虚構勇者   作:きいこ

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世界観を現代風にするのは最初から決めてましたけど、やはり文明ってのは難しいですね。

ちなみになろう版のタイトルは『虚構勇者~魔王を倒す『救国の勇者』として異世界に召喚されたけど能力は最弱!?でもレベルアップの能力でどんどん強くなっていくので最強を目指します~』です、サブタイトルはこっちでは邪魔なので取っ払いました。


第3話「魔物」

「ま、マジで実戦なんですか…?」

 

 

「感覚を掴むなら実戦に勝る経験はない、それに俺が彰人殿を守りながら戦うから大丈夫だ」

 

 

城内の廊下を歩きながら彰人は不安げな様子でボールスに言うが、ボールスの方はあまり心配していない様子で返す、彰人の飲み込みの速さならもう実戦を経験しても問題無いと判断したらしいが、いくら何でも早すぎではないだろうか。

 

 

「それに、彰人殿の魔力強化(レベルアップ)は魔物を倒さなければ効果が無いらしいからな、それなら早い方がいいだろう?」

 

 

「それは…まぁ…」

 

 

ボールスの言葉に彰人は何も反論できずに視線を逸らす、魔力強化(レベルアップ)は倒した魔物の魔力を吸収して強くなる能力だ、つまりこの『倒した魔物の魔力』というのは『経験値』に相当する、ならば戦闘を行わない限りレベルは上がらないのだ。

 

 

「というかそもそも、『魔物』ってどんな存在なんですか?魔族とはまた別の生き物なんですか?」

 

 

「そうだな、何と言ったら良いものか…まず前提の知識として覚えてほしいのは、我々が『魔力』と呼んでいるエネルギーは、空気中を漂っている魔力の元…魔力元素(マナ)を身体が摂取し、体内で自動的に精製されるものだ」

 

 

「次に魔物がどういう存在かについてだが、魔物は魔扉(ゲート)と呼ばれる“魔物を生み出す魔物”から生まれる、ゲートは空気中の魔力元素(マナ)を体内に取り込んで魔力を精製し、その魔力を使って肉体を形成して魔物を生み出す、つまり魔物というのは簡単に言ってしまえば『生きた魔力の塊』…魂魄一体の霊的存在というわけだ」

 

 

「…つまり生き物であって生き物でない…って事ですか?」

 

 

「有り体に言えばそうだな、だから殺生の経験が無い彰人殿が罪悪感を感じる必要は無い、生き物のように見えるがヤツらは魔力の塊、倒しても魔力となって空中に霧散するだけだ、そして彰人殿の魔力強化(レベルアップ)はその魔力を吸収して強くなる、だから実戦経験は彰人殿の能力を考えればとても理に適っているというわけだ」

 

 

「…そう、なんですね」

 

 

ボールスの説明を聞いて彰人は内心ホッと胸をなで下ろす、魔物を倒すということは生き物を殺すということだ、ゲームでは勇者となってモンスターをバッタバッタとなぎ倒してきた経験のある彰人だが、それはあくまでもゲームでの行為だと割り切っていたから出来たことだ、いざ自分が得物を持って同じ事をするとなると少なからず抵抗を覚える彰人だったが、魔物がそういう存在なのであれば幾分か気は楽になった。

 

 

「というか、魔物がゲートから生まれるなら、ゲートはどうやって生まれるんですか?」

 

 

「それが誰にも分からんのだ、ゲートも他の魔物同様攻撃を加えれば倒せるのだが、時間が経てばまたどこかに現れる、遙か昔に魔王が生み出した不死の魔物とも言われているし、はたまた空気中の汚染された魔力元素(マナ)が原因で自然発生したものとも言われている、様々な説が唱えられているが、その真相を解き明かした者は居ない」

 

 

「へぇ…」

 

 

そんな世界の七不思議みたいなものがこの世界にもあるんだな、なんて事を考えているうちにふたりは王城の門までやってきた。

 

 

「今回の実戦はこの街…バルコニアの首都である『アトリア』近くの街道で行う、最近この近くで魔物の発見報告が後を絶たなくてな、新たにゲートが出現したのではないかと言われている」

 

 

「…まさかゲートを破壊しろなんて言わないですよね?」

 

 

「流石にそんな事までは求めないさ、今回はあくまでもゲートが生み出した魔物の討伐、当然ゲートの破壊もやるつもりでいるが、それは冒険者や騎士団で捜索中だから今回は考えなくていい」

 

 

(ふぅ…良かった、いきなり中ボスみたいなヤツと戦うことになるのかと思った…)

 

 

