芦毛の怪物と白狼の化物   作:Mituba

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第八話 敗北と誓い

 

『ゴールイン!確定ランプが点灯しました!1着はフジマサマーチ!2着はオグリキャップ!3着は…』

 

 

巨大なモニターに映されたレース結果

 

オグリキャップはおしくも1着を手に入れる事は出来ず初のデビュー戦は2着という結果となった

 

じっとモニターを見上げるオグリキャップの下に応援しに来たチームメイトのベルノライトが走って行く

 

二人でなにかを話し終えてから観客側にいた彼を見つけオグリキャップとベルノライトは彼の下まで向かった

 

 

「すまない。負けてしまった」シュン

 

 

悔しそうに言っているがいつもの表情で言うせいでとても悔しんでいるように見えない

しかし彼女の左手から滴り落ちる血を彼は見逃してはいない

 

モニターを見上げる間、ずっと拳を握りしめ、彼女の爪は自身の手の平の肉を裂き、血を滴らせていた

それは正しく敗北による悔しさによるものだった

 

最後の100m、ゴール目前まで迫った瞬間オグリキャップは靴の損傷により足を滑らせ最後の最後で失速してしまった

 

今回の勝負では彼女は靴の損傷によるハンデを背負ってしまっていた

しかし、結局それらはトレーナーであるキタハラが気づけなかった事と本人がそのまま戦いに挑んだ結果だ

 

武器の不調によって全力を出せずに戦えなかった等という言い訳は意味をなさない

敵を罠に嵌めて蹂躙しようが、毒ガスをばら撒き民間人諸共敵兵士を屠る非人道的だろうが最終的に勝利すればいい

 

結局は結果が全てなのだ。それは大昔の戦争時代から変わらない理論だ

 

 

……ポフッ

 

 

「むっ…」

 

 

彼の大きな手の平がオグリキャップの頭に乗る

彼は相変わらず無表情のままオグリキャップを見下ろす

 

数分そうしてから彼は手を戻し、そのまま去っていった

 

「……?」

 

「きっと、励ましてくれたんだと思うよ………たぶん」

 

 

手を置かれた頭を両手で押さえながら首を傾げるオグリキャップにベルノライトは負けて悔しがっているオグリキャップに対して励ましてくれたんだと言った

 

それを聞いてからレース場を後にしようとする彼の後ろ姿を見て「そうか…」と呟いた

 

 

敗北に対し言い訳をするでもなく、しかし敗北に対する悔しさを身に覚え、未だに戦意を失っていないオグリキャップを彼は内心喜んでいたようだった

 

勝利は絶対だ

だが決して敗北を味わうのは間違いなどではない

 

敗北しても、敗者の烙印を押されても、崇高な意思をねじ曲げられても、泥を被り無様な姿になろうとも

 

生きていれば幾らでも好機は訪れる

 

あの歓喜の悪夢の中で主人と彼らは何度も敗北を味わった

敗北し、糧とし、そして学んで来た

 

そして最後の大戦争にて彼らの永き悲願を果たした

 

 

たった一度の敗北

しかして彼女にとって大きな意味を持った敗北だった

 

負けたなら次は勝て

 

また敗北してもまたそれを糧にして次の戦場へと挑め

 

何度も敗北し、負け続けの中で最後の勝利を手にしようと足掻いた彼でも出来た事だ

 

彼女、オグリキャップにも出来る筈だ

 

 

 

 

 

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後日

 

 

カサマツトレセン学園

 

 

「靴……ですか?」

 

「あぁ、こいつ多分どれ買っていいか分からねぇと思うからついてってやってくれねぇか?」

 

「むー…」

 

 

キタハラからオグリキャップの靴代が入った紙封筒を手渡され、その中身を確認したベルノライト

 

彼とオグリキャップは床に置かれた靴に視線を向けていた

よくこんな状態で挑もうと思う程ボロボロになっている。物としてはこれだけ使い続けてくれた事はむしろありがたい事だろうか

 

 

「はぁ…それはまぁいいんですけど…たぶんこれじゃ足りませんよ」

 

「…え?」

 

「オグリちゃんの場合 普通の靴だとまたすぐダメになっちゃいますから多少高くても丈夫なの買っておいた方が…」

 

「うっ……だよなぁ…(まずいなぁ、最近出費したばかりなんだよな)」

 

