龍を創る大君主…

 

 この冠を与えよう、これから君は…

 

 星詠と龍創の大君主

 

 ティオ・クラルス…

 

 

 そう名乗るといい」

 

「ありがとうございます、ご主人様‥‥」

 

星詠と龍創の大君主

 

ティオ・クラルス…

 

 

彼女はそう言って、拝名を承った

 

「期待しているよ、ティオ…

 

 それで早速、君に命令

 いいや、お願いがあるんだけれど」

 

「何でございましょう」

 

早速、ハジメはティオに祈願する

 

その本題を出す前に…

 

「ナギサ!」

 

ハジメが、名前を呼ぶとそこに

人間とは白と黒が反転した色の目を持ち

 

赤色のロングヘア―に、橙色の爪を持った少女が訪れる

 

「ご指名?」

 

「そうだよ、ナギサ…

 

 これからティオと一緒に

 龍人族の隠れ里に向かってくれる?

 

 できる事だったら、彼等の事もこちらに引き込みたい…

 

 ティオも、力を貸してくれるね?」

 

ハジメは、ナギサに龍人族の隠れ里に向かい

ティオには、その案内役の方を頼み込んでいく

 

「ご主人様が望むのであれば、そのように‥‥

 

 しかし、お爺様達がご主人様のもとに就くでしょうか?

 

 お爺様のことは、私が一番に理解してます、故にお爺様が

 ご主人様のもとに就くとは、到底は思えないのですが」

 

「…その時はその時で、僕が直接出向くよ…

 

 まあ、ナギサが向かったら

 そんなに手間はかからないだろうれど」

 

「フン、それは買いかぶり過ぎよ…」

 

ティオは不安を口にするが、ハジメの方は

ナギサが赴けば、問題はないと言い切っていく

 

それが少し、むず痒かったのか

ナギサはハジメから顔を背けていく

 

「とにかく、直ぐにでも向かえるかな?

 

 もちろん、二人のペースに合わせてくれればいいけれど…」

 

ハジメが言う、それに対して…

 

「それならば、明日の朝一番に向かわせていただきます

 

 罪徒に覚醒したおかげで、私はこの五百年間、苦しめられた

 不眠より解放されました、力も以前よりも大きくなりましたゆえに

 

 今ならば、そこに行くまでの消費は殆どないでしょう」

 

「ナギサも、それでいい?」

 

「もちろん…」

 

ティオの決定に、ナギサも問題ないと答えていくと…

 

「それじゃあ、よろしくね…」

 

「お任せください、ご主人様‥‥

 

 星詠と龍創の大君主

 

 ティオ・クラルス…

 

 

 参ります!」

 

ティオもまた、立ち上がりながら

ハジメから受けた命を果たさんとするのであった…

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

龍人族の隠れ家

 

ティオが、大陸に旅立ってから

およそ数カ月が立とうとしていた

 

そんなあるとき

 

竜人族の長を務める、老齢の人物達のもとに

謎の使者が現れ、そのものは不気味な雰囲気に

似つかわしくないほどの若々しい声で、呼びかけていく

 

ー我々は、ティオ・クラルスの使者

 

 龍人族の代表と話しをさせてほしいー

 

それを聞いて、多くの者が驚愕した

ティオが使わせた使者であるというのだ

 

正直に言うと、半信半疑であったが

会うくらいならばと、面会を許可した

 

それを聞いた、ティオの祖父にして

龍人族の長である、アドゥル・クラルスを筆頭に

 

里において、それなりの権限を持つ者達が

その使者が来るという、その時に指定された場所に訪れる

 

しかし、ティオの魔力量でも大陸からここまで

向かって行くのにかなりの時間と浪費を想定していく

 

それ故に、直ぐにはやっては来ないだろうと思っていた

 

だが…

 

「アドゥル様、大変です!

 

 さ、里の方に向かって禍々しい力が

 迫ってきていると、カルトゥス様が!!」

 

「なんじゃと!?」

 

報告を受けた、アドゥルを筆頭に

里の者達の多くが、里に向かって来たという

強大な力がこちらにへと向かっているのを直視する

 

その姿を見て、多くの者が畏れを抱く

あれはまるで、天災が龍の姿になってやってきたと

 

その天災は、やがてその姿を変えていき

そのままゆっくりと、龍人族の隠れ里の地にへと降り立った

 

その姿を見て、アドゥルを筆頭に多くの者が驚きの表情を浮かべた

 

何故なら、その人物は…

 

