虚構勇者   作:きいこ

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たぶん彰人が一番キャラが安定していない気がします。


第2話「グリモバイル」

翌朝、目が覚めると元の世界の自分の部屋だった…などという訳もなく、バルコニア王城の客室だった、やはり勇者(マレビト)の勇者として召喚されたのは夢ではなかったようだ。

 

 

(…まずはどうしよう、あまり城内をウロウロするのもな…とはいえお腹も空いたし…)

 

 

寝起きでまだ覚醒しきっていない頭で色々と考えを巡らせていると、客室のドアが控え目にノックされた。

 

 

「彰人殿、もう起きているか?」

 

 

ドアをノックしたのはボールスだった、はいと返事をすると、ドアが開いてボールスが姿を現す、昨日と変わらずかっちりとした鎧を身に付けていた。

 

 

「朝食の用意が出来たので持ってきた、王城には食堂もあるのだが、知らない顔ばかりの場所で食事をしても落ち着かないし美味くもないだろうからな」

 

 

そう言ってボールスは配膳用のワゴンを押して部屋に入ってくる、ワゴンにはスープやパン、ベーコンエッグなどのメニューが乗った皿が並んでいた、出来たての美味そうな匂いが部屋に広がっていく。

 

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

「礼には及ばん、食べ終える頃にまた迎えに来る、その後に指南を始めるから今のうちに力を付けておくといい」

 

 

ボールスはそう言い彰人に一礼すると、静かに扉を閉めて退室した、近寄りがたい厳格な人という第一印象があったが、彰人の中にあった“カタい”印象が少しだけ柔らかくなったような気がした。

 

 

「さてと、冷めないうちに食べちまうか」

 

 

彰人はワゴンに乗った皿たちを側にあったテーブルに移すと、ナイフとフォークを器用に使ってベーコンエッグから食べ始める。

 

 

(…美味い)

 

 

食べられないほど口に合わないのではないか、と異世界の料理に少し警戒していた彰人であったが普通に美味かった、牧畜文化がしっかり根付いているのだろう。

 

 

(これだったらこっちの世界でも何とかやっていけそうだな)

 

 

そう思いながら彰人は朝食を食べ進める、食事一つでここまでモチベーションが変わるのだから単純な奴だ、しかし衣食住の『食』に関して心配いらなくなったのはかなり大きい、これならレストランや大衆食堂などの飲食店で普通に食事が出来そうだ。

 

 

そういえば、店と言えばこの世界の貨幣制度はどうなっているのだろうか、独自の通貨があるのか、はたまた金貨や銅貨などのオーソドックスなものなのか、あとでボールス辺りにでも聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

「それではこれより彰人殿の指南を始める、改めて自己紹介をしよう、王室直属の近衛騎士団副団長のボールスだ」

 

 

その後、朝食を終えた彰人はボールスに連れられて王城の訓練場にやってきていた、学校のグラウンドほどの広さがある訓練場にはすでに何人かの騎士団員や兵士たちが剣や魔法の訓練に各々勤しんでいる、ちなみに勇者(マレビト)である彰人がやってきたという話は既に王城内に知れ渡っているようで、兵士たちの何人かが物珍しげな視線をこちらに向けていた。

 

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 

彰人はカチンコチンに固くなりながらボールスにお辞儀をする、果たして勇者(マレビト)としての相応しい力を付けられるのだろうか、そもそも魔法など自分に仕えるのだろうか、そんな事を考えただけでガチガチに緊張してしまう。

 

 

 

「なに、そう緊張しなくていい、落ち着いてリラックスすることが魔法を使うにあたって重要なことだ、誰にでも初めてはある、まずは勇者(マレビト)としての立場は忘れて、彰人殿一個人としてやってみるといい」

 

 

こちらの緊張を解すためか、ボールスはそう言ってニカッと笑う、たったそれだけのことなのにガチガチに緊張していたのが幾分か楽になった、今朝からボールスの“カタい”印象がどんどん柔らかくなっていく。

 

 

「さて、指南を始める前に彰人殿にはこれとこれを渡しておこう」

 

 

ボールスから受け取ったのは何やら機械のようなものだった、形状としては正七角形のコンパクトといったところだろうか、大きさはコンパクトのそれよりやや大きく、彰人の手の平と同じくらいのサイズである、蓋を開くと中は基盤のようになっており、中央部分に何かをはめ込むような穴がひとつ、更にその周囲を囲むように七つの小さな穴が空いている、蓋の裏はディスプレイ画面になっているようだが、今は何も映っていない。

