では本編をどうぞ↓
日本国内、とある場所にでかでかと聳える武家屋敷。
立派な門柱に掲げられた表札には“更識”という文字が刻まれている。
そんな巨大な屋敷の奥の奥、1つのこじんまりとした茶室に1人の少女が座禅を組んでいた。
少女の名前は
外ハネした、水色の髪は特徴的で一度見たらその美貌も相まって忘れることはないだろう。
そんな彼女の前には、青い水晶の根付けが着いた扇子が置かれていた。
菱形のその根付けは、うっすらと差し込む日の光を弱々しく反射している。
「……。」
彼女は今、後悔事を抱えている。それも1つや2つではない。それをどうにかしようと、彼女は屋敷からも離れたこの茶室にいたのだった。
そんな時である。がらり、と茶室の戸が開けられた。
見ればそこには、学ラン姿の青年が立っている。どこかニヒルで陰のある顔つきをした、しかし整った顔立ちをしている。
「
青年の言葉に楯無は一言、“そう…”とだけ呟く。表情は変わらないものの、しかしその背中に滲む感情に青年は溜め息を1つ漏らした。
「そろそろ踏ん切りをつけてくれ、刀奈…いや、楯無…。
お前があの北星という娘と勝負したかったのも分かる、だが仕方ないことだっただろう…?いつまでもうじうじしていられると、下への示しが着かんぞ。」
青年の言葉に、楯無は切れ長の目をすっと開いた…。
潤んだ瞳からなにかをぐっと堪え、ふぅと一息つく。
「分かっているわ…ちゃんと、割り切るわよ…。私は更識“楯無”…古来より日陰から日本を守る暗部の長よ。」
「…分かっているならいい。お前になら出来ると、先代や爺さん連中は任せたんだからな。それだけは覚えておけ。今の貴様の名前に、どれだけの重みがあるかを、な…。」
言葉を振り絞る楯無を見ると、青年はそれだけ言い残して背中を向ける。
戸が開け放たれたままの茶室に、すぅ…と穏やかな風が吹き込むと同時に彼女はぐぃと目元を拭うとゆっくりとだが、力強く立ち上がった。
その瞳には強い意志が見てとれる。
強く、真っ直ぐに前を向く彼女に、物陰に隠れていた青年は満足そうに微笑みながら暗闇へと消えていくのだった。
「私は更識の娘…更識の長よ…。そう、やらなきゃならないのよ…やるしか…。」
はぁぁ、と息を一度吐ききると今度は胸いっぱいに息を吸い込み深呼吸をする。
きっとした切れ長の瞳からは既に迷いは消え去っていた。
彼女は更識楯無、日本の暗部を司る更識の長である。
やりたかった話その1でした~