DERBYTALE (AU)   作:フラウィー

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はちみつドリンク

 しばらく歩いていると鉄の門が目に入る。

 鉄の門は既に開いており、入り口にはエアグルーヴが立っていた。

 エアグルーヴは青年の食いかけのドーナツを見て言った。

 

「戻ったか。そのドーナツは……もしかして、ロビーのバザーに行ったのか?」

 

 青年は頷いて、ドーナツの最後の一口を食べ、サイダーを飲む。

 多分傷が治った、ような気がしていた。

 

「そうか。ああ、そう言えば……これを渡すのを忘れていたな」

 

 そう言いながらエアグルーヴは電話を取り出す。

 電話と言ってもボタンがいっぱいついている、トランシーバーのようなものなのだが。

 しかし新品同様な上、そこらのスマホに比べて軽快に動く。

 青年はそのことに少し驚いていた。

 

「私の電話の番号は登録してあるからな。そこの登録番号を押せば、貴様の電話から私にかかるはずだ」

 

 試しに押してみろ、と言われ青年は登録ボタン『1』を押す。

 するとエアグルーヴの着ているローブのポケットから電話の音が聞こえた。

 彼女は少し長めの電話を取り出して、ボタンを押すと青年とエアグルーヴの電話が繋がる。

 

「よし、ちゃんと繋がるようだな。それから誰かの電話番号を登録した時は……」

 

 と、一通り電話の操作方法を押してもらう。

 なんとなくではあるが理解した青年は、電話をポケットに入れた。

 そこで気になったことを聞いた。

 何故、人間用の電話があるのか、と。

 

「それは……昔使っていたものだ。この世界にいた、人間がな。もうだいぶ昔の話だ」

 

 それだけ言うとエアグルーヴは、行くぞ、と言って歩き出す。

 足を進めて行くとだんだんと雰囲気が変わって行く。

 

 薄暗いものから、明るいものへと。

 暖かな、雰囲気の場所へと。

 そのように雰囲気の場所だからか、ウマ娘たちも隠れずにロビーと同じように談笑していた。

 

 だが一箇所、廊下の一番はは少しばかり暗かった。

 その暗い場所にはドアがあったのだが、窓と同じく木の板で打ち付けられており、開けることはできそうになかった。

 青年はエアグルーヴに聞いた。

 

「あれは外に出るためのドアだ。だが、もう外とは関わりたくないからな……ああして閉めているんだ」

 

 そこで青年はライスのことを思い出す。

 ライスは確か、この寮を出た先の場所に住んでいるはずなのに、どうやってここに来たのだろうか、と。

 だがいくら考えてもわかりそうにはなかったので、考えるのをやめた。

 

 エアグルーヴの後ろをついて歩いていると中庭に出る。

 中庭には大きな木が一つ生えており、そこを中心に花が咲き乱れ周囲にはミツバチがいた。

 箱がたくさんあり、どうやら養蜂しているようだった。

 

 上を見れば穴が開いており、光が漏れている。

 だがかなり高くそこから出ることはできそうになかった。

 

「ここではミツバチを育ててはちみつを採取している」

 

 エアグルーヴがそう言った。

 それを聞いた青年は、はちみつで何を作るのか、と聞いた。

 

「基本的にはジュースなどだな。たまにバザーの方で売ったりもしている」

 

 中庭の奥の方のドアをくぐるとそこは玄関だった。

 寮のロビーとは違い、普通の家ような場所だった。

 玄関からは道が二つに分かれており、右のほうは廊下、左はリビングのようだった。

 

 リビングの方には家具が置かれており生活感があった。

 奥の方にも道が見えたが、そっちはキッチンや風呂だった。

 

「ここが私の家だ。どちらかというと管理者部屋と言うべきかもしれないが……ともかく、今日からここが貴様の家でもあるんだ

 

 青年は首をかしげる。

 そして、地上へは帰れないのか、と聞いた。

 その言葉にエアグルーヴは少し驚いたような顔をして言った。

 

「……そう、だな。やはり帰りたいのか?」

 

 青年はその言葉に頷く。

 なんせここへ落ちてきたのは事故のようなものだったからだ。

 ただ彼はそこに、ウマ娘がいたかどうかの形跡を知りたかっただけなのに。

 それなのに足を引っ掛けて転んでしまったのだから。

 

「その話は……また後でするとしよう。今は疲れただろう。部屋に案内するから休むといい」

 

 そう言うと右の方の廊下へ行き、一つの部屋へと案内される。

 ベッド一つに適当な家具が置かれているだけの質素な部屋だった。

 そしてベッドの上には何故かおもちゃ箱があった。

 

「ここが貴様の部屋だ、好きに使ってくれ」

 

 それだけ言うと部屋から出て行った。

 青年はしばらく扉を見つめていたが、突然の眠気に襲われベッドに倒れこむ。

 これからのこと、この地下世界のこと、ウマ娘たちのこと。

 色々なことが頭をよぎりながら、彼の意識は深くへと落ちて行った。

 

 

 

 それから何時間経ったのか、部屋の中で聞こえた声に目がさめる。

 体を起こし、周囲を見渡すとそこには見覚えのある姿があった。

 あの奇妙な花、テイオーだ。

 テイオーは板の隙間から

 

「やぁ、数時間ぶりだね」

 

 花の姿を見た瞬間、青年は近くの何か武器のようなものはないかと、ベッドの上からナイフのようなものを取り出す。

 しかしそこはおもちゃ箱、当然ナイフもおもちゃだった。

 だがおもちゃのナイフを突きつけられたテイオーは、大慌てで青年から離れた。

 

 だがその瞬間、周囲の雰囲気が変わり青年の胸元にソウルが浮かび上がる。

 当然テイオーも逆ハートのソウルが浮かび上がる、のだが、透明だった。

 

「や、やめてよっ!? 今日は君を殺しにきたわけじゃないんだけどっ!? いくらおもちゃでも『決意』を持って切りつけられた死んじゃうよっ!?」

 

 少し怯えたような言葉に、青年なおもちゃのナイフを下ろす。

 お互いに戦いの意思がなくなった瞬間、ソウルが消え去る。

 

「……はぁ。全く、恐ろしいことするね、君は。ボクが死んだらどうするんだい!」

 

 知らない、と青年は無慈悲にも答えた。

 一体何しに来たのだろうかと考えていると、テイオーは言う。

 

「今日ボクが来たのはただの忠告さ。この寮から出て行きたいなら、無理やりにでもさっさと出て行ったほうがいいよ」

 

 何故? と聞くがテイオーは答えない。

 ただニヤニヤとした笑みを絶やさず、青年を見ていた。

 

「……ボクは言ったからね」

 

 テイオーは地面に潜ると、何処かへと消え去ってしまった。

 静かになった部屋を見渡すと、机の上に水筒のようなものが置かれていた。

 水筒の下にはメモが挟んであり、そこにはエアグルーヴからのメッセージがあった。

 

『はちみつドリンクだ。好きな時に飲んでくれ』

 

 ありがたくもらうことにして、持って行こうとしたのだが当然ポケットに入るものではない。

 部屋には肩掛け鞄があったため、それを借りて行くことにして、はちみつドリンクをそこに入れた。

 ついでにおもちゃのナイフも。

 青年はテイオーの反応を見て、おもちゃのナイフでも身を守ることを知ったからだった。

 

 一先ず呼吸を整える。

 これからエアグルーヴに外のことを聞こうとしていたのだが、何故だか緊張してしまっていた。

 青年は深呼吸をして、話を聞きに行く決意をした。

 

 扉に手をかけ外に出る。

 テイオーの言葉が心の底に残ったまま。

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