世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
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畑山 愛子
彼女はある田舎の農家に生まれ
両親の手伝いで、稲作に励んでいた
そんなさなかで、愛子はある時
地元の友人の相談に乗ってあげたことがあった
それの相談によって、その友人から
感謝の言葉を受けた彼女は、自分は誰か
人の役に立てるようなことをしてみたい
そう願う様になった
そのことを、幼馴染であった古川 太一に相談した際に
彼から教師を目指してみたらどうだと薦められた、そして
それこそが愛子が教師を目指す事になったきっかけであった
やがて、愛子はその幼馴染や夢を応援してくれる両親の力もあり
ついに彼女は教員免許を取得し、実習生期間を送って正式な教師となる
やがて、彼女はとある高校に赴任になり、そこで愛子は
少しでも生徒の力になれるように威厳のある教師になろうと心がけるが
生徒たちからは、その愛らしい童顔と生徒と変わらぬ背丈から
愛ちゃん先生と呼ばれてしまい、ある意味で生徒から親しまれていくことに
そんなふうに理想とは少し違う形で生徒たちに親しまれる教師になった愛子
やがて愛子は、担任を任されるくらいになるまでになり
少し、教師の仕事が板につくようになったある時に、愛子は
運命の出会いをすることになった、それがとある出来事に巻き込まれることになる
南雲 ハジメ…
彼との出会いであった
彼は入学したとき、つまりは一年の時に
愛子が担当することになったクラスにいた
彼の事を知るきっかけになったのは、彼が
自身の担当する社会科の授業で居眠りをしていたのを
注意したことがきっかけであった、最初は普通に注意をするだけだったが
ハジメは愛子が何度注意しても、居眠りを辞めなかった
というよりも、日を追っていくごとにハジメの表情から
生気が抜けていくような、そんなふうな表情になっていった
さすがにこれは、放っておけなかった愛子は
生活指導室、と言う名の生徒の相談にハジメを呼んで
二人で話をしていくことにすると、彼はどこか観念したように口を開く
実は彼は、物心ついた時から両親の仕事の手伝いをしており
元々、そういった分野に興味があった彼は両親の手伝いをしていくうちに
いつしか、両親のような仕事についてみたいと今でも両親の仕事を手伝っている
だが、両親の仕事もすべてが順調にいくわけではない
例えばデスマーチが起これば、当然彼も駆り出されて行き
締め切りが迫れば、腱鞘炎が起こるほどに筆を走らせていく
それゆえに終わるころには、朝日が上り始めていくことになることも
ハジメが居眠りの回数が多いのは、それに追われて
夜遅くまで、両親の仕事を手伝っているからである
それを聞いた、愛子はかつて
自分も教師になりたい目標の為に
周りの応援もあって、念願を果たせたことを思い出す
だからこそ
愛子は、夢のために頑張るのはいいことだけれど
一人で頑張りすぎれば、いずれそれは大きな負担になる
だから、もうやめろとは言わないけれど
自分の体も大切にしていくようにと、愛子なりに
アドバイスをあげていくと、ハジメは愛子にそう言われたことに
驚いた様子を見せた、しかしすぐに笑顔を見せていき、素直に了承
愛子の言葉を受けた影響か、ハジメはまだ
居眠りをすることはあるものの、それでも愛子と
話しをする前よりは、その頻度は少なくなっていった
成績も以前に比べれば、上がってきている
何よりも目覚ましいのは愛子が担当する社会科の成績
愛子は、ハジメの成長を喜び
彼の力になれたことに嬉しさを感じていた
やがて、ハジメの元にも友人が増えた
とくに一番、ハジメと積極的に交流していたのが
白崎 香織…
彼女であった
ハジメのと積極的に話しかけていく彼女
彼女をきっかけに、多くの交流関係を結べれば
ハジメはきっと人間的にも成長していき、それが
ハジメの叶えたい夢にもつながっていくと愛子は考えた
だが、世界は非情であった
それから、しばらくして愛子の耳に
信じられない知らせが入っていくことになった
それは、何と…
ハジメが女子生徒を襲おうとして
それを止めようとした男子生徒に殴り掛かったという
愛子は信じられなかった、そもそも
ハジメはそう言った乱暴なことをするような
そんな性格ではないし、何よりも彼が夢をかなえる
そのことに前向きに必死に頑張ってきた彼がどうして
愛子はすぐさま、ハジメに事情を聴いていくと
ハジメはおそるおそるながら、事のあらましを話していった
それは、ハジメが放課後において家に帰るために
学校の体育館裏に、差し掛かった際にある男子グループに絡まれた
檜山 大介…
中野 信治…
近藤 礼一…
斎藤 良樹…
この四人である
この四人、特に檜山は香織に入れ込んでおり
ゆえに、彼女にかまってもらえているハジメのことが
気に入らず、それで四人でハジメの事をリンチしようとしていた
そこに通りがかったのが
南野 姫奈…
ハジメとは違うクラスのがクラス委員であり
香織と並んで、男子生徒からの人気が高くさらに
愛子ですらも、他の同僚たちから話を聞くほどまでに
認知をしていたほどの、信頼の厚い女子生徒であった
姫奈は檜山達が何をしようとしているのか理解し
彼らに注意をしてやめるように言うものの、そもそも
檜山達がそう注意されたぐらいで大人しく言うことを
聞いてくれるなら、リンチなんてしようとはしないだろう
むしろ、姫奈の物言いに虫の居所が悪くなった檜山達は
標的を、ハジメから姫奈の方に乗り換えていこうとした
それを即座に止めようと、ハジメは檜山達に立ち向かって
立ち向かっていくとはいっても檜山達を、抑えるだけの事
姫奈は、ハジメに先生達を呼んでくると言って、その場を離れ
ハジメは腕っぷしでは檜山達にはかなわないとわかりながらも抵抗する
だが、そこに一人の男子生徒が通りがかったことで
ハジメの運命が決まってしまう、その男子生徒こそが
天之河 光輝…
成績優秀、運動神経抜群と非の打ち所がなく
そのルックスも相まってクラスメイトからの信頼も厚い
彼はその様子を見て、ハジメと檜山を引き離しつつ仲裁をすると
その彼は何と、一方的にハジメに敵意を向けた表情を向けていくと
まるで、ハジメが仕掛けてたのような口ぶりで言う
ハジメは弁明しようとするも、聞き入れずハジメが悪いと決めつけ
その結果、ハジメが暴力を仕掛けた側になってしまう
しかも、いつの間にか姫奈を襲おうとしていたのは
ハジメであるということにされ、クラスメイトも同級生も
挙句には先生も、何と両親ですらも、ハジメの無実を信じる者がいなくなった
愛子はハジメが、夢の為に頑張ってきたのを
誰よりも理解していた、だからこそこんなことをするはずがない
愛子は、ハジメに絶対に彼の無実を証明して見せると約束する
そのために愛子は、面談の際にハジメの両親から話を聞いていく
しかし、両親は仕事があるから息子のことにかまっている理由はない
むしろ、息子が面倒ごとを起こしたせいで対応が大変になり
ただでさえ忙しいのに、余計に仕事が増えたとハジメを糾弾する
ハジメは、両親の後を継いでいつか二人とおんなじ仕事に付きたいと
その為に彼は両親の手伝いをして、学校の方も頑張っていたのだと語る