「…こうして、この地に降り立ったのも久方ぶりじゃな‥‥」

 

そういって、アドゥルの方にへとゆっくり顔を上げていく

 

そう、そこに降り立ったのは…

 

「ティオ‥‥?」

 

「…いかにも、妾はティオ・クラルスである

 

 息災の様で何よりじゃな、お爺様」

 

アドゥルの孫娘であり、自身たちの使者として大陸へと向かわせた

 

ティオ・クラルス…

 

 

彼女であったからである

 

祖父であるアドゥルを筆頭に、その場にいる一族の者は

ティオであるという事は理解した、しかしだからこそなのか

 

彼女の纏っている雰囲気が変わっていることを感じ取っていた

 

「ティオ、一体何が‥‥」

 

「お爺様、その問いの前に

 ぜひとも合っていただきたいお方がおる

 

 直にお見えになるがゆえに、準備を進めておくれ」

 

アドゥルの疑問を流して、早速自身の要求をしていくティオ

 

それは、ある人物がここに訪れるので

会っていただきたいというものである

 

アドゥルは、ティオの雰囲気が以前とは変わっているように感じていたが

今は彼女に要求に応じておいた方がいいと判断し、準備を進めていった

 

そこに…

 

「ティオ様」

 

彼女のもとに、一人の女性が訪れる

 

「おお、ヴェンリよ‥‥

 

 どうやら心労をかけてしまったようじゃのう」

 

「いいえ、いいのです

 

 姫様がこうして、戻ってきてくださった

 それだけでもこのヴェンリ、何も言う事はありません」

 

ティオにとっては、もう一人の母ともいえる女性

 

ヴェンリ・コルテ…

 

 

彼女は、ティオが戻ってきたことには安堵してる様子

しかし、その表情はどこか不安そうで、哀しみを浮かべている

 

だが、ティオがそれに答える前に異変を感じ取っていく

 

「な、なあ‥‥

 

 なんだか、喉が渇かないか?」

 

「うん?

 

 そんな事は…

 

 あれ?

 

 唇が切れた?」

 

里の者達が、何やら異変を感じ取っていく

 

「な、なんでしょうか!?

 

 妙に肌がカサカサになって…」

 

「…来たようじゃな‥‥」

 

「‥‥え?」

 

ヴェンリも、その異変を感じると

ティオは不意に、静かに呟いていった

 

それと同時に…

 

空に浮かんでいた雲が、一気に払われ

空が辺りを勢いよく、照らしていった

 

しかし、それは決して辺りを明るくする青空ではなく

だからと言って曇りとも全く違う、真っ暗なものになっている

 

その真っ暗な空に、何か影のような物が映る

 

それがゆっくりと、里の方にへと降り立っていった

 

里の者達は、そこに降り立った人物の姿を見て悪寒を感じていた

 

今、自分達の目の前にいる、この者は世界の敵であると…

 

一族の者が一人、その人物の方をに目をやると

 

「ひぃ!?」

 

その者の人睨みで、足がすくんで動けなかった

彼だけではない、ティオの帰還を聞いて集まって来た

多くの者が、その人睨みによって足どころか指も動かせなかった

 

「‥‥やれやれ、こんな程度で足がすくんでいるんじゃ

 龍人族の力って言うのも、たかが知れているものね」

 

「仕方がありませぬよ、ナギサ殿の力を受けては

 多くの者がこのような反応を見せてしまいますよ」

 

どこか、拍子抜けしたように話していくその人物

 

憤情と黒雷の帝王

 

ナギサ…

 

 

彼女の放つ、オーラにあてられて

多くの者が動きを止めてしまう

 

「て、ティオ‥‥

 

 このものは一体‥‥」

 

「…我らが神、偉大なる創生主に

 最も近しき御方のお一人ですよ

 

 お爺様」

 

アドゥルもまた、ナギサのオーラにあてられて

その場から動けぬものの、それでも何とか口を開いていく

 

「神だと‥‥

 

 まさかティオ、お主!」

 

「お爺様、少なくとも妾はお爺様が思っているようなことにはなっておりません

 

 しかし、まあ、お爺様の理想から離れてしまう事には変わりませぬが‥‥」

 

アドゥルは、ティオがエヒトの手に堕ちたと考えたが

それを察してティオは、それは違うと否定していった

 

「ティオ‥‥」

 

「お爺様、妾は確かに貴方の理想を信じ

 父上も母上もその理想を継ぎ、妾自身もまた

 それが正しい事なのだと信じておりました‥‥

 

