世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
湖畔の街、ウル…
そこに向かって、黒い波を形成するほどの
おびただしい数のマモノが攻め込んで来た
その事態を重く見た、姫奈たちは
自分達の力の全てを出し切ってマモノ達へと挑む
すると、その群れの中に罪徒が生み出す兵士
罪兵…
それらが混じっていることに気が付く
罪兵が指揮することで、マモノ達の大群を統率している
そう考えた一行は、マモノの数を減らしつつ罪兵を倒していく
その甲斐もあって、どうにかマモノの数が減っていき
街に向かって行ったマモノの数もそこに控えている者達
神殿騎士や愛ちゃん護衛隊、冒険者達や自警団
街の防衛にまわったラナや纏でも対応できるほどに抑えられた
だが…
ウルの街に暗雲が立ち込めていく
「っ!」
姫奈は、街の方から異様なまでに
強大な何かを感じ取っていった、それによって
自信がいるここからでも感じ取れるほどに強大で禍々しい
そんな気配の方を感じ取っていった
「この気配‥‥まさか!?」
姫奈は、即座に戦いを中断させて
街の方にへと足を走らせて行った
超化魔法によって、脚力は強化され
星力魔法で、重力を操作してさらにかけていく
聖徒に覚醒したときに会得した、天歩
空を飛ぶようにして駆け抜けていく一行
「罪徒が関わっているとは、思っていたけれど
まさか、直接ウルの町の方に赴いていくなんて…」
姫奈は急いで、街にまで足を走らせて行く
他のところにいる聖徒
白崎 香織…
西宮 風香…
彼女達もまた、急ぎ町の方にへと向かって行く
姫奈も、もちろん他の二人も
自分達以外の二人が向かっていることは疑っていない
ただ、問題はマモノの討伐の為に
ウルの街を離れ過ぎてしまっている事
気配そのものが、街に直接現れた以上は
どんなに急いでも、攻撃の方は間に合わない
それでも、町の人達を一人でも多く救うために
急いで、ウルの町にへと足を走らせて行った
「お願い雫ちゃん、みんな…
どうか‥‥どうか無事でいて…!)」
身体に傷があるせいで思う様に動けない雫
街を守る為に共に戦ってくれているクラスメートや町の人々…
彼等を助けるために急いでいく香織
気配でほかの二人も、街へ急いでいるのが分かる
それでも、不安の方が大きく拭いきれないそれほどの
それほどまでに強大な相手が、街に現れたのである
「(みんな、絶対に待っててよ!)」
自分達の持てる力を駆使して
ウルの街にへと向かって行く三人
三人は、間に合うのだろうか…
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
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… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
そのころ
ウルの街…
そこにいる者達、すなわち
自警団や冒険者たち、もちろん
神殿騎士や愛ちゃん護衛隊の面々が
自分達の目の前に降りたって来た
一人の女性の方に目を向けていた
黒いラインを基調にした白い着物を着て
手に持っている扇で口元を隠している、それは
まさに、昔の日本の昔話に出てくるお姫様の様…
その女性は、しばらくその場にいる全員の方に目を向けていく
そこから覗く顔、長し目はまさに気品を感じられる
だが、多くのものはそんな女性の仕草に見とれてはいない
その場にいる全員が、その女性から漂わせて行く
強大で膨大な威圧感の前に圧倒されているのだから
「あ、あれって…」
「はい、間違いありません‥‥
あの女の人は‥罪徒です!」
園部 優花…
彼女が、傍に居るうさ耳の少女…
ラナ・ハウリア…
彼女に訪ねていく、ラナもこの厖大なまでの気配を感じ取り
降り立ったこの女性が、罪徒であるという事を確信したのだ
それを不意に耳にしていた、他の面々は
聞きなれないながらも、目の前の存在はただ者ではないと感じ取る
その中で、たった一人…
「あ…あああ…」
ウィル・クデタ…
彼だけが、別の意味で体を振るわせていた
もちろん、他の者達の様に目の前の女性から
放たれて行くオーラから放たれる威圧感に圧されている
だが、彼はそれとは別に…
「なんて…醜い、顔なんだ…」
ウィルが、そう呟くとその女性は
ウィルの方にへとゆっくりと近づいていく
「そうか‥‥
お主には、妾の顔がそのように見えるか?」
そういって、その女性は扇をまるで
顔を拭う様にして顔を逸らしていくと
拭った後の右側の顔は、右目をえぐられ
口は引き裂かれたりと、この場にいる全員が
見ていた顔とは全く異なるほどのおぞましいほどに醜悪な顔付きであった
それを見せられて、ウィルは思わずなさけない悲鳴を上げてしまう
「な、なんなんだお前は…」
ウィルは、圧されながらも目の前の女性に訪ねていく
「…我が名は、ティオ・クラルス‥‥
誇り高き龍人族の王、ハルガ・クラルスの娘
今はもはや、その誇りを捨てて新たに生まれり‥‥
龍創と星詠の大君主
ティオ・クラルス‥‥
今はそう名乗っておるわ」
訪ねられた女性
龍創と星詠の大君主
ティオ・クラルス‥‥
彼女はそう名乗っていく
「クラルス‥‥だと!?」
それを聞いて、反応したのは
デビット・ザーラー…
愛子の護衛に当たっている神殿騎士団の団長である
「知ってるの?」
「はい、クラルスとは今から五百年前
エヒト様に刃を向け、世界に仇名さんとした
龍人族の王、その名前はそうだったはずです」
妙子の問いに対して、デビットの副官
チェイス・ドミノがそう答えていった
その時
「黙れええぇ!!!!」
ティオが突然、ドミノに向かって怒号を放つ
その声は当たりを震わせ、その場にいた者達をふっ飛ばした
「きゃ!」
それを受けて、吹っ飛んで行ってしまったのは
一見すると十代と見まごうほどの幼い雰囲気の女性
畑山 愛子…
愛ちゃん護衛隊や神殿騎士たちの護衛対象で
天職、作農師の力を使って農地開拓の旅に出ている
元の世界では姫奈達の通う学校の歴史の教師であった
そんな彼女を受け止めたのは
「先生、大丈夫ですか!?」
「は、はい…
ありがとうございます、北浦さん…」
北浦 纏…
姫奈や香織達との旅に同行している同級生である
余りの勢いに、その場にいる全員が膝をついて行く
「世界に仇名すじゃと?
