世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー 作:lOOSPH
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
気を失ったハジメを背負って無事に橋を渡った四人の少女達
「香織、みんな、よかった…
南雲君は!?」
無事に戻ってきた彼女たちが
戻ってきたことに喜びの声を上げる少女
八重樫 雫
彼女はハジメの様子も訪ねていく
「‥‥それが南雲君、気を失っちゃって…
まだ息はしているんだけど、熱がひどくて…」
そう言って答えるのは雫の親友である少女
白崎 香織
無事に戻ってきたものの、彼の意識が戻らず
さらにはひどい熱が下がる様子がないこともあって
表情が不安一色に染まっており、気が気ではない様子を見せていく
「だったら急いでここを出て、急いで南雲を安静にさせてあげないと…
外に出ればそれこそゆっくり休ませられるわ」
提案をしていくのは
南野 姫奈
「‥‥もちろん分かってる…
とにかく、ここを急いで脱出しましょう…」
東雲 渚沙
彼女もまた姫奈と同じ考えを持ち
同じく急いで脱出することを勧めていく
すると突然、背負っていたハジメを誰かに取られる
その犯人は
「無事に戻ってきてくれて、本当に良かった‥‥
坊主は俺が連れていこう」
メルド・ロギンス
クラスメートを引率してきた
ハイリヒ王国の騎士団の団長である
「大丈夫だ渚沙、おれがしっかり坊主を連れて行ってやる」
「‥‥ありがとうございます」
「いいや、礼なんていいさ‥‥
寧ろ、こんな事態を引き起こしてしまったのは
俺の監督不行き届きだ、お前さん達にしっかりと
迷宮の恐ろしさを教えていれば、よかったのに‥‥
まあ、そういう話はあとだ、とにかくここを出て無事に帰るぞ」
そうして、クラスメート一同と騎士団たちは急いで階段を上がっていき
無事に今いた階層を脱出するのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
檜尾段を上っていくとまたも転移の魔法陣が展開されると
一同は見覚えのある場所にまで転移されて行った、そこは
20階層のさっきまでいた場所であった
「帰ってきたの?」
「戻ったのか!?」
「帰れた…帰れたよ…」
そう言って殆どのクラスメートたちが座り込んでいく
相当な疲労がたまっていたのか、全員がその場に座り込んでいくが
「お前たち、座り込むな!
ここはまだあくまで迷宮内で、絶対に安全とは限らない!!
魔物との戦闘はなるべく避けて、最短のルートで進んでいく‥‥
無事に戻るまでが訓練だ、気を抜くな!!!」
メルドの言葉があたりに響いていく
生徒達は不満そうな表情を浮べているが
メルドの間髪入れない様子の表情に圧されてしまい
渋々従い、ふらふらと立ち上がって進み始めていく
戦闘の方はなるべく
最低限で済ませつつ上の方に向かって行った
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
そしてついに、懐かしき地上にまで上り詰めていったのだ
今度の今度こそ無事に戻ってこられたのを実感し
ついに殆どの生徒達が戻ってきたことを実感してその場に座り込んだ
「ふう…戻ってこれたぞ坊主‥‥
よく頑張った、ゆっくり休んでいろ‥‥」
メルドがそう言って優しく寝かしつけてやるのは
今の今までメルドが担いでいった今回の功労者である
南雲 ハジメ
メルドは彼を壁にもたれさせてやるとゆっくりと立ち上がる
すると、そんな二人の元に数人の生徒達が訪れていく
「メルド団長、南雲君は…?」
優花が恐る恐る訪ねていく
「いまだに目を覚まさない‥‥
熱の方は一向にさがっている様子がない
とにかく急いで、戻って身体を冷やしてやらないとな‥‥
俺はすぐに手続きの方を
すませるから、坊主のことを見ていてくれないか?」
「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
メルド団長よりハジメのことを任された少女達は元気よく返事をし
それを聞いたメルド団長も安心した様子で少女達にハジメのことを任せ
手続きの方へと向かって行く
残った少女達はいまだに眼を覚まさないハジメの様子を見ていく
「‥‥熱が下がっている様子はないわね…
やっぱりいろんなことがあって体調を崩したのかしら…」
「そうだね…
自分の力が分からない状態で
あんなにも強力な魔物と闘ったんだもの…
なにがあっても不思議じゃないものね…」
ハジメの体調の方を改めて確認していく渚沙
「だけど、南雲があの時ベヒモスを引き付けてくれなかったら…
いいえ…あの状況で最善の判断を下してくれたおかげで
私も、ここにいるみんなも誰一人として欠けることなく戻ってきた…
私だって…あの時、南雲に助けられなかったらどうなっていたか…」
そう言って嫌な想像をするように体を震わせる女子生徒
園部 優花
「…もしも、南雲の意識が戻ったらさ…
あたし、しっかりお礼を言いたいんだ…
あの時助けてくれて…ありがとうって…」
「優花…」
「優花っち‥」
菅原 妙子
宮崎 奈々
友人である優花のその言葉に
やや複雑な心境ながらも安どの様子を見せていく
「‥‥ねえ、渚沙ちゃん…」
「‥‥何?」
香織が不意に渚沙に尋ねていく
「これで教会の人達も南雲君のことを認めてくれるよね…
南雲君が処罰を受けることは、ないんだよね」
そう言って真剣な様子で訪ねていく香織に
渚沙は一瞬だけ考える様な様子を見せていく
「‥‥それについてはハッキリはわからない…
でも、少なくとも協会が
南雲君の見方を変えてくれることは確かだと思う…
わたしから言えるのは、今はそれだけよ…」
渚沙は少し言葉をひねり出す様にして答えていく
香織はしばらく、黙り込んだ後に答える
「‥‥そっか、よかった…
これで、南雲君が二度と
ひどい目に合う事はないんだよね
南雲君がもうこれ以上、苦しまないで
いいんだってことなんだよね、渚沙ちゃん」
香織はそこまで言うと笑顔を浮かべて嬉しそうにする
「‥‥あ、そうだお水もらってくるね」
そう言ってその場から離れていく香織であった
すると、一人の女子生徒が不意に渚沙の方に近づいていく
「東雲さん、東雲さんは協会が南雲君の事‥‥認めてくれると思う?」
「‥‥認めてくれるかもしれないわね…
悪い意味で…」
八重樫 雫
香織の親友である、彼女が
ハジメの今後のことを問いかけると渚沙はそう答えた
「‥‥その事…香織に話さなくていいの?」
「‥‥話したところでどうなるのか…
付き合いの長いあなただったら自ずとわかるでしょ?」
渚沙の言葉に、雫はそうねと一言のみで応えた
「ちょっと、そこの二人共!
