世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:OOSPH

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captionem Die beste Kreatur

 

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夜が明け、日が昇ってまだ間が立っていない時に

一同は出発の前にある程度の体力をつけておくために

 

朝食を取っておくことになった

 

「…それじゃあ、食事を取ってしばらくしたら

 さっそくオルクス大迷宮に向かうぞ、それまでにしっかり喰っておけ?

 

 ただし、腹八分目にしておけよ、満腹になったら最悪動けなくなるからな」

 

そう言ってクラスメートたちや騎士団の面々に

行き渡る様にしっかりとお膳が運ばれていった

 

ハジメの方にも、もちろん運ばれている

ちなみにこれはお情けではない、彼の事情は

王城の関係者以外に知る由もない事であるため

 

確かにこの宿は王族の関係者が利用しているものだが

宿の関係者は王城関係者ではない一般人であるために事情は知らない

 

故に王城関係者から支給された朝食も他の者と変わらぬ量と見栄えである

 

「‥‥しっかり食べておいた方がいいわよ…?

 

 今までの訓練よりも厳しいものになっていくだろうから…」

 

東雲 渚沙

 

 

彼女はそう言って隣に座っている少年に話しかけていく

 

「…うん、それじゃあ…いただきます」

 

渚沙にすすめられて、ハジメは恐る恐る食事を口にする

 

向こうの世界でも、食事を満足に与えられず

食費も与えられないせいで買ってくることもできない

 

この世界に来てからは王室の方では

他のクラスメートはそれなりに豪勢な食事だったが

 

ハジメの方は他のクラスメートに比べて見ても分かるほどに

質素なうえにで量も殆どいっても過言ではないほどに少なく

 

ハッキリ言って育ち盛りの男子生徒にしては物足りないもの

 

晩餐会の時に出た食事において久しぶりに感じた美味しいという感覚である

 

故に、彼からしてみれば久しぶりに食べるまともな食事である

 

彼は恐る恐る、用意された食事を口にしてみる

 

「っ!」

 

彼は口の中に広がるその感触に

思わず声をあげてしまいそうになるが

久しぶりに感じたそれにすっかり魅了されたハジメは

更に用意された食事を口に運んでいき、お代わりも頼み

 

やがて、食欲のままに用意されてきた食事を口にしていく

果たしてどのくらいの時がたったのかわからないがそれなりに多く食べたくらいに

 

「おい、坊主!?

 

 もうその辺にしておけ、いくら何でも食べすぎだぞ!?」

 

「っ!?」

 

メルド団長に声を掛けられてハッと現実に引き戻された

 

ハジメは改めて、回りの方を見ていく

自分の周りに異様に積み上げられたお皿

 

驚いたように自分の方を見ているクラスメートと騎士団の面々

 

ハジメはそれにも驚いていたが、一番驚いていたのは自分自身

 

クラスメートや騎士団が呆然と

するほどの量を自分でも気が付かずに食べていた

 

何故気が付かなかったのか、その理由は単純である

 

まだ、お腹が減っているから

 

「とにかくもう、食事は終わりだ

 急いで訓練の方に向かうから準備をしておけ」

 

メルドはそう言って半ば強引ながら食事を終わらせていく

 

檜山達に暴行を受けた時に起こった謎の現象に

今回のハジメの異様なまでの食欲、渚沙は次々と

彼の身に起こっている異変に首を傾げていったのだった

 

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オルクス大迷宮

 

全百階層からなると言われている大迷宮

 

この迷宮は魔物が溢れて行き

さらに階層が深くなっていくにつれて

現れていく魔物がより強力になっていくとされている

 

故にこの迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練にとても適しており

実戦訓練にここが選ばれたのも段階を踏んで、訓練を行いやすいと言う事もある

 

故にハジメたちは訓練のみでは

得られない実戦経験をここで担って行こうと試みていく事になった

 

クラスメートたちはそれぞれが持っているプレートを受付に渡していくのだが

 

「…坊主、お前はステータスプレートがないからな

 俺が話をつけておくから、ここで待っていてくれ」

 

メルド・ロギンス

 

 

彼はそう言って、少年に話しかけて

受け付けの方に話を付けて言って行く

 

こうして一人取り残された少年

 

「…魔物がでてくる迷宮だって言うから

 もうちょっと重みのある雰囲気だって思ってたんだけど…」

 

そう言って迷宮の入り口を改めて見渡していくのは

 

南雲 ハジメ

 

 

彼の目に映ったそこに映っているのは博物館を

思わせる入場ゲートに冒険者たちなどに対応する受付

 

更にその付近には露店や出店などが所狭しと並び立っている

 

まるでお祭りのようだと彼は思った

 

「…いろんなお店があるな…

 

 どのお店にあるのも本当に美味しそうだ…」

 

ハジメは鼻腔をくすぐる香しい香りに何故だか惹かれている

朝の異変のとき以来、いまだに収まらぬ飢えのせいでどうしても

その匂いに引き寄せられていってしまうような感覚に陥ってしまう

 

すると

 

「南雲君!」

 

「っ!?」

 

急に手を引かれて意識を現実に引き戻されて行くハジメ

その手を引いた相手は、ハジメが今一番に信頼している人物

 

「東雲さん…」

 

「‥‥まったく、朝あんなに周りが引くくらいに

 たくさん食べたのに、まだ食べるつもりなの?

 

 あなたってそんなに大食いだったっけ?」

 

渚沙は呆れながらハジメに待っているように言うと

露店の方に行っていくつか食べ物を買ってくると、それを

ハジメの方に渡してやる、するとハジメの表情が傍から見ても

分かるほどに、明るく変わっているのが分かり、渚沙は呆れた表情を浮かべる

 

「今回はそれだけね、その代わり

 訓練から戻ってきてもまだお腹が減ってるようなら帰りにも買ってあげるから」

 

「わあ…ありがとう、東雲さん!

 

 それじゃあ、いただきます!!」

 

そう言って渚沙が買って来てくれたものを無我夢中で食べていく

 

「‥‥そんなにお腹減ってたんだ…」

 

それを見ていた渚沙ももはや呆れた様子を隠しきれていないが

それでもしようがないなと受け流せるくらいではある、すると

 

「本当によく食べるんだね、南雲さんって…

 

 やっぱり男の子は食べ盛りの方が生き生きしてるね」

 

そう言って話しかけてくる一人の女子

 

北浦 纏

 

 

渚沙とは小中高と一緒であり、同じく七大天使に数えられている

 

「…あれ?

 

 貴方は確か、北浦さん?

 

 ひょっとして東雲さんに何か用事でも?」

 

「う~ん、ちょっと違うかな?

 

 用事があるのは南雲君の方だよ?」

 

纏はそう言って、ハジメに微笑みながら話しかけていく

 

「え…僕に用事って…

 

 そもそも、僕と北浦さんってそんなに話したことなんて…」

 

「フフフフ、だって渚沙ちゃんが気にかけてる男の子なんだもん

 

 私としても、どうしてもきになっちゃうんだよね~」

 

「‥‥ちょっと、纏…」

 

そう言って纏は渚沙に意味深な視線を向けて

渚沙も物静かながらも困惑した様子を見せていく

 

「それに、南雲さんのお怪我もまだ完治していないでしょ?

 

 それだったら南雲さんの傍に控えていれば問題はないでしょ?

 

「そう言えば、北浦さんの天職って?」

 

「棒術師です

 

 これでも昔は槍を習ってたんですよ?」

 

そう言って自分の持っている

槍型のアーティファクトをくるりと回転させる

 

「渚沙ちゃんもおんなじ所で習っててね

 

 そのよしみで知り合ったの、不愛想で

 周りに誤解されやすいところがあったから

 昔は私が良く、お世話を焼いていたんだけれど…」

 

「‥‥纏…

 

 それ以上言ったら、叩くよ…」

 

「ええ!?

 

 照れ隠しにもほどがあるよ渚沙ちゃん」

 

渚沙と纏のそんなやり取りに

微笑ましそうに渚沙に買ってもらった

出店で売られていた食事を口に運んでいくハジメ

 

すると

 

「おはよう、ハジメ君」

 

白崎 香織

 

 

彼女が不意に話しかけてきた

 

「あ、白崎さん

 

 他のみんなのところに行かなくていいの?」

 

「フフフフ、せっかくだし

 南雲君に挨拶しておこうと思ってね」

 

そう言ってニコニコと嬉しそうに話しかけていく香織

 

そんな香織の元にやってくる三人の女子生徒

 

「香織、挨拶もいいけれども

 プレートの方も受け取ってよね…

 

 もう確認し終わったから

 それぞれが取りに来てくれって言ってたわよ…」

 

そう言って香織に話しかけるのは

 

八重樫 雫

 

 

香織とは親友で彼女の手綱を引いている少女だ

 

「なんだか昔の香織に戻ってきたみたいで安心したわ…

 

 しっかり南雲君とは話を下みたいね…」

 

南野 姫奈

 

 

「ウフフフフフ…

 

 香織ちゃん、本当にうれしそう

 やっと王子様と仲直り出来立って感じかな?」

 

西宮 風香

 

 

この三人と白崎 香織は同じチームである

 

「ち、ちちちちちょっと待って風香ちゃん!