よくもまあ、そんな事を
ぬけぬけと妾の前で言えたものじゃ!」
ティオの放つオーラ、怒気が
一同の肌を焦がすようにひしひしと蝕んでいく
「お前達、せめて愛子を守るのだ!」
デビットが、他の騎士団に呼び掛けていく
他の面々も、必死にそのオーラに抗わんとしていく
「妾はこの五百年間、こんな下等動物を守るために
歴史の影に潜んで生きてきたというのか、何とも無駄な時間を‥‥
じゃが、もうそんな無駄な時間ももう終わりじゃ
下らぬ聖教も、愚かしい人間族も哀れな魔人族も‥‥
その全てが、このトータスという世界が守られるべき価値などないという事を
もう、嫌というほどに付きつけてくる、我が母も父はそれでもお前達を守ろうと
爪を研ぎ、牙を携えてきたというのに‥‥
まったくもって、腹立たしいわ!」
ティオがさらに、怒気を込めた叫びをあげていく
今度は誰も、飛ばされることはなかったが
それでも、圧倒的すぎるほどの力の差を感じ取った
「それもこれも、我らを裏切り
挙句にはその功績で成り上がった
龍殺侯という者達のせいじゃ
ああ、そいつ等がこの世界でぬくぬくと
悠々自適に過ごしていたのだと想像をするだけでも
はらわたが煮えくり返って行くわ!」
そういって、自分の爪で何と
自身の腹を引き裂いていくと
そこから、罪徒特有の赤と緑の入り混じった斑模様の血が流れ出ていく
「ひぃ!」
それを見た少女
宮崎 奈々…
彼女が思わず顔を背けていった
自警団や冒険者たち、神殿騎士たちはおろか
血を見るなどなれていない愛ちゃん護衛隊は表情を顰めていった
だが…
「妾も父上も母上も、この世界の為に戦おうとしていた‥‥
それなのになぜ、そんな妾達が守るべきもの達から糾弾されねばならなかった
妾達の故郷はまさに、そんな我らの願いを体現した国であったち言うのに、なぜ
その全てが焼き払われなくてはならなかった、その後には一部の者が私腹を肥やし
救われぬものは陽の光を浴びることすらも許されぬ、そんな下らぬ国を屑くために‥‥
母上は惨殺され、父上は命を落とし、妾はあのような仕打ちを受けたというのか!?
こんなもの達の為に、妾はすべてを失ったというのか‥‥」
怒りによって感情がむき出しになっていったのか
それによって涙を流していくティオ、守る者達に裏切られた
その怒りと悲しみが、嫌というほどにひしひしと感じ取っていく
それに対して…
「黙れ!」
デビットが、ティオのオーラに圧されながらも反論していく
「お前の戯言に耳を傾ける義理は、我らにはない!
お前達はエヒト様に刃を向けた、それだけで十分
お前達の存在は許されぬ、かの英雄達に譲渡した勲章は
正当なもの、それを貴様などにとやかく言われる筋合いはないわ!!」
デビットは言い切っていく
しかし、彼のやった事はまさに
火に油を注いでいく事になってしまい…
「…そうじゃな、それはお主の言う通りじゃ
ここから求められるは、力による問答なり‥‥
ならば、もう言葉はいらぬ、お前達人間族が
この世界が妾達に向けて犯した罪、それが贖うに値するか‥‥
試してみる事にしよう!」
ティオは、そういって
自身の右手を突き出していく
それと同時に、その右腕が巨大な龍の頭部になり
それが先ほどに啖呵を切ったデビットの方にへと
まるで首を伸ばしていくかのようにして向かっていく
「ぐあああーーっ!!」
「デビットさん!」
「団長!」
龍の大顎に齧りつけられ、余りの咬合力の前に
激しい悲鳴の方を挙げていくデビット、彼の身体を
覆っている鎧が、バリバリと砕かれテイク音が響いていく
「フン、妾の故郷を滅ぼした神殿騎士が
五百年たって、こんなにも腑抜けておるとは‥‥
まったくもって、腹立たしいわ!」
ティオが、右手の龍の顎を使って
デビットの身体をかみ砕かんとした
その時である
「やあああ!!!」
ティオに向かって、何かが当たる
それは属に言う、投げナイフであった
それを投げつけたのは…
「優花さん、くれぐれも気を付けてください
相手は世界をも塗り替えてしまう力を持った罪徒‥‥
力に目覚めたばかリの優花さんではとてもかないませんよ‥‥」
「わかってる、ごめんラナさん…
私の我がままに付き合わせちゃって…」
優花であった
優花は、身体を震わせながらも
それでもこの場にいる全員を守る為に
強大な力を持つ、ティオに挑まんとする
「ほう‥‥
妾の力に充てられながらも
なおも向かって行くとは、何とも
殊勝な心掛けじゃ、しかしお主は見たところ‥‥
この男とは、そりが合わぬように感じたが
どうしてこんな救う価値のないものを助けた?」
ティオは、優花に問いかけていく
それに対して…
「そうね、はっきり言ってこいつの事は嫌いよ
愛ちゃん先生を懐柔しようとするし仕事は手伝わないし
いっつも偉そうな態度で、おかげで印象も最悪だしね…
でもね、私は嫌いだから、気に入らないから
そんな理由で傷ついてもいいんだって言うそんな考えの方が、嫌い
だから助けた、それだけのことよ」
優花は、答えていく
優花は、かつて自分を助けてくれた同級生の少年
南雲 ハジメに恩を報いることができなかった
彼が冤罪に懸けられたせいで、学校はもちろん
家でも居場所をなくした、そして彼を陥れた者たちの動機
気に入らない…
たったそれだけの理由でその者たちは
ハジメの事を陥れた、優花はそんな彼らの動機を知り
当然ながら、腹を立てた
ある意味、優花がデビットの事を助けたのは
そんな彼らの様に生きたくなかったからという理由
「優花さん…」
愛子は、その様子を見詰めている
「なるほど、確かにそれも選択の一つ‥‥
じゃが、それで妾に挑むのは余りにも力不足‥‥
そうとしか言えぬな」
そういって、その手に扇を持っていく
「そうかもしれない…
それでも、私は私がそうするべきだって
そう思ったことから、絶対に逃げないって…
そう決めたんだ!」
そういって、ナイフを構えていく優花は
それを、ティオに向かって一気に投げつけていった
それに対して
「フン!」
ティオは、そのナイフをなんと
広げた扇の一振りで全ていなしてしまった
「扇でナイフを!?」
ラナはそれを見て、驚きの声をあげる
「あれって、俗に言う鉄扇って奴か!?」
玉井 淳史…
彼がティオの武器が鉄でできた扇だと理解する
「そんなの関係ない
貴方がどんな相手であろうと
私は絶対に諦めたりしないから!」
優花は、そういって駆け出していく
ティオは、それに対して
手に持っている鉄扇の先を優花に向けていく
「よかろう‥‥
ならば、かかってくるがよい!」
そういって、手に持っている扇を開くと
それを勢いよく仰ぐように振るっていった
「きゃあああ!!!」
それを受けていきおいよくふっ飛ばされる優花
「優花」「優花っち!」
それを見て優花の友人が叫ぶ
「優花さん!」
ラナがふっ飛ばされた優花に駈け寄っていく
「っ!