 いいえ、今でもそれは正しい事であると理解しております

 

 だが、その理想の果てに我が母も、父も命を落としてしまい

 生き残った妾は、このように歴史の影にへと消え去ってしまった

 

 ある意味、今の我らのこの現状こそが貴方の…我らの理想の果てなのです‥‥」

 

ティオは、歩み寄りながら

ナギサの放つプレッシャーによって

膝をついてしまったアドゥルの前に立つ

 

「ティオよ、一体何が言いたいのだ‥‥」

 

「貴方の理想など、もはや何の価値もない者であるという事ですよ‥‥

 

 そもそも、我等がこの場所に身を潜めている事自体

 貴方の理想が、悪心の歪んだ考えに屈したのだという証なのです

 

 力なき理想など、もはや何の価値もないという事‥‥

 

 愚かにも妾は、それを思い知らされたのですよ」

 

ティオは、そういって自身の顔をアドゥルに見せるように屈んでいく

 

アドゥルは、そこに映ったティオの顔を見て絶句する

 

何故なら、それは…

 

「テ、ティオ‥‥!?

 

 何なのだ、その顔は!?」

 

「これこそが、貴方が守ろうとした世界

 そこにいる者達が妾達に下した決断ですよ

 

 もはや、この世界は我等が守るに値せぬ世界になり下がった‥‥

 

 貴方の理想は終わるのです、いいえ

 五百年間前に父上と母上が、人間達によって

 死に追いやられた時点で、我らの理想は終わっていたのです!」

 

ティオの顔は、右目が抉られ左目も痛々しい

あの時に受けた、拷問によってゆがめられた顔が映っていた

 

余りの凄惨な光景に、アドゥルだけでなく

その近くにいた年配の龍人族たちも、表情を引きつらせていく

 

それでも

 

「それでも、それでも我らは我らの誇りをもって

 来るべき闘いに備えなくてはならない、悪神を討ち

 

 この世界をもとの、あるべき姿に‥‥ぐう!?」

 

「お爺様!

 

 貴方の言う、龍人族の誇りなど

 所詮は弱者が抱く理想によって生じた

 

 幻想でしかないのですよ!」

 

ティオは、アドゥルの首を絞め上げると

何とその状態のまま、ゆっくりと立ち上がっていった

 

「ティオ、お主は‥‥」

 

「貴方の時代はもう終わった‥‥

 

 これからは、あのお方の時代なのですよ!」

 

そう言うと、アドゥルの首を絞め上げているティオの右手が

段々と形を変えていく、それを見てアドゥルは表情を引きつらせ

 

「ティオおおおぉ!!!!」

 

堕ちてしまった孫娘の名前を

哀しみの込めた断末魔を上げながら

 

ティオの右手が変化した巨大な龍の頭部によって

噛み潰されてしまい、辺りに血しぶきが雨のように降りそそいでいき

 

「あ‥‥ああああ‥‥」

 

「そんな‥‥アドゥル様‥‥」

 

それが、その場にいる龍人族の者達にかかっていった

 

「姫様…」

 

ヴェンリは、ティオの方をおそるおそる見つめる

 

そのティオは、アドゥルの地を浴びて

動揺を隠せない、一族をの間を歩いていく

 

ナギサの後について行くようにして歩いていく

 

やがて、一団の前に立つとナギサは

龍人族の方へと勢いよく振り向いていくと

 

「何を俯いている‥‥立て…

 

 立ちあがあらないというのなら

 ここで貴方達を、消し炭にする!」

 

ナギサの怒号と共に、龍人族達は一斉に彼女の方を向く

 

「‥‥龍人族、貴方達は確かに

 この世界を守る者として、戦った…

 

 でも、貴方達の王であるティオのお父さんが亡くなり

 貴方達でも気が付かないうちに及び腰になって、そのせいで

 貴方達は、五百年間もこんなところでくすぶり続けていた

 

 貴方達の族長である、ティオの祖父はその時ではないと

 もっともらしい理由を付けて、貴方達をここに縛らせていった…

 

 貴方達の王が討たれたという事実を、歴史の隅に追いやってね

 

 ティオは立ち上がろうとしている、そのせいで彼女は

 人間達の手にかかって、かつての麗しさの形もない姿に変えられた

 

 でも、同時にそれがティオを王、それに連なる者にへと昇華させた!

 

 貴方達は龍人族である前に、戦う戦士なのでしょう!?

 

 それだったら貴方達のやる事は単純、立ち向かう事よ!!