 

 王子様って、た、確かにハジメ君は優しくて強い人だから

 出来ればそういう仲になれればいいなとは思ってはいるけれど…

 

 いざそうやって言われると、その…」

 

香織はしどろもどろになって早口で話しをしていく

 

「やれやれ…っ!?」

 

ハジメは急に何かの感覚を覚える

 

自分に向かっておぞましいほどの

憎悪をを込めた視線を感じ、その方向を見る

 

「(…今の視線は一体…

 

  いやそれよりもさっきの感覚…

 

  人の悪意だけじゃなく

  色んなものが感じられたような…)」

 

ハジメは二つのことが気になっていた

先程感じた悪意を秘めた視線、そしてその際に感じた感覚

 

まるで感覚その物を薄い膜のようにして

広げて伸ばしていったようなそれがどうにも気になったが

 

メルド団長が訓練を始めると呼びかけていったので

ひとまずその疑問に関しての事は保留にすることにしたのだった

 

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そんなこともありながら

オルクス大迷宮に入っていくことになる一同

 

だが、唯一魔法が使えないというより

何故か周りの魔力を阻害させてしまうハジメだが

その範囲は狭いのが救いなので、一同からなるべく

距離を開けていきながら、面々の後をついていく事になり

 

一部の魔法よりも単純な武勇に秀でた騎士団員と

フォローを申し出た渚沙と纏とともに迷宮の中に入っていく

 

「頑張りましょうね」

 

「うん」

 

纏は元気づけるようにハジメに声をかけていき

ハジメもそれにやや不器用ながらも笑顔をつくって返事をしていく

 

やがて暫く歩いていると前の方からメルド団長の声が響いていく

 

「よし、まずは光輝たちが前に出ろ、他はいったん下がれ!

 

 これから交代に出て相手をしてもらうから、準備をしておけ!!」

 

そう言って光輝たちがそれぞれ攻撃を仕掛けていくのだが

どうやら優れたステータスを持っている一同には一階層の敵は

弱すぎるようであり、メルド団長は苦笑いを浮かべつつ声をかけていく

 

「お前たちに一階層の魔物は弱すぎるな…

 

 まあ、今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭においておけよ

 

 明らかに、これはやりすぎだ…」

 

そう言ってボロボロになった魔物の死体をもって注意していく

 

メルド団長の言っている魔石とは、言うならば魔物を魔物たらしめる力の核で

強力な魔物であるほどより良質で大きな魔石を備えており、さらにこの魔石は

魔法陣を作成するための材料にもなり、それなりに値を張ることもあるのである

 

魔法陣はただ描くだけでも発動するが、魔石を粉末状にし、刻み込んだり

塗料として使うなりした場合と比較すると、何とその効果は三分の一にまで減退する

 

要するに普通に書くより魔石を使った魔法陣の力は単純水準でその差は三倍になると言う事だ

 

他にも日常生活用の魔法具には魔石が原動力として使われているため

軍関係だけでなく、普通に暮らしているときにも必要な大変需要の高い品なのである

 

「とまあ…こんな感じで交代に前に出て戦ってもらう

 

 お前たちの戦い方を一通り見て行けそうなら

 今日は二十回層を目指す、まあいつかは65階層を越えてもらうぞ?

 

 歴代最高記録だ」

 

メルドがそう言って一同にそう呼びかけていく

ハジメはなんだか先が思いやられそうだと肩を落としている

 

こうして、階層を進んでいき順調にクラスメイト達は魔物をせん滅していく

 

当然、彼女たちの方も

 

「うむ、雫が前線に出て姫奈と風香が

 それぞれ前方と後方のサポートに回り

 香織がフォローに回っていく、なかなかいい連携だ

 

 ただ、香織…もう少し魔力は温存した方がいい

 使いすぎると余計につかれていって、最悪動けなくなるからな‥‥」

 

一人だけ注意されて少し落ち込み気味になる香織

 

そして、いよいよ纏と渚沙の番になった

 

彼女達の目の前には狼型の魔物の群れが二人を睨みつけていた

 

「‥‥それじゃあ、段取りはわかるわね?」

 

「うん、それじゃあ私が行かせて貰うから」

 

そう言って槍型のアーティファクトを

ぶんぶんと振り回していき、大きく振りかざしていく

 

「炎よ、我の声を聞きて我の力となれ、炎付!」

 

纏がそう言うと彼女が持つ槍のアーティファクトに

炎が勢いよく纏われて行き、それが彼女が攻撃として

ふるって行くと同時に、それらが狼たちに勢いよく放たれる

 

「可哀そうな狼さん、許してくださいね…」

 

纏はそう言って狼たちの頭部を粉砕してとどめを刺す

うごかなくなった狼の死骸から魔石を取り出していく

 

「‥‥纏、すごいと言っておくけれど

 

 敵の方はまだたくさんいるからね!

 

 錬成!!」

 

渚沙がそう言って地面に手を付けると地面が変形し

それによって生じた穴に狼たちははまり込んでしまい

 

そこに渚沙が武器である槍を突き刺していき、とどめを刺していく

 

「ほう…中々に面白い使い方だな

 

 錬成を使って確実に動きを封じ

 余計な体力を使うことなく敵を確実に倒す

 

 実に合理的かつ、自分の短所を補っているな‥‥

 

メルドは素直に、渚沙の合理的だがそれでも

自分の能力の使い方の工夫の仕方を上手く利用した彼女の戦い方を称賛する

 

「すごいね、渚沙ちゃん!

 

 錬成師としての能力をここまでうまく使いこなすなんて…」

 

「‥‥はあ…与えられたカードが決まっている以上

 それで勝負するしかないのよ、私もみんなもただね…」

 

そう言って武器である槍を

肩において、やるせない様子を見せていく渚沙

 

「うむ…それで次は、南雲の坊主なんだが‥‥」

 

そう言って順番で行くなら次である

ハジメの方に不安そうに目を向ける

 

「…取り繕う必要…ないですからね……」

 

少々、上の空気味に言って行くハジメ

 

ハッキリ言ってどうしようもないのだ

なにぶん彼は、檜山達から受けた傷が感知しきれておらず

 

さらには朝から続いている

謎の空腹感と飢餓感のせいで一同についていくのがやっとの状態なのであった

 

騎士団の面々もハジメ自身も、はっきり言って不安しか抱いていない

 

「(…それで、僕の相手は…)」

 

ハジメが相手をするのはさっきまで

渚沙たちが戦っていたのと同じ狼型の魔物だ

 

狼型の魔物はうなり声をあげてハジメの方を見ていく

 

「一応弱らせておくか‥‥

 

 坊主には、身を護れるくらいには

 なってもらわないといけないからな‥‥」

 

そう言って剣を構えようとしていくメルドだが

それよりも早く、狼型の魔物が素早い動きを見せていく

 

「っ!?

 

 しまった!?

 

 身体強化の固有魔法か!?」

 

何と目の前にいた狼型の魔物は

身体強化系の固有魔法の使い手であった

 

メルドはあわてて対処しようとするが

その前に狼型の魔物はハジメに襲いかかっていく

 

「‥‥いけない!」

 

「南雲君!」

 

渚沙はそれを見て慌て、香織が悲痛な叫びをあげていく

しかし、そんなものおかまいなしに魔物は素早くハジメに襲いかからんとした

 

すると、ハジメは不意に騎士団より預けられた剣を構えていき

それで勢いよく向かってきた狼型の魔物の上顎と下顎を分けるように切り裂いた

 

これには渚沙や香織、他のクラスメートはもちろん、騎士団の面々も驚いていた

 

ただ、驚いているのはハジメの方である

だがそれは自分が魔物を倒せたことではなく

いいや正確にはそれに加えて別の事も含まれている

 

「(…あれ…?)」

 

それは、ハジメの身体に起こっている謎の異変に関する事

それを踏まえてハジメは、それに関してある仮説を立てていく

 

「坊主、大丈夫か!?」

 

すると、メルドが慌ててハジメの元に駆け寄っていく

 

「…はい…大丈夫です……?」

 

ハジメは不意に自分のお腹に手を当てていく

メルドはそれを見て、また何か異変でもあったのかと考える

 

「坊主、また何か体に異常でもあるのか?」

 

「…いいえ、異常というかなんというか…

 

 メルド団長、我儘を言うようで

 申し訳ないのですが一つ頼みごとをしてもいいでしょうか?

