DERBYTALE (AU) 作:フラウィー
まぁ、もう遅いんですけども。
地下世界の皇帝。
彼女はウマ娘たちを統率し、この世界に平和をもたらしている。
だがそれも、一時的なものに過ぎない。
つい最近新しく建て替えたばかりの新寮では、数人のウマ娘が集まっていた。
皇帝、そしてその直属の兵士長、人体研究者、そしてグラスワンダーだ。
グラスはただ、皇帝に報告していた。
にんじん大農園で起きていることを。
それを聞いて最初に口を開いたのは兵士長だった。
「──で、テメェは懐柔されて帰って来やがった。つーことかァ?」
「懐柔? 御冗談を。私はただ面白そうだと、そう判断しただけですよ?」
「ふぅン……私もそれは、興味深いねぇ」
そう言って研究者は楽しそうに笑う。
グラスと兵士長は睨み合いをしていた。
そしてそんな二人の合間に割り込んだのが、皇帝だった。
「私は結果を聞いているのだ。タキオン、どうなんだ」
その言葉は一つ一つが、強大な圧のようなものであった。
三人は言葉を聞いた瞬間、ただ黙ることしかできなかった。
黙って膝をつくことしかできなかった。
だが研究者は、少し間を開けて口を開く。
「……皇帝陛下。かの人間が言ったことは、可能かと……ですが、もっともな方法は、皇帝陛下が直接そのソウルを吸収するのが一番かと思われます」
「だとさ。残念だったなァ? グラスワンダー」
「結果がどうであろうと、私はただ皇帝陛下の命令を聞くだけですから」
そう言って兵士長に微笑む。
当然その目は笑っていなかったが。
研究者の言葉を聞いた皇帝は少し考え事をする。
顎に手を当て、数分後。
口を開く。
「この件は一度、預からせてもらう。諸君、各々の任務に戻りたまえ……グラス、君は少し残れ」
「はっ」
兵士長と研究者はその場を後にする。
グラスは皇帝の前まで行き、ひざまづく。
皇帝は椅子に座ったままグラスを一瞥した。
そして立ち上がり、彼女に近づく。
「君に課した私の命令は、覚えているな?」
「……”彼女”の見張り。です」
「今まで報告を一度も聞いたことはない。何故だ?」
その言葉にグラスは息を飲む。
そしてまるで、自分の首が閉まるように感じていた。
そこにあるのはただ、恐怖だけだった。
皇帝は何も答えないグラスをただ、近くで見つめるだけ。
だからこその恐怖であった。
グラスは報告すべく、恐る恐る口を開く。
「お、お言葉ですが、陛下。彼女はその……消えるのです。忽然と、何処かへ。隠れて見ていると、突然いなくなるんです」
「……やはりそうだったか。わかった、君も任務に戻りたまえ」
「はっ!」
グラスは少し急ぎ足で、その場を離れた。
皇帝は席へと戻り、深いため息をつく。
そして近くにあった写真立ての中の写真を見た。
三人のウマ娘が写っている写真だった。
皇帝と、エアグルーヴと、そして誰か。
「私は……正しいことをしているはずだ。皆を救うため、人間を殺し、そのソウルを集め、そして結界を破壊する……だが、それが正しいのか、私には……」
「わからないって。そういうつもりなのかしら?」
「ッ!!」
その声を聞いた瞬間には既に、皇帝は剣を手に自身の座っていた椅子を破壊していた。
だがそこには誰もおらず、あったのはただ地下世界の景色が見える窓だけだった。
皇帝の背後からまた声がする。
「ふふっ……久しぶりね。あなたの元を離れてから何年経ったかしら」
「……スズカ。何をしに来た」
「忠告、かしらね。この地下世界は今、変わろうとしている」
「人間のせいで?」
「違うわ、人間のおかげよ。あなたのせいで凝り固まった地下世界は、変わろうとしているのよ」
皇帝は剣を床に刺し、破壊した椅子に腰掛ける。
いないはずのそれに視線を合わせようとして、部屋のドアに目を向ける。
何もいない、だが不快な存在感だけは感じていた。
「何故君は、私の元から離れた。戻って来る気もないのか?」
「めんどくさくなったのよ。全部」
「……随分と、嘘をつくのが下手になったものだな、君も」
「…………これだけは言わせてもらうわね。私は私の目で、彼を見極める……約束もあるし、あなた達に協力する気は一切ないわ」
「スズカ、君は……いや、君がそう決めたのならば何も言うまい。ただ、監視は続けさせてもらう。わかったか?」
「邪魔をしないならばそれでいいわ」
そう言って声は掻き消えた。
同時に皇帝が感じていた不快は存在感を消え去る。
皇帝はまたため息をつく。
「……ああ、エアグルーヴ。許されるならば私を許してくれ、そしてまた、私のことを……助けて、くれ……」
そう呟いた彼女の言葉は、誰の耳に届くこともなく部屋の中で消えていったのだった。
設定資料出して欲しい?
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