さっきから何をこそこそ話しているのよ…」
そう言って、話に入って来る女子生徒
南野 姫奈
「‥‥いいえ、大した話じゃないわ…
ただ、南雲君の処遇がこれからどうなるのかって話を
さっき。八重樫さんと話をしていた、ただそれだけよ…」
「‥‥そっか…
これで少しは、こいつも
報われてくれればいいんだけれど…」
そう言って壁にもたれかかっているハジメの方を見ている
「‥‥南野さん…」
「‥‥南雲がこんなにも苦しめてしまった責任は
私にだってある、あの事件の誤解をどうにか解こうと思って
必死にがんばったけれど‥‥どうにもならなかった…
初めて自分が無力な存在なんだって、思いしらされたわ…
だから‥‥だからせめて、私は南雲の味方であろうって決めたの…」
「‥‥そう…でも、きっと彼だったらこういうでしょうね…
気にしないで、南野のせいじゃないって…」
「…‥そうだね、南雲君とっても優しいし…」
そう言って、笑顔を浮かべて返していく女子生徒
西宮 風香
彼女はそう言って、眠っているハジメの顔を覗き込む
「…‥フフフフフ…
こうして見てみると、南雲君って
可愛らしい顔つきしてるよね、ほんと…
ぐっすり眠っちゃって…」
「‥‥こういう時ぐらいは休ませてあげましょ…
こいつだっていろいろあって疲れたんだし…」
「そうだね…」
すると、風香は不意に立ちあがって
思いついたようにパンっと柏手をする
「ねえみんな、もし南雲君の意識が戻ったらさ
南雲君のために、お疲れ様パーティーでもしてあげない?
あんなにがんばったんだし、ちょっとくらい
楽しいことがあってもいいと思うんだ、どう?」
「それ、素敵だと思います!
なんていったって南雲さん、頑張ったんですからね」
風香の提案に一人の女子生徒が賛同する
北浦 纏
彼女は優し気な笑顔を浮かべている
「そうだね、私たちでハジメ君にお祝いしてあげよ」
そう言ってそこにいる女子たちでそんな話をしている中で
一人だけが浮かない表情で周りにいる他のクラスメートの方を見ていく
「‥‥…」
その一人の人物、東雲 渚沙の目に映るのは
意識の戻らぬハジメのことをあからさまに良く思っていないと
敵愾心をむき出しにしている一部のクラスメートの様子であった
「‥‥ほんとに、くだらないわね…
本当、このまま何事もなく終わればいいのだけれども…」
渚沙はそう言って、しばらくは様子を見ることにする渚沙
渚沙はしばらくそれとハジメが目を覚ました時
どんなお祝いをして上げようかと盛り上がっている声を聞き流しつつ
今後のことを畏怖するのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
彼は、夢を見ていた
そこには四人の女の子がどこかに走って言っている
その女の子達が向かう先にいたのは、一人ぼっちの男の子
男の子の表情はどこか暗く、表情が浮かない様子である
女の子達はそんな男の子の元に駈け寄っていき
男の子に優しく手を指し伸ばしてやる、まるで遊びに誘っているよう
しかし、男の子はその暗い表情のまま
その手をはたき、挙句にはその女の子を突き飛ばしていく
その女の子を見降ろす様に見つめながら立ちあがる男の子
その目に、どす黒いまでの憤怒の色を纏わせて
彼は不思議と、その男の子に共感を覚え
自ずと彼の方に目を向けていってしまった
そこまで見ていくと
彼はフェードアウトしていくのだった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
あれから、しばらくたって
ハジメの容態は安定しつつあるものの
熱はまだ下がり切っておらず
ハジメ自身も今だに目を覚ます様子もない
せめて、自分達が彼にできることをやろうと
渚沙たちや優花達、香織たちが介抱をしていき
その過程で知り合った者たちとも交流を深めていく
着替えの方はメルドや騎士団の手の空いているものがやってくれ
自分達はハジメの額に冷たい濡れた布を当ててやったりしていた
次第に少女達は仲良くなっていき
気兼ねなく話をすることが出来る仲になっている
渚沙自身も自分の周りの人間関係が驚くほどに
変わったことに自分自身驚いているが、不思議と悪い感じがしないと思っていた
「‥‥あれからもう、三日は立つのね…
ほんと、異世界に転移してからいろんなことが起こったわね…」
そう言ってその場にベッドの上で意識の戻らぬハジメを見ていた
「‥‥まったく…向こうでもこっちでも
寝てばっかりなんだから、南雲君は…
そんなに隙だらけだといざってとき困るよ…」
そう言って少し茶目っ気の入った口調で話していく渚沙
すると、緩んだ表情を浮べていた渚沙の表情が急に険しくなる
外の方からしばらくすると、部屋の中に
ずかずかと鎧を纏った兵士たちが入り込んでいく
「‥‥貴方達はっ!?」
「悪いがどいてもらおう
そこで眠っているものの身柄を拘束せよとお達しを受けた!」
そう言って鎧を着込んだ者たちの一人が言い放った
「‥‥身柄を拘束…!?
一体どういう事なの!?」
「我々は神殿騎士、教会直属の騎士也
教皇、イシュタル・ランゴバルド様の命により
裏切りの異教徒、南雲 ハジメを連行し尋問に掛ける!」
そう言って鎧の一団、神殿騎士と名乗った者たちはそう言い放つ
「裏切り者ですって…!?
彼が一体何をしたっていうんですか!?」
「悪いが貴様に話すことは何もない
おとなしく南雲 ハジメを引き渡してもらおう!」
そう言って間髪入れずにハジメの身柄を引き渡せと騎士たちは迫っていく
「‥‥断るって言ったら…?」
「無理やりにでも連れていく」
そう言って話しをしていた人物の両側から
鎧の人物たちが、歩みだしていき、ハジメを連行しようとする
「‥‥はああああ!!!」
すると、渚沙は何処からかに仕込んでいた槍で
その二人の鎧の人物を撃ち飛ばしていき、騎士団の前に立ちふさがる
「‥‥貴様、何のつもりだ!」
「‥‥悪いけれど南雲君は連れてなんて行かせないわ…
たとえそれで、教会と敵対することになってもね!」
そう言って武器である槍を構えて牽制していく渚沙
「我らに刃を向けるとは、エヒト様への反逆と見なすぞ!」
「‥‥あいにくだけれど、私にはエヒトなんてどうでもいいわ…
そもそも私は異世界人で、エヒトの事なんて知る由もないし
なにより私たちを勝手に呼び出して無理矢理戦いに赴かせる神様なんて…
はっきり言って敬う価値なんて感じられないわね!」
渚沙はハッキリ言い放った
「きさまああああ!!!!