簡単なミッションしか出さないと知って安心した彰人はボールスと共に街へ繰り出した。

 

 

 

 

 

「…異世界の文明って他の創作物でのイメージしかなかったけど、こりゃすげぇな」

 

 

アトリアの街並みを見渡しながら彰人は感嘆する、王城を中心に扇状に広がる大きな道路は石畳で一面隙間無くアスファルトさながらの舗装がきちんとされ、そこには自動車やバイクが走っている、建築物はカラフルなコンクリートや石造りのしっかりとした建物が軒を連ねている、道の端には街灯が等間隔で建っており、横断歩道や交通信号まである、現代の西洋…ヨーロッパやアメリカを彷彿とさせる文明レベルの街並みだった。

 

 

「…自動車まで走ってるのか」

 

 

「何だ、彰人殿のいた世界にも自動車があったのか?」

 

 

「はい、ちなみにあれって動力源はどうなってるんですか?」

 

 

「あれは“動力魔法”と呼ばれる魔法で動かしている、動力魔法は火や雷、風など複数の属性を混合させた特殊な魔法で、それが封入された魔法石が自動車に搭載されているんだ、動力魔法は自動車だけじゃなく鉄道や航空機、果ては照明や冷暖房なんかの一般家庭の魔動式の家具類まで幅広く使われている。

 

 

「…つまり電気をより便利にしたモノって事か、地球とほぼ変わらないな」

 

 

地球の電気や内燃機関を使った科学技術が魔法や魔力により発達した文明だという事か、とんでもない世界に来てしまったものだ。

 

 

「とはいえ、流石にここまで発展しているのはこのアトリアくらいだな、他の街もいずれここと同じようになることを目標としているが、まだ発展途上と言ったところだ、街道はこの七番街を抜けた先にある、街の外まではそれなりに距離があるからトラムで移動するぞ」

 

 

「は、はい…」

 

 

トラムまであるのか、とこの世界の文明レベルに驚きつつ、彰人はボールスの後を付いていく。

 

 

「………」

 

 

七番街の歩道をボールスと歩いている最中、彰人は街の様子をキョロキョロと見渡す、車道には自動車や二輪車、はたまた大小のバスが走り、歩道には人々が行き交い、道端に連なっている建物には服や食料品を売っているお店だったりオシャレなカフェなどが軒を連ねており、全て魔法で動いているということを除けば普通に海外旅行に来たのではないかと思うほどに地球と大差が無かった。

 

 

 

「ここがトラム乗り場だ、あと数分で来るようだな」

 

 

城門から数分歩いたところでトラムの乗り場に着く、自分たち以外にも並んでいる男女が何人かおり、皆スーツのような服を着ていた。

 

 

「あのバッジ…トルクモータースの社員だな、アトリアに本社がある自動車製造の会社だ、かなりの大企業だぞ」

 

 

物珍しそうに男女を見ていた彰人に気付いていたのか、ボールスが説明を付け加えてくれた。

 

 

「…この世界って会社あるんすか?」

 

 

「当たり前だ、彰人殿の世界にもそういった組織はあるだろう?」

 

 

「えぇ、まぁ…」

 

 

ボールスは若干呆れたような口調で彰人の疑問にそう返した、てっきり冒険者が大半かと思っていたのだが、こうして会社のような営利企業があるということに驚きを隠せなかった。

 

 

(オレってひょっとして異世界の文化馬鹿にしすぎなのか…?)

 

 

自分の中の認識を改めよう、彰人はそう反省した。

 

 

 

 

 

その後、10分ほどトラムに揺られてようやく街の出口まで辿り着く、街の端は塀で囲まれており、外敵を寄せ付けない造りになっている、何でも魔物や魔族の襲撃を防ぐためにバルコニアの街は基本的にこのような構造になっているらしい。

 

 

そこから門をくぐり抜けて街道に出ると、辺りは一変して田舎道のような風景になる、中央の道こそ舗装されているものの、その周囲はまだ自然の風景が残されている。

 

 

「以前はこの辺りも魔物なんて出なかったんだがなぁ…早いところゲートを見つけなければ」

 

 

「ゲートってそんな見つからないものなんですか?」

 

 

「そうだな、定期的に人目に付かないところを移動しているから探しづらいったらありゃしない」

 

 

「え、ゲートって移動するんですか?」

 

 

 

予想外の答えが返ってきたので彰人は驚いて聞き返す、魔扉(ゲート)と言うからには普通に扉のようなモノを想像していたのだが、名前通りの見た目ではないということだろうか。

 

 

