鋼の軍団、自由の為に魔王軍を蹂躙す   作:Woudy

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Ⅳ-とある鉄馬の超電磁砲

 種族間連合と太陽神の使者――日本人と出会ったあたしとハイゼン。しかし凶悪な見た目の化け物に襲われた彼らは当然ながら激しく警戒。しかもハイゼンがゾルダートに人間の死体を使ってるなんて言うもんだから、もう大混乱。危うく一触即発になりかけた。あたしの必死の説得で事なきを得たけどさ……何故かあたしまで冷たい目を向けられた。あたしをハイゼンの仲間と認識してるせいだ、解せぬ。

 

 その後の話し合いで、鋼の軍団が人の死体を使用していることを口外しないこと、補充死体は魔獣に限定するようハイゼンに約束させる。代わりにハイゼンには日本軍から不要な鉄屑を提供してもらうことになった。序にあたしも家を空ける間の花の世話役を要求しとく。

 

「お、終わったか」

 

 因みにハイゼンは肝心な部分以外はあたしに全て丸投げ。煙の出る棒を口に咥えてのんびり寝てやがった。……お前のせいでややこしくなってんだよクソ野郎。蹴り飛ばしたのは決してやり過ぎではない筈だ。

 

 話し合いが終わって早速あたしらは準備を進め、連合や日本人と一緒に下山。麓の工場に寄ったハイゼンが怪物数百体を連れて来た時はあたしと奴以外悲鳴を上げていた。はたから見れば魔獣みたいなもんだからね、無理もない。

 

 

 

 

 

 連合軍や日本軍と合流したあたしらはすぐ戦闘になった。ミリシエント大陸を制圧していた部隊がフィルアデス大陸へ戻って来たのだ。オーガも2体含まれていて非常に厄介な相手である。但し、日本軍とこの男は別だったが。

 

「ハハハハハッ! 行けぇゾルダート!! 蹂躙しろー!!」

 

『ブオオオオオオオオッ!!!』

 

「な、何゛だゴイツぶべっ!?」

 

「ひぎっ、助けぶぶっ!!」

 

 ハイゼンと日本軍は同士討ちを避ける為に左右二手に分かれて魔王軍の増援部隊を対処。ハイゼンの号令に合わせて魔獣に襲い掛かるゾルダート軍団。数では向こうが軽く10倍多いが、それでもゾルダートは殆ど一方的に駆逐していく。

 

「こりゃあ良いぜ! ゾルダート・ワイバーンが作り放題だ!」

 

 無論ゾルダートだけに任せず、ハイゼン自身も鉄を浮かせては凄まじい速度で投かん。魔法帝国のタイクウホウカに似た攻撃は、空を埋め尽くすワイバーンの群れを次々と地面に叩き付ける。

 

「何だよ、こりゃあよぉ!? ゴウルアスまで全部串刺しにされちまってるじゃねぇか!!」

 

 オーク以下の味方が蹂躙される様に、増援部隊指揮官の一匹『ホワイトオーガ』は間抜け面を隠せない。

 

「くっそぅ!! テメェの仕業だな人間!!? 下等種如きが舐めんじゃn」

 

「あ、頭上注意しろよ?」

 

「ゲブンッ!!?」

 

 逆上してハイゼンに襲い掛かろうとしたホワイトオーガだったが、直上からワイバーンの死体が降ってきて下敷きになった。あたしが稲妻で撃墜した魔王軍のワイバーンだ。あたしはハイゼンを監視する為、必然的にコイツと一緒に戦場へ出る羽目になった。

 

「ナイスフォローだ、ルーサ」

 

「ないす? ふぉろお? 何だいそれ?」

 

「良い援護だった、って意味だ」

 

「そりゃどうも」

 

 お前ならお得意の能力でどうにかなっただろうが。とは言え、ここで万一にも死なれては困る。正直いけ好かない野郎だが、ゾルダートを指揮できるのはこの男のみ。魔王軍に対抗できる戦力が減るのは避けたい。

 

「くっそ……赤竜の野郎、何してやがる……」

 

「おぉ、まだ息があったか。タフな奴も居たもんだ」

 

 ワイバーンの死体に潰されたままホワイトオーガがあたしらを睨み付ける。

 

「調子に乗るなよ人間……もうじき此処に赤竜がやって来る。奴の力はとんでもねぇぞ! テメェですら手も足も出ない化け物だ! 身動き取れなくなったところを魔獣の餌にしてくれぐぶっ!!?」

 

「分かったから静かにしろ。うるせぇんだよ」

 

「お前、鬼かよ……」

 

 ハイゼンが鬱陶しそうに手を振るうと、殺到した大量の鉄棒であっという間に串刺しにされるオーガ。一瞬で鋼鉄のハリネズミと化し息絶えた。話してる途中にホント容赦ねぇ……。

 

「コイツ、赤竜とか言ってたな。ルーサは何か知らねえか?」

 