この異教徒めがああああ!!!!」
それが騎士達の逆鱗に触れたらしく、体調格とも言える人物が
周りの騎士団に命令させて、渚沙の事も捕らえるように命令する
渚沙は技能である槍術と棒術をフルに使って
ハジメの事を護りつつ応戦していく、ステータスは低いが
それを技能を極めることでそれを補っているので、神殿騎士の者達とも
互角に渡り合って行くが、ハジメを庇いながら戦っているので思う様に戦えない
「‥‥誰か来てくれるまで、時間を稼げれば…」
渚沙はややきつそうな様子で騎士団たちと戦っている
しかし、戦いにおいて予想だにしないことは多いことで
「‥‥があ!?」
渚沙が突然、後ろの方から不意をつかれて殴られ
そのまま気を失って行き、その場に倒れこんでしまう
「(‥‥南雲…君‥‥…)」
渚沙は最後までハジメの事を考えながら、意識を失ったのだった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
そんなことが起こっていたのと同じ時期
香織たち一同は、全員呼び出されていた
数日前もあってまだ立ち直り切れていない一同が
なぜ突然、呼び出されてきたのかと首を傾げていた
すると、そんなクラスメートの元に訪れたのは一人の老人
「本日は私の呼びかけを聞いてくださり
本当にお礼を申し上げますぞ、勇者様方
本日皆様に、お伝えせねばならないことがあり
こうして集まっていただいた次第にございます」
イシュタル・ランゴバルド
聖教教会の教皇を務めている老年の男性だ
ハッキリ言って香織たちはもちろん、優花たちも纏も
あまり彼に対してよい印象をまったくもって抱いていない
檜山でのいじめの時でのハジメに対する態度
さらにはその時に怪我をしている彼を強制的に
実践訓練に参加させたことなどもあって印象はまったくもってよくはない
香織たちは正直に言ってあまり関わりたいとも思わないが
それをおくびに出すことなく、イシュタルの話しに耳を傾けていく
「実は皆様の中に、不当に力を得た
裏切り者がいるという事を皆様にお伝えしに参ったのです」
イシュタルの話を聞いて、驚いた反応を見せていく香織たち
「そんな…‥俺たちの中にそんなことをするやつはいません!」
光がそう言ってイシュタルに意見をしていく男子生徒
天之河 光輝
しかし、イシュタルが次に言い放った言葉が
その場に居る一同をさらに動揺させていった
「勇者様のお気持ちも理解します
しかし我々の方も確証をもってお伝えをしているのです」
「どういうことですか…?」
「…‥皆様も気が付いておられるはずです
なんの力も持っていない弱者であったが突然に
強力で圧倒的な力を得て、皆様に大きな動揺をおぼえさせたものが……」
イシュタルの言葉に香織たちは嫌な予感を覚えていく
かれが言うその者が誰なのかを理解してしまったのだから
「その者の名は、南雲 ハジメ!」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
イシュタルが名前を告げ
驚愕の表情を浮べていく香織たち
「ちょっと待って下さい!
確かに南雲は強い力を持ったけれど
だからって裏切り者だなんて、そもそも私たちは
その南雲のおかげでこうしてここに戻ってこられたのよ!!」
「そうだよ、みんながパニックに
陥ってる中で、南雲君は適切な判断を下していたんだよ!」
「大体、あの時私たちが命の危機に瀕したのは
檜山の軽率な行動によるものだし、責められるなら檜山の方じゃない!」
優花達グループの女子たちにいわれて、びくりと体を振るわせていく檜山
すると、イシュタルはその問いかけに対して、とんでもないことを言いだす
「ふむ…‥確かにメルド騎士団長殿より
そのように報告を受けました、ですがもしも‥‥‥
南雲 ハジメが仕込んだものであるとすればどうでしょう?」
「「「「「「「「‥‥‥‥はあ!?」」」」」」」」
優花たちも香織たちも何を言っているんだと首を傾げていく
「もしも、あの時檜山殿が起動させた転移のトラップは
実は偽物で、本当は南雲 ハジメが発動させたものである
それならどうでしょう?」
「そんなの‥‥そんなの無茶苦茶だよ!
確かに南雲君にはすごい能力があったけれど
南雲君はその力の扱い方を慣らしている途中だったんだよ!?」
そんな器用なことが出来るとは思えないし」
「それも説明がつきます‥‥‥
本当は力はとっくに扱いきれていて
そのことを皆様に隠していた、と言う事でしょう」
「そんな!
もし仮にそうだったとしても
どうしてあの時ベヒモスと戦ってくれたの!?
彼がどうして、私たちを陥れるようなことをするのよ」
ハジメを悪者に仕立て上げようとするイシュタルに
ハジメのために真っ向から意見していく香織たち
すると
「そこまでにするんだ香織、雫」
「光輝…?」「光輝君…?」
そう言って香織と雫を落ち着かせていく光輝
二人は彼の方を見やるが、次の言葉に絶句した
「二人が優しいのは俺が一番よくしっている…
だが、それでも現実を受け入れないとだめだ
イシュタルさんがそう言っているんだ
だったらそれが真実なんだ、あいつはそうだったじゃないか!
自分の犯した罪を認めずに、卑劣な手段で言い逃れして
しっかりとした罰を受けない、許してはいけない人間なんだから!!」
「「っ!?」」
光輝が言い放った言葉はまるでイシュタルの言っていたことを
真実であると受け止めたような発言であると受け止めてしまうのだから
「イシュタルさん、本当にすいませんでした!
夕社である俺が至らないばかりに、迷惑をかけてしまって…」
「いいえいいえ勇者殿、頭をお上げになってください
それほどに南雲 ハジメが狡猾だった、それだけの事ですから」
光輝はそう言って頭を下げていく
ハジメの愚行を止められなかったことに対する謝罪として
「ちょちょちょちょちょっと待てって光輝!」
だが、そんな彼に慌てて声をかけていく一人の男子生徒
坂上 龍太郎
光輝の幼馴染にして友人である彼である
「どうした龍太郎?」
「どうした、じゃねえって
いくら何でも気が早えんじゃねえのか!?」
「何言ってるんだ、イシュタルさんがしっかり調べて
たどり着いた真実なんだ、疑う余地なんか無いだろう?
それに、これで南雲がいっつも訓練に
顔を出さない理由も分かったじゃないか」
「どういう事…?」
光輝の言葉に最初に疑問を浮かべた女子生徒
南野 姫奈
彼女が不審そうに問いかけていくと
「あいつは陰で俺たちを陥れる算段を整えていたんだ
自分のやったことを棚に上げて俺たちに逆恨みして
そして迷宮において檜山に責任が行くように巧妙に実行した、
つまりはそういう事だ」
「いやいやいやいや…
そもそも、迷宮にどんな罠が仕掛けてあるのかなんて
知る由だってないんだから、無理があるにきまってるじゃない」
無理矢理に話しを纏めていこうとする光輝に姫奈は呆れるように反論していく
すると、そこにイシュタルが横やりを入れていく
「それでしたら、簡単な事です
南雲 ハジメには独自の情報網を持っていたとすればね」
「独自の情報網って?」
イシュタルの言葉に首を傾げる女子生徒
西宮 風香
彼女が質問を投げかけると、イシュタルは答えた
「魔人族ですよ、南雲 ハジメは裏で魔人族とつながっていたのです」
「「はあ!?」」
イシュタルの言葉に姫奈と風香は大きく声を上げていく
行き成り突拍子もないことを言われたので無理もないことだ
「まとめるとこういう事です
以前より皆様に敵愾心を抱いていた南雲 ハジメは
自分一人だけなんの力も得られていないこと現状に腹を立てていた
そんな彼のもとに魔人族が現れ、南雲 ハジメは甘言に乗って力を得た‥‥‥
推察の域を出てはいませんが可能性としては充分でしょう」
「そんな、いくら何でも無理矢理こじつけたような発言…
いくら何でもおかしいでしょう!」
イシュタルへの反論を止めるために
臆することなく発言を続けていく姫奈
しかし
「もうやめるんだ、南野さん」
「っ!?」
姫奈を引きとめていく光輝
「南雲に何の弱みを握られているのかは知らないが
もうそんなに自分をごまかさなくていいんだ、そもそも
君だってあの時に南雲にひどい目にあわされたんじゃないか…
君の気持ちも分かる、でもここにいるみんなは君の味方だ
だからもう、南雲におびえる必要なんてないんだ」
姫奈は何を言っているんだと言った様子で光輝を見ている
姫奈だけじゃない、風香も、香織も、雫も、優花達三人も同じ表情を浮かべている
だがそれは光輝の発言に対してだけではない
他のクラスメートの様子にも、動揺した様子を見せていく
クラスメートの口々から発せられるのは
ハジメに対する悪口、疑念、ひいては恐怖
彼の事をまるで異形扱いするような言い方である
「‥‥何だよ、お前ら…‥一体どうしたってんだよ!?」
龍太郎もまたクラスメートの変貌に動揺をおぼえている
「何を言ってるんだ龍太郎…
別にどこもおかしくないだろう」
「光輝…‥!?」
そんな龍太郎に話しかけていく光輝に彼は畏怖する
さらに光輝は臆面もなく、なおかつ自然に言いはなった
「ハジメは俺たちが想像していた以上の悪だった…
それが分かっただけなんだからな」
「っ!?」ゾクッ
光輝の言葉に龍太郎は背筋にゾクリと悪寒をおぼえる
今まで光輝の言う事に疑問を抱くことがなかった彼が
初めて感じた感覚で、もはや言葉が出ないほどに動揺していた
「そんな‥‥どうしたら…」
「‥‥南雲さんのところに行きましょう!