 

 

そしてもう一つは赤や青、はたまた緑といった色々な色の小さな石だった、その形状や大きさから察するにこの機械のくぼみにはめ込んで使うのだろう。

 

 

「…これは?」

 

 

「魔法を使うのに必要な機械端末…『魔導書端末(グリモバイル)』と魔法石だ、 その魔法石を魔導書端末(グリモバイル)のくぼみ…スロットにはめ込むことで各魔法石に封じ込められた魔法が使える」

 

 

(端末!?魔法を使うのに端末!?この世界の魔法文明ってそんなハイテク化されてるのか!?)

 

 

魔法と言うからてっきり杖を振ってちちんぷいぷい…みたいなモノを想像していたが、思わぬ最先端技術の登場に彰人は驚きを隠せない。

 

 

「何か…魔法って思ったより近代的なんですね、もっと呪文を唱えたり魔法陣を描いたりするものかと…」

 

 

彰人が素直な感想を言うと、ボールスは“確かにそれも魔法としては間違っていない”と言い、この世界の魔法の歴史について軽く説明してくれた。

 

 

 

そもそも『魔法』というのは遙か昔の時代に人間や魔族の祖先が神々より授かった御業が起源であるとされている、その魔法を授かった祖先…後に『大賢者』と呼ばれる者たちは、後世に魔法を残すためにその使い方や情報を魔導書(グリモワール)という魔力を込めた本に記したそうだ、魔導書は世界中のあちこちで発掘されていて、今日(こんにち)までの魔法文明の礎となっている。

 

 

それだけを聞くと魔導書端末(グリモバイル)を発明する必要が無いように思えるが、実は魔導書に記された魔法というのは発動に手間や人手が掛かる代物で、到底個人がクイックな戦闘で使えるようなものではなかったそうだ、その取り回しの悪さから当初は魔法文化はあまり根付かなかった。

 

 

そして後世において大賢者の子孫たちが魔導書の魔法を何とか個人で簡単に使えないかと思案し発明したのが魔導書端末(グリモバイル)と魔法石である、魔法石には魔導書の術式や魔法陣などの魔法情報が記録されており、魔導書端末(グリモバイル)を通すことでその情報を読み取り魔法を行使できるようになっている、ただしあくまでも個人で使える範囲で簡略化されているため、性能は魔導書のそれより大きく劣る。

 

 

 

つまり複数人で発動させることが前提となるような手間や人手のかかる魔導書の魔法が大砲だとすれば、それを個人でも簡単に使えるピストルとして発明したのが魔導書端末(グリモバイル)である。

 

 

「…とまぁ、魔法の何たるかを簡単に説明するとこんな所だな」

 

 

「な、なるほど…」

 

 

正直魔法の知識が全く無い彰人にとっては簡単を通り越してもはや講義に近いレベルであったが、とりあえず魔法の大まかな概要についてはある程度理解する事が出来た、それはそれとして、この世界の神は何かとモノを与えたがる性格をしているのだろうか?二物どころか四物くらい与えているのではなかろうか。

 

 

「あれこれと説明したが、まずは使ってみればどんなものかは自ずと理解できるさ、さて、魔導書端末(グリモバイル)を使う前にまずはこれを中央のスロットにセットしてくれ」

 

 

そう言ってボールスが渡してきたのは黒色の魔法石だった、他の魔法石よりやや大きく、ボールスの言うとおり中央部のスロット以外にはまる場所がない。

 

 

「これは魔力核石(コアストーン)というもので、簡単にいえば持ち主の魔力と魔導書端末(グリモバイル)を同期させるものだ、持ち主の体調や魔力残量を自動的に計測して消費魔力を調節したり、それぞれの個人用の魔法を識別するという役割がある」

 

 

「…つまり持ち主の身分証みたいなものですか」

 

 

魔力核石(コアストーン)を中央のスロットにはめ込みながら彰人が言うと、ボールスは“そうなるな”と彰人の言葉を肯定する。

 

 

魔力核石(コアストーン)をセットしたら指先で石に触れるんだ、そうすれば本人認証が完了して魔導書端末(グリモバイル)が起動する」

 