このぐらい…」
優花は、即座に体勢を立て直し
そこから武器を再び手に取っていく
「ほう‥‥
ただの肩慣らしだったとはいえ
妾の一撃を受けて立ち上がるとは
なるほど、それがお主のその右腕に浮かんでいる
聖痕、とやらの力という訳か?」
ティオがそう言うと、優花は身構えていく
「聖徒、というたかのう?
ご主人様より、我等の驚異になりうるものを
ここで始末するようにとも、言われておるんじゃよ!」
そういって、右手を今度は巨大な翼に変化させる
それはまるで、天使を思わせる純白な鳥のような翼である
それをふるうと、その翼から羽根が放たれて行き
それは何と、手裏剣の様にして一気に放たれて行った
優花はそれを、素早い身のこなしでかわしていくが
その際に、ここだとまともに戦えないと理解していく
なぜなら、ここは多くの人々がいるからである
「(さすがにここだと、まともには戦えない…
姫奈達が来るまでの時間稼ぎ、あるいは
私が闘いやすい所にまで、誘い出せれば!)」
優花は、必死に知恵を絞っていく
しかし…
「…ほう、ここではまともに戦えぬと踏んで
ここから移動をしようと言うのじゃな?」
ティオにすぐに、優花の意図を見抜かれてしまう
しかし
「…よかろう、それならばお主の誘い
あえて乗ってやるとしよう、行くぞ!」
ティオは、あえて優花の誘いに乗っていく
優花はそんなティオの行動に驚くも
相手がこちらの誘いに乗ったことには安堵する
そのまま、優花の後を追うティオは
両腕を翼に変えて、優花を追っていく
その様子を見詰めていたほかの面々
「優花っち!」
奈々が優花の後を追おうとするが
それを玉井がその腕を引いて止めていく
「行ったらだめだ!
園部が闘えなくなる!!」
「で、でも
あいつ、すっごく強いよ
優花っち一人でどうにかできるわけ‥」
「それは優花も分かってる!
だからこそ、ここから離れたのよ!!」
妙子がそう言うと、奈々は不意に思い出す
「それにしても、あの女の人…
自分の事、クラルスって言ってたよな」
「ああ、王国にいたころ雑学で学んだっけ
龍人族のクラルス族は、世界を滅ぼそうとしたって…
でも、確かそれを止めた英雄達がいたんだっけ、確か…」
昇と明人の二人が、ティオの言っていた
クラルスという言葉に対して、段々と思い出していく
クラルス族は、今より五百年前に自分達の力に溺れ
エヒトに刃を向けて、世界を滅ぼそうとした龍人族であると
だが、そのクラルス族の王を討った、18人の英雄がいたという
それが…
「龍殺侯…」
そう静かに呟いたのは…
ウィル・クデタ…
彼であった
「世界を滅ぼさんとしたくクラルスの王を打ち取った18人の英雄は
やがて、教会からその功績を称えられて、勲章と特別な爵位を与えられました
それが、龍殺侯…
やがて龍殺侯は、その功績によって多くの伴侶を得て子供を産み
その子供達もまた、それに恥じぬ働きをしていき中には独立した貴族となった者もいます…
うちのように…」
ウィルは、静かに呟いていく
「うち…?
そう言えば、ウィルさんも確か
貴族の家の出身でしたよね、それってつまり…」
「ああ、確かウィルの家は龍殺侯の血を引いている
まあ、直系じゃなく独立した家の出身らしいけれど…」
愛子の問いかけに、ウィルのパーティー仲間が答えていく
「あのティオって言う龍人族は、僕が龍殺侯の血を引いているのを
知っているみたいでした、同時に僕の事を…龍殺侯の事を憎んでいるようでした」
「そういえば、自分の父親は龍殺侯に殺されたって言ってた‥
でも、五百年も前の事だって言うのに‥」
奈々たちの感覚では、五百年前というのは大昔なので
ティオが、あそこまでの憎しみを抱く物なのかと考える
それに対して
「龍人族の寿命は、およそ三千年…
だから、奴らによっては五百年前など
言ってしまえば子供のころの記憶に等しいのでしょう…」
チェイスがそう教えていく
「三千年!?
嘘だろ、確かこの世界の種族の寿命は
人間族が七十年で、魔人族が百二十年くらいなのに」
「だとしたら、恨んでいて当然でしょうね…
事情があったとはいえ子供のころ、両親を殺されたんだし…」
昇が驚き、妙子はティオの心情を察していく
子供のころに両親を殺された、忘れたくても忘れられないであろう
その言葉を聞いて、ウィルは少し考え込んでしまう
「ウィルさん?」
そんなウィルを少し心配そうに見つめていく愛子
「僕はずっと、自分が龍殺侯の血を引いていることが誇りでして
でもいい方を変えてしまえば、それだけしかなかったんです、でも
そんなのは嫌で、でも長男じゃないから家も継げず、だからって功績もない
それだったら、冒険者になって大勢の人たちのためになる事をしよう
そう思って、イルワさんに無茶を言ってゲイルさん達のパーティーにいれてもらいました…」
「ウィル…」
ウィルは思いつめていく様子を見せていく
「でも、あのティオの怒りを間近に受けて思い知太されたんです
僕は、あの人の大切な人の命を奪った奴の子孫なんだって…」
ウィルは、段々と表情に影を落としていく
「あのティオって人の言う事が本当であれ、なんであれ
どんな理由があっても、彼女は自分の家族を殺された…
その気持ちはわかります、僕だってママ…家族がもしも
殺されたりなんてしたら、事情何て関係なく、僕はもしかしたら…」
ウィルは自分の事を思いつめていく
ウィルの遠い先祖が彼女の、ティオの家族の命を奪った
事情がどうあれ、ティオからしてみれば自分の存在は許せないだろう
そんな彼に、優しく声をかけていく者がいた
それは…
「ウィルさん、確かにウィルさんのご先祖様は許されないことをしたと思います…
でも、どんなに考えたとしてもウィルさんのご先祖様の行ったことは消えません
だから大事なのは、ウィルさん自身がこれからどうするべきなのか、私はそう思います」
愛子であった
「愛子殿…」
「私はかつて、二人の教え子を救えませんでした
そんなに取り繕ってくれても、それは変わりません…
でも、いいえだからこそ私は私にできる最大限の事をして行こうと