「いや、あたしも全く。魔王とオーガについては断片的にシン様から教わったけど」

 

 あたしだって全てを知ってる訳ではない。魔王軍にはまだ見ぬ脅威が存在すると知り警戒を強める。今回は赤竜という化け物が増援部隊に含まれているらしいが……。

 

「アレじゃねえか? 竜っぽいし」

 

 あっさりと見つけた。ハイゼンが指差す先は海上。日本人の魔導艦隊と対峙するように現れたクラーケンの群れ。その中の一頭に赤黒い竜が乗せられていた。魔導艦が火を吹き、鉄の塊が赤竜へ飛んでいく。

 

「ん? 砲弾が途中で止まったのか……?」

 

 しかし鉄の塊は直撃する前に空中で静止、まるで気が抜けたかのように海中へ没する。ハイゼンもあたしも首を傾げた。

 

「おい、そこのお前ら! ありゃあどうなってやがる!?」

 

 あたしらの所には連絡役の連合軍兵士と日本人が数名居た。ハイゼンが彼らを呼び止めると、連合軍の兵士が最初に話し出す。

 

「あの赤い竜なら自分知ってます。話に聞いた限りだと弓矢を放っても途中で弾いたり、近付くと体が急激に重くなって身動きが取れなくなるそうです」

 

「身体が急激に重くなる? それって、もしかして……」

 

「俺もお前らと同じ予想だぜ日本人」

 

 ハイゼンと日本人は、連合軍兵士からの話で赤竜に攻撃が届かない理由が分かった様子だ。その後も魔導艦や鉄の地竜、神の浮舟が攻撃を繰り返すが、その全てが赤竜にぶつかる前に静止、見当違いな方向へ弾かれてしまう。

 

「……やはりな、重力か」

 

「えぇ、重力の壁で砲弾や爆弾を弾いてるようにしか見えません」

 

「”じゅうりょく”って何だい、ハイゼン?」

 

「物と物が引かれ合う力だ。あの赤いトカゲは、その重力を操って物理的な攻撃を全部防いでしまうんだよ。そんな馬鹿げた能力を持つ奴、俺が暮らしてた世界でも聞いたことがねえぜ」

 

 長年生きているが”じゅうりょく”なんてものは初耳だ。話の半分も理解出来なかった。連合軍の兵士に至っては全く話に付いていけてない様子で、何と言うか……渋そうな変顔になってる。魔導艦の方を見てみる。攻撃が通用しないせいか彼らは別の魔獣へ目標を変更していた。

 

「攻撃を断念したみたいだね。まあ何やっても無駄なら仕方ないが」

 

 そう言ってあたしは真上から迫っていたワイバーンに稲妻をプレゼントしてやった。ワイバーンは黒焦げになってあたしらの傍に落ちる。それを見ていたハイゼンが、何故かニヤッと笑う。

 

「……いや、そうでもないかもしれねぇ」

 

「何か秘策でもあるんかい?」

 

「ちょっとな。お前の協力が必要だ、ルーサ」

 

「あたしが?」

 

「今の雷攻撃、もう1発撃てるか?」

 

「あぁ、問題ない」

 

「よし、合図を送ったら俺が指定したものに向かって撃つんだぞ?」

 

「分かった」

 

 連合軍や日本軍兵士、そしてあたしも、ハイゼンが何を考えているのか皆目見当が付かない。しかしコイツの何かを確信したかの様な不敵な笑みを、あたしは信じてみることにした。

 

「ぐ、ウオオオオオオオオッ!!」

 

 日本軍から供給された鉄屑が大量に巻き上げられ、2本の巨大な角柱を形成。ハイゼンの頭上で綺麗に一列に並んだ。角柱は非常に長大で、人種が30人並んでも尚余裕のある長さだ。

 

「なっ!?」

 

「ま、まさかこの男……アレをする気か!?」

 

「無茶だ! 生身の人間でそんな出鱈目な芸当が出来る訳が……!」

 

 ハイゼンが何を企んでいるのか日本人は理解したようで、驚いた顔のまま2本の角柱を凝視していた。

 

「さーて、ジャンクで出来た砲身で何処まで耐えられるか分かんねぇが、まぁものは試しだ」

 

 今度は2本の角柱の間に、人種の頭くらいはある鉄塊が挟まる形で空中に静止する。何となくこれを飛ばすというのは分かったが、先の魔導艦の攻撃と一緒じゃないのかい? 正直赤竜相手に通じるとは到底思えないのだが。しかしハイゼンのことだ。日本艦の攻撃とは何かが違うのだろう。そう考えている内にあたしの出番が回ってきた。

 

「よぉし、ルーサ! コイツにさっきの電撃をぶつけろ! それも特大の奴をな! 但し2本のレールと砲弾へ同時にやるんだ! お前なら出来るだろう!?」

 

「それぐらい、お安い御用さ。――おい、お前ら! 危ないから全員離れてな!」

 

「「は、はいっ!!」」

 