 

 すこし、確かめてみたいことがあるんです」

 

「確かめてみたいこと‥‥?」

 

すると、ハジメはメルドに有る頼みごとをする

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ハジメがメルドにお願いしたことは

次に魔物の群れが現れたときは自分にやらせてほしいというもの

 

メルド団長は最初は渋ったが、彼なりに何か考えが

あるのだと思い、万が一に備えて騎士団が後方につけるという条件で了承する

 

騎士団の方も万が一の事態に備えて

いつでも、戦闘を行えるように武器を手に取っている

 

殆どのクラスメイト達は‘目立ちたくて出しゃばってるだけだろ’と

嘲笑的な表情を浮かべている、渚沙たちや一部の者は心配そうな様子で見ていた

 

だが、そんな表情などすぐに引っ込んでいってしまった

 

なぜなら目の前には先ほどハジメが真っ二つにしたのと

同じくらいの狼の魔物たちが、まるで仲間の仇を取ると

言わんばかりに始めの方を睨みつけて集まってきていた

 

「坊主、無茶はするな!

 

 危ないと思ったらすぐに引き返せ!!」

 

メルドはハジメにそう呼びかけるが、ハジメはそれに対して

特に何の反応も示すことなく、自身に支給された剣をゆっくりと構えていく

 

「‥‥…」

 

「南雲君…」

 

渚沙は表情こそいつも通りだが、ハジメの方から目を背けていない

香織の方も一人前に出ているハジメの方を心配そうに見つめている

 

しかし、そんな彼女たちの心配をよそに戦闘は突然始まった

 

見えている分の狼型の魔物たちが

一斉にハジメに向かって襲い掛かっていく

 

ハジメは支給された剣を構えると、何と

常人とは思えない素早い動きを見せていく

何と、襲い来る狼たちを切り裂いていった

 

「(何だあの動き…あれはもしや、さっき坊主が討伐した魔物の固有魔法!?)」

 

メルドはそう言って、先程のハジメのすばやい動きは

さっきハジメが討伐していった、魔物の使った固有魔法と同じように感じた

 

すると、最初の方こそぎこちなかったハジメの動きは

魔物を一匹倒していくごとにキレが上がっていくように感じていた

 

「(…すごい…魔物を倒していくたびに

  空腹感がなくなって言ってる…それだけじゃない…

 

  倒していけばいくほど怪我による痛みもひいて

  動きが自分でも信じられないくらいに軽く動いてる…

 

  しかも、身体だけじゃなく…感覚の方も研ぎ澄まされて行っているみたいだ…)」

 

やがて奥の方に控えていた、他の狼たちの群れも一斉に押しかかっていくが

ハジメはそれらがやってくるのが分かっていたかのように、次々と魔物を討伐する

 

ハジメが次々と向かってくる敵を剣一本だけで倒していくその姿を

渚沙はなぜか、向かってくる得物を次々と食らって行く捕食者のように映っていった

 

やがて最後の一匹を地面に勢いよくたたきつけ

その頭部に容赦なく剣を突き立てたことによって、無事にハジメの戦いは終わった

 

「……」

 

しばらくその場に立ち尽くしていたハジメだったが

やがて、線が切れたようにその場にあおむけで倒れこんだ

 

「「南雲君(さん!)!」」

 

纏と香織が慌てて倒れたハジメの元へと駆け付けていき

渚沙も二人のように声には出していないが、心配そうな表情を浮べ

一緒に駆け寄っていき、メルド団長たちも続いて駆け寄っていった

 

「南雲君、大丈夫!?」

 

「…うん、大丈夫…

 

 ちょっと力が入りすぎちゃってね…」

 

心配そうに倒れた自分のことを覗き込んでくる香織に

心配を掛けまいと乾いた笑いをあげながら話しかけていく

 

「まったく…今回は大目に見てやるがあまり無茶なことはするなよ、坊主‥‥

 

 あれほどの群れなんて普通に考えれば命を落としてもおかしくないんだからな」

 

「メルド団長も僕の頼みを聞いていただいてありがとうございます

 

 おかげで僕の中の仮説が一つ実証されましたから…」

 

ハジメは一息つくと、少し怠そうに体を起こしていく

 

「それと、みんなもごめんね…

 

 いろいろ心配かけちゃったみたいで」

 

「‥‥まったくよ、急に倒れるものだから

 てっきり魔物の一撃を受けて怪我でもしたのかと…」

 

「そうだよ南雲君!

 

 南雲君には何でか治癒が施せないんだから

 怪我をしたら、本当に治せないんだからね!!

 

 もう二度と、こんなあぶない事したら駄目だよ!!!」

 

渚沙の口ぶりは冷静ながらも

ハジメのことを心配していたのが感じ取れ

 

香織は涙を浮かべながらハジメに叱りつけるように言う

 

昨日の夜の夢のこともあって

人一倍ハジメへの心配が過剰になっているのだ

 

「う…うん…

 

 ごめん、でもちょっと確かめておきたかったんだよ…

 

 僕の身体に起こっている異変のことについて、ね…」

 

「異変って、朝から感じている飢餓感の事?

 

 それがさっきの戦いとどう結びついていくの?」

 

「そう言えば、坊主…確かめたい事があると言っていたな‥‥?

 

 それと何か関係があるのか?」

 

「…きっかけはさっき、僕に襲いかかった狼型の魔物を

 僕が倒した時に、ほんの少しだけ自分の身体に感じていた

 飢餓感に違和感を覚えたんです、ほんの少しだけれどそれが埋まったように…

 

 そして、今回メルド団長に頼んで

 魔物の群れの相手をさせてもらった時に確証したんです…

 

 僕のこの飢餓感は、魔物を倒すことで満たされていくんだって…」

 

ハジメがそう言って自分のみに起こった異変の変化

魔物との戦いにおいて得た確証を、メルドに説明していく

 

「魔物を倒したことで飢餓感がなくなった?」

 

「それだけではありません、魔物を倒していくたびに

 倒していった魔物の力が僕の中に流れ込んでいくような感じがして…

 

 それだけじゃなくって、どうやら治癒効果もあるみたいで

 この通り体のけがも、痛みの感覚もなくなりました、しかも

 ぼく自身の感覚の方も研ぎ澄まされて行っている様な気がして…

 

 魔物の場所が見えて、魔物の声や音が聞こえて

 魔物の匂いが辿れて、魔物が何処から攻めてくるのか感じられたんです…

 

 闘えば戦うほどに、感覚が研ぎ澄まされて行くように感じられました…」

 

初めからそう言われてメルドは

しばらくふむと顎に手を添えていく

 

「まあ何はともあれ、怪我による問題が

 解決したのなら、よかったに越したことは無いな‥‥

 

 それでは、この訓練の間に坊主のその力の扱い方を極めるように励んでくれ

 

 上手く扱うことが出来れば、戦力としても申し分ないものになるだろうからな

 

 そうすれば教会もお前を戦力として認めて処遇をを改めてくれるかもしれんぞ!」

 

メルド団長は頑張れよと声をかけて、ハジメの肩を強めに叩く

 

ハジメはけがを負っていると言う事が

抜け落ちていたメルド団長はすぐ慌てて謝罪したが

 

「…力の扱い方、か…

 

 いったい僕のこの力は…何なんだろうか…」

 

ハジメは自分の身に起こっている異変と先程の力

其れが一体何なのかが分からずに悶々としているのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「ようし、これで全員終わったな

 

 それではここでいったん休憩にしよう

 ちゃんと魔力回復薬を忘れずに飲んでおけよ

 いよいよ次の階層が20階層だ、そこをクリアしたら

 今日の訓練は終了だ、最後まで気を抜かずに行くようにな」

 

メルド団長の呼びかけに一同はふうと座り込んで

言われた通り魔力回復薬を飲んで一息ついていく

 

クラスメイトは大半は一息入れたり

仲の良いもの達で会話をして言ったりとそれなりに過ごしている

 

一方のハジメの方は他のクラスメートから距離を取った場所で

ひと息ついてその場に座り込み込んだ後に、支給された水を飲んでいた

 

「お疲れ様です、南雲さん」

 

そんな彼に近寄って、声をかけていく二人の女子生徒

 

「お疲れ様、二人共…

 

 それにしてもまさか戦闘では役に立たないって言われてた

 錬成のスキルをあんなふうに工夫して使って行くなんてね

 

 メルド団長が東雲さんの事、そうほめてたよ?」

 

「‥‥私はただ、用意されたカードを使っただけ…

 

 それを言うんだったら、貴方の方だって

 メルド団長があんなにも称賛していたじゃない…

 

 勇者よりも化けるかもしれないって言ってたでしょ…?」

 

「…まあ、それに加えて課題も入れられたけどね…

 

 確かに僕のこの力は傍から見ればすごいのかもしれない…

 

 でも、何だかその分妙な感覚に陥っている様な気がするの…

 

 何というか…外側から何かが見ている様な感覚が…」

 

「外側から、何かが見ている?