多少強引になるかもしれませんが、このままでは
南雲さんの身に危険が及んでしまうのは明らかです…
急いで南雲さんの元に…」
動揺する香織や他の面々に纏が耳打ちをする
多少強引ではあるが、それでも
彼自身に危害を及ばせないためにも、やむを得ない手段である
さっそく決行せんと纏が香織たちに言うと
彼女達も頷いで同意、この場をこっそり抜け出して
急いでハジメを援けに行かんとこっそり抜け出そうとしたその時
その部屋に鎧を纏った人物が入っていき、イシュタルのもとに行くと
「報告します、大逆の罪人
南雲 ハジメ及びその逃亡を
手助けしようとした、東雲 渚沙
両名の身柄を拘束いたしました!」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
その人物の言葉を聞いて絶句する一同
「そうですか、ではすぐに行う様に伝えなさい」
「はっ!」
そう言って、その人物はその場を去っていく
「行うって‥‥一体何を…?」
雫が恐る恐る訪ねていく、イシュタルは
それに対してさも当然と言わんばかりに答えた
「もちろん、愚かにもエヒト様の威光を
穢さんとした罪人を処刑するための準備ですよ
南雲 ハジメ及びその協力者である、東雲 渚沙をね」
「そんな!?
そう言えば、渚沙ちゃん…
この場に居なかったのはそう言う事だったの!?」
「南雲君の見に危険が迫っていることを予感していたのね…」
驚いた様子を見せる纏と、悔しそうに表情を強張らせていく姫奈
すると、クラスメイトの前の方から挙手された手が上がっていく
「待って下さい、イシュタルさん!」
その手を挙げたのは、光輝であった
「イシュタルさん、その件なのですが…
どうか、許していただけないでしょうか!」
「光輝君…!?」
「光輝…」
光輝の発現に香織と雫は思わず目を疑った
あんなにもハジメを悪者扱いしていたのに
嫌な予感をおぼえたが
光輝はそれを知る由もなく続けていく
「勇者殿‥‥申し訳ありませんが、いかに勇者である
貴方様のお言葉でも処刑を取りやめることは出来ません」
「…‥そこを何とかお願いします…
せめて南雲にチャンスを与えてあげませんか?」
光輝が必死に頼み込むが
彼の発現にはどうにも気になる部分があった
香織と雫はハジメのことを助けてくれるのかと
光輝への認識を改めんとしていたが、甘かった
「確かにあいつは協調性が無くて周りにいっつも迷惑をかけて
おまけにそのことをちっとも反省しようともしていない卑怯者だ
でも、それでも俺は、あいつが一言でも謝罪をしてくれるのなら
俺はあいつのことを許してやりたいんです、あいつだって今回のことで
みんなのことを危険にさらしてしまったんだ、流石のあいつだって自分の
やったことの重大さを理解できているはずです、あいつがそれを踏まえて
しっかりと反省してくれるのなら…‥俺はあいつを改めて仲間として迎え入れたい…
だからお願いします…‥南雲にチャンスを与えてやってもらえませんか?」
光輝の言葉を聞いて香織と雫、姫奈と風香はもちろん
優花達も、纏も光輝に対しておぞましさを覚えていった
確かに光輝の発現は仲間を見捨てないというのはあっているが
これらはあくまでハジメのことを悪だと決めつけた上での発言だ
そもそも今回の件でハジメが悪い要素など何一つない
罠に落ちたのはそもそも檜山の軽率な行動のせいだ
そもそも、トラップの発動のキーであったグランツ鉱石も
光輝がメルド団長の制止を聞かずに大技を放ったから現れた
逆を言えば光輝が調子に乗って
大技を繰り出さなければトラップにかかる事だってなかった
それに向こうでの戦いだってハジメは何もしなかったわけじゃない
ハジメは優花を通じて生徒達に冷静に呼びかけて言っていたし、判断も迅速だった
その実践訓練の時に目覚めた能力だって、彼はそのおかげで
ベヒモスを撃退することが出来たのだ、そんな彼を一方的に悪だと責め立てるなど
お門違いもいいところである
だが、運命の歯車もまた、彼の事を嘲るように回り始める
「それでは‥‥まいりましょうか‥‥‥?」
イシュタルが淡々と告げていくと
「はい…」
光輝は返事をして、その後をついていき
クラスメートもぞろぞろとついていく、その表情は
これから何が起こるのか、正直言って気が気ではない事
だが一部の中には無気味な笑みを浮かんでいる者もいる
これからハジメが死ぬ、そのことに愉悦を感じているがごとく
「南雲君!」
「香織!」
香織は急ぎ、処刑場所に向かい
それをほかの面々が急いで追って行く
各々が各々、その内に秘めたる感情を抱いて
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「南雲 ハジメ!
起きろ!!」
暗く閉鎖的な場所において
乱暴な物言いの声が響いていく
「起きろっと言っているんだ!」
そう言ってハジメの身体に水が勢いよくかけられる
ハジメはその水の冷たさによって意識を取りもどし
ゆっくりとぼやけた視界を見ていくと、やがて自分の身体が
どの様な状態になっているのか、ようやく理解ができてきた
両手を枷でつながれ、脚の方も折れているのか感覚がない
自分の今の状況を理解できたが、同時にどうして自分がこのような
状態になってしまっているのかという状態に理解ができずにいた
「…これは一体…!?
一体何が起こってるんだ…!?」
ハジメが状況を説明してもらおうとすると
行き成り顔面を思いっきり殴られ、折れた歯が口から飛び出していく
「がはっ!?」
「口を慎め、この裏切り者め!
貴様は自分が何をしでかしたか理解をしていないようだな!!」
目の前の男が言っていることが分からない
裏切り者、一体何を言っているのだと、そんな事だけだ
「まあいい、理解していないのならばさせてやる!