しかし、両親の対応は冷淡であった
ー夢を見ているのは子供の証拠
大人が見るのは夢ではなく現実だ
夢だのなんだの言っている時点で
何を言っても、子供のたわごとでしかない
子供のような半端な気持ちで過ごしていたから
こんな騒動を起こした、所詮はその程度だったそれだけの事ー
愛子は、両親の余りの言い分に絶句していた
やがて両親は、帰路に突く際に愛子に忠告と称して
貴方も自分の仕事に責任を持っているなら、子供の理想を
いつまでも持っていないで、仕事の本質を理解するように、と
そう言い残していった
愛子は、ハジメの両親の物言いに打ちのめされていた
ハジメの両親の言うことはもっともなのかもしれない
だが、だからと言ってハジメの努力は決して
生半可なものではないのだということ、それは
彼の頑張りを見て来た、自分が理解している
そんな彼の頑張りを水泡にさせる訳にはいかないと
愛子は、共にハジメの無実を信じてくれるものを探した
だが、生徒の中にも同じ教師の中にも
ハジメの事を助けようという気を起こすものはいなかった
生徒たちは元々、オタク気質であったハジメの事を腫れ物扱いしていて
何よりも、香織にかまわれている彼の事が気に入らないからとむしろこれは
ハジメから、香織を引き離して自分もワンチャン狙いのものが愛子への協力を拒む
ハジメが暴力を振るっていたのを見た、天之河に関しては
もはや愛子の言うことに聞く耳持たずと言った感じであった
南雲は、授業中に居眠りしたり、周りと協調性を持とうとせず
何よりも香織に世話を焼かせてもらっているのにも関わらずに
生活態度を改善しようとしない、だから彼はその報いを受けた
受けるべきなのだと、愛子に有無を言わせずに言い切っていく
教師の中にも、ハジメの無実を証明しようと言うという者はいなかった
愛子のように、ハジメの事情を理解できている教師はおらず
ハジメの事をうわべでしか見ていないものがほとんどであった
多くの教師は、ハジメの事を
不真面目で協調を乱す生徒としかみない
何よりも、教師からの信頼も厚かった姫奈に
不貞を働こうとしたという話が、教師たちのハジメへの不信感を加速させていった
姫奈は成績優秀で運動神経も抜群な優等生、性格も真面目で
教師から絶大な信頼を寄せられている、それがハジメへの糾弾につながった
生徒にも、挙句に教師にもハジメの無実を晴らそうという者はいない
それどころか、ハジメは姫奈を襲おうとしたと誰もが決めつけている
愛子はそれでも、ハジメを助ける為に必死に駆け回っていく
だが、事態が好転することはなかった
もうだめなのかもしれないと、愛子は諦めかけた
その時であった
愛子に話しかける、女子生徒達がいた
園部 優花
菅原 妙子
宮崎 奈々
三人の女子生徒であった
優花はかつて、不良に絡まれて
裏路地に連れ込まれそうになったところを
ハジメに助けてもらった事があったのだ
だからこそ、優花はハジメが
女子生徒を襲うような人ではないと理解していた
優花の友人である奈々や妙子も
その事を優花から聞いており、同時に
ハジメに対しての理解も持っていた
三人はハジメの事件の事を知り、愛子が
ハジメの無実のために動いているのを知り
協力しようと、愛子に声をかけたのだ
愛子は彼女たちの言葉を受けて、感銘を受けた
ハジメの無実を信じてくれる人はいるのだと、だったら
自分のやることは決まっている、絶対にハジメの無実を証明すると
更に優花たちに続いて、香織も協力を求めてきた
実は香織も、ハジメの事件の事を知り
ハジメの無実を晴らそうと動いていたのだ
故に、当事者である檜山から話を聞こうと
放課後の空き教室で集まっている檜山達のもとに行く
そこで檜山達は誰も聞いていないと高をくくっていたのか
げらげらと下品な笑い声をあげながら、ハジメの事を話していた
ーキモオタのくせに、白崎に構われて生意気だー
ーリンチをしようとしたら、南野が邪魔してきて
虫の居所が悪くなったから、思い知らせてやろうとしたのに
それを南雲が邪魔をしたせいで、南野を逃がしてしまったー
ーそんな時にたまたま、不意を突かれて檜山が南雲に突き飛ばされたのを
天之河が通りがかってきたおかげで、南雲を加害者に仕立て上げられたー
ー学校からも、家にも居場所をなくしたって知った時は最高だったー
ハジメが苦しんでいる状況を、まるで
面白おかしく笑いとばしている様子を見せる
香織は理解してしまった、ハジメが無実の罪を着せられたのは…
自分がハジメに、構いすぎてしまったからであると
そもそも香織は性格上、自身の男子生徒からの人気にはかなりの鈍感である
だから、ハジメに積極的に話しかけても特にそれをひけらかせなかった
だが、それがまさかハジメに悪影響を与えていたとは気づきもしなかった
香織はショックのあまりに、家に戻って
部屋の中に引きこんでしまった、両親からの説得にも耳を貸さず
正確には聞いてはいたものの、ショックの方が大きく乾いた返事のみを返していた
自分のせいで大好きな人が傷ついた、香織は余りの事に
両親から学校をやめようという旨の話もするくらいに追い詰められていた
そこで両親は、香織の親友である
八重樫 雫
彼女に相談することにした
雫も香織がそこまで追い詰められていたことを理解し
親友を助ける為に、彼女の部屋にへと向かっていった
そこで雫から、ハジメの今の状況を伝えた
ハジメは姫奈を襲おうとしたと周りに決めつけられ
学校中のみんなや教師からはもちろん、何と彼の両親すらも
ハジメの無実を信じようという者はいないという話を聞かされる
それを聞いて、さらに打ちのめされる香織
しかし
雫は、愛子がハジメの無実を証明するために
必死に動いてくれているのを説明していった
愛子だけではない、優花や彼女の友人たちも
ハジメのために動いているのだということを伝える
雫は香織に問いかけるように言う、本当に香織は
今のままでいいのか、苦しんでいるハジメのために
香織も、香織にできることがあるのではと雫は言う
それを受けて、香織はハジメの
想い人である彼の為にできることをしたい
そこで、ハジメの無実を証明するために
動いてくれている愛子に協力をさせてほしいとお願いする
愛子はもちろん、これを了承し
香織に、雫もハジメの無実の為に奔走する
さらに、愛子のもとに現れたのは
南野 姫奈
ハジメに襲われた被害者として認知されている
件の彼女が愛子たちに協力をさせてほしいと、求めて来た
姫奈は、彼があの時
自分を守るために自分よりも
腕っぷしの強い檜山に臆することなく戦った
そんな彼が、周りの勝手な変形のせいで
いわれのない罪を着せられているこの現状をどうにかしたい
ハジメに助けられたお礼を、彼を助けることで返したいと
愛子たちは大いに喜ぶ、事件の被害者である姫奈が
協力をしてくれるのならば、すぐにでも無実は晴らされる
希望が見えてきた、この場にいる全員がそう思った
だが、現実は残酷だった
愛子は必死に、ハジメの無実を訴え
集めて来た証拠も必死に提示して、愛子は
出来る限りのことをしてきた、しかしそんな彼女らの
奮闘もむなしく、事態は全く好転されなかった
愛子の奮闘によって、学校自体からのおとがめはなかった
しかし、それだけである
ハジメの周りからの評価は、まったくもって変わらなかった