 

 歴史の影から抜け出すために、この殻から抜け出すために何よりも‥‥

 

 生きるために!」

 

ナギサは、訴えていくかのように言うと

龍人族の者達の一部は、彼女達の方を見る

 

「生きていく事に優劣なんてない…

 

 立ち上がっていく事に優劣なんてない…

 

 真実を知り、その上で世界に足掻くという

 その決意とし意志に優劣なんてない、会ってはならない…

 

 あるはずがないのよ!」

 

ナギサの言葉に、龍人族の一部が立ち上がっていく

 

「‥‥この世界の人間は、貴方達よりも神の意志を尊重した

 自分達にはない力を持っているというだけで、貴方達を敵とみなした

 

 もはや、この世界の人間は貴方達の意志は届かないほどにおちぶれた…

 

 そんな人類の為に、世界を害する者と守るもの

 それらを天秤にかけて、彼等は世界を害する方を選んだ…

 

 これが、今の世界よ!」

 

ナギサは言い切っていく

 

それに対して…

 

「もはや、貴方達は完全に世界に見捨てられたと言ってもいい…

 

 貴方達が、本当の意味で自分の意志を貫く手段は

 こんな閉鎖的なところで、いつまでもくすぶっている事じゃない…

 

 例え世界に否定された、守るべきものに裏切られた

 その怒りを、痛みを、苦しみを抱いて戦う事、それしかない!

 

 復讐は何も生み出さない、怒りのままに力を振るうのは獣と同じ…?

 

 その結果が、この有様か!」

 

ナギサは怒号のように、辺りに呼びかける

 

「さあ‥‥今こそ従いなさい…

 

 貴方達の誇りにではなく、貴方達の

 そのうちに秘めている、その思いに!

 

 その思いが決して、偽りでないなら

 私達も貴方達に出来る限りの事をしてあげる…

 

 貴方達が守るべきは、この世界ではない

 この世界が刃を向けていく、貴方達自身…

 

 自分達に迫る脅威は、貴方達自身で払いなさい…

 

 貴方達が今の自分達の在り方を変えたいなら

 そのうえで力を求めるのなら、私達のに、いいえ…

 

 あの人の元に来なさい!」

 

ナギサは言い切る

 

殆どの者は、どうしようかと困惑していく

 

だが、ただ一人、立ち上がって

ナギサのもとにへと歩み寄っていく者がいる

 

それは…

 

「ヴェンリ‥‥!?」

 

ティオの従者である、ヴェンリであった

 

「‥‥姫様、私も姫様の…

 

 貴方の言う、あの人のもとに就かせてください!」

 

ヴェンリは祈願する

 

「‥‥五百年間、私はずっと思っていました…

 

 オルナ様やハルガ様が死に、そのことでティオ様が

 どうして苦しみ続けていかなくてはならないのかと…

 

 それなのに、アドゥル様は今はその時ではないと

 動き出そうとはしませんでした、最初はそれが正しいと思っていました…

 

 ですが違うのだと、姫様のその御顔を見て思い知らされたのです

 

 今こそ、全てをかけて動き出す時であるという事を!

 

 お願いです、私を姫様と共に戦わせていただけませんか!!」

 

「ヴェンリ‥‥」

 

すると…

 

「私にもお願いいたします!

 

 私はもう迷いません、姫様とともに

 貴方や貴方の上にいるお人について行きます!!」

 

「お、俺も!

 

 俺だってずっと、今の俺たちの在り方に

 ずっと不満だった、アンタの言葉を受けて目が覚めた

 

 俺は戦う、アンタやあんたの上にいる人のもとで‥‥

 

 姫様と共に!」

 

ヴェンリに続き、アロイスにリスタス

多くのティオと同年代のもの達が名乗りを上げていった…

 

年配の龍人族たちは、その様子に何も言えなくなった

 

「あ、ああああ…‥」

 

すると…

 

「カル爺よ、もはや我らがここに留まるだけの日々は終わりじゃ

 

 是より我らは、ご主人様の元で新たな世界を築く‥‥

 

 お爺様やお主達の時代は、ここで最期なのじゃ」

 

ティオの言葉とともにカルトゥス達、年配の龍人族の意識は闇に落ちる

 

こうして

 

龍人族たちは、ティオを新たに族長とし

彼女が従うハジメとともに世界に抗う勢力に加わっていくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?

  • 原罪(スルー推奨)
  • 傲慢
  • 虚飾
  • 嫉妬
  • 憤怒
  • 怠惰
  • 憂鬱
  • 暴食
  • 色欲
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