転生したら直哉君だったので、全力で死亡フラグを回避したいと思います 作:NowHunt
空は穏やか、日は高く、穏やかな気候なある日のこと――
「アッ――――!」
唐突に俺は倒れてしまった。酷い頭痛に襲われたからだ。
ただ今日のやるべきことは終わらせて飯でも食おか思って廊下を歩いていただけだ。その瞬間、頭が破裂しそうになるほどの痛みが襲ってきた。意識を失う墸直前、周りが喧しくて敵わんかった。
「直哉様!?」
「大丈夫ですか!?」
そんな声が聞こえた。……直哉? 周りの女中何て言った? 直哉? 俺の名前は……違う……あれ、いやいや、まさか。も、もしかして……ウッ。ダメだ、頭が割れるほど……痛……い…………。
そして、その日、俺は思い出した。意識を失っている間に、ふつふつと思い出した。俺が置かれている状況に。
「――――」
今は目が覚めてゆっくりと現状確認をする。
俺は元々ジャンプを毎週読んでいる大学生だ。趣味は一人旅。バイトして金を貯めてはどこかへ旅行していた。そんな生活が好きだった。そして、普通に真面目に授業に出てそれなりの成績を取っていた大学生……だった。
そうだ、そのはずだ。ちょっと待て。俺の最後の記憶は……確かバイトが終わって両親と晩飯食べてそのまま寝たはず……。
しかし、何の因果か分からない。分からないんだ。ただ、結論から言うと今の俺は…………禪院直哉になっている。これはあれか、噂に聞く転生というやつか。
――――禪院直哉。
人気漫画、呪術廻戦のキャラクターの内の1人。主人公の先輩である禪院真希の……あれ、関係性何だっけ。確か叔父かな? 多分だけどそんな感じ。アニメ爺さんと同じ術式を使うめちゃくちゃ速く動ける人。あの術式読んでるときはいまいち理解できなかったんだよなぁ……。
…………で! 性格は作者から論外とか言われるほどのクズ。いやもうホントこいつクズなんだよ。まず女を尻しか見てない。あと胸。女はでしゃばるなとかいうクズ。
今時こんなキャラいるんだなってくらい清々しい。虎杖相手にイキったくせにお兄ちゃんにボコられ、乙骨先輩に見下される。再登場したと思ったら、格下だった真希相手にまたイキる。お前マジ何なんだよって思ったわ。面の皮厚すぎだろと。こいつマジ格下にしかイキらねーなおい。いや、実際強いんだけどさー。
そんでまぁ、その最期は――――うん、実に因果応報という死に方だった。見事なまでにブーメラン刺さりましたね。
禪院直哉はある意味人気なキャラだ。主にネット民から。いわゆるネットのおもちゃってやつ。ていうか、真希の母親の最期の行動の意図というか考えがいまいち分からなかったなぁ。……そのあとは休載していたから続きは知らない。
そんな禪院直哉に俺は転生してしまった……だと。
これマジ? よりによって直哉なの? それならまだモブの方が何倍もましなんだけど。これ絶対死ぬじゃん。だって、直哉だよ。初登場から死ぬために生まれたようなキャラだよ? あー、もうこれ真希によって禪院家壊滅するじゃん。
「直哉様……?」
どうやら俺は布団で寝ていたらしい。俺が目を覚ましたと気付いた側にいた女中の1人が声をかけてきた。
「……今何年の何月やったっけ?」
「えっ……あ、2018年の3月ですよ」
「あれ、どんくらい意識失ってた?」
「まだ5時間ほどしか経っておりません」
「そう、か。今いるのあんただけ?」
……ダメだ、俺元々は関東人だけど、喋るとどうも京都弁? になっちゃう。
「は、はい。医者はただの過労かと。頭痛薬、隣に置いております」
「ん、すまんな。迷惑かけたわ」
「…………」
あれ、女中ポカンとしてるんだけども。信じられないものを見る目付きで。え、なになに?うーん、何かおかしなこと言ったっけ?