だからこそ、私は生徒たちを絶対に死なせない、戦わせないために…
私はこの力で、大勢の人たちの事を助けたいって思ったんです…
もう二度と、目の前で苦しんでいる人の手を離さないように」
愛子は言う
「私は私に出来る事をやります
ウィルさんもウィルさんに出来る事をすればいい
そうすれば、これまでの事も無駄にならないと思いますから」
愛子の言葉に、ウィルは自身の剣を持っている手を強く握り締めていく
それと同時に…
「っ!」
「ウィル!?」「ウィル坊!?」
ウィルは駆け出していく、そこは何と
優花がティオを引きつけていった場所
ウィルが何をしようとしているのか
それは誰にも分からないが、これだけは理解できる
今の彼が、そこに言ったらただでは済まない
「ウィルさん!」
「あ、愛子!」「愛ちゃん先生!」
それを理解した、愛子は駆け出し
ウィルの冒険者仲間、神殿騎士に愛ちゃん護衛隊も
ウィルを追って行った愛子を追って行くのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
そのころ
「はあ…はあ…
ここまでくれば…」
優花は、天歩を使ってどうにか
ウルの街から離れたところにまでやって来た
だが
優花の前に、まるで這い上がってくる様に魔物が地面から這い上がって来た
「な、なにこれ…」
余りの光景に、一種の恐怖を抱いていく優花
そこに…
「どうやら、鬼ごっこもここまでじゃな
まあ最も、この程度の位置からでは、町から
さほど離れているわけでもないも同然じゃがのう」
翼に変化させた両腕を元に戻し、左腕にもっている鉄扇を少し広げ
それで口元を隠していく、それは昔の御姫様のような気品のある仕草である
「っ!」
優花は、武器であるナイフを構えて
ティオに向けてゆっくりと身構えていく
「やあ!」
優花は、ティオに向かって投げナイフを仕掛けていくが
ティオはそれを難なく止めていき、ティオはそこから一気に優花と距離を詰めていく
「その程度の攻撃では、妾の鎧を貫くことなど出来んぞ
この力を手にしたと同時に、妾の身体は翡翠並みの硬度に上がっておる
お主の刃では、到底は斬れぬわ!」
そういって、ティオの鉄扇による一撃を
優花はどうにか、聖徒になって強化された
身体能力を駆使して、見事にかわしていった
優花は、体制を整えていくが
そんな優花を、後ろから襲い掛かる者がいた
それは何と、先ほど地面から這い上がって来た魔物である
優花はそれを受けて、何とかして大群を振り払っていった
「さあて、いつまで耐えきれるかのう?」
そういって、左手に持っている鉄扇を振るうと
何と、ティオの身体に外套と龍を模した兜が纏われて行く
それはまるで、魔王のごとし
「姿が変わった!?」
「お主等人間達は、様々な象徴を生き物にしているらしいのう
我等の力たる龍もまた然り、そして妾はその象徴から龍を創り出す‥‥
それが、妾の龍創の力なのじゃ
そして、妾が纏っているこの鎧もまた
その象徴から創り出した龍の力を纏っているのじゃ」
そういって、羽織っている外套を翻し
優花に向かって、ブレスを放っていく
優花は、それを受けて大きくふっ飛ばされ
しかもそこは、大量の魔物の大群のど真ん中
優花は、それに圧されながらもなんとか体制を立て直し
自身に這いよってくる魔物に何とか応戦していった
「やあああ!!!」
優花は、武器であるナイフをふるって
魔物たちに反撃を転じていく、しかし魔物達は
倒されても倒されてもすぐに起き上がっていき
優花に襲いかかっていく
「無駄よ、その魔物達は死んでその場に朽ちた者達
死んでおるから、どんなに攻撃をしても倒すことは出来んぞ」
ティオは、そう言うと右手を翳すと
そこから電撃が放たれて行き、それが
周りの魔物達を巻き込みながら、優花に向けて放たれて行く
「きゃあああ!!!」
優花は、周りの魔物のせいで思う様に動けず
電撃を諸にうけてしまう結果になってしまった
「フフフ‥‥」
ティオは、外套を翻しながら近づいていく
それでも…
「まだよ、こんなところで…
こんなところでやられるわけには」
優花は、電撃を受けたダメージによって
ぼろぼろになって、膝をついてしまいながらも
それでも、必死の思いで立ち上がっていく
「愚か者というのは、身の程をわきまえぬものよ
いかに貴様が我らに対抗する力に目覚めていようと
それ以上の圧倒的な力には文字通り、成す術などないというのに」
ティオは、そういうと自身の右手を優華に向かって突き出していく
その右手には、電気が走って発光している
「ぐう…」
ダメージの影響で、まともに動けない優花
周りは復活魔物の大群、どうしようもない
「これで、終わりよ!」
そういって、右手に電撃を集中させた
その時
「やああああ!!!」
女性の掛け声とともに、電撃がまるで
剣の刀身のようにして、飛ばされてきた
ティオはそれに気づき、外套を翻し
その攻撃を防ぎきって見せていった
「え?」
突然のことに、驚きを隠しきれない優花
そんな優花のもとに駆けつけたのは…
「優花ちゃん、大丈夫!?」
白崎 香織
彼女であった
「香織…」
「大丈夫、すぐに治療するから!」
そういって、香織は優花に
自身が操作する円陣を光に変えて纏わせ
それを優花にまとわせていった
「香織…ごめん…
私…」
「しゃべらないで、もう大丈夫
もうみんなも来てるから」
香織がそう答えていった
それと、ほぼ同時に…
姫奈と風香の二人も到着した
「あんたが、ウルの街に向かって
マモノ達の群れを襲わせた首謀者ね…
その服装、やっぱりあなたは…」
南野 姫奈…
彼女は、問いかけるように言うと
「いかにも、妾はティオ・クラルス…
星詠と龍創の大君主なり
なるほど、おぬしらじゃな
我らが同胞を一人屠り、妾らの
前に立ちふさがっていく者たちというのは‥‥」
ティオはそう答えていった
「この町に来ていたということは
すでに知っていた、同時におぬしらが
ここに来ることもな、どうやら思った通り‥‥
しぶとい連中のようじゃな」
「っ!
