朝起きたら感想来ててびっくり!
とても嬉しかったので仕上げてきました!
では本編をどうぞ!
ギラギラと強い日差しが肌を焼くほどに照りつける夏、南美は戦いに身を投じていた。
「シャオッ!」
甲高い声と共に風を切る鋭い蹴りが少女のこめかみを捉える。
蹴られた少女はふらふらとその場に倒れこみ、立ち上がらない。
ワンっ!ツー!スリー!と、近くにいる審判の男のカウントダウンの声がよく響き、10カウント目を迎えるとゴングの音が鳴り響いた。
「またもや1ラウンドでノックアウト! 3連覇を目指す女王 北星南美、1回戦から準決勝までのすべてを1ラウンド目で勝ち上がっている!」
夏真っ盛りの今日は南美にとって特別な日だ。
全国中学生総合格闘技大会、彼女の最後の中学生大会。
ノックアウトした相手を1度だけ見やると、リングと相手、そして審判に一礼をして南美はリングを立ち去った。
──TRF‐R事務室
(眉゜Д゜)<強すぎんだろアイツ…。
(*´ω`*)<他との格が違いすぎる…。
狭い事務室の中にところ狭しと修羅勢が集まってテレビ放送されている南美の試合を見ていた。
もちろん事務室の住人であるモミー店長公認の行為である。
「お姉ちゃん、お疲れさま~。」
「ん、ありがとうあーちゃん。でもまだあと1試合残ってるわ。」
試合を終えた南美はタオルで汗を拭きながらギャラリーに上がる。すると天慧が走り寄って来る。
それを南美は片膝をついて優しく抱き止めた。
そんな二人にこつこつと革靴の足音を響かせて鷲頭が近づいていく。
「やっぱり君は凄いね。」
感心したようにそう呟く鷲頭に、南美は顔を上げる。
「あ、鷲頭さん。いらっしゃったんですね!」
「勿論だよ! 私は君のファンだからね、試合があれば見に来るさ。」
はっはっは、と低い声で彼は笑う。スーツ姿で渋さを漂わせる鷲頭がそこにいた。
まさか、1企業の社長がここにいるとは誰も思うまい。
「さて、決勝戦だが勝算はあるのかい?」
鷲頭の問いに南美は不敵に笑う。
その顔は格闘家北星南美として、自信に満ち溢れた表情だった。
「もちろんですよ、私が同年代で負けるとすれば、…あの人しかいない。けど、あの人はもうこの大会にはいません。よって私は負けないんです。」
南美の脳裏に彼女の姿が思い浮かぶ。
誰よりも美しく、そして強かった青髪の少女、それは南美が父親以外に目指した存在。
鷲頭の問いに答えた直後、決勝戦の開始が近いことを告げるアナウンスが放送された。
それを聞いて南美は立ち上がる。
「それじゃあ行ってくるね、あーちゃん。」
「うん、お姉ちゃん頑張って!」
エールを送るように手を振る妹に向けて、南美は背中を向けたままサムズアップして駆け出していった。
「全国中学生総合格闘技大会決勝戦を始めます、第1コーナーは北星南美選手、第2コーナーは──」
審判の進行によって南美と対戦相手がリングの上に上がる。
─カァン
試合開始を告げるゴングが鳴った。
小刻みなステップを踏みながらお互いに間合いをはかる。
対戦相手はボクシングスタイルなのか、腕を顔の前で構えながら軽快なステップで左右に揺れる。
「シャオッ!」
最初に仕掛けたのは南美だった。
踏み込みも鋭く、ダンッという強い音が鳴り響く。
「くぅ…!?」
「っ…らぁ!」
ガードの上から抉じ開けるように、みしっという鈍い音を響かせて南美の拳が相手の腕を捉える。
強引とも言える一撃、そのままパワーで押し込むと相手はじりっと逃げるように身を引いた。
「シ…ッ!」
このまま終わる相手でもなく、後ろにステップを踏み衝撃から逃れると一瞬で前に詰めてきて鋭くジャブを放つ。
鋭く速いジャブ、それを南美は寸でのところでかわせば、身を捻って一歩踏み込んだ。
鋭い踏み込みから一気に相手の懐に潜り込み、鋭い正拳突きを鳩尾に放つ。
「く、ふぅ?!」
反応の遅れた相手はもろにその一撃を喰らい、口から空気を吐き出す。
「ショオォ、シャオッ!」
体勢の崩れた相手を見て南美はさらに追撃する。
垂直に跳び、相手の顎をかち上げれば無防備になったこめかみに伝家の宝刀とも称される一撃必殺のハイキックを叩き込んだ。
鞭のようにしなり、スパンっと綺麗にヒットすれば相手はふらりと倒れ込む。
あまりに見事な蹴りに、呆気に取られて呆然としていた審判もそれを見てやっと我に返り、カウントを開始する。
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ─」
リングの上で審判のカウントの声が響く。
南美は倒れている対戦相手をただじっと見つめ、油断せずにファイティングポーズを取るだけだった。
「エイト、ナイン、テン!」
─カァンカァンカァン
無情にも10カウントが終われば試合終了を告げるゴングが3度鳴る。
その瞬間、審判が南美の右手を掴み高々と掲げさせる。
南美の表情はとても誇らしそうな顔をしていた。
観客席からは、歓喜と祝福の歓声がなり、それに応えるように彼女は一礼し、その場を後にした。
こうして南美は全国大会3連覇という偉業を成し遂げたのである。
その頃、剣道競技の会場では
─スパァン
乾いた竹刀の音が鳴り響き、審判が旗を揚げる。
南美が全国優勝の偉業を成し遂げた頃と時を同じくして、剣道競技の男女それぞれで優勝者が決定していた。
優勝した者の名前は織斑一夏と篠ノ之箒…
この時、二人はまだ知らなかった。自分たちがこれからどんな事態に巻き込まれていくのかを…。
「おめでとうお姉ちゃん!!」
「ふふ、ありがとうあーちゃん。」
表彰式を終え、雑誌や新聞記者からのインタビューを済ませた南美は自身の控え室で妹たちから祝われていた。
妹だけでなく、日頃から友人として付き合ってきたクラスメイトも控室には数名いる。
「スッゴいじゃんミナミン、優勝だよ?」
「まーた女子中学生らしからぬ伝説が増えるのか…。」
「おめでとう~‼」
「えへへ、ありがとう~。」
手放しに誉めてくる友人たちの言葉に南美は頬をだらしなく緩めていた。
その膝には妹の天慧を抱えたままで。にへらっと締まりのない表情を浮かべる彼女は、リングの上にいた時とは全然違う、年相応の姿であった。