「ああ見えてアレも魔物だからな、自力で移動もするさ」

 

 

何でもないようにボールスは言うが、彰人の中でゲートのイメージがさらに混沌としたモノへ変貌を遂げたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

「…いたぞ、あれが魔物だ」

 

 

街道を歩き始めて約5分、ようやくお目当ての魔物(ターゲット)が姿を見せた。

 

 

「…あれが魔物…」

 

 

その姿は“黒い狼”と言ったところだろうか、身体は体毛を含め全身が漆黒に染まっており、目は身体の色に映える金色になっている、しかし黒目に相当する部分が見当たらないため、“目”というよりは金色の宝石がはまっているようにも見える。

 

 

てっきりデカいライオンや熊のようなヤツが出て来ると思っていたが、想像していたよりも可愛らしいものである。

 

 

 

「何というか、もっとデカい獰猛な獣みたいなのを想像してましたけど、意外と当たり障り無い見た目なんですね」

 

 

「そういうタイプの魔物もいる、言い忘れていたが、ゲートは近付いてきた動物を取り込んで食べてしまう習性がある、ゲートから生み出される魔物は取り込まれた動物たちの姿がモチーフになっている」

 

 

「なるほど、ゲートってのは捕食系の生き物って事か」

 

 

恐ろしい生き物だなー、と他人事のように考えていたが、ここであることに気付く。

 

 

「…その取り込まれる動物って、人間も入ってるんですか?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

彰人が恐る恐る訪ねるが、ボールスは何も言わずに沈黙を返した、まるでそれが肯定であるかのように…。

 

 

「いいか彰人殿、ゲートを見つけても決して近付いてはいけない、自分そっくりの魔物を生み出したくなければ…な」

 

 

(怖ええええぇぇぇー!!!!!!)

 

 

早いとこあの魔物を狩って帰りたい、そう願わずにはいられない彰人であった。

 

 

「それでは彰人殿、手筈通りに行くぞ、まずは俺が近接攻撃で魔物の注意を引きつける、その隙を突いて彰人殿が後ろから魔法で攻撃だ、さっき教えたHPシールドは念のため常に展開しておけ」

 

 

「わ、分かりました!」

 

 

ボールスが剣を持って勢い良く魔物へ向かって飛び出した、それに気付いた黒狼の魔物が地面を蹴り、迎え撃つ為にボールスに向かっていく。

 

 

「『HPシールド』!」

 

 

ボールスが魔法を唱えると、身体の回りが青色の膜のようなモノで覆われる、これは『HPシールド』という魔力核石(コアストーン)にデフォルトで封入されている魔法のひとつで、自身の魔力を一定量消費して身体へのダメージを肩代わりするバリアを展開させる。

 

 

このバリアがある限りは攻撃されても痛くないし傷も付かないが、攻撃を受けすぎるとバリアの耐久力が無くなって砕け散ってしまう、バリアは一度展開させるのに全体の魔力の三割程度を消費するため、HPシールドを使いすぎると魔法などに割くリソースが足りなくなってしまうので注意が必要だ。

 

 

「はあぁっ!」

 

 

ボールスが剣を横一線に振り抜いて先手必勝の一撃を加えようとするが、黒狼は素早い身のこなしでそれをかわした、続けて2撃目、3撃目とコンボのように剣撃を繰り出すものの、狼は見た目に違わないその俊敏さでボールスの攻撃をいなしていく。

 

 

「『アクア』!」

 

 

黒狼がボールスの4撃目をジャンプしてかわし、地面に着地しようとしたタイミングで彰人が援護射撃として魔法を発動させる、小さな水の球が杖の先から放たれ、狼めがけて飛び出した。

 

 

「ッ!!」

 

 

ボールスの攻撃に対する回避行動の直後だった事もあり、若干の硬直時間が生じていた狼にアクアは見事命中、水の球がパァン!という音を立てて破裂する、杖のブースト効果でダメージは与えられているようだが、やはり彰人の元の魔力が低いのもあってかダメージ自体はとても小さい。

 

 

「ーッ!!」

 

 

傷は浅いものであったが黒狼の敵意を逸らすには十分な効果があったようで、黒狼は殺気立った目を彰人に向け、鋭い大きな牙をギラリと光らせて突進しようとする。

 

 

「どこへ行こうとしている?貴様の相手は俺だ!」

 

 

しかしボールスがそれを許すわけがない、彰人を守るために左腕を前に突き出して防御の姿勢を取ると、黒狼の噛みつき攻撃を腕で受け止める、バリアのおかげで痛くはないが、HPシールドがバチバチと火花を散らし耐久力を徐々に減らしていく。