どうして、ウルの街を滅ぼそうとするの!」
西宮 風香
彼女は怒りをこらえながらも
ティオにウルを襲った理由を尋ねる
それに対して
「ウルの街は観光地で、おまけに
人間どもの国の稲作業も担っている
そこをつぶしてしまえば、ただでさえ
人間どもは魔人族との戦争で物資がないに等しい‥‥
そうすれば、人間どもに甚大な一撃を加えられるからのう」
「なんでそんなことを…」
香織は、ティオがどうして
そのようなことをするのかと問う
「あいつは…その人間族に家族の命を奪われた…
その復讐のために、あいつは…」
優花が答えていく
しかし…
「復讐、確かにそれもある
じゃが、妾がなそうとしているのは
それだけではない、妾が目指すのは復讐の先…
その先に確かに存在する、我らの理想の世界…
暗黒の楽園、それを築くことにあるのじゃ!」
ティオはそう答えていく
「暗黒の楽園…
ようするに、この世界を
あんたの思い通りに創り変える…
それが、あんたの目的ってわけね!」
「妾の目的ではない、妾達の目標よ
そしてそれを阻み、立ちふさがるというのなら‥‥
聖徒であろうと異世界の勇者であろうと
絶対に邪魔などはさせん、そのために妾は‥‥
ここに来たのじゃからな!」
ティオがそういうと、羽織った外套を翻していき
同時に再び、周りから死んだ魔物たちが這い上がってきた
「何あれ…」
「あいつは、死んだ魔物を蘇らせる力を持ってる…
気を付けて!」
優花は、姫奈と風香に呼び掛けていく
「なるほどね、死んだ魔物を蘇らせる
いわゆる、ネクロマンサーのようなものね」
「それだったら、私が道を開けるよ!」
そういって、聖器である持ち手を銃のように構え
それを使って、周りにいる魔物たちを次々と撃ち抜いていく
「ほう‥‥
変わった武器を使っているのじゃな?」
ティオはそう呟いていく、このトータスには
銃といった火薬を使った武器がないのである
風香が魔物の群れを次々と撃ち抜いていき
ティオへの道を一気に切り開いていくのだった
「群れは私に任せて!
姫奈は罪徒を!!」
「ええ!」
魔物の群れを、風香に任せて
姫奈は天歩、聖徒の歩法で素早く抜き去り
まっすぐに、ティオのもとにへと駆け抜けていく
「やああああ!!!」
姫奈は剣をふるい、それを使って
ティオに切り込んでいった、しかし
「そういえば、お主等には言っていなかったのう
妾はかつては龍神族でな、この体を緋々色の鱗で
覆うことができるのじゃ、さらには罪徒の細胞は
その一つ一つがいかなる武器もはじき返す天然の鎧…
この二つが掛け合わされた、妾の肉体
そう簡単に傷つけられるものではないと知れ!」
そういって、ティオは姫奈の一撃を止めた
その右腕で、姫奈を逆に押し返していった
余りの勢いに一気に押しやられていくも
どうにか体制の方を整えていく姫奈はひるまずに
そのままの勢いで、果敢に挑んでいった
「やあ!」
姫奈の一撃を、右手を使って止める
だが振るわれたのは剣ではなく雷である
「ぬお!?」
「防御に頼りすぎよ!
やあ!」
反対側から、剣の方をふるっていく姫奈
しかし
「悪くはない、いい動きじゃ
しかしあいにくじゃったのう‥‥
どんなに良くても、妾の身体に
傷をつけられんようでは、意味がないであろう?」
ティオの言う通り、姫奈の一撃も
ティオの身体を覆う天然の鎧で止められる
さらに…
「しかし、確かにお主の言うように
受けてばかりでは、どうしようもない‥‥
それであったら、そろそろ妾の方も
手を出させてもらうことにしようではないか
おぬしの言うようにな」
ティオは、そういって
自身の左手に持っている鉄扇を構えていき
それを剣のように持って、構えていく
「さあ、見せてもらうぞ?
わが同胞に食らいついたほどのその力
果たしてそれがどれほどのものなのかを‥‥
この場で見せてもらおうぞ!」
ティオがそう言い切ったと同時に
ティオの姿が姫奈の眼前から消えていった
姫奈は、即座に反応を見せていき
ティオの一撃を見事に止めて見せる
「ほう、わが縮地を見切るか
先ほどのあの小娘よりはやるようだの」
「はあ!」
姫奈は、即座に素早く切り込んでいく
右手に持った剣と左手から剣のように伸びている電撃
ティオはそれらを、鉄扇のみでいなしている
厳密に言うと電撃を避け、剣を流していくというスタイル
「さすがに何度もくらってはいられないでな‥‥
こちらなりに対策させてもらったぞ」
「っ!」
天歩と縮地という、それぞれの歩方によって
互いの攻撃が火花を散らしていき、それによって
激しい衝撃がそのあたりに大きく響いていった
姫奈は持ち前の身体能力があり、それを使って
ティオの素早い剣撃に対抗しきっていく、しかし
「(さすがに一人じゃさばききれない!)」
姫奈も、敵の動きに翻弄され始めていく
その一瞬のスキを突いて、ティオは右手を突き出していく
その右手には電撃がまとわれている
「フン!」
「っ!」
ティオの一撃をかわせず、攻撃のみを防がんとし
武器である剣を使って、その一撃を止めんとした
その時
「っ!」
ティオは、煩わしそうに
自身に向かってきた何かに向かって
迫ってきた光の円陣に向かって右手を向け
それで、回転しながら迫ってきた円陣を止めて見せた
「フン、どうやら伊達に我らに
戦いを挑まんとしているわけではない
そういうわけじゃな」
ティオはそう言って、その金色の瞳を
優花の介抱を行っている香織の方に目を向ける
「風香ちゃん!」
香織が声をあげていった、それと同時に
「くらえ!」
必殺の一撃をティオに向かって放つ
しかし
ティオの身体から、勢いよく広がった何かが
風香の放った必殺の一撃を、難なく止めてしまった
その何かの正体とは
「っ!
翼!?」
ティオの背中からゆっくりと広がっていく
その正体は、蝙蝠の翼、あるいは羽毛包まれた…
それとも魚のひれ…それらを思わせていく三対の翼だ
「やれやれ、妾としたことが迂闊であった
妾という圧倒的な存在を前にしておいて
一人で無謀に向かっていくほど、ここにいる者達は
愚かな存在ではなかった、そういうわけじゃなまったく‥‥」
ティオは、やれやれといった風に
自分の背中から翼をゆっくりと広げていく
「まずい…
来るわ!」
ティオが何を仕掛けようとしているのか
それを察した姫奈は、ほかの面々に呼び掛けていく
姫奈の反応の意味を理解できた風香と香織は
気を引き締めっていくように真剣な表情を浮かべていく
その一方で…
「え?
何?
どういうこと?」
聖徒に覚醒したばかりの優花は
姫奈や、風香、香織の反応の意図をくみ取れず
不安そうな表情を浮かべて、おろおろしていく
「ごめん優花ちゃん…
説明をしていく必要もなさそうだよ」
香織は優花に申し訳なさそうに言うが
表情の方は真剣なものであった、その視線は
背中の三対の翼を広げ切った、ティオの方に向けられていた
そうして…
「見るがよい!