 

 それってどういう事でしょう…?」

 

うーん、と考え込む纏、しかし

 

「‥‥それを考えるのは後にしましょう

 

 今やるべきなのは、最後の階層を無事に乗り切る事…

 

 南雲君のその疑問は今は無事に戻ってから考えましょう」

 

「渚沙ちゃん‥‥確かにそうだけど、バッサリしすぎだよ…」

 

「…でも確かにそうだ…

 

 それに、今日を乗り切っても

 それで終わりじゃない、メルド団長が言っていたように

 

 いつかは歴代最高到達点である65階層、ううん

 最下層である100階層にも行ってもらう事になるかも…

 

 だったら、東雲さんの言う通り、今日を乗り切る事だけでも考えよう…

 

 しっかり気合を入れていかないとね」

 

そう言ってふうと漏らす様に息を吐いて気合を入れなおしていくハジメ

 

そう言って目線を前の方に向けていくと

不意に目の前で偶然に香織と目が合った

 

彼女はハジメの方に向かって

嬉しそうに微笑みながら手を振っている

 

ハジメはそれに対して、やや悩んだ様子を見せていくが

今まで突き放してきた分、放って置くわけにもいかないので

回りからは悟られない程度に会釈をして、改めて向きなおっていく

 

「フフフフ…」

 

ハジメが自分に気づいてくれていたことが

嬉しかったのか、想わず嬉しい笑いを漏らしていく香織

当然その様子に他の面々は気づいているものがいるわけで

 

「か~おり、何嬉しそうな顔を浮かべてるのよ?

 

 ひょっとして南雲君に見詰められでもしたのかしら?」

 

雫はからかうような口調でそう言って香織に微笑みかける

 

「もう、何なの雫ちゃん!

 

 私はただ、南雲君がこっちを見てくれたから手を振っただけで…」

 

「はいはい、その反応で分かるわよ…

 

 まったく、こんなどこで魔物が襲いかかって来るのか

 分からないような場所で、ラブコメってるなんて随分と余裕じゃない」

 

「しょうがないよ、一昨日南雲君と仲直りしたんだもん

 

 香織ちゃん、その時のことを

 嬉しそうに雫ちゃんに話してたらしいしね」

 

「そうね、長々と聞かされて大変だったわよ?」

 

香織は顔を赤くして反論するが

さらにそこに姫奈と風香も雫に加わっていったために

 

とうとう香織は、もう、と頬を膨らませて拗ねてしまった

 

そんな様子を呆れた様子で見つめているハジメ

 

「‥‥あれから随分と白崎さんに気にかけられているみたいね…」

 

「そうだね」

 

渚沙はその様子に表情ではわかりにくいが

香織たち四人の様子を面白くなさそうに見つめている

 

「‥‥ねえ、やっぱり渚沙ちゃん…

 

 南雲さんのことが気になってるの?」

 

纏もどこか気になる様子で渚沙に聞いていくと

 

「‥‥別にこのぐらい、普通よ…」

 

「あらららら、拗ねちゃった…」

 

渚沙の突き放すような言い方にやっちゃったと言った

感じながらもどこか笑っている様子で呟く纏であった

 

そんな様子にどこか気まずさを覚えて

苦笑いを浮かべていたハジメは、その時

 

「っ!?」

 

ハジメは不意に何か、重く嫌な感じの気配を感じ

慌てて回りを見回していくと、その気配は霧散していくように消えてしまう

 

「‥‥どうしたの?」

 

「…ううん、なんでもないよ」

 

「そっか‥‥でも何かあったときは遠慮なくいってくださいね…

 

 私たちが南雲さんのサポートをするって決めてるんですから…」

 

そう言って優しい笑顔を浮かべていく纏

 

「そうだね…それじゃあそろそろ休憩も終わるし…

 

 気合を入れていかない…と…ね……?」

 

ハジメはそう言って準備を進めていこうとすると

何故か倦怠感を覚え、思わず壁の方に手をついてしまう

 

「どうかしました?」

 

纏はそんな彼の様子を見て心配そうに声をかける

ハジメは大丈夫だよと声を掛けようとするが、なぜか喋れない

 

いいや、正確には声を掛けようとしても倦怠感がでるのだ

 

「(…何だこれ…異様に体がだるいような……

 

  身体を動かさないといけないのに、動かすことが出来ない…

 

  というより…動かすのが…怠い……)」

 

身体を動かすのが嫌になるほど猛烈な謎の倦怠感のせいで

思うように体を動かしにくくなってしまうハジメを見て、纏と渚沙

二人は嫌な予感を覚え、慌てて怠そうにするハジメの方に駆け寄っていく

 

「‥‥大丈夫…?」

 

「……」

 

渚沙が声をかけてくるも、そのかなりの倦怠感に

口を開いて簡単な受けごたえをすることもままならない

 

自分の事を心配してきてくれた二人の気づかいを感じながらも

とにかく今はさっき渚沙が言ってくれていたように次の階層が最後なのだ

 

これを乗り切って、還ったらゆっくり休もうと

どうにか自分の中にある力を振り絞り、最後の階層に挑んでいくのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ついに今回の最終到達地点である二十階層に到達する一同

 

そこは鍾乳洞のようであり

辺りには氷柱のように飛びだした壁や

溶けたように地形が変形していて、とても

複雑な地形をしており、動きにくい地形であった

 

ハジメも纏と渚沙のフォローもあってどうにか進めているが

先程からなぜか感じている謎の倦怠感のせいで判断力が鈍っている

 

「‥‥南雲君、体の調子はどう?」

 

「…うん…」

 

「少し心配ですね…

 

 メルド団長に言って少し休ませていただくのは?」

 

先の階層の時から続いている謎の倦怠感のせいで

思うような受けごたえができず、二人への返事の方も

だんだんとそっけなくなってきている、それほどにひどくなっているのだ

 

実のところを言うと朝のころから倦怠感自体は感じていたのだ

 

ただ、最初のころは空腹感と飢餓感の方が勝っていたため

それによってどうにか抑えられていたのだが、それが解決すると

抑え込んでいた分、怠さが一気に押し寄せていき、今の状態になったという訳だ

 

ハジメは必死にそのあふれ出てくる倦怠感を抑えながら一同の後についていく

 

すると、前の方からメルドの声が響く

 

「周りをよく見ておけ、擬態しているぞ!」

 

すると、前方でせり出していた壁が突如として動き出し形も色も変わる

二本足で立ちあがると、ゴリラのようになって勢いよくドラミングしていく

 

「ロックマウントだ、怪力だから奴の腕には捕まるなよ!」

 

メルド団長の声が響いていき

光輝たちが前に出て相手を線としていく

ロックマウントが繰り出す一撃を龍太郎が

はじいていき、そこを光輝が後ろを取らんとする

 

しかし、鍾乳洞的な複雑な地形のせいで思う様に動けない

 

ロックマウントの方は簡単に突破できないと感じたのか

後ろの方にさがって体を仰け反らせて息を大きく吸い込んでいく

 

すると

 

グゥガガガアアアアー!!!!!!!

 

「ぐっ!?」「うわっ!?」「きゃっ!?」

 

一同のいる方向に向かって

大きくその部屋を震わせるほどの咆哮をあびせていった

 

それもこれは、ただの咆哮ではない

 

これは固有魔法である威圧の咆哮

相手を一時的に麻痺させる魔力を込めた咆哮

 

メルド団長はレベルやそれなりに耐性を秘めていることも手伝い

すぐに復帰するものの、クラスメートの一部はそれを受けて動けなくなっている

 

その隙にそのロックマウントは

近くにあった岩の方にまでジャンプしていき

それをさながら砲丸投げのように投げつけていった

 

すると、その岩もまたロックマウントだったようで

投げ付けられた途中で擬態を解き後ろの方にいる人物達に

向かって襲い掛からんと、大きく手を広げていくのであった

 

そこにいたのは

 

「ひいっ!?」

 

「‥‥…!」

 

纏と渚沙の二人、その後ろには倦怠感に襲われているハジメもいた

 

さながら、渚沙すぅわん、纏ちゅわんと

言いながらダイブしていくようにも映ってしまう

 

そうなのかどうかは定かではないが、なぜか目が血走り鼻息が荒い

 

纏は表情を引きつらせて悲鳴を上げてひるんでしまい

 

渚沙は悲鳴こそ上げないが表情を引きつらせながらも

武器である槍を構えていき、向かってくるロックマウントに攻撃をしかけるが

 

「‥‥っ!?

