鋼の軍団、自由の為に魔王軍を蹂躙す   作:Woudy

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 長らくお待たせして申し訳ございません。いよいよ魔王軍との最終決戦です。


Ⅷ-決戦! VS魔王軍!①

 漆黒の巨城が広大な闇を背景に聳え立つ。城内の最深部、王の間では、この城の主と幹部たちが集結していた。

 

「――魔王様、準備が整いました」

 

 幹部の内の一体、レッドオーガが他の幹部より一歩前に出で、1階分上に位置する玉座に腰掛ける”王”に頭を下げる。育てていた配下の魔獣たちが全て成熟し、十分戦える状態になったことが報告された。

 

「ご苦労だったな、お前たち」

 

 魔王の姿は、闇に染まった王の間において場違い感が半端なかった。奴は全身を白く無機質な材質の装甲に覆われた、パワードスーツに似た見た目をしていた。ファンタジー世界の筈が、玉座の一点だけSF世界と入れ替わったかのようだ。

 

 そんな奇妙な見た目の魔王から、更に場違いな程に発せられる少女のソプラノボイスは、耳元で囁かれたら大抵の者はとろけてしまうだろう。

 

「あの怪物軍団どもの対抗策は既に考えてある。――全員、端末の使い方は分かるな? 奴らが来るまでに内容を頭に入れておけ」

 

 側近のマラストラスがA4サイズ程度の板状の物体をオーガに配る。魔王とオーガの創造主、魔法帝国で一般的に普及しているタブレットと同質の魔導端末だ。端末を起動させて尖った指で画面になぞっていたブルーオーガが魔王に確認を取る。

 

「……魔王様、これが今回の作戦ですかい?」

 

「あぁ、我とお前たちが見た怪物どもの戦い……その様子から我は奴らの弱点を見つけた。実戦で確かめるしかないが、そこを上手く突けば怪物どもの戦力を大きく落とせるだろう。そこに――」

 

 魔王が玉座からゆっくりと立ち上がり、片腕に装着された武器を天に掲げる。

 

「魔王様が着ている魔導アーマーで追い打ちを掛ける、という訳ですな?」

 

「うむ。魔帝様の強力な魔導兵器だ。あの人間が巨大魔獣に化けたところでどうにもならん」

 

 鋼の軍団(ついでに勇者一行)に勝利する可能性が出てきたからか、幹部たちの口元に僅かに笑みが浮かぶ。散々辛酸を舐め続けられてきたが、漸く反撃開始だ。

 

「今度こそ奴らを血の海に沈めるぞ! この一年間受けてきた屈辱の数々、纏めて奴らに返してやれ!!」

 

「「「「おぉっ!!!」」」」

 

 一斉に雄叫びを上げる部下たちに、魔王は満足そうに頷き不敵な笑みを溢す。

 

「ふふ、待ってろ下種ども。一匹残らずあの世にドバッ!!?」

 

「「「「魔王様!!?」」」」

 

 その時、魔王はバランスを崩して盛大に転んだ。慌てて掛けよった幹部たちに起こされる。

 

「大丈夫ですかい、魔王様?」

 

「う、うむ……転んだだけだから問題無い。すまぬな、お前たち」

 

 バイザー越しに見える可愛らしい顔は涙目になっている。

 

「やはりアーマーがデカすぎたんすかねえ……?」

 

 現在の魔王は身長149㎝。高さ2mの魔導アーマーを着込むには小さ過ぎる体格だ。対策として脚部に長めの棒を押し込み、その棒の上に足を乗せる様に履いているが、代わりにバランスが多少悪くなってしまった。

 

「何、注意しておけば今の様に転ぶ心配はない。それにコイツは魔光砲を備えてある。我は固定砲台として遠くからの射撃に徹しようではないか」

 

 心配そうな幹部たちを軽く流し、魔王は来る最終決戦に備えるのだった。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 ――その頃。

 

 デュークとクソ人形を加えて再開された討伐の旅。少し賑やか……どころかクソ人形の所為で結構騒がしかったが。

 

「おぉ、美味いなコレ!」

 

「この世のものとは思えない美味さです! ありがとうございますデューク殿」

 

「お気に召したようで何よりです」

 

 デュークの飯は良かった。店を開いて金を要求しても長蛇の列が出来るに違いない。あたしらにとって彼の絶品料理は、すぐに毎日の楽しみとなった。食事中はゾルダート軍団が周囲を固めてくれてるから、魔獣の襲撃を受ける心配も要らない。

 

「グゲギャアアアア!!」

 

 偶に聞こえる魔獣の断末魔と肉の掻き回される音に気分を害されるが、そこに文句を言うのは流石に贅沢だろう。あたしらは魔物の巣窟の中にいるのだから。

 

(クソ人形は哀れだね。こんな美味い料理を堪能できないから)

 

 奴は人形だ。仕方のないことだ……ろ!?