これこそが、世界という名の龍じゃ!!」
ティオがそう言い放っていくと
彼女が広げていった翼から辺りの景色…
正確には世界そのものが創り替わっている
「何…これ…」
優花は、世界そのものが変わっていくその様に
まるで、悪い夢でも見ているのではという感覚に陥る
だが、当然ながら
それは現実である
「ラルヴァ空間…
罪徒の力によって理を変えられた…
世界そのものだよ!」
香織はそう言い切っていく
「アルテナのときもそれなりに
広かったけれども、なにこれ…
こんなにも大規模に世界を変えてしまうなんて」
ハルツィナ大迷宮において、対峙した
アルテナ・ハイピストもまたラルヴァ空間を広げた
その時はその影響が限られた空間の中だったので
広いという感覚はなかった、だが今回のこれは違う
世界という世界そのもので展開された
その空間は、まさに世界そのものであると言ってもいい
それほどまでの膨大で広大な世界が広がっていた
「見るがよい!
これこそが、世界という象徴をもとに
生み出せし龍、すなわち世界そのものである!!
妾がこの五百年の間に抱いた怒り、憎しみ、哀しみ
苦しみに狂気、そこに妾が手に入れたるこのラルヴァの力‥‥
その全てをもって、この世界に妾の全てを思いしらせてくれよう!」
ティオは、笑みを浮かべながら言い放つ
そして…「なんて圧倒的…
これが罪徒の力!?」
優花は、ティオの創造したラルヴァ空間を見渡し
自分たちが挑もうとしている相手がどれほどの相手なのか
それ思い知らされていく
「さあ‥‥
それでは、さっさと初めて
さっさと終わらせようではないか」
まるで、勝ち誇ったかのように言い放つ
姫奈と風香は、それぞれの聖器を手に
ティオという目の前の存在に挑まんとする
「香織…
本当にあんなのと戦うつもり!?」
「もちろんだよ、だって戦わなきゃ
ウルの街も、そこにいる人たちだって
あっという間に滅ぼされちゃう
相手が罪徒なら、なおさらね」
香織はそう言って、手に持っている聖器である本
それを開いて、あるページを破くことでそれを剣にし
それを構えながら、二人のところにへと歩いていく
優花は引き留めようとするが、それを止める者がいた
それは…
「っ!
ラナさん…」
「優花さん、しっかり見届けて下さい
香織さん、いいえ皆さんの戦いを‥‥」
ラナ・ハウリア
彼女はただそういって
優花を守るように前に出ていく
「これほどまでに力の差を見ながらも
なおも挑んでくるとは、見上げた精神‥‥
だが、妾も決して手は抜かぬぞ
お前たちの存在が我らの理想の妨げになるのならばな」
ティオは、自身の右手の銀の爪をまるで武器のように構えていく
「みんな、気づいているわね」
「うん、どうやら敵は
あの罪徒だけじゃないみたいだね…
私たちとこの軍団の総力戦だ」
姫奈の問いに、香織はそう答えていく
それと同時に、空間内の地面の中から
次々と魔物の大群が這い上がってきていた
いいや、よく見ると魔物だけではない
「っ!
よく見ると、人間も交じってる!?」
「なるほど、魔物限定ってわけじゃないのね」
自分たちを囲んでいくほどの集団に
自然と背中合わせの円陣となっていく
「妾の能力は、何も冠のみに刻まれたものだけではない
妾の能力は、このように死んだものを
妾の僕として、使役していくことができるのじゃ」
ティオは、そういって
鉄扇を采配のように振るうと
蘇った者たちはいっせいに姫奈たちに襲い掛かっていく
「三人とも、行けるわね!
ラナさんは優花のフォローお願い!!」
「うん!」
「もちろん!」
姫奈の声に香織と風香が力強く返事をしていく
「っ!」
「優花さん、立ってください
戦わないと、何にも始まりませんよ!」
そう言って、ラナは優花に呼び掛けていく
「…わかった、やってみる」
多少のダメージの後遺症が残っているのか
立ち上がる時に少しぎこちなさが残っている
それでも自分の意志で立ち上がっていく優花
「行くわよ!」
姫奈の声ともにほかの四人も向かっていく
散会して、それぞれで向かってくる
敵の集団の相手の方をしていく、この敵は
一体一体は大したことはない、しかし
「そおらあ!」
ティオの一声で、倒れた矢先から復活していく
「きりがないわね…
それだったら、大本を狙う!」
そう言って、姫奈はティオに向かって
電撃を刀身のようにして伸ばしてそれを
ティオの居る方に向かって、放っていく
「フン!」
ティオはそれを、右手の一振りで払って見せる
「はああああ!!!」
姫奈は剣をふるって、敵の集団を払って道を開き
その先にいる、ティオの方に向かって突っ込んでいく
「なるほど、先の電撃は言うならば
妾への道を示すための印であったということか‥‥
面が白いのう、おぬしは!」
ティオは、そういって左手の鉄扇を構え
切り込んでいった姫奈とぶつかりあっていく
「しかし、妾の力を見せられながらも
一人で挑んでくるというのは、なんとも愚かなもの」
「一人じゃないわよ!」
ティオの言葉に、笑みを浮かべて返していく姫奈
すると、そのティオに向かって
円陣が振るわれて行き、それを腕で防ぐように止めていく
「私だって、まだあきらめたわけじゃないよ!