そもそも、周りの生徒や教師はハジメの事を最初っからよく思っていなかった
件の事件は、あくまでそれを浮き彫りにしていっただけに過ぎなかったのである
処罰は受けなかったハジメ、しかし
そんな彼を周りは迎え入れることはなかった
両親はハジメを、まるでいないもののように扱い
仕事の手伝いもさせず、食事も小遣いも用意しなくなった
学校でも実質、学校公認のいじめられっこ状態になり
白昼堂々と多くの同級生や上級生がハジメへの暴力を行う
教師がその場面に直面しても、知らぬ存ぜぬ
挙句にはそのいじめに助力をするようなものもいる
家族からは見放され、学校では
すべての生徒や教師のストレスのはけ口にされていく
それによって、愛子は思い知らされる
処分を免れたところで、そんなもので周りの意志が
人間の思い込みがどうにかなるようなものではないと言う事を
愛子はそれでも、ハジメの味方をしていく
愛子だけでなく、優花や妙子に奈々、香織に雫
姫奈だって、ハジメのために出来ることを続けていった
だが
ハジメの味方よりも、ハジメを貶める側の方が多く
さらにハジメを苛め抜いていく事が日常になってしまい
結局、愛子たちの奮闘は
ただのその場しのぎでしか
意味をなさなくなってしまうのだった
愛子はそれでも、ハジメの味方であろうと
出来る限り、ハジメの為に出来ることをしようとする
だが、その果てに愛子が受けたのは
そのハジメからの拒絶であった
ハジメは、愛子が自分の事を助けてくれようと
していることを、最初は嬉しく感じていた
だが、愛子のやってきたことで逆にハジメは
居場所のない学校に通わされていくと言う地獄
それを繰り返していく事になってしまった事に苦しんでいた
愛子のやってきたことは、結局
ハジメをさらなる地獄に叩きこんでしまう結果になった
ハジメは愛子に言い放った
ーこんなに苦しい思いをして、ここにいるくらいだったら
いっそ退学になって、家を追い出されて一人で生きていく事になった方がましだったー
ハジメは打ちのめされたように言う
同時にハジメは愛子の事を吐き捨てた
ー何にもできないくせに、でしゃばるから
こんなことになったんだ、あんたのような人は…
役立たずだ!ー
愛子はその言葉に打ちのめされた
ー役立たずだ!ー
その一言が、愛子の頭の中で何度も
エコーのように繰り返し響いていった
それから、愛子は教師としての自信を無くし
無気力にただ、言われた仕事をこなしていくだけの
ロボットのように過ごしていた
優花たちから、心配そうに声をかけられるが
愛子はそれにうわのそらであり、心に届くことはなかった
それからしばらくたったある日の昼休み
学校の目立たない一角にある、図書室の中で
ハジメの姿を見つけた、あれからハジメの表情からは
だんだんと、生気が抜け落ちていってしまっていた
そりゃそうである、両親から小遣いも渡されず
更には同級生からカツアゲに合ってしまい、手持ちはない
今の両親がお昼を用意してくれるわけもない
かといって、購買で何かを買うお金もないに等しい
心労がたたって、愛子のサポートのおかげで
せっかく伸びてきた成績も下がっていってしまう
そしてそれが、さらに周りを増長させていくことにもなった
だが、そんな彼にそっけないながらも
手を差し伸べていくものがいた、その人物は
東雲 渚沙
ハジメが図書室に身を寄せるようになって
そんな彼を追い出すこともせずに、ただ本を読んでいるだけの彼女
しかし
愛子はそれを見て、不意に感じる
自分はいい教師でいようとしてしまって焦ってしまい
そのせいで自分は、大事なことを見失ってしまっていた
それが、ハジメの事をしっかりと見ていく事
何よりもただ、傍にいる事
それは何よりも、当たり前であるが
それ故に、忘れてしまっていたのだと
渚沙が、ハジメの事を気にかけることなく
だからと言って彼の事を邪険に扱うわけでもない
ただただ、傍にいてやる事
愛子は、どうにかしてハジメの無実を証明しようと
奔走していたが、その肝心のハジメの事を見失ってしまっていた
愛子は改めて、自分のやってきたことが
結果的に空回り気味になってしまっていると理解した
だから、愛子はハジメに過剰に干渉するのではなく
ただ傍でじっと彼の様子を見ていく事にするのだった
担任ではなくなった現在でも、愛子は
ハジメのクラスで社会科を担当している
ハジメの様子を見ながら、彼が少しでも
平穏無事に過ごせるように、今までの様に
過度に干渉するのではなく、教師として
なにより、先生として
生徒であるハジメのために
出来ることをしていこうと決めた
だが、そんな愛子のもとに
愛子どころか誰もが予想だに出来なかった事が起こる
それが、異世界召喚
そうして愛子やハジメを含めたクラスメートたちは
神の使途として、トータスに召喚されてしまった
神の使途として、人間族を守り
人間族を脅かす魔人族と戦ってほしいと
愛子は正直に言って、反対であった
事情がどうであっても、生徒達を戦争に参加させるなんて
到底、容認できることではなかった
だが、愛子の奮闘も空しく
その言葉が受け入れられることはなかった
それどころか、天之河の人間族が困っているなら
自分達は戦おうという姿勢になり、その結果なし崩し的に
戦争に参加させられることになってしまう事になった
愛子は、生徒達が戦争に行くことに苦難を示すが
それをクラスメイト達は気づくことなく、やがて一行は
この世界において、実質的に巨大な権限を持っている
聖教教会、そのおひざ元であるハイリヒ王国に向かう事に
そこでステータス判定を受けることになったが
ここでもハジメの身に不幸が降り注いでいく
何と、ハジメのステータスプレートだけが
なぜだか表紙されないという事態が起こる
さらに、ハジメの周りでなぜだか
魔力による不調が起こっていき、その結果
ハジメはクラスメイトから無碍にされ
王国側からも厄介者扱いされていく事になる
愛子も、そんなハジメの現状を何とかしようとする
しかし
愛子は作農師と呼ばれる、この世界の生産職でも
とても珍しいレアな天職に選ばれたことによって
生徒達と引き離されてしまうことになってしまった
愛子は正直に言うと、不安だった
もしも自分の目が届かなくなったら
ハジメをまたしても苦しめることになるのではと
しかし、優花や他のハジメの味方になっている生徒に任せることにし
自分は、作農師と言う生産職の中でも珍しい天職を持っていることを使って
少しでも生徒たちの立場をよくしようと奮闘していく
やがてそんな折で、生徒達が実戦訓練のために
この世界に存在する七大迷宮の一つ、オルクス大迷宮に向かう事になる
正直に言うと不安であった、何しろ彼らは
戦いなんて経験した事がないのだ、いくらそこが
実戦にお誂え向きであるとはいえ、大丈夫なのかと
そこで、愛子に報告が上がった
オルクス大迷宮の中で、檜山の勝手な行動のせいで
クラスメイト達は、危うく全滅の危機に瀕してしまうも
そこで、ハジメや渚沙たちの奮闘のおかげでどうにか無事に
脱出して、オルクス大迷宮から脱出することに成功したのだ
愛子は、生徒達が危険な目にあったと聞いて
肝が冷えるような思いをしたが、同時に嬉しかった
ステータスや謎の減少のせいで、立場がないと言っても
過言ではなかったハジメの奮闘によって、クラスメイトや騎士団