貴様の身体にしっかりとな!!」
結局ハジメが理解に追いつく前に、更に拷問が開始されて行く
それはもはや、説明するのもおぞましいほど壮絶な拷問の日々であった
爪をはがされたり、骨を折られたり
体を打ち付けられたり、とにかくひどいもの
「がああああああ!!!!!!」
ハジメの悲鳴が暗い部屋の中に響いていくが
残念ながらそれを聞いて、彼を助けようとする者はいない
そんなハジメにとって地獄の日々が数日にわたって行われて行く
こうして、拷問にかけられる日々から一週間が立とうとしたころ
「はあ…はあ…はあ……」
毎日のように殴られ続けていく
日々によって肉体的にも疲労が見えていくハジメ
その顔は殴られ続けたことにより
原型をとどめないほどにはれ上がっており
四肢の方も完全に感覚を失い、立つことは愚か
指一本ですらも動かせないほどになっている、もはや
目の前にいるのが南雲 ハジメなのかどうなのか
教えてもらわないと分からないほどにまでになっている
拷問を担当している言うならば
拷問官はついにしびれを切らせたのか
とうとう、拷問とは何なのかわからないレベルで
ハジメにさらに暴力をふるって行くと、そこに一人の神殿騎士の者が
「ふん…よもやここまで抗うとは、だがどんなに惨めに抵抗しても…
貴様の罪は決して消えることは無い!」
「はあ…はあ…」
ハジメは拷問官の言う事が理解できず、顔を上げていく
「どこまで、神の使徒の中に潜り込み
勇者やその同胞共に交じってその命を脅かさんとする
悪魔め!」
そう言ってハジメの腹を勢いよく蹴り上げていく拷問官
「かはっ!?」
もはや何度目かもわからぬ一撃がハジメを傷付けていく
「ついてこい!
貴様のようなものにふさわしい場所に案内してやる!」
「くう…」
そう言って乱暴に連れていかれるハジメ
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
ハジメが連れてこられたのは広場のような場所
そこには、多くの国民が集められており、声を上げている
その大半は当然ハジメに対しての罵詈雑言であり
中にはハジメに向かって石を投げつけていく者もいる
ハジメは投げ付けられた石に思わず顔をそむける
すると、その隣にもう一人の人物がいたことを確認する
それは
「‥‥はあ…はあ‥‥…」
東雲 渚沙であった
「…東雲さん!?
とうしてここに!?」
「‥‥ごめんなさい…
貴方を助けようと思ったのだけれど
それに失敗してしまって‥‥それでとらえられて…
尋問と言う名の拷問を受けて、それでここに連れてこられたの…
ぐう‥‥想定していたはずなのに、まさかこんな事になってしまうなんてね…」
彼女もまた、暴行を受けたのか体中に傷が見えている
さらによく見ると、来ている服切れ目からボロボロにされた跡がある
おそらくは、凌辱されたのであろう
ハジメのように顔の原型が整っているだけまだましなのかもしれない
だが、彼女の様子を見る限り彼女の方も
相当きついことをさせられたのだろうと言うのがうかがえる
「そんな…ひとい…」
ハジメは、この国の人達が渚沙にどのようなことをしてきたのか
それを想像するだけでも、少なくともいい気分の者ではないと言いきれる
だが、ハジメのそんな思いとは裏腹に教会の者達は事を進めていく
「ハイリヒ王国の国民の皆様、イシュタル・ランゴバルドです
今日ここに連れてこられし者は数日前、エヒト様のお力により
召喚されし神の使徒、勇者御一行とともに召喚されたもの、名を
男子の方を南雲 ハジメ、女子の方を東雲 渚沙ともうします
実はここにいる二人が、使徒を偽った
悪魔の化身であると言う事をお伝えしに参りました」
「え…?」
イシュタルの演説を聞いて、さらに驚きの様子を見せていくハジメ
「数日前、我々は勇者様御一行を魔人族を退ける存在へと導く
そのための実践訓練にと、かのオルクス大迷宮にへと赴かせました
最初のうちは、迷宮内の魔物を前に奮闘していき、順調だったのですが
やがてある場所にて、悪意ある罠にかかりその先において
かつて最強と呼ばれた冒険者ですらも敵わなかったとされる強大な魔物
ベヒモスに襲われ、命を奪われてもおかしくない状況に陥りました
しかし、そんな時でも勇者様は同胞や騎士団を導き
そのおかげで誰一人として犠牲になることなく無事に帰還することが出来たのです」
ハジメはイシュタルの説明を聞いて違和感を覚えていく
それと同時に嫌な予感が脳裏を横切っていき、眼を見開いている
「ではどうしてこのような事態が起こったのか‥‥‥
それは、使徒の中に潜み、その命を狙わんとした
悪魔の使いが使徒たちの命を奪わんとするために
仕組んだものであると言う事が、調査の結果明らかになりました!
そしてその、悪魔の使いこそが
ここにいる南雲 ハジメと東雲 渚沙、この両名なのです!!」
「…なんたって!?」
イシュタルの発現とともにその場に来ていた
国民たちが騒ぎ立てていき、たかが外れたように
ハジメたちを罵倒し、石だの卵だの色んなものを投げつけていく
「くう!?
とうしてこんなことに…」
「‥‥ごめんなさい、南雲君…
私にもっと力があれば
貴方の事を助けられたかもしれないのに…」
渚沙がハジメに話しかけていく
「そんな、東雲さんか謝ることしゃ…」
「‥‥いいえ、こうなることは予測していたのよ…
あの教皇は以前から、私達の事を排斥するつもりだったのよ…
怪我が完治していない貴方を実践訓練に行かせたのも、自分達の
やり方に反抗的だった貴方を実践訓練中の事故と言う形で葬る事が狙いだった…
でも、貴方は帰ってきてしまった、それも教会も想像だにしない力をたずさえて…」
渚沙が語り始めていく
「‥‥だから、教会はこれまでにあった計画を変更したのよ…
あの時みんながトラップにかかってベヒモスに襲われたのは
南雲君が魔人族と手を組んで自分達の脅威になり得るみんなのことを
偶然を装った、自己に見せかけて殺そうとした、そういう形にしてね…」
「…そんな…そんなの……」
信じられない、そう言おうとするが
自分達の今の状況が自分自身にそうなのだと理解させていく
「‥‥ごめんなさい…
私がもっと早くに行動に移すことが出来ていれば…
貴方の事を助けられたかもしれないのに…
本当に‥‥本当にごめんなさい…ごめんなさい‥‥…」
ハジメから顔を背けて
何度も何度も謝罪の言葉をかけていく渚沙
ハジメは渚沙の話を聞いて、もはや言葉が出なくなっていたこのものと
しかし、そんな彼の思いとは裏腹にさらに状況は続いていく
「本来ならば、このようなものはすぐにでも
処刑するべきであると思うのですが、このように
どうしようもない裏切り者と話をさせてほしいと勇者殿が申されました
よってこの場を借りて話し合いの場を設けさせてることにいたしました
それでは、勇者殿‥‥‥」
イシュタルがそう言うとハジメから見てイシュタルのいる方の
更に奥の方にある通路の方から誰かがやってきている、二人の鎧を来た人物達
神殿騎士に連れられてやって来たのはハジメや渚沙もよく知る人物
天之河 光輝であった
「…あまのかわくん…!?」
思わぬ人物の登場に眼を見開いていくハジメ
光輝はハジメの前に立つと、静かに口を開いていく
「…‥南雲…まさかこんな形でお前と向き合うことになるとはな…‥…
イシュタルさんに頼んでこうして
お前と話し合いのための場を設けて貰ったんだ…
お前としっかりと話をするためにな…」
「…話…?
