DERBYTALE (AU)   作:フラウィー

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旧寮を行く

未だ壊れる様子のない寮を見て、決意がみなぎった。

 

 

 

「少しばかりここは迷いやすいからな。ちゃんと私についてくるんだぞ」

 

 青年はエアグルーヴの後ろを歩く。

 あっちこっちから覗くウマ娘たちの顔がどうにも怖かったからだ。

 と言うのも皆、まるで獲物でも見つけたかのように、青年を睨みつけているのだ。

 エアグルーヴを除いて。

 彼女はただ、周囲に威圧感を与えるように廊下の中心を堂々と歩いていた。

 

「気をつけろ。彼女たちは貴様を首を狙っているからな。その(ソウル)を欲してな」

 

 その言葉に青年は、咄嗟に胸元を押さえる。

 青年がウマ娘たちに視線を向ければ、ウマ娘たちの視線は青年の胸元へ行っている、ような気がしていた。

 

 ギシギシなる木の板を踏み、先へと進んで行く。

 が、突然エアグルーヴが足を止める。

 青年は、どうしたのか? とエアグルーヴに聞いた。

 彼女は少し困った様子でいた。

 

「……実はこの寮は少しばかり改造していてな、外からの侵入者を防ぐために。ドアをいくつか仕掛け式にしていたのだが……どうやら誰かが悪戯で閉めたようだ」

 

 青年が正面を見ると、そこには鉄の門があった。

 エアグルーヴが軽くノックしてみるとかなり音が響く。

 だが扉はビクともしなかった。

 青年の目からは、少し凹んでいるようにも見えたが、気のせいだ、とそう思い込むことにした。

 

「どうしたものか……」

 

 青年はそんなエアグルーヴに、出入り口はここしかないのか、と問う。

 

「ああ、基本的に廊下は一方通行だ」

 

 と言う言葉に続けて、彼女はこの寮の話を始めた。

 この寮は四階建てになっており、たくさん個室などがあると言う。

 だが四階は足場が不安定な上、少し歩いただけで床が抜けるため、実質放置状態にあるらしい。

 その上、一階の扉から出ることはできないらしく、昔掘った地下からではないと寮の外へは出ることができないそうだった。

 

「皇帝の住まいとなっているもう一つの寮は隣にあったのだが、今は壁に阻まれていてな。遠回りしなければ行くことすらできんのだ」

 

 そう言いながら壁あたりを弄っては、不思議そうな声を出していた。

 青年は時間がかかりそうだと思い周囲を見渡す。

 やはりと言うべきか、ウマ娘たちの視線が彼に突き刺さる。

 その視線にドキドキしつつ、エアグルーヴの方を向く。

 

「……仕方ない。貴様、少しばかりそこらを歩いてこい。何があるか多少は把握しといたほうがいいだろう」

 

 エアグルーヴはため息をついて、今歩いていた方とは別の廊下を指差す。

 その先も当然、ウマ娘たちが目を光らせていた。

 青年はもしウマ娘たちに襲われたらどうすればいいか? と聞いた。

 

「もし、他のウマ娘たちに襲われたらまずは対話を試みることだ。対話をするうちに仲良くなって襲われなくなるはずだ。ここにいるやつらは基本的に臆病者だからな」

 

 彼がわかった、と答えるとエアグルーヴは作業に集中し始めた。

 青年は先程エアグルーヴが指差した方を見る。

 暗く長い道で、ウマ娘たちがあっちこっちから顔を出している。

 

 もしかしたら扉を開ける手がかりがあるかも、青年はそう考え歩き出す。

 道は暗く、かすかな電気がなかったら身動き一つ取れはしないだろう。

 道中物音に驚き、しかし青年はそんな音にも怯えることなく道を進んで行く。

 いくらか進んだところで突然、ドアから何かが飛び出してきた。

 

「に、人間っ!! ここから先は通さないぞっ!」

「わ、私たちが……そ、ソウルを手に入れて……外にぃ……」

 

 少し強気なウマ娘と弱々しいウマ娘が現れた。

 が、弱々しいウマ娘はあまりの弱々しさと緊張に座り込んでしまった。

 少し強気なウマ娘は慌てて立たせようとするが、どう頑張っても立ちそうになかった。

 そんな二人に青年は近づく。

 

「ヒェッ!?」

「ち、近くなっ!」

 

 青年は弱々しいウマ娘に手を差し伸べると、大丈夫かい? と聞く。

 

「……あ、えっと。その、う……」

「うぅッ! このぉっ!」

 

 強気なウマ娘が飛びかかる。

 その瞬間、辺りの雰囲気がガラリと変わる。

 青年の前には一つのハート、ソウルが現れる。

 

 咄嗟にソウルを掴んで、彼は横へと避けた。

 そのせいで強気なウマ娘は壊れやすい壁へとハマってしまった。

 

「くそぉっ! 人間めっ、卑怯だぞぉっ!」

 

 喚くウマ娘を気にすることなく、青年は弱々しいウマ娘の手を取って立ち上がらせる。

 

「ひ、ひぃっ! ひいぃっ!」

 

 今にも倒れそうな勢いで、青ざめていた。

 そんな少女に青年は、深呼吸すると楽になるよ、と言った。

 少女はその言葉にゆっくりと深呼吸して行く。

 

「……ほ、ほんと、だ……あり、がとう……」

 

 少し呆気にとられたような顔をして、少女は青年を見た。

 だがその時もう一人の強気なウマ娘が壁から飛び出て、弱々しいウマ娘の手を掴むと、青年へと指差す。

 

「人間めっ! 覚えてろぉっ!!」

 

 そう叫びながら走り去っていったのだった。

 一体何だったのだろうかと思いながら、青年は二人が消え去るまで見つめていた。

 完全に消えた後、次の場所へ行こうとした時に、彼は見てしまった。

 白いシーツを被った、幽霊を。

 

「……ライス、また迷惑かけちゃった……」

 

 その幽霊はどうも、落ち込んでいる様子だった。

 青年は今度こそウマ娘と仲良くなるべく、そのシーツの幽霊へと近づいていった。

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