誰も死者を出さずに、無事に戻ってくることが出来たのだから
これでクラスメイトや教会に王国の関係者も、ハジメへの評価を
改めていく事が出来ると考えて、胸を高鳴らせていくのであった
だが、それ故に愛子は気付けなかった
どうして学校でハジメの無実を証明しても
ハジメの周囲への評価が改められなかったのか
その事を忘れてしまっていたのだ
それが悲劇を引き起こすことになってしまうことになる
やがて、愛子はハジメの容態を心配しつつも
問題のない経過を聞いて、安どの気持ちを持っていた
だが、そんな彼女のもとに届いたのは、とんでもない知らせであった
それは、何とハジメが実は裏で魔人族と手を組み不当な力を得て
更には自分の無力さをかさにして、クラスメイト達を危機に陥れたという
愛子は余りのめちゃくちゃすぎる冤罪に
すぐさま、抗議の為に教会に話をつけようとするが
もう、手遅れであった
ハジメは裏切り者として、そして
渚沙もそんなハジメの事を助けようとして
二人は炎の中にへと消えていってしまうのであった
愛子は打ちのめされるように、地面に膝をついた
今度こそ守ると決めたのに、守れなかった挙句にしなせてしまった
愛子のショックは計り知れなかった
だが
そんな愛子の事を気にかけ、話かけてくれるものがいた
優花達である
彼女は、そのオルクス大迷宮においてトラウムソルジャー
もとい、襲い掛かってきた魔物の攻撃を受けそうになったところを
ハジメに助けられたという、ハジメは自身だけではなく
今まで、自分の事を虐げていったクラスメイト達を守るために
彼は、ベヒモスと呼ばれる強大な魔物を相手に臆することなく立ち向かった
それなのに彼は、その助けたクラスメイト達から見放され
教会が述べた意味不明の冤罪によって理不尽に炎の中に消えていった
だが、ハジメの処刑による影響で
クラスメイト達の殆どは戦う事に対し
恐怖を抱いてしまう者達がほとんど
今のままだと、クラスメイト達は
教会の懐柔によって最悪、無理やり
戦わせていく事に繋がってしまう
それを阻止できるのは、愛子だけだと
ハジメが命を懸けて守ろうとしたもの
それはクラスメイトでも、何でもない
それは、自分自身の意志である
ハジメの意志を守るために
ハジメに救われた命を彼の思いを
つないでいくと、優花は決意を口にする
愛子はそれを聞いて、決意を抱く
ハジメの意志、それがハジメが何よりも守ろうとしたもの
それだったら自分も、自分自身の意志で立ち上がっていこうと決意する
ハジメがそうしたように、愛子もまた
自分がそうするべきだと思うことをしていく
やがて、愛子は戦えなくなった生徒の為に
教会に無理やり戦わせていくような事はしないように直談判する
愛子の必死の訴えもあって、愛子の意見は受け入れられたが
代わりに愛子は、荒廃した土地を耕していくための、いわゆる
農地開拓にでるように言い渡される
愛子は教会が、自身を遠ざけて
自身の意向を届けなくするように仕向けている
しかし現状、自分にできるのは
それに従って出来る限りのことをしていくのみ
そう思って、その話を受けることにする
最初は自身と優花、妙子、奈々の四人だけであったが
そこに更に四人の男子生徒が加わった、その四人とは
相川 昇
玉井 淳史
二村 明人
清水 幸利
男手が増えたことで、農地開拓の仕事は大いに捗ったものの
決してそれは、順調に進んでいっているものとは到底言えなかった
清水の裏切り
大量のマモノの群れ
何よりも…
星詠と龍創の大君主
ティオ・クラルス…
その出来事が、愛子の心を
さらに追い込んでいく事になった
挙句には、愛子の思いは踏みにじられ
ティオには無意味と吐き捨てられ、ついには
守ると約束した青年、ウィル・クデタに致命傷を負わせてしまう
そして…
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
愛子は、白い光の中にいた
愛子はおそるおそる、ゆっくり目を開けていくと
そこには辺り一面を白い光が覆っていた、しかし
不思議とその光は、まぶしいと感じなかった
その光はまるで、自分を暖かく包み込んでくれる
そんな光であった
「ここは、天国…?
いいえ、そんなわけないですよね…
私は結局、だれも何も救えなかったんですから…」
愛子は、そういって自虐気味に言い放つ
すると
ーだったら、貴方は諦めるの?ー
「え?」
愛子の頭に響く様に、声が聞こえた
優しくも親しみやすい柔らかい声である
「‥‥諦めるも何も、私にはもう何にも…」
ーそれじゃあ、貴方は貴方自身がやってきたことは、すべて無駄だって思ってる?ー
声はさらに問いかけていく
「‥‥無駄かどうか、ですか…
でも、私は結局何にもできなかった…
守るべき生徒を守り切れず、挙句には
生徒が道を外していくのにも気付けなかった…
そんな私に、一体何が出来るって言うんですか…?」
哀しみのこもった声で、そう答えていく
それに対して
ーそれじゃあ、みんなはどうして
貴方と一緒についていってくれたの?ー
声はそう問いかけた
「え?」
愛子は顔を見上げていく
ー貴方の後ろを見てみてー
声に言われた通り、愛子は振り返っていく
そこに広がっていたのは…
愛子を信じ、ついてきてくれた生徒や騎士団
ウルの町の人々や、冒険者達の姿であった
「これって…」
ー確かにあなたのやってきたことは
無駄だったのかもしれない、けれども
その全てが無意味だったわけじゃない
だって、ここにいるみんなは貴方の思いを
貴方を信じて、ここまでついてきてくれたんだよ?
それでもあなたは、自分のやってきた事が無意味だって思う?ー
声は愛子に問いかけていく
さらに
「畑山先生」
「愛ちゃん先生」
「「先生」」
「愛ちゃん先生」
「「「「「愛ちゃん先生」」」」」
「「「「愛子」」」」
『『愛子殿』』
『『『『『愛子殿』』』』
姫奈、風香、香織に雫、優花に愛ちゃん護衛隊
騎士団の面々に、ウルの町の人々に冒険者の面々
その全員が、愛子に笑みを浮かべてその名を呼ぶ
「皆さん…」
愛子はそれを見て、不思議と涙を浮かべていく
ーここにいる皆さんが、ここにいるのは
他でもない、あなたの事を信じてここまで来たんです
貴方だからこそ、貴方のやってきたことに意味があったからこそ
彼らはここまでついてきてくれたんですー
声が優しく語りかけていく
すると
「愛子殿…」
そんな一同の中から、一人の青年が前に出ていく
その人物は…
「ウィルさん…」
ウィル・クデタ…
愛子の目の前で、ティオの一撃を受けて
致命傷を受けてしまった青年であった
「愛子殿、愛子殿は決して何もできなかったわけがありません
私のせいで、私の仲間たちが危機にさらされてしまった際に
愛子殿は、そんな私に優しくお声をかけてくださいました
ありきたりな言葉だったかもしれません、ですがそれでも
愛子の思いのこもった励ましは、私の心を支えとなったんです
だからこそ、そんな貴方だから私は貴方の事を支えたい
立ち上がろうと思えたんです、愛子殿は私やウルの皆様の為に
出来る限りの尽力をしてくださいました、私もそうしたかった
でも、その結果私は…
いいえ、だからこそ愛子殿には前を向いていてほしいのです
愛子殿は戦えずとも、出来ることは限られても
それでも前を向きつづけて、私達を導いてほしいのです!