ほくと一体、何の話を…?」
ハジメは弱弱しくも自分の目の前にいる人物に問いかけていく
「単刀直入に言う、南雲…
お前の犯した罪を認めてしっかり謝罪しろ…
そうしたら、俺がイシュタルさんに頼んで
お前を解放する様に言ってやる、この場でしっかりと誠意をしめせ」
「…何なんたよ罪って…
ほくは何にもしていない…
たいたい、ましんそくと手を組んてるっていったけと
そもそもましんそくなんてあったことも見たこともないんた…
とうやって手を組むなんててきるんたよ…」
ハジメはボロボロになった状態で弱弱しくもそれでも口を開いていく
「そうやってとってつけたような方便で言い逃れができると思っているのか!?
もういい加減、観念して正直に自分の犯した罪を白状しろ!」
「…無理にきまってるてしょ、そもそも罪なんて犯してないんた…
なにをはくしょうしろっていうんたよ…」
すると、光輝はハジメの事を乱暴に掴みあげて声を荒げて言う
「いい加減にしろ、どうしてお前はいっつもそうなんだ!
自分の犯した罪を償おうともせずに
いっつも逃げてばっかりで、責任逃ればっかりして!!
あの時だってお前は卑怯な手を使って責任逃れして
受けるべき罰をしっかり受けることなくのうのうとして…
どこまでお前は周りに迷惑をかけ続けてれば気が済むんだ!」
「ふさけるな!
そもそもほくは平穏にすこしたかったたけた!!
それなのにくたらない因縁ていっほうてきに突き放して
ほくか何をしたっていうんたよ、ほくかとうしたっていうんたよ!!!
ほくの罪ってなんなんた、オタクたから?
白崎さんに構われてるから、ステータスかわからないから?
ほくか周りとはちかう力を持ってるから?
そんなのとれもほくししんかのそんたものしゃないしゃないか…
それなのになんて…なんてほくはっかり
いっほうてきに責められないといけないんたよ…
父さんも母さんも先生もたれもかほくと悪いときめつける…
どうしてほくばっかり…こんな目に合わないといけないんたよ…」
ハジメは涙を浮かべながら問いかけていく
「‥‥南雲君…」
隣でともに磔にされているハジメをじっと見つめる渚沙
すると
「…‥どうしてだって?
そんなことも分からないのかお前は…?」
光輝はそう言って怒りに身を震わせていく
「…え…?」
「さっきから聞いていればまるで自分が被害者のように言っているが
お前が言っていることはすべて、お前自身が招いたことじゃないか!
香織がお前に構っているのは協調性もやる気もないお前を気遣っての事だ
それなのにお前は、香織の優しさを踏みにじって態度を改めようとしない…
そんなの責められて当然だろう!!
平穏に過ごしたいって言うならそれに見合う生き方をすればいいだけの話だ
周りに合わせようともせず、そのための努力もしないでだらだらしてばっかり
この世界にきてからもそうだった、みんながみんな一生懸命
魔人族との戦いに挑むために鍛錬をしていく中で、お前は訓練をさぼってばかり…
挙句の果てには倒すべき魔人族と手組んで不当に力を得て、挙句に
逆恨みで俺たちのことを殺そうと、俺たちを罠にまで嵌めるなんて…
そんなお前を認める奴なんて居るわけないだろう!!!」
光輝はハッキリといい放った
そして、その目はハジメにはっきりと伝えている
お前は死んでしかるべき存在であるのだと言う事を
「…‥お前がどんなにろくでもなくても
それでもお前は仲間なんだ、せめてもの情けに
お前がしっかりと自分の犯した罪を認めて
しっかりと償ってくれたらお前を解放してやろうと思ったが…
もういい、お前には幻滅した…
イシュタルさん…‥あとはよろしくお願いします…」
「分かりました‥‥‥」
そう言って騎士団に連れられてその場をあとにしていく光輝
「まったく何という愚かな事‥‥‥
折角勇者様が与えてくださった慈悲を
無下にするとは、エヒト様の恩恵を受けられぬ
愚か者はその結末も愚かしいと言う事が証明されましたな‥‥‥
では、始めろ!」
イシュタルがそう言って指示をすると
執行人たちがハジメと渚沙を取り囲んでいき
剣を二人の命を手にかけていこうとする
そこに駆け付けていく複数の影が
「南雲君!」
「渚沙ちゃん!」
渚沙のほかにハジメの味方であった香織と纏であった
二人はハジメと渚沙を助けに行かんと
飛び出していこうとするが、騎士団に止められていく
「離して、行かせて!
お願いだから、こんな事止めて!!」
「渚沙ちゃん!
絶対に助けるから!!」
それでも二人のもとに行こうとする香織と纏
だが、二人は女性であることを差し引いても
騎士団、オマケに複数人に抑えられては、身動きは取れない
「香織!」
「雫、あぶない!!」
雫も香織のもとに行こうとするが
姫奈に止められる、よく見ると騎士団の面々が立ちふさがっている
仮に向かおうとしてもあっさり止められるだろう
「よせ、香織!
君が言ったところで結果は変わらない!!
南雲たちが選んだ選択だ、君が出張っていい問題じゃない!!!」
だがその香織を後ろから引っ張る形で引き離していく光輝
だが、香織はそんな光輝を敵を見る様な目で見つめながら言う
「ふざけないで!
南雲君も渚沙ちゃんも何にも悪くないじゃない!!
あの時、南雲君がいなかったら
私たち全員生きてもどることが出来なかったかもしれないんだよ!?
南雲君は自分にひどいことをしてきた
私達の事ために全力で立ち向かってくれたんだよ!?
光輝君だって、あの時の南雲君の姿を見たでしょ!?
それなのにどうして‥‥どうしてこんな…こんなひどい事‥‥…」
「イシュタルさんが言っていたじゃないか!
そもそも、南雲のあの力だってどうやって
手に入れたのかもわからないんだ、だったら
魔人族と手を組んで、不当な力を得たと考えた方が自然だ!!」
「じゃあ、南雲君が魔人族と手を組んでいたって証拠はあるの!?
証拠もないのに、どうして南雲君の事ばっかりせめるの!?
あの事件の時だってそうじゃない、証拠も何もないのに
檜山君達の証言だけをうのみにして、みんなで南雲君をせめて…
南雲君が何かした!?
南雲君が光輝君や誰かの家族でも傷つけた、奪った!?
南雲君はもう十分すぎるくらい苦しんだのにどうしてそれからも
苦しめられ続けていかないといけないの、どうして南雲君ばっかりが報われないの!?
南雲君のような裁かれるべきでない人間が裁かれて
南雲君を苦しめている奴らがへらへらと何事もなく過ごしてる…?