「えっと……どした?」
「あっ、い、いえ。お礼を言われたのが驚いたと言いますか……」
あー、直哉だったらそう驚かれるのも無理ないか。だって直哉だもん。
「さすがに看病してもらって文句……つーより、下手なこと言わんわ。すまんが、水貰えるか?」
「こちらに」
「ありがと。ちょっと1人にしてくれるか? 晩飯になったら呼んでくれ」
「わ、分かりました。失礼します」
そう言って女中はパタパタと退出した。口調は……こんな感じでいいか。
「……さてと、3月か」
原作が始まるのが6月から。そこから虎杖は呪術の世界に巻き込まれることになる。で、物語最初の山場である事件――渋谷事変はハロウィンに行われた。そこから禪院家壊滅までのタイムリミットは……ざっと8ヶ月か。
「はぁ……」
もうこの際、直哉になったことをどうこう言うつもりはない。直哉の記憶と大学生までの俺の記憶、今はどちらもある。つまり、普通に俺は呪術師としての人生を歩んでいるんだ。それは変えようのない話。
今の俺は直哉なんだ。だから……その、真希を足蹴にしている記憶もあるわけで……ホント、すいません!!
だからこそ、俺な死にたくない。こんな世界だと死んだ方がましかもしれないけど、それでもやっぱり! 死ぬのは普通に嫌だ。
だから、まずは真希によって禪院家壊滅を防ぐことが先決となる。ただ、覚醒した真希には勝てる気がしない。あそこまでアニメ術式を使いこなした直哉が負けたんだ。あと8ヶ月程度でどうこうなるとは思えない。領域展開も極の番もできないだろうし、何より真希が死ぬのは嫌だ。呪術の中でも屈指のお気に入りキャラだったし。
「ていうか、この状況って……」
つまるところ、直哉に転生するってことは、これ普通に破滅ルートじゃねーか!! 悪役令嬢かよ。なにこれクソゲー?
どうすれば俺は平穏に生き残れる?
転換点は恐らく渋谷事変だ。あれを起点に物語は大きく変化した。
となると……夏油の死体を処理させる? それだと、偽夏油は生まれず、メロンパンは死なないことになる。今の世代は安全かもだが、それは絶対じゃない。唐突にメロンパンに襲われ死ぬ可能性だってある。死滅回遊だってあるし。メロンパンはどうにかして殺さないといけない。
そもそも、原作でも夏油の死体がどこにあるか知らないし、もう既にメロンパンが乗っ取ってるかもしれない。原作開始3ヶ月前だしね。
なら公式チートの五条に全部伝えるか。……いや、信頼されてないだろうから、厳しいだろうな。荒唐無稽だと一蹴されるのがオチだ。そもそも直哉って五条に認知されてるのかなぁ。五条家と禪院家は仲悪いって言ってたし、知らないかもなぁ。それにいきなり言われて普通信じないだろ。
あー、せめて直哉が高校生辺りに俺が思い出したら違う結果になったのになー……。ホント勘弁して。
渋谷事変で東京が滅ぶのは原作通りとして……そのあとの展開をどうにかしないといけない。真希に殺されるのは勘弁。……いや、正確には真希の母親か。あんな死に方したくねーわ。
そのためにはやっぱり渋谷事変の結末を変える必要があるの……か……。
「……ん?」
…………あれ、そもそも虎杖が指を食べるのを防げば物語始まらないじゃん。
そうだよ! 虎杖が指食わなきゃいいじゃん!
俺が指があると聞き付けた体で宮城まで行って虎杖か伏黒から指を奪えばよくね? そのあと五条と確執生まれるとしても、それは原作に比べると些細な問題だ。
これは良い案だ。これなら、そもそも呪術廻戦の物語自体が始まらない。メロンパンの計画も潰せる。ただ、やっぱりメロンパンは殺しておきたいんだよなぁ。そこは五条に任せるとして……うーん、いきなりすぎで色々と迷う。考えがまとまらない。
とりあえず真希に滅ぼされる結果は止めないと。禪院家壊滅について最大の原因は――――
「あいつか……」
翁か。あの戦犯殺すか。
そうだよ、そもそも真希は回遊のために呪具取りに来ただけじゃん。それが翁が龍の逆鱗に触れたんだよ。翁が悪いじゃん!
あの空気読めねぇクソジジィがよー。お前が当主になれなかったのは単純な実力不足だっての。アニメ爺さんが一番強かったんだからよ。なんだ、あの燃える剣って。あんなので禪院家当主になれるわけねーじゃん。
マジで戦犯だわ。こいつを野放しにしていたら、事態は悪化するだけだ。
「……よし」
目下の目標、禪院翁を殺す。
好評なら続きます、きっと、メイビー