 

彰人が指先で魔力核石(コアストーン)に触れると、魔力核石(コアストーン)が淡い光を放ち、蓋の裏のディスプレイ画面に『グリモバイル』という文字が浮かぶ、電源が入ったということなのだろう、続いて画面にはスロットを模したようなアイコンが七つ表示されたが、まだ魔法石をセットしていないのでスロットアイコンは空っぽだ。

 

 

「これで本人認証と起動は完了だ、まずは魔法を使うために何か一つ魔法石をスロットにセットしてみるといい、どれも初心者用の初級基礎魔法だから消費魔力も少なく使いやすいぞ」

 

 

ボールスに言われて渡された魔法石を眺める、手元にある魔法石は赤・青・緑の三色で、それぞれ火と水と風の基礎魔法に対応している、昨日行った魔力計測で自分はこの3属性に適性があるらしい、適性のある属性の魔法を使うと効果が増加するそうだ。

 

 

(まぁ、ゲームとかでもそうだけど、魔法といったら最初は『火』がセオリーだよな)

 

 

そう思い彰人は赤色の魔法石をスロットにはめると、スロットアイコンのひとつに『フレイ』と表示された、この魔法石に封入された魔法の名前なのだろう。

 

 

「ディスプレイ画面のスロットアイコンにセットした魔法石の名前が表示されていると思うが、それを呪文代わりに唱えると魔法が発動する、試しにあそこにある的に向かって魔法を撃ってみろ、手を前に突きだして魔力を集中させるイメージだ」

 

 

ボールスが指差した先には等身大の人っぽい形をした黒い石像が立っていた、ボールス曰わく魔法に強い造りになっているので基礎魔法程度では壊れないらしい。

 

 

「わ、分かりました、やってみます」

 

 

やや緊張した面もちで彰人は石像の正面に立つと、手を前に突き出して魔力を集中させようと試みる、彰人と石像の距離は約5メートル、これがフレイの最も威力が出る射程距離なのだそうだ。

 

 

(こ…こうか…?)

 

 

すると、自分の中に流れるエネルギーのようなモノが血管を伝って手の先に集中していくような感覚が伝わってくる、これが魔力というものなのだろうか。

 

 

「『フレイ』!」

 

 

彰人が魔法名を唱えると、手のひらに魔力が集約されてそれが火の玉へと姿を変える、そしてその火の玉が勢い良く飛んで…

 

 

…行ったはいいものの、火の玉はビー玉ほどの大きさにしかならず、少し進んだ所でポスッ…という音を立てて自然消滅してしまった、初見の彰人でも一般的な威力をはるかに下回っていることだけは分かった。

 

 

(て…適性ありでこれ…?)

 

 

「…念のために聞きますけど、この魔法がこんなもんってわけないっすよね」

 

 

「やはり元の魔力の低さが威力にも影響しているようだな、ちなみに平均的な威力はこんなものだ」

 

 

そう言ってボールスは自身の魔導書端末(グリモバイル)を取り出すと、さっきの彰人と同様に手を前に突き出す。

 

 

「『フレイ』!」

 

 

ボールスが魔法名を唱えると、バスケットボールほどの大きさをした火の玉が勢い良く飛んでいき、そのまま石像に命中して爆発する、ボールスの言うとおり石像には焦げ跡すら付いておらず何事もなかったように立っている。

 

 

「……………」

 

 

自分が撃ったフレイとの威力差を目の当たりにして彰人は呆然としてしまった、これが一般的な威力と言うのなら、自分の魔力はどれだけ弱いのだろうか。

 

 

「気を落とす必要は無い、彰人殿は魔物の魔力から自分の魔力を強化できる御業を持っているんだ、すぐに俺を追い越すくらいに強くなるさ」

 

 

ボールスはそう言ってまたニカッと笑う、しかしいくら魔力強化(レベルアップ)の能力があるとはいえ、ボールス並の威力になるまでどれだけかかるのだろうか、考えただけでも気が滅入りそうだ。

 

 

「そういえば、彰人殿のいた世界はどういう場所だったんだ?」

 

 

気を落としていたのが顔に出ていたのか、流れを変えるかのようにボールスがそう聞いてきた、気を使わせてばかりで何だか申し訳なくなってくる。

 

 