「それに蹄鉄も消耗品ですからいくつか買っておかないと…」

 

「わ、わかったからよ!カード渡すから!これで必要なの揃えてこい!(くそっ!背に腹はかえられねぇか)」

 

「あ、蝶」

 

 

自分の事だと言うのにオグリキャップは自由奔放だった

 

そんな中、彼がベルノライトの肩を叩く

 

 

「あ、えっと、なんですか?」

 

 

彼は自分に向けて指を差し、その後ベルノライトとオグリキャップに向けて指を差した

 

 

「あ……え?」

 

「……もしかして着いて行きたいんじゃないか?」

 

「着いてくる、ですか?」

 

 

彼は頷いて肯定を示した

 

 

(あ、帽子に蝶が)

 

 

 

 

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翌日

 

彼とオグリキャップ、ベルノライトは靴屋にてオグリキャップの新しい靴を探していた

 

 

(かわいい…)ピコピコ

 

 

オグリキャップと彼は並びながらしゃがんで目の前に置かれた靴を見ていた

 

機能性より見た目を重視したキュートな動物やハートにリボンと言った装飾が施された、正に女子が好みそうな靴

彼は耳をピコピコ動かしながら眺めるオグリキャップにこれがいいのか?と靴を指さす

 

 

「うん、かわいいぞ。君もそう思うだろ?」ピコピコ

 

 

違う 感想を聞いた訳では無い

 

 

「オグリちゃんオグリちゃん!これとかどう!?」

 

「…へ?」

 

 

笑顔でオグリキャップに靴を持ってきたベルノライト

それは先程の靴とは違い、スポーツ専用と言った見た目の靴だ

 

それを持って見ているオグリキャップの顔は無表情の筈なのに何処か絶望めいた目をしていた

 

 

「防水・耐滑で特殊繊維強化樹脂の先芯入り!オグリちゃん、足で掻く力強いからつま先の強度が心配だったんだけどこれなら大丈夫そう!」

 

「うん…まぁ…確かにこれなら破れそうにない…な」

 

 

明らかに声色に元気がないオグリキャップの肩に手を乗せる彼

 

 

「よし、決まり!それで蹄鉄なんだけど…」

 

 

それからはベルノライトが蹄鉄について色々話し始めた

 

聞いていた彼とオグリキャップの二人の背後から宇宙めいた背景が浮かぶ

 

 

「なんというか…詳しいんだな。専門家みたいだ」

 

「あぁ、実はウチの実家ウマ娘専門のスポーツ用品店なんだ。小さい頃から見てて少し知ってる位だけど、オグリちゃんの役に立てて良かった」

 

「…………」

 

(…もう負けられないな。今度は勝つ!)

 

 

ベルノライトから渡された靴をもう一度見てからなにか心を決めた様にその双眸から強い意思を宿していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「すいません。荷物持って頂いちゃって」

 

 

買い物を済ませて、買った物をトレセン学園に運ぶ為に荷物を持つ彼に対して謝罪するベルノライト

 

彼は構わないと首を振る

 

 

「……ねぇオグリちゃん」ボソッ

 

「なんだベルノ?」

 

「前から気になったけどあの人の名前教えてくれない?トレーニングの補助をして貰ってからいつまでもあの、とか言うのもなんだし」

 

「?…なら聞けばいいんじゃないか?」

 

「うぅ、実はまだ慣れてなくて、怖くて聞けないんだ。だから教えてオグリちゃん」

 

「……」

 

「……オグリちゃん?」

 

「……」タラタラ タラタラ

 

 

何故かそっぽを向いて喋らなくなったオグリキャップ

その顔からは汗が流れている

 

 

「……もしかして」

 

「……」タラタラ タラタラ

 

「オグリちゃんも知らないの?」

 

「……ごめん」

 

「物置部屋で数日間、ずっと相部屋なのに……知らないの?」

 

「……ごめん」

 

「オグリちゃん……」

 

 

未だにそっぽを向いてただ謝る事しか出来ないオグリキャップを心底心配そうな目で見るベルノライト

 

そんな二人を少し離れた場所で早く来ないかと待つ彼の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

(ていうか今考えたら、異性と相部屋って……///まぁオグリちゃん、少し抜けてるからなぁ……たまに様子を見に行ってあげよ)

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