 

 ええ!?」

 

ロックマウントはどうやってと

聞きたくなるような見事な一回転で

渚沙の槍による攻撃を巧みにかわし

そのまま後ろの方に飛んでいった

 

その先にはハジメがいた

 

ただでさえ倦怠感でまともな判断ができない状態だというのに

敵の特攻に対処など到底できるはずもない、そんな無防備な彼に

ロックマウントは容赦なく向かって行き、大きく腕を振り上げていく

 

「南雲君!」

 

「‥‥ちい!」

 

香織が悲鳴のように声をあげていき

渚沙の方も悔しそうに舌打ちしていく

 

ロックマウントの振り上げた腕が

ハジメに振るわれんとした、その時

 

Komm mir nicht zu(私に近づくな)!」

 

ロックマウントが突然、何かに吹きとばされたように

吹っ飛び、そのまま後ろの方にふっとばされて行った

 

ふっとばされたロックマウントはそのままふっとばされて

自身をふっとばしたロックマウントに激突して、そのまま

身動きが取れない状態になってもがくように体を動かしていく

 

「今のって‥‥詠唱?」

 

「‥‥南雲君!」

 

暫くぼうっと突っ立っているハジメに駆け寄っていく渚沙

 

「…あれ…今のって僕どうやって唱えて……?」

 

ハジメ自身もぱちくりさせていくと

自分の口元を信じられないと言ったように抑えていく

 

「‥‥南雲君、今のってどうやったの…?」

 

「…わかんない、何でかわからないけれど

 自然に言葉に出していて、どうやって発音したのかもわからなくって…」

 

自分自身でもよくわからないので説明にも困ってしまうハジメ

 

やがて、二体のロックマウントが体勢を立て直して再び向かって来ようとする

 

すると

 

「そうはさせない!

 

そう言って前に出てきたのは、剣を持った一人の男子生徒

 

天之河 光輝

 

 

彼は向かって行くロックマウントに向かって剣を構えると

光輝の魔力に反応して、剣が真っ白なオーラに包み込まれて行く

 

「万象羽ばたき、点へと至れ!

 

 天翔閃!」

 

やがて、光輝の放った一撃を受けて

ロックマウントは吹っ飛ばされていったのだった

 

「すごい、弱っていたとはいえ、あんなにも強い敵を倒すだなんて‥」

 

「さっすが、光輝君だね」

 

谷村 鈴

 

 

中村 恵里

 

 

好機と同じパーティーを組んでいる女子生徒の二人が彼を称賛する

 

「ふう…

 

 これで問題ない

 

 もう、大丈b…」

 

「この馬鹿者が!」

 

「…‥へぶぅ!?」

 

光輝が一同に安心させようと声を掛けようとすると

メルド団長にものすごい勢いで拳骨を食らわされてしまった

 

「こんな狭い場所であんな大技なんぞ放って洞窟が崩落したらどうする!?

 

 お前はこの場に居る全員を殺す気か!?」

 

「…‥うう、すいません…」

 

メルド団長からおしかりを受けて、ばつが悪そうにする光輝

 

それを見て、その場にいた者たち全員が苦笑いを浮かべている

 

「‥‥あれ?」

 

すると、光輝のド派手な技の威力のおかげで

崩れ落ちた壁の方から何かが光るものが映し出されて行く

 

「何だろうあれ‥‥キラキラしてる…」

 

香織が指さす方向にあったのは

青白く発光する鉱物が花開くように壁から生えていた

 

その美しさに香織を含めた女子たちは

夢見るようにその鉱石に見惚れていた

 

「ほう、あれはグランツ鉱石だな

 

 あれほどの大きさのものがこんな浅い階層で見つかるとは…」

 

メルド団長も、それを見て珍しそうに鉱石を見詰めている

 

「‥‥綺麗ね、香織…」

 

「‥‥ホント…」

 

雫にそう言われて

香織はちらりと想い人であるハジメの方を見る

 

それを見て、雫は微笑まし気に香織を見詰めていた

 

更に同じような反応を見せているのは雫だけではなく

 

「ねえねえ、渚沙ちゃん…

 

 グランツ鉱石ってプレゼントとしても人気があるんだよね?

 

 渚沙ちゃんはもしも、あの鉱石をプレゼントされたら、どう?」

 

纏はそう言って渚沙に笑みを浮かべながら話をしていく

 

「‥‥別にどうとも思わないわ…

 

 それに、別に私はあれを欲しいとも思わないし」

 

「どうして…?」

 

渚沙の予想通りだがどこか含みのある言い方に纏は聞いていく

 

「‥‥実は私ね、鉱物鑑定の派生技能を持っているの…

 

 これは、対象の鉱物に向けて使うと

 その鉱物の詳しい情報が開示される技能なの…

 

 それで試しにあのグランツ鉱石に向かって使ってみたんだけど…

 

 引っかからないのよ‥‥鉱物鑑定に…」

 

「それって‥‥どういう事…?」

 

渚沙の説明に纏はいまだに

理解が追い付かない様子を見せていく

 

「じゃあ、俺が取ってきてやるよ」

 

そう言って行くのは一人の男子生徒

 

檜山 大介

 

 

「檜山君…!?」

 

「白崎、アレが欲しいんだろ?

 

 俺がちゃちゃっと行って

 ちゃちゃっととってきてやるよ」

 

彼はそう言って、グランツ鉱石のあるところにまで登っていく

 

「‥‥っ!?

 

 ちょっと、戻ってきなさい!」

 

「何をやっている、勝手なことをするな!」

 

「大丈夫っすよ、俺こういうの得意なんで‥‥」

 

渚沙とメルドが檜山に呼び掛けるが

檜山は軽く受け流すだけで一切聞こうとも

せずに、グランツ鉱石の方にまで向かって行く

 

「出発前に言ったはずだぞ!

 

 迷宮内ではどんな罠があるのかが分からないと!!

 

「はいはい、わぁ~ってますよ‥‥

 

 ったくおっさんがうっせえな‥‥」

 

やがて、とうとうグランツ鉱石の元にまでたどり着く檜山

 

「おら、楽勝だっての!」

 

そう言って檜山がグランツ鉱石を掴んだ、その時

 

その場にいた部屋の足もとに魔法陣が大きく展開されて行く

 

「っ!?

 

 いかん、トラップだ!」

 

やがて、その場にいる全員の足もとに魔法陣が展開されると

やがてその魔法陣が勢いよく輝きを増していく、それはまるで

 

このトータスに転送されたときのことを彷彿とさせ

やがて一同は元居た場所から一斉にいなくなってしまったのだった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

一同はやがて、別の場所にまで転移された

 

その場所は、巨大な石橋の上で長さはかなりあり

天井との距離の方もかなりある、橋の下には川はおろか

何も見えないほどに深く、真っ暗な深淵の闇が広がっている

 

橋の幅の方は大きいものの、その端には手すりは勿論

緑石と言ったものもない足でも滑らせるものならば一発アウトだろう

 

かろうじて視界に映っているのは、橋の両側に映っている階段

向こうの方には奥に続く道が、こちら側には上に上る階段が見えている

 

「ここは…‥どこだ…?」

 

転送されたクラスメイト達はきょろきょろと辺りを見渡していく

 

「雫ちゃん、大丈夫?」

 

「ええ‥‥それにしてもここは…?

 

 多分、迷宮の中に当たるんだろうけれども…」

 

香織たちの方も辺りの方を見渡していく

 

「香織、雫!

 

 二人共無事!?」

 

「姫奈、風香…

 

 ええ、私も香織も無事よ…

 

 とにかく、ここは急いで後ろにある階段の方n…」

 

「雫ちゃん、姫奈ちゃん!

 

 あれを見て!!」

 

「何…‥あれ…!?」

 

香織が指をさした方に現れたのは赤黒い不気味な色の魔法陣

 

それは橋の通路側に展開されて行く

通路側に展開された魔法陣はその大きさが

十メートルは有ろう大きさをもほこっており

 

魔法陣からドクンと波打つように

何度も光が放たれていくと、魔法陣が魔物を生み出していく

 

現れた魔物は十メートルの大きさを誇り

兜のような頭部から角を生やした、四足歩行の怪物

 

突如として現れたこの魔物に一同は唖然とした様子で感じていた

 

ーこれは、やばいー

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「‥‥魔法陣から魔物が…

 

 あの魔物は、一体何なの…」

 

「‥‥わからない…でも‥‥…

 

 ヤバい感じがする、特にあの通路側の方…」

 

一同の方から一歩離れている位置にいる

纏と渚沙は、冷静に状況を分析していた

 

纏と渚沙が手立てを考えていた、そのころ

 

橋の奥にいる巨大な魔物が大きくこちらに体を向ける

その場に居る全員がひしひしと恐怖を感じ、体を震わせている

 

「アラン、生徒達を誘導して撤退させろ‥‥

 

 カイル、イヴァン、ベイルは全力で障壁を張れ‥‥

 

 奴を絶対にここに通すな…

 

 光輝、お前たちは今すぐ階段の方に逃げろ‥‥」

 

「メルドさん、待って下さい!