「そうですね、まず第一に魔法が存在しない世界でした、剣と魔法の世界で敵と戦う…なんてのは空想の産物で、俺も剣なんて持ったこともなければ魔法も使ったことありません」

 

 

彰人が地球での事を話すと、ボールスはとても驚いたような表情をするが、やがてどこか腑に落ちたような様子で口を開く。

 

 

「なるほど、彰人殿は“戦い”というモノとは無縁の、それほど平和に暮らしていた世界からここに来たんだな、彰人殿の魔力が低いのも、そういった経緯があっての結果なのかもしない」

 

 

ボールスがうんうんと頷きながら言う、ということは、自分が魔力強化(レベルアップ)の力を持って弱い状態で召喚されたのは、少しずつこの世界の魔法といった不可思議な力に慣れさせるためなのだろうか。

 

 

(気が利くんだか利かないんだか…)

 

 

何度目か分からない神様への愚痴をそっと心の中でこぼした。

 

 

「だが、逆に言えばそんな平和な世界から来た彰人殿に我々は魔王を倒す力添えを強いているんだな、本当にすまない」

 

 

彰人の世界の話を聞いたボールスは今までとは打って変わって申し訳無さそうな顔をしながら彰人に頭を下げる、正直彰人にとってこの世界に来てしまった事は不本意であり理不尽以外の何物でもない、その思いは今も変わっていないしこれからも変わることはないだろう、だがこうも正面から向き合って言葉をぶつけられると、自分もつい心の奥底にしまい込んでいた言葉が出てきてしまう。

 

 

「それはもう気にしてません、確かに出来ることならすぐにでも元の世界に帰りたいですけど、魔王を倒さないと帰れないのならやるしかないです、それだったら嫌々やるよりも楽しんでやらなきゃ損ってもんじゃないですか、それに…」

 

 

彰人は一度言葉を切ると何か考え込むような顔をし、やがてまた口を開く。

 

 

「それに、神様がこんなオレを勇者(マレビト)に選んだ事に何か意味があるのなら、オレはそれを知りたいです、神様ってやつに会えるのかどうかは分かりませんけど、魔王を倒すって以外にも、そういう目的を持ってこの世界を見て回るのも面白そうじゃないですか、だから今は勇者(マレビト)としての使命に、前向きに取り組んでみようと思います」

 

 

彰人は嘘偽りのない自分の言葉をボールスにぶつける、我ながらこんな事を考えられるなんて、それこそ自分ではないと思えるくらいに前向きな思考回路だ、それだけこの魔法世界に興味が湧いてきたのだろうか、それを聞いたボールスは最初こそ驚いたような顔をしていたが…

 

 

 

「そうか、なら俺も彰人殿が使命を果たせるよう、全力で指南をするとしよう」

 

 

いつものようにニカッとした笑顔でそう言うのであった。

 

 

 

 

その後、水属性の基礎魔法である『アクア』、風属性の基礎魔法である『エア』の練習を試みたが、やはりフレイ同様威力は実践で使うには到底及ばないものであった。

 

 

「さて、魔法関連の指南は一旦ここまでにするとして、次は彰人殿の武器…『魔導具』についてだな」

 

 

一通り試し撃ちをしたところで魔法の練習を一度切り上げ、続いて彰人の持つ武器の話になった。

 

 

「彰人殿は剣を持ったことが無いと言っていたから、メインの武器は杖を持って魔法に特化した方がいいかもしれないな、剣術を一から鍛えるというのも手だが、何せ魔力の他にも体捌きや体幹も鍛える必要がある、ならばこちらの方が手っ取り早いだろう、それに得物を持って敵と対峙するというのは慣れていない者には相当な恐怖となる」

 

 

そう言ってボールスはあらかじめ持ってきていたいくつかの武器の中から杖を取ると、彰人に向かって差し出した。

 

 

「杖は持ち主の魔力を増幅させて威力を高める効果がある、特に今の彰人殿にとっては心強い味方となってくれるはずだ」

 

 

彰人が受け取った杖はシンプルなデザインのものであった、材質は黒い金属のようなもので出来ており、長さは約30cm程と一般的にイメージされるモノよりは短い、先端部分には球体状の赤色の宝石が取り付けられており、杖というよりはステッキに近いのかもしれない。

 

 

「これで魔法の威力が増すんですか?」

 

 