 

 

「ふんっ!」

 

 

ボールスが素早い身のこなしで黒狼の腹に膝で蹴りを入れた、腹部に加わった衝撃に黒狼がぎょっとしたような声と共に苦悶の表情を浮かべて噛みつく力が緩む、その隙に黒狼を振り払うと、黒狼に容赦なく剣を振り下ろす。

 

 

「『緋炎斬(ヒエンザン)』!」

 

 

ボールスが魔法名を唱えると、魔力が刀身を包み込んで灼熱の炎へと姿を変える、剣や槍、斧と言った物理攻撃を主体とした魔導具にも特定の属性の魔法石が埋め込まれており、それぞれの武器に属性を付与した攻撃を行うことが出来る。

 

 

「でやあぁっ!」

 

 

ボールスの繰り出した緋炎斬は黒狼の腹部に見事命中、剣圧で吹き飛ばされた黒狼は空中で半回転しながら地面に叩きつけられる、斬られた黒狼の腹からは血の代わりに黒いもやのようなモノが流れ出ていた。

 

 

(あれが魔物の身体を形作ってる“魔力”なのか…?本当に魔力の塊なんだな…)

 

 

生き物であって生き物でない、その意味を改めて実感する彰人だった。

 

 

「彰人殿!トドメを!」

 

 

「は、はい!」

 

 

ボールスの指示に従い彰人は杖を構えて魔法を唱えようとする、黒狼は致命傷に近いダメージを負って既に虫の息、今なら彰人の魔法でもトドメはさせるだろう。

 

 

(何というか、今の俺って情けないなぁ…)

 

 

ボールスにおんぶに抱っこのお膳立てをしてもらっている今の状況に思うところが無いわけではないが、今の自分の戦闘力ではマトモに戦えないので仕方ない、と自分を納得させる。

 

 

 

「ッーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 

 

「『フレ…」

 

 

魔法が発射されるまさにその瞬間、黒狼の足元からつむじ風が巻き起こり、目にも止まらぬ速度で黒狼が彰人に飛びかかった。

 

 

「魔法…!?彰人殿!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

凄まじい速度で迫ってくる黒狼に彰人は反射的に腕で顔を覆う、そこへ黒狼が最期の悪足掻きとばかりに彰人の左腕に牙を突き立てた。

 

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

HPシールドを展開させていたので痛みを感じることは無かった、だが狼に腕を噛まれているという光景が犬にすら噛まれたことがない彰人をパニックにさせた。

 

 

HPシールドはバチバチと火花を散らしながら徐々にその耐久力を減らしていき、バリアの色が青から黄色へと変化した、HPシールドは耐久力の残量によって色を変える、余裕がある場合は青色になるが、全体の半分を切ると黄色に変化し、残りわずかになると赤色になる。

 

 

(なっ…!?早すぎるだろ!?)

 

 

魔力の量が元から少ない彰人はHPシールドの耐久力も高くなく、このままでは十数秒でバリアが砕け散るだろう、そうなれば黒狼の牙は彰人の肉を易々と貫くこととなる。

 

 

「そうは…させるかッ…!!」

 

 

彰人は腰元の鞘から一振りの短剣を取り出す、刀身の長さは20センチほどで、柄の部分に赤色の石が埋め込まれたシンプルなデザインになっている、この短剣は敵に距離を詰められたときの護身用として戦闘前にボールスが持たせてくれた物だ、これも魔導具の一つで火属性に対応している。

 

 

「だあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

彰人が渾身の力を込めて短剣を黒狼の喉元に突き刺した、声帯部分(あるかどうかは不明だが)にヒットしたのか黒狼は声を上げることも無く目をぎょっと見開いて噛みついていた口を離す、またとない反撃のチャンスの到来だ。

 

 

「『フレイ』!」

 

 

彰人が杖の先端を黒狼に押し付け、零距離で魔法を発動させる、フレイの火の玉がすぐ目の前で破裂し、黒狼が吹き飛んでいく。

 

 

「………………」

 

 

地面に落ちた黒狼は喉元に短剣が刺さったままピクリとも動かず、足の先から魔力の粒子となって消滅していく、完全にトドメを刺せたようだ。

 

 

そして黒狼の魔力はまるで吸い寄せられるように彰人の元へ流れていき、身体に吸収されていく。

 

 

「…終わった…んですかね…?」

 

 

「あぁ、彰人殿の勝利だ」

 

 

その言葉を聞いて、彰人はへなへなとへたり込んでしまった。




次回「混血の魔族」

ヒロイン登場…かも?
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