鋼の軍団、自由の為に魔王軍を蹂躙す   作:Woudy

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長らくお待たせして申し訳ございません。

今後も不定期更新が続くと思いますが、楽しんで頂けたら幸いです。


Ⅸ-決戦! VS魔王軍!②

「シュツルム!! 挨拶代わりにかましてやれ!!」

 

 一気に先頭へ躍り出たシュツルムが頭部のプロペラを回転させ、宿した炎を前方へ放つ。全速力で近付いて来る魔物たちは進路先の火炎放射を避け切れず、次々と突入して火達磨になる。すかさず其処へ鋼の軍団が殺到する。

 

「魔物の丸焼き、完成だぜ! そら、休む間もなく魔物の挽肉だ!」

 

 鋼の軍団、その最前列に布陣するアインがドリルで魔物に穴を開け、多数のゴブリンの血飛沫が肉片と共に宙を舞う。火炎放射を終えたシュツルムも、そのままプロペラで近場のオークを乱切りソテーに変えていく。

 

「圧倒的過ぎるぜ連中。こりゃ俺たちの出番は無ぇかもな」

 

「油断するんじゃないよタ・ロウ。予想外な仕掛けが用意されてるかもしれないぞ?」

 

 奴らだって馬鹿じゃない、何時迄もやられっぱなしでいる筈がないだろう。そうでなきゃ人類は絶滅寸前まで追い詰められていない。

 

 警戒を緩めず鋼の軍団の戦いぶりを観察していたあたしは、魔王軍の変化にいち早く気付いた。

 

「何だい? 先頭集団が割れていく……」

 

 やっぱり何か策を用意していたか。魔獣たちが左右に分かれると、その先から更に別の魔獣たちが現れた。そいつらの手に持つ者、それは……

 

「槍……?」

 

 何の変哲もない只の槍。しかしそれを装備する魔獣の数は凄まじい。ぱっと見でも1000体近くはいるんじゃないか。

 

「嫌な予感がする……ハイゼン、一度立て直して」

 

 あたしがハイゼンに話し掛けようとする前に、魔王軍の動きが活発化した。

 

「いけえええええええ!!!」

 

 魔王軍の奥から怒号が聞こえる。オーガかマラストラスか、それは分からない。重要なのは号令と同時に槍を持った魔獣が此方へ向かって全力で走り出したことだ。

 

「な、何だ……!?」

 

「突撃とは血迷ったか! ゾルダート、迎え撃て!!」

 

 ハイゼンの命令でドリルを前方へ向ける鋼の軍団。無謀にも突っ込んでくる魔王軍を、そのまま挽肉にしてやる算段だろう。

 

 しかし、鋼の軍団と接触しそうになるところで魔獣たちは方向転換。突き出されたドリルの群れが虚しく空を抉る。攻撃を躱した魔獣たちは、無防備に横を晒す鋼の軍団へ槍を突き立てた。

 

「!」

 

 負けじとドリルを攻撃してきた魔獣へ向けるゾルダート・アイン。だが魔獣はその攻撃が届く前に素早く槍を引き抜き、後方へ下がった。1体2体だけじゃない。何百体も一斉に。あたしたちは今までとは違う魔王軍の動きに困惑した。

 

「おいおいおいっ! こりゃあどうなってやがる!? こっちの攻撃がまるで当たってねえじゃねえか!」

 

 ハイゼンも何時もの飄々とした態度が鳴りを潜め、見るからに動揺していた。

 

 その後も魔獣たちは素早くゾルダートに近付いては槍を突き刺し、ドリルが飛んでくる前に離脱を繰り返す。または走り回ってゾルダートを翻弄しつつ、槍の穂先で少しずつ切り裂く魔獣もいた。それに対して鋼の軍団は非常に緩慢で、魔王軍の動きに付いて行けていない。徐々にではあるが、鋼の軍団はその数を減らしていく。

 

「そういえばゾルダートって走る時も大して速くなかったよね?」

 

「あぁ? そりゃ当然だろルーサ。さっきも言ったが奴らは死体なんだからよ。動きは遅いんだ」

 

「……あぁ成程。ハイゼン、魔王軍はゾルダートの弱点に気付いたんだ」

 

 機動力の低さ。生き物は死ぬと硬直し、腐敗して跡形も無くなる。ハイゼンの手で防腐処理こそ施されているが、硬くなった体はどうすることも出来ない。内蔵された機械とやらで無理矢理動かしているが、生前と比べると動きはかなり遅い。対する魔獣たちは生者で、中にはオークの様に高い身体能力を持つ個体も存在する。”速さ”ではどうあっても魔獣たちに敵わないのだ。

 

 生きてるか死んでるか。その違いが今まで圧倒していた筈の鋼の軍団を不利な状況へと陥らせる。

 

 そしてもう一つの弱点が、魔獣たちが使用する槍はゾルダートのドリルより長いこと。槍が刺さったゾルダートがドリルを突き出すも魔獣には全く届いておらず、射程の面でも鋼の軍団は劣勢だった。魔王軍の奴ら、こっちがドリルしか武装してないことを知ってたか。

 

「前線の部隊は小集団で固まって隙を減らせ! ジェット、ワイバーン!! 調子に乗った化け物どもを上から潰してやれ! パンツァーとオーガも出撃だ!」

 

「俺たちも最前列に出るぞ! キージ、ケンシーバ、ルーサ!」

 

「えぇ、我々も後ろで黙って見てる訳にはいきませんからね!」

 

「日本人から教わった投擲の技術、見せてくれよう!」

 