ふざけないでよ!」
香織は声を荒げて、光輝に不満をぶちまけていく
だが、光輝には香織のそれを冷静さを失って混乱しているように思えたようだ
「大丈夫だ、香織…
香織は混乱しているだけだ
香織は優しいから現実を受けとめられないんだろう…
だが大丈夫だ、俺はどんなことがあっても香織を
ここにいる誰の事も絶対に裏切らない、最後まで守り抜いてみせるから…
だから、落ち付いて気をしっかり持ってくれ!」
だが、光輝の的外れな言葉に香織は怒りを覚えていく
「気をしっかり持ってくれ…?
目の前で南雲君が殺されそうになってるのに
逆になんで落ち着くことが出来るって言うのよ!
誰も裏切らない…?
南雲君のことは裏切ったじゃない!!
現実を受け入れられずに混乱している…?
それは、光輝君やみんなの方じゃないの!!!」
そう言って光輝に勢いよくとびかかって掴みがかっていく香織
「そもそも光輝君はいっつもそうだったじゃない!
南雲君のことをろくに知ろうともしないで
一方的に勝手に悪者扱いして、それを改めようともしないで…
どうして光輝君は相手をを知ろうともしないで決めつけるの!?
どうして自分の正しさを微塵も疑わないの!?
私はもう…‥光輝君が何をしたいのか…わからないよ‥‥…
分からなくなっちゃったよ!」
香織はそう言って涙を浮かべていき、訴えるように言った
「香織…?」
いつもと違う香織の様子に戸惑う様子を見せていく光輝
すると向こうの方から
「うあああ!!!」
「ああああ!!!」
ハジメと渚沙の悲鳴が聞こえていく
「南雲君!」
それを聞いて急いでハジメのもとに駆け付けようとしたが
其れを神殿騎士の者達に止められてしまう、それでも向かわんとしていく香織
「もうやめて!
もうこれ以上、南雲君を苦しめるのはもう…
もうやめてええええ!!!」
香織は必死に呼びかけていくが誰もそれに耳を貸そうともしない
それどころか
「っ!?」
香織は何者かに首元に衝撃を叩き込まれたことで、意識を手放していった
それが、香織がハジメの姿を見た、最後の光景であった
かくして南雲 ハジメは東雲 渚沙とともに
神の使徒に紛れ込まれた悪魔の使いとして、教会や国民たち
クラスメートたちに見守られながら、処刑されたのであった
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
「うあああ!!!
はあ…はあ…はあ……」
「‥‥はあ…はあ‥‥…」
ハジメと渚沙は処刑の苦しみに悶えながらその意識を遠のかせていった
すると、突然二人はどう見ても
さっきまでいた景色とは全く違う場所に連れてこられた
真っ黒で小雨が降り注ぎ、月明りのようにあたりが
うすぼんやり輝いており、そこに照らされて見えているのは
枯れきった木々と、足がやや浸かる程度の水面に何もない地面
「…ここは一体…僕は確か、あの時死んだんじゃ……」
「…その通りだよ…君は死んだんだよ……
本来は背負うはずのない罪を背負わされてね…」
「‥‥っ!?
誰…!」
あまりのことに混乱する二人に声をかけ
そんな二人のもとに足音が自分達の方に向かって聞こえてくる
やがて、そこに現れたのは
「…司書さん…!?」
図書室で二人が良くしてもらっていた司書の女性であった
「…ここは、精神世界…
君達は精神のみがこの場所にやってきたのさ…」
そう言って二人の前に止まっていく
「…どうして…僕たちをここに連れてきて?」
「…どうしてって、それは君達自身が一番分かってるじゃない?
君達はさっき死んだんだよ、君が信頼していた仲間たちに裏切られてね…
ううん、その認識も違うね、だって彼等にとって君達は仲間でもなければ
クラスメートでもない、自分達と言うクラスの中に紛れ込んだ異物、そう言う認識だ…
だからこそ君が処刑されると知っても誰も君の事を助けようとしなかった…
それどころか君が殺されるってわかっててみんなどうしてたと思う?」
「‥‥どうしてたって…一体‥‥…?」
渚沙が恐る恐る
「みんな笑っていたよ…
君が傷つき悲鳴を上げて苦しんでいる姿を
まるで、娯楽を楽しんでいるかのようにね…」
「嘘…だろ…!?
いくらなんでもそんなの…」
ハジメは恐る恐る聞いていくが
司書の女性は有る光景を二人に見せた
そこに映っていたのは
ハッキリ言って目を疑うようなものであった
ハジメが目の前で処刑されているのをまるで
興奮する様に見つめているクラスメート達がいた
「ぎゃははは!!!
見ろよ、あいつ悲鳴上げて苦しんでるぜ?」
「あーっはっはっはっ!!!
ほんとに無様だよな、あいつ!」
「あー面白れ、ほんっと気分が晴れるわー」
「だよな、ほんとにいい気分だぜ」
狂ったような笑顔を浮かべていくもの
「ざまあないわね、あんな奴死んで当然なのよ!」
「天之河君の親切を無下にするなんて!」
「むしろ、どうしてあんな奴が今の今まで生きてたんだろうね?」
「ほんと、生まれてこなければよかったのよあんな奴」
目の前で苦しんでいるものを罵倒する者達
「エヒト様には向かう、愚か者に死を!」
「我ら人類をうらぎった罪人に報いを!」
教会の者達はハジメを見て不敵に笑みを浮かべている
ーあんたのような奴は幸せになんかなれないー
ーそれがお前の運命なんだー
「うああああああ!!!!!!」
ハジメは耳を抑えながらその場に蹲るように崩れ落ちる
「南雲君!
く…」
ハジメを心配しつつ、映し出された光景を辛そうな表情で見つめている
「…つらいだろうけれども、これが現実だよ…
本当に惨めだよね、あんな奴らを助けるために
必死な思いで頑張ったのにね、所詮あれが周りの君への評価だったのさ…
その証拠に君が処刑されて悲しんでいる人間はいない…
それどころか、君が苦しんでいるのをまるで楽しそうに見ている…
なにより君はあそこで死んで、あいつらはこれからぬくぬくと生きていく
教会からの援助を受けて、オマケに国民たちからも支持されていってね…
本当に君は救われないね…報われないね…本当に、本当に救いようがない」
「…黙れ…」
「でも間抜けなのは君の方だよ…
だって君も分かったんでしょ?
あいつらが君のことをどう思っているのかなんて…
でも君はありもしない希望にかけて、あいつらのために奮闘した…
その報いがこれだなんてね…ホントこれが、世も末って奴だね…」
「…黙れ…」
「まあ別に君一人が死んだ程度で世界がどうにかなるって言うなら
君も多少は救われたのかもしれないけれども、君にはそんな力なんてない…
弱い奴が淘汰されて行くのは自然の摂理、こっちの世界でもあっちの世界でも一緒…
君なんて、世界から見れば失ってもなんとも思われないちっぽけな存在なんだものね…」
「黙れ黙れ黙れ…!」
「本当に君は、存在そのものが何の価値もなかったってことだもんね…」
「黙れええええええ!!!!!!」
ハジメは今までのおとなしい様子とは似合わないほどの激動を上げる
「どうして僕ばっかりがそんなに言われないといけないんだ!