「あぁ、だがその前に所有者を登録する必要がある、杖の持ち手部分に魔法石が埋め込まれているのが分かるか?」

 

 

彰人が杖のグリップ部分に注目すると、ボールスの言うとおり銀色の魔法石が埋め込まれていた。

 

 

「それを魔導書端末(グリモバイル)魔力核石(コアストーン)に近づけるんだ、そうすると武器に埋め込まれた魔法石が持ち主の魔力と同期して所有者が登録される、こうすることで武器は初めてその効果を発揮して保管庫(ストレージ)に収められるようになる」

 

 

(なんか、ワイヤレス機器のペアリングに近いような仕様なんだな)

 

 

そんな事を考えながら彰人は言われたとおり杖の魔法石を魔力核石(コアストーン)に近づける、すると魔法石と魔力核石(コアストーン)が互いに点滅し、魔導書端末(グリモバイル)のディスプレイに『新しい魔導具が登録されました』という表示が出る、これで所有者登録が出来たようだ。

 

 

「そういえば、今言っていた保管庫(ストレージ)って何ですか?」

 

 

魔力核石(コアストーン)にデフォルトで封じ込められている魔法の一つだ、所有者登録した魔導具を別空間にストックしておくことが出来る、最初に魔力核石(コアストーン)と所有者の魔力を同期させるのも、個人の保管庫(ストレージ)を識別させるためという目的がある、例えばこんな風に使うんだ」

 

 

ボールスが手を上に突き上げて魔法名を唱えると、虚空から一振りの剣が現れてボールスの手に収まる。

 

 

「…すげぇ」

 

 

彰人は思わず素直な感想を口にする、何もない空間から武器を出し入れすることが出来る、魔導書端末(グリモバイル)の魔法もそうだが、男の子であればこういった芸当も“ザ・魔法”という感じがしてワクワクしてしまう。

 

 

「何を言う、彰人殿はもっとすごい御業を持っているじゃないか」

 

 

“謙遜するな”といった口調でボールスは言う、そう、昨日の測定で判明した彰人が授かった特別な御業は魔力強化(レベルアップ)だけではない。

 

 

その名は『宝物庫(ミニュアース)』、性能は保管庫(ストレージ)と似ているが、保管庫(ストレージ)は登録した魔導具しか格納出来ないのに対し、宝物庫(ミニュアース)は魔導具以外のあらゆる道具類を別空間のストックに仕舞う事が出来る、文字通りのアイテムストレージのような能力となっている。

 

 

とはいえまだ仕舞うようなモノも無いし、魔導具の出し入れなら保管庫(ストレージ)の方が瞬時に行えるため、単なる上位互換というわけではない、使い分けろということなのだろう。

 

 

「よし、それでは早速登録したその杖で魔法を使ってみろ、魔導具の力で威力に差が出るはずだ」

 

 

「はい!」

 

 

彰人は手に持った杖を前に突き出し、先端の宝石部分に魔力を集中させるイメージで魔法を唱える準備をする、すると宝石部分が淡い光を放ち、魔力が溜まっていく様子が見て分かる。

 

 

「『フレイ』!」

 

 

すると先程まではビー玉くらいの大きさしかなかった火の玉が、ピンポン球くらいの大きさになってパワーアップし、勢い良く杖の先から飛び出した、そして撃ち出された火の玉は石像に当たると、勢い良く爆発して火の粉を撒き散らす。

 

 

「…………………」

 

 

その様子を彰人は再び呆然とした様子で眺めていた、さっきまではほぼ無いに等しい威力だった魔法が、魔導具の力のおかげとはいえちゃんとした魔法として威力を発揮した。

 

 

「いぃよっしゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

たったそれだけのことなのに、飛び上がるほど嬉しかった、周囲の人間にとっては何でもない当たり前のことなのだろうが、彰人とってはこの初めての成功がどうしようもないくらい嬉しかった。

 

 

「おめでとう、彰人殿、この前進は大きな一歩だ、この調子で行けば伝承の勇者(マレビト)となる日も近いだろう」

 

 

ボールスも満足そうな笑顔で言った、お世辞でも何でもなく、まるで自分のことのように喜んでいるのが彰人から見ても分かった。

 

 

「それでは次の段階に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実際に魔物を狩りに行くぞ」

 

 




次回初戦闘。
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