だって愛子殿は私の…私達の希望なのですから!!」
ウィルもまた、愛子に自分なりの言葉をぶつけていく
「私が…皆さんの…」
愛子は不意に自分の手を見る
そこに映ったのは、女性であることを差し引いても
かなりの小さな手、何かをつかんでもそれで何が出来るのか
すると、その手を誰かが掴んだ
その掴んだ相手は…
「愛ちゃん先生」
園部 優花…
トータスに召喚されたクラスメイトの中で
誰よりも、愛子の傍で愛子の事を支えてくれた少女
彼女は優しく語っていく
「…愛ちゃん先生の手は、すっごくあったかい
暖かくって、何かを包み込んでくれるような優しい手…
私や、ここにいるみんなは間違いなく、その愛ちゃん先生の
優しい手に支えられたから、ここまで頑張って来る事が出来た
それは、確かよ」
優花のその言葉に、彼女の後ろにいる
妙子、奈々、淳史、昇、明人の五人が頷く
その後ろで…
ーあんたみたいな人に、もう少し早く会ってたらよかったよ…ー
…不意に誰かがそう呟いたような気がした
「‥‥本当にいいんですか?
私が皆さんの希望であって…」
その言葉に、その場にいる誰もが頷く
「‥‥わかりました、いいえ
本当はわかっていたんです…
私のやっていることは、結局は
ただの私がこうであってほしいという
理想と願望でしかないんだっていう事を…
でも、それでも私は、こんなにも私達の事を
支え続けて下さっている皆さんのためにも、私は…
戦いたい、立ち向かいたい、守ってあげたい…
この気持ちだけは絶対に間違っていないんだって…
私は信じたい、いいえ信じています!」
愛子は、改めて決意を込めた言葉を口にしていく
すると
愛子の後ろから、何やら光が強く輝いていき
愛子もそれに気づいて、その光の方に顔を向けていく
その光は、どこか朝日を受ける植物の葉のように
すくすくと力強く、それでいて誰かを安心させるような
不思議と、その光を見た愛子は、そんな風に感じていく
「素敵な光…
私も、こんな光のように
誰かを優しく照らしていけるでしょうか…」
愛子は静かに呟いていくと
そのつぶやきに対して、声が聞こえる
ーできますよ、今の貴方にならー
「え?」
声は優しく、愛子に応えていく
ーこの光を忘れない限り、貴方はみんなを
この世界にいる人たちの支えになれる
本当の意味で誰かを、何かを守る事の意味を
理解する事が出来た貴方になら、できますよ
この光はまさに、貴方のその思いにこたえた証ー
「これが‥‥私の…?」
愛子は、おそるおそるその光に向かって手を伸ばしていく
すると、その光はより一層強さを、輝きを増していく
「‥‥私にみんなを支える力は悔しいですが、今はありません…
でも、もしもこの光で皆さんを守ることが出来るのなら…
私は教師、いいえ先生、何よりも皆さんを守りたいと願う者として…
私が皆さんの、希望の光になってあげたいです!」
その言葉と共に、光が包み込むように強くなり
愛子の右手の甲に、何やらマークのようなものが浮かぶ
それは姫奈、香織、風香、ラナ、優花と同じだが
色のみは五人とは違う、まるで光に当たった葉の色を思わせる緑色の光である
「私に力を…
皆さんを守り、そして
助けることが出来るだけの力を…
貸してください!」
愛子が叫ぶように言い切ると
彼女の右腕に浮かんだ紋様、聖痕が輝き
その光を、愛子が足元に向かって光を放ち
その光が、愛子の身体を包みこんでいく
灰色を基調とした、まるで巫女を思わせるそれは
露出は控えめだが、動きやすい雰囲気の服装である
さらに聖痕が光り、そこから何やら長いものが浮かび
愛子は無意識にそれを手に持っていくと、それはまさに
ロープ状の鞭になって、愛子はそれを振るって構えていき
愛子は、真剣な表情を浮かべて前の方を見据えていくのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
ところ戻って、現実
やがて光は収まり
そこに現れたのは
灰色を基調とした宮司服を思わせる服に身を包んだ
畑山 愛子…
その人が、そこにいた
「う…ううう…」
ウィルは瞼を揺らしながら、ゆっくりと起き上がっていくと
そこには…
「あれ!?
傷がない!?」
ティオの手によって、貫かれた傷が
まるで最初から付けられていなかったかの如く
完全に全快しており、そのことに驚きを見せるウィル
そうして、不意にウィルは自身の目の前にいる
一人の人物の方に目を向けていく、その人物は…
「愛子…殿…?」
ウィルが呟いたように、その人物は愛子であった
ただ、ウィルの知っている愛子とは服装も雰囲気も違う
愛子の雰囲気はあるのに、どこか誓うそんな感じを覚えていた
「‥‥ウィルさん、ごめんない…
貴方の傍についていてあげたのに
守り切ることが出来ずに、あんなことに…」
愛子のその言葉に、ウィルは慌てて返していく
「そんな、愛子殿が謝ることはありません!
悪いのは私です、私の家、私の先祖が与えた
過ちをただそうとしたのに、あんなことになって…
むしろ、謝るのは私の方で…」
「‥‥いいんです、これは私の独りよがり…
私の意志でそうしたいと思ったんです…
皆さんが守ろうとしたものを私が共に
守っていきたい、これは私自身のわがまま…
私がそうしたいと思って、ここにいるんです!
あの時、何もできなかった私から脱却するために!!」
そう言って、手にもっている藤蔦を模した鞭を振るっていく愛子
すると、愛子の身体から木漏れ日のような温かい光が放たれ
それが、愛子の周りにいる姫奈たちの身体に纏われていった
それによって
「‥‥あれ?
すごい、あんなにボロボロだったのに…
もう動かしていく事が出来るなんて…」
香織は立ち上がりながら言う
「これって、香織とおんなじ?」
「ええ、これはきっと回復よ…
香織の治癒は、肉体を活性させることで
怪我や病気を抑えていく事で治すけれど…
これは、肉体を負傷する前のように
修復して、傷や身体状態を治したのよ」
風香の問いに、姫奈が答えていく
「私が皆さんを守る…
私は皆さんの、希望となるんです!」
愛子はそう宣言するように言い放つ
それに対して…
「バカな、これほどまでに力を持つ聖徒が
よもや目覚めようと言うのか、こんなことが‥‥
こんなことがあっていいというのか、ここまで
異界からの使者が、力に目覚めていくなどとは!?」
星詠と龍創の大君主
ティオ・クラルス…
彼女は、愛子が聖徒に覚醒しただけに飽き足らず
挙句には、強力な回復能力に目覚めた事に驚きを隠せない
しかし…
「…よもやこのような結果になろうとは‥‥
妾の星詠の力も、やはり完全ではないという事か
しかも、これほどまでの厄介な力に目覚めようとは
このまま、ただで帰る訳にもいかなくなってしもうた‥‥
ならば!」
ティオは、腰の帯の部分に差していた扇
武器である鉄扇を手にとって、その先を愛子に向ける
「力がなじみ切るまでに、奴をここで倒すのみ!」
そう言って、ティオは愛子に向かって
縮地を使用して愛子との距離を詰めていく
「そうはいかない!」
そうはさせまいと、優花が向かっていき
ティオに向かって武器であるナイフを投げつける
それを着物を模した服の袖を利用して
右腕のみで、ナイフによる攻撃を防ぐ
「皆さん!」
「ええ!」「「うん!!」」
ラナの力強い声を受けて、姫奈と香織、風香は
それぞれの能力に強化が付属されていくのだった
それを受けて、三人は一斉にティオに向かって仕掛けていく
「こしゃくな!