 

 俺たちもたたk…」

 

「馬鹿野郎!

 

 良いから早く行け!!

 

 奴はおそらくベヒモス、65階層まで行った最強の冒険者でも

 歯が立たなかった化け物だぞ、奴は俺たちが引き受ける、だからお前たちは行け!!!」

 

メルドの怒気迫る言葉遣いに光輝は一瞬ひるむ

それでも踏みとどまろうとしていく光輝だったが

 

グルァァァァアアアア!!!!」

 

「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」

 

目の前の巨大な魔物、ベヒモスが大きく方向をあげると

それをあびたクラスメートはパニックになっていき、慌てて逃げ始める

 

「っ!?

 

 みんな待って、目の前にも魔法陣が!」

 

雫が一同に呼びかける、彼女の言葉通り

目の前からも同じ色合いの魔法陣が展開されて行き

 

そこから今度は大量の別の魔物が現れていく

 

「が…骸骨の化け物が大量に…!?」

 

「こっちに向かってくるぞ」

 

それは、ベヒモスを呼び出した魔法陣よりも小さいが

数は膨大、するとその展開された魔法陣から剣を携えた

骸骨が一斉に襲い掛かってきたせいで、更にパニックに陥っていく

 

だがそれを、副団長のアランが一同に呼びかけていく

 

「みんなおちつけ、奴らはトラウムソルジャー

 

 38階層に出現する魔物だ!

 

 訓練を忘れずに向かって行けば勝てない相手じゃない!!

 

 だからみんな落ち着け!!!」

 

しかし、パニックに陥ってしまっているクラスメートには

そんなアランの呼びかけが聞こえている様子はなく、動きが大いに乱れていく

 

「きゃ!」

 

そのせいで一人の女子生徒が突き飛ばされてしまう

 

「優花!」「優花っち!」

 

二人の女子生徒が、その女子生徒に呼び掛けていく

 

やがて、その女子生徒にトラウムソルジャーが迫っていく

 

「あ…あああ…」

 

迫って来るトラウムソルジャーにおびえてしまうが

その目の前のトラウムソルジャーが突然、斜めにずれて崩れていく

 

「はあ…はあ…

 

 何とか間に合ったね…」

 

崩れ行くトラウムソルジャーの向こう側から

現れたのは、その女子生徒もよく知っている人物であった

 

「な…ぐも…?」

 

「…早く行って!

 

 仲のいい子達からでもいい

 とにかく、クラスメートに呼び掛けて!!

 

 このままだと全滅する、騎士団の皆さんのフォローをしてあげて!!!」

 

そう言ってその人物、南雲 ハジメはその女子生徒に呼び掛ける

 

「ちょっと待って!

 

 アンタはどうするのよ!?」

 

「…僕も出来る限りのことはするよ…

 

 さっきまでの体のだるさはなくなったしね…

 

 僕は僕にできることをやるだけ…

 

 だから、君も出来る限りのことをやって見て…園部さん…」

 

そう言ってハジメは自身が助けた女子生徒

 

園部 優花

 

 

彼女にそう言いきって見せる

 

「南雲…どうしてそこまで…?」

 

優花は思わずそんなことを聞いていく

 

「…う~ん…なんとなくかな?

 

 だって目の前で誰かが死んじゃうのって

 やっぱり気分悪い感じがするし、それにさ…」

 

「それに…?」

 

ハジメはさりげない様子で、言いきっていく

 

「それに園部さんは僕にとって、大切な友達だから…

 

 だから…助けたかったんだよ…」

 

「あ…」

 

ハジメの不意に浮かべた笑顔に、優花は思わず見惚れてしまう

 

「…それじゃあ、お願いね!」

 

そう言って優花に背中を向けて、向かって行こうとすると

 

「南雲!」

 

「え…?」

 

優花はハジメのことを呼び止めると

 

「…絶対に…絶対に戻ってきてよね……

 

 私も頑張るから…あんたも頑張んなさいよ…」

 

「…ありがとう…」

 

ハジメはそう言って笑みを浮かべながら

メルドたちが食い止めている方に急いで向かって行く

 

急いで向かって行くハジメの元に

二人の女子生徒が両側についていく

 

「フフフフ、ハジメさんって意外にいいこと言うんですね」

 

「…え?

 

 何でそうなっちゃうんですか?」

 

「‥‥それよりも、体の方は大丈夫なの?

 

 問題なく動けているようにも見えるけれど、無理してるとかじゃ…」

 

北浦 纏

 

 

東雲 渚沙

 

 

二人はそう言ってハジメの身体の調子を聞いていく

 

「…そんなことはないよ!

 

 それよりも急いでこの状況を打破しないといけないんだ!!

 

 そのためには、天之河君の力が必要だ!!!」

 

「‥‥そうね、でもあの天之河君が

 南雲君の言う事を聞いてくれるとは思えないけど…」

 

渚沙がそう言うとハジメもそうだよなぁと頭を抱える

 

「‥‥しょうがないわね…

 

 私が何とかするわ、はっきり言って

 気が進まないけれども、やらなきゃ

 それこそ、全滅してしまうだろうしね…」

 

「私も手伝うよ

 

 だって、私も南雲さんや渚沙ちゃんを

 助けてあげるんだって決めてるんですから」

 

そう言って二人はハジメのサポートに徹する事をきめる渚沙と纏

 

「…ありがとう…それじゃあ天之河君のことはお願い……

 

 あの化け物は、僕が引き受ける!」

 

三人はお互いに頷き合って行き、急ぎ戦いの場に向かって行く

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

一方

 

「はああああ!!!」

 

雫たちのグループも優花たちと同様に

一同に呼びかけていきつつ敵を倒していっている

 

しかし、いかんせん敵の数が多く対応しきれていない

 

「ぐう、倒しても倒してもきりがない…」

 

雫も自身の出せる力をすべて出しきって

トラウムソルジャーを倒していくのだが

倒していくペースよりも増えていくペースの方が

はるかに早く、雫の顔色に疲労が見え始めていく

 

「やああああ!!!」

 

すると、雫の後ろを狙って行った

トラウムソルジャーを姫奈が撃退していく

 

彼女がいなければ雫は後ろからの攻撃を受けていたであろう

 

「姫奈…」

 

「後ろの方にも気を付けなさい!

 

 しかし、これじゃあキリがないわ…

 

 せめて階段までの道のりさえ確保できれば…」

 

姫奈は剣のアーティファクトを振るって行くが

いかんせん、こちらの方も疲労が見え始めている

 

「私たちにもせめて、天之河君みたいな攻撃力があれば…」

 

「その光輝は一体何やってるのよ…」

 

「メルドさんのところよ…

 

 メルドさん達を見捨てていけないって…」

 

雫が光輝の様子を尋ねると、姫奈が呆れたように答えていく

 

「くう、光輝君のところに行こうと思っても…

 

 これじゃあ、それどころじゃないし…」

 

「‥‥っ!?」

 

風香は光輝を連れてくればいいと考えているが

いかんせん、四人はトラウムソルジャーの猛攻のせいで

そんな余裕はなく、ただひた擦れに向かって行く敵の相手をしていく

 

すると、香織の目にあるものが映った

 

それは

 

「ハジメ君!」

 

ハジメが渚沙と纏とともに光輝の元に向かって行く姿であった

 

「南雲!?

 

 アイツ一体何を…」

 

「まさか‥‥光輝を説得するつもりじゃ…」

 

雫はどうしてハジメが橋に

向かっているのかを考察し、推論を述べた

 

「南雲君!」

 

それを聞いた香織は

不安そうな表情でハジメの姿を見詰めていたのだった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

一方で橋の方では騎士団とベヒモスの攻防戦がくり広げられていた

 

必死で障壁を張ってベヒモスの特攻を防いでいるが

とてもではないが長くはもちそうではない、メルドも

既に加わってこそいるが、もはや時間の問題であろう

 

「ぐう…とてもではないがもうもたん‥‥

 

 光輝、お前たちも早く撤退しろ!」

 

「嫌です!

 

 メルドさん達を置いていくわけには行かない!!

 

 絶対に…‥みんなで生き残るんです!!!」

 

「他人のことを心配している場合か!

 

 俺たちはお前たちを死なせるわけには行かんのだ!!」

 

光輝に必死に言い聞かせようとするが

納得せずにその場に残って武器をかまえていく光輝

 

すると

 

「光輝君!