僕だってしっかりぼくなりに頑張ってきたんだ
この世界でもあっちの世界でもそうだ、僕はただ僕なりに
色々と工夫を咲いていただけなのに、何でそんな風に言われないといけない!!
なんで僕ばっかりが責められないといけないんだ…何をやったって報われないなんて…
これじゃあ…僕の人生は…いったい何だったんだ……
何のために生まれて何のために生きて何のために死んだんだよおおお!!!」
「‥‥南雲君…」
狂ったような様子意を見せていくハジメに何も言えなくなっていく渚沙
「僕は一体…何だったんだよ…」
そう言ってその場に膝をついていくハジメ
すると、そんな彼の前に司書の女性が立っていく
「…君が一体何なのか…その意味を…私が上げよっか……?」
「…え?」
そう言ってさっきまでの態度が一変
優し気な様子で語り掛けていく司書の女性
「君が一体何なのかなんてはっきり言って誰にもこたえられない…
当然だよね、だって君は君でしかないんだもの…
だから、君の生きている意味を教えて上げることは
出来ないけれども、君の生きている意味を導いてあげることは出来るよ?
だからね…このトータスと君のいた世界を真っ黒にしてみない?」
「…どういうこと…?」
司書の女性の歪んだ顔を見てやや圧倒され気味になっていくハジメ
「…君はずっと考えていたんじゃないか?
どうして自分ばっかりがこんな目に
自分はどうして不当に扱われないといけないのかを…
ずっと、ずっと考えていたんじゃないかい?
私がその答えを教えてあげる、その答えは至極単純…
弱いからだよ…」
彼女はハジメに不気味な笑みを浮かべながら話をしていく
「どうして君が犯してもいない罪をかぶせられたと思う?
どうしてそれで、君は周りから見放されたと思う?
どうして、この世界での君のやったことは踏みにじられると思う?
どうして君はここで殺されると思う?
その答えは、君が力がないからだ、弱いからだ
力のない奴は力のあるやつに食われるのは世の摂理だ…
法律だとか倫理だとか、そんなものはまったく何の関係もありはしない…
君はたったそれだけのことですべてを失ってしまったと言う事だよ…」
彼女に言いくるめられる様に納得させられていくハジメ
「…でもね、君は運がいい…
だって君にはこうしてここで
世界を圧倒できる力を手にする機会が得られている…
力さえあればどんなことも許されるのはお前を追い込んだ
あいつらが証明してくれたんだ、だったらあなたもトータスを…
君のいた世界を好き勝手にすることのできる力をここで得られるんだ…
君はもう人としては死んでいる、だが人やすべての者を超越できる力を得る素質がある…
だったら後は…君がその首を縦に振るだけだ…」
女性がそう言うと、ハジメはしばらく悩んでいる様子を見せていく
「…ねえ、司書さん…
もしもその力を手に入れられれば
僕はもう二度と、こんな理不尽な運命に
振り回されることはなくなるんだよね…?」
「…それについては君次第としか言いようがないね…
私がするのはあくまで君に力を与えてあげることだけだし
力を得たのだとしても君のその運命とやらについては興味もない…
あくまで、君が勝手にどうにかしろってことだよ」
女性がやや突き放し気味にそういうと
ハジメは顔つきを変えて彼女の方を見る
「…わかった…
貴方の提案、受けるよ!
僕にそれ以外に道がないって言うなら
僕は貴方の提案を受け入れる、だから僕に力をくれ!!」
「‥‥南雲君!?」
渚沙は其れを聞いて、慌てて彼に呼びかけていく
「‥‥南雲君、本当にそれでいいの?
この彼女の提案は遠まわしに貴方に
ひとであることを捨てるように言っているのよ…
それで力を手に入れたとしても、その先に
待っているのは地獄、そうだともいえる苦しみに道なのよ!?」
「…分かってる!
でももう地獄なんていやと言うほど
経験してきたんだ、今更地獄が同かなんてどうでもいい…
僕は…僕に課せられた理不尽な運命を…変えたいんだ!」
ハジメの決意を秘めた瞳を見て渚沙はふっと目を閉じる
「‥‥わかったわ…
貴方がそうすると決めたのなら
私はもう何も言わないわ、でも…
その代わりっていう訳でもないけれど…
あなたにお願いがあるの…」
渚沙はそう言って女性の方を見る
「何かな…?」
「‥‥その提案だけれど、私にもやらせてほしい…
私はね、あんな奴らでも認めるところはあるんだって
あいつらの中にある少しの善意に期待をしていたんだ…
でも、結局あいつらは何にも変わらなかった…
あいつらは結局、私の思った通りの奴らだった…
私も意味も分からずに裏切られて、殺されてしまって…
いまさらもう戻ることなんてできない、どうせ戻れないなら…
私は彼、南雲 ハジメ君と運命を共にしていきたいと思う!」
そう言って女性の前から見て、ハジメの隣に立って言う
「東雲さん…?」
「‥‥貴方だけに全部を背負わせたりなんてしないわ…
どっちにしろ私だって人としての生は終わっているんだもの
だったらもう戻ることなんてできない、それだったら私は南雲君…
あなたとともに最後までこの道を進んでいく!
それは、私なりの覚悟よ!!」
そう言って女性の前に立って、決意を口にしていった
すると
「…フフフ…
そうか…それはそれでいいかもね…
まあ、せいぜい、その力を
好きなように使ってみるんだね…」
そう言って彼女は二人の方に
ゆっくりと手をかざしていった
こうして、ハジメはまたも意識を失って行った
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥
… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥
トータス
神に導かれ、人々と魔人族たちが洗いあう狂気の世界
その世界に召喚された勇者と呼ばれた少年と
共に導かれし同胞の少年少女達、その中に二人
世界に嫌われ、傷つけられた少年と
力を与えられず、見放された少女がいた
二人はその世界の人々や
共に召喚されしクラスメートの悪意によって
ともにその生涯を終えた
だが、少年たちのもとに残った少年の力は残り
それはこの世界で暗躍をしていた悪意ある者の手により
九つに分けられていった
自身の力によって周りから認められるという驕りから傲慢
誰よりも傷つきながらもそれを何とも思わぬように張った虚飾
どうして自分ばかりが傷つくんだという思いから生まれた嫉妬
自分を傷付けあざける者達への怒りから生まれた憤怒
自身が傷つけられることによる諦めから生まれた怠惰
頑張る事への意味を理解することが出来ない無知からの憂鬱
自分の運命に抗う力を求めていく重いから生まれた強欲
誰かに認められたい、欲されたいという貪りから生まれた暴食
愛されたい、求められたいという重いから生まれた色欲
九つの罪は、悪意ある者によって分けられていき
世界中にばらまかれて行った、やがてこのばらまかれた罪が
やがてこのトータス、ひいては地球
この二つの世界を大いに蹂躙していくことになるのを誰も知らなかったのだった
原罪者は世界への憎しみとともに動き出す
この物語の結末は?
-
ハジメを殺す、デッドエンド
-
ハジメを救う、トゥルーエンド
-
ハジメを倒す、バッドエンド