こんなもので、妾を止められるなどと思い上がるな!!」
ティオは、そういって鉄扇を振るい
同時に伸ばしている尾も鞭のように振るう
三人はそれを巧みにかわし切っていく
「ん!」
風香が、ティオに向かって
聖器である持ち手を銃のように変形させ
そこから、風香の適性である風属性の弾丸を放つ
だが、ティオはそれを翼をまるで
外套のようにしてふるって、打ち消していく
「…そんな程度の強化で倒されるほど
この妾に、そう簡単に攻撃は通らぬ!
妾の力、ここで思い知らせてくれるわ!!」
そう言って、ティオは地面を力強く踏み鳴らすと
ティオを中心に、地割れが広範囲に広がっていく
すると、その地割れから何かが伸びてくる
それは何と、木の根っこであった
地割れから伸びていった、その木の根は
お互いに、お互いを絡ませあっていくと
それは段々と巨大な何かの形を作っていく
それは、何と…
巨大な直立二足歩行の龍であった
身体が木の根で構成されて、そこから
枝や葉などのそれも伸びているのがわかる
その大きさは、大体14メートルほどであろうか
それなりに、大きいくらいのサイズと言えるだろう
「これが、妾の龍創の力よ‥‥
お主等、人間どもは何かを示すための象徴として
何かの動物で置き換えていくという風習があるようじゃのう?
この妾の龍創も、童が抱く何らかの象徴を龍で置き換え
その龍をこうして創造することが出来るのじゃよ、さあ行くがよい‥‥
奇跡の木龍よ!」
ティオがそう言い切っていくと、奇跡の木龍は
そのまま姫奈たちの元、何よりその先のウルの街に向かって進軍する
それを見た姫奈たちは
「みんな!
行くわよ!!」
「「うん!!」」
姫奈と香織、風香は奇跡の木龍に向かって
その進撃を食い止める為に攻撃を仕掛けていく
すると、その奇跡の木龍は口元に
何かを激しく発光させていく、それは…
「っ!
香織!!
風香!!!」
何かに気づいた姫奈は、急いで香織と風香に指示を出す
二人はそれを聞いて、即座にその位置から移動していった
やがて、奇跡の木龍の口から発射されたのは
何と特大の電を彷彿とさせる、強力な一撃である
それによって、周囲の森が一気に焼け野原になる
「(…ふむ、即興に作ったにしては上出来じゃ‥‥
この分ならば、特に時間をかける必要もなかろう
さっそく、首を取らせてもらうぞ!)」
ティオはそう言って、背中から
三対六枚の翼を広げていき、そこから
縮地を使って、一気に向かっていった
ティオが向かったのは…
「っ!」
愛子とウィルがいる、ところであった
「…正直に言うと、驚いておるわ‥‥
まさか、お主がここまでの潜在能力を
秘めておったとはな、あの小僧によって
もたらしたものがよもや、このような結果になろうとは‥‥」
ティオは、改めて武器である鉄扇を構えていく
愛子も、武器である鞭を構え
ウィルを背に、ティオに向かおうとしていく
「ウィルさんには、ウィルさんには手は出させません!
もう二度と、彼が傷つくような事、あってはいけませんから!!」
愛子は言い切っていく
「…驕るなよ、小娘‥‥」
それに大してティオは、怒気と殺気
その両方を込めた威圧を愛子にぶつけていく
五百年以上も、そのうちに抱えていた
怒りと憎しみ、それによる狂気を含んでいるのだ
波のものならばまともに受ければ、立っているのもやっと
現にウィルはその場から動くこともままならない
「っ!」
愛子も聖徒に覚醒した影響か
ティオの威圧を受けて、ひるみはしたが
それでも何とか持ちこたえてみせていった
「…力を手にした程度で粋がるでないわ‥‥
所詮、貴様の今の状態で、童をどうにかすることは出来ん!
ましてや力に目覚めたばかりでなじみ切ってなどおらぬ、貴様が
まともにやり合って、妾の事をどうにかできるとでも思っておるのか!?」
ティオは吐き捨てていく
「私が欲しいのは、相手を倒すための力ではありません…
私はもう、誰かが傷ついていく姿を見るのは
目の前で誰かが傷ついているのに、何もできないのは嫌なんです…
これは、それをさせないための力なんです、だから私は戦う!
それで誰かを救えるのなら!」
そう言って、聖器である藤蔦状の鞭を振るっていく
「それを驕りだと言うておるのじゃ!」
ティオはそう言って、鞭による一撃を鉄扇の一撃で払っていく
「やああああ!!!」
愛子は、再び鞭を振るっていく
ティオはそれを難なく、対応していく
「貴様ごときで、この妾と渡りあおうなどと‥‥
思い上がりも甚だしいわ!
武器を手にした程度で、自分が強くなった気でいるなど
なんとも人間と言うのは浅ましい考えを抱くものかのう!!」
ティオの勢いに押されて、そのまま追い詰められていく愛子
愛子も鞭を振るっていくものの、やはり戦いなれていないのか
使い方自体は問題はないが、扱いなれていない部分もあってか
やはりティオの方に軍配が上がっていく、愛子も、もちろんそれは理解している
それでも
「‥‥それでも私は…
私の守るべきものの為に
出来る限りの事をするのみです!
勝てない、何もできなかったなんて
そんな言い訳を私はしたくはありません!!」
愛子はそう言って、鞭を振るう
変則的な動きがさらに激しさを増していく
それによって…
「ぬ!?」
ティオの身体に鞭が当たる
さすがに罪徒の身体を覆う細胞壁
言うなら天然の鎧を破る事は出来なかったが
それでも一撃を当てることは出来た
「猪口才な‥‥
それならば、妾の力の真髄を見せれくれよう!」
ティオはそう言い切っていくと
自身の足元の影が、そのまま彼女の後方へと延び
更にその影は四方向に延びていき、その先で渦を巻いていく
まるで、影の中で何かが不気味に蠢いているように…
「言ったはずよ
妾の力は、妾の抱く象徴
それを置き換えた龍を創造すると‥‥
そして、その力は決して
衰えも限界もありはせんのだ!
この力を受けて、いかにお主が
矮小なる存在なのであるのかを、思いしれ!!」
そう言って、ティオの影から四体の龍が這い出していき
そのまま首から、上半身から、さらに這い出していこうとする
愛子の方も、目の前の出来事に焦りを覚えていく
なぜなら、ウィルを守りながら戦う事になるからである
「(それでも、私は…)」
愛子は、鞭を構えながら迫りくる四体の龍に面を向けていく
そして、四体の龍はやがて愛子、もとい
愛子の後ろにいるウィルに向かってとびかかっていく
「ウィルさん!