私には譲れないものがあるの、だから
ここでそう簡単にあきらめるなんてしないよ!!」
香織は言い放っていく
「ほう、二人で向かっていくか‥‥」
「二人でもないよ!」
風香はそう言って、ティオの後ろから
風で生成した弾丸を、ティオの後ろから打ち込んでいく
それを、ティオの背中から伸びている何かが
まるで払っていくかのように、それを相殺した
それは、尾であった
「ああ、知っているとも‥‥
だが、そんな程度では
妾をどうにかすることはできんよ
なぜなら、妾の力はまだまだこんなものではないからのう!」
ティオは、そういって右腕を伸ばしていくと
その伸ばした右腕では羽根に覆われて白い翼に代わる
同時に、左手も黒い蝙蝠のような翼に代わっていく
「創造と破壊、この世界には
このように相反するものが存在する
光と闇、陰と陽、善と悪
それらすべてを一つの象徴とすれば
妾はそれを、形にして行くことはたやすい‥‥
これでも妾の力のほんの一部‥‥
おぬしらはどこまで、耐えきれるかのう?」
両腕の翼と、背中から生えた三対の翼
それらを羽ばたかせて辺りに衝撃を放っていく
「まだ、こんな力を残していたなんて…」
香織は、ティオの姿に少し圧倒される
それでも…
「それでも、逃げるわけには…
いかないよね!」
風香はそう言って、風の銃弾をティオに向かって放つ
ティオは、その攻撃を難なく弾いていき
両腕の翼を勢いよく振るって、辺りを払う
「そんな矮小なる力で
妾を止められると思うな!」
ティオは、そういって
両腕と背中の三対の翼を轟かせ
五人に向かって勢いよく突っ込んでいく
姫奈、香織、風香はそれぞれが異なる方向に跳んでいき
優花はラナに支えられながらも、何とか共に突撃を交わしていく
姫奈が電撃を刀身のように纏めていき
それを伸ばしていくような形で放っていく
香織も、四つの円陣を一つに合わせて放ち
風香も、持ち手を銃のようにして
それを一つに合わせて強力な一撃を放つ
三方向から放たれる強力な一撃
だが
「こそばゆいわ!」
ティオはそう言って、両腕の翼をまるで
武器のようにしてふるっていき、それによる一撃で
三方向にいる姫奈、香織、風香を一気にふっ飛ばしていく
「っ!」
姫奈は、地面を引きずりながらも
体制を保って、どうにか立ち上がる
しかし、香織はふっ飛ばされた先にある
壁に激突して、全身を強く殴打してしまい
地面にうつ伏して、倒れ込んでしまう
「ぐう…」
香織は、急いで治癒能力を自身に施していき
それを使って自身のダメージを治していった
「ほう‥‥
なんとも素晴らしい治癒能力
それも聖徒としての力というわけか
だとすれば、即座に仕留めなくてはならんな」
ティオはそう言って、右手の天使のような翼を構え
そこから羽根を手裏剣のようにして飛ばして香織に仕掛けていく
それを、風香がその手裏剣を吹き飛ばしていく
全部は吹き飛ばしきれなかったものの、そのかいもあって
香織に手裏剣が直接、突きささっていくことはなかった
「ありがとう、風香ちゃん…」
「香織、治癒を続けてて
まだ敵の攻撃は終わってないよ!」
そう言って、右手の持ち手を剣のように変化させると
それを構えて、ティオの方にへと意識を向けていった
「仲間の危機に瀕して向かって、自らの危機を顧みずにくるとは
殊勝な心掛け、しかしそんなものでは妾を止めることなどできんぞ!」
ティオはそう言って、いきなり姿を消していく
罪徒の歩法である、縮地である
「っ!」
風香も、それに気づいて自身達、聖徒の歩法、天歩を使って
ティオの素早さに対抗せんとスピード勝負を繰り広げんとしていく
しかし
「があ!」
風香は即座に地面にたたきつけられる
「風香ちゃん!」
「ぐう…
速い…」
倒れ伏す風香の前に、ティオは姿を現す
「やれやれ、こんな奴にアルテナ嬢は敗れるとは
なんとも情けない話しじゃ、まあ最も、妾の方が‥‥
階級も強さも圧倒的である、それだけのことであろうがな」
ティオは言い切っていく
「なによあいつ…
強いとは思ってたけれど
まさか、ここまでやるなんて…」
「私もです‥‥
確かに私達は、前に罪徒と戦って
倒すことはできましたけれど、あれだって
奇跡のようなものなんです、あんなのはもう…
それでどうにかなるようなものではありませんよ」
優花は、ティオの強さに圧されながらも
それでも、どうにかして向かっていこうとする
ティオから見て、死角の方からであるが
それでもティオは優花に気がついていく
「ほう、随分と勇ましいのじゃな
これだけの力の差を見せ付けられながらも
なおも、妾の方にへと向かってこようとは‥‥」
「…そうね、正直に言うと
私だって怖い、怖いし逃げ出したい…
でも、そんな時だって南雲は逃げずに私を
皆の事を助けてくれた、だから私も絶対に逃げない
私にだって、守りたいものがあるから!」
優花はそう言って、武器である短刀を構えていく
「守りたいものか‥‥
わからんな、そこまでして立ち上がって
守りたいと思うようなものが、この世界にあるのか?」
「ええ、あるわよ!
アイちゃん先生や私の友達
あの町を守ろうと一緒に戦ってくれる…
みんな私の大切な仲間よ!」
優花は言い切っていく
「フン、下らぬ‥‥
妾にとっては無用の代物
そんなものに命を懸けて
おぬしは一体何を得られるというのだ?」
「何かを得られるとか、そんなのじゃない
私にとっては傍にいるだけで、嬉しいと思えるもの
だからこそ失いたくない、あの時に私が失ってしまった
あいつのように…」
優花は、俯かせていた表情をあげていく
「あいつは、損得関係なく
皆の事を守るために戦った…
だったら私も、あいつのように
誰かを守るために立ち上がっていく
それだけよ!」
そう言って、優花はティオに向かって
武器であるナイフを手に向かっていく
優花は、ナイフによる一撃を
ティオに向かってふるっていく
だが、ティオはそれを腕のみで止め
それによって何と、ナイフの方が折れてしまう
「あ…」
それを見て優花は、表情の方をひきつらせていく
「そんな程度の鈍らでは、妾に傷をつけることは不可能じゃ
威勢だけは認めるが、あまりにも力が釣り合っておらぬわ!」
ティオはそう言うと、腕を元の形に戻し
優花の頭部をつかんでいく、すさまじい力で
優花は、頭部を締め上げられ、苦悶の表情を浮かべる
「優花さん!」
ラナは、優花に駈け寄ろうとするが
ティオが振るってきた尾によってうち飛ばされる
「おぬしごときに何ができる?
貴様ら兎ごときに、今の妾
どうにかできるわけがなかろう!」
ティオはラナにそう吐き捨てていく
しかし
「どうにかできるわけない?
そんなのを言い訳して
守りたいものをあきらめるなんて‥‥
そんなこと、それだけは絶対にしたくありません!
確かには私は亜人族の中で最も非力な兎人族です
聖徒としてだって、姫奈さんや香織さん達に比べれば
戦う力だって持っていません、でもそれでも私はもう二度と‥‥
目の前の大切なものをあきらめるなんて、そんなのは嫌です!」
ラナはそう言って、優花の方に駆け出していく
「フン、そんなに死にたいのなら‥‥
望みどおりにしてやるわ!」
そう言って、右手の指から生えた爪を携え
それを使って目の前にやってくるラナを貫かんとした
そこに…
「もういい、やめろ!
やめてくれ!!」
その声とともに、そこに訪れたのは
ウルの街でマモノの軍団と戦っていたはずの
ウィル・クデタ…
彼であった
「ウィルさん!?