 

”イヤー、デュークの飯は相変わらず最高だねー!“

 

 チラリと視線を横に向けた先で、クソ人形がパックリ割れた顔から植物の根のような触手を伸ばし、地面に置かれたスープを吸い取っていた。

 

(……お、こっちの鹿肉もイケるねえ)

 

 うん、忘れよう。あたしは何も見てなかった。そういうことにしといてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 そして遂に、あたしたちは目的の場所へ到着した。魔王城は常闇の世界の手前、グーラドロアと呼ばれる荒地で巨大な存在感を放っている。

 

「いよいよ決戦の時だね」

 

「ハッハッハッ! 見るからにラスボスが待ち構える城って感じだな! 魔王の奴は良いセンスしてやがるぜ」

 

「趣味が悪すぎる。正直入るのも気が引けそうだよ」

 

 山の向こうの常闇の世界に溶け込めそうな漆黒の巨城は、この旅の終着点には相応しい外見と禍々しさを持っている。城は全周を灰色の分厚い壁で囲まれ、外部からの侵入を拒んでいる。

 

「しかし異様なまでに静かだな。俺たちの到着にはとっくに気付いてる筈だが」

 

「ちょいと調べてみよう…………居るね、魔力量からして数は1500から2000ってところかな? 城壁の内部で待ち構えているみたいだ」

 

「よし、こっちも部隊を展開させるとするか。お前ら、配置に付けぇ!!」

 

 ハイゼンの号令に合わせて、移動式カラ殺装置の扉が幾つも開き、中から凶悪な人相の集団がゾロゾロと湧き出てくる。その数、1000体。鋼の軍団は種類ごとに整列し、数が最も多いアインが最前列に出て、あたしらや他のゾルダートの盾となる。上空ではゾルダート・ワイバーンも複数飛び交い、ハイゼンの命令を今か今かと待っている。

 

「壮観だね。大軍勢が整列する光景は」

 

「あぁ、負ける気がしないぜ」

 

 鋼の軍団では最弱のゾルダート・アインですら、1体で数体のオークやゴブリンロードを潰せる。全軍の数で魔王軍が上でも、此方が過剰戦力なことに変わりはない。タ・ロウが自信を持つのも当然だろう。

 

 ハイゼンが葉巻を地面に捨て、踏みつけて火を消す。それが奴にとっての進軍開始の合図だった。

 

「お前ら……死ぬなよ」

 

「お前もだよ、ハイゼン」

 

「案ずるな、俺ぁ死なねえよ」

 

 あたしとハイゼンは横一列に並び、一瞬だけ横目で隣の相手を見るとすぐに視線を魔王城へ向ける。ハイゼンが巨大なハンマーを大きく振り、前へ突き出した。

 

「野郎ども!! 突撃しろ!!!」

 

『ヴォォォォォォォォォォォォォォ!!!』

 

 ハイゼンの怒号に近い号令が、1000体のゾルダートを走り出させる。しかし――。

 

「全力疾走には程遠くないかい?」

 

「ですな。結局歩いているのと変わらないですし」

 

「急に頼りなさげになるの止めてくれよ……」

 

「本当に、大丈夫なのかね? 私はあまり奴らの戦いを見てないから何とも言えんがの」

 

”アハハッ、鈍間鈍間!! 思ったより愚鈍な連中だねー!”

 

「テメエ等うるせえぞ! 死体なんだから体硬いんだよ仕方ねえだろ!? ごちゃごちゃ言ってねえでテメエ等もさっさと付いて来い!!」

 

 少しだけ場の空気が軽くなったところで、あたしたちも動き出す。因みに大して戦闘力もない(と思われる)デュークとクソ人形はカラ殺装置の側で待機だ。

 

 既に鋼の軍団の最前列は城壁の扉に到達し、無数のドリルを突き立てていた。大扉が地響きと共に倒れた先には、やはり魔王軍が待ち構えていた。

 

 

 

 

 

「――さあ」

 

「――さて」

 

 魔物の王(女王?)と異界の工場長。遠く離れた場所に位置する両者は、偶然にも同時に言葉を発した。

 

「「最終決戦だ!!」」

 

 直後、鋼の軍団と魔王軍が激しく衝突し、闇と氷の世界の静寂が破られる。

 

 負ければ絶滅。勝てば生き残れる。人類の未来を掛けた最後の戦いが……遂に始まった。

 

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