 あたしは日本人を退避させると、杖を両手で掴んで詠唱を始める。シン様の加護で元々多かった魔力を増幅魔法で更に増やし、風魔法で膨大な威力の雷に置き換える。魔法陣を埋め込んだ杖を角柱と鉄塊に翳し、その先端へ生み出した雷を溜める。そして唯一逃げずにその場で留まる男に一応の警告を発した。

 

「さぁ行くよ! 巻き込まれて死ぬんじゃないよハイゼン!」

 

「俺が雷程度でくたばるか! 来い、ルーサ!」

 

両手を広げた男の自信に満ちた言葉にあたしは不敵に笑い、

 

「ライトニング・テンペスト!!」

 

 技名を持ってそれに答えた。杖の先から放たれる圧縮された青白い稲妻。それが角柱と鉄塊に衝突した瞬間、鉄塊がオレンジ色の光の線と化して海へと伸びる。角柱は半分以上が消滅し、残りもボロボロと崩れ落ちた。

 

「『とある何がしかの超電磁砲(レールガン)』ってか! ガッハッハッハッ!!」

 

 結局、赤竜が”じゅうりょく”なる不可視の防御魔法を使ったのかは不明だ。はっきりしてるのは光の線に腹を貫かれ、奴の向こう側の海が見える程の大穴が開いたという事実のみだ。赤竜は断末魔を上げる暇も無く力尽き、崩れた。それを目撃した魔王軍が血相を変えて、散らばる様に逃げ出す。残ったのは満足そうに高笑いするハイゼンと、呆然と立ち尽くすあたし他人類。

 

「……ほ、本当に電磁加速砲を再現しやがったぞあの男」

 

「あんなジャンクレベルの鉄屑を繋ぎ合わせただけでやってのけるとは……」

 

「あの女の子が放った雷も凄かったな。一体どれだけの電流が電極棒へ瞬間的に流されたんだ?」

 

 自慢じゃないが、あたしは音より速く飛ぶ魔帝の天の浮舟も一瞬で撃ち落としたことがある。その時の天の浮舟は100機近かったので、稲妻も軽く100連発したっけ。今回はその100発分の稲妻を一つに纏めてみたが、ハイゼンの能力と合わせて予想以上の戦果になった。

 

「運動エネルギーがデカ過ぎて止められなかったのか、それとも砲弾が速過ぎて気付けなかったのか、まぁどっちも良い。これで日本人どもも楽に戦えるんじゃねぇか?」

 

「そうだね。お前のお陰で人類はまた一歩平和に近付けたよ」

 

 もしかしたらハイゼンは日本人でも倒すのが難しい相手を対処する為に、何処ぞの神がこの世界へ送り込んできたのかもしれない。……と思ったけどすぐ否定した。こんなクソ野郎を気に入る物好きな神がいるとは思えん。

 

 え? 割りとシン様と仲良くしてたじゃないかって? 流石に彼は無関係だろ、多分、きっと、恐らく。

 

「そいつは違うぜ?」

 

 ……ん? ちょっ、待!?

 

「お、おい何の真似だハイゼン!?」

 

 突然ハイゼンがあたしの頭に手を置き、かなり乱暴に撫で始めた。い、痛い痛い痛い!!

 

「あのトカゲ野郎をぶっ潰せたのは、お前の魔法とやらのお陰でもあるんだぞ? アレが無きゃあ俺だって倒せなかったかもしれねぇ。ただ鉄を飛ばしても届かなかっただろうな」

 

 揺さぶられる頭を何とか動かしてハイゼンを見上げると、奴は意外にも真っ白な歯を見せながら笑っていた。そのサングラス越しに見える碧眼はとても綺麗で、純粋な賞賛の意を宿していた。

 

「――悪くねぇ、大したもんだ、ルーサリア」

 

「分かった、分かったから放せ! 髪が乱れる!!」

 

「おっと、すまねぇ」

 

 やっと解放された。あぁもう、まだ頭がグラグラする。

 

「何してくれるんだい、女性にとって髪は命なんだぞ。乱暴に扱いやがって……」

 

「ハハハッ! わりぃわりぃ、異世界でもその点は一緒なんだな。これは失礼したぜ」

 

「全く……」

 

 あたしはクシャクシャの髪を直しながら愚痴を溢す。それにしても……。

 

(頭を撫でられるなんて……何時以来だろうねぇ)

 

 遥か昔に死別した両親の姿があたしの脳裏に映る。懐かしいね、今回みたいなものじゃなく、優しく労わる様に撫でられたのを、今でもはっきりと覚えているよ。

 

 ……って、何でこのタイミングで親の顔を思い出すことになるんだよ。まるであたしがハイゼンに家族の様な情を抱いているみたいじゃないか。流石にそれだけは、仮に事実だとしても御免被りたいところなんだがね……。




 流石に鉄屑を繋ぎ合わせたものでレールガンを撃てるとは思えませんが、そこはハイゼンさんとルーサが凄過ぎるということで。
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