DERBYTALE (AU)   作:フラウィー

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vsエアグルーヴ.1

青年は運命に立ち向かう決意をした。

 

 

 

 部屋を出てリビングへと向かう。

 リビングに置かれている家具は地上のものと然程変わりはない。

 ただ違う点があるとすれば、それは再利用していると言うとこだろうか。

 なんせどれもツギハギなのだ。

 

 昔からあるであろうと古びた暖炉の前に、椅子に腰掛けてエアグルーヴが座っていた。

 エアグルーヴは本を読んでいたが青年に気づくと手招きした。

 

「起きたか。寝心地はよかったか?」

 

 青年はその言葉に頷いて、近くに置かれていた椅子に座る。

 エアグルーヴは安心したような顔をして、暖炉の方に目をやる。

 

「……私は、逃げるつもりはなかった。どんなことからもな」

 

 そう呟いて悲しそうな顔をしていた。

 しばらく黙っていたが、青年の方に視線をやる。

 そして困惑したような、納得したような、そんな顔をして一瞬俯いて青年を見た。

 

「外に、行きたいのか?」

 

 青年はやはり頷いた。

 そうか、とエアグルーヴは言って、再度俯いて立ち上がる。

 

「わかった。私も覚悟を決めるとしよう……外に出るためのドア、あそこに来い」

 

 そう言って家から出て行った。

 青年は家を出て、中庭を通り、廊下へ行き、その背中を追う。

 しかし彼女の足は速く、既に姿はなかった。

 

 青年は少し急ぐように外に出るためのドアの場所に行く。

 ドアの場所に着くと、少し乱雑に木の板が剥がされてドアが小さく開いていた。

 恐る恐るドアに手をかけて中に入る、中は暗く一本道がずっと続いていた。

 少し先に行った辺り、その辺りでエアグルーヴは立ち止まっていた。

 

 青年が近づく。

 

「この先の道は、地上へ出るための道に繋がっている……だが、出て行けば二度と、ここへ戻ることはできない」

 

 少しずつ前へと歩き出す。

 青年もその後ろを歩く。

 

 二人の間に言い様のない空気が流れる。

 重く苦しいその空気感に押し潰されそうになるが、青年は決意を胸に歩き続ける。

 この地下世界から脱出するために。

 ただそれだけのために。

 

 エアグルーヴがまた口を開く。

 

「ここに落ちてきた人間たちは皆、同じ運命を辿って行った。ここを閉じた理由、外と関わりたくないと言ったな。あれは事実だ。だが……それ以上に私は……」

 

 二人は足を進める。

 先へ、先へと青年は足を進める毎に重くなって行った。

 だがエアグルーヴは一度も振り返ることなく、先へと進み続ける。

 

「ここに落ちてきた人間たちは、皇帝に……あの人に、シンボリルドルフに、殺される。人間たちのソウルを手に、この世界からウマ娘たちを解放するために。私はそれをが認められなくて、あそこから離れた。そして今、貴様をここから出すまいとしている理由でもある」

 

 エアグルーヴがそこまで言って足を止める。

 足止めた場所は、ドアの前だった。

 ドアの前は少しだけ広くなっており、動きやすそうな場所であった。

 

 そこでやっと、エアグルーヴは振り向いた。

 彼女はとても険しい顔をして、青年を睨んでいた。

 

「人間。貴様がここから出ると言うのならば、それ相応の実力があることを私に示せ。もし貴様にその気がないのであれば引き返せ、私はここを崩し、永遠に出られないようにする。決めろ、ここで暮らすか、外に出て戦うかッ!」

 

 青年は鞄からおもちゃのナイフを取り出す。

 彼が今、唯一対抗できる手段はそれしかなかった。

 だが、そのナイフを見てエアグルーヴはゆっくりと構える。

 

「そうか……貴様は、出て行くと言うのだな。ならば覚悟を決めろ。今から私は貴様を──」

 

 一息入れ、目を閉じ、そして強く青年を睨む。

 

「──殺す気で行く」

 

 その瞬間、周囲の雰囲気が大きく歪む。

 二人のソウルが浮かび上がる。

 青年の真っ赤なソウルが胸元に、エアグルーヴの逆ハートの白色ソウルも胸元に。

 

 それとほぼ同時に、床から、天井から、壁から芝が生える。

 どれもそれなりに尖っていて、何故か天井と壁の芝は塊になっていてだいぶ大きかった。

 当たればかなりのダメージは免れない、それを瞬時に青年は理解した。

 

 しかも更に地面を力強く、踏み土が捲き上る。

 地震でも起きたのか、と感じるほどの揺れだった。

 土が巻き上がったことで目隠しとなり、同時に青年の目に土が入り、目の前で何が起きるのかわからなくなる。

 急いでこの砂塵から抜け出そうとするが、薄っすらと開けた目で見えた、砂塵の中から伸びる手をすんでのところで躱す。

 

 そこで巻き起こった風によって、砂塵が晴れる。

 青年の心臓がだんだんと早くなって行く。

 

「これは避けれるか……ならば、少しばかり本気で行くとしよう」

 

 エアグルーヴは青年から少し離れ、扉の前に立つ。

 そして両手を挙げると、壁や天井から生えている芝が蠢き出す。

 天井に生えていた芝たちが降り始めたのだ。

 そして壁に蠢く芝たちは、とても遅いミサイルのように壁から離れて飛び始める。

 

「……初めて見るだろう? これが私たちウマ娘の使う魔法というものだ。この程度、乗り越えてみせろ」

 

 青年は強くナイフを握り、再度決意を固める。

 そして降り注ぎ飛んでくる芝を躱し、エアグルーヴへとナイフを向けた。

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