 

 ここはメルドさんの言う通り、急いで引き上げよう!!」

 

そう言って光輝に撤退を進めていくのは

 

中村 恵里

 

 

光輝と同じパーティーメンバーの女子生徒だ

 

彼女は光輝に急いで引き上げようと提案するが

 

「何言ってるんだ、恵里!

 

 メルドさん達を見捨てろって言うのか!?」

 

「でも、ここに至って僕達には何にもできないよ!

 

 それに、メルドさん達だって死のうとしてるわけじゃないんだ

 このままここに居たらそれこそメルドさん達の足を引っ張っちゃう‥

 

 光輝君は自分のせいでメルドさん達を危険な目に合わせてもいいの!?」

 

「…‥それでも、それでも俺は…」

 

光輝は、恵里に言われて戸惑うが

それでもメルドを見捨てられないと踏みとどまる

 

すると

 

「‥‥しようがねえな、だったら俺も付き合うぜ

 

 光輝が頑固なのは今に始まったことじゃねえしな…‥」

 

そう言って光輝の幼馴染で親友である男子生徒

 

坂上 龍太郎

 

 

彼は考えなしにそう言って光輝の横についていく

 

「龍太郎…‥すまない…」

 

「何勝手なことをやってるの!

 

 もっと周りを見てから言ってよ!!」

 

「えりりん‥」

 

龍太郎の言葉にがぜんやる気になっていく光輝

そんな様子を見て苛立ちを隠せない状態で恵里が言う

 

そんな彼女を、心配そうに見つめるのは

一人の小柄なツインテールの女子生徒

 

谷口 鈴

 

 

だが、そうこうしているうちに障壁にひびが入り始めていく

 

「ぐう…仕方ない‥‥

 

 応戦準備に入るぞ、構えろ!」

 

そう言って武器を手に取りながら

障壁を破られた後の応戦準備を始めていく騎士団員

 

やがて、障壁が敗れてベヒモスが突入戦としていったその時

 

Technik ist lang, das Leben ist kurz(技術は長く、人生は短い)!」

 

その声とともに、ベヒモスに向かってものすごい衝撃が走り

更にふっとばされてひるんだ様子を見せていくベヒモスに追い打ちをかけるように

 

Tag der Wut(怒りの日)!」

 

ベヒモスに向かって何やらいくつもの光球が放たれていき

それがベヒモスの身体に何発も被弾し、その体に傷をつけた

 

「な、何だ今のは…!?」

 

驚愕する光輝たちの頭上を何かが素早く通り抜けていき

それはベヒモスの目の前に立つと同時にその正体に気が付いた

 

「南雲!?」

 

「な、南雲!?」

 

「南雲君!?」

 

「南雲‥‥君‥」

 

四人は驚いた様子で目の前にいる人物の名をつぶやいた

 

だが、彼自身は天之河たちの方を振り向くことはなく

目の前でボロボロになってしまっているベヒモスの方に目を向ける

 

「‥‥天之河君!

 

 今のうちに急いでみんなのところに戻って!!」

 

すると、そんな光輝の元に女子生徒が駆けつけていく

 

「東雲さん、北浦さん!?」

 

「早く戻って、このままだとみんな無事じゃすまなくなるよ!

 

「何を言ってるんだ、ここは俺たちが…」

 

「‥‥いい加減にしなさいよ!

 

 後ろを見て見なさいよ、クラスのみんながパニックに陥ってる!!

 

 みんなのことを纏められるリーダーがいないからよ!!!」

 

渚沙はそう言って光輝を階段の方に向かせて言う

 

「‥‥確かにみんなはこの世界にいる人たちよりは強いかもしれない…

 

 でも、逆に言えばみんなはそれだけでしかないの!

 

 あんたのように強いってわけじゃないの、あんた言ってたわよね

 俺が絶対にこの世界の人々を、みんなのことを護って見せるって…

 

 だったら、今がその時でしょうが!!」

 

「…‥東雲さん…」

 

渚沙に激しく言われて、何かを振り払うように首を横に振るう

 

「わかった‥‥しかし、(ベヒモス)はどうするんだ…!?

 

 行くにしても、放って置くわけには…」

 

「それについては大丈夫ですよ、だって今の彼は…

 

 みんなが言うような無能ではありませんから」

 

光輝がそう言うと、纏が目の前にいる人物の方に目を向けていく

 

そこにいたのは左手に剣を携えて

ベヒモスを睨みつけるように見つめているハジメがいた

 

「……」

 

ハジメは静かに一同の方に少しだけ顔を向ける

それを見た渚沙と纏はしんけんな表情で頷くと

 

ハジメの方も何も言わずに頷くと、ベヒモスの方に目を向ける

 

すると、ベヒモスがよろよろと立ち上がって

再び一同の方にへと襲い掛からんとしている

 

だが、先程受けた攻撃によってほぼ全身が傷だらけで

左側の目玉が飛び出していたり顎が外れかかっていたりとしている

 

「‥‥さっきの攻撃を受けて、あんなにもボロボロに‥

 

 光輝君の一撃だって傷一つもつけられていなかったのに‥」

 

恵里はベヒモスの状態を見て、驚愕の表情を浮べていた

 

ベヒモスは満身創痍の状態ながらもそれでも戦意を失っている様子はない

 

自分の目の前にいる、一人の人物の方に

眼玉が飛び出ていない方の右目を向ける

 

その人物は左手に剣を携え

右手にオーラのようなものを纏わせている

 

そして、その目は緑色に発行してベヒモスを睨みつけていた

 

「‥‥急いで戻りなさい!

 

 貴方達にはやるべきことがあるでしょ!!」

 

渚沙がそう言って光輝たちに呼び掛けていく

急いで他のクラスメートの元に向かって行った

 

「私たちも…」

 

「‥‥ええ…」

 

纏と渚沙もこの場をハジメの方に任せていき

クラスメートの方に向かって行く、メルド団長は

その場に残り、ともにベヒモスの方に構えていくのだが

 

「…メルド団長、貴方もクラスメイトのところに行ってください」

 

「何を言っている!

 

 お前さんを残して戻るなんて‥‥」

 

「天之河君が言ったところで結局彼頼みになってしまうだけ…

 

 ましてや碌な戦闘経験もない天之河君が

 戦いの場でうまく彼らを纏められると思いますか?」

 

ハジメはそう言って、メルドにも

クラスメートの元に行くように進めていく

 

「…それにあなたが言ったんですよ

 

 力というのはうまく扱うことが大事だって…

 

 まさに、今がその時なんだって!

 

 だから、速く行って!!」

 

「…行けるんだな‥‥?」

 

メルドはそう言って真剣な表情でハジメに尋ねていく

 

「…行きます」

 

ハジメはメルドの方には向かずにただ

目の前の(ベヒモス)の方を見ながらそう答えた

 

「…わかった、必ず助けてやる‥‥だから頼んだぞ…‥‥!」

 

そう言って騎士団の面々に声をかけていき

急ぎクラスメートの元に向かって行くメルド団長

 

「…さあてと…ああは言ったけれどぶっちゃけノープランなんだよな……」

 

そう言って、ひと息ついて改めて相手(ベヒモス)の方を見ていく

 

「まあ、戦える分にはやりようはある…

 

 今僕が使える全部の力を使ってこいつを足止めするだけだ!」

 

そう言って左手に剣を持ち、右手に何かを掲げる様な仕草をしていく

 

ベヒモスは顎が負傷しているのでさっきまでのような

ものすごい咆哮はあげられないものの、戦意の方は失ってはいない様子で

ハジメに向けて、眼球が飛び出ていない右目の方を鋭く睨みつけていった

 

「…まあ、やるって言った以上、出来る限りはやらせてもらうよ!」

 

ハジメの方もそんな睨みに圧せられることなくベヒモスに睨み返した

 

その瞳はまるで、何者であろうとも決して揺らぐことのない

そう思わせるほどの鋭く、強いものであるとかんじさせる

 

すると、ハジメの足もとに映し出されている影が

異様に動き、なにやら不気味な笑みを浮かべた目と口が浮かんだように見えた

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

一方、クラスメートの方でも一進一退の攻防戦が続いていた

優花達や雫達などの一部の者が呼びかけてどうにか持ってはいるものの

 

それでも決定打が足らず、どうしてもあと一歩が踏み出せないでいた

 

「まずい‥‥このままだと押し切られる…」

 

雫はなれないながらも武器を振るって対応はしていくが

疲労が見え隠れしていって判断力が鈍ってきている、すると

 

「雫、あぶない!」

 

「え!?」

 

姫奈が呼びかけていくと、後の方からトラウムソルジャーが

剣を大きく振りかざして雫を斬りつけんとしていた、その時

 

「天翔閃!」

 

その声とともに純白の斬撃が、雫に襲いかからんとした

トラウムソルジャーのみならず、多くの敵をなぎ払って行った

 

そこに現れたのは

 

「光輝!」

 

「大丈夫かみんな、遅れてしまってすまない

 

 まだ動けるものは俺とともに来てくれ

 絶対に階段前を確保する、俺が必ず道を開いて見せる!」

 

光輝がそう一同に呼びかけると

クラスメートの表情に光がともっていく

 

段々と士気が上がっているのを感じられている

 

さらにそこに駆け付けてきたのは

 

「お前達、なにをやっている!