どうしてここに!?」
香織や風香、姫奈も驚きの声をあげていく
「クデタ伯爵の三男坊が‥‥
この妾の世界にまで
何をしに来たというのじゃ?」
ティオが、そういってウィルの方を見やる
「もういい…やめてくれ…
私のせいでもう、これ以上
私の周りにいる誰かが傷つき
倒れていくのを、見たくない…」
ウィルはそう言って、前の方に出ていく
ウィル…さん…」
優花も、ウィルの方に目を向けていく
「だから、頼む…
私はどうなってもいい
殺して満足するならばそれでいい…
だから、もうこれ以上ウルの町にも
その人たちにも手を出さないでやってくれ…
この通りだ!」
ウィルはそう言って、地面に座り込んで必死に頭を下げていく
そこに…
「ウィルさん…」
畑山 愛子…
彼女もウィルを追って、ここまでやってきた
それに対し、ティオは…
「ほほう、ただの世間知らずの小僧と思っていたが
どうやら、妾はお主の事を見くびっていたようじゃな」
ウィルの言葉に、感心したかのような言葉を告げていく
その答えは…
「嫌じゃ」
「え…?」
その言葉とともに、ウィルはその身体を
ティオの銀の爪によって貫かれ、持ち上げられる
「…お主を殺せば、満足じゃと?
妾がこの五百年間も抱き続けた
怒り、憎しみ、哀しみ、苦しみ、狂気
そして、これまでに貴様らによって受けた絶望‥‥
貴様一人の命程度で釣り合うわけなかろう!」
そう言って、ウィルの身体をそのまま
乱暴に地面に無造作に投げ捨てていった
「ウィルさん!」
血の海に使ったウィルに急いで駆け寄っていく愛子
しかし
「愛ちゃん先生!?」
まさか、愛子まで来ていたとは予想できず
優花をはじめ、その場にいる全員が驚く様子を見せる
「ウィルさん、しっかりしてください!
ウィルさん!!」
「あ、愛子…殿…」
ウィルに必死に呼びかけていく愛子
しかし、ウィルはティオの銀の爪に貫かれ
彼の周りに血だまりを作るほどに出血している
誰がどう見ても助からない
回復役の香織ですらも、たとえ万全の状態ならともかく
今のような状態では難しいだろう、ましてや今の香織には
ウィルのもとに駆けつけるような余力も残っていない
「どうして…
どうしてこんなことを…
ウィルさんはウィルさんなりに
貴方と向き合おうとしていただけなのに!」
愛子はティオに言う
それに対して、ティオはむしろ怒りをこみ上げさせながら答えていく
「…こんな小僧一人の覚悟と、妾が五百年間も抱き続けた怒りと
人間どもから受けた仕打ちによる絶望が釣り合うとでもいうつもりか?
うぬぼれるでないわ!
貴様らのような虫けらごときの覚悟に、そこまでの価値などないわ!!」
ティオは、そういってウィルなりの精いっぱいの覚悟を吐き捨てていく
そんな程度で自分の怒りは収まらぬと言い放つように…
「そんな‥‥
ウィルさんの思いを、あの町を
そこに住まう人達を守ろうとした覚悟を‥‥
そんなふうに!」
ラナは、余りの出来事に怒りを込めていく
「そんなふうじゃと!?
それでは、妾や父上、母上が
この世界をそこに住まう者を守ろうとした
その覚悟を、思いを、それらをこやつらはどうした?
これが、そんな妾達に対しての守られた者たちの答えじゃ!」
そう言って、ティオは自身の顔をぬぐう様に顔を手で覆っていく
そこに映ったのは…
右目はえぐられ、左目は瞼を咲かれ
口も、もはや原型をとどめていないほど
それまでにずたずたになってしまっている
あまりにも凄惨なその風貌に
その場にいる誰もが言葉を失う
「…この傷は、この地に妾が足を踏み入れた際に
この世界の人間どもによってつけられたもの‥‥
妾のこの顔、いいやこの姿そのものが、妾の仮面じゃ‥‥
この対価が、こんな小僧一人の覚悟と対等じゃと?
うぬぼれるでないわ、貴様や貴様の家族
この世界にいる人間たち全員の首を並べたとしても‥‥
割に合わぬわ!」
ティオの激しい怒りが放たれる
それによって、その場にいる全員が言葉を失っていく
その中でも…
「…それでも、たとえ
貴方の言う通り、割に合わないにしても…
それでもウィルさんの覚悟を踏みにじって
ましてや、その命を奪っていいことにはなりません!」
愛子は臆することなく対抗していく
「…大口をたたくな小娘!
何もできぬくせに大口をたたくな
弱者が何をぬかそうとも、そんなものは
取るに足らぬ、ただの戯言にしかならぬ
妾の行いを否定したいというのなら
それだけの力を、ここで見せるがいい!」
ティオは、そういって右手をかざしていくと
その右手は巨大な龍」の頭部となっていき、それは
愛子の方にへと牙を向けて、彼女をかみ砕かんとする
「先生!」
姫奈は、愛子に呼び掛けていく
「愛子殿…逃げて…ください…
私は…もう…」
ウィルが愛子に逃げるように言う
自身の身体が冷たくなっていくのを感じて
せめて、愛子だけでもと必死に呼びかけて行く
だが、それでも愛子はその場を離れず逃げ出そうとしない
「嫌です…
確かに私は何もできなかった…
目の前で苦しんでいる彼を
炎の中に消えていった彼とあの子の事も…
すぐ近くで助けられたかもしれないのに
私は何にもできなかった、でもそんな私の事を
支えて、共に頑張っていこうと声をかけてくれた
そんな人たちもいました、だからこそ私はそんな人たちの…
目の前で苦しんでいる人たちの支えになってあげたい!
私はそのために、ここまで来たんです!!」
愛子はそう言って立ち上がっていき
ティオの前に立ちはだかっていった
「先生…」
香織は、そんな愛子の様子に目を向けて行く
彼女だけではない、姫奈も風香も、優花もラナも
そんな愛子の行動に不思議と目を向けていった
「往生際が悪いのう‥‥
まあ、生き恥をさらしていくよりは
まだ美しいといえるか、まあなんにせよ
この妾の前では、結末は変わりはしないがの」
そう言って、右腕の龍の頭部を向かわせようとした
すると
「うん?」
ティオは不意に、空を見上げる
「…なんじゃ、これは‥‥
星の動きが変わった‥‥
これはどういう‥‥?」
ティオは不意に、愛子の方に目を向けていく
「私には、正直に言って何の力もありません
貴方と戦う力からなんてもっともです、でも…
誰かが目の前で苦しんでいるなら
何も聞かずに私は手を伸ばします!
私はそんな人たちの光に…
大地に暖かさを与え、命をはぐくむ太陽
そこにいる人たちに希望という光を与えられる…
私は、そうでありたいんです!」
愛子はそう言って、ティオの前に立ちふさがっていった
その時である
愛子の右手に何かが浮かび上がり
そこから、光が放たれていくのであった
「ぬお!?」
ティオは思わず、光に顔を顔をそむける
「これは…
まさか!?」
姫奈は何かを察していく
それは…
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
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原罪(スルー推奨)
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傲慢
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虚飾
-
嫉妬
-
憤怒
-
怠惰
-
憂鬱
-
暴食
-
色欲