 だが、此方とて一方的にやられる訳にはいかない。ハイゼンの指示で、ゾルダート・アイン、ツヴァイが亀のように固まって全周にドリルを向ける。成程、これは先と比べると魔王軍の戦術を幾らか抑制出来る陣形になってる。動くこと自体はより難しくなったが、防御面では非常に優れている。

 また、鋼の軍団にもゾルダート・ジェットやワイバーンなど、少数ながら機動力に優れた個体は存在するし、パンツァーやオーガは全身の装甲で槍や剣如きではビクともしない。それにあたしら勇者やハイゼンも居る。不利にはなったが十分逆転は可能だ。

 

 タ・ロウらに続き、あたしも走り出す。一気に前線へ躍り出たあたしらは、それぞれの得意分野を駆使して魔獣を屠る。タ・ロウは優れた剣術で、ケンシーバは格闘術で、キージは礫を拾い投擲で、防御の陣形を組んでいたゾルダートの撃破に躍起になっていた魔獣たちは現れた勇者たちの横槍に対応出来ず、次々と黒い血を流して倒れる。

 

「調子づいてんじゃないよ、これでも喰らいな」

 

 無論、あたしも持ち前の高い魔力で魔獣を片っ端から討ち取る。敵集団へ歩きつつ地面に流した魔力で土を操り、槍の様に空へ突き出すことで数十体纏めて串刺しにする。一見強力そうだが、近場の土を材料にしている為に魔力を抑えて戦える。長時間の戦闘には丁度良い魔法だ。

 

 100体以上に大きな穴を開けてから周囲を見回す。タ・ロウたちが本格的に参戦したことで、魔王軍の幹部たちも戦場のど真ん中に現れていた。

 

「ケンシーバ……テメェを漸く殺すことが出来るぜ」

 

「私も同じ気持ちだよレッドオーガ。オルアルクス団長の無念。仇の貴様を討つことで晴らしてみせる!」

 

 ケンシーバは同胞を殺したレッドオーガと対峙し、

 

「ようイエローオーガ。いい加減決着を付けようぜ?」

 

「そうだな。今度こそお前を殺してやるよ、タ・ロウ」

 

 タ・ロウとイエローオーガが因縁の相手とぶつかり合い、

 

「……では残ったお前は私が相手になろう、ブルーオーガ」

 

「ドワーフ風情が俺様を残り物扱いしやがって……後悔させてやる!」

 

 キージがブルーオーガと睨み合う。

 

「折角怪物どもの弱点を突けたのに、貴様らに邪魔されちゃ奴らを殲滅出来んのでな。今すぐ死んでもらおうか?」

 

「あたしの相手はお前かい、マラストラス?」

 

 そしてあたしは上空を飛ぶ魔族の男を見上げる。

 

「魔王様が例の巨大魔獣を相手する以上、お前を殺す役目は必然的に私になる。魔王軍で魔王様の次に魔力が強いのは私だからな」

 

「……舐められたもんだね。あたしの魔力を感じてない訳がないだろう?」

 

「無論、神の眷属でもなければ魔王様に匹敵する魔力を人類如きが得られるわけがない。だが、エルフ族は体が貧弱だ。殺せない訳がない。お高く留まった鼻を、いや耳をへし折ってやる」

 

「なら、あたしはお前を地面に這いつくばらせて、そのままめり込ませてやるよ」

 

 あたしとマラストラス。牽制目的で放たれた互いの濃密な魔力が衝突し、周囲を暴風が荒れ狂う。

 

「ヘル・ファイア!!」

 

「ライトニング・テンペスト!!」

 

 あたしはマラストラスの獄炎魔法を飛んで避けつつ、奴を撃ち落とす電撃を放つ。

 

 一方のハイゼンは、持ち直しつつある自軍に調子を取り戻して高らかに笑う。

 

「ハハハハハッ! 鋼の軍団の弱点を突く作戦は見事だぜ! だがその程度で俺たちを止められると思うな!!」

 

 そしてカラコロ装置から吐き出された鉄屑を吸い寄せ、あっという間に鉄の怪物へ変化した。

 

「防御! 機動力! 射程! そして攻撃力! 俺はその全てで圧倒的だ! 魔王とオーガ以外は全部ミンチに変えてやるよ! ウオラアアアアアアアアアア!!」

 

 右腕の丸鋸と足元のオーガーが火花を散らして回転、ハイゼンの突進を受けた魔獣たちは哀れ肉片と化し後方へ吹き飛ぶ。非常に暴力的で凄惨な光景が作り出される。

 

 形勢逆転。そう思っていた。

 

「ドゥアアッ!!?」

 

 突如、魔王城から飛来した青白い光弾。それが怪物形態のハイゼンに命中して大爆発を起こした。

 

「のああああああ!!?」

 

「くうッ、は、ハイゼンッ……!!」

 

 衝撃波で吹き飛ばされるマラストラス。あたしは何とか地面に這いつくばりながら、爆炎に包まれるハイゼンへ叫んだ。

 

 何だ? 何が起きた? あたしは光弾が飛んできた城の入り口へ視線を向ける。

 

「――命中」

 

 其処にいたのは、無機質な体を持つ人型の何かだった。しかし感じられる魔力の量と質から、あたしはその正体を確信した。

 

「魔王、ノスグーラ……!」

 

 最初に遭遇した時とは全く異なる容姿の魔王がハイゼンを狙っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 




擬人化魔王のイラストを描きました。少し結城美柑(To LOVEる)を意識しています。
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