 

 これまで一体何の訓練を受けていたのだ!!」

 

メルド団長であった、彼の言源溢れる声を聴いて

不思議と安どの表情を浮かべてさらに士気が高まっていく

 

「メルドさん!」

 

「いいかお前たち、前衛組は光輝とともに階段前までの道を確保しろ

 魔法組は前衛組のサポートをしろ、死にたくなければ自分のやるべきことを果たせ!」

 

光輝のカリスマ性とメルド団長の威厳ある言葉に

クラスメート達は画期を取り戻していき、即座に行動を移していく

 

それぞれがそれぞれの役割をしっかりと果たしていき

ついに一丸となって行動していった結果、無事に階段前を確保することに成功した

 

「ようし、道は開けた、後はここを護り切るぞ!」

 

光輝の言葉とともにクラスメートたちが一斉に

階段の方になだれ込んでいく、後はここから脱出するだけなのだが

 

「待ってみんな、南雲さんがまだ向こうにいます!

 

 南雲さんが皆さんを護るためにベヒモスを引き受けているんです

 

纏が一同に呼びかけていく、クラスメートの大半は

なにを言っているんだと首を傾げているが、それを聞いて

 

「みんな、お願い南雲君を助けて!

 

 南雲君は私たちを護るために戦ってるの!!」

 

「通り道は天之河のおかげで確保できてる!

 

 みんなで南雲を援護するわよ!!」

 

香織と優花がクラスメートに呼び掛けてつつ

橋の方にへと目を向けていく、するとそこに映っていたものを見て

 

香織も優花も、メルド団長や他の騎士団、クラスメートも驚愕している

 

何故ならそこに映っていたのは

言葉で表すのも憚られるほどの光景だったのだから

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

それは時をもどって、ハジメがメルド団長に

この場は任せてほしいと宣言した後にまでさかのぼる

 

「はあ…はあ…はあ……」

 

ハジメは武器である剣を手に持ってベヒモスと応戦していく

なんとか渡り合ってはいるものの、剣による攻撃がメインで

ほとんどが接近戦になってしまっているので、ダメージも小さくはない

 

先程ベヒモスに傷をつけられた一撃を放てればいいが

いかんせんあの時は空中に浮いていたからどうにかなったが

今度はそう簡単に当てられるとも思えない、何よりの問題

 

下手にさっきの攻撃を乱発していけば

もしかしたら限界が来るかもしれない

 

だが、無理に相手をする必要はないのだ

クラスメートたちが撤退するまでの時間稼ぎになればいいのだから

 

しかし、対峙していくハジメの心にはそんな考えはなかった

 

有るのはただ一つ、目の前にいる(ベヒモス)を倒す事のみ

 

ハジメはずっとあの日から感じていたのだ

どうして自分がこんな目に合わないといけないのか

 

どうして自分が虐げられ続けないといけないのか

 

問いかけても誰も教えてくれない、なぜなのか

 

理由なんてない、それが理由なのだから

 

人間は悪意を抱いて、網を張って待ち構えている蜘蛛のように

獲物がかかっていくのを待っている、そこに自分という獲物がかかり

餌食となってしまった、蜘蛛は獲物を選ばない、網にかかればそれが獲物

 

人間もまた同じこと、たまたま自分というマウントを取れる相手を選んだに過ぎない

 

ただハジメは最初のうちは特に気にはしていなかった

 

それをいちいち気にしても

状況が変わってくれるわけでも無いのだから

 

あの事件が起こってから

 

檜山達が引き起こし、光輝がそれに便乗したかの事件

それによってハジメはクラスメートや他学年の者たちからは勿論

 

両親や、畑山先生以外の学校関係者から疎まれるようになっていった

 

どうしてなのかと最初は自問自答を繰り返したが

やがてハジメは時が絶つにつれて、そんな事に意味がないと思う様になり

 

気が付いたら、そんなものだと心が慣れきってしまった

 

もう、抗う事も救いを求めることもやめたものの

それでも周りからのやっかみが気にならないわけでも無い

 

にげているのか、立ち止まっているのか

そんなことも分からなくなってきた矢先に起こったのが異世界召喚

 

そこで訳も分からないうちに戦争に参加させられ

さらには他の奴らは力を手に入れているのに、自分だけは

何も得らずに周りから無能だの、雑魚だのとののしられて行き

 

段々と心に真っ黒な影のようなものが覆って来ていた

 

自分の中でその黒い何かが自分でもわからないうちに渦巻いている

 

最初はそんな、やり場のない感情をどこにもぶつけられずにいたが

 

図書室において、禁書庫の中で例の本に眼を通して

その感情が浮き彫りになっていき、まるで自分の中で

意志をもって蠢いているようになっていき、段々とそれは

 

自分の中から時折現れる謎の力となって表れはじめていく

 

檜山達に暴力を振るわれたとき

朝の時の異様な食欲に、さっきまで感じていた異様なまでの怠さ

 

他にも様々だが、同時にその力のせいで

別の感情が抑えきれなくなっている、今もそうだ

 

自分の目の前でボロボロになりながらも

それでも自分の方に向かって歩みよって来るベヒモス

 

そんな奴の姿を見て、何やら激しい感情が沸き上がっていく

 

「…どいつもこいつも…

 

 もういい加減うんざりなんだよ…

 

 なんで僕ばっかりがこんな目に合わないといけない…

 

 僕が一体、何をしたっていうんだ…

 

ハジメがそう言って胸の内を噴き出す様に叫びだすと

彼の全身から炎のようなものが噴き出していき、それが

彼の身体を焼き尽くさんとするようにその体にまとわれて行く

 

ベヒモスはそれに構わず、ハジメの方に向かって突進していく

 

ハジメはそんなベヒモスの方に向かって鋭く睨みつけていく

自身が内に秘めていたどうしようもないほどの怒りを込めた一睨みを

 

それを受けたベヒモスは本能的に突進していった足を止めてしまう

 

ベヒモスが思わず前にすすんでいく事をためらっていく

だが、ハジメはそれを気にすることなくベヒモスの方に歩みよっていく

 

それを見てベヒモスはゆっくりと後ずさりをしていくが

ハジメはそれ以上に素早い動きでベヒモスの眼前にまで迫っていく

 

もういい加減うんざりなんだよ、アホンダラアアア!!!

 

ハジメの一撃がベヒモスの顔に大きく繰り出されて行った

 

その一撃を繰りだされたベヒモスは大きく吹っ飛ばされ

更にその一撃を受けると同時に地面に勢いよく頭部を叩きつけられ

 

ついに顎が完全に外れきってしまい

更には炎に充てられて蒸発する様に消滅していったのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

その光景を見ていた騎士団やクラスメート達は

その光景に開いた口が塞がらなかったのだった

 

「‥‥南雲君…」

 

暫く、その場所で肩で息をしながら

その場に立ち尽くしていたハジメだったが

 

やがて、糸が切れた人形のようにその場に倒れこんだ

 

「南雲さん!」「南雲君!」「南雲!」

 

「‥‥!」

 

それを見て、急いで駆け寄っていく纏、香織、優花の三人

渚沙の方も急いでその後を追って行き、倒れたハジメの後を追った

 

「南雲さん!

 

 しっかりしてくだs‥‥っ!?

 

 すごい熱です、触らなくても肌で感じられる…」

 

「だったら急いで治癒しないと…!」

 

香織は治癒魔法を施そうとするが

どんなに詠唱を唱えても魔法が発動しない

 

それでも必死に治癒を施そうとするが

 

「お願い‥‥お願いだから…発動して‥‥…

 

 約束したんだもん‥‥南雲君のことを護ってあげるって…

 

 だから…」

 

結局発動することは無かった、すると渚沙はハジメに肩を貸してやる

 

「‥‥今はここを出るのを優先させるわよ!

 

 治療に関しては、ひと息ついてからやればいい…

 

 とにかく急いでここから出るわよ!!」

 

「香織さん、渚沙ちゃんの言う通りです

 南雲さんのことが心配な気持ちはわかりますが…

 

 今はどうにかここから出るのを優先しましょう…」

 

「‥‥うん、そうだね…」

 

「ええ、急ぎましょう…」

 

そう言って気を失ったハジメを連れて

急ぎクラスメートの者たちと合流していく

 

こうして、一同は無事に

オルクス大迷宮での危機を乗り越えるのであった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 


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