そこを動かないでください!!」
愛子はウィルに言う
「はい!」
ウィルは戸惑いながらも、愛子の言う通りにしていく
愛子は聖器である藤蔦状の鞭を振るって
迫ってくる四体の黒い龍にへと向かっていく
「私の後ろにいる人たちは…
誰にも傷つけさせません!」
愛子はそう言って、飛び上がっていく
その愛子に向かって、四体の龍のうちの一体が
咆哮をあげながら、愛子の事を呑み込まんと一気に迫る
愛子はそれに、臆することなく
聖器である鞭を振るって攻撃する
それによって、龍は上あごの部分が
下あごから下の部分と切り離されていき
そのまま、その場に倒れ込んでいく
そこに続けて、もう一体が爪を振り下ろしていくが
愛子はそれを交わして、腕の上をかけあがっていき
その龍の首をすっ飛ばす
その影から、もう一体の龍が迫っていくが
愛子はそこから、その龍に向かって横薙ぎに龍を払う
そこから、飛び降りる瞬間に
最後の一体を、縦一閃に切り伏せる
「なんと!?
もうここまでに力の扱い方を!?」
「私は先生です、生徒を守り
第一に考えるのが私の務め…
その私が、守るべき生徒に守られてばかりなんて
そんなことは誰よりも、私自身が許せないんです!」
愛子は、そういってティオに向かっていく
「…フン!」
愛子の一撃を、腕のみで止めるティオ
そこから感じる重さに、ティオは
更に驚きの表情を浮かべていった
「…技の切れも上がっておる‥‥
この成長速度、やはりこやつには
ここで一気に始末をつけねばな!」
そう言って、ティオは背中に三対六枚の翼を広げ
そこから、強風を吹かせて愛子をふっ飛ばしていった
「きゃあ!」
愛子はそのままふっ飛ばされるも
その際に、ティオに向かって鞭を振るう
ティオはそれを難なく流しつつ
縮地を使って、愛子との距離を詰めていき
「しまっ!」
「フン!」
ティオは右腕の銀色の爪を展開し
それを使って愛子の左胸を貫かんと試みる
しかし
「うん?」
「え?」
愛子とディオの間に、四つの
光の円陣が展開され、それがティオの
銀の爪による一撃を見事に止めていた
円陣そのものは、貫かれているが
その円陣を動かすことで、止めているのだ
「はあ‥‥はあ…
何とか、間に合った…」
そう言って、右手を突き出した体制で
息を切らしているのは、香織であった
「…フン、思っておったよりも
やりおるようじゃな、お主等‥‥」
「‥‥ええ、思っていたよりも手間取ったけれどね…」
ティオの呟きに答えたのは、姫奈
彼女はそう言いながら、ティオの背後から現れる
「どうやら、お主等‥‥
思っていたよりも、やるようじゃな
我が同胞たるアルテナ嬢を倒したのも
伊達ではない、そう言う事じゃな」
「おほめに預かり、どうも…」
風香がそういって、一行のもとに現れる
「ウィルさん、今のうちにこの場から離れましょう」
「あ、はい…」
この隙にラナによって、その場から離れていくウィル
「フフフ‥‥
どうやら、少し
お主等を見縊っていたようじゃな」
ティオは笑みを浮かべていく
すると
「ならば、見せてやろうではないか
妾がご主人様、あのお方から承った
五百年間の怒り、憎しみ、その狂気‥‥
その結晶によって生まれた、この力を」
そう言って、ティオは自身の武器である鉄扇を開くと
それをゆっくりと舞踊のように振るいながら、構えていく
「もしかしたら…
みんな、気を付けて!」
姫奈が、そういって身構えていく
その声を聴いて、その場にいる
香織や風香、優花に愛子も身構えていく
お互いに一歩も引かない緊迫した状態
人数では姫奈たちの方が上だが
それでも、力そのものはティオの方が圧倒的
今までのは、ティオ自身、姫奈達の事を
見くびって力をセーブさせていただけに過ぎない
ティオの身体から湧き出す、怒気と殺気が
一段と強くなっているのを姫奈たちは感じていた
一瞬の気のゆるみが、生死を分ける
それがまさに、今の状況なのである
ティオは不敵な笑みを崩さない
強者としての圧倒的な余裕だろうか
そんな様子をラナに守られながら
固唾をのんで、その様子を見守るウィル
その時であった
ウィルは不意に、自分の体の異変に気が付く
「…ラナ殿、なんだか暑くありませんか?
それに、妙に喉が渇いてきて…」
「え?」
ラナは、ウィルの言葉を聞いて不意に彼の方を向くと
彼の口元から血がにじんでいく、これは
唇が渇いて切れてしまい、そこから血が滲み出たのだ
「…なんだか…異様に…暑い…」
「ウィルさん!?」
やがて、ウィルは倒れ込んでいき
ラナは慌てて、ウィルの身体を支える
その声が聞こえて、愛子も思わず
ウィルの方に目を向けていった
「ウィルさん!?
何があったんですか!?」
愛子はウィルのもとに駈け寄り
倒れた彼の容態を見ていく、その様子を見て
「脱水症状…!?
そんな、確かに今は快晴ですが
そこまでの気温ではないはずなのに…」
愛子は、ウィルの身に起こった脱水症状を見て
これが普通ではない事を感じ取っていき、他の面々に
声をかけようとしていく愛子だったが、それは叶わなかった
なぜなら空が割れて、そこに勢いよく
太陽の光が差し込んでいったからである
「妾のラルヴァ空間が!?
っ!」
自身の世界が破られた事に驚愕するティオ、だが
彼女はさらに、自身の身体に突き刺さるような威圧感に圧され
更に目を見開いて、驚愕の表情を浮かべていく
ティオだけではない、姫奈も風香も、香織も
威圧感にを感じ、表情をこわばらせていく
一方で優花は、戸惑いの様子を見せていく
「なにこれ…
体中の水分を、一気に
吸い上げられていくような…
この感じ…」
優花は、姫奈達の方を見ると
彼女らは視線を上の方に向けていた
優花もまた、視線の先
上の方を見上げていく
優花は、そこに映った光景を見て息をのんだ
なぜなら、そこに映ったのは真っ黒な太陽
黒点に包まれて黒くなっているというものではない
黒い炎によって生成された、正真正銘の真っ黒な太陽である
快晴だったそれは、その黒い太陽のせいか
夜ともいえるように暗くなっている、正確には
空に広がる青空が、黒くなっていると表現した方がいいかもしれない
何とも異様な光景、暗いのに青空のように
空に浮かぶ黒い太陽がよく見えているというもの
だが、姫奈達が表情をひきつらせている理由はそれではない
その視線の先にある、黒い太陽
その黒い太陽から、こちらに向かって
ゆっくりと降り立っていく、一つの影
その影は、両腕を巨大な漆黒の翼にし
背中にも三対六枚の翼を広げて滑空していき
やがて、その存在は姫奈、風香、香織とティオ
その間に位置し、全員が見られるその場所に降り立った
「な…何よあれ…」
「‥‥動けない…」
優花も愛子も、その人物の放つプレッシャーに圧され
その場から動けずにいた、その人物は龍の頭部を模したフードで素顔を隠している
「…憤情の皇帝陛下‥‥
なぜ、貴方がここに‥‥!?」
そのプレッシャーに飲まれているのは、ティオも同様である
ティオがおずおずと尋ねていくと、その人物はフードに覆われた顔をあげて
そのフードからの鋭い眼光でティオの方を睨みつけていき、口を開いた
「…ティオ、貴方は一体何を遊んでいるの?
たかが、人間の街一つを滅ぼすのに一体
どれだけの時間と手間をかけているのよ!」
その低く怒号にも聞こえる、その声にティオは完全に萎縮していく
「も、申し訳ありませぬ‥‥
ですが、これには事情があって‥‥」
「黙りなさい
もういいわ、貴方は下がってなさい
貴方には後で、彼に報告してもらう事もあるもの…
後始末の方は私がするわ、さっさと消えなさい」
黒いフードの人物にそう言われ、ティオは
委縮しながらしぶしぶその場から下がっていった
黒いフードの人物は、姫奈達の方に目を向けていく
「…あら、誰かと思ったら…
ライセン大迷宮でまとめて消し炭にしてあげたつもりだったけれど
まさか、生き残っていたとは思わなかったわね、それに随分と懐かしい顔もそろっているわね」
目の前の人物は、そう言って一行を見回していく
「…知り合いなの?」
「‥‥ええ、こいつがライセン峡谷を黒い炎で包んだ…
憤怒と激情の皇帝よ」
優花の問いに、姫奈がそう答えていく
それに対して
「それにしても、驚きね
私が貴方達と対峙した時は
聖徒の力に覚醒したのは二人だけのはずなのに…
まさかあれから、二人もその力に目覚めるなんてね
いいえ、もう二人、この場にいるみたい
どうやらよっぽどこの世界は私達を否定するつもりらしいわね…」
そう言って、ゆっくりと一行の元に歩み寄っていく憤情の皇帝
声の感じと服装からして、若い女性であることは理解できる
それ以外は、顔をフードで覆っているので判別できない
わかっているのは、彼女がこちらに敵意を持っている事のみ
「っ!
貴方、何者なの…
どうしてこんなところに…」
優花はまだ及び腰ながらも、それでも何とか
強気の姿勢を崩さないような感じて問いかけていく
それに対して…
「…貴方、バカ?
私がここに来た、理由なんて
それこそ決まっているじゃないの
人間族にとって数少ない観光地であるウルの町を落とすこそ…
そして、そこにいる豊穣の女神と呼ばれている彼女
畑山 愛子を消す事よ」
呆れた様子で返していく憤情の皇帝に対して
愛子はウィルをかばう様にしながら問いかけていく
「どうして私の事を狙うのですか…
私の存在が、ある意味勇者よりも重要だからですか?」
愛子の問いに、憤情の皇帝は間を開けて答えていく
「…そうね、貴方の力は確かに
人類にとって希望になりうる、つまり
そんな貴方をここで殺せば、それだけで
この世界の人間ども、特に教会や神の使徒達…
その全てから希望の光が消えてなくなる、私は
それが見たいから、貴方や貴方が守ろとするもの…
その全てを消したいって思ったのよ…
かつて、私達から全てを奪ったようにね」
憤情の皇帝は、冷たい声色で答えていく
その言葉の節々には、まるで愛子や姫奈達だけでなく
この世界のすべてに対する憎しみの念を抱いているように感じていく
「‥‥貴方達から、すべてを奪った…?
どういうことですか、貴方はもしかして
私達の事を知っているというのですか?」
愛子は恐る恐る訪ねていく。
「…ええ、知っているわ…
だって私は、この世界に来て…
貴方達に殺されたんだもの」
「「「「「「っ!?」」」」」」
憤情の皇帝、彼女の言った
自分達に殺されたという言葉
それを聞いて、思い当たる人物は二人いる
一人は姫奈、風香、香織、優花、愛子が
誰よりも気にかけて救おうとし、救えなかった少年
もう一人は、その少年の誰よりも支え
最後には自分達の目の前で少年とともに炎の中に消えた少女
それを見て、一行は確信していく
「まさか‥‥貴方は!?」
愛子は驚いた様子で尋ねていく
すると
「…何よ、そのあからさまに今思い出したって顔は…
まあそうよね、あんた達にとって私達の存在なんて
その程度の取るに足らない存在でしかないものね、どうせ
私達の事なんてきれいさっぱり忘れていたくせに、よくもまあ
おめおめと農地開拓なんて大それたことをやろうなんて思えたわね…
でも、まあいいわ…どうせあんた達も、そこで倒れている男も
何よりも、あんた達の後ろにある街も何もかもも、全て私が消し飛ばす…
私の今の望みは、それだけよ」
呆れたような、それでいて怒りをぶつけるような声
その様子を見て、誰もが息をのんでいき
同時に目の前の人物が何者なのかも理解する
「…やっぱり、貴方は…」
姫奈は、尋ねるように言う
すると憤情の皇帝は、それに答える代わりに
自身の顔を覆っている龍の頭部を模したフードを取り
素顔を露わにする
それを見た、全員が絶句する
そこに映ったのは…
「久しぶりね、みんな
いいえ、先生と園部さん以外は
しばらくぶりと言うべきかしら?
あえてとっても、嬉しいわ…」
目の色は白目と黒目が反転し
髪の色は赤く、爪も橙色をしている
それ以外の特徴は、まさに
あの時に教会の手によって彼とともに
炎の中にへと消えていった、あの少女
そう…
東雲 渚沙…
その人であった
「そんな…貴方は…!?」
「渚沙ちゃん‥‥渚沙ちゃんなの!?
どうして渚沙ちゃんがここに!?」
姫奈は驚きの余りに言葉が出てこず
香織は少女に、確かめるように話しかける
それに対して…
「東雲 渚沙?
彼女は死んだわ、貴方達に裏切られて
全ての尊厳を踏みにじられて、炎に放られてね
私は。我らが神、偉大なる創生主の怒りから生まれ
その怒りをもたらして、世界を破壊する皇帝の一体…
憤怒と激情の皇帝
ナギサ!
それが私よ!」
そう言って、全身を炎のような
真っ黒なオーラに包み込んでいきつつ
その場にいる全員を見渡していく
「憤怒と…‥激情の…皇帝…!?」
「ナギサ…!?」
オーラから発せられる熱が憤情の皇帝
ナギサの周囲を炎によって包み込んでいく
その熱気は、まるで彼女の周辺にある
全てのものを焼き尽くさんとしていく熱量
何よりもその激しさは彼女の中にある激情
それに呼応していくように、増していくのを感じ取っていった…
「さあ…
私の怒りと激情で、このトータス…
いいえ、世界を全て真っ黒に染め上げてあげるわ!」
ナギサのその言葉と共に、彼女の周りの気候が変わる
その怒りは、世界を破壊する
憤怒と激情の皇帝
ナギサ…
奴が、ついに顕現したのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
多くのモチーフに使われる七つの大罪、皆さんが一番強いと思うのは?
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原罪(スルー推奨)
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傲慢
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虚飾
-
嫉妬
-
憤怒
-
怠惰
-
憂鬱